説明

測定装置

【課題】ワークの種類が異なっても広い測定範囲でその内径を測定することができ、測定装置を回転させてワークの内径の全周を測定することが可能な、測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置10は、装置本体11と、テーパ部品21と、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24と、指示器17と、を備え、テーパ部品21に形成された、第一テーパ面21a、第二テーパ面21b、及び、ガイドテーパ面21c・21cのそれぞれには、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24が離間せずに摺動可能に組付けられ、第一テーパ面21aのなす第一テーパ角a1は第二テーパ面21bのなす第二テーパ角a2よりも小さく形成され、ガイドテーパ面21c・21cのなすガイドテーパ角bは、第一テーパ角a1よりも大きく、第二テーパ角a2よりも小さく形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関し、詳しくは、管状部の内径寸法を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、その一端側を管状部材であるワークにおける管状部内に挿入し、複数の測定子の先端部を管状部の内周面に当接させて管状部の内径寸法を測定する、測定装置(ボアゲージ)が用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。このような測定装置は、半径方向外側への測定子のスライド量に応じて摺動するテーパ部品を内部に備えている。テーパ部品は固有の角度に形成されたテーパ面で測定子と連結されており、測定装置はこのテーパ部品の摺動量に対応した値を、その他端側に配設した指示器で指示するのである。
【0003】
前記測定装置には、大別して二点測定型と三点測定型の二種類が存在する。
前記従来技術として開示されている二点測定型の測定装置では、測定装置の軸心をワークの管状部の軸心と一致させるために、ワークの管状部における内径に合わせた専用のガイドを用いる構成としている。
一方、三点測定型の測定装置では、測定装置の軸心をワークの管状部の軸心と一致させるために、測定子でワークの内周面をチャックして測定装置を固定する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−152318号公報
【特許文献2】特開平7−43103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如く、二点測定型の測定装置によっては、ワークの管状部における内径に合わせた専用のガイドを用いるため、他の大きさの内径を有する管状部を測定することは困難であった。即ち、二点測定型の測定装置では、専用のワークについて、狭い測定範囲で測定することができるが、異なる種類のワークについて、広範囲での測定を行うことはできなかった。
【0006】
一方、三点測定型の測定装置によっては、測定子がワークの内周面をチャックする構成であるため、測定装置を回転させて内周面全体を測定することはできなかった。また、図6に示す如く、測定装置を回転させようとしても、ワークの内径が小さくなる場合は、テーパ部品のテーパ面が装置本体の軸心方向に対してなす鋭角であるテーパ角(図6中に示す角度α)が小さいため、測定子が軸心側に移動してテーパ部品を押し上げることができない。このように、三点測定型の測定装置では、回転させて測定することができないため、ワークの内径の全周を測定することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、上記現状に鑑み、ワークの種類が異なっても広い測定範囲でその内径を測定することができ、測定装置を回転させてワークの内径の全周を測定することが可能な、測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、ある軸心方向に対して傾斜し、前記軸心を挟んで対向する第一テーパ面及び第二テーパ面と、前記軸心方向に対して傾斜する複数のガイドテーパ面とを有し、前記軸心方向に移動可能に付勢されるテーパ部品と、前記第一テーパ面および第二テーパ面に対して離間せずに摺動可能に組付けられ、前記第一テーパ面および第二テーパ面のそれぞれから、前記軸心に対する直交方向の外側へ向けて突出し、前記軸心に対する直交方向へスライド可能な第一の測定子及び第二の測定子と、前記各ガイドテーパ面に対して離間せずに摺動可能に組付けられ、前記各ガイドテーパ面から前記軸心に対する直交方向の外側へ向けて突出し、前記軸心に対する直交方向へスライド可能な複数のガイド部と、前記テーパ部品の前記軸心方向への移動量に対応する値を指示する指示器と、を備え、前記第一テーパ面の前記軸心方向に対する傾斜角である第一テーパ角、前記第二テーパ面の前記軸心方向に対する傾斜角である第二テーパ角、及び前記ガイドテーパ面の前記軸心方向に対する傾斜角であるガイドテーパ角は、それぞれ鋭角に構成され、前記第一テーパ角は、前記第二テーパ角よりも小さく形成され、前記ガイドテーパ角は、第一テーパ角よりも大きく、かつ第二テーパ角よりも小さく形成され、前記第一の測定子、第二の測定子、及び、ガイド部は、前記軸心方向における位置が同一となるように配置されるとともに、前記テーパ部品が軸心方向へ付勢されることにより、前記第一テーパ面、第二テーパ面、およびガイドテーパ面を介して、前記軸心方向と直交する方向の外側に付勢され、前記テーパ部品は、第二の測定子の軸心側へのスライドに伴って、付勢方向と反対の方向に移動可能に構成され、前記第一の測定子、第二の測定子、及び、ガイド部が組付けられたテーパ部品を管状部に挿入して、前記第一の測定子及び第二の測定子におけるそれぞれの先端部を管状部の内周面に当接させ、前記テーパ部品の前記軸心方向への移動量に対応する値を前記指示器で指示することにより、管状部の内径寸法を測定するものである。
【0010】
請求項2においては、前記第一テーパ角及び第二テーパ角は、前記第一の測定子及び第二の測定子の、前記軸心方向と直交する方向へのスライド量の和と、前記テーパ部品の、前記軸心方向への移動量と、が等しくなる角度に形成されるものである。
【0011】
請求項3においては、前記テーパ部品は、測定対象となる管状部の内径が変化すると、前記第一テーパ角と第二テーパ角との差によって、前記第一の測定子又は第二の測定子の側へ移動するように構成され、前記ガイドテーパ角は、前記第一の測定子又は第二の測定子の側へ移動した前記テーパ部品の位置に関わらず、ガイド部の先端面と管状部の内周面との距離が所定の範囲内となるように形成されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
本発明により、ワークの種類が異なっても広い測定範囲でその内径を測定することができ、測定装置を回転させてワークの内径の全周を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る測定装置を示した一部切欠正面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】(a)は図2におけるB−B線断面図、(b)は第一の測定子及び第二の測定子のスライド量とテーパ部品の摺動量との関係を示した図、(c)は図2におけるC−C線断面図。
【図4】(a)から(c)はそれぞれ管状部の内径変化に伴うテーパ部品と測定子との関係を示した正面図。
【図5】(a)から(c)はそれぞれ管状部の内径変化に伴うガイド部の状態を示した平面図。
【図6】従来技術に係る測定装置を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0016】
[測定装置10]
まず始めに、本発明の一実施形態に係る測定装置10の全体的な構成について、図1及び図2を用いて説明する。なお、本明細書においては説明の便宜上、図1における上側及び下側を、それぞれ測定装置10の上方及び下方とし、同じく左側及び右側を、それぞれ測定装置10の左側方及び右側方とし、同じく紙面手前側及び紙面奥側を、それぞれ測定装置10の前方及び後方として説明する。また、図1及び図2には方向を示す矢印を示している。
【0017】
本実施形態に係る測定装置10は図1に示す如く、筒状のケースである装置本体11と、装置本体11の一端である下端側の内部に収納されたテーパ部品21と、装置本体11の下端側に配設された棒状部材である、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24と、装置本体11の他端である上端側に配設された指示器17と、を備える。
【0018】
測定装置10を使用する際には、図1に示す如く、装置本体11の下端側をワークWに形成された管状部Wtに挿入する。そして、後述するように、第一の測定子22a及び第二の測定子22bにおける、装置本体11から突出した端部であるそれぞれの先端部を管状部Wtの内周面に当接させる。さらに、テーパ部品21の装置本体11の軸心方向への摺動量に対応する値(テーパ部品21の上下位置)を指示器17で指示することにより、管状部Wtの内径寸法を測定するのである。
【0019】
本実施形態においては、指示器17はアナログ式に表示する構成としているが、デジタル式に表示する構成や、電子計算機のモニタに数値を表示・記録する構成など、他の構成とすることも可能である。作業者は、これらの方法によって表示された値を読み取ることにより、管状部Wtの内径寸法を把握するのである。
【0020】
以下、測定装置10の各構成要素について、具体的に説明する。
装置本体11は、図1及び図2に示す如く内部に間隙を有する円筒形状をしており、アルミやスチールなどで形成された金属製ケースである。装置本体11の先端部である下端部は、同じ素材で形成された円板状の蓋部材13によって間隙が閉塞される。なお、本実施形態に係る測定装置10における装置本体11は、後述するように測定装置10を軸心回りに回転させて測定する構成としているため、その形状を円筒形状としているが、多角筒形状などの他の形状とすることも可能である。
【0021】
装置本体11の下端側の内部には、付勢部材である圧縮バネ32によって装置本体11の軸心方向である下方に付勢された状態で、略円錐台形状のテーパ部品21が上下方向に摺動可能に収納されている。詳細には、テーパ部品21の上面に、摺動軸31の下端部が連結され、摺動軸31が装置本体11の中途部において上下方向に摺動するように配設されているのである。本実施形態では、テーパ部品21は圧縮バネ32によって下方に付勢される構成としているが、引張バネを用いる構成や、後述するテーパ面21a・21bの傾斜方向を変更することによって上方に付勢される構成とすることも可能である。
【0022】
装置本体11の上端側に配設される指示器17は、テーパ部品21の上下方向への摺動量に対応する値を指示する。具体的には、指示器17からはニードル18が延出して配設されており、指示器17はニードル18を装置本体11の内部の間隙に挿入して配設されているのである。そして、ニードル18の先端は摺動軸31の上端面に当接しており、摺動軸31の上下動に伴うニードル18の上下の移動量(上下位置)を指示器17で指示するのである。
【0023】
図1及び図2に示す如く、装置本体11の下端側には、左右に対向する二個の孔12a・12bが開口されている。そして、装置本体11の内部からこれらの孔12a・12bを通って、装置本体11の軸心方向と直交する方向である左右方向に突出して、第一の測定子22a及び第二の測定子22bが左右方向にスライド可能に配設されている。
【0024】
また、装置本体11の下端側で孔12a・12bと同じ上下位置の部分には、前後に対向する二個の孔12c・12cが開口されている。そして、装置本体11の内部からこれらの孔12c・12cを通って、装置本体11の軸心方向と直交する方向である前後方向に突出して、二本のガイド部24・24が前後方向にスライド可能に配設されている。
【0025】
即ち、本実施形態においては図2に示す如く、測定装置10の軸心から半径方向外向きに、第一の測定子22a及び第二の測定子22bが反対方向を向いて、また、二本のガイド部24・24が反対方向を向いて、それぞれが90度ずつ位相をずらして配設されているのである。つまり、二本のガイド部24・24は、テーパ部品21に対して、前後対称となるように配設されているのである。この際、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24は、孔12a・12b及び孔12c・12cによって上下方向の位置が拘束されているため、上下方向の位置が同一となる。なお、本実施形態においてガイド部24・24は二本配設する構成としたが、ガイド部24については三本以上配設する構成とすることも可能である。
【0026】
次に、テーパ部品21と、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24と、の関係を、図3から図5を用いて説明する。
【0027】
テーパ部品21には、それぞれが装置本体11の軸心方向に対して傾斜する、第一テーパ面21a、第二テーパ面21b、及び、ガイドテーパ面21c・21cが形成されている。第一テーパ面21a及び第二テーパ面21bは装置本体11の軸心を挟んで対向し、ガイドテーパ21c・21cも装置本体11の軸心を挟んで対向するように形成されている。
具体的には、テーパ部品21の左側面には第一テーパ面21aが、その下側が上側に対してテーパ部品21の半径方向内側に近づくように傾斜して、換言すれば、その上側が下側に対して半径方向外側に突出するように形成されている。また、テーパ部品21の右側面には第二テーパ面21bが、テーパ部品21の前後それぞれの側面にはガイドテーパ面21c・21cが、それぞれの下側が上側に対してテーパ部品21の半径方向内側に近づくように傾斜して形成されている。
【0028】
そして、第一テーパ面21a、第二テーパ面21b、及び、ガイドテーパ面21c・21cのそれぞれには、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24のそれぞれにおける基端部(テーパ部品21側の端部)が離間せずに摺動可能に組付けられる。詳細には、例えば、テーパ部品21におけるそれぞれのテーパ面21a・21b・21c・21cには、図示しない係合溝が形成され、それぞれの測定子22a・22b、及び、ガイド部24・24の基端部には、図示しない係合部が突出して形成され、各係合溝に対応する係合部を摺動可能に係合させて組付けられるのである。
【0029】
上記の如く構成することにより、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24は、圧縮バネ32によって下方に付勢されたテーパ部品21によって、装置本体11の半径方向外側に付勢される。つまり、テーパ部品21が圧縮バネ32によって下方に付勢されて下方へ移動すると、上記の如く傾斜して形成されたそれぞれのテーパ面21a・21b・21c・21cが第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24を外側に押し出すのである。
【0030】
なお、本実施形態においては上記の如く、それぞれのテーパ面21a・21b・21c・21cの傾斜方向によって、テーパ部品21が下方に移動すると第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24が外側に押し出される構成としたが、テーパ部品21に形成するテーパ面21a・21b・21c・21cの傾斜方向を逆にすることも可能である。即ち、前述の如く、テーパ面21a・21b・21c・21cを、それぞれの上側がテーパ部品21の半径方向内側に近づくように傾斜させ、テーパ部品21を上方に付勢する構成する構成とするのである。これにより、テーパ部品21が上方に移動すると第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24が外側に押し出される構成となる。
【0031】
テーパ部品21においては、第一テーパ面21aが装置本体11の軸心方向に対してなす鋭角である第一テーパ角(図3(a)中に示す角a1)は、第二テーパ面21bが装置本体11の軸心方向に対してなす鋭角である第二テーパ角(図3(a)中に示す角a2)よりも小さく形成される。また、ガイドテーパ面21c・21cが装置本体11の軸心方向に対してなす鋭角であるガイドテーパ角(図3(c)中に示す角b)は、第一テーパ角a1よりも大きく、第二テーパ角a2よりも小さく形成される。
【0032】
また、図3(a)に示す矢印Fhの如く、第二の測定子22bの軸心側へのスライドに伴って、テーパ部品21は矢印Fvの如く、圧縮バネ32による付勢方向と反対の方向である上方に摺動可能に構成される。即ち、第二テーパ角a2が大きく形成されるため、第二の測定子22bがテーパ部品21に対して軸心側に力を加えると、テーパ部品21がテーパ面21bで摺動して押し上げられるのである。テーパ部品21が押し上げられると、それぞれのテーパ面21a・21c・21cによって第一の測定子22a及び二個のガイド部24・24が軸心側に引きこまれる。つまり、第一の測定子22a及び第二の測定子22bのスライド量(テーパ部品21からの突出量)に応じて、テーパ部品21の上下方向への摺動量が定まると同時に、ガイド部24・24のスライド量(テーパ部品21からの突出量)が変更されるように構成されているのである。
一方、第一テーパ角a1及びガイドテーパ角bは第二テーパ角a2よりも小さく形成されているため、第一の測定子22a及びガイド部24・24がテーパ部品21に対して軸心側に力を加えても、テーパ部品21は押し上げられないように構成されている。
【0033】
上記の如く構成された測定装置10においては、図1に示す如く、装置本体11の下端側をワークWに形成された管状部Wtに挿入する。この際、圧縮バネ32によって下方に付勢されたテーパ部品21によって、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24は、装置本体11の半径方向外側に付勢される。これにより、第一の測定子22a及び第二の測定子22bの先端部が管状部Wtの内周面に当接する。
【0034】
また、ガイド部24・24の先端部と、管状部Wtの内周面との間には、図2に示す如く距離d以下のクリアランスが形成される。距離dは、テーパ部品21がガイド24・24の延出方向にクリアランス分の移動をしても、測定値に影響を与えない程度の大きさである。つまり、距離dが0となり、一のガイド部24が管状部Wtと接触しても差し支えない。これにより、測定装置10の軸心がワークWの管状部Wtの軸心と、ガイド部24・24の方向に略一致する。つまり、第一の測定子22a及び第二の測定子22bが管状部Wtの直径上に位置することとなるため、管状部Wtの内径は第一の測定子22a及び第二の測定子22bのスライド量に反映されることとなる。
そして、第一の測定子22a及び第二の測定子22bのスライド量によって定まる、テーパ部品21の上下方向への摺動量に対応する値(テーパ部品21の上下位置)を指示器17で指示することにより、管状部Wtの内径寸法を測定するのである。
【0035】
本実施形態に係る測定装置10は上記の如く、第一の測定子22a及び第二の測定子22bのスライド量、即ち管状部Wtの内径に応じて、ガイド部24・24のスライド量を変更するように構成している。このため、ワークWに形成された管状部Wtの内径が異なる場合でも測定装置10を用いて測定できる。つまり、ワークWごとに定まった専用のガイドではなく、管状部Wtの内径に応じてスライド量が変更されるガイド部24・24でガイドし、測定装置10の軸心を管状部Wtの軸心と、ガイド部24・24の方向に略一致させる構成とすることにより、広範囲での測定が可能となるのである。
【0036】
また、測定装置10は、第二テーパ角a2を大きく形成することにより、第二の測定子22bの軸心側へのスライドに伴って、テーパ部品21が上方に摺動するように構成している。このため、測定装置10を軸心回りに回転させて管状部Wtの内径を測定した場合に、内径が小さくなっても、第二の測定子22bが軸心側に移動してテーパ部品21を押し上げることにより、測定が可能となるのである。つまり、管状部Wtの内径を、測定装置10を軸心回りに回転させて測定することができ、ワークWにおける管状部Wtの内径の全周を測定することが可能となるのである。
【0037】
このように、本実施形態に係る測定装置10は、ワークWの種類が異なっても広い測定範囲でその内径を測定することができるとともに、測定装置10を回転させてワークWの内径の全周を測定することが可能となるのである。
【0038】
また、本実施形態に係る測定装置10において、テーパ部品21の第一テーパ角a1及び第二テーパ角a2は、図3(b)に示す如く、第一の測定子22a及び第二の測定子22bの、装置本体11の軸心方向と直交する方向へのスライド量の和(図3(b)中の矢印Dh1と矢印Dh2との長さの和)と、テーパ部品21の、装置本体11の軸心方向への移動量(図3(b)中の矢印Dvの長さ)と、が等しくなる角度に形成されている。
【0039】
このように構成することにより、管状部Wtの内径変化量と、指示器17で指示される値の変化量とを一致させることができる。つまり、指示器17で指示する値は、テーパ部品21の上下方向への摺動量に対応する値(テーパ部品21の上下位置)であるため、テーパ部品21の上下方向への摺動量を第一の測定子22a及び第二の測定子22bにおけるスライド量の和と一致させることにより、管状部Wtの内径変化量と一致した値を指示器17で指示することが可能となるのである。
【0040】
なお、本実施形態における第二テーパ角a2は、上記の如く第二の測定子22bの軸心側へのスライドに伴ってテーパ部品21を軸心方向に摺動可能な程度の大きさに形成されていれば良く、その大きさは限定されるものではない。但し、上記のように第一の測定子22a及び第二の測定子22bにおけるスライド量の和と、テーパ部品21の摺動量と、を等しく構成しようとした場合は、第二テーパ角a2の大きさに伴って第一テーパ角a1の大きさが定められることになる。
【0041】
また、本実施形態に係る測定装置10においては、第一の測定子22a及び第二の測定子22bにおけるスライド量の変化に伴って、テーパ部品21の中心位置が移動するように構成されている。以下、テーパ部品21の移動について、具体的に図4(a)から(c)及び図5(a)から(c)を用いて説明する。
【0042】
図4(a)及び図5(a)は、第一の測定子22a及び第二の測定子22bの外側へのスライド量(テーパ部品21からの突出量)が小さい場合を示している。この際、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24は、図4(a)に示す如く、テーパ部品21の各テーパ面21a・21b・21c・21cの下側に当接することとなる。この場合のテーパ部品21の中心位置、即ち、ガイド部24・24の中心位置を、位置CSとして記載する。
【0043】
図4(b)及び図5(b)は、第一の測定子22a及び第二の測定子22bの外側へのスライド量が中程度(図4(a)及び図5(a)の場合よりも大きい)の場合を示している。つまり、第一の測定子22a及び第二の測定子22bがそれぞれ、図4(a)及び図5(a)の状態から長さh1・h1ずつ延出した状態を示している。この際、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24は、図4(b)に示す如く、テーパ部品21の各テーパ面21a・21b・21c・21cの上下方向における中途部(図4(a)及び図5(a)の場合よりも上方)に当接することとなる。この場合のテーパ部品21の中心位置、即ち、ガイド部24・24の中心位置を、位置CMとして記載する。
【0044】
図4(c)及び図5(c)は、第一の測定子22a及び第二の測定子22bのスライド量が大きい(図4(b)及び図5(b)の場合よりも大きい)場合を示している。つまり、第一の測定子22a及び第二の測定子22bがそれぞれ、図4(b)及び図5(b)の状態から長さh2・h2ずつ延出した状態を示している。この際、第一の測定子22a、第二の測定子22b、及び、二個のガイド部24・24は、図4(c)に示す如く、テーパ部品21の各テーパ面21a・21b・21c・21cの上側(図4(b)及び図5(b)の場合よりも上方)に当接することとなる。この場合のテーパ部品21の中心位置、即ち、ガイド部24・24の中心位置を、位置CLとして記載する。
【0045】
図4(a)から(c)及び図5(a)から(c)に示す如く、第一の測定子22a及び第二の測定子22bにおけるスライド量が変化すると、第一テーパ面21a及び第二テーパ面21bにそれぞれ形成された第一テーパ角a1及び第二テーパ角a2の大きさが異なることから、テーパ部品21の中心位置が第一の測定子22a又は第二の測定子22bが延出する方向へ移動する。
即ち、図4(a)・図5(a)における位置CSに対して、図4(b)・図5(b)における位置CMは幅H1だけ第一の測定子22aの側へ移動する。また、図4(b)・図5(b)における位置CMに対して、図4(c)・図5(c)における位置CLは幅H2だけ第一の測定子22aの側へ移動する。つまり、本実施形態においては、第一の測定子22a及び第二の測定子22bにおけるテーパ部品21からのスライド量が増加すると、テーパ部品21の中心位置が第一の測定子22aの側へ移動するように構成されている。換言すれば、テーパ部品21は、測定対象である管状部Wtの内径が大きくなると、第一テーパ角a1と第二テーパ角a2との差によって、第一の測定子22aの側へ移動するように構成されているのである。
【0046】
そして、テーパ部品21に形成されるガイドテーパ面21c・21cのガイドテーパ角b・bは、第一の測定子22a又は第二の測定子22bの側へ移動したテーパ部品21の位置に関わらず、換言すれば、移動したテーパ部品21からガイド部24・24が延出する方向の管状部Wtの内周面までの距離に応じて、ガイド部24・24の先端面と管状部Wtの内周面との距離d(図2を参照)が所定の範囲内となるように形成されている。
【0047】
即ち、ガイドテーパ角b・bは、図5(a)から(c)に示す如く、管状部Wt(Wt1・Wt2・Wt3)の内径の変化に伴って、テーパ部品21の中心位置CS・CM・CLが移動しても、ガイド部24・24の先端面と管状部Wtの内周面とが所定の距離d以下(本実施形態では距離d1・d2・d3)のクリアランスを保つように、ガイド部24・24をテーパ部品21から延出する角度に形成されているのである。
【0048】
本実施形態に係る測定装置10は上記の如く、テーパ部品21に形成されるガイドテーパ面21c・21cのガイドテーパ角b・bは、テーパ部品21が第一テーパ角a1と第二テーパ角a2との差によって第一の測定子22a又は第二の測定子22bの側へ移動しても、ガイド部24・24の先端部と、管状部Wt(Wt1・Wt2・Wt3)の内周面との間には、図5(a)から(c)に示す如く距離d以下(d1・d2・d3)のクリアランスが形成される角度となるように形成されている。
【0049】
これにより、測定装置10を回転させながら測定している最中に、管状部Wtの内径の変化により、測定装置10の軸心が第一の測定子22a又は第二の測定子22bの側へ移動した場合でも、第一の測定子22a及び第二の測定子22bが管状部Wtの直径上からずれることがないため、管状部Wtの内径の測定が継続できるように構成されているのである。
【符号の説明】
【0050】
10 測定装置
11 装置本体
17 指示器
21 テーパ部品
21a 第一テーパ面
21b 第二テーパ面
21c ガイドテーパ面
22a 第一の測定子
22b 第二の測定子
24 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある軸心方向に対して傾斜し、前記軸心を挟んで対向する第一テーパ面及び第二テーパ面と、前記軸心方向に対して傾斜する複数のガイドテーパ面とを有し、前記軸心方向に移動可能に付勢されるテーパ部品と、
前記第一テーパ面および第二テーパ面に対して離間せずに摺動可能に組付けられ、前記第一テーパ面および第二テーパ面のそれぞれから、前記軸心に対する直交方向の外側へ向けて突出し、前記軸心に対する直交方向へスライド可能な第一の測定子及び第二の測定子と、
前記各ガイドテーパ面に対して離間せずに摺動可能に組付けられ、前記各ガイドテーパ面から前記軸心に対する直交方向の外側へ向けて突出し、前記軸心に対する直交方向へスライド可能な複数のガイド部と、
前記テーパ部品の前記軸心方向への移動量に対応する値を指示する指示器と、を備え、
前記第一テーパ面の前記軸心方向に対する傾斜角である第一テーパ角、前記第二テーパ面の前記軸心方向に対する傾斜角である第二テーパ角、及び前記ガイドテーパ面の前記軸心方向に対する傾斜角であるガイドテーパ角は、それぞれ鋭角に構成され、
前記第一テーパ角は、前記第二テーパ角よりも小さく形成され、
前記ガイドテーパ角は、第一テーパ角よりも大きく、かつ第二テーパ角よりも小さく形成され、
前記第一の測定子、第二の測定子、及び、ガイド部は、
前記軸心方向における位置が同一となるように配置されるとともに、
前記テーパ部品が軸心方向へ付勢されることにより、前記第一テーパ面、第二テーパ面、およびガイドテーパ面を介して、前記軸心方向と直交する方向の外側に付勢され、
前記テーパ部品は、第二の測定子の軸心側へのスライドに伴って、付勢方向と反対の方向に移動可能に構成され、
前記第一の測定子、第二の測定子、及び、ガイド部が組付けられたテーパ部品を管状部に挿入して、前記第一の測定子及び第二の測定子におけるそれぞれの先端部を管状部の内周面に当接させ、前記テーパ部品の前記軸心方向への移動量に対応する値を前記指示器で指示することにより、管状部の内径寸法を測定する、
ことを特徴とする、測定装置。
【請求項2】
前記第一テーパ角及び第二テーパ角は、前記第一の測定子及び第二の測定子の、前記軸心方向と直交する方向へのスライド量の和と、前記テーパ部品の、前記軸心方向への移動量と、が等しくなる角度に形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記テーパ部品は、測定対象となる管状部の内径が変化すると、前記第一テーパ角と第二テーパ角との差によって、前記第一の測定子又は第二の測定子の側へ移動するように構成され、
前記ガイドテーパ角は、前記第一の測定子又は第二の測定子の側へ移動した前記テーパ部品の位置に関わらず、ガイド部の先端面と管状部の内周面との距離が所定の範囲内となるように形成される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate