湿度測定装置および劣化検査方法
【課題】湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することのできる湿度測定装置および劣化検査方法を提供する。
【解決手段】測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサ115と、湿度センサを加熱するヒータ116と、前述の湿度と前述の静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶するメモリ145と、湿度静電容量情報に基づいて、前記湿度センサ115から出力された静電容量値を湿度理論値に変換し、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115から出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルを判定するCPU142と、を備える。
【解決手段】測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサ115と、湿度センサを加熱するヒータ116と、前述の湿度と前述の静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶するメモリ145と、湿度静電容量情報に基づいて、前記湿度センサ115から出力された静電容量値を湿度理論値に変換し、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115から出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルを判定するCPU142と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、湿度測定装置および劣化検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、湿度測定装置には、測定環境の雰囲気、例えば、薬品、溶剤などのガスや高湿度環境の影響により、湿度測定装置が有する湿度センサ(感湿素子)の性能や品質が低下(以下、劣化という)してしまうという問題があった。このため、感湿素子を加熱すること(以下、加熱クリーニングという)により性能や品質を回復させ、長時間安定して湿度を測定できる湿度測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−172776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、劣化した湿度センサに加熱クリーニングを行っても、湿度センサは完全に回復するわけではなく、ある程度の劣化が残存して湿度センサに蓄積されるので、湿度センサを交換する必要があった。
【0005】
従来の湿度測定装置では、湿度センサの加熱中または終了直後に、湿度センサの湿度検出値に基づいて、湿度センサの交換が必要であるか否かを判定していた。しかし、湿度センサの加熱中または終了直後は、湿度センサの周辺の相対湿度がほぼ0(ゼロ)[%]になるが、高温、例えば100〜180[℃]に加熱して湿度を0(ゼロ)[%]付近にしている場合、劣化による相対湿度の変化量が小さくなってしまう。そのため、湿度センサの加熱中または終了直後のような低湿度の範囲では、湿度検出値に劣化した湿度センサの影響(変化)が表れにくく、この湿度検出値に基づいて湿度センサの交換が必要であるか否かを判定すると、例えば、湿度センサの劣化のレベル(程度、度合い)が十分高いにもかかわらず、湿度センサの交換が必要でないと判定されるなど、判定精度が低いという問題があった。
【0006】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することのできる湿度測定装置および劣化検査方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る湿度測定装置は、測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、湿度センサを加熱するヒータと、前述の湿度と前述の静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換する変換部と、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定する判定部と、を備える。
【0008】
かかる構成によれば、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値が湿度理論値に変換され、ヒータによる湿度センサの加熱終了後に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量特性と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0009】
本発明の湿度測定装置では、記憶部に湿度静電容量情報が記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量情報は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量情報と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサの劣化によって、湿度センサが出力する静電容量値が、例えば、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値は、例えば、−15[%]から−5[%]になり、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサが出力する静電容量値が線型性を有する湿度理論値に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値には、湿度センサの劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサに加熱開始から一の所定時間内に、湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサを交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【0010】
好ましくは、湿度理論値に基づく湿度出力値を表示する表示部をさらに備え、湿度出力値は、湿度理論値が負の値であるとき、ゼロである。
【0011】
かかる構成によれば、湿度理論値に基づく湿度出力値が表示され、湿度理論値が負の値であるとき、湿度出力値がゼロである。ここで、湿度静電容量情報は湿度と静電容量とが線型性を有する理論的な関係を示すので、湿度センサが出力する静電容量値に対して、湿度理論値が実際には存在しない負の値を取ることがある。よって、湿度理論値に基づく湿度出力値が表示され、湿度理論値が実際には存在しない負の値であるときに、湿度出力値がゼロであることにより、劣化のレベルを判定するため(判定用)の湿度理論値を用いて、湿度出力値を表示することができるとともに、負の値である湿度理論値をそのまま表示するのを防止することができる。これにより、装置の故障や測定異常を疑われたり、測定結果に基づく制御に悪影響を及ぼしたりするおそれを低減することができ、湿度理論値に基づく湿度出力値の信頼性を保つ(維持)することができる。
【0012】
好ましくは、湿度センサによる湿度の検出開始から他の所定時間を経過するまでに、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値を基準値として設定する設定部をさらに備え、判定部は、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値と基準値との差に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定する。
【0013】
かかる構成によれば、湿度センサによる湿度の検出開始から他の所定時間を経過するまでに、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値が、基準値として設定され、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値と基準値との差に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが判定される。ここで、湿度センサによる湿度の検出を開始してからある程度の時間を経過するまでは、湿度センサが劣化していない状態、または、ほとんど劣化していない状態であると考えられる。よって、例えば、最初の湿度センサの加熱中または加熱終了直後の湿度理論値である基準値と最新(直近)の湿度センサの加熱中または加熱終了直後の湿度理論値との差は、現時点の湿度センサの劣化のレベルを表すことになる。これにより、湿度センサの劣化のレベルを、容易かつ正確に、判定することができる。
【0014】
好ましくは、判定部の判定結果に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを報知する報知部をさらに備える。
【0015】
かかる構成によれば、判定部の判定結果に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが報知される。これにより、湿度センサの劣化のレベルを自ら判断することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0016】
本発明に係る劣化検査方法は、測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、湿度センサを加熱するヒータと、前述の湿度と前述の静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、変換部と、判定部と、を備える湿度測定装置において、湿度センサの劣化を検査する劣化検査方法であって、変換部が、湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換するステップと、判定部が、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定するステップと、を備える。
【0017】
かかる構成によれば、変換部によって、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値が湿度理論値に変換され、判定部によって、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量特性と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0018】
本発明の劣化検査方法では、記憶部に湿度静電容量情報が記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量情報は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量情報と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサの劣化によって、湿度センサが出力する静電容量値が、例えば、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値は、例えば、−15[%]から−5[%]になり、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサが出力する静電容量値が線型性を有する湿度理論値に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値には、湿度センサの劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサに加熱開始から一の所定時間内に、湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて判定することにより、従来の劣化検査方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る湿度測定装置および劣化検査方法によれば、湿度センサが出力する静電容量値が線型性を有する湿度理論値に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値には、湿度センサの劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に、湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置または従来の劣化検査方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサを交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における湿度測定装置を説明する正面図である。
【図2】図1に示したII線矢視方向上面図である。
【図3】図1に示したIII線矢視方向側面図である。
【図4】図2および図3に示したセンサプローブにおけるセンサヘッドの脱着の様子を説明する斜視図である。
【図5】図2および図3に示したセンサプローブにおけるセンサキャップの脱着の様子を説明する斜視図である。
【図6】図1に示した温湿度測定装置の機能的構成を説明するブロック図である。
【図7】図6に示したCPUの機能的構成を説明するブロック図である。
【図8】図4ないし図6に示した湿度センサの劣化を説明するためのグラフである。
【図9】図4ないし図6に示した湿度センサにおける湿度静電容量特性の一例を説明するグラフである。
【図10】図9に示した湿度静電容量特性の一部を示すグラフである。
【図11】図6に示したメモリが記憶する湿度静電容量情報の一例を説明するグラフである。
【図12】図1に示した湿度測定装置が湿度センサの劣化を検査する動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0022】
図1ないし図12は、本発明の一実施形態を示すためのものである。図1は、本発明の一実施形態における湿度測定装置を説明する正面図である。図1に示すように、湿度測定装置100は、第1センサユニット110と、第2センサユニット120と、本体部130と、を備える。温湿度測定装置100は測定環境の雰囲気中に設置される。
【0023】
第1センサユニット110は、測定環境の雰囲気における温度および相対湿度(以下、単に湿度という)を検出する。第1センサユニット110は、本体部130の一方側(図1において右側)に配置された固定部材F1によって本体部130に固定されている。また、第1センサユニット110は、複数の導線を束ねて被覆(シールド)したケーブルC1によって本体部130に接続されている。
【0024】
第2センサユニット120は、測定環境の雰囲気における温度および湿度を検出する。第2センサユニット120は、本体部130の他方側(図1において左側)に配置された固定部材F2によって本体部130に固定されている。また、第2センサユニット120は、複数の導線を束ねて被覆(シールド)したケーブルC2によって本体部130に接続されている。
【0025】
本体部130は、略直方体形状を呈する筐体(ケース)を有しており、この筐体の上面の略中央には、表示部131と、発光部132と、入力部133と、が設けられている。
【0026】
表示部131は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイであり、測定結果や各種の情報を表示する。発光部132は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光体であり、測定結果に基づいて発光する。入力部133は、複数のキー(ボタン)を有し、ユーザが当該キーを操作することよって、各種の情報が入力される。
【0027】
本実施形態では、第1センサユニット110および第2センサユニット120は、固定部材F1,F2によって本体部130に固定される例を示したが、これに限定されない。第1センサユニット110および第2センサユニット120は、ケーブルC1,C2を介して本体部130に接続されていればよく、本体部130と分離した構成を採用することもできる。この場合、温湿度測定装置100を測定環境の雰囲気中に設置しなくてもよく、第1センサユニット110および第2センサユニット120のみが測定環境の雰囲気中に配置されていればよい。
【0028】
図2は図1に示したII線矢視方向上面図であり、図3は図1に示したIII線矢視方向側面図である。図2に示すように、第1センサユニット110は、固定部材F1に接続されたケース111と、ケース111の内側に取り付けられたセンサプローブ112と、を備える。ケース111は、一方側(図2において右側)が開いたU字形状を有している。また、図3に示すように、ケース111は両端部に開口を有しており、センサプローブ112の一端部(図3において左端部)は、ケース111の開口を介してケーブルC1と接続している。
【0029】
図2に示すように、第2センサユニット110は、固定部材F2に接続されたケース121と、ケース121の内側に取り付けられたセンサプローブ122と、を備える。ケース121は、他方側(図2において左側)が開いたU字形状を有している。また、図示は省略するが、図3に示す第1センサユニット110の場合と同様に、ケース121は両端部に開口を有しており、センサプローブ122の一端部は、ケース121の開口を介してケーブルC2と接続している。
【0030】
図4は、図2および図3に示したセンサプローブ112におけるセンサヘッド114の脱着の様子を説明する斜視図である。図4に示すように、センサプローブ112は、センサボディ113と、センサヘッド114と、を備える。センサヘッド114の下部の台座部114aは、センサボディ113の上部に設けられたガイド部113aに嵌合可能に形成されており、センサヘッド114はセンサボディ113に脱着自在に装着される。
【0031】
また、センサヘッド114の台座部114aの上面には、雰囲気の湿度を検出する湿度センサ115と、湿度センサ115を加熱するヒータ116と、が設けられている。センサヘッド114をセンサボディ113に装着すると、湿度センサ115およびヒータ116とセンサボディ113の下部のケーブルC1とが電気的に接続される。
【0032】
湿度センサ115は、例えば、雰囲気の湿度に応じて静電容量が変化する静電容量式(静電容量変化型)の感湿素子であり、検出した湿度に応じた静電容量値を検出信号(湿度検出信号)として出力する。なお、感湿層の材料は、例えば、高分子化合物やセラミックなどであってよく、その材料を問わない。
【0033】
ヒータ116は、湿度センサ115の一方の面(図4において手前の面)に、接着剤などを介して固定されている。また、ヒータ116は、雰囲気の温度を検出する温度センサを兼ねている。すなわち、ヒータ116は、例えば、測温抵抗体であり、湿度センサ115の加熱を行っていないときは、検出した温度に応じた抵抗値を検出信号(温度検出信号)として出力する。これにより、ヒータ116は温度センサとして機能することができる。
【0034】
なお、ヒータ116が温度センサを兼ねる場合に限定されず、センサヘッド114は、湿度センサを加熱するヒータと雰囲気の温度を検出する温度センサとをそれぞれ有するように構成することが可能である。
【0035】
図5は、図2および図3に示したセンサプローブ112におけるセンサキャップ117の脱着の様子を説明する斜視図である。図5に示すように、センサプローブ112は、センサボディ113のコネクタ部113bに脱着可能に装着されるセンサキャップ117をさらに備える。センサヘッド114が装着されたセンサボディ113に、センサキャップ117を装着すると、湿度センサ115およびヒータ116がセンサキャップ117によって覆われ、保護される。
【0036】
また、センサキャップ117の上面には、気体の流通を可能にするメッシュ117aが設けられている。これにより、湿度センサ115は測定環境の雰囲気の湿度を検出する湿度センサとして機能するとともに、ヒータ116は測定環境の雰囲気の温度を検出する温度センサとして機能する。
【0037】
なお、図2に示すセンサプローブ122の構成は、前述したセンサプローブ112と同様の構成である。すなわち、センサプローブ122は、センサボディ123と、センサヘッド124と、センサキャップ127と、を備え、センサヘッド124は、湿度センサ125と、ヒータ126と、を有する。よって、前述したセンサプローブ112の説明をもってセンサプローブ122の説明を省略する。
【0038】
図6は、図1に示した温湿度測定装置100の機能的構成を説明するブロック図である。図6に示すように、本体部130は、その筐体の内部に、湿度信号変換回路134,135と、温度信号変換回路136,137と、ヒータエレメント駆動回路138,139と、マイクロプロセッサ140と、アナログ出力部150と、デジタル通信部160と、電源部170と、が設けられている。
【0039】
湿度信号変換回路134は、第1センサユニット110の湿度センサ115に接続されており、湿度センサ115から入力される湿度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0040】
湿度信号変換回路135は、第2センサユニット120の湿度センサ125に接続されており、湿度エレメント125から入力される湿度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0041】
温度信号変換回路136は、第1センサユニット110のヒータ116に接続されており、ヒータ116から入力される温度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0042】
温度信号変換回路137は、第2センサユニット120のヒータ126に接続されており、ヒータ126から入力される温度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0043】
ヒータエレメント駆動回路138は、第1センサユニット110のヒータ116に接続されており、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号に基づいて、ヒータ116に電流を供給して駆動する。具体的には、ヒータエレメント駆動回路138は、湿度センサ115の感湿層の材料が高分子化合物の場合、ヒータ116の温度が、例えば70〜180[℃]程度になるように駆動し、湿度センサ115の感湿層の材料がセラミックの場合、ヒータ116の温度が、例えば700〜1200[℃]程度になるように駆動する。
【0044】
ヒータエレメント駆動回路139は、第2センサユニット120のヒータ126に接続されており、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号に基づいて、ヒータ126に電流を供給して駆動する。具体的には、ヒータエレメント駆動回路139は、湿度センサ125の感湿層の材料が高分子化合物の場合、ヒータ126の温度が、例えば70〜180[℃]程度になるように駆動し、湿度センサ125の感湿層の材料がセラミックの場合、ヒータ126の温度が、例えば700〜1200[℃]程度になるように駆動する。
【0045】
本実施形態では、湿度信号変換回路134,135、温度信号変換回路136,137、およびヒータエレメント駆動回路138,139を、それぞれ第1センサユニット110用と第2センサユニット120用とに設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、湿度信号変換回路、温度信号変換回路、およびヒータエレメント駆動回路のうちの少なくとも1つについて、第1センサユニット110および第2センサユニット120の兼用になるように構成することが可能である。
【0046】
アナログ出力部150は、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号、データを電圧信号または電流信号に変換して本体部130の外部に出力するためのものである。アナログ出力部150は、出力端子を含み、当該出力端子に接続された外部機器、例えば湿度制御用のコントローラにアナログ信号を出力する。
【0047】
デジタル通信部160は、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号、データを本体部130の外部に出力するためのものである。デジタル通信部160は、出力端子を含み、当該出力端子に接続された外部機器、例えば中央監視装置にデジタル信号を出力する。なお、デジタル通信部160は、単にオン/オフを出力する接点(ピン)を含む出力端子であってもよい。
【0048】
電源部170は、湿度測定装置100の各部に電力を供給するためのものである。なお、電源部170は、本体部130の内部に設けられる場合に限定されず、本体部130の外部に設けるようにしてもよい。
【0049】
マイクロプロセッサ140は、A/D変換器141と、CPU142と、ROM143と、RAM144と、不揮発性のメモリ145と、を備える。また、マイクロプロセッサ140は、前述した表示部131、発光部132、入力部133、アナログ出力部150、およびデジタル通信部160に接続されている。
【0050】
A/D変換器141は、マイクロプロセッサ140に入力された電圧信号、すなわち、アナログ信号をデジタル信号に変換してCPU142に出力する。本実施形態では、A/D変換器141は、湿度信号変換回路134から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものを湿度センサ115の静電容量値C1とし、湿度信号変換回路135から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものを湿度センサ125の静電容量値C2として、CPU142に出力する。また、A/D変換器141は、温度信号変換回路136から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものをヒータ116の温度検出値T1とし、温度信号変換回路137から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものをヒータ126の温度検出値T2として、CPU142に出力する。
【0051】
CPU142は、RAM144およびメモリ145に対してデータの読み出しや書き込みを行いながら、ROM143に記憶されたプログラムに基づいて各種の演算を行う。また、CPU142は、制御信号やデータなどを出力しながら、湿度測定装置100の動作を制御する。
【0052】
メモリ145は、湿度の測定前にあらかじめ登録された情報や、湿度の測定中に得られた情報などを記憶するためのものである。メモリ145に記憶される情報は、CPU1428によって書き込まれ、または読み出される。本実施形態では、後述する湿度静電容量情報があらかじめ記憶されている。
【0053】
本実施形態では、湿度測定装置100が第1センサユニット110および第2センサユニット120を備え、測定環境の雰囲気における湿度および温度を測定する例を説明したが、これに限定されない。第1センサユニット110および第2センサユニット120のうちのいずれか一方は、湿度センサのみを有し、湿度のみを測定するようにしてもよい。また、湿度測定装置100は、第1センサユニット110および第2センサユニット120のうちのいずれか一方のみを備えるようにしてもよいし、3つ以上のセンサユニット(湿度センサ)を備えるようにしてもよい。
【0054】
なお、以下において、特に明示した場合を除き、説明の簡略化のために、湿度測定装置100が備える第1センサユニット110および第2センサユニット120のうち、第1センサユニット110を使用して湿度を測定するものとして説明する。
【0055】
図7は図6に示したCPU142の機能的構成を示すブロック図である。図7に示すように、CPU142は、湿度理論値変換部142aと、加熱制御部142bは、湿度理論値記録部142cと、出力制御部142dと、劣化判定部142eと、劣化報知部142fと、を備える。
【0056】
湿度理論値変換部142aは、メモリ145に記憶された湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115からA/D変換器141を介して入力された静電容量値C1を、湿度理論値HT1に変換する。
【0057】
加熱制御部142bは、ヒータエレメント駆動回路138に制御信号を出力し、ヒータ116を所定時間駆動する。これにより、湿度センサ115が加熱され、劣化した湿度センサ115は回復する。
【0058】
湿度理論値記録部142cは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1を、メモリ145に書き込んで記録する。
【0059】
出力制御部142dは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1に基づいて、湿度出力値Hを決定し、決定した湿度出力値Hを表示部131に出力して表示させる。
【0060】
劣化判定部142eは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベル(程度、度合い)を判定する。
【0061】
劣化報知部142fは、劣化判定部142eによる判定結果に基づいて、発光部132に制御信号を出力し、発光部132を点灯または点滅させる。
【0062】
図8は、図4ないし図6に示した湿度センサ115の劣化を説明するためのグラフである。なお、以下において、特に明示した場合を除き、説明の簡略化のために、測定環境の雰囲気の湿度は一定のまま変化していないものとして説明する。
【0063】
一般に、測定環境の雰囲気中に薬品、溶剤などのガス(気体)が含まれる場合や、相対湿度が高湿度、例えば、90[%]以上の環境である場合などに、湿度センサ115は、これらの影響を受けて劣化する。そのため、図8に示すように、測定環境の雰囲気の湿度が実際には変化していないにもかかわらず、湿度センサ115が検出する湿度検出値hは、例えば、時刻t1−t2間のように、時間の経過とともに上昇する。
【0064】
そのため、例えば、時刻t2において、加熱制御部142bにより湿度センサ115を加熱する。加熱終了後に、湿度検出値hはほぼ0(ゼロ)[%]付近まで一時的に低下した後、時間の経過とともに徐々に安定し、測定環境の雰囲気の湿度に応じた値になる。
【0065】
しかしながら、湿度センサ115は、薬品、溶剤などのガス(気体)や高湿度などの影響を受けて再び劣化するので、湿度検出値hは、例えば、時刻t2−t3間のように、時間の経過とともに再び上昇する。よって、例えば、時刻t3において、加熱制御部142bにより湿度エレメント115を再び加熱する。このように、湿度センサ115を周期的に、例えば、加熱周期Tで加熱することにより、湿度センサ115の性能や品質を保って(維持して)いる。
【0066】
ただし、劣化した湿度センサ115を過熱することで加熱クリーニングを行っても、湿度センサ115は完全に回復するわけではない。湿度センサ115を過熱するごとに、ある程度の劣化が残存して湿度センサ115に蓄積されていく。そのため、湿度センサ115は、所定期間使用され続けると検出誤差が大きくなり、加熱しても要求される検出精度
を満たすまでに回復しなくなる。この場合、湿度測定装置100の利用者(ユーザ)は、湿度センサ115を交換する必要がある。
【0067】
図9は図4ないし図6に示した湿度センサ115における湿度静電容量特性の一例を説明するグラフであり、図10は、図9に示した湿度静電容量特性の一部を示すグラフである。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサ115において、測定環境の雰囲気の湿度、すなわち、実際の湿度に対して湿度センサ115が出力する静電容量の特性(以下、湿度静電容量特性という)は、図9および図10において実線で示すグラフL1のように、線型性を有していない(非線型性を有する)。具体的には、湿度センサ115が出力する静電容量値C1は、例えば、10〜90[%]の高湿度の範囲に対して線型性を有するが、例えば、0〜10[%]の低湿度の範囲に対して線型性を有していない。
【0068】
一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において破線で示すグラフL2のように、正常時の、すなわち、劣化していない湿度センサの湿度静電容量特性のグラフL1と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115が出力する静電容量値C1が、例えば、図9に示すように、169[pF]から171[pF]に2[pF]変化する場合、湿度静電容量特性に基づく湿度センサ115の湿度検出値hは、20[%]から30[%]に10[%]変化する。
【0069】
従来の湿度測定装置または従来の劣化検査方法では、湿度センサの加熱終了直後に、湿度センサの湿度検出値に基づいて、湿度センサの交換が必要であるか否かを判定していた。例えば、図8に示すように、時刻t1の最初の加熱クリーニングの直後の湿度検出値h1を基準値として、時刻t2,t3,t4,t5,t6の各加熱クリーニングの直後の湿度検出値h2、h3,h4,h5,h6との差Δh2,Δh3,Δh4,Δh5,Δh6が所定のしきい値以上である場合に、湿度センサの交換が必要であると判定していた。
【0070】
しかし、湿度センサの加熱終了直後は、湿度センサの周辺の湿度がほぼ0(ゼロ)[%]になるが、高温、例えば、100〜180[℃]に加熱して湿度を0(ゼロ)[%]付近にしている場合、劣化による湿度検出値の変化が小さくなってしまう。
【0071】
ここで、実際の被測定環境の雰囲気が、例えば、気温25[℃]、湿度50[%]であるときに、雰囲気中の空気を100[℃]以上に加熱した場合、湿度は以下の表1に示すように、0(ゼロ)[%]付近の値に低下する。
【0072】
【表1】
【0073】
一方、前述した気温25[℃]、湿度50[%]の雰囲気において、湿度センサが劣化し、湿度センサの湿度検出値が10[%]変化(シフト)して60[%]である場合に、同様に、雰囲気中の空気を100[℃]以上に加熱すると、湿度は以下の表2に示すような値になる。
【0074】
【表2】
【0075】
表1および表2を比較すると、気温25[℃]における10[%]の湿度差は、100〜150[℃]の範囲では0.3[%]以下の湿度差に減少してしまうことが分かる。
【0076】
よって、湿度センサを高温に加熱して低湿度になった場合、図10に示すように、湿度センサの劣化によって、湿度センサの静電容量値が、2[pF]変化しても、湿度検出値は、例えば、1[%]から3[%]に2[%]しか変化しない。このように、湿度センサの加熱終了直後のような高温による低湿度の範囲では、湿度検出値には、劣化した湿度センサの影響(変化)が表れにくいため、この湿度検出値に基づいて、湿度センサの交換が必要であるか否かを判定するのは、困難であり、判定精度が低かった。
【0077】
これに対し、本実施形態の湿度測定装置100または本実施形態の劣化検査方法では、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が湿度理論値HR1に変換され、ヒータ116による湿度センサ115の加熱終了中または加熱終了直後に湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。
【0078】
図11は図6に示したメモリ145が記憶する湿度静電容量情報の一例を説明するグラフである。図6に示すメモリ145には、湿度静電容量情報として、図11において太線で示すグラフL3の情報が、例えば、テーブル形式で記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。
【0079】
一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量情報は、図11において太破線で示すグラフL4のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量情報のグラフL3と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が、例えば、図11に示すように、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値HR1は、−15[%]から−5[%]になり、図9に示した高湿度の範囲における湿度静電容量特性と同様に、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が線型性を有する湿度理論値HT1に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値HT1には、湿度センサ115の劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサ115の加熱中または加熱終了直後、すなわち、湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HT1に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置または従来の劣化検査方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。
【0080】
なお、本明細書における「線型性」という用語は、数学的に厳密に線型性(linearity)を有する場合に限定されず、略線型性を有する場合をも含む意味である。
【0081】
次に、湿度測定装置100が湿度センサ115の劣化を検査する動作について説明する。
【0082】
図12は、図1に示した湿度測定装置100が湿度センサの劣化を検査する動作を説明するフローチャートである。例えば、電源スイッチが投入されて温湿度測定装置100が起動したとき、あるいは、センサヘッド114または湿度センサ115自体が交換され、入力部133からリセット信号が入力されたときに、CPU142は、図12に示す劣化検査処理S100を実行する。すなわち、まず、CPU142は、初期処理を行う(S101)。
【0083】
初期処理S101では、CPU142は、メモリ145に予め記憶されたデータを読み出して、前述した加熱周期Tや後述するしきい値TVなどの各種の値を設定する。また、CPU142は、例えば、マイクロプロセッサ140に内蔵された水晶振動子などのクロック信号に基づいて、時間の計測を開始する。
【0084】
次に、CPU142は、計測を開始してから経過した時間が、加熱周期T未満であるか否かを判定する(S102)。
【0085】
S102の判定の結果、経過した時間が加熱周期T未満である場合、湿度理論値変換部142aは、メモリ145に記憶された湿度静電容量情報を読み出して、湿度センサ115からA/D変換器141を介して入力された静電容量値C1を、湿度理論値HT1に変換する(S103)。
【0086】
S103の後、出力制御部142dは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1が「0」(ゼロ)以上であるか否かを判定する(S104)。
【0087】
S104の判定の結果、湿度理論値HT1が「0」(ゼロ)以上である場合、出力制御部142dは、湿度理論値HT1をそのまま湿度出力値Hとして表示部131に出力し、表示部131に表示させる(S105)。
【0088】
一方、S104の判定の結果、湿度理論値HT1が「0」(ゼロ)未満である、すなわち、湿度理論値HT1が負の値である場合、出力制御部142dは、「0」(ゼロ)を湿度出力値Hとして表示部131に出力して表示させる(S106)。ここで、湿度静電容量情報は湿度と静電容量とが線型性を有する理論的な関係を示すので、図11のグラフL3に示すように、静電容量値C1に対して、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値を取ることがある。よって、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hが表示され、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値であるときに、湿度出力値Hがゼロであることにより、劣化のレベルを判定するため(判定用)の湿度理論値HT1を用いて、湿度出力値Hを表示することができるとともに、負の値である湿度理論値HT1をそのまま表示するのを防止することができる。
【0089】
本実施形態では、S105またはS106において、出力制御部142dが湿度出力値Hを表示部131に出力して表示させるようにしたが、これに限定されない。出力制御部142dは、表示部131に代えて、または、表示部131とともに、アナログ出力部150およびデジタル通信部160のうちの少なくとも一方に、湿度出力値Hを出力するようにしてもよい。これにより、湿度測定装置100に接続する外部機器に湿度出力値Hを出力することが可能となる。
【0090】
S105またはS106の後、CPU142は、例えば、電源スイッチが切断されて湿度測定装置100が停止するか、あるいは入力部133からリセット信号が入力されるまで、S102のステップに戻り、以降のステップを再度行う。
【0091】
一方、S102の判定の結果、経過した時間が加熱周期T未満でない、すなわち、経過した時間が加熱周期T以上である場合、加熱制御部142bは、ヒータエレメント駆動回路138に制御信号を出力してヒータ116を所定時間駆動し、ヒータ116が湿度センサ115を加熱する(S107)。なお、湿度センサ115の加熱終了後に、CPU142は、経過時間をリセットして、再度、時間の計測を開始する。
【0092】
S107の直後に、湿度理論値変換部142aは、メモリ145に記憶された湿度静電容量情報を読み出して、湿度センサ115からA/D変換器141を介して入力された静電容量値C1を、湿度理論値HT1に変換する(S108)。
【0093】
本実施形態では、S107の直後に、すなわち、湿度センサ115の加熱終了直後に、S108において湿度理論値変換部142aが湿度センサ115から入力された静電容量値C1を湿度理論値HT1に変換する例を示したが、これに限定されない。湿度理論値変換部142aは、S107における湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115から入力された静電容量値C1を湿度理論値HT1に変換すればよく、例えば、S107における湿度センサの加熱中に、S108において湿度理論値変換部142aが湿度センサ115から入力された静電容量値C1を湿度理論値HT1に変換するようにしてもよい。
【0094】
S108の後、湿度理論値記録部142cは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1をメモリ145に書き出して記録する(S109)。具体的には、湿度理論値記録部142cは、湿度センサ115による湿度の検出を開始してから、湿度センサ115が加熱された回数n(nは1以上の整数)に応じて、湿度理論値HT1を判定値DVnとして記録する。湿度センサ115が交換された場合には、回数nは「1」にリセットされる。なお、本実施形態の判定値DV1は、本発明における「基準値」の一例に相当し、本実施形態の湿度理論値記録部142cは、本発明における「設定部」の一例に相当する。
【0095】
S109の後、劣化判定部142eは、メモリ145から最初の判定値DV1と最新(直近)の判定値DVnとを読み出し、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV未満である(|DVn−DV1|<TV)であるか否かを判定する(S110)。ここで、最初の湿度センサ115の加熱終了後は、湿度センサ115が劣化していない状態である。よって、最初の湿度センサ115の加熱終了後の湿度理論値HT1である判定値DV1(基準値)と最新(直近)の湿度センサ115の加熱終了後の湿度理論値HT1である判定値DVnとの差は、現時点の湿度センサ115の劣化のレベルを表すことになる。
【0096】
本実施形態では、湿度理論値記録部142cが最初の判定値DV1を基準値として設定する例を示したが、これに限定されない。例えば、湿度センサ115による湿度の検出を開始してからある程度の時間を経過するまでは、湿度センサ115が劣化していない状態、または、ほとんど劣化していない状態であると考えられる。よって、最初の判定値DV1に代えて、例えば、2番目の判定値DV2を基準値としてもよい。この場合、S110において、劣化判定部142eは、最新(直近)の判定値DVnと2番目の判定値DV2との差が、しきい値TV未満である(|DVn−DV2|<TV)であるか否かを判定する。
【0097】
S110の判定の結果、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差がしきい値TV未満である場合、湿度センサ115は、劣化していないか、または、劣化していても劣化のレベル(程度、度合い)が低いと考えられる。よって、出力制御部142dは、前述したS104のステップを行い、湿度出力値Hを表示する。
【0098】
一方、S110の判定の結果、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差がしきい値TV未満でない、すなわち、しきい値TV以上である場合、湿度センサ115が出力する静電容量値C1が所定の値以上に変化(シフト)しており、湿度センサ115は交換しなければならないほどに劣化のレベル(程度、度合い)が高いものと考えられる。よって、劣化報知部142fは、発光部132に制御信号を出力して、発光部132を点灯または点滅させて報知する(S110)。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを自ら判断することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0099】
本実施形態では、S111において、劣化報知部142fが発光部132を点灯または点滅させて報知する例を示したが、これに限定されない。例えば、劣化報知部142fは、発光部132に代えて、または、発光部132とともに、湿度センサ115が劣化している旨を表示部131に表示(報知)するようにしてもよい。また、湿度測定装置100がスピーカなどの音声出力手段をさらに備え、劣化報知部142fは、音声出力手段により湿度センサ115が劣化している旨を報知するようにしてもよいし、あるいは、表示部131、発光部132、および音声出力手段のうちの少なくとも二つを組み合わせて、湿度センサ115が劣化している旨を報知してもよい。
【0100】
また、本実施形態では、S111において、劣化報知部142fが発光部132に制御信号を出力する例を示したが、これに限定されない。劣化報知部142fは、発光部132に代えて、または、発光部132とともに、アナログ出力部150およびデジタル通信部160のうちの少なくとも一方に、制御信号を出力するようにしてもよい。これにより、温湿度測定装置100に接続する外部機器に湿度センサ115の劣化のレベルを報知することが可能となる。
【0101】
S111の後、CPU142は、例えば、電源スイッチが切断されて湿度測定装置100が停止するか、あるいは入力部133からリセット信号が入力されるまで、S102のステップに戻り、以降のステップを再度行う。
【0102】
本実施形態では、S110において、劣化判定部142eが1つのしきい値TVに基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定する例を示したが、これに限定されない。例えば、初期処理S101において、CPU142は、複数、例えば2つのしきい値TV1,TV2(TV1<TV2)を設定する。この場合、S110において、劣化判定部142eは、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV1未満である場合(|DVn−DV1|<TV1)と、しきい値TV1以上しきい値TV2未満である場合(TV1≦|DVn−DV1|<TV2)と、しきい値TV2以上である場合(TV2≦|DVn−DV1|)と、の3つの場合に場合分けする。そして、S111において、劣化報知部142fは、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV1以上しきい値TV2未満である場合(TV1≦|DVn−DV1|<TV2)には、例えば、劣化報知部142fが発光部132を点滅させ、湿度センサ115の劣化が注意(警戒)の必要なレベルである旨を報知する。また、劣化報知部142fは、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV2以上である場合(TV2≦|DVn−DV1|)には、例えば、劣化報知部142fが発光部132を点灯させ、または発光部132の点滅のスピードを上げて(間隔を短くして)、湿度センサ115の劣化が交換の必要なレベルである旨を報知する。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを段階的に判定し、判定されレベルに応じて段階的に報知することができる。
【0103】
このように、本実施形態における湿度測定装置100によれば、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が湿度理論値HR1に変換され、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において実線で示すグラフL1のように、線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において破線で示すグラフL2のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量特性のグラフL1と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0104】
本実施形態の湿度測定装置100では、図6に示すメモリ145に、湿度静電容量情報として、図11において太線で示すグラフL3の情報が、例えば、テーブル形式で記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量情報は、図11において太破線で示すグラフL4のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量情報のグラフL3と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が、例えば、図11に示すように、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値HR1は、−15[%]から−5[%]になり、図9に示した高湿度の範囲における湿度静電容量特性と同様に、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が線型性を有する湿度理論値HT1に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値HT1には、湿度センサ115の劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサ115に加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115が出力された静電容量値C1の湿度理論値HT1に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサ115を交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【0105】
また、本実施形態における湿度測定装置100によれば、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hが表示され、湿度理論値HT1が負の値であるとき、湿度出力値Hがゼロである。ここで、湿度静電容量情報は湿度と静電容量とが線型性を有する理論的な関係を示すので、図11のグラフL3に示すように、静電容量値C1に対して、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値を取ることがある。よって、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hが表示され、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値であるときに、湿度出力値Hがゼロであることにより、劣化のレベルを判定するため(判定用)の湿度理論値HT1を用いて、湿度出力値Hを表示することができるとともに、負の値である湿度理論値HT1をそのまま表示するのを防止することができる。これにより、装置の故障や測定異常を疑われたり、測定結果に基づく制御に悪影響を及ぼしたりするおそれを低減することができ、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hの信頼性を保つ(維持)することができる。
【0106】
また、本実施形態における湿度測定装置100によれば、湿度センサ115による湿度の検出開始から所定時間を経過するまでに、ヒータ116による湿度センサ115の加熱終了後に湿度センサ115により出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1が、基準値として設定され、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115により出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1である判定値DV1と基準値との差に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。ここで、湿度センサ115による湿度の検出を開始してからある程度の時間を経過するまでは、湿度センサ115が劣化していない状態、または、ほとんど劣化していない状態であると考えられる。よって、例えば、最初の湿度センサ115の加熱開始から所定時間内の湿度理論値HT1である判定値DV1(基準値)と最新(直近)の湿度センサ115の加熱終了後の湿度理論値HT1である判定値DVnとの差は、現時点の湿度センサ115の劣化のレベルを表すことになる。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを、容易かつ正確に、判定することができる。
【0107】
また、本実施形態における湿度測定装置100によれば、劣化判定部142fの判定結果に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが報知される。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを自ら判断することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0108】
また、本実施形態における劣化検査方法によれば、湿度理論値変換部142aによって、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が湿度理論値HR1に変換され、劣化判定部142eによって、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において実線で示すグラフL1のように、線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において破線で示すグラフL2のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量特性のグラフL1と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0109】
本実施形態の劣化判定方法では、図6に示すメモリ145に、湿度静電容量情報として、図11において太線で示すグラフL3の情報が、例えば、テーブル形式で記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量情報は、図11において太破線で示すグラフL4のように、劣化意していない湿度センサ115の湿度静電容量情報のグラフL3と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が、例えば、図11に示すように、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値HR1は、−15[%]から−5[%]になり、図9に示した高湿度の範囲における湿度静電容量特性と同様に、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が線型性を有する湿度理論値HT1に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値HT1には、湿度センサ115の劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサ115に加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115が出力された静電容量値C1の湿度理論値HT1に基づいて判定することにより、従来の劣化判定方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサ115を交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【0110】
なお、前述した実施形態の構成は、組み合わせたりあるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0111】
100…湿度測定装置
115,125…湿度センサ
116,126…ヒータ
131…表示部
133…発光部
142…CPU
142a…湿度理論値変換部
142b…加熱制御部
142c…湿度理論値記録部
142d…出力制御部
142e…劣化判定部
142f…劣化報知部
145…メモリ
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、湿度測定装置および劣化検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、湿度測定装置には、測定環境の雰囲気、例えば、薬品、溶剤などのガスや高湿度環境の影響により、湿度測定装置が有する湿度センサ(感湿素子)の性能や品質が低下(以下、劣化という)してしまうという問題があった。このため、感湿素子を加熱すること(以下、加熱クリーニングという)により性能や品質を回復させ、長時間安定して湿度を測定できる湿度測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−172776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、劣化した湿度センサに加熱クリーニングを行っても、湿度センサは完全に回復するわけではなく、ある程度の劣化が残存して湿度センサに蓄積されるので、湿度センサを交換する必要があった。
【0005】
従来の湿度測定装置では、湿度センサの加熱中または終了直後に、湿度センサの湿度検出値に基づいて、湿度センサの交換が必要であるか否かを判定していた。しかし、湿度センサの加熱中または終了直後は、湿度センサの周辺の相対湿度がほぼ0(ゼロ)[%]になるが、高温、例えば100〜180[℃]に加熱して湿度を0(ゼロ)[%]付近にしている場合、劣化による相対湿度の変化量が小さくなってしまう。そのため、湿度センサの加熱中または終了直後のような低湿度の範囲では、湿度検出値に劣化した湿度センサの影響(変化)が表れにくく、この湿度検出値に基づいて湿度センサの交換が必要であるか否かを判定すると、例えば、湿度センサの劣化のレベル(程度、度合い)が十分高いにもかかわらず、湿度センサの交換が必要でないと判定されるなど、判定精度が低いという問題があった。
【0006】
本発明のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することのできる湿度測定装置および劣化検査方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る湿度測定装置は、測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、湿度センサを加熱するヒータと、前述の湿度と前述の静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換する変換部と、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定する判定部と、を備える。
【0008】
かかる構成によれば、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値が湿度理論値に変換され、ヒータによる湿度センサの加熱終了後に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量特性と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0009】
本発明の湿度測定装置では、記憶部に湿度静電容量情報が記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量情報は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量情報と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサの劣化によって、湿度センサが出力する静電容量値が、例えば、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値は、例えば、−15[%]から−5[%]になり、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサが出力する静電容量値が線型性を有する湿度理論値に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値には、湿度センサの劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサに加熱開始から一の所定時間内に、湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサを交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【0010】
好ましくは、湿度理論値に基づく湿度出力値を表示する表示部をさらに備え、湿度出力値は、湿度理論値が負の値であるとき、ゼロである。
【0011】
かかる構成によれば、湿度理論値に基づく湿度出力値が表示され、湿度理論値が負の値であるとき、湿度出力値がゼロである。ここで、湿度静電容量情報は湿度と静電容量とが線型性を有する理論的な関係を示すので、湿度センサが出力する静電容量値に対して、湿度理論値が実際には存在しない負の値を取ることがある。よって、湿度理論値に基づく湿度出力値が表示され、湿度理論値が実際には存在しない負の値であるときに、湿度出力値がゼロであることにより、劣化のレベルを判定するため(判定用)の湿度理論値を用いて、湿度出力値を表示することができるとともに、負の値である湿度理論値をそのまま表示するのを防止することができる。これにより、装置の故障や測定異常を疑われたり、測定結果に基づく制御に悪影響を及ぼしたりするおそれを低減することができ、湿度理論値に基づく湿度出力値の信頼性を保つ(維持)することができる。
【0012】
好ましくは、湿度センサによる湿度の検出開始から他の所定時間を経過するまでに、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値を基準値として設定する設定部をさらに備え、判定部は、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値と基準値との差に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定する。
【0013】
かかる構成によれば、湿度センサによる湿度の検出開始から他の所定時間を経過するまでに、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値が、基準値として設定され、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサにより出力された静電容量値の湿度理論値と基準値との差に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが判定される。ここで、湿度センサによる湿度の検出を開始してからある程度の時間を経過するまでは、湿度センサが劣化していない状態、または、ほとんど劣化していない状態であると考えられる。よって、例えば、最初の湿度センサの加熱中または加熱終了直後の湿度理論値である基準値と最新(直近)の湿度センサの加熱中または加熱終了直後の湿度理論値との差は、現時点の湿度センサの劣化のレベルを表すことになる。これにより、湿度センサの劣化のレベルを、容易かつ正確に、判定することができる。
【0014】
好ましくは、判定部の判定結果に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを報知する報知部をさらに備える。
【0015】
かかる構成によれば、判定部の判定結果に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが報知される。これにより、湿度センサの劣化のレベルを自ら判断することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0016】
本発明に係る劣化検査方法は、測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、湿度センサを加熱するヒータと、前述の湿度と前述の静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、変換部と、判定部と、を備える湿度測定装置において、湿度センサの劣化を検査する劣化検査方法であって、変換部が、湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換するステップと、判定部が、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定するステップと、を備える。
【0017】
かかる構成によれば、変換部によって、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサから出力された静電容量値が湿度理論値に変換され、判定部によって、ヒータによる湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて、湿度センサの劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量特性は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量特性と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0018】
本発明の劣化検査方法では、記憶部に湿度静電容量情報が記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサにおいて、湿度静電容量情報は、劣化していない湿度センサの湿度静電容量情報と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサの劣化によって、湿度センサが出力する静電容量値が、例えば、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値は、例えば、−15[%]から−5[%]になり、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサが出力する静電容量値が線型性を有する湿度理論値に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値には、湿度センサの劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサに加熱開始から一の所定時間内に、湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて判定することにより、従来の劣化検査方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る湿度測定装置および劣化検査方法によれば、湿度センサが出力する静電容量値が線型性を有する湿度理論値に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値には、湿度センサの劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に、湿度センサから出力された静電容量値の湿度理論値に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置または従来の劣化検査方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサを交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における湿度測定装置を説明する正面図である。
【図2】図1に示したII線矢視方向上面図である。
【図3】図1に示したIII線矢視方向側面図である。
【図4】図2および図3に示したセンサプローブにおけるセンサヘッドの脱着の様子を説明する斜視図である。
【図5】図2および図3に示したセンサプローブにおけるセンサキャップの脱着の様子を説明する斜視図である。
【図6】図1に示した温湿度測定装置の機能的構成を説明するブロック図である。
【図7】図6に示したCPUの機能的構成を説明するブロック図である。
【図8】図4ないし図6に示した湿度センサの劣化を説明するためのグラフである。
【図9】図4ないし図6に示した湿度センサにおける湿度静電容量特性の一例を説明するグラフである。
【図10】図9に示した湿度静電容量特性の一部を示すグラフである。
【図11】図6に示したメモリが記憶する湿度静電容量情報の一例を説明するグラフである。
【図12】図1に示した湿度測定装置が湿度センサの劣化を検査する動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0022】
図1ないし図12は、本発明の一実施形態を示すためのものである。図1は、本発明の一実施形態における湿度測定装置を説明する正面図である。図1に示すように、湿度測定装置100は、第1センサユニット110と、第2センサユニット120と、本体部130と、を備える。温湿度測定装置100は測定環境の雰囲気中に設置される。
【0023】
第1センサユニット110は、測定環境の雰囲気における温度および相対湿度(以下、単に湿度という)を検出する。第1センサユニット110は、本体部130の一方側(図1において右側)に配置された固定部材F1によって本体部130に固定されている。また、第1センサユニット110は、複数の導線を束ねて被覆(シールド)したケーブルC1によって本体部130に接続されている。
【0024】
第2センサユニット120は、測定環境の雰囲気における温度および湿度を検出する。第2センサユニット120は、本体部130の他方側(図1において左側)に配置された固定部材F2によって本体部130に固定されている。また、第2センサユニット120は、複数の導線を束ねて被覆(シールド)したケーブルC2によって本体部130に接続されている。
【0025】
本体部130は、略直方体形状を呈する筐体(ケース)を有しており、この筐体の上面の略中央には、表示部131と、発光部132と、入力部133と、が設けられている。
【0026】
表示部131は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイであり、測定結果や各種の情報を表示する。発光部132は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光体であり、測定結果に基づいて発光する。入力部133は、複数のキー(ボタン)を有し、ユーザが当該キーを操作することよって、各種の情報が入力される。
【0027】
本実施形態では、第1センサユニット110および第2センサユニット120は、固定部材F1,F2によって本体部130に固定される例を示したが、これに限定されない。第1センサユニット110および第2センサユニット120は、ケーブルC1,C2を介して本体部130に接続されていればよく、本体部130と分離した構成を採用することもできる。この場合、温湿度測定装置100を測定環境の雰囲気中に設置しなくてもよく、第1センサユニット110および第2センサユニット120のみが測定環境の雰囲気中に配置されていればよい。
【0028】
図2は図1に示したII線矢視方向上面図であり、図3は図1に示したIII線矢視方向側面図である。図2に示すように、第1センサユニット110は、固定部材F1に接続されたケース111と、ケース111の内側に取り付けられたセンサプローブ112と、を備える。ケース111は、一方側(図2において右側)が開いたU字形状を有している。また、図3に示すように、ケース111は両端部に開口を有しており、センサプローブ112の一端部(図3において左端部)は、ケース111の開口を介してケーブルC1と接続している。
【0029】
図2に示すように、第2センサユニット110は、固定部材F2に接続されたケース121と、ケース121の内側に取り付けられたセンサプローブ122と、を備える。ケース121は、他方側(図2において左側)が開いたU字形状を有している。また、図示は省略するが、図3に示す第1センサユニット110の場合と同様に、ケース121は両端部に開口を有しており、センサプローブ122の一端部は、ケース121の開口を介してケーブルC2と接続している。
【0030】
図4は、図2および図3に示したセンサプローブ112におけるセンサヘッド114の脱着の様子を説明する斜視図である。図4に示すように、センサプローブ112は、センサボディ113と、センサヘッド114と、を備える。センサヘッド114の下部の台座部114aは、センサボディ113の上部に設けられたガイド部113aに嵌合可能に形成されており、センサヘッド114はセンサボディ113に脱着自在に装着される。
【0031】
また、センサヘッド114の台座部114aの上面には、雰囲気の湿度を検出する湿度センサ115と、湿度センサ115を加熱するヒータ116と、が設けられている。センサヘッド114をセンサボディ113に装着すると、湿度センサ115およびヒータ116とセンサボディ113の下部のケーブルC1とが電気的に接続される。
【0032】
湿度センサ115は、例えば、雰囲気の湿度に応じて静電容量が変化する静電容量式(静電容量変化型)の感湿素子であり、検出した湿度に応じた静電容量値を検出信号(湿度検出信号)として出力する。なお、感湿層の材料は、例えば、高分子化合物やセラミックなどであってよく、その材料を問わない。
【0033】
ヒータ116は、湿度センサ115の一方の面(図4において手前の面)に、接着剤などを介して固定されている。また、ヒータ116は、雰囲気の温度を検出する温度センサを兼ねている。すなわち、ヒータ116は、例えば、測温抵抗体であり、湿度センサ115の加熱を行っていないときは、検出した温度に応じた抵抗値を検出信号(温度検出信号)として出力する。これにより、ヒータ116は温度センサとして機能することができる。
【0034】
なお、ヒータ116が温度センサを兼ねる場合に限定されず、センサヘッド114は、湿度センサを加熱するヒータと雰囲気の温度を検出する温度センサとをそれぞれ有するように構成することが可能である。
【0035】
図5は、図2および図3に示したセンサプローブ112におけるセンサキャップ117の脱着の様子を説明する斜視図である。図5に示すように、センサプローブ112は、センサボディ113のコネクタ部113bに脱着可能に装着されるセンサキャップ117をさらに備える。センサヘッド114が装着されたセンサボディ113に、センサキャップ117を装着すると、湿度センサ115およびヒータ116がセンサキャップ117によって覆われ、保護される。
【0036】
また、センサキャップ117の上面には、気体の流通を可能にするメッシュ117aが設けられている。これにより、湿度センサ115は測定環境の雰囲気の湿度を検出する湿度センサとして機能するとともに、ヒータ116は測定環境の雰囲気の温度を検出する温度センサとして機能する。
【0037】
なお、図2に示すセンサプローブ122の構成は、前述したセンサプローブ112と同様の構成である。すなわち、センサプローブ122は、センサボディ123と、センサヘッド124と、センサキャップ127と、を備え、センサヘッド124は、湿度センサ125と、ヒータ126と、を有する。よって、前述したセンサプローブ112の説明をもってセンサプローブ122の説明を省略する。
【0038】
図6は、図1に示した温湿度測定装置100の機能的構成を説明するブロック図である。図6に示すように、本体部130は、その筐体の内部に、湿度信号変換回路134,135と、温度信号変換回路136,137と、ヒータエレメント駆動回路138,139と、マイクロプロセッサ140と、アナログ出力部150と、デジタル通信部160と、電源部170と、が設けられている。
【0039】
湿度信号変換回路134は、第1センサユニット110の湿度センサ115に接続されており、湿度センサ115から入力される湿度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0040】
湿度信号変換回路135は、第2センサユニット120の湿度センサ125に接続されており、湿度エレメント125から入力される湿度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0041】
温度信号変換回路136は、第1センサユニット110のヒータ116に接続されており、ヒータ116から入力される温度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0042】
温度信号変換回路137は、第2センサユニット120のヒータ126に接続されており、ヒータ126から入力される温度検出信号を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をマイクロプロセッサ140に出力する。
【0043】
ヒータエレメント駆動回路138は、第1センサユニット110のヒータ116に接続されており、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号に基づいて、ヒータ116に電流を供給して駆動する。具体的には、ヒータエレメント駆動回路138は、湿度センサ115の感湿層の材料が高分子化合物の場合、ヒータ116の温度が、例えば70〜180[℃]程度になるように駆動し、湿度センサ115の感湿層の材料がセラミックの場合、ヒータ116の温度が、例えば700〜1200[℃]程度になるように駆動する。
【0044】
ヒータエレメント駆動回路139は、第2センサユニット120のヒータ126に接続されており、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号に基づいて、ヒータ126に電流を供給して駆動する。具体的には、ヒータエレメント駆動回路139は、湿度センサ125の感湿層の材料が高分子化合物の場合、ヒータ126の温度が、例えば70〜180[℃]程度になるように駆動し、湿度センサ125の感湿層の材料がセラミックの場合、ヒータ126の温度が、例えば700〜1200[℃]程度になるように駆動する。
【0045】
本実施形態では、湿度信号変換回路134,135、温度信号変換回路136,137、およびヒータエレメント駆動回路138,139を、それぞれ第1センサユニット110用と第2センサユニット120用とに設ける例を示したが、これに限定されない。例えば、湿度信号変換回路、温度信号変換回路、およびヒータエレメント駆動回路のうちの少なくとも1つについて、第1センサユニット110および第2センサユニット120の兼用になるように構成することが可能である。
【0046】
アナログ出力部150は、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号、データを電圧信号または電流信号に変換して本体部130の外部に出力するためのものである。アナログ出力部150は、出力端子を含み、当該出力端子に接続された外部機器、例えば湿度制御用のコントローラにアナログ信号を出力する。
【0047】
デジタル通信部160は、マイクロプロセッサ140から入力される制御信号、データを本体部130の外部に出力するためのものである。デジタル通信部160は、出力端子を含み、当該出力端子に接続された外部機器、例えば中央監視装置にデジタル信号を出力する。なお、デジタル通信部160は、単にオン/オフを出力する接点(ピン)を含む出力端子であってもよい。
【0048】
電源部170は、湿度測定装置100の各部に電力を供給するためのものである。なお、電源部170は、本体部130の内部に設けられる場合に限定されず、本体部130の外部に設けるようにしてもよい。
【0049】
マイクロプロセッサ140は、A/D変換器141と、CPU142と、ROM143と、RAM144と、不揮発性のメモリ145と、を備える。また、マイクロプロセッサ140は、前述した表示部131、発光部132、入力部133、アナログ出力部150、およびデジタル通信部160に接続されている。
【0050】
A/D変換器141は、マイクロプロセッサ140に入力された電圧信号、すなわち、アナログ信号をデジタル信号に変換してCPU142に出力する。本実施形態では、A/D変換器141は、湿度信号変換回路134から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものを湿度センサ115の静電容量値C1とし、湿度信号変換回路135から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものを湿度センサ125の静電容量値C2として、CPU142に出力する。また、A/D変換器141は、温度信号変換回路136から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものをヒータ116の温度検出値T1とし、温度信号変換回路137から入力された電圧信号をデジタル信号に変換したものをヒータ126の温度検出値T2として、CPU142に出力する。
【0051】
CPU142は、RAM144およびメモリ145に対してデータの読み出しや書き込みを行いながら、ROM143に記憶されたプログラムに基づいて各種の演算を行う。また、CPU142は、制御信号やデータなどを出力しながら、湿度測定装置100の動作を制御する。
【0052】
メモリ145は、湿度の測定前にあらかじめ登録された情報や、湿度の測定中に得られた情報などを記憶するためのものである。メモリ145に記憶される情報は、CPU1428によって書き込まれ、または読み出される。本実施形態では、後述する湿度静電容量情報があらかじめ記憶されている。
【0053】
本実施形態では、湿度測定装置100が第1センサユニット110および第2センサユニット120を備え、測定環境の雰囲気における湿度および温度を測定する例を説明したが、これに限定されない。第1センサユニット110および第2センサユニット120のうちのいずれか一方は、湿度センサのみを有し、湿度のみを測定するようにしてもよい。また、湿度測定装置100は、第1センサユニット110および第2センサユニット120のうちのいずれか一方のみを備えるようにしてもよいし、3つ以上のセンサユニット(湿度センサ)を備えるようにしてもよい。
【0054】
なお、以下において、特に明示した場合を除き、説明の簡略化のために、湿度測定装置100が備える第1センサユニット110および第2センサユニット120のうち、第1センサユニット110を使用して湿度を測定するものとして説明する。
【0055】
図7は図6に示したCPU142の機能的構成を示すブロック図である。図7に示すように、CPU142は、湿度理論値変換部142aと、加熱制御部142bは、湿度理論値記録部142cと、出力制御部142dと、劣化判定部142eと、劣化報知部142fと、を備える。
【0056】
湿度理論値変換部142aは、メモリ145に記憶された湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115からA/D変換器141を介して入力された静電容量値C1を、湿度理論値HT1に変換する。
【0057】
加熱制御部142bは、ヒータエレメント駆動回路138に制御信号を出力し、ヒータ116を所定時間駆動する。これにより、湿度センサ115が加熱され、劣化した湿度センサ115は回復する。
【0058】
湿度理論値記録部142cは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1を、メモリ145に書き込んで記録する。
【0059】
出力制御部142dは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1に基づいて、湿度出力値Hを決定し、決定した湿度出力値Hを表示部131に出力して表示させる。
【0060】
劣化判定部142eは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベル(程度、度合い)を判定する。
【0061】
劣化報知部142fは、劣化判定部142eによる判定結果に基づいて、発光部132に制御信号を出力し、発光部132を点灯または点滅させる。
【0062】
図8は、図4ないし図6に示した湿度センサ115の劣化を説明するためのグラフである。なお、以下において、特に明示した場合を除き、説明の簡略化のために、測定環境の雰囲気の湿度は一定のまま変化していないものとして説明する。
【0063】
一般に、測定環境の雰囲気中に薬品、溶剤などのガス(気体)が含まれる場合や、相対湿度が高湿度、例えば、90[%]以上の環境である場合などに、湿度センサ115は、これらの影響を受けて劣化する。そのため、図8に示すように、測定環境の雰囲気の湿度が実際には変化していないにもかかわらず、湿度センサ115が検出する湿度検出値hは、例えば、時刻t1−t2間のように、時間の経過とともに上昇する。
【0064】
そのため、例えば、時刻t2において、加熱制御部142bにより湿度センサ115を加熱する。加熱終了後に、湿度検出値hはほぼ0(ゼロ)[%]付近まで一時的に低下した後、時間の経過とともに徐々に安定し、測定環境の雰囲気の湿度に応じた値になる。
【0065】
しかしながら、湿度センサ115は、薬品、溶剤などのガス(気体)や高湿度などの影響を受けて再び劣化するので、湿度検出値hは、例えば、時刻t2−t3間のように、時間の経過とともに再び上昇する。よって、例えば、時刻t3において、加熱制御部142bにより湿度エレメント115を再び加熱する。このように、湿度センサ115を周期的に、例えば、加熱周期Tで加熱することにより、湿度センサ115の性能や品質を保って(維持して)いる。
【0066】
ただし、劣化した湿度センサ115を過熱することで加熱クリーニングを行っても、湿度センサ115は完全に回復するわけではない。湿度センサ115を過熱するごとに、ある程度の劣化が残存して湿度センサ115に蓄積されていく。そのため、湿度センサ115は、所定期間使用され続けると検出誤差が大きくなり、加熱しても要求される検出精度
を満たすまでに回復しなくなる。この場合、湿度測定装置100の利用者(ユーザ)は、湿度センサ115を交換する必要がある。
【0067】
図9は図4ないし図6に示した湿度センサ115における湿度静電容量特性の一例を説明するグラフであり、図10は、図9に示した湿度静電容量特性の一部を示すグラフである。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサ115において、測定環境の雰囲気の湿度、すなわち、実際の湿度に対して湿度センサ115が出力する静電容量の特性(以下、湿度静電容量特性という)は、図9および図10において実線で示すグラフL1のように、線型性を有していない(非線型性を有する)。具体的には、湿度センサ115が出力する静電容量値C1は、例えば、10〜90[%]の高湿度の範囲に対して線型性を有するが、例えば、0〜10[%]の低湿度の範囲に対して線型性を有していない。
【0068】
一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において破線で示すグラフL2のように、正常時の、すなわち、劣化していない湿度センサの湿度静電容量特性のグラフL1と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115が出力する静電容量値C1が、例えば、図9に示すように、169[pF]から171[pF]に2[pF]変化する場合、湿度静電容量特性に基づく湿度センサ115の湿度検出値hは、20[%]から30[%]に10[%]変化する。
【0069】
従来の湿度測定装置または従来の劣化検査方法では、湿度センサの加熱終了直後に、湿度センサの湿度検出値に基づいて、湿度センサの交換が必要であるか否かを判定していた。例えば、図8に示すように、時刻t1の最初の加熱クリーニングの直後の湿度検出値h1を基準値として、時刻t2,t3,t4,t5,t6の各加熱クリーニングの直後の湿度検出値h2、h3,h4,h5,h6との差Δh2,Δh3,Δh4,Δh5,Δh6が所定のしきい値以上である場合に、湿度センサの交換が必要であると判定していた。
【0070】
しかし、湿度センサの加熱終了直後は、湿度センサの周辺の湿度がほぼ0(ゼロ)[%]になるが、高温、例えば、100〜180[℃]に加熱して湿度を0(ゼロ)[%]付近にしている場合、劣化による湿度検出値の変化が小さくなってしまう。
【0071】
ここで、実際の被測定環境の雰囲気が、例えば、気温25[℃]、湿度50[%]であるときに、雰囲気中の空気を100[℃]以上に加熱した場合、湿度は以下の表1に示すように、0(ゼロ)[%]付近の値に低下する。
【0072】
【表1】
【0073】
一方、前述した気温25[℃]、湿度50[%]の雰囲気において、湿度センサが劣化し、湿度センサの湿度検出値が10[%]変化(シフト)して60[%]である場合に、同様に、雰囲気中の空気を100[℃]以上に加熱すると、湿度は以下の表2に示すような値になる。
【0074】
【表2】
【0075】
表1および表2を比較すると、気温25[℃]における10[%]の湿度差は、100〜150[℃]の範囲では0.3[%]以下の湿度差に減少してしまうことが分かる。
【0076】
よって、湿度センサを高温に加熱して低湿度になった場合、図10に示すように、湿度センサの劣化によって、湿度センサの静電容量値が、2[pF]変化しても、湿度検出値は、例えば、1[%]から3[%]に2[%]しか変化しない。このように、湿度センサの加熱終了直後のような高温による低湿度の範囲では、湿度検出値には、劣化した湿度センサの影響(変化)が表れにくいため、この湿度検出値に基づいて、湿度センサの交換が必要であるか否かを判定するのは、困難であり、判定精度が低かった。
【0077】
これに対し、本実施形態の湿度測定装置100または本実施形態の劣化検査方法では、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が湿度理論値HR1に変換され、ヒータ116による湿度センサ115の加熱終了中または加熱終了直後に湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。
【0078】
図11は図6に示したメモリ145が記憶する湿度静電容量情報の一例を説明するグラフである。図6に示すメモリ145には、湿度静電容量情報として、図11において太線で示すグラフL3の情報が、例えば、テーブル形式で記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。
【0079】
一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量情報は、図11において太破線で示すグラフL4のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量情報のグラフL3と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が、例えば、図11に示すように、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値HR1は、−15[%]から−5[%]になり、図9に示した高湿度の範囲における湿度静電容量特性と同様に、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が線型性を有する湿度理論値HT1に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値HT1には、湿度センサ115の劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサ115の加熱中または加熱終了直後、すなわち、湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HT1に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置または従来の劣化検査方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。
【0080】
なお、本明細書における「線型性」という用語は、数学的に厳密に線型性(linearity)を有する場合に限定されず、略線型性を有する場合をも含む意味である。
【0081】
次に、湿度測定装置100が湿度センサ115の劣化を検査する動作について説明する。
【0082】
図12は、図1に示した湿度測定装置100が湿度センサの劣化を検査する動作を説明するフローチャートである。例えば、電源スイッチが投入されて温湿度測定装置100が起動したとき、あるいは、センサヘッド114または湿度センサ115自体が交換され、入力部133からリセット信号が入力されたときに、CPU142は、図12に示す劣化検査処理S100を実行する。すなわち、まず、CPU142は、初期処理を行う(S101)。
【0083】
初期処理S101では、CPU142は、メモリ145に予め記憶されたデータを読み出して、前述した加熱周期Tや後述するしきい値TVなどの各種の値を設定する。また、CPU142は、例えば、マイクロプロセッサ140に内蔵された水晶振動子などのクロック信号に基づいて、時間の計測を開始する。
【0084】
次に、CPU142は、計測を開始してから経過した時間が、加熱周期T未満であるか否かを判定する(S102)。
【0085】
S102の判定の結果、経過した時間が加熱周期T未満である場合、湿度理論値変換部142aは、メモリ145に記憶された湿度静電容量情報を読み出して、湿度センサ115からA/D変換器141を介して入力された静電容量値C1を、湿度理論値HT1に変換する(S103)。
【0086】
S103の後、出力制御部142dは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1が「0」(ゼロ)以上であるか否かを判定する(S104)。
【0087】
S104の判定の結果、湿度理論値HT1が「0」(ゼロ)以上である場合、出力制御部142dは、湿度理論値HT1をそのまま湿度出力値Hとして表示部131に出力し、表示部131に表示させる(S105)。
【0088】
一方、S104の判定の結果、湿度理論値HT1が「0」(ゼロ)未満である、すなわち、湿度理論値HT1が負の値である場合、出力制御部142dは、「0」(ゼロ)を湿度出力値Hとして表示部131に出力して表示させる(S106)。ここで、湿度静電容量情報は湿度と静電容量とが線型性を有する理論的な関係を示すので、図11のグラフL3に示すように、静電容量値C1に対して、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値を取ることがある。よって、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hが表示され、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値であるときに、湿度出力値Hがゼロであることにより、劣化のレベルを判定するため(判定用)の湿度理論値HT1を用いて、湿度出力値Hを表示することができるとともに、負の値である湿度理論値HT1をそのまま表示するのを防止することができる。
【0089】
本実施形態では、S105またはS106において、出力制御部142dが湿度出力値Hを表示部131に出力して表示させるようにしたが、これに限定されない。出力制御部142dは、表示部131に代えて、または、表示部131とともに、アナログ出力部150およびデジタル通信部160のうちの少なくとも一方に、湿度出力値Hを出力するようにしてもよい。これにより、湿度測定装置100に接続する外部機器に湿度出力値Hを出力することが可能となる。
【0090】
S105またはS106の後、CPU142は、例えば、電源スイッチが切断されて湿度測定装置100が停止するか、あるいは入力部133からリセット信号が入力されるまで、S102のステップに戻り、以降のステップを再度行う。
【0091】
一方、S102の判定の結果、経過した時間が加熱周期T未満でない、すなわち、経過した時間が加熱周期T以上である場合、加熱制御部142bは、ヒータエレメント駆動回路138に制御信号を出力してヒータ116を所定時間駆動し、ヒータ116が湿度センサ115を加熱する(S107)。なお、湿度センサ115の加熱終了後に、CPU142は、経過時間をリセットして、再度、時間の計測を開始する。
【0092】
S107の直後に、湿度理論値変換部142aは、メモリ145に記憶された湿度静電容量情報を読み出して、湿度センサ115からA/D変換器141を介して入力された静電容量値C1を、湿度理論値HT1に変換する(S108)。
【0093】
本実施形態では、S107の直後に、すなわち、湿度センサ115の加熱終了直後に、S108において湿度理論値変換部142aが湿度センサ115から入力された静電容量値C1を湿度理論値HT1に変換する例を示したが、これに限定されない。湿度理論値変換部142aは、S107における湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115から入力された静電容量値C1を湿度理論値HT1に変換すればよく、例えば、S107における湿度センサの加熱中に、S108において湿度理論値変換部142aが湿度センサ115から入力された静電容量値C1を湿度理論値HT1に変換するようにしてもよい。
【0094】
S108の後、湿度理論値記録部142cは、湿度理論値変換部142aにより変換された湿度理論値HT1をメモリ145に書き出して記録する(S109)。具体的には、湿度理論値記録部142cは、湿度センサ115による湿度の検出を開始してから、湿度センサ115が加熱された回数n(nは1以上の整数)に応じて、湿度理論値HT1を判定値DVnとして記録する。湿度センサ115が交換された場合には、回数nは「1」にリセットされる。なお、本実施形態の判定値DV1は、本発明における「基準値」の一例に相当し、本実施形態の湿度理論値記録部142cは、本発明における「設定部」の一例に相当する。
【0095】
S109の後、劣化判定部142eは、メモリ145から最初の判定値DV1と最新(直近)の判定値DVnとを読み出し、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV未満である(|DVn−DV1|<TV)であるか否かを判定する(S110)。ここで、最初の湿度センサ115の加熱終了後は、湿度センサ115が劣化していない状態である。よって、最初の湿度センサ115の加熱終了後の湿度理論値HT1である判定値DV1(基準値)と最新(直近)の湿度センサ115の加熱終了後の湿度理論値HT1である判定値DVnとの差は、現時点の湿度センサ115の劣化のレベルを表すことになる。
【0096】
本実施形態では、湿度理論値記録部142cが最初の判定値DV1を基準値として設定する例を示したが、これに限定されない。例えば、湿度センサ115による湿度の検出を開始してからある程度の時間を経過するまでは、湿度センサ115が劣化していない状態、または、ほとんど劣化していない状態であると考えられる。よって、最初の判定値DV1に代えて、例えば、2番目の判定値DV2を基準値としてもよい。この場合、S110において、劣化判定部142eは、最新(直近)の判定値DVnと2番目の判定値DV2との差が、しきい値TV未満である(|DVn−DV2|<TV)であるか否かを判定する。
【0097】
S110の判定の結果、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差がしきい値TV未満である場合、湿度センサ115は、劣化していないか、または、劣化していても劣化のレベル(程度、度合い)が低いと考えられる。よって、出力制御部142dは、前述したS104のステップを行い、湿度出力値Hを表示する。
【0098】
一方、S110の判定の結果、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差がしきい値TV未満でない、すなわち、しきい値TV以上である場合、湿度センサ115が出力する静電容量値C1が所定の値以上に変化(シフト)しており、湿度センサ115は交換しなければならないほどに劣化のレベル(程度、度合い)が高いものと考えられる。よって、劣化報知部142fは、発光部132に制御信号を出力して、発光部132を点灯または点滅させて報知する(S110)。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを自ら判断することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0099】
本実施形態では、S111において、劣化報知部142fが発光部132を点灯または点滅させて報知する例を示したが、これに限定されない。例えば、劣化報知部142fは、発光部132に代えて、または、発光部132とともに、湿度センサ115が劣化している旨を表示部131に表示(報知)するようにしてもよい。また、湿度測定装置100がスピーカなどの音声出力手段をさらに備え、劣化報知部142fは、音声出力手段により湿度センサ115が劣化している旨を報知するようにしてもよいし、あるいは、表示部131、発光部132、および音声出力手段のうちの少なくとも二つを組み合わせて、湿度センサ115が劣化している旨を報知してもよい。
【0100】
また、本実施形態では、S111において、劣化報知部142fが発光部132に制御信号を出力する例を示したが、これに限定されない。劣化報知部142fは、発光部132に代えて、または、発光部132とともに、アナログ出力部150およびデジタル通信部160のうちの少なくとも一方に、制御信号を出力するようにしてもよい。これにより、温湿度測定装置100に接続する外部機器に湿度センサ115の劣化のレベルを報知することが可能となる。
【0101】
S111の後、CPU142は、例えば、電源スイッチが切断されて湿度測定装置100が停止するか、あるいは入力部133からリセット信号が入力されるまで、S102のステップに戻り、以降のステップを再度行う。
【0102】
本実施形態では、S110において、劣化判定部142eが1つのしきい値TVに基づいて、湿度センサの劣化のレベルを判定する例を示したが、これに限定されない。例えば、初期処理S101において、CPU142は、複数、例えば2つのしきい値TV1,TV2(TV1<TV2)を設定する。この場合、S110において、劣化判定部142eは、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV1未満である場合(|DVn−DV1|<TV1)と、しきい値TV1以上しきい値TV2未満である場合(TV1≦|DVn−DV1|<TV2)と、しきい値TV2以上である場合(TV2≦|DVn−DV1|)と、の3つの場合に場合分けする。そして、S111において、劣化報知部142fは、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV1以上しきい値TV2未満である場合(TV1≦|DVn−DV1|<TV2)には、例えば、劣化報知部142fが発光部132を点滅させ、湿度センサ115の劣化が注意(警戒)の必要なレベルである旨を報知する。また、劣化報知部142fは、最新(直近)の判定値DVnと最初の判定値DV1との差が、しきい値TV2以上である場合(TV2≦|DVn−DV1|)には、例えば、劣化報知部142fが発光部132を点灯させ、または発光部132の点滅のスピードを上げて(間隔を短くして)、湿度センサ115の劣化が交換の必要なレベルである旨を報知する。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを段階的に判定し、判定されレベルに応じて段階的に報知することができる。
【0103】
このように、本実施形態における湿度測定装置100によれば、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が湿度理論値HR1に変換され、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において実線で示すグラフL1のように、線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において破線で示すグラフL2のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量特性のグラフL1と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0104】
本実施形態の湿度測定装置100では、図6に示すメモリ145に、湿度静電容量情報として、図11において太線で示すグラフL3の情報が、例えば、テーブル形式で記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量情報は、図11において太破線で示すグラフL4のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量情報のグラフL3と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が、例えば、図11に示すように、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値HR1は、−15[%]から−5[%]になり、図9に示した高湿度の範囲における湿度静電容量特性と同様に、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が線型性を有する湿度理論値HT1に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値HT1には、湿度センサ115の劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサ115に加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115が出力された静電容量値C1の湿度理論値HT1に基づいて判定することにより、従来の湿度測定装置と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサ115を交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【0105】
また、本実施形態における湿度測定装置100によれば、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hが表示され、湿度理論値HT1が負の値であるとき、湿度出力値Hがゼロである。ここで、湿度静電容量情報は湿度と静電容量とが線型性を有する理論的な関係を示すので、図11のグラフL3に示すように、静電容量値C1に対して、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値を取ることがある。よって、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hが表示され、湿度理論値HR1が実際には存在しない負の値であるときに、湿度出力値Hがゼロであることにより、劣化のレベルを判定するため(判定用)の湿度理論値HT1を用いて、湿度出力値Hを表示することができるとともに、負の値である湿度理論値HT1をそのまま表示するのを防止することができる。これにより、装置の故障や測定異常を疑われたり、測定結果に基づく制御に悪影響を及ぼしたりするおそれを低減することができ、湿度理論値HT1に基づく湿度出力値Hの信頼性を保つ(維持)することができる。
【0106】
また、本実施形態における湿度測定装置100によれば、湿度センサ115による湿度の検出開始から所定時間を経過するまでに、ヒータ116による湿度センサ115の加熱終了後に湿度センサ115により出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1が、基準値として設定され、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115により出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1である判定値DV1と基準値との差に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。ここで、湿度センサ115による湿度の検出を開始してからある程度の時間を経過するまでは、湿度センサ115が劣化していない状態、または、ほとんど劣化していない状態であると考えられる。よって、例えば、最初の湿度センサ115の加熱開始から所定時間内の湿度理論値HT1である判定値DV1(基準値)と最新(直近)の湿度センサ115の加熱終了後の湿度理論値HT1である判定値DVnとの差は、現時点の湿度センサ115の劣化のレベルを表すことになる。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを、容易かつ正確に、判定することができる。
【0107】
また、本実施形態における湿度測定装置100によれば、劣化判定部142fの判定結果に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが報知される。これにより、湿度センサ115の劣化のレベルを自ら判断することが困難な利用者(ユーザ)に、容易に知らせることができる。
【0108】
また、本実施形態における劣化検査方法によれば、湿度理論値変換部142aによって、湿度と静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報に基づいて、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が湿度理論値HR1に変換され、劣化判定部142eによって、ヒータ116による湿度センサ115の加熱開始から所定時間内に湿度センサ115から出力された静電容量値C1の湿度理論値HR1に基づいて、湿度センサ115の劣化のレベルが判定される。ここで、静電容量式(静電容量変化型)の湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において実線で示すグラフL1のように、線型性を有していない(非線型性を有する)。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量特性は、図9および図10において破線で示すグラフL2のように、劣化していない湿度センサ115の湿度静電容量特性のグラフL1と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。
【0109】
本実施形態の劣化判定方法では、図6に示すメモリ145に、湿度静電容量情報として、図11において太線で示すグラフL3の情報が、例えば、テーブル形式で記憶されている。湿度静電容量情報は、静電容量が全ての範囲の湿度に対して線型性を有する理論的な関係を示す。そのため、湿度静電容量情報に基づく湿度は、実際には存在しない負の値を取ることがある。一方、劣化した湿度センサ115において、湿度静電容量情報は、図11において太破線で示すグラフL4のように、劣化意していない湿度センサ115の湿度静電容量情報のグラフL3と比較して、所定の値だけ変化(シフト)する。湿度センサ115の劣化によって、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が、例えば、図11に示すように、162[pF]から164[pF]に変化する場合、湿度静電容量情報に基づいて変換される湿度理論値HR1は、−15[%]から−5[%]になり、図9に示した高湿度の範囲における湿度静電容量特性と同様に、10[%]の変化として表れる。このように、湿度センサ115から出力された静電容量値C1が線型性を有する湿度理論値HT1に変換されるので、実際の湿度がゼロ付近の低湿度の範囲であっても、湿度理論値HT1には、湿度センサ115の劣化による変化が大きく表れる。よって、湿度センサ115に加熱開始から所定時間内に、湿度センサ115が出力された静電容量値C1の湿度理論値HT1に基づいて判定することにより、従来の劣化判定方法と比較して、湿度センサの劣化のレベルを正確に判定することが可能となる。これにより、適切な時期に湿度センサ115を交換することができ、信頼性の高い湿度を継続して測定することができる。
【0110】
なお、前述した実施形態の構成は、組み合わせたりあるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0111】
100…湿度測定装置
115,125…湿度センサ
116,126…ヒータ
131…表示部
133…発光部
142…CPU
142a…湿度理論値変換部
142b…加熱制御部
142c…湿度理論値記録部
142d…出力制御部
142e…劣化判定部
142f…劣化報知部
145…メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、
前記湿度センサを加熱するヒータと、
前記湿度と前記静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、
前記湿度静電容量情報に基づいて、前記湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換する変換部と、
前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に前記湿度センサから出力された前記静電容量値の前記湿度理論値に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを判定する判定部と、を備える
ことを特徴とする湿度測定装置。
【請求項2】
前記湿度理論値に基づく湿度出力値を表示する表示部をさらに備え、
前記湿度出力値は、前記湿度理論値が負の値であるとき、ゼロである
ことを特徴とする請求項1に記載の湿度測定装置。
【請求項3】
前記湿度センサによる前記湿度の検出開始から他の所定時間を経過するまでに、前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から前記一の所定時間内に前記湿度センサにより出力された前記静電容量値の前記湿度理論値を基準値として設定する設定部をさらに備え、
前記判定部は、前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から前記一の所定時間内に前記湿度センサにより出力された前記静電容量値の前記湿度理論値と前記基準値との差に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の湿度測定装置。
【請求項4】
前記判定部の判定結果に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを報知する報知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の湿度測定装置。
【請求項5】
測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、前記湿度センサを加熱するヒータと、前記湿度と前記静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、変換部と、判定部と、を備える湿度測定装置において、前記湿度センサの劣化を検査する劣化検査方法であって、
前記変換部が、前記湿度静電容量情報に基づいて、前記湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換するステップと、
前記判定部が、前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に前記湿度センサから出力された前記静電容量値の前記湿度理論値に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを判定するステップと、を備える
ことを特徴とする劣化検査方法。
【請求項1】
測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、
前記湿度センサを加熱するヒータと、
前記湿度と前記静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、
前記湿度静電容量情報に基づいて、前記湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換する変換部と、
前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に前記湿度センサから出力された前記静電容量値の前記湿度理論値に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを判定する判定部と、を備える
ことを特徴とする湿度測定装置。
【請求項2】
前記湿度理論値に基づく湿度出力値を表示する表示部をさらに備え、
前記湿度出力値は、前記湿度理論値が負の値であるとき、ゼロである
ことを特徴とする請求項1に記載の湿度測定装置。
【請求項3】
前記湿度センサによる前記湿度の検出開始から他の所定時間を経過するまでに、前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から前記一の所定時間内に前記湿度センサにより出力された前記静電容量値の前記湿度理論値を基準値として設定する設定部をさらに備え、
前記判定部は、前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から前記一の所定時間内に前記湿度センサにより出力された前記静電容量値の前記湿度理論値と前記基準値との差に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを判定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の湿度測定装置。
【請求項4】
前記判定部の判定結果に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを報知する報知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の湿度測定装置。
【請求項5】
測定環境の雰囲気における湿度を検出し、該湿度に応じた静電容量を出力する湿度センサと、前記湿度センサを加熱するヒータと、前記湿度と前記静電容量とが線型性を有する湿度静電容量情報を記憶する記憶部と、変換部と、判定部と、を備える湿度測定装置において、前記湿度センサの劣化を検査する劣化検査方法であって、
前記変換部が、前記湿度静電容量情報に基づいて、前記湿度センサから出力された静電容量値を湿度理論値に変換するステップと、
前記判定部が、前記ヒータによる前記湿度センサの加熱開始から一の所定時間内に前記湿度センサから出力された前記静電容量値の前記湿度理論値に基づいて、前記湿度センサの劣化のレベルを判定するステップと、を備える
ことを特徴とする劣化検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−198123(P2012−198123A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62778(P2011−62778)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
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