説明

湿度検出装置

【課題】感度の高い湿度検出装置を提供すること。
【解決手段】外部との入出力を行うコネクタ6及びコネクタ端子7部材とを一体で備えたハウジング部材8と、前記ハウジング部材8に搭載され前記コネクタ端子7と電気的に接続された電子回路基板10と、前記電子回路基板10に設けられた湿度検出素子9と、を有し、吸入空気が流れる主通路1の一部に設けられた装着穴3に取り付けることにより前記ハウジング部材8の一部が主通路1内を流れる吸入空気に曝される湿度検出装置5において、前記ハウジング部材8は、前記吸入空気の一部を取り込むための副通路13が設けられており、前記副通路13は、前記吸入空気の取り込み口である入口開口部14と前記取り込んだ空気を排出する出口開口部15とを備え、前記出口開口部15が前記吸入空気に曝されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸入空気に係わる温湿度計測に好適な検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用の吸入空気に係る物理量計測技術として、流量測定装置、圧力検出装置、湿度検出装置などを一体化してなる複数の計測機能を有するセンサの例が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−151795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常自動車の吸入空気はエアクリーナボックスが備えるエアフィルターエレメントによって大気中浮遊物を取り除いた後に取り込まれる構成となっている。しかし、エンジン出力低下や燃料消費率の悪化を招くエアフィルターエレメントが作る大きな圧力損失は望まれないが故に、例えば排気ガス中に含まれる微細なカーボン等を捕らえるほどの濾紙が使用されることは無く、これら微細な大気浮遊物などは濾紙を通過してエンジンへ吸入される。
【0005】
また、エンジン停止後には高温に晒されたエンジンオイルが蒸気となってエアクリーナボックス側へ逆流してくることもあり、以上のようなことからエアクリーナボックス下流の空気は必ずしもきれいであるとは言えない。また、近年ではディーゼルエンジンの電子制御化も進んでおり、ディーゼルエンジンは汚損環境としてはガソリンエンジンシステムよりも更に厳しい。
【0006】
湿度検出装置は汚損に対して感度が高い素子を使用するため、耐汚損性の向上が必須である。
【0007】
また、湿度計測環境の変化によっては湿度検出素子部が結露するという問題が発生する。一度結露が起きると通常状態への復帰には乾燥までの時間が必要であり、その間は正常な計測機能や計測精度を失った状態となる。結露の問題へは、湿度検出素子部の換気が重要であり、常に通風させておくことが重要である。更にはその空気の速度を可能な限り速く保つことで結露し難くなり、結露をしてもその復帰時間を短くすることができる。
【0008】
但し、結露を防ぐために湿度検出素子周囲の空気流速を増加させると空気中に浮遊する汚損物質をより多く取り込む機会も増える。
【0009】
従来技術においては特許文献1に示されるように、センサ素子を構造支持体を介して主空気通路に露出させている。この構成は、急に吸入空気の温度が変化した場合に構造体支持体やそれに接続されるセンサの表面温度が遅れて変化するという特性を持つため、例えば吸入空気温度と構造支持体及びセンサ素子温度が常温であるところから吸入空気温度が高い方向へ急激に変化した場合、それぞれの温度の関係が「吸入空気温度>構造支持体及びセンサ素子温度」となり、構造物のごく周囲を流れる空気は、常温の構造物の影響で露点に達し、センサ素子を含む構造物表面に結露が発生するという問題がある。この結露からの早い復帰には、センサ素子部に十分な流速を与えると良いが、従来文献に示された構造ではセンサを内装する計測室と主通路とを連通する連通穴が小さく、十分な換気を行うことができない。
【0010】
また、その連通穴が主通路中央部の最も汚損物質が多く通過する場所に設置されており、且つ連通穴からセンサ素子までの距離が短く構成されている。この構成によれば、汚損物質がセンサ素子に付着する可能性は高く、その他にも前述のように連通穴が小さいことから汚損物質や水滴などで連通穴が目詰まりを起こす危険性もあり、実用上の懸念点が多い。
【0011】
以上、本発明においては結露を防ぐための流速増加と流速増加に伴い懸念が強まる耐汚損性の向上という相反する性能の両立が課題となる。
【0012】
本発明の目的は、感度の高い湿度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の湿度検出装置は、外部との入出力を行うコネクタ及びコネクタ端子部材とを一体で備えたハウジング部材と、前記ハウジング部材に搭載され前記コネクタ端子と電気的に接続された電子回路基板と、前記電子回路基板に設けられた湿度検出素子と、を有し、吸入空気が流れる主通路の一部に設けられた装着穴に取り付けることにより前記ハウジング部材の一部が主通路内を流れる吸入空気に曝される湿度検出装置において、前記ハウジング部材は、前記吸入空気の一部を取り込むための副通路が設けられており、前記副通路は、前記吸入空気の取り込み口である入口開口部と前記取り込んだ空気を排出する出口開口部とを備え、前記出口開口部が前記吸入空気に曝されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、感度の高い湿度検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示すセンサ構造断面図。
【図2】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図3】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図4】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図5】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図6】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図7】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【図8】本発明の他の一実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の具体的な一構成例について図1を用いて説明する。
【0017】
主通路1を構成する吸気管構成部材2には、その一部にセンサの装着穴3が設けられており、シール部材4を介して湿度検出装置5が取り付けられる。
【0018】
湿度検出装置5は、コネクタ6及びコネクタ端子7を一体成型したハウジング部材8を基礎に、湿度検出素子9を実装した電子回路基板10を内装し、カバー部材11で蓋をしたり、樹脂を直接注型するなどして電子回路基板10を保護する。コネクタ端子7と電子回路基板10の間の電気的接続は金属ワイヤ12により行い、コネクタ6を介して外部との入出力を可能にしている。
【0019】
ハウジング部材8には主通路1を流れる吸入空気の一部を取り込むための副通路13が設けられており、湿度検出素子9は副通路13を流れる空気に直接触れるように実装されている。
【0020】
副通路13は空気の出入り口である入口開口部14と出口開口部15とを有し、空気の流出口に当たる前記出口開口部15のみがハウジング部材8の一部分と共に主通路1内を流れる空気に曝されるように挿入されている。
【0021】
本構成では出口開口部15を形成するハウジング部材8の形状に沿って流れる空気流を利用し、出口開口部15から副通路13内部の空気を強制的に吸い出すことで副通路13内部に通風を促している。より高い副通路13内部流速を得るためには、空気流速が最も低い吸気管構成部材2の内壁面付近ではなく、主通路1の中央に近い位置まで出口開口部15を持っていくと良い。
【0022】
また空気中に浮遊する汚損物質は空気よりも質量の大きなものが殆どであり、これらは慣性力で主通路1の流れに乗って湿度検出装置5の設置位置を真っ直ぐに通過していく。特に本構成では入口開口部14を主通路1内部に設置していないため、汚損物質を副通路13内部に取り込むことはない。以上により、副通路13内部の流速向上、耐汚損性の向上が両立できるため、感度の高い湿度検出装置を提供することが可能となる。
【0023】
図2は湿度検出装置5の一実施例を示す断面図である。
【0024】
副通路13の入口開口部14が、ハウジング部材8の取付け面と吸気管内壁面との間で開口している。このように、入口開口部14を直接空気に触れないように、例えば装着穴3の内部に隠すことで空気中に浮遊する汚損物質を取り込まなくなる。また、入口開口部14を空気の流れが無い位置に設けたため、湿度検出装置5の取付け角度にばらつきが生じた場合でも、入口開口部14付近の圧力を変動させることはなく、副通路13を流れる空気流速にばらつきを生じさせることがなくなる。
【0025】
図3は湿度検出装置5のその他の一実施例を示す断面図である。
【0026】
副通路13の入口開口部14は主通路1を流れる空気の流れ方向で見た上流側に設置され、出口開口部15はその下流側に設置されている。この配置構成は、入口開口部14と出口開口部15との間に空気流を発生させるための圧力差を容易に発生させるのに好適であり、副通路13内部の空気流速向上に効果がある。
【0027】
図4は湿度検出装置5のその他の一実施例を示す断面図である。
【0028】
主通路1を構成する吸気管構成部材2には、その一部にセンサの装着穴3が設けられており、シール部材4を介して湿度検出装置5を取り付ける。湿度検出装置5は、コネクタ6及びコネクタ端子7を一体成型したハウジング部材8を基礎に、湿度検出素子9を実装した電子回路基板10を内装し、カバー部材11で蓋をする、あるいは、樹脂を直接注型するなどして電子回路基板10を保護する。コネクタ端子7と電子回路基板10の間の電気的接続は金属ワイヤ12により行い、コネクタ6を介して外部との入出力を可能にする。
【0029】
ハウジング部材8には主通路1を流れる吸入空気の一部を取り込むための副通路13が設けられており、湿度検出素子9は副通路13を流れる空気に直接触れるように実装されている。
【0030】
副通路13は空気の出入り口である入口開口部14と出口開口部15とを有し、出口開口部15のみがハウジング部材8の一部分と共に主通路1内部に挿入されている。空気の取り込み口に当たる入口開口部14は、装着穴3の中で出口開口部15の開口方向に対して垂直方向に開口している。すなわち、装着穴3内部の内壁に対向する面側に入口開口部14の開口面が位置する構成である。
【0031】
この構成により、入口開口部14が空気中に浮遊する汚損物質を更に取り込み難くなり、耐汚損性が向上する。
【0032】
次に、他の一実施例について図5を用いて説明する。本実施例では図4を用いて説明した実施例と同様の部分はその説明を省略し、異なる点について説明する。
【0033】
図5に示されるように、本実施例では入口開口部14が装着穴3の中で出口開口部15の開口方向に対して垂直方向且つ2方向に分岐開口している。すなわち、装着穴3内部の内壁に対向する面側に入口開口部14の分岐した開口面が位置する構成である。このように、入口の開口面を2箇所にすることで、入口開口部14が作る空気抵抗を低減することが可能であり、これにより副通路13内部の流速向上が達成できる。
【0034】
次に、さらなる他の一実施例について図6を用いてい説明する。本実施例では図5を用いて説明した実施例と同様の部分はその説明を省略し、異なる点について説明する。
【0035】
図6に示されるように、入口開口部14の分岐した開口面は、ハウジング部材8の外表面より少し窪んだ位置に設けられている。この構成により、装着穴3内部でのハウジング部材8と吸気管構成部材2との間にある隙間を相対的に拡大させる効果を得ることができ、副通路13内部の流速増加に効果的である。また、通常、吸気管路構成部材2には比較的安価な樹脂材料が選定されるケースが多く、仕上がり寸法精度も高くない。これを背景に、湿度検出装置5には取り付けばらつきが発生し、そのばらつき方によってはハウジング部材8の側面、即ち、入口開口部14の開口面と装着穴3内部の側壁面とが密着して取り付けられるケースもある。この場合、入口開口部14が塞がれてしまうために空気を取り込み難くなり、副通路13内部の空気流速を低下させてしまう懸念がある。このような場合においても、図6のように出口開口部14の開口面をハウジング部材8の外表面より少し窪んだ位置に設けておけば、確実に副通路13内部へ空気の流れを導入することができる。
【0036】
次に、さらなる他の一実施例について図7を用いてい説明する。本実施例では上述までの実施例と同様の部分はその説明を省略し、異なる点について説明する。
【0037】
図7に示されるように、ハウジング部材8に設けられた副通路13の長さは、湿度検出素子9から入口開口部14の開口面までの距離と、前記湿度検出素子9から出口開口部15の開口面までの距離とを比較した場合、湿度検出素子9から入口開口部14の開口面までの距離の方が後者よりも短く構成されている。副通路13は、主通路1よりも更に外側を迂回するように構成されているため、主通路1を流れる空気の温度と外気の温度に大きな差がある場合、副通路13内部の空気が結露し、副通路13内部の空気が含んでいた水分が副通路13の壁面に付着することで実際の計測空気の湿度を正しく測れなくなるという問題がある。この傾向は特に入口開口部14から湿度検出素子9までの距離が長いほど顕著に現れ、逆に入口開口部14から湿度検出素子9までの距離が短いほど結露の影響は小さくなる。
【0038】
また内燃機関で使用する場合には、エンジンを停止した後のオイルミストの逆流による湿度検出素子9の汚損にも配慮する必要がある。この汚損の程度はオイルミストの流入口から湿度検出素子9までの距離が長い程良く、本構成においては主通路1に直接晒されている出口開口部15がオイルミストの流入口になるため、湿度検出素子9から出口開口部15までの距離を長く構成している。
【0039】
この結露と汚損の双方の問題を回避するには、湿度検出素子9から入口開口部14の開口面までの距離と、前記湿度検出素子9から出口開口部15の開口面までの距離を約1:2の比で構成すると良い。
【0040】
次に、さらなる他の一実施例について図8を用いて説明する。本実施例では上述までの実施例と同様の部分はその説明を省略し、異なる点について説明する。
【0041】
副通路13を流れる空気の方向と、湿度検出素子9の表面は平行である方が、汚損のし難さや計測精度の観点から望ましく、本実施例では、副通路13に2つの曲がり部を持たせて、2つの曲がり部の間の副通路13を直線となるように構成し、湿度検出素子9を副通路13の直線部に位置するように実装している。また、副通路13の曲がりによって、湿度検出素子9側に計測空気を慣性の効果で集めることができ、計測精度の向上にも寄与する。
【0042】
更に図8の構成においては、ハウジング部材底面16の位置と吸気管構成部材2の内壁面とがほぼ同じ高さになっている。更にハウジング部材底面16から出口開口部15へ向けてハウジング部材8を曲線17で形成すると、出口開口部15からの空気の吸出し効果が更に高まり、副通路13内部を流れる空気の流速を向上できる。またこの構成により装着穴3の内部が殆どハウジング部材8の構造体で満たされるために余計な空気が滞在できるデッドスペースが無くなり、更に汚損物質を副通路13内部に取り込む可能性が小さくなる。
【符号の説明】
【0043】
1 主通路
2 吸気管構成部材
3 装着穴
4 シール部材
5 湿度検出装置
6 コネクタ
7 コネクタ端子
8 ハウジング部材
9 湿度検出素子
10 電子回路基板
11 カバー部材
12 金属ワイヤ
13 副通路
14 入口開口部
15 出口開口部
16 ハウジング部材底面
17 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との入出力を行うコネクタ及びコネクタ端子部材とを一体で備えたハウジング部材と、前記ハウジング部材に搭載され前記コネクタ端子と電気的に接続された電子回路基板と、前記電子回路基板に設けられた湿度検出素子と、を有し、吸入空気が流れる主通路の一部に設けられた装着穴に取り付けることにより前記ハウジング部材の一部が主通路内を流れる吸入空気に曝される湿度検出装置において、
前記ハウジング部材は、前記吸入空気の一部を取り込むための副通路が設けられており、
前記副通路は、前記吸入空気の取り込み口である入口開口部と前記取り込んだ空気を排出する出口開口部とを備え、
前記出口開口部が前記吸入空気に曝されていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の湿度検出装置において、
前記入口開口部の開口面は、前記主通路内壁面と前記ハウジング部材の取り付け面との間に設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の湿度検出装置において、
前記入口開口部は、前記出口開口部に対して流れの上流側に設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の湿度検出装置において、
前記入口開口部の開口面は、前記装着穴の内壁に対向する面側に位置するように設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の湿度検出装置において、
前記入口開口部の開口面と向かい合うもう一方側に第二の入口開口部が設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の湿度検出装置において、
前記2つの入口開口部の開口面は共に、前記ハウジングの外表面から窪みを持った位置に設けられていることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の湿度検出装置において、
前記入口開口部の開口面から湿度検出素子までの距離が、前記出口開口部の開口面から湿度検出素子までの距離よりも短いことを特徴とする湿度検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の湿度検出装置において、
前記入口開口部の開口面から湿度検出素子までの距離と前記出口開口部の開口面から湿度検出素子までの距離との比が1:2であることを特徴とする湿度検出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の湿度検出装置において、
前記副通路は、2つの曲がり部を有し、
前記2つの曲がり部の間の前記副通路は直線で構成されており、前記湿度検出素子が前記副通路の直線部に位置するように実装されていることを特徴とする湿度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83453(P2013−83453A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221477(P2011−221477)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】