説明

湿度センサ装置及びその自己診断方法

【課題】 自己診断を行うことができる湿度センサ装置及びその自己診断方法を提供すること。
【解決手段】 周囲の湿度に応じて容量が変化するセンサ部100と、センサ部100の検出信号を処理して湿度に応じた信号を出力する信号処理部300とを備える湿度センサ装置500であって、センサ部100を加熱する加熱部200と、少なくとも自己診断を行う期間において、センサ部100の容量が所定の湿度における値となるように、加熱部200による加熱を制御する制御部400と、をさらに備える構成とした。これにより、自己診断(センサ装置の故障診断)を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の湿度に応じて容量が変化するセンサ部と、センサ部の検出信号を処理して湿度に応じた信号を出力する信号処理部とを備える湿度センサ装置及びその自己診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対向配置された一対の電極間の容量に基づいて、物理量を検出する容量式物理量検出装置として、例えば本出願人は特許文献1を開示している。
【0003】
この容量式物理量検出装置によると、物理量(例えば加速度)の変化に応じて変位する可動電極と対向配置された固定電極との間の容量変化を、スイッチトキャパシタ構成のC−V変換回路にて電圧の変化とし、信号処理することにより物理量の変化に応じた信号を出力することができる。
【0004】
また、自己診断時の信号(所定の電圧)を可動電極と固定電極との間に周期的に印加することにより、可動電極と固定電極との間に静電気力を発生させて、可動電極に擬似的に物理量が発生した状態にすることができる。すなわち、自己診断を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−81449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、物理量として湿度を検出する構成の場合、対向配置された一対の電極は固定配置であり、一対の電極間に所定の電圧を強制的に印加したとしても、擬似的に物理量が発生した状態にすることが困難である。すなわち、自己診断を行うことができない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、自己診断を行うことができる湿度センサ装置及びその自己診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に、請求項1〜13に記載の発明は、周囲の湿度に応じて容量が変化するセンサ部と、センサ部の検出信号を処理して湿度に応じた信号を出力する信号処理部とを備える湿度センサ装置に関するものである。
【0008】
先ず請求項1に記載のように、センサ部を加熱する加熱部と、少なくとも自己診断を行う期間において、センサ部の容量が所定の湿度における値となるように、加熱部による加熱を制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
このように本発明によると、強制的に所定の湿度状態にすることができる。したがって、このときの出力値をその湿度状態で取るべき出力値と比較することにより、自己診断(センサ装置の故障診断)を行うことができる。
【0010】
尚、所定の湿度としては、請求項2に記載のように、加熱によって湿度状態を形成しやすい略0%RHとすることが好ましい。しかしながら、略0%RHに限定されるものではない。
【0011】
具体的には、例えば請求項3に記載のように、センサ部を、基板と、基板の表面上に離間して対向配置された一対の検出電極及び当該検出電極と検出電極間を覆うように基板上に設けられ、湿度に応じて比誘電率が変化する感湿膜を有する検出部と、検出電極と同一の平面上に設けられ、検出電極と略同一構成の一対の参照電極を有する参照容量部とにより構成し、信号処理部が、検出部の容量値と参照容量部の容量値との容量差を電圧に変換するスイッチトキャパシタ構成のC−V変換部を備える構成において、加熱部を、基板に設けられた発熱素子とすると良い。この場合、周知の印刷技術や半導体プロセスによって加熱部を容易に形成することができる。また、センサ装置の体格を小型化することができる。尚、加熱部がセンサ部とは別体に設けられた構成としても良い。
【0012】
請求項4に記載のように、基板が半導体基板の場合、信号処理部を半導体基板に設け、発熱素子を信号処理部の一部として構成することもできる。この場合、信号処理部を構成する素子を発熱素子として適用するので、構成を簡素化することができる。尚、基板は、ガラス基板や樹脂基板等の絶縁基板を用いることが可能であるが、絶縁膜を備える半導体基板を用いることで、半導体プロセスによってセンサ装置を形成することができる。従って、製造コストを低減することができる。
【0013】
発熱素子としては、例えば請求項5に記載のように、通電により発熱するヒータ電極としての抵抗体を適用することができる。この場合、請求項6に記載のように、絶縁層を介して検出電極及び参照電極の下部に設けた構成としても良いし、請求項7に記載のように、感湿膜上に設けた構成としても良い。
【0014】
感湿膜上に設けると、感湿膜中の水分子を早く蒸発させて所定の湿度状態とすることができるので、自己診断時間を短縮することができる。しかしながら、水分子の感湿膜への侵入や感湿膜からの蒸発が抵抗体によって阻害され、応答性が低下することも考えられる。従って、例えば請求項8に記載のように、抵抗体に透湿性を持たせた構成とすると良い。
【0015】
さらには、請求項6〜8いずれかに記載の発明において、請求項9に記載のように、抵抗体の幅を、検出電極及び参照電極の対向部分の幅と略同等とし、対向部分に対応した構成とすると良い。特に検出電極及び参照電極の下部に抵抗体を設けた構成においては、上記構成の抵抗体を設けることで、検出電極の位置が高くなり、検出電極間に介在する感湿膜量が増加して、容量変化を大きくとることができる。すなわち、感度が向上される。
【0016】
また、請求項10に記載のように、抵抗体を、検出電極及び参照電極と同一の平面上に設けた構成とすることもできる。この場合、抵抗体を、検出電極及び参照電極の同一の材料で構成することも可能であり、製造コストを低減することができる。具体的には、請求項11に記載のように、一対の検出電極間及び一対の参照電極間に設けた構成としても良い。それ以外にも、検出電極及び参照電極の周囲に設けた構成としても良い。
【0017】
発熱素子としては、抵抗体に限定されるものでない。半導体基板においては、請求項12に記載のように、発熱素子としてトランジスタ及びダイオードの少なくとも一方を適用することができる。トランジスタの場合、ゲート又はドレイン領域に対応して検出電極及び参照電極を設けた構成とすれば良い。ダイオードの場合、検出電極及び参照電極の周囲にダイオードを設けた構成とすれば良い。
【0018】
請求項13に記載のように、検出電極及び参照電極を覆うように基板上に形成された保護膜を備え、感湿膜は保護膜上に設けられていることが好ましい。この場合、水分から電極を確実に保護することが可能となり、各電極の水分に対する耐食性が向上される。
【0019】
請求項14,15に記載の湿度センサ装置の自己診断方法の作用効果は、請求項1,2に記載の湿度センサ装置の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。尚、本実施形態においては、容量式の湿度センサ装置として、所謂櫛歯電極構造の湿度センサ装置を例にとり説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態の湿度センサ装置のうち、センサ部及び加熱部を説明するための拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面における断面図である。尚、図1(a)においては、便宜上、検出電極、参照電極、及びヒータ電極を図示している。
【0021】
図1(a)に示すように、センサ部100は、湿度に応じて容量が変化する検出部101と、基準容量を形成する参照容量部102とにより構成されている。また、本実施形態においては、加熱部200として、発熱素子であるヒータ電極201がセンサ部100と同一の基板に形成されている。尚、符号202はヒータ電極201の端部に設けられたパッドである。
【0022】
図1(b)において、符号110は基板としての半導体基板であり、本実施形態においてはp型シリコンから形成されている。そして、半導体基板110の上面に、第1の絶縁膜120(例えばLOCOS(local oxidation of silicon))が形成されている。そして、第1の絶縁膜120上の所定位置に加熱部200としてのヒータ電極201が形成されている。
【0023】
ヒータ電極201は、自己診断時に発熱し、センサ部100を構成する感湿膜(後述する)中の水分子を蒸発させて感湿膜中の水分量を調整し、所定の湿度状態を作り出すことを目的として形成されたものである。従って、検出部101の周囲に形成されることが好ましい。本実施形態においては、加熱による影響を相殺するために、検出部101だけでなく参照容量部102にも対応してヒータ電極201が形成されている。尚、ヒータ電極201の形状については後述する。
【0024】
ヒータ電極201の構成材料としては、通電により発熱するものであれば適用が可能である。しかしながら、自己診断時間を短縮するために、数Ω以上のシート抵抗値を有するものが好ましく、例えばpolySiやCr−Si等の配線材料を適用することができる。その際、第1の絶縁膜120上に蒸着やスパッタリング等の手法によって付着させ、フォトリソグラフィー処理により、パターニングすれば良い。本実施形態において、ヒータ電極201は、polySiを用いて形成されている。
【0025】
ヒータ電極201を含む第1の絶縁膜120上には、第2の絶縁膜130(例えば酸化シリコン膜)が形成されており、一対の検出電極141,142が、第2の絶縁膜130上の同一平面において、離間して対向配置されている。
【0026】
検出電極141,142の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、図1(a)に示されるように、それぞれの検出電極141,142の形状として櫛歯形状を採用している。このように櫛歯形状とすると、検出電極141,142の配置面積を小さくしつつ、互いに対向する面積を大きくすることができる。これにより、周囲の湿度変化に伴って変化する検出電極141,142間の静電容量の変化量が大きくなり、湿度センサ装置の感度が向上する。
【0027】
検出電極141,142は、例えばアルミ、銅、金、白金、polySi等の配線材料を半導体基板110上に蒸着やスパッタリング等の手法によって付着させ、その後、フォトリソグラフィー処理により、櫛歯状パターンにパターニングすることによって形成される。本実施形態において、検出電極141,142はアルミを用いて形成されている。
【0028】
また、検出電極141,142に隣接して、一対の参照電極143,144が、第2の絶縁膜130上の同一平面において、離間して対向配置されている。この参照電極143,144は、検出電極141,142と同一の材料を用いて、同一パターンに形成されている。尚、図1(a)において、符号145は検出電極141のパッド、符号146は検出電極142と参照電極143の共通パッド、符号147は、参照電極144のパッドを示している。
【0029】
そして、検出電極141,142及び参照電極143,144を覆うように、半導体基板110上に保護膜150として窒化シリコン膜が形成される。この保護膜150は、例えばプラズマCVD法等により、半導体基板110上の各部において同じ厚さをもつように堆積形成される。但し、検出電極141,142及び参照電極143,144に水分に対する耐食性がある場合には、保護膜150を形成しなくとも良い。尚、図2(a)においては、便宜上、保護膜を省略している。尚、
保護膜150の上には、検出電極141,142及び検出電極141,142間を覆うように、例えばポリイミド系ポリマーからなる吸湿性を備えた感湿膜160が形成されている。感湿膜160は、ポリイミド系ポリマーの前駆体(ポリアミド酸)をスピンコート法や印刷法にて塗布後、加熱硬化することにより形成することができる。
【0030】
感湿膜160中に水分子が浸透すると、水分子は比誘電率が大きいため、その浸透した水分量に応じて、感湿膜160の比誘電率が変化する。その結果、感湿膜160を誘電体の一部として検出電極141,142によって構成されるコンデンサの静電容量が変化する。それに対し、参照電極143,144には感湿膜160が設けられていないため、参照電極143,144によって構成されるコンデンサの静電容量は、変化しないか、変化しても僅かである。感湿膜160内に含まれる水分量は、センサ部100の周囲の湿度に対応するため、検出電極141,142間の静電容量と参照電極143,144間の静電容量との容量差から湿度を検出することができる。尚、ヒータ電極201を除く上述した構成の部位が、特許請求の範囲で示したセンサ部100であり、検出電極141,142及び感湿膜160を含む部位が検出部101、参照電極143,144を含む部位が参照容量部102である。
【0031】
また、本実施形態においては、検出電極141,142及び参照電極143,144が、上述したように、同一の材料を用いて同一パターンに形成され、対応する櫛歯が同一直線上となるように隣り合って配置されている。そして、ヒータ電極201が、図1(a)に示すように、検出電極141,142及び参照電極143,144の対向部分(コンデンサ構成部分)の電極幅と略同等の電極幅を有し、第2の絶縁膜130を介して対向部分の直下に配置されるように、蛇腹状に形成されている。
【0032】
このように、検出電極141,142の対向部分の直下にヒータ電極201を形成した構成(図2(a))とすると、同様の構成でヒータ電極201を形成しない構成(図2(b))や、ヒータ電極201を検出電極141,142の対向部分の直下ではなく、検出電極141,142の対向部分に対して千鳥状に配置された場合と比べて、保護膜150に窪みができ、検出電極141,142間に介在される感湿膜160の量が増加する。すなわち、検出電極141,142の面積を増加せずに、感度を向上することができる。尚、図2は、ヒータ電極201の配置による効果を説明するための概略断面図であり、(a)はヒータ電極201あり、(b)はヒータ電極201なしの図である。
【0033】
次に、自己診断を行うことができる湿度センサ装置500の構成例を図3を用いて説明する。本実施形態において、信号処理部300と、加熱部200を構成するヒータ電極201の加熱を制御する制御部400は、センサ部100とは別の基板に構成されている。
【0034】
信号処理部300は、少なくとも、スイッチトキャパシタ構成のC−V変換部310と、増幅部320とを備えている。
【0035】
C−V変換部310は、演算増幅器311、容量値Cfを有する帰還コンデンサ312、及びスイッチ313から構成される。そして、検出部101を構成する検出電極141,142間に生じる容量値C1に比例する電荷と、参照部102を構成する参照電極143,144間に生じる容量値C2に比例する電荷との差の電荷を、帰還コンデンサ312に蓄積し電圧に変換して出力するものである。
【0036】
演算増幅器311の反転入力端子は、パッド146を介して検出電極142及び参照電極143に接続されており、反転入力端子と出力端子と間には、帰還コンデンサ312及びスイッチ313が並列に接続されている。また、非反転入力端子に対して、基準電圧Vrを印加する基準電圧発生回路(図示せず)が接続されている。
【0037】
また、信号処理部300は図示されない駆動電圧発生回路を有しており、この駆動電圧発生回路はパッド145から一定振幅(0〜V)で周期的に変化する搬送波P1を検出部101の検出電極141に入力し、パッド147から、搬送波P1と位相が180°ずれ且つ同一振幅である搬送波P2を参照部102の参照電極144に入力する。
【0038】
また、スイッチ313は駆動電圧発生回路からのクロック信号に同期して生成されるトリガ信号によりオン/オフされ、例えば搬送波P1の立ち上がりタイミング(搬送波P2の立ち下がりタイミング)で一定時間(搬送波P1の1/2周期より短い時間)だけオンするように設定される。
【0039】
検出期間T1において、スイッチ313がオンされると帰還コンデンサ312が放電され、基準電圧Vrにリセットされる。続いてスイッチ313をオフし、リセット動作を完了させる。次に、搬送波P1,P2を反転させると検出電極141,142間と参照電極3143,144間から電荷(C1−C2)×Vが放出され、この電荷が帰還コンデンサ312に蓄積される。従って、演算増幅器311の出力端子に、基準電圧Vrを基準として、センサ部100の容量差(C1−C2)と振幅Vに応じた電圧Vsが生じる。この電圧Vsは次式で示される。
【0040】
(数1)
Vs=(C1−C2)/Cf×V+Vr
このとき、周囲の湿度変化に応じて、参照部62の容量値C2は変化しないか、変化しても僅かであり、検出部61の容量値C1は変化する。従って、数式1に示される電圧Vsを検出することにより、湿度を検出することができる。
【0041】
増幅部320は、C−V変換部310の出力電圧Vsを所定の感度まで増幅する。尚、図示しないが、増幅部320の直前にC−V変換部310の出力電圧Vsをサンプリングして一定期間保持するサンプルホールド部を設け、増幅部320の直後に増幅部320の出力電圧から所定の周波数帯域の成分のみを取り出すローバスフィルタを設けても良い。
【0042】
ここで、自己診断は以下のように実施される。
【0043】
センサ部100の検出電極141,142、参照電極143,144に駆動電圧(搬送波P1,P2)が印加されている状態で、例えば所定の周期ごとに、制御部400は自己診断信号を加熱部200に出力する。
【0044】
加熱部200において、自己診断信号を受けると、ヒータ電極201が通電されて発熱する。本実施形態においては、制御部400から自己診断信号が出力されている期間、ヒータ電極201が通電されて発熱する構成となっており、これによりセンサ部100の容量(容量差)が略0%RHにおける値となるように制御される。尚、ヒータ電極201の発熱量により、感湿膜160から蒸発する水分量(感湿膜160中の水分量)が調整される(すなわち湿度状態が調整される)ので、略0%RH以外の湿度状態に調整することも可能である。しかしながら、通常検出時のセンサ出力に応じて、自己診断時のヒータ電極201の発熱量を制御する必要があるので装置構成が複雑化する。それに対し、本実施形態においては、通常検出時のセンサ出力に関係なく常に略0%RHの状態になるような発熱量を与えるように設定(自己診断信号の出力時間)されており、これにより確実に自己診断を行うことができる。
【0045】
尚、本実施形態においては、同一構成の検出電極141,142と参照電極143,144に対して、ヒータ電極201が配置されているので、加熱による影響(温特)を相殺することができる。
【0046】
そして、感湿膜160中の水分量が調整、すなわち、湿度状態が調整された状態におけるセンサ部100の出力が、C−V変換部310にて電圧に変換され、増幅部320にて所定感度まで増幅されて出力される。そして、この出力信号を例えばECU(Electric Control Unit)にて所定のロジックで比較判定することで、湿度センサ装置500に異常(例えば異物付着による特性変化、感湿膜異常、信号処理部故障等)がないかどうか自己診断を行うことができる。
【0047】
尚、本実施形態においては、ECUにて比較判定する例を示した。しかしながら、信号処理部300の一部として比較部(例えば比較器を有する構成)を備え、装置500内で比較する構成としても良い。例えば、制御部400からの自己診断信号有無により、増幅部320からの出力ラインを、通常検査ラインと、比較部を含む自己診断ラインとで切り替える構成とすればよい。
【0048】
また、本実施形態において、信号処理部300がセンサ部100と別の基板に構成される例を示した。しかしながら、同一の基板に構成しても良い。基板には、ガラス基板等の絶縁基板を用いることが可能であるが、本実施形態に示すように絶縁膜を備える半導体基板110を用いることで、半導体プロセスを活用することができる。従って、製造コストを低減することができる。その際、発熱素子であるヒータ電極201を信号処理部300と集積化することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を、図4に基づいて説明する。図4は、本実施形態における湿度センサ装置のうち、センサ部及び加熱部を説明するための拡大平面図であり、第1の実施形態で示した図1(a)に対応している。尚、便宜上、検出電極、参照電極、及びヒータ電極を図示している。
【0050】
第2の実施形態における湿度センサ装置は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0051】
図4に示すように、本実施形態におけるヒータ電極201a,201bは、検出電極141,142及び参照電極143,144と同一平面上に構成されている。従って、ヒータ電極201a,201bを、検出電極141,142及び参照電極143,144の構成材料と同一の材料にて構成すると、製造工程を簡素化することができる。尚、図4において、符号202a,202bは、それぞれヒータ電極201a,201bのパッドである。
【0052】
また、本実施形態において、ヒータ電極201aは検出電極141,142間の中間部位に設けられ、ヒータ電極201bは参照電極143,144間の中間部位に設けられており、自己診断時以外(通常検出時)において、検出電極141,142及び参照電極143,144に印加される電圧の中間電位に保持される構成となっている。従って、通常検出時において、検出電極141,142間にヒータ電極201aを配置し、参照電極143,144間にヒータ電極201bを配置した構成でありながら、検出電極141,142間の容量バランスと参照電極143,144間の容量バランスを保つことができる。また、通常検出時において発熱しないように、ヒータ電極201a,201bはブリッジ構成とされている。
【0053】
尚、本実施形態において、検出電極141,142間にヒータ電極201aを設け、参照電極143,144間にヒータ電極201bを設ける例を示した。しかしながら、1つのヒータ電極201にて構成しても良い。
【0054】
また、本実施形態において、ヒータ電極201aを検出電極141,142間に設け、ヒータ電極201bを参照電極143,144間に設ける例を示した。しかしながら、本構成とすると、検出電極141,142間の対向距離と、参照電極143,144間の対向距離が長くなるため、感度が低下する。そこで、検出電極141,142、参照電極143,144の周囲に、ヒータ電極201a,201bを設けた構成としても良い。この場合、各ヒータ電極201a,201bをさらに分割しても良い。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を、図5に基づいて説明する。図5は、本実施形態における湿度センサ装置のうち、検出部周囲の拡大断面図であり、第1の実施形態で示した図2(a)に対応している。
【0056】
第3の実施形態における湿度センサ装置は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0057】
図5に示すように、本実施形態においては、ヒータ電極201aを感湿膜160上に設けた構成としている。このような構成とすると、感湿膜160を直接加熱するため、感湿膜160中の水分子を早く蒸発させて所定の湿度状態とすることができるので、自己診断時間を短縮することができる。尚、ヒータ電極201aを感湿膜160上に設けるので、ヒータ電極201を検出部101と参照容量部102とで分けた構成としている。
【0058】
しかしながら、水分子の感湿膜160への侵入や感湿膜160からの蒸発がヒータ電極201aによって阻害され、応答性が低下することも考えられる。そこで、本実施形態においては、ヒータ電極201aに透湿性を持たせている。具体的には、蒸着法により金属材料を感湿膜160上に薄膜堆積(例えば0.1μm)させて、ヒータ電極201aを形成している。従って、薄膜化されているヒータ電極201aの金属原子間を水分子が透過することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、検出電極141,142の対向部分の直上にヒータ電極201aを配置した構成としている。従って、ヒータ電極201aを、検出電極141,142の対向部分に対して千鳥状に配置した場合と比べて、検出電極141,142間に介在し、容量変化に寄与する感湿膜160の領域に対して水分子の出入りがし易くなる。すなわち、応答性を向上することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を、図6に基づいて説明する。図6は、本実施形態における湿度センサ装置のうち、センサ部及び加熱部を説明するための拡大断面図である。
【0061】
第4の実施形態における湿度センサ装置は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。
【0062】
第1〜第3の実施形態においては、加熱部200としてヒータ電極201(201a,201b)を適用する例を示した。しかしながら、加熱部200はヒータ電極201に限定されるものではない。半導体基板110においては、信号処理部300を構成するトランジスタ、及びダイオードの少なくとも1つを適用することができる。この場合、別途ヒータ電極201を設けなくとも良いので、製造工程を簡素化することができる。
【0063】
例えば、トランジスタの場合、図6に示すように拡散領域上に少なくとも検出電極141,142と参照電極143,144の対向部分を設けた構成とすれば良い。尚、図6において、符号210はMOSトランジスタ、符号211は、polySiからなるゲート電極、符号212はドレイン電極、符号213はソース電極であり、N+ドレイン領域上に検出電極141,142と参照電極143,144を設けた構成となっている。
【0064】
尚、ダイオードの場合、検出電極及び参照電極の周囲にダイオードを設けた構成とすれば良い。
【0065】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、種々変更して実施することができる。
【0066】
また、本実施形態において、シリコンからなる半導体基板110を基板として適用する例を示した。しかしながら、基板としては、ガラス基板、樹脂基板等の絶縁基板を適用することが可能である。
【0067】
また、本実施形態においては、保護膜150上に感湿膜160が設けられた例を示した。しかしながら、保護膜150を形成しない場合には、第2の絶縁膜130上に感湿膜160を形成することも可能である。また、基板がガラス基板等の絶縁基板の場合には、絶縁基板上に直接感湿膜160を形成することも可能である。
【0068】
また、本実施形態においては、検出電極141,142、参照電極143,144がともに櫛歯構造である例を示した。しかしながら、容量を形成する電極の構造は上記例に限定されるものではない。例えば所謂並行平板型の構造としても良い。また、検出電極141,142と参照電極143,144とで異なる構成としても良い。
【0069】
要するに、周囲の湿度に応じて容量が変化するセンサ部100と、センサ部を加熱する加熱部200と、センサ部100の検出信号を処理して湿度に応じた信号を出力する信号処理部300と、少なくとも自己診断を行う期間において、センサ部100の容量が所定の湿度における値となるように、加熱部200による加熱を制御する制御部400とを備えた構成であれば良い。それぞれが別個に設けられた構成としても良いし、全てが同一の基板に一体的に形成された構成としても良い。
【0070】
また、本実施形態においては、第2の絶縁膜130を介して、検出電極141,142(及び参照電極143,144)の直下にヒータ電極201が設けられた例を示した。しかしながら、図7に示すように、第2の絶縁膜130を介して、ヒータ電極201の直下に検出電極141,142(及び参照電極143,144)を設けた構成としても良い。本構成の場合、感湿膜160中の水分子を早く蒸発させることができるので、自己診断時間を短縮することができる。しかしながら、検出電極141,142間に介在され、容量変化に寄与する感湿膜160量が低減するので、感度が低下する。従って、第1の実施形態で示した構成のほうが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態の湿度センサ装置のうち、センサ部及び加熱部を説明するための拡大図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面における断面図である。
【図2】ヒータ電極の配置による効果を説明するための概略断面図であり、(a)はヒータ電極あり、(b)はヒータ電極なしの図である。
【図3】自己診断を行うことができる湿度センサ装置の構成例を示す図である。
【図4】第2の実施形態における湿度センサ装置のうち、センサ部及び加熱部を説明するための拡大平面図である。
【図5】第3の実施形態における湿度センサ装置のうち、検出部周囲の拡大断面図である。
【図6】第4の実施形態における湿度センサ装置のうち、センサ部及び加熱部を説明するための拡大断面図である。
【図7】その他の変形例を示す検出部周囲の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0072】
100・・・センサ部
101・・・検出部
102・・・参照容量部
110・・・半導体基板
120・・・第1の絶縁膜
130・・・第2の絶縁膜
141,142・・・検出電極
143,144・・・参照電極
150・・・保護膜
160・・・感湿膜
200・・・加熱部
201・・・ヒータ電極(抵抗体)
300・・・信号処理部
310・・・C−V変換部
320・・・増幅部
400・・・制御部
500・・・湿度センサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の湿度に応じて容量が変化するセンサ部と、
前記センサ部の検出信号を処理して前記湿度に応じた信号を出力する信号処理部と、を備える湿度センサ装置であって、
前記センサ部を加熱する加熱部と、
少なくとも自己診断を行う期間において、前記センサ部の容量が所定の湿度における値となるように、前記加熱部による加熱を制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする湿度センサ装置。
【請求項2】
前記所定の湿度とは、略0%RHであることを特徴とする請求項1に記載の湿度センサ装置。
【請求項3】
前記センサ部は、基板と、前記基板の表面上に離間して対向配置された一対の検出電極及び当該検出電極と検出電極間を覆うように前記基板上に設けられ、湿度に応じて比誘電率が変化する感湿膜を有する検出部と、前記検出電極と同一の平面上に設けられ、前記検出電極と略同一構成の一対の参照電極を有する参照容量部と、により構成され、
前記信号処理部は、前記検出部の容量値と前記参照容量部の容量値との容量差を電圧に変換するスイッチトキャパシタ構成のC−V変換部を備え、
前記加熱部は、前記基板に設けられた発熱素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の湿度センサ装置。
【請求項4】
前記基板は半導体基板であり、
前記信号処理部は前記半導体基板に設けられ、
前記発熱素子は、前記信号処理部の一部として構成されていることを特徴とする請求項3に記載の湿度センサ装置。
【請求項5】
前記発熱素子は、通電により発熱するヒータ電極としての抵抗体であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の湿度センサ装置。
【請求項6】
前記抵抗体は、絶縁層を介して前記検出電極及び前記参照電極の下部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の湿度センサ装置。
【請求項7】
前記抵抗体は、前記感湿膜上に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の湿度センサ装置。
【請求項8】
前記抵抗体は、透湿性を有していることを特徴とする請求項7に記載の湿度センサ装置。
【請求項9】
前記抵抗体は、前記検出電極及び前記参照電極の対向部分と略同等の幅を有し、前記対向部分に対応して設けられていることを特徴とする請求項6〜8いずれか1項に記載の湿度センサ装置。
【請求項10】
前記抵抗体は、前記検出電極及び前記参照電極と同一の平面上に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の湿度センサ装置。
【請求項11】
前記抵抗体は、一対の前記検出電極間及び一対の前記参照電極間に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の湿度センサ装置。
【請求項12】
前記発熱素子は、トランジスタ及びダイオードの少なくとも一方であることを特徴とする請求項4に記載の湿度センサ装置。
【請求項13】
前記検出電極及び前記参照電極を覆うように前記基板上に形成された保護膜を備え、
前記感湿膜は前記保護膜上に設けられていることを特徴とする請求項3〜12いずれか1項に記載の湿度センサ装置。
【請求項14】
周囲の湿度に応じて容量が変化するセンサ部と、前記センサ部の検出信号を処理して前記湿度に応じた信号を出力する信号処理部とを備える湿度センサ装置の自己診断方法であって、
前記センサ部の容量が所定の湿度における値となるように前記センサ部を加熱して、自己診断を行うことを特徴とする湿度センサ装置の自己診断方法。
【請求項15】
前記所定の湿度とは、略0%RHであることを特徴とする請求項14に記載の湿度センサ装置の自己診断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−234576(P2006−234576A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49598(P2005−49598)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】