説明

湿分分離エレメントおよび湿分分離器

【課題】湿分分離効率を向上すること。
【解決手段】複数のセパレータベーン4が上下のカバーの間に並べて配置され、セパレータベーン4の隙間4aに通過される蒸気の湿分を分離する湿分分離エレメント1において、セパレータベーン4と上カバー2との間の空間5に、空間5での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材(メッシュ部材)6を備える。この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材(メッシュ部材)6により空間5での蒸気の流動を抑制することで湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気から湿分を分離する湿分分離エレメントおよび湿分分離器に関し、特に、原子力発電プラントなどに適用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子力発電プラントでは、加圧水型原子炉にて、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する。加圧水型原子炉は、高温高圧の一次冷却水の熱を、蒸気発生器を介して二次冷却水に伝え、二次冷却水で水蒸気を発生させる。また、蒸気発生器は、多数の細い伝熱管の内側を一次冷却水が流れ、外側を流れる二次冷却水に熱を伝えて水蒸気を生成し、この水蒸気をタービン発電機に送給する。
【0003】
タービン発電機は、高圧タービンおよび低圧タービンを有する蒸気タービンと、蒸気タービンの出力により発電する発電機とを有している。この場合、高圧タービンと低圧タービンとの間には、一般的に、湿分分離器が設けられている。湿分分離器は、高圧タービンから排出される低圧蒸気に含まれる湿分を分離すると共に、低圧蒸気を再加熱して過熱蒸気として低圧タービンに供給することで、この低圧タービンの出口湿り度を低減させてエロージョンを防止すると共に、タービンプラントの熱効率を向上させる。
【0004】
この湿分分離器では、高圧タービンから導かれた低圧蒸気は、横置長手円筒状に形成された胴体の内部に導入されて左右二方向に分流され、胴体の長手方向に沿って胴体内の左右に配置された円筒状のマニホールドに導入される。マニホールドに導入された蒸気は、マニホールドの全長にわたって複数の開口部から吹き出され、胴体内の左右に配置された湿分分離エレメントを通過して湿分が分離されつつ胴体内の中央で合流される。合流された蒸気は、加熱管群にて加熱されて胴体の外部に排出され低圧タービンに供給される。このような、湿分分離器は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−130609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した湿分分離器の湿分分離エレメントは、胴体の長手方向に沿って配置された上カバーと下カバーとの間に、複数の波板状のセパレータベーンが、立てた形態で胴体の長手方向に複数並べて配置されている。すなわち、湿分分離エレメントは、複数のセパレータベーンの隙間に通過する蒸気が波状部分に衝突することで、湿分を分離する。
【0007】
上記構成の湿分分離エレメントは、胴体を組み立てるときに上カバーおよび下カバーを胴体内に設置し、胴体を組み立てた後、胴体に形成されたマンホールから胴体内にセパレータベーンを作業者が持ち運んで上カバーと下カバーとの間に挿入している。このため、セパレータベーンを上カバーと下カバーとの間に容易に挿入できるように、セパレータベーンの上下寸法に対し、上カバーと下カバーとの間の寸法が大きく形成されている。
【0008】
しかし、セパレータベーンの上下寸法に対し、上カバーと下カバーとの間の内寸法が大きく形成されていることにより、組立後の湿分分離エレメントでは、上カバーとセパレータベーンの上端との間に空間が形成される。このため、セパレータベーンの隙間に通過する蒸気が、セパレータベーンのない上記空間に至り、湿分が十分に分離されないまま湿分分離エレメントを通過することになる。この結果、湿分分離効率が低下してしまう。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するものであり、湿分分離効率を向上することのできる湿分分離エレメント、および湿分分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の湿分分離エレメントでは、複数のセパレータベーンが上下のカバーの間に並べて配置され、前記セパレータベーンの隙間に通過される蒸気の湿分を分離する湿分分離エレメントにおいて、前記セパレータベーンと前記カバーとの間の空間に、前記空間での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材を備えたことを特徴とする。
【0011】
この湿分分離エレメントによれば、流動抑制部材により空間での蒸気の流動を抑制して湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上できる。
【0012】
また、本発明の湿分分離エレメントでは、前記流動抑制部材は、線条を編んだメッシュ部材からなり、前記メッシュ部材を前記空間に充填したことを特徴とする。
【0013】
この湿分分離エレメントによれば、セパレータベーンの隙間に通過する蒸気が、セパレータベーンのない空間に至っても、メッシュ部材により湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上できる。
【0014】
また、本発明の湿分分離エレメントでは、前記流動抑制部材は、薄膜が積層された薄膜層からなり、前記薄膜層を前記空間に充填したことを特徴とする。
【0015】
この湿分分離エレメントによれば、セパレータベーンの隙間に通過する蒸気が、セパレータベーンのない空間に至っても、薄膜層により湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上できる。
【0016】
また、本発明の湿分分離エレメントでは、前記流動抑制部材は、前記セパレータベーンの端縁を折り曲げた折曲片からなり、前記折曲片を前記セパレータベーン相互で重ねたことを特徴とする。
【0017】
この湿分分離エレメントによれば、折曲片によりセパレータベーンのない空間への蒸気の流動を抑え、セパレータベーンの隙間にて蒸気に含まれる湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上できる。
【0018】
また、本発明の湿分分離エレメントでは、前記流動抑制部材は、前記空間にて各前記セパレータベーンの並設方向に渡って設けられた板材と、前記板材を前記セパレータベーンに当接させる支持部材とからなることを特徴とする。
【0019】
この湿分分離エレメントによれば、板材によりセパレータベーンのない空間への蒸気の流動を抑え、セパレータベーンの隙間にて蒸気に含まれる湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上できる。しかも、支持部材により、板材のセパレータベーンへの当接が支持されるので、空間と隙間との隔離が維持できる。
【0020】
上述の目的を達成するために、本発明の湿分分離器では、湿分を含む蒸気を導入しつつ湿分を分離し、湿分が分離された蒸気を排出する湿分分離器において、湿分を分離する構成として、上記のいずれか一つに記載の湿分分離エレメントが適用されたことを特徴とする。
【0021】
この湿分分離器によれば、湿分分離エレメントでの湿分の分離効率が向上されることで、湿分分離性能を向上でき、湿分が分離された利用性の高い蒸気を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、流動抑制部材により空間での蒸気の流動を抑制して湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る湿分分離器が適用される発電プラントの概略構成図である。
【図2】図2は、実施の形態1の湿分分離器の概略図である。
【図3】図3は、実施の形態1の湿分分離器の縦断面図である。
【図4】図4は、実施の形態1の湿分分離器の内部構造をあらわす切欠斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態1の湿分分離エレメントの部分斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る湿分分離エレメントの部分斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る湿分分離エレメントの部分側断面図である。
【図8】図8は、実施の形態3に係る湿分分離エレメントの他の形態の部分側断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態4に係る湿分分離エレメントの部分側断面図である。
【図10】図10は、図9におけるA−A断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態4に係る湿分分離エレメントの他の形態の部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0025】
[実施の形態1]
本実施の形態の湿分分離器は、発電プラントに適用される。この発電プラントは、例えば、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)や、これを改良した改良型加圧水型原子炉(APWR:Advanced Pressurized Water Reactor)に適用することができ、その他の発電プラントにも適用可能である。
【0026】
本実施の形態の発電プラントにおいては、図1に示すように、蒸気発生器11が、蒸気タービン12に冷却水配管13を介して連結されている。蒸気タービン12は、高圧タービン14および低圧タービン15を有すると共に、発電機16が接続されている。高圧タービン14と低圧タービン15との間には、湿分分離器17が設けられている。高圧タービン14と湿分分離器17とは低温再熱管18により連結され、湿分分離器17と低圧タービン15とは高温再熱管19により連結されている。また、蒸気タービン12は、復水器20を有している。復水器20は、冷却水配管21を介して蒸気発生器11に連結されている。この冷却水配管21には、復水ポンプ22が設けられている。
【0027】
この発電プラントでは、蒸気発生器11にて、高圧高温の軽水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管13を通して蒸気タービン12(高圧タービン14から低圧タービン15)に送られ、この蒸気により蒸気タービン12を駆動して発電機16により発電を行う。この場合、蒸気発生器11からの蒸気は、高圧タービン14を駆動した後、湿分分離器17で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン15を駆動する。そして、蒸気タービン12を駆動した蒸気は、復水器20で冷却された後、冷却水配管21を通して蒸気発生器11に戻される。
【0028】
上述した湿分分離器17は、図2〜図4に示すように、横置き長手形状の中空円筒をなす胴体40を有している。胴体40は、長手方向の一端部が閉塞され、他端部に、湿分を含む蒸気(低温再熱蒸気)を導入する蒸気入口41が形成されている。さらに、胴体40は、上部に、湿分が分離されて加熱された蒸気(高温再熱蒸気)を排出する蒸気出口42が形成され、下部に、蒸気から分離された湿分(ドレン)を排出するドレン出口43が形成されている。そして、図1に示すように、蒸気入口41は、低温再熱管18を介して高圧タービン14に連結され、蒸気出口42は、高温再熱管19を介して低圧タービン15に連結され、ドレン出口43は、図示しないドレン配管を介してドレンタンクに連結されている。
【0029】
図2〜図4に戻り、胴体40は、その長手方向に沿って加熱管群44が設けられている。加熱管群44は、胴体40の長手方向の一端部側の外部に位置する蒸気室45と、蒸気室45から胴体40内に挿通されたU字形状をなす複数の加熱管46とから構成されている。複数の加熱管46は、胴体40の内部に固定された一対の隔壁47、および隔壁47の間に固定された複数の支持壁48により支持されている。蒸気室45は、内部が上下に分割され、複数の加熱管46のU字形状の一端が連結される上側の入口管台45aに、蒸気発生器11の冷却水配管13から分岐された配管が連結されている。一方、複数の加熱管46のU字形状の他端が連結される下側の出口管台45bには、ドレンタンクに延出されるドレン配管が連結されている。
【0030】
また、胴体40は、その長手方向に沿って、加熱管群44の下方の両側に左右一対のマニホールド49が設けられている。マニホールド49は、複数の支持壁48を貫通し、先端部が、胴体40の長手方向の一端部側の隔壁47に固定されて閉塞している。また、マニホールド49は、基端部が、胴体40の長手方向の一端部側の隔壁47に貫通して固定されると共に、蒸気入口41に連通している。さらに、マニホールド49は、胴体40内へ蒸気を吹き出す複数の吹出口50が、胴体40の長手方向にわたって形成されている。
【0031】
胴体40内の下部には、水平に配置された第一支持板51が固定されている。第一支持板51の両側には、左右一対の湿分分離エレメント1が各マニホールド49に対応して設けられている。湿分分離エレメント1は、各マニホールド49の吹出口50に対向して配置され、蒸気が通過することで湿分を分離するものである。湿分分離エレメント1の底側であって、第一支持板51の下方には、ドレン通路52が区画されている。このドレン通路52の下方に上述したドレン出口43が設けられている。各湿分分離エレメント1の上部には、左右一対の第二支持板53が立設されている。第二支持板53は、加熱管群44の両側に沿って湾曲するように上方に延出され、上端が胴体40に固定される一方、下端が湿分分離エレメント1に連結されている。
【0032】
すなわち、胴体40の内部空間は、主に第一支持板51により、各マニホールド49の吹出口50から吹出された蒸気が湿分分離エレメント1を通過して蒸気出口42に流動する蒸気流動空間Sと、湿分分離エレメント1により分離された湿分をドレン出口43に導くドレン通路52とに区画されている。また、蒸気流動空間Sは、湿分分離エレメント1を境とし、第二支持板53により、吹出口50から吹出された蒸気が湿分分離エレメント1に流動するまで蒸気供給空間S1と、湿分分離エレメント1により湿分が分離された蒸気を蒸気出口42に流動する蒸気排出空間S2とに区画されている。
【0033】
湿分分離エレメント1は、図2および図4に示すように、一対の隔壁47の間で胴体40の長手方向に沿って長手状に形成されている。また、湿分分離エレメント1は、各隔壁47に渡って固定された、図5に示す上下のカバー2,3の間に、波板状の複数のセパレータベーン4が長手方向に所定の隙間4aを空けて並設されている。なお、図において、セパレータベーン4は、便宜上、波板ではなく平板として示してある。
【0034】
上カバー2は、下方に向けて開放する断面コ字形に形成されている。この上カバー2は、第二支持板53が連結されている。下カバー3は、上方に向けて開放する断面コ字形に形成されている。この下カバー3は、第一支持板51が連結されている。また、下カバー3には、ドレン通路52に連通するドレン開口3aが形成されている。
【0035】
セパレータベーン4は、上下カバー2,3における断面コ字形の開放側の間に、立てた形態で上下カバー2,3の長手方向に挿入されることで、上下カバー2,3の間に配置される。そこで、セパレータベーン4の挿入を容易に行えるように、セパレータベーン4の上下寸法H1よりも、上下カバー2,3がなす内寸法H2が大きく形成されている。このため、上下カバー2,3にセパレータベーン4が挿入された湿分分離エレメント1では、上カバー2とセパレータベーン4の上端との間に空間5が形成される。
【0036】
この空間5には、流動抑制部材6が配置されている。実施の形態1の流動抑制部材6は、線条を編んだメッシュ部材からなる。そして、このメッシュ部材が空間5に充填されている。メッシュとなる線条は、耐熱性を有するワイヤが好ましく、その耐熱温度は230℃以上であることが好ましい。
【0037】
ここで、実施の形態1の湿分分離器17による湿分分離の作用を説明する。図1に示すように、蒸気発生器11で生成された加熱蒸気は、冷却水配管13を通して蒸気タービン12を構成する高圧タービン14に送られる一方、湿分分離器17に送られる。
【0038】
高圧タービン14に送られ、高圧タービン14を駆動した低温再熱蒸気は、低温再熱管18を通して湿分分離器17に送られる。湿分分離器17に送られた低温再熱蒸気は、蒸気入口41から胴体40内に導入されると共に、各マニホールド49内に供給され、吹出口50から胴体40の蒸気供給空間S1へ吹出される。蒸気供給空間S1内に吹出された蒸気は、胴体40の内壁面に沿いつつ各湿分分離エレメント1に案内される。すると、湿分分離エレメント1にて、蒸気が波板をなす複数のセパレータベーン4の隙間4aを通過しつつセパレータベーン4に衝突することで、蒸気に含まれる湿分がドレンとなってドレン開口3aからドレン通路52に至り一時的に貯留される。ドレン通路52のドレンは、ドレン出口43から胴体40の外部に排出される。
【0039】
一方、蒸気発生器11で生成された加熱蒸気は、蒸気室45の入口管台45aから加熱管群44に供給され、胴体40内に配設された複数の加熱管46を通って蒸気室45に戻され、出口管台45bからドレンとして排出される。他方、湿分分離エレメント1にて、セパレータベーン4の隙間4aを通過しつつ湿分が分離された蒸気は、蒸気排出空間S2を通って上昇し、複数の加熱管46の間を通過する際、各加熱管46内を通る加熱蒸気により加熱され、高温再熱蒸気となって蒸気出口42から排出される。
【0040】
上記湿分分離器17の湿分分離の作用において、湿分分離エレメント1を通過する蒸気は、セパレータベーン4の隙間4aを通過して蒸気排出空間S2に至るが、その一部は、セパレータベーン4の隙間4aを通過する過程で、上カバー2とセパレータベーン4の上端との間の空間5を経てから蒸気排出空間S2に至る。本実施の形態1では、空間5に流動抑制部材6としてのメッシュ部材が配置されている。このため、空間5を経た蒸気がメッシュ部材のメッシュに衝突することで流動が抑制され、蒸気に含まれる湿分が分離される。
【0041】
このように、実施の形態1の湿分分離エレメント1では、セパレータベーン4と上カバー2との間の空間5に、空間5での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材(メッシュ部材)6を備えている。
【0042】
この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材(メッシュ部材)6により空間5での蒸気の流動を抑制することで湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上することが可能になる。特に、この湿分分離エレメント1によれば、セパレータベーン4の隙間4aに通過する蒸気が、セパレータベーン4のない空間5に至っても、流動抑制部材(メッシュ部材)6により湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上することが可能になる。
【0043】
また、実施の形態1の湿分分離器17では、上記流動抑制部材(メッシュ部材)6を有した湿分分離エレメント1が適用されている。
【0044】
この湿分分離器17によれば、湿分分離エレメント1での湿分の分離効率が向上されることで、湿分分離性能を向上することが可能になる。そして、この湿分分離器17によれば、例えば、発電プラントにおける低圧タービン15にて、湿分が分離された利用性の高い蒸気を得ることが可能になる。
【0045】
[実施の形態2]
実施の形態2の湿分分離エレメントおよび湿分分離器は、上述した実施の形態1の湿分分離エレメントに対し、流動抑制部材の構成が異なり、その他は同じ構成である。従って、以下に説明する実施の形態2では、流動抑制部材のみ説明し、実施の形態1と同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図6に示すように、上下カバー2,3にセパレータベーン4が挿入された湿分分離エレメント1において、上カバー2とセパレータベーン4の上端との間に形成された空間5には、流動抑制部材7が配置されている。実施の形態2の流動抑制部材7は、薄膜が積層された薄膜層からなる。そして、この薄膜層が空間5に充填されている。薄膜層をなす薄膜は、耐熱性を有するステンレス箔などが好ましく、その耐熱温度は230℃以上であることが好ましい。
【0047】
この湿分分離エレメント1を通過する蒸気は、セパレータベーン4の隙間4aを通過して蒸気排出空間S2に至るが、その一部は、セパレータベーン4の隙間4aを通過する過程で、上カバー2とセパレータベーン4の上端との間の空間5を経てから蒸気排出空間S2に至る。本実施の形態2では、空間5に流動抑制部材7としての薄膜層が配置されている。このため、空間5を経た蒸気が薄膜層に衝突することで流動が抑制され、蒸気に含まれる湿分が分離される。
【0048】
このように、実施の形態2の湿分分離エレメント1では、セパレータベーン4と上カバー2との間の空間5に、空間5での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材(薄膜層)7を備えている。
【0049】
この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材(薄膜層)7により空間5での蒸気の流動を抑制することで湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上することが可能になる。特に、この湿分分離エレメント1によれば、セパレータベーン4の隙間4aに通過する蒸気が、セパレータベーン4のない空間5に至っても、流動抑制部材(薄膜層)7により湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上することが可能になる。
【0050】
また、実施の形態2の湿分分離器17では、上記流動抑制部材(薄膜層)7を有した湿分分離エレメント1が適用されている。
【0051】
この湿分分離器17によれば、湿分分離エレメント1での湿分の分離効率が向上されることで、湿分分離性能を向上することが可能になる。そして、この湿分分離器17によれば、例えば、発電プラントにおける低圧タービン15にて、湿分が分離された利用性の高い蒸気を得ることが可能になる。
【0052】
[実施の形態3]
実施の形態3の湿分分離エレメントおよび湿分分離器は、上述した実施の形態1の湿分分離エレメントに対し、流動抑制部材の構成が異なり、その他は同じ構成である。従って、以下に説明する実施の形態3では、流動抑制部材のみ説明し、実施の形態1と同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図7に示すように、上下カバー2,3にセパレータベーン4が挿入された湿分分離エレメント1において、上カバー2とセパレータベーン4の上端との間に形成された空間5には、流動抑制部材8が配置されている。実施の形態3の流動抑制部材8は、セパレータベーン4の上端縁を折り曲げた折曲片からなる。そして、この折曲片がセパレータベーン4の相互で重ねられることで、上カバー2のコ字形状の開放が閉塞されて、空間5と隙間4aとが隔離される。この流動抑制部材8としての折曲片は、相互に重ねたとき、セパレータベーン4が持ち上がってセパレータベーン4の下端と上カバー2との間に空間が生じないように構成されている。実施の形態3での折曲片は、斜め上方に傾けてあることで、セパレータベーン4の下端と上カバー2との間での空間の発生を防止している。このため、折曲片を有する各セパレータベーン4を同一形状で構成することが可能である。その他、図には明示しないが、折曲片をクランク形状(ほぼZ字形状)に折り曲げることで、セパレータベーン4の下端と上カバー2との間での空間の発生を防止してもよく、折曲片を有する各セパレータベーン4を同一形状で構成できる。なお、折曲片の先端の向きは、各セパレータベーン4で同じくすれば、セパレータベーン4の上下カバー2,3への挿入方向に向いていても、挿入方向の反対方向に向いていてもよい。
【0054】
この湿分分離エレメント1を通過する蒸気は、セパレータベーン4の隙間4aを通過する過程で、空間5と隙間4aとを隔離する流動抑制部材8としての折曲片に衝突することで、空間5への流動が抑制されるため、セパレータベーン4の隙間4aから逸脱することなく蒸気に含まれる湿分が分離される。
【0055】
このように、実施の形態3の湿分分離エレメント1では、セパレータベーン4と上カバー2との間の空間5に、空間5での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材(折曲片)8を備えている。
【0056】
この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材(折曲片)8により空間5での蒸気の流動を抑制することで湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上することが可能になる。特に、この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材(折曲片)8によりセパレータベーン4のない空間5への蒸気の流動を抑え、セパレータベーン4の隙間4aにて蒸気に含まれる湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上することが可能になる。
【0057】
また、実施の形態3の湿分分離器17では、上記流動抑制部材(折曲片)8を有した湿分分離エレメント1が適用されている。
【0058】
この湿分分離器17によれば、湿分分離エレメント1での湿分の分離効率が向上されることで、湿分分離性能を向上することが可能になる。そして、この湿分分離器17によれば、例えば、発電プラントにおける低圧タービン15にて、湿分が分離された利用性の高い蒸気を得ることが可能になる。
【0059】
なお、図8に示すように、流動抑制部材(折曲片)8を有した湿分分離エレメント1において、セパレータベーン4と上カバー2との間の空間5に、上述した実施の形態1の流動抑制部材(メッシュ部材)6や、上述した実施の形態2の流動抑制部材(薄膜層)7を備えてもよい。かかる構成によれば、セパレータベーン4の隙間4aに通過する蒸気が、セパレータベーン4のない空間5に至った場合、流動抑制部材(メッシュ部材)6や流動抑制部材(薄膜層)7により湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上することが可能になる。
【0060】
[実施の形態4]
実施の形態4の湿分分離エレメントおよび湿分分離器は、上述した実施の形態1の湿分分離エレメントに対し、流動抑制部材の構成が異なり、その他は同じ構成である。従って、以下に説明する実施の形態4では、流動抑制部材のみ説明し、実施の形態1と同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図9および図10に示すように、上下カバー2,3にセパレータベーン4が挿入された湿分分離エレメント1において、上カバー2とセパレータベーン4の上端との間に形成された空間5には、流動抑制部材9が配置されている。実施の形態4の流動抑制部材9は、空間5にて各セパレータベーン4の並設方向に渡って設けられた板材9aと、板材9aをセパレータベーン4に当接させる支持部材9bとからなる。板材9aは、上カバー2のコ字形状の開放を閉塞し、空間5と隙間4aとを隔離するものである。支持部材9bは、板材9aの両側端縁(または一方の側端縁)がセパレータベーン4から離隔するように折り曲げて形成されたもので、板材9aがセパレータベーン4から離れようとする外力が付与された場合に、上カバー2に当接することで、板材9aのセパレータベーン4への当接を支持するものである。流動抑制部材9は、耐熱性を有するステンレスなどで形成されていることが好ましく、その耐熱温度は230℃以上であることが好ましい。
【0062】
この湿分分離エレメント1を通過する蒸気は、セパレータベーン4の隙間4aを通過する過程で、空間5と隙間4aとを隔離する流動抑制部材9の板材9aに衝突することで、空間5への流動が抑制されるため、セパレータベーン4の隙間4aから逸脱することなく蒸気に含まれる湿分が分離される。また、セパレータベーン4の隙間4aでの蒸気の流動により、板材9aがセパレータベーン4から離れようとする外力が付与されても、支持部材9bで板材9aのセパレータベーン4への当接が支持されるので、空間5と隙間4aとの隔離が維持される。
【0063】
このように、実施の形態4の湿分分離エレメント1では、セパレータベーン4と上カバー2との間の空間5に、空間5での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材9(板材9aおよび支持部材9b)を備えている。
【0064】
この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材9(板材9aおよび支持部材9b)により空間5での蒸気の流動を抑制することで湿分の分離を図るため、湿分分離効率を向上することが可能になる。特に、この湿分分離エレメント1によれば、流動抑制部材9の板材9aによりセパレータベーン4のない空間5への蒸気の流動を抑え、セパレータベーン4の隙間4aにて蒸気に含まれる湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上することが可能になる。しかも、支持部材9bにより、板材9aのセパレータベーン4への当接が支持されるので、空間5と隙間4aとの隔離が維持することが可能になる。
【0065】
また、実施の形態4の湿分分離器17では、上記流動抑制部材9を有した湿分分離エレメント1が適用されている。
【0066】
この湿分分離器17によれば、湿分分離エレメント1での湿分の分離効率が向上されることで、湿分分離性能を向上することが可能になる。そして、この湿分分離器17によれば、例えば、発電プラントにおける低圧タービン15にて、湿分が分離された利用性の高い蒸気を得ることが可能になる。
【0067】
なお、図11に示すように、流動抑制部材9は、支持部材9bとして、板材9aと上カバー2との間の空間5に、上述した実施の形態1の流動抑制部材(メッシュ部材)6や、上述した実施の形態2の流動抑制部材(薄膜層)7を備えてもよい。かかる構成によれば、セパレータベーン4の隙間4aでの蒸気の流動により、板材9aがセパレータベーン4から離れようとする外力が付与されても、支持部材9bで板材9aのセパレータベーン4への当接が支持されるので、空間5と隙間4aとの隔離が維持される。しかも、セパレータベーン4の隙間4aに通過する蒸気が、セパレータベーン4のない空間5に至った場合、流動抑制部材(メッシュ部材)6や流動抑制部材(薄膜層)7により湿分を分離できるため、湿分分離効率を向上することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明に係る湿分分離エレメントおよび湿分分離器は、湿分分離効率を向上することに適している。
【符号の説明】
【0069】
1 湿分分離エレメント
2 上カバー
3 下カバー
3a ドレン開口
4 セパレータベーン
4a 隙間
5 空間
6 流動抑制部材(メッシュ部材)
7 流動抑制部材(薄膜層)
8 流動抑制部材(折曲片)
9 流動抑制部材
9a 板材
9b 支持部材
40 胴体
41 蒸気入口
42 蒸気出口
43 ドレン出口
44 加熱管群
45 蒸気室
45a 入口管台
45b 出口管台
46 加熱管
47 隔壁
48 支持壁
49 マニホールド
50 吹出口
51 第一支持板
52 ドレン通路
53 第二支持板
S 蒸気流動空間
S1 蒸気供給空間
S2 蒸気排出空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセパレータベーンが上下のカバーの間に並べて配置され、前記セパレータベーンの隙間に通過される蒸気の湿分を分離する湿分分離エレメントにおいて、
前記セパレータベーンと前記カバーとの間の空間に、前記空間での蒸気の流動を抑制する流動抑制部材を備えたことを特徴とする湿分分離エレメント。
【請求項2】
前記流動抑制部材は、線条を編んだメッシュ部材からなり、前記メッシュ部材を前記空間に充填したことを特徴とする請求項1に記載の湿分分離エレメント。
【請求項3】
前記流動抑制部材は、薄膜が積層された薄膜層からなり、前記薄膜層を前記空間に充填したことを特徴とする請求項1に記載の湿分分離エレメント。
【請求項4】
前記流動抑制部材は、前記セパレータベーンの端縁を折り曲げた折曲片からなり、前記折曲片を前記セパレータベーン相互で重ねたことを特徴とする請求項1に記載の湿分分離エレメント。
【請求項5】
前記流動抑制部材は、前記空間にて各前記セパレータベーンの並設方向に渡って設けられた板材と、前記板材を前記セパレータベーンに当接させる支持部材とからなることを特徴とする請求項1に記載の湿分分離エレメント。
【請求項6】
湿分を含む蒸気を導入しつつ湿分を分離し、湿分が分離された蒸気を排出する湿分分離器において、
湿分を分離する構成として、請求項1〜5のいずれか一つに記載の湿分分離エレメントが適用されたことを特徴とする湿分分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−266100(P2010−266100A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116769(P2009−116769)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】