説明

湿分分離装置

【課題】波板の高さを高くしても、波板で捕集した湿分による液膜の厚さが厚くなることを抑制し、波板で捕集した湿分の再飛散を抑制することで湿分分離の性能低下を抑制することができる湿分分離装置を提供する。
【解決手段】波板43は、平坦部74の下流側に位置する傾斜部72の上流側端部及び当該平坦部74を覆うように形成されて湿り蒸気流S1に向かって開口部を有する捕集板49を備えている。この捕集板49の基端部は、傾斜部72に固定されている。この捕集板49と波板43本体との間に、ポケット部47及びドレンダクト部48が形成されている。湿り蒸気S1に含まれる湿分は液滴となって、捕集板49の入口開口からポケット部47及びドレンダクト部48に入り、重力によりそれぞれポケット部47内及びドレンダクト部48内を流下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所等の発電プラントや燃料ガス(Blast Furnace Gas:BFG)焚きガスタービンコンバインドサイクルシステム(GTCC)に適用される、蒸気から湿分を分離するための湿分分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の発電所で用いられている湿分分離装置は、一般に蒸気発生器で発生する蒸気から湿分を除去するため、あるいは高圧タービンより排出される湿り蒸気から、湿分を除去することによって、低圧タービン側に乾いた蒸気を供給するために用いられている。これによってタービン翼のエロージョンを抑制すると共にプラント効率が向上する。
【0003】
このような湿分分離装置の1つとして、シェブロンベーン型の湿分分離装置が知られている。シェブロンベーン型の湿分分離装置は、例えば特許文献1などに開示されている。
【0004】
図23は、従来のシェブロンベーン型の湿分分離装置を示す斜視図である。
図23において、湿分分離装置60では、上部枠61と下部枠62との間に多数の波板63が装架されている。波板63は交互に山部と谷部とが並んだジグザグ形状の断面を有し、各平坦部74にポケット部76が設けられている。そして湿り蒸気S1が矢印方向から湿分分離装置60に流入し、湿り蒸気S1に含まれる湿分が波板63の表面に付着する。そして波板63の表面に沿って湿り蒸気S1の流れ方向に流れる湿分は、ポケット部76に受け止められ、ポケット部76の内側に滞留する。
【0005】
そして、前記滞留した湿分は、波板63の表面に沿って下方に流下し、下方に設けられた溝65に流れ落ちる。また湿り蒸気S1の流れに乗って飛んでくる湿分も波板63に衝突し、ポケット部76に同様の作用で捕集されて湿り蒸気S1から分離される。
湿分分離装置60で湿分が除去された湿り蒸気S1は、乾き蒸気S2となり、別途設けられた加熱管群などの加熱手段(不図示)で加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−311180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、湿分分離装置が使用される原子力プラントの大型化が求められている。湿分分離装置が使用される原子力プラントの大型化がなされると、湿分分離装置に導入される蒸気量が増加し、湿分分離装置を通過する蒸気の流速が上がり、湿分分離装置で湿分を充分に分離することができなくなる。
【0008】
そこで、前記原子力プラントの大型化に伴って、湿分分離装置を通過する蒸気の流速が従来と比べて上がらないように湿分分離装置を大型化する、即ち図23における波板63の高さを高くすることが必要となる。
【0009】
一方、波板63を高くすることで、従来と比較して波板1枚あたりの湿分の捕集負荷が増加するため、ポケット部76に沿って下方に流下してできる湿分による液膜の厚さが従来より厚くなり、湿分が再飛散しやすくなり湿分分離性能が低下すると考えられる。
【0010】
図24は、従来の湿分分離装置における湿分分離装置に導入する蒸気の流速と、湿分分離装置出口における蒸気の湿り度の関係を示したグラフである。図24において横軸は湿分分離装置に導入する蒸気の流速、縦軸は湿分分離装置出口における蒸気の湿り度を示している。また、図24において実線で示した短尺ベーンとは、従来の湿分分離装置を大型化する前に使用されている波板の高さにおける湿分分離装置を意味しており、図24において破線で示した長尺ベーンとは、湿分分離装置を大型化した場合の波板の高さにおける湿分分離装置を意味している。
【0011】
図24に示したように、短尺ベーン、長尺ベーンともに湿分分離装置に導入する蒸気の流速が一定の限界値(それぞれs1、s2)を越えると、急速に湿分分離装置出口における蒸気の湿り度が上昇即ち湿分分離性能が低下する。この限界値(s1、s2)は波板による湿分の分離の能力の限界の流速を意味している。
【0012】
一方、前記限界値(s1、s2)よりも小さな流速においても、湿分分離装置出口における蒸気の湿り度のゆるやかな上昇が起こる。これは、ポケットに捕集された湿分が再飛散することによる湿分分離性能の悪化を示し、長尺ベーンにおいて特にその傾向が大きくなる。
【0013】
従って、本発明は従来技術の問題点に鑑み、波板の高さを高くしても、波板で捕集した湿分による液膜の厚さが厚くなることを抑制し、波板で捕集した湿分の再飛散を抑制することで湿分分離の性能低下を抑制することができる湿分分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明においては、湿り蒸気から湿分を分離する湿分分離装置であって、
山部と谷部とが交互に並んだジグザグ形状を有し、所定の間隔を隔てて配設されて前記湿り蒸気の蒸気流路を形成する複数の波板と、
前記波板に固定され、前記蒸気流路内における蒸気流の上流側に向かって延びて前記波板の山部を覆う捕集板とを備え、
前記捕集板と前記波板との間に設けられ、前記蒸気流の上流側に開口するポケット部が形成され、
前記ポケット部に連通するとともに上下方向に延びるドレンダクト部が、前記ポケット部の前記蒸気流の下流側に設けられたことを特徴とする。
【0015】
これにより、ポケット部内に捕集された湿分は、蒸気流れによってドレンダクト部に流入し、該ドレンダクト部内を流下するため、ポケット部内を流下する湿分量を低減して液膜の厚さを抑制することで、ポケット部で捕集した湿分が再飛散することを抑制できる。また、ドレンダクト部は、ポケット部よりも蒸気流下流側に設けられているため、ドレンダクト部内を流下する湿分がポケット部に流入する蒸気流れによって流路へ逆流しにくくなることで、ドレンダクト部内の湿分の再飛散を抑制できる。従って、波板の高さを高くしても湿分の再飛散による湿分分離の性能低下を抑制することができる。
【0016】
また、前記捕集板は、前記波板の山部よりも前記蒸気流の下流側において前記波板に固定されており、
前記捕集板と前記波板との間に形成される空間のうち、前記蒸気流の上流側の領域が前記ポケット部であり、前記蒸気流の下流側の領域が前記ドレンダクト部であることとしてもよい。
【0017】
このように、捕集板が波板の山部よりも蒸気流の下流側において波板に固定されているので、捕集板の端部と波板との間にドレンダクト部が形成される。これによって、ドレンダクト部は山部の陰になる位置に設けられることとなるため、ドレンダクト部内を流下する湿分は、流路へ逆流しにくくなる。このため、ドレンダクト部内の湿分の再飛散を効果的に抑制できる。
【0018】
また、前記波板の山部から谷部までの長さをLとし、前記山部から前記捕集板の固定位置までの長さをDとしたとき、0≦D/L≦0.5の関係が成立することとしてもよい。
【0019】
山部から捕集板の固定位置までの長さDが長くなると、ドレンダクト部内に大量の蒸気流れが流入することとなり、捕集板が波板から剥がれてしまうおそれがあるが、本発明のように、山部から捕集板の固定位置までの長さDと波板の山部から谷部までの長さLとの関係が0≦D/L≦0.5を満たすように捕集板を取り付けてドレンダクト部内に流入する蒸気流れを抑制することで、捕集板が波板から剥がれることを防止することができる。
【0020】
また、前記捕集板と前記波板との間に設けられ、前記ポケット部に捕集した湿分を前記ドレンダクト部に導くドレン板をさらに備え、
前記ドレン板は、水平に設けられ、又は前記蒸気流の下流側に向かって下方に傾斜するように設けられることとしてもよい。
【0021】
このように、ポケット部内にドレン板を設けるため、ドレン板の上方でポケット部に捕集された湿分はポケット部内を流下し、すべてドレン板上を介してドレンダクト部に流入する。従って、ポケット部に捕捉された湿分はドレン板より下方のポケット部内を流下しなくなり、ポケット部内を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することができる。
さらに、ドレン板を水平に設けたり、又は蒸気流下流側に向けて下方に傾斜するように設けることで、ドレン板の湿分が逆流してポケット部から流路へ流出することを防止できる。
【0022】
また、前記ドレン板は、前記ポケット部の高さ方向に複数設けられていてもよい。
このように、ポケット部内に複数のドレン板を設けているため、波板を高くした場合でも、ポケット部内での液膜の厚さを抑制することで、湿分の再飛散を防止できる。
【0023】
また、前記捕集板の外表面に取り付けられ、上下方向に延びるダクト板をさらに備え、
前記捕集板と前記波板との間に形成される空間が前記ポケット部であり、前記ダクト板と前記捕集板との間に形成される空間が前記ドレンダクト部であり、
前記ドレンダクト部は、前記捕集板を貫通するドレン穴を介して前記ポケット部に連通していることとしてもよい。
【0024】
このように、ポケット部とドレンダクト部との間にドレン穴を有する捕集板が存在するため、ドレン板の上方でポケット部内に捕集された湿分はポケット部を流下し、すべてドレン板上及びドレン穴を介してドレンダクト部に流入することで、ポケット部内に捕捉された湿分はドレン板より下方のポケット部内を流下しなくなり、ポケット部を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することができる。
また、ドレンダクト部内に流入した湿分は、捕集板が設けられているため、再飛散しないので、湿分分離性能を向上させることができる。
【0025】
また、前記捕集板と前記波板との間に設けられ、前記ポケット部に捕集した湿分を前記ドレン穴を介して前記ドレンダクト部に導くドレン板をさらに備え、
前記ドレン板は、水平に設けられ、又は前記蒸気流の下流側に向かって下方に傾斜するように設けられることとしてもよい。
【0026】
このように、ポケット部内にドレン板を設けるため、ドレン板の上方でポケット部に捕集された湿分はポケット部内を流下し、すべてドレン板上を介してドレンダクト部に流入する。従って、ポケット部に捕捉された湿分はドレン板より下方のポケット部内を流下しなくなり、ポケット部内を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することができる。
さらに、ドレン板を水平に設けたり、又は蒸気流下流側に向けて下方に傾斜するように設けることで、ドレン板の湿分が逆流してポケット部から流路へ流出することを防止できる。
【0027】
また、前記ドレン板は、前記ポケット部の高さ方向に複数設けられており、
前記ドレン穴は、各ドレン板の上面を前記ドレンダクト部に連通させるように複数設けられていることとしてもよい。
【0028】
このように、ポケット部内に複数のドレン板を設けているため、波板を高くした場合でも、ポケット部内での液膜の厚さを抑制することで、湿分の再飛散を防止できる。
【0029】
また、前記複数のドレン板は、前記ポケット部を高さ方向に均等に分割するように設けられていることとしてもよい。
【0030】
このように、ポケット部を高さ方向に均等に分割するように複数のドレン板が設けられているため、各ドレン板間で捕集される湿分量を略均一にすることができ、高さ位置によって湿分分離の性能にムラがでることを防止できる。
【0031】
また、前記ポケット部に設けられ、前記ポケット部から前記蒸気流路に向かう湿分の逆流を防止する逆流防止部材をさらに備えることとしてもよい。
【0032】
このように、逆流防止部材をポケット部に設けることで、ポケット部及びドレンダクト部に捕集された湿分が流路へ逆流することを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、波板の高さを高くしても、波板で捕集した湿分による液膜の厚さが厚くなることを抑制し、波板で捕集した湿分の再飛散を抑制することで湿分分離の性能低下を抑制することができる湿分分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例における湿分分離加熱器の軸心部分を一部断面で表した側面図である。
【図2】図1中のA―A線断面矢視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る波板の一部を示す上面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る波板の一部を示す側面図である。
【図5】本実施形態に係る波板を示す斜視図である。
【図6】本実施形態に係る波板の他の実施例を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る波板を示す斜視図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る波板を示す上面図である。
【図9】図8のB−B矢視図である。
【図10】本発明の第三実施形態における波板を示す斜視図である。
【図11】本発明の第三実施形態における波板を示す上面図である。
【図12】本実施形態に係る逆流防止部材の他の実施例を示す図である。
【図13】本実施形態に係る逆流防止部材の他の実施例を示す図である。
【図14】本発明の第四実施形態における波板を示す斜視図である。
【図15】本発明の第四実施形態における波板を示す上面図である。
【図16】図15のC−C矢視図である。
【図17】本実施形態に係る仕切壁の他の実施例を示す図である。
【図18】本発明の第五実施形態における波板を示す上面図である。
【図19】従来の波板を示す上面図である。
【図20】従来例における波板間の一部の流速分布状態を示すコンター図である。
【図21】実施例における波板間の一部の流速分布状態を示すコンター図である。
【図22】本発明の湿分分離装置が適用される湿式電気集塵器の構成図である。
【図23】従来のシェブロンベーン型の湿分分離装置を示す斜視図である。
【図24】従来の湿分分離装置における湿分分離装置に導入する蒸気の流速と、湿分分離装置出口における蒸気の湿り度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。但し、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0036】
各実施形態に係る湿分分離装置が適用される湿分分離加熱器について図1、図2に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る湿分分離加熱器の軸心部分を一部断面で表した側面図、図2は図1中のA―A線断面矢視図である。
【0037】
図1及び図2において、湿分分離加熱器1は、左右の鏡板2と中央の円筒形状の胴板4とからなる。胴板4と鏡板2との間には仕切板3が設けられている。
図1に示すように、胴板4内の上部を除いた軸方向中央部には、蒸気受入室6が形成され、蒸気受入室6には蒸気受入口8が形成されている。
【0038】
図2に示すように、前記胴板4内の軸方向両端寄りの径方向外側寄り且つ上部を除いた上方寄りには、蒸気受入室6と連通するマニホールド室10が形成されている。マニホールド室10の下部は、分配板12が配置されている。また、マニホールド室10の下方には、湿分分離室14が形成されている。湿分分離室14の内部には、本発明に係るシェブロンベーン型の湿分分離装置16が設けられている。
【0039】
図1に示すように、胴板4内の軸方向両端寄りの径方向内側寄り、即ちマニホールド室10及び湿分分離室14で包囲された領域には、湿分分離室14と連通する加熱室36が形成されている。加熱室36内の下方寄りには、第一段管群18が胴板4の軸方向端部側へ管端部を向けるようにして配設されている。加熱室36内の第一段管群の上方には、第二段管群20が胴板4の軸方向端部側へ管端部を向けるようにして配設されている。
【0040】
胴板4内の軸方向両端側の径方向内側寄りの下方寄りには、内部を分配室22aと回収室22bとに仕切られた第一段加熱器蒸気室22が設けられている。また胴板4内の軸方向両端側の径方向内側寄りの上方寄りには、内部を分配室24aと回収室24bとに仕切られた第二段加熱器蒸気室24が設けられている。
各加熱器蒸気室22、24の分配室22a、24aには、加熱用の蒸気23、25が供給され、回収室22b、24bには、前記蒸気23、25が凝縮ドレンとなって排出するように構成されている。
【0041】
分配室22aには、第一段管群18の一方の管端部が接続しており、回収室22bには、第一段管群18の他方の管端部が接続している。同様に、分配室24aには、第二段管群20の一方の管端部が接続しており、回収室24bには、第二段管群20の他方の管端部がそれぞれ接続している。
【0042】
また、図1、図2に示すように、胴板4内の上部には、加熱室36と連通する回収マニホールド室26が胴板4の軸方向にわたって連続して形成されている。胴板4の上部には、回収マニホールド室26と連通して蒸気を外部の低圧蒸気タービン(不図示)へ送出する蒸気送出口28が複数設けられている。
【0043】
このような本実施形態に係る湿分分離加熱器1の動作について説明する。
高圧蒸気タービン等の上流機器から排出された蒸気Sが蒸気受入口8から胴板4内の蒸気受入室6内へ送給されると、該蒸気Sは、マニホールド室10内へ流入する。
マニホールド室10内へ流入した蒸気Sは、分配板12を介して湿分分離室14内の湿分分離装置16を流通することにより湿分を分離された後、加熱室36内へ流入する。
【0044】
加熱室36内へ流入した前記蒸気Sは、第一段管群18と接触して、第一段管群18内を流通する加熱用の蒸気23により加熱されてから、第二段管群20と接触して、第二段管群20内を流通する加熱用の前記蒸気25によりさらに加熱された後、回収マニホールド室26内へ流入する。回収マニホールド室26内へ流入した蒸気Sは、回収マニホールド室26内を流通して、蒸気送出口28から送出され、下流機器である低圧蒸気タービンなどへ送給される。
【0045】
以上のような構成、動作の湿分分離加熱器1に用いられる本発明に係るシェブロンベーン型の湿分分離装置16について説明する。
【0046】
図3及び図4は、それぞれ本発明の第一実施形態に係る波板の一部を示す上面図及び側面図である。また、図5は、本実施形態に係る波板の斜視図である。
【0047】
図3〜図5に示すように、本実施形態の波板63は、傾斜部72及び平面状に形成された平坦部74を有する波板63本体と、該平坦部74を覆うように形成されて湿り蒸気流S1に向かって開口部を有している湿分捕集用の突出部材73とを備えている。
【0048】
突出部材73は、平坦部74の下流側の傾斜部72から上流側へ向かって当該平坦部74を覆うように突出する捕集板76を有している。捕集板76の基端は、例えば、溶接等により傾斜部72に固定されている。そして、捕集板76は、基端から先端側へ向かって湾曲している。この捕集板76により、捕集板76と平坦部74の間にポケット部77が形成されている。ポケット部77の奥行及びポケット部77の幅は、捕集板76の湿り蒸気流れの入口開口部の幅よりも、大きく形成されている。このポケット部77には、波板63の表面に沿って流れる湿り蒸気S1が流入する。
【0049】
また、突出部材73は、突出部材73の湿り蒸気S1の流れ方向下流側で捕集板76に外接し、上下方向に延びるダクト板78を有している。ダクト板78は、円弧状の断面を有しており、該円弧状の両端がそれぞれ捕集板76に固定されている。ダクト板78により、捕集板76とダクト板78の間にドレンダクト部81が形成されている。ここで、ドレンダクト部81とポケット部77とは捕集板76にて仕切られている。
【0050】
そして、突出部材73のポケット部77内には、ポケット部77内を上下方向に仕切るドレン板80が設けられている。ドレン板80は、湿り蒸気S1の流れ方向下流側に向けて下向き傾斜している。
捕集板76には、ドレン板80の上面とドレンダクト部81の内部とを連通するドレン穴82が、ドレン板80とドレンダクト部81の交点周辺のドレン板80の上方に設けられている。つまり、ドレン穴82はドレン板80の傾斜最下部上面とドレンダクト部81内部を連通している。
【0051】
上述した構成の波板63において、湿り蒸気流S1が複数の波板63の間を図3〜図5中に示した矢印a方向に流れる場合、湿り蒸気S1に含まれる湿分は波板63の傾斜部72の表面に当り、該表面に液滴となって付着する。該液滴は湿り蒸気流S1の流れに押されて、傾斜部72の表面に沿って矢印a方向に進み、平坦部74に到達する。液滴は、平坦部74で湿り蒸気流S1に押されて捕集板76の入口開口から捕集板76内のポケット部77に入り、液膜を形成する。一方、湿り蒸気流S1は捕集板76の外側を進み下流側に流れる。従って、湿分のみを捕集板76内にスムーズに入れることができる。
【0052】
ポケット部77内に液膜として捕集された湿分は、重力によりポケット部77内を流下する。ドレン板80よりも下方でポケット部77内に捕集された湿分はそのままポケット部77内を最下部まで流下し、下方に設けられた溝65(図23参照)に流れ落ちて回収される。
また、ドレン板80よりも上方でポケット部77内に捕集された湿分は、ポケット部77内を流下してドレン板80上に到達すると、ドレン板80によってその流れ方向が変えられ、ドレン板80の傾斜と湿り蒸気S1に押されることによって、ドレン板80上を傾斜方向下方に向かって流れる。ドレン板80上を傾斜下方に向かって流れる湿分は、ドレン穴82に達するとドレン穴82よりダクト板78内のドレンダクト部81に入り、ドレンダクト部81内を最下部まで流下し、下方に設けられた溝65に流れ落ちて回収される。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、ドレン板80よりも上方でポケット部77内に捕集された湿分は、ドレン板80上を通過してドレンダクト部81内に流入し、このドレンダクト部81内を流下するため、ドレン板80より下方でポケット部77内を流下しない。よって、ポケット部77内の下方を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することができ、波板63で捕集した湿分が再飛散することを抑制することができる。また、ポケット部77とドレンダクト部81とは捕集板76にて仕切られているため、ドレンダクト部81内に流入した湿分が再飛散することを抑制できる。従って、波板63の高さを高くしても湿分の再飛散による湿分分離の性能低下を抑制することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、1つのポケット部77内にドレン板80、ドレン穴82を1つだけ設けているが、図6に示すように、ダクト板78の高さに応じて上下方向に複数のドレン板80を設けてもよい。これにより、さらに波板63を高くした場合でもポケット部77内での液膜の厚さを抑制することができる。なお、その場合、複数の各ドレン板80の上面とドレンダクト部81内とを連通するようにドレン板80と同数のドレン穴82を設ける必要がある。
【0055】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0056】
図7及び図8は、それぞれ本発明の第二実施形態に係る波板を示す斜視図及び上面図である。また、図9は、図8のB−B矢視図である。
図7〜図9に示すように、本実施形態の波板43は、平坦部74の下流側に位置する傾斜部72の上流側端部及び当該平坦部74を覆うように形成されて湿り蒸気流S1に向かって開口部を有する捕集板49を備えている。この捕集板49の基端部は、傾斜部72に固定されている。また、捕集板49は、基端部から先端側へ向かって複数の屈曲部を有して、全体として波板43本体の形状に沿うように形成されている。具体的には、基端部から先端側へ向かって波板43本体から離れる向きに屈曲し、所定の距離だけ波板43本体から離れたら傾斜部72に沿うように屈曲し、該屈曲箇所よりも上流側で平坦部74に沿うように屈曲し、さらに上流側で傾斜部72に沿うように屈曲している。
【0057】
この捕集板49により、波板43の表面に沿って流れる湿り蒸気S1が流入するポケット部47と、ポケット部47の湿り蒸気流下流側に隣接し、傾斜部72の中央部付近まで延設されているドレンダクト部48とが形成されている。ここで、平坦部74と下流側の傾斜部72との境界位置75からドレンダクト部48の湿り蒸気流下流側端48a(即ち、捕集板49の固定位置)までの長さDと、傾斜部72の長さLとの関係は次式(1)で表される。
D=L/2 ・・・式(1)
なお、本実施形態では、境界位置75からドレンダクト部48の湿り蒸気流下流側端48aまでの長さDをちょうど傾斜部72の長さLの半分としたが、これに限定されるものではなく、境界位置75からドレンダクト部48の湿り蒸気流下流側端48aまでの長さDと、傾斜部72の長さLとが0≦D/L≦0.5の関係を満たすようにドレンダクト部48を設ければよい。
【0058】
そして、捕集板49のポケット部47内には、ポケット部47内を上下方向に等間隔で仕切る複数のドレン板80が設けられている。各ドレン板80は、湿り蒸気S1の流れ方向下流側に向けて下向き傾斜している。なお、本実施形態では、ポケット部47内を上下方向に等間隔で仕切るようにドレン板80を設けているが、これに限定されるものでは無い。
【0059】
上述した構成の波板43において、湿り蒸気流S1が複数の波板43の間を図7及び図8中に示した矢印a方向に流れると、第一実施形態と同様に、湿り蒸気S1に含まれる湿分は液滴となって、捕集板49の入口開口からポケット部47内に入り、液膜を形成する。
そして、ポケット部47内の湿分の一部は、ポケット部47内に流入する湿り蒸気S1に押されてドレンダクト部48に入り、液膜を形成する。一方、流路を通過する湿り蒸気流S1の大半は捕集板49の外側を進み下流側に流れる。
【0060】
ドレンダクト部48内及びポケット部47内に液膜として捕集された湿分は、重力によりそれぞれドレンダクト部48内及びポケット部47内を流下する。ドレンダクト部48内の湿分は、湿り蒸気流S1に押されることによって、下流側奥深くに向かって移動しながら流下する。そして、下方に設けられた溝65に流れ落ちて回収される。
また、ポケット部47内を流下する湿分は、各ドレン板80上に到達すると、ドレン板80上を傾斜方向下方に向かって流れる。そして、ドレンダクト部48内に入り、ドレンダクト部48内を最下部まで流下し、溝65に流れ落ちて回収される。
【0061】
上述したように、本実施形態によれば、ポケット部47内の各ドレン板80よりも上方で捕集された湿分は、各ドレン板80上を通過してドレンダクト部48内を流下するため、ポケット部47内を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することで、波板43にて捕集した湿分が再飛散することを抑制することができる。また、ドレンダクト部48内を流下する湿分がドレンダクト部48内の奥深くを流下することで、湿分が再飛散することを抑制することができる。従って、波板43の高さを高くしても湿分の再飛散による湿分分離の性能低下を抑制することができる。
また、捕集板49は、1枚の捕集板49から構成されているため、波板43本体への取付けの手間がかからず、かつ、安価に製作できる。
【0062】
なお、本実施形態では、1つのポケット部47内に複数のドレン板80を設けているが、ドレン板80を1つだけ設けてもよい。なお、その場合、ドレン板80を波板43の高さの中央付近に設けることが望ましい。
【0063】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
【0064】
図10及び図11は、それぞれ本発明の第三実施形態における波板を示す斜視図及び上面図である。
図10及び図11に示すように、本実施形態の波板54は、第二実施形態と同様に、捕集板49を備え、当該捕集板49と波板54本体との間には、ポケット部47及びドレンダクト部48が形成されている。また、ポケット部47内には複数のドレン板80が設けられている。
【0065】
本実施形態に係るポケット部47内の平坦部74には、上下方向に複数の逆流防止部材52が設けられている。逆流防止部材52は、略U字状の断面を有し、該U字の開口部がドレンダクト部48側を向くように平坦部74に固定されている。そして、逆流防止部材52は、最上段のドレン板80の上方、隣接するドレン板80間及び最下段のドレン板80の下方にそれぞれ設けられている。
【0066】
上述した構成の波板54において、ポケット部47及びドレンダクト部48内に捕集された湿分のうち、ドレンダクト部48内の湿分が重力によって流下する際に、捕集板49と波板54本体との間に流入する湿り蒸気S1によってドレンダクト部48内を流下する湿分がポケット部47に逆流すると、ポケット部47内に逆流防止部材52が存在しているため、湿分はこの逆流防止部材52の凹部52a内に入る。そして、逆流防止部材52の凹部52aに捕集される。凹部52aに捕集された湿分は、重力により凹部52a内を流下して各ドレン板80上に到達すると、各ドレン板80上を傾斜下方に向かって流れてドレンダクト部48内に入り、ドレンダクト部48内を最下部まで流下し、溝65に流れ落ちて回収される。
【0067】
上述したように、本実施形態によれば、第二実施形態の効果に加えて、ドレンダクト部48内を流下する湿分が流路に逆流することを防止できるため、波板54にて捕集した湿分が再飛散することを抑制することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、略U字状の断面を有している逆流防止部材52を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、図12に示すように略L字状の断面を有する逆流防止部材や、図13に示すように、略V字状の断面を有する逆流防止部材を用いてもよい。要は、ドレンダクト部48内を流下する湿分が、捕集板49の外側に流出することを防止できる形状であればよい。
【0069】
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
【0070】
図14及び図15は、それぞれ本発明の第四実施形態における波板を示す斜視図及び上面図である。また、図16は、図15のC−C矢視図である。
図14〜図16に示すように、本実施形態の波板53は、第二及び第三実施形態と同様に、捕集板49を備え、捕集板49と波板53本体との間には、ポケット部47及びドレンダクト部48が形成されている。また、ポケット部47内には複数のドレン板80が設けられている。
【0071】
本実施形態に係る捕集板49と波板53本体との間には、ポケット部47とドレンダクト部48とを仕切る仕切壁59が設けられている。仕切壁59は、波板53と同じ高さを有し、波板53の上下方向に沿って設けられている。
仕切壁59の側面にはドレン板80の端部が接続されている。ドレン板80の上方で、仕切壁59にドレン板80の上面とドレンダクト部48の内部とを連通するドレン穴82が設けられている。
【0072】
上述した構成の波板53において、ポケット部47内に捕集された湿分は、重力によりポケット部47内を流下する。最下段に設けられたドレン板80よりも下方でポケット部47内に捕集された湿分はそのまま最下部まで流下し、下方に設けられた溝65に流れ落ちて回収される。
また、各ドレン板80よりも上方でポケット部47内に捕集された湿分は、ポケット部47内を流下して各ドレン板80上に到達すると、第一実施形態と同様に、各ドレン板80上を傾斜方向下方に向かって流れて、ドレン穴82に達するとドレン穴82よりドレンダクト部48内に入り、ドレンダクト部48内を最下部まで流下し、下方に設けられた溝65に流れ落ちて回収される。
【0073】
上述したように、本実施形態によれば、各ドレン板80よりも上方でポケット部47内に捕集された湿分は、ドレン板80上を通過してドレンダクト部48内に流入してドレンダクト部48内を流下するため、各ドレン板80より下方でポケット部47内を流下しない。よって、ポケット部47の下方を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することができ、波板53で捕集した湿分が再飛散することを抑制することができる。
また、ポケット部47とドレンダクト部48とは仕切壁59にて仕切られているため、ドレンダクト部48内に流入した湿分がポケット部47を介して流路に逆流し、再飛散することを抑制することができる。従って、波板53の高さを高くしても湿分の再飛散による湿分分離の性能低下を抑制することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、波板53と同じ高さの仕切壁59を設けているが、図17に示すように、波板53の高さよりも短い仕切壁59を設けてもよい。なお、その場合、仕切壁59の高さに応じて、ドレン板80の数及び取付け位置を適宜、調整する。
【0075】
次に、本発明の第五実施形態について説明する。
【0076】
図18は、本発明の第五実施形態における波板を示す上面図である。
図18に示すように、本実施形態の波板103は、平坦部74を覆うように形成されて湿り蒸気流S1に向かって開口部を有する捕集板109と、捕集板109に外接するダクト板101と、ドレン板80とを備えている。
【0077】
捕集板109は、平坦部74の下流側の傾斜部72から上流側へ向かって平坦部74を覆うように設けられている。また、捕集板109は、その基端部が傾斜部72に固定されている。そして、捕集板109は、基端部から先端側へ向かうにしたがって所定の箇所で平坦部74に沿うように屈曲し、さらに上流側で該平坦部74の上流側に位置する傾斜部72に沿うように屈曲している。この捕集板109により、波板103の表面に沿って流れる湿り蒸気S1が流入するポケット部107が形成されている。
【0078】
また、ダクト板101は、湿り蒸気S1の流れ方向下流側で捕集板109に外接し、上下方向に延びるように設けられている。このダクト板101は、その基端部が捕集板109の下流側に固定されている。そして、ダクト板101は、基端部から先端側へ向かうにしたがって所定の箇所で波板103から離れる方向へ屈曲し、当該屈曲箇所よりも上流側で傾斜部72に沿うように屈曲し、更に上流側で平坦部74に沿うように屈曲し、先端部は捕集板109に固定されている。また、ダクト板101の高さは、波板103の高さの半分である。
【0079】
このダクト板101により、該ダクト板101と捕集板109との間にドレンダクト部108が形成されている。ドレンダクト部108は、第二実施形態と同様に、平坦部74と傾斜部72との境界位置75からドレンダクト部108の湿り蒸気流下流側端108aまでの長さDと、傾斜部72の長さLとの関係は上記式(1)を満たしている。
そして、ドレンダクト部108とポケット部107とは捕集板109にて仕切られている。この捕集板109にはドレン穴82が設けられており、ポケット部107内に設けられたドレン板80の傾斜最下部上面とドレンダクト部108内部とはドレン穴82にて連通している。
【0080】
本実施形態によれば、上述した各実施形態と同様に、ドレン板80よりも上方でポケット部107内に捕集された湿分は、ドレン板80上を通過してドレンダクト部108内を流下するため、ドレン板80より下方でポケット部107内を流下しない。よって、ポケット部107の下方を流下する湿分量を抑制して液膜の厚さを抑制することができ、波板103で捕集した湿分が再飛散することを抑制することができる。また、ポケット部107とドレンダクト部108とは捕集板109にて仕切られているため、ドレンダクト部108内に流入した湿分が再飛散することを抑制することができる。従って、波板103の高さを高くしても湿分の再飛散による湿分分離の性能低下を抑制することができる。
【0081】
本実施形態では、捕集板109及びダクト板101を有している波板103を用いた場合(以下、実施例とする)と、従来の突出部材を有している波板を用いた場合(以下、従来例という)について、CFD(Computational Fluid Dynamins)解析により、流路内を流れる湿り蒸気S1の流速について解析を行った。
【0082】
ここで、従来の波板について説明する。図19は、従来の波板を示す上面図である。図19に示すように、従来の波板111の捕集板110は、基端部が傾斜部72に固定され、先端部側が湿り蒸気流S1の上流側に向かって突出している。また、捕集板110は、その先端が波板111本体に近づくように屈曲している。この捕集板110により、該捕集板110と波板111本体の間にポケット部112が形成されている。
上述した構成からなる波板111に沿って湿り蒸気S1が流れると、ポケット部112内に湿分が捕集されて、ポケット部112内を流下する。
そして、上述したように、実施例の波板103及び従来例の波板111を用いた場合の湿り蒸気S1の流速についてそれぞれCFD解析を行った。
【0083】
図20及び図21は、それぞれ従来例及び実施例における波板間の一部の流速分布状態を示すコンター図である。
図20に示すように、従来例の場合、捕集板110に沿って流速の小さい区域、すなわち流れの剥離域(図中点線枠内部分)が流路内に生じていることがわかる。この流れの剥離域は、捕集板110が設けられた位置の下流域まで広がっている。
【0084】
一方、図21に示すように、実施例の場合、湿り蒸気S1は、従来例の場合と同程度の流速で流路内を流れていることがわかる。また、ドレンダクト部108が上述した流れの剥離域内に設けられており、ドレンダクト部108を設けたことによる流速の低下等による流れの損失はほとんどないことが確認された。
従って、上述した第1〜第4実施形態においても、本実施形態のドレンダクト部108と同様に、ドレンダクト部48、81を設けたことによる流れの損失はほとんどないと考えられる。
【0085】
上述した各実施形態では、ドレン板80を、湿り蒸気S1の流れ方向下流側に向けて下向きに傾斜した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、水平に設けてもよい。ドレン板80を水平に設けても、ドレン板80上に到達した湿分は、湿り蒸気S1に押されることによって下流側に流れることができる。
【0086】
上述した各実施形態では、湿分分離加熱器に適用されるシェブロンベーン型の湿分分離装置16について説明したが、本発明はその他のシェブロンベーン型の湿分分離装置にも適用することが可能である。
【0087】
本発明が適用されるその他の一例について説明する。
図22は、本発明の湿分分離装置が適用される湿式電気集塵器の構成図である。このような湿式電気集塵器は例えば燃料ガス焚ガスタービンコンバインドサイクルシステムにおいて、その燃料ガスの湿分を除塵するため等に使用される。
【0088】
図22に示した湿式電気集塵器90においては、燃料ガスは図中の矢印の方向から入口ダクト91に入り多気孔格子窓92を通って放電電極93、集塵電極94を通る過程で集塵され出口ダクト95に至る。
【0089】
出口ダクト95に取り付けられたシェブロンベーン型の湿分分離装置96でミストは除去される。
【0090】
以上のような湿式電気集塵器90に適用される湿分分離装置96にも、図3〜図18、図23を用いて説明した湿分分離装置16と同様のものを適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、波板の高さを高くしても、波板で捕集した湿分による液膜の厚さが厚くなることを抑制し、波板で捕集した湿分の再飛散を抑制することで湿分分離の性能低下を抑制することができるシェブロンベーン型の湿分分離装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 湿分分離加熱器
16 湿分分離装置
36 加熱室
43 波板
47 ポケット部
48 ドレンダクト部
48a 湿り蒸気流下流側端
49 捕集板
52 逆流防止部材
52a 凹部
53 波板
54 波板
59 仕切壁
60 湿分分離装置
61 上部枠
62 下部枠
63 波板
65 溝
72 傾斜部
73 突出部材
74 平坦部
75 境界位置
76 捕集板
77 ポケット部
78 ダクト板
80 ドレン板
81 ドレンダクト部
82 ドレン穴
90 湿式電気集塵器
96 湿分分離装置
101 ダクト板
103 波板
107 ポケット部
108 ドレンダクト部
108a 湿り蒸気流下流側端
109 捕集板
110 従来例の捕集板
111 従来例の波板
112 従来例のポケット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿り蒸気から湿分を分離する湿分分離装置であって、
山部と谷部とが交互に並んだジグザグ形状を有し、所定の間隔を隔てて配設されて前記湿り蒸気の蒸気流路を形成する複数の波板と、
前記波板に固定され、前記蒸気流路内における蒸気流の上流側に向かって延びて前記波板の山部を覆う捕集板とを備え、
前記捕集板と前記波板との間に設けられ、前記蒸気流の上流側に開口するポケット部が形成され、
前記ポケット部に連通するとともに上下方向に延びるドレンダクト部が、前記ポケット部の前記蒸気流の下流側に設けられたことを特徴とする湿分分離装置。
【請求項2】
前記捕集板は、前記波板の山部よりも前記蒸気流の下流側において前記波板に固定されており、
前記捕集板と前記波板との間に形成される空間のうち、前記蒸気流の上流側の領域が前記ポケット部であり、前記蒸気流の下流側の領域が前記ドレンダクト部であることを特徴とする請求項1に記載の湿分分離装置。
【請求項3】
前記波板の山部から谷部までの長さをLとし、前記山部から前記捕集板の固定位置までの長さをDとしたとき、0≦D/L≦0.5の関係が成立することを特徴とする請求項2に記載の湿分分離装置。
【請求項4】
前記捕集板と前記波板との間に設けられ、前記ポケット部に捕集した湿分を前記ドレンダクト部に導くドレン板をさらに備え、
前記ドレン板は、水平に設けられ、又は前記蒸気流の下流側に向かって下方に傾斜するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の湿分分離装置。
【請求項5】
前記ドレン板は、前記ポケット部の高さ方向に複数設けられていることを特徴とする請求項4に記載の湿分分離装置。
【請求項6】
前記捕集板の外表面に取り付けられ、上下方向に延びるダクト板をさらに備え、
前記捕集板と前記波板との間に形成される空間が前記ポケット部であり、前記ダクト板と前記捕集板との間に形成される空間が前記ドレンダクト部であり、
前記ドレンダクト部は、前記捕集板を貫通するドレン穴を介して前記ポケット部に連通していることを特徴とする請求項1に記載の湿分分離装置。
【請求項7】
前記捕集板と前記波板との間に設けられ、前記ポケット部に捕集した湿分を前記ドレン穴を介して前記ドレンダクト部に導くドレン板をさらに備え、
前記ドレン板は、水平に設けられ、又は前記蒸気流の下流側に向かって下方に傾斜するように設けられていることを特徴とする請求項6に記載の湿分分離装置。
【請求項8】
前記ドレン板は、前記ポケット部の高さ方向に複数設けられており、
前記ドレン穴は、各ドレン板の上面を前記ドレンダクト部に連通させるように複数設けられていることを特徴とする請求項7に記載の湿分分離装置。
【請求項9】
前記複数のドレン板は、前記ポケット部を高さ方向に均等に分割するように設けられていることを特徴とする請求項5又は8に記載の湿分分離装置。
【請求項10】
前記ポケット部に設けられ、前記ポケット部から前記蒸気流路に向かう湿分の逆流を防止する逆流防止部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の湿分分離装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−125757(P2012−125757A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164557(P2011−164557)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】