説明

港口遮断構造

【課題】低コストで構築可能な無許可船舶の不法入港を防止する港口遮断構造を提供する。
【解決手段】港の内外を仕切る港口遮断構造1は、海水中を昇降可能な複数の昇降装置2と、隣接する昇降装置2間に設置された遮断用部材3と、昇降装置2を昇降させるための駆動装置4と、を備えている。遮断用部材3は、隣接する浮上用鋼管6間に上下複数段となるように架け渡された横係留索18、28、38と、上下に隣接する横係留索18と横係留索28とを連結する複数の縦係留索19と、上下に隣接する横係留索28と横係留索38とを連結する複数の縦係留索29と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無許可船舶の不法入港を防止するための港口遮断構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、海底面に設けた基礎コンクリートを貫通して海底地盤内に鉛直に挿入され、かつ近接した状態で基礎コンクリートの表面に上端面を開口させて配列された複数の下部鋼管と、下部鋼管に昇降可能に挿入され、かつ下端面が開口された浮上用鋼管と、各浮上用鋼管内に空気を供給するための給気装置と、を備えた可動式防波堤が開示されている。この可動式防波堤は、凪のときには浮上用鋼管の柱列を海底面に埋伏させて湾外と湾内とを完全開放し、荒天時及び津波時には地上からコンプレッサや配管等の外部給気装置により各浮上用鋼管内に空気を供給し、その浮力により浮上用鋼管の柱列を海水面上に突出させて湾内への波浪・津波の侵入を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−255719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、本出願人らは、図11に示すように、水の出入りが可能で、かつ圧縮空気を貯留可能な空気室56e及びこの空気室56eよりも下方に設けられて気体が密閉された浮力タンク56dを有する浮上用鋼管56と、空気室56eに圧縮空気を供給するための給気装置52と、浮上用鋼管56の空気室56eよりも上方に設けられて空気室56e内の圧縮空気を浮上用鋼管56外に排出するための排気装置57と、を備えた可動式防波堤51に関する発明を既に特許出願している(特願2009−136075)。この可動式防波堤51は、給気装置52により空気室56eへ圧縮空気を供給し、その浮力及び浮力タンク56d内の気体の浮力により、浮上用鋼管56を海水面上に突出させるものである。この可動式防波堤51は、浮上用鋼管56内に浮力タンク56dを備えているので、従来の浮上用鋼管56よりも少量の空気量で浮上させることができるとともに、その浮上を数分以内で完了することができるという特徴を有する。
【0005】
上記特許文献1や上記特許出願に記載されている可動式防波堤は、本来、湾内への波浪の侵入を防止する目的のものであるが、船舶の入港を防止することも可能である。しかしながら、複数の浮上用鋼管及び下部鋼管が数十ミリ間隔で近接するように設置されているため、船舶の入港防止のみを目的とするとオーバースペックであるうえ、建設費用が高くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、低コストで構築可能な無許可船舶の不法入港を防止する港口遮断構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、港の入口の海中に所定の間隔で配列され、昇降可能な複数の昇降装置と、
隣接する前記昇降装置間に架設されて、海水の通過は許容するが船舶の通過を阻止する遮断用部材と、
前記昇降装置を昇降させるための駆動装置と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記遮断用部材は、
隣接する前記昇降装置に両端がそれぞれ連結された横係留索と、
前記横係留索に吊り下げられた縦係留索と、
を備えることとしてもよい。
【0009】
また、本発明において、前記遮断用部材は、前記昇降装置の外周を螺旋状に囲うように設けられた側方係留索を備えることとしてもよい。
【0010】
そして、本発明において、前記昇降装置を設置する前記所定の間隔は、2m以上であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストで構築可能な無許可船舶の不法入港を防止する港口遮断構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る港口遮断構造の平面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る港口遮断構造の正面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る港口遮断構造の側断面図である。
【図4】本実施形態に係る港口遮断構造の昇降状態を示す図である。
【図5】本実施形態に係る港口遮断構造の昇降状態を示す図である。
【図6】本実施形態に係る港口遮断構造の昇降状態を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る港口遮断構造の正面図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る港口遮断構造の平面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る港口遮断構造の正面図である。
【図10】上部鋼管が下部鋼管内に格納されているときの側方係留索の状態を示す図である。
【図11】可動式防波堤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る港口遮断構造の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明に係る港口遮断構造は、入港を許可されていない船や潜水艦であって、例えば、幅3〜8m程度の漁船や小型貨物船クラスの不審船、幅2.5〜4m程度の潜水艦(排水量300ton未満、一般的には潜水艇と呼ばれるもの)、及び幅4〜9m程度の潜水艦(排水量300ton以上)等の入港を阻止するものである。なお、以下の説明では、入港を許可されていないこれらの船や潜水艦等を無許可船舶という。
【0014】
図1及び図2は、本発明の第一実施形態に係る港口遮断構造1のそれぞれ平面図、正面図である。また、図3は、本発明の第一実施形態に係る港口遮断構造1の側断面図である。
図1〜図3に示すように、港の内外を仕切る港口遮断構造1は、海水中を昇降可能な複数の昇降装置2と、隣接する昇降装置2間に設置された遮断用部材3と、昇降装置2を昇降させるための駆動装置4と、を備えている。
【0015】
昇降装置2は、海底地盤E内に埋設された下部鋼管5と、下部鋼管5内に挿入された浮上用鋼管6と、から構成されており、浮上用鋼管6内に供給される空気の浮力により浮上用鋼管6が昇降するものである。
【0016】
海底地盤E内には、海底面GLを天端とする所定厚みの基礎コンクリート7が打設され、その周囲には根固め石8が敷設されている。
【0017】
この基礎コンクリート7を鉛直に貫通して、海底地盤Eの深部にまで到達する下部鋼管5が港口に所定の間隔で埋設されている。本実施形態では、外径が2mの下部鋼管5を20m間隔で複数設置したが、この値に限定されるものではない。
【0018】
各下部鋼管5の上部側は基礎コンクリート7の表面側に開口され、この各下部鋼管5内に底面が開口した浮上用鋼管6が昇降可能に挿通されている。
【0019】
駆動装置4は、地上に設置されたエアコンプレッサ10と、エアコンプレッサ10から吐出された圧縮空気を下部鋼管5へ送給するための浮上用送気管11と、浮上用鋼管6の上蓋13に形成されて当該上蓋13を貫通する孔14に接続されて無線で開閉可能な電磁弁15と、電磁弁15の開閉及びエアコンプレッサ10の稼動を操作するためのPC等の操作部16と、を備える。
【0020】
エアコンプレッサ10の駆動及び停止は、操作部16から有線で制御信号を送ることにより行われる。また、電磁弁15の開閉は、操作部16から無線で制御信号を送ることにより行われる。
電磁弁15を開放すると浮上用鋼管6内と外部とが連通して空気の出入りが可能となる一方、電磁弁15を閉止すると浮上用鋼管6内と外部との連通は遮断される。
電磁弁15を閉じ、浮上用鋼管6内に圧縮空気を供給することによって浮力を生じさせ、浮上用鋼管6を海面上へ向かって上昇させる。一方、電磁弁15を開き、浮上用鋼管6内の圧縮空気を排出することによって浮力を低下させ、浮上用鋼管6を降下させる。
【0021】
遮断用部材3は、隣接する浮上用鋼管6間に上下複数段となるように架け渡された横係留索18、28、38と、上下に隣接する横係留索18と横係留索28とを連結する複数の縦係留索19と、上下に隣接する横係留索28と横係留索38とを連結する複数の縦係留索29と、を備えている。
【0022】
横係留索18、28、38は、浮上用鋼管6の昇降動作を妨げないようにその両端が隣接する浮上用鋼管6の上端にそれぞれ連結され、中央部18a、28a、38aがそれぞれ下方に撓んだ状態で設置されている。本実施形態では、3本の横係留索18、28、38を用いたが、この数に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態では、最上段の横係留索18の中央部18aは、不審船の運転席の高さである海水面WLの上方、例えば約3mの高さに、また、中段の横係留索28の中央部28aは、不審船が航行する海水面WL上に、そして、最下段の横係留索38の中央部38aは、港内における潜水艇、潜水艦の予想航行深度である水深約5mに設置されている。
なお、横係留索18、28、38の中央部18a、28a、38aの高さは、これらの位置に限定されるものではなく、対象とする船舶の大きさ等により適宜決定される。要は、対象とする船舶が必ず通過する位置に、通過の妨げになるように設置すればよい。
【0024】
縦係留索19は、上下に隣接する横係留索18、28間に、横係留索18の長手方向に所定の間隔で複数設置され、各縦係留索19の両端はそれぞれ横係留索18、28に連結されている。
【0025】
また、縦係留索29は、上下に隣接する横係留索28、38間に、横係留索28の長手方向に所定の間隔で複数設置され、各縦係留索29の両端はそれぞれ横係留索28、38に連結されている。
【0026】
縦係留索19、29は、最も小さい不審船や潜水艇の幅よりも小さい間隔、例えば、2m間隔で設置されている。なお、本実施形態では、2m間隔で設置したが、この値に限定されるものではなく、対象とする船舶の種類等を考慮して設計等により決定される。要するに、対象とする船舶が隣接する縦係留索19間及び隣接する縦係留索29間を通過できないような間隔とすればよい。
【0027】
また、本実施形態では、隣接する縦係留索19間及び隣接する縦係留索29間の間隔を同じ長さとした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、互いに異なる長さとしてもよく、例えば、隣接する縦係留索19間の間隔を漁船の最小幅よりも小さい約2.5mとし、隣接する縦係留索29間の間隔を約2mとしてもよい。
【0028】
また、横係留索18、28、38及び縦係留索19、29は、船舶と接触しても容易に切断されない程度の強度を有する。本実施形態では、横係留索18、28、38及び縦係留索19、29として、直径30mmの金属製チェーン18b、28b、38b、19b、29bの両端にそれぞれ金属製のフック18c、28c、38c、19c、29cを接続したものを用いて、浮上用鋼管6の上端面に設けられた吊り環20にフック18c、28c、38cを連結することにより、隣接する浮上用鋼管6間に横係留索18、28、38を設置し、また、横係留索18、28、38の金属製チェーン18b、28b、38bにフック19c、29cを連結することにより、横係留索18と横係留索28との間に、横係留索28と横係留索38との間にそれぞれ縦係留索19、29を設置した。
【0029】
次に、昇降装置2の昇降方法について説明する。
図4〜図6は、本実施形態に係る港口遮断構造1の昇降状態を示す図である。
【0030】
図4に示すように、平常時は浮上用鋼管6を下部鋼管5の内部に格納して海底面GLと同一レベルとして港外と港内とを完全解放することで開放水域となり、船舶は自由に港内外を出入りできる。
この状態において、横係留索18、28、38及び縦係留索19、29は、海底面GL上に載置されているため、海上を航行する船舶に衝突することはない。
また、電磁弁15は常時閉止した状態で、浮上用鋼管6内と海中との連通は遮断されている。そして、エアコンプレッサ10は停止した状態である。
【0031】
無許可船舶が港に近づいたり、近づく旨の連絡があった場合においては、入港を許可されて付近を航行する許可船舶に対して電光掲示板、船舶無線、港内放送等の各種伝達手段を通じて港口を閉鎖する旨の警告を行い、許可船舶の安全を確認したうえで、操作部16(図3参照)にてエアコンプレッサ10を駆動させて圧縮空気を浮上用鋼管6内に注入する。この状態においては、電磁弁15は閉止した状態で、浮上用鋼管6内と海中との連通は遮断されている。
【0032】
そして、空気注入を続けると、図5に示すように、浮上用鋼管6は浮力を得て上昇する。
【0033】
その後、図6に示すように、浮上用鋼管6が完全に上昇すると、エアコンプレッサ10を停止し、浮上用鋼管6内への給気を停止する。
【0034】
浮上用鋼管6が海上に屹立することにより、横係留索18、28、38及び縦係留索19、29が海上及び海中に網目状に設置されて(図2参照)、無許可船舶の入港を防止する。この状態においては、電磁弁15は閉止した状態で、浮上用鋼管6内と大気との連通は遮断されている。
【0035】
無許可船舶が去ったと判断された場合は、港口を開放する旨の警報を発したうえで、電磁弁15を開放すると、浮上用鋼管6内と大気とが連通する。これにより、浮上用鋼管6内の空気が大気中に排出され、浮上用鋼管6の柱列は浮力を失い、下部鋼管5内に下降を始める。この状態においては、エアコンプレッサ10は停止した状態である。
【0036】
こうして、浮上用鋼管6が完全に下降して下部鋼管5内に格納され、開放水域が形成されて船舶が自由に入出航可能となると、操作部16にて電磁弁15を閉止する。このとき、浮上用鋼管6内と海中との連通は遮断される。
【0037】
以上説明した本実施形態における港口遮断構造1によれば、浮上用鋼管6を上昇させることにより、横係留索18、28及び縦係留索19が海水面WLの上方及び海水面WL上に設置されるので、無許可船舶のうち海上を航行する漁船や小型貨物船クラスの不審船の入港を防止することができる。
また、横係留索38及び縦係留索29が海中に設置されるので、無許可船舶のうち海中を航行する潜水艇・潜水艇等の入港を防止することができる。
【0038】
また、浮上用鋼管6を下降させることにより、横係留索18、28、38及び縦係留索19、29が海底面GL上に載置されて、許可船舶の入港を可能にすることができる。
【0039】
また、下部鋼管5及び浮上用鋼管6を約20m間隔で設置するため、従来の数十ミリ間隔で近接するように設置する場合と比べて安価に構築することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、3本の横係留索18、28、38を設置した場合について説明したが、この数に限定されるものではなく、設計等によって適宜決定される。例えば、最上部に設置される横係留索18を省略し、海水面WLよりもやや高く、かつ、不審船が必ず通過する高さ、例えば、海水面WLの上方約0.5mに横係留索28を設置し、また、潜水艇、潜水艦の航行深度である水深約5mに横係留索38を設置してもよい。ただし、海水面WLの上方又は海水面WL上に少なくとも1本以上、及び海中に少なくとも1本以上を設置することが望ましい。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0042】
図7は、本発明の第二実施形態に係る港口遮断構造21の正面図である。
図7に示すように、港の内外を仕切る港口遮断構造21は、隣接する浮上用鋼管6間に遮断用部材23を備えている。
【0043】
遮断用部材23は、横係留索18と、2本の縦係留索49と、複数の縦係留索19と、複数の梁状係留索24と、を備えている。
【0044】
横係留索18は、第一実施形態と同様に、その中央部18aが海水面WLの上方、例えば、約3mの位置に設置されている。
【0045】
各縦係留索49及び各縦係留索19は、一端が横係留索18に、他端が基礎コンクリート7内に埋設されているシンカー22に連結されている。
【0046】
各縦係留索49はそれぞれ横係留索18の端部付近に連結されている。本実施形態では、縦係留索49として、縦係留索19と同様に、直径30mmの金属製チェーン49bの両端に金属製のフック49cを接続したものを用いて、横係留索18の金属製チェーン18b及びシンカー22に設けられた吊り輪(図示しない)に各フック49cをそれぞれ連結した。
【0047】
各縦係留索19は、2本の縦係留索49間に、第1実施形態と同様に、横係留索18の長手方向に約2m間隔で複数設置されている。
【0048】
梁状係留索24は、縦係留索49間に、当該縦係留索49の長手方向に所定の間隔で複数設置され、両端がそれぞれ縦係留索49に連結されている。
【0049】
梁状係留索24は、船舶と接触しても容易に切断されない程度の強度を有する。本実施形態では、梁状係留索24として、フロート25で横係留索28の外周を覆ったものを用いて、縦係留索49の金属製チェーン49bにフック28cを連結することにより、縦係留索49間に梁状係留索24を設置した。
【0050】
横係留索28の外周をフロート25で覆うことにより梁状係留索24の比重を海水よりもやや大きい約1.1となるように調整した。梁状係留索24は、比重が海水よりも大きいので、浮上用鋼管6が下部鋼管5内に格納されると、梁状係留索24は海底面GL上に載置されて自然に浮上することがない。すなわち、浮上用鋼管6が下部鋼管5内に格納されているときに、梁状係留索24が単独で浮上して航行中の船舶に衝突することはない。一方、外周をフロート25で覆うことにより横係留索28のみを浮上させる場合よりも浮上に必要な空気量を減らすことができる。
【0051】
梁状係留索24は、互いに異なる高さ位置に設置されており、本実施形態では、海水面WL上及び水深約5mに設置した。
【0052】
以上説明した本実施形態における港口遮断構造21によれば、浮上用鋼管6を上昇させることにより、横係留索18、縦係留索19、49の上部及び上段の梁状係留索24が、海水面WLの上方及び海水面WL上に設置されるので、無許可船舶のうち海上を航行する漁船や小型貨物船クラスの不審船の入港を防止することができる。
また、縦係留索19、49の中央部及び下部、並びに下段の梁状係留索24が、海中に設置されるので、無許可船舶のうち海中を航行する潜水艦・潜水艇等の入港を防止することができる。
さらに、縦係留索19、49の下端がシンカー22に連結されているので、海底面GL付近を航行する潜水艇や潜水艦の入港を確実に防止できる。
【0053】
また、浮上用鋼管6を下降させることにより、横係留索18、縦係留索19、49及び梁状係留索24が海底面GL上に載置されて、許可船舶の入港を可能にすることができる。
【0054】
さらに、梁状係留索24は、横係留索28の周囲をフロート25で覆った構成からなるため、外径が大きくなり、横係留索28を単独で用いた場合よりも広い範囲で船舶の入港を防止できる。
【0055】
なお、本実施形態においては、梁状係留索24として、横係留索28をフロート25で覆ったものを用いたが、横係留索28に限定されるものではなく、H型鋼26をフロート25で覆ったものを用いてもよい。かかる場合には、図7中の右側丸枠内に示すように、H型鋼26の両端に金属製のフック27を接続して、縦係留索49の金属製チェーン49bにフック27を連結することにより、縦係留索49間にH型鋼26を有する梁状係留索24を設置する。
【0056】
また、本実施形態においては、縦係留索49間に縦係留索19を設置したが、縦係留索19を設置しなくてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、縦係留索19間にフロート25を備えた梁状係留索24を設置したが、これに限定されるものではなく、梁状係留索24の代わりに横係留索18を設置してもよい。
【0058】
なお、本実施形態においては、浮上用鋼管6間に横係留索18を設置したが、これに限定されるものではなく、横係留索18の代わりに梁状係留索24を設置してもよい。かかる場合には、フロート25の一部を切り欠いて金属製チェーン28を露出させ、縦係留索19、49のフック19c、49cをこの金属製チェーン28に連結できるようにする。
【0059】
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。
【0060】
図8及び図9は、本発明の第三実施形態に係る港口遮断構造31のそれぞれ平面図、正面図である。また、図10は、浮上用鋼管6が下部鋼管5内に格納されているときの側方係留索34の状態を示す図である。
図8〜図10に示すように、港の内外を仕切る港口遮断構造31は、遮断用部材33を備えている。
【0061】
遮断用部材33は、浮上用鋼管6の外周を囲うように設置された側方係留索34と、隣接する側方係留索34間に設置された複数の梁状係留索24と、を備えている。
【0062】
側方係留索34は、形状記憶合金からなる線材を渦巻き状に形成したものからなり、一端34aが浮上用鋼管6の上端の吊り環20に、他端34bが下部鋼管5の上端に接続されている。
【0063】
浮上用鋼管6が上昇すると側方係留索34の一端34aも上昇し、その一端34aを頂点として下方へ向かって螺旋状に径が徐々に大きくなる形状となる。なお、他端34bは下部鋼管5に接続されているため、上昇しない。
その後、浮上用鋼管6を降下させて下部鋼管5内に格納すると、遮断用部材3は、形状記憶された渦巻き状になって海底面GL上に載置される。
【0064】
浮上用鋼管6が下部鋼管5内に格納されているとき、側方係留索34は海底面GL上に渦を巻いた状態で載置されているため、その高さは概ね形状記憶合金からなる線材の1本分の高さとなる。したがって、浮上用鋼管6を下部鋼管5内に格納した状態で側方係留索34が船舶の往来を妨げることはない。
【0065】
各梁状係留索24は、隣接する側方係留索34間に、浮上用鋼管6の長手方向に所定の間隔で設置され、梁状係留索24の両端は側方係留索34にそれぞれ連結されている。
本実施形態では、各梁状係留索24をそれぞれ海水面WLの上方約3m、海水面WL上、水深約5mの位置に設置した。
【0066】
以上説明した本実施形態における港口遮断構造31によれば、浮上用鋼管6を上昇させることにより、側方係留索34の上部、上段の梁状係留索24及び中段の梁状係留索24が海水面WLの上方及び海水面WL上に設置されるので、無許可船舶のうち海上を航行する漁船や小型貨物船クラスの不審船の入港を防止することができる。
また、側方係留索34の中央部及び下部、並びに下段の梁状係留索24が海中に設置されるので、無許可船舶のうち海中を航行する潜水艦・潜水艇等の入港を防止することができる。
【0067】
また、浮上用鋼管6を下降させることにより、側方係留索34及び梁状係留索24が海底面GL付近に載置されて、許可船舶の入港を可能にすることができる。
【0068】
さらに、側方係留索34として形状記憶合金からなる線材を使用しているので、浮上用鋼管6を下部鋼管5内に格納すると側方係留索34は渦巻き状の形状に戻り、隣接する側方係留索34と絡むことがない。
【0069】
なお、本実施形態では、側方係留索34の他端34bを下部鋼管5に接続した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第二実施形態のように、基礎コンクリート7内にシンカー22を埋設し、このシンカー22に接続してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、側方係留索34間にフロート25を備えた梁状係留索24を設置したが、これに限定されるものではなく、フロート25の無い横係留索18、28、38等を設置してもよい。
【0071】
なお、上述した各実施形態においては、横係留索18、縦係留索19として金属製チェーン18b、19bを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、金属製のワイヤーロープでもよい。要するに、海水を通過させることが可能で、かつ、船舶と接触しても容易に切断されない程度の強度を有する材質のものであればよい。
【0072】
なお、上述した各実施形態においては、昇降装置2として、浮力により浮上用鋼管6を昇降させる機構のものを用いたが、これに限定されるものではなく、浮上用鋼管6内に設置された袋体内に流体を注入してその袋体を膨らませることにより浮上用鋼管6を昇降させる機構としたり、浮上用鋼管6内に設置されたシリンダやばね等により浮上用鋼管6を昇降させる機構としてもよい。
【0073】
なお、上述した各実施形態においては、浮上用鋼管6の上部を海水面WL上に突出させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、浮上用鋼管6は海水面WL近くまで上昇可能であれば海上に突出しなくてもよい。かかる場合には、浮上用鋼管6間の海中に少なくとも横係留索18、28、38、縦係留索19、29、49、梁状係留索24、側方係留索34の何れかが存在していればよい。
【0074】
なお、上述した各実施形態において、浮上用鋼管6の着底時に、各係留索18、28、38、19、29、49、24、34の積み重なり厚によって航路水深を侵害するおそれがある場合は、海底面GL付近を浚渫する等の適切な措置を適宜、実施する。
【0075】
なお、第二実施形態及び第三実施形態で用いるフロート25を、第一実施形態の横係留索18、28、38及び縦係留索19、29に適用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 港口遮断構造
2 昇降装置
3 遮断用部材
4 駆動装置
5 下部鋼管
6 浮上用鋼管
7 基礎コンクリート
8 根固め石
10 エアコンプレッサ
11 浮上用送気管
13 上蓋
14 孔
15 電磁弁
16 操作部
18 横係留索
18a 中央部
18b 金属製チェーン
18c フック
19 縦係留索
19b 金属製チェーン
19c フック
20 吊り環
21 港口遮断構造
22 シンカー
23 遮断用部材
24 梁状係留索
25 フロート
26 H型鋼
27 フック
28 横係留索
28a 中央部
28b 金属製チェーン
28c フック
29 縦係留索
29b 金属製チェーン
29c フック
31 港口遮断構造
33 遮断用部材
34 側方係留索
38 横係留索
38a 中央部
38b 金属製チェーン
38c フック
49 縦係留索
49b 金属製チェーン
49c フック
51 可動式防波堤
52 給気装置
56 浮上用鋼管
56d 浮力タンク
56e 空気室
57 排気装置
E 海底地盤
GL 海底面
WL 海水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
港の入口の海中に所定の間隔で配列され、昇降可能な複数の昇降装置と、
隣接する前記昇降装置間に架設されて、海水の通過は許容するが船舶の通過を阻止する遮断用部材と、
前記昇降装置を昇降させるための駆動装置と、
を備えることを特徴とする港口遮断構造。
【請求項2】
前記遮断用部材は、
隣接する前記昇降装置に両端がそれぞれ連結された横係留索と、
前記横係留索に吊り下げられた縦係留索と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の港口遮断構造。
【請求項3】
前記遮断用部材は、前記昇降装置の外周を螺旋状に囲うように設けられた側方係留索を備えることを特徴とする請求項1に記載の港口遮断構造。
【請求項4】
前記昇降装置を設置する前記所定の間隔は、2m以上であることを特徴とする請求項1〜3のうち、何れか一項に記載の港口遮断構造。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−97419(P2012−97419A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244203(P2010−244203)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【Fターム(参考)】