説明

湿式クラッチ用潤滑油

【課題】 湿式クラッチ機構を有する電子制御カップリングや多板クラッチ式LSD、あるいは湿式ブレーキに共通して要求されるトルク伝達性能と適切な摩擦特性を有し、かつその性能を長期間維持し、かつ低温条件下においても粘度増加の小さい湿式クラッチ用潤滑油を提供する。
【解決手段】 エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルを含み、かつ100℃で2〜50mm/sの動粘度を有する基油に、
(A)アルキル基の炭素数が8以上の高級アルコールとグリセリンのエーテルを潤滑油全量に対して0.1〜10質量%、および(B)リン酸エステル化合物を潤滑油全量に対して0.1〜5質量%含有することを特徴とする湿式クラッチ用潤滑油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スティックスリップに起因する振動や異音を防止する適切な摩擦特性を有し、かつその特性を長期間維持することができ、さらに低温条件下における粘度増加が小さい湿式クラッチ用潤滑油に関し、詳しくは湿式クラッチ機構、特に金属製の摩擦クラッチを有する電子制御カップリングや多板クラッチ式LSD(Limited Slip Differential)、湿式ブレーキに適した湿式クラッチ用潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式クラッチ機構、特に金属製の摩擦クラッチは、自動車のデファレンシャルや軸継手、農建機のブレーキなどに用いられ、主に動力伝達の制御を担う機構である。
このような湿式クラッチに用いる事ができる潤滑油には、トルクを伝達するために一定以上の摩擦係数(トルク伝達性能)とスティックスリップ防止性が必要である。
また、寒冷地での使用の際、温度低下に伴う潤滑油の粘度増加が大きい場合は、電子制御カップリングや多板クラッチ式LSD(Limited Slip Differential)において、クラッチが空転していてもオイルの粘性抵抗により発生したトルクの影響で不必要な動力伝達が生じる場合がある。
【0003】
スティックスリップは、クラッチが低速で回転する際や締結する際に間欠的に生じる自励振動の一種であり、異常音や車体振動の原因となる。
このスティックスリップを防止するためには、すべり速度と摩擦係数の関係(μ―v特性)において、すべり速度の増加に伴い摩擦係数が増加する(μ―v特性が正勾配)特性を有する潤滑油が必要となる。
【0004】
このような潤滑油のμ―v特性は、基油に添加剤を配合することで付与される。
この添加剤には、従来、摩擦調整剤としての、高級アルコールや多価アルコールの脂肪酸エステル、リン酸エステル、そのアミン塩などが使用されている。
また、アルキル基の炭素数が8以上の高級アルコールとグリセリン、およびリン酸エステル化合物を開示している(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−204002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、自動車の燃費向上のため装置が小型化し潤滑油量が減少する一方で、更油期間の延長が求められているのと同時に、低温時においても性能を維持することが求められている。
潤滑条件が厳しい金属製の摩擦クラッチを有する装置においても、例外ではなく、従来以上に長期にわたって良好なμ―v特性を維持し、かつ低温条件下においても安定した動力の伝達を行える性能が求められている。
【0007】
本発明は、湿式クラッチ機構を有する電子制御カップリングや多板クラッチ式LSD、あるいは湿式ブレーキに共通して要求されるトルク伝達性能と適切な摩擦特性を有し、かつその性能を長期間維持し、かつ低温条件下においても粘度増加の小さい湿式クラッチ用潤滑油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の湿式クラッチを備えた機構の要求に応えるべく鋭意検討した結果、特定のエステル油を基油中に含有させ、2種類の摩擦調整剤を組み合わせて特定量配合することにより、湿式クラッチとしてのトルク伝達性能とμ−v特性の耐久性、さらに低温下での粘度増加を抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルを含み、かつ100℃で2〜50mm/sの動粘度を有する基油と、(A)アルキル基の炭素数が8以上の高級アルコールとグリセリンのエーテルを潤滑油全量に対して0.1〜10質量%、および(B)リン酸エステル化合物を潤滑油全量に対して0.1〜5質量%含有することを特徴とする湿式クラッチ用潤滑油を提供するものである。
また、本発明は、上記湿式クラッチ用潤滑油において、エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルが、オレイン酸−2−エチル−ヘキシルである湿式クラッチ用潤滑油を提供するものである。
また、本発明は、上記湿式クラッチ用潤滑油において、リン酸エステル化合物が、リン酸エステル、亜リン酸エステル、及びそれらのアミン塩から選ばれる1種以上である湿式クラッチ用潤滑油を提供するものである。
また、本発明は、上記湿式クラッチ用潤滑油において、湿式クラッチ用潤滑油が、電子制御カップリング、LSDギヤ、又は湿式ブレーキのいずれかに使用されるものである湿式クラッチ用潤滑油を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の湿式クラッチ用潤滑油は、(A)成分としての(ポリ)グリセリルエーテルおよび(B)成分としてのリン化合物の相乗効果によって摩擦調整作用を長期に渡り良好に維持し、さらにエステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステル、特にオレイン酸-2エチル-ヘキシルを用いることで、低温下での粘度増加を抑制することができる。
このため、本発明の潤滑油は、湿式クラッチを内蔵したLSDやカップリング、湿式ブレーキ、AT、CVTなどに用いることにより、長期に渡りスティックスリップによる振動や異音などの不具合や、低温下での粘度上昇による不必要な駆動力の伝達を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いる基油は、100℃における動粘度が2〜50mm/s、好ましくは2〜40mm/s、より好ましくは2〜30mm/s、更に好ましくは2〜20mm/sである。この範囲外の動粘度の基油であると、潤滑油としての機能を得ることができなくなる。
本発明に用いる基油には、エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルが含まれる。
エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルとしては、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ノニルなどが挙げれるが、オレイン酸オクチルが好ましく、オレイン酸-2-エチル-ヘキシルが特に好ましい。
エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルの含有量は、基油全体中に30〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜100質量%であり、さらに好ましくは50〜100質量%である。基油全体中のエステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルの含有量が20質量%未満である場合、低温粘度の増加を充分に抑制できないことがある。
【0012】
また、基油としては、性能を低下させない範囲で他のエステル基油や、鉱油、合成油の中から選ばれる1種以上を用いることもでき、エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルと組み合わせた混合油を基油として使用することも可能である。
この場合の鉱油および合成油は硫黄分がなるべく少ないことが望ましく、許容される硫黄分の含有量は0.1質量%までであり、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下である。硫黄分が0.1質量%を越えて存在すると、高温で使用されるときにスラッジの生成が促進される可能性がある。
なお、本発明に用いる基油は、粘度指数が100以上、好ましくは110以上、より好ましくは120以上であることが適している。
【0013】
上記のような性状を有する鉱油としては、例えば、水素化精製油、触媒異性化油などの高度に精製されたパラフィン系鉱油が好適に使用され、合成油としては、ポリαオレフィン(PAO)やエステルが好適に使用される。
【0014】
本発明に用いる(A)成分は、一般式(1)で表わされる(ポリ)グリセリルエーテルである。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(2)において、Rは炭化水素基を表わし、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−ヘキサデシルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝−イソステアリル等が挙げられる。
【0017】
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、pークミルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0018】
シクロアルキル基およびシクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0019】
は、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、炭素数4〜30のアルキル基またはアルケニル基がより好ましい。
炭素数が4より小さいと十分な効果が得られず、炭素数が30より多いと、高粘度となり、固化してしまう。
また、一般式(1)において、nはグリセリンの重合度を表わす係数であって、1以上の数であり、好ましくは1〜5の数である。
なお、nが1以上の場合は、nは平均値である。
【0020】
上記(A)成分の配合量は、潤滑油全量に対して0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。0.1質量%より少ないとμ−v特性が正勾配にならず、スティックスリップ防止性を付与できない場合があり、10質量%を超えると摩擦係数の絶対値が低くなりすぎたり、低温流動性などの潤滑油としての性能が低下する。
【0021】
(B)成分のリン酸エステル化合物は、化2の一般式(2)で表されるリン酸エステル、亜リン酸エステル、それらのアミン塩である。好ましくは酸性リン酸エステルと、そのアミン塩である。
【0022】
【化2】

【0023】
一般式(2)中、Rは1価の炭化水素基、Xは酸素原子または硫黄原子、aは1、2または3、bは0または1である。
上記Rの1価の炭化水素基は、炭素数5〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)、炭素数6〜26の芳香族炭化水素基またはシクロアルキル基が挙げられる。炭素数が上記より小さいと十分な効果が得られず、炭素数が上記より大きいと高粘度となって固化してしまう。
【0024】
上記のアミン塩の具体例としては、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、酸性ジチオリン酸エステルを、アルキルアミンで中和した化合物が挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、トリールアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0025】
酸性亜リン酸エステルとしては、トリフェニルホスファイト、トリ(P−クレジル)ホスファイト、トリ(オクチルフェニル)ホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリテアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジ−2−エチルヘキシルハイドロゼンホスファイト、ジドデシルハイドロゼンホスファイト、ジラウリルハイドロゼンホスファイト、ジオレイルハイドロゼンホスファイトなどが挙げられる。
【0026】
酸性チオリン酸エステルとしては、ジオクチルチオアシッドホスフェート、トリオクチルチオアシッドホスフェート、トリドデシルチオアシッドホスフェート、トリヘキサデシルチオアシッドホスフェート、トリオクタデセニルチオアシッドホスフェート、トリ(オクチルフェニル)チオアシッドホスフェートなどが挙げられる。
酸性ジチオリン酸エステルとしては、トリデシルジチオアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオアシッドホスフェートなどが挙げられる。
リン酸エステルのアミン塩としては、上記のリン酸エステルを下記一般式(3)で表されるアルキルアミンで中和したアルキルアミン塩である。
【0027】
【化3】

(式中、R、RおよびRは、1価の炭化水素基または水素原子であり、少なくとも1つは炭化水素基である)
【0028】
一般式(3)の具体例としては、ジブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、オレイルアミン、ココナッツアミン、牛脂アミンなどが挙げられる。
一般式(3)で表されるリン酸エステルおよびそのアミン塩は、単独でも摩擦調整剤(FM)や極圧剤として用いられるが、本発明においては、(A)成分との相乗作用により、(A)成分の消耗を防止する作用を発現する。
【0029】
(B)成分の配合量は、潤滑油全量に対して0.1〜5質量%であり、好ましくは0.5〜2質量%である。(B)成分の配合量が、少なすぎると(A)成分の消耗を防止できず耐久性が不足し、多すぎると摩擦係数の絶対値が低くなり過ぎて、伝達トルクを低下させ、耐熱性も低下する。
なお、(A)成分を配合せずに(B)成分のみを配合した場合、特定の温度領域やすべり速度において適切な摩擦特性を得られない。
【0030】
本発明の潤滑油には、基油と(A)成分及び(B)成分の他に、必要に応じて、公知の添加剤、例えば、無灰型分散剤、摩耗防止剤、極圧剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤などを添加することができる。
上記の無灰型分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル、長鎖脂肪酸とポリアミンとのアミド(アミノアミド型)などが、摩耗防止剤としては、ZnDTPなどが、極圧剤としては、炭化水素硫化物、硫化油脂などが、摩擦調整剤としては、有機モリブテン化合物などが、酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系の酸化防止剤などが、腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール、アルケニルコハク酸エステルなどが、粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート、オレフィンコポリマーなどが、流動点降下剤としては、ポリメタクリレートなどが、消泡剤としては、シリコン化合物、エステル系消泡剤などがそれぞれ挙げられる。
本発明の湿式クラッチ用潤滑油は、低温粘度においては−40℃でのBF粘度が2000MPa・s未満が好ましく、1800MPa・s以下ではさらに好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例及び比較例に基づいて、詳細に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
(実施例1〜6)
オレイン酸−2−エチル−ヘキシル単独、又はオレイン酸−2−エチル−ヘキシルとポリアルファオレフィンとを混合した基油に、表1に示す各成分を同表に示す割合(質量%)で配合して、湿式クラッチ用潤滑油を調製した。
なお、表1中、基油に関しては、基油全量中の質量%で示した。
(比較例1〜5)
表2に記載した基油に、表2に記載した各成分を、表2に記載した配合割合で配合して、湿式クラッチ用潤滑油を調製した。
なお、表1と同様に、表2中、基油に関しては、基油全量中の質量%で示し、基油以外の各成分に関しては、潤滑油全体量中の質量%で示した。
【0032】
〔摩擦特性の耐久性〕
低速摩擦試験機を用いて、油温80℃、面圧3MPa、回転数100rpmで連続してフリクションプレートとフリクションディスクを摩擦させ、概ね24時間毎に、スティックスリップ防止性を評価した。その方法は、油圧により0.59MPaの面圧をかけながら1,2,5,10,25,50,100,200rpmでフリクションディスクを回転させてフリクションプレート面をすべらせた時のトルクを検出し、摩擦係数を求めた。ここで、μ1は回転数が1rpmでの摩擦係数、μ10は回転数が10rpmでの摩擦係数である。
両摩擦係数の比(μ1/μ10)が1より小さいものがスティックスリップ防止性に優れると判断され、この値が1以上となった時点を耐久寿命とした。
【0033】
〔低温粘度の測定〕
ASTM D 2983法により、−40℃及び−30℃BF粘度を測定した。
【0034】
なお、表1中の*1〜11は次の意味を有する。
1:ポリアルファオレフィン(100℃動粘度 2mm/s)
2:ポリアルファオレフィン(100℃動粘度 4mm/s)
3:オレイン酸−2エチル−ヘキシル
4:イソデシルアルコールと、アジピン酸をエステル化して得られるジエステル基油
5:3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノールと、アジピン酸とをエステル化して得られるジエステル基油
6:2−エチル−1−ヘキサノールと、ドデカン二酸とをエステル化して得られるジエステル基油
7:2−エチル−1−ヘキサノールとセバシン酸をエステル化して得られるジエステル基油
【0035】
8:ポリメタアクリレート(分子量6万)
9:DEXRON III用ATFパッケージ型添加剤(摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤、分散剤など)
10:オレイル(ポリ)グリセリルエーテル(オレイルアルコール:モノエーテル:ポリエーテルが約40:30:30質量%の混合物)
11:ジオレイルハイドロゼンホスファイト
12:2−エチルヘキシルアシッドホスフェートのアミン塩
13:オレイルアシッドホスフェートのアミン塩
14:ジラウリルハイドロゼンホスファイト
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
表1および表2から明らかなように、例えば、オレイン酸−2エチル−ヘキシル、添加剤2、添加剤3を含む本発明の湿式クラッチ用潤滑油(実施例1)は、スティックスリップ防止性に優れた摩擦係数の持続性に優れ、−40℃での低温下においてもその−40℃でのBF粘度は2000MPa・s未満を示し、他のものに比べて粘度増加が小さい。また、摩擦特性の耐久性においても充分な時間を示している。
一方、オレイン酸−2エチル−ヘキシルを用いたとしても、(A)成分を含まず、(B)成分の*11成分のみを含む湿式クラッチ用潤滑油(比較例2)では、十分な耐久性や低温性能が得られない。
また、基油に他のエステル油を用いた場合には−40℃でのBF粘度が2000MPa・sを上回り、粘度増加が実施例と比較して大きい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルを含み、かつ100℃で2〜50mm/sの動粘度を有する基油に、
(A)アルキル基の炭素数が8以上の高級アルコールとグリセリンのエーテルを潤滑油全量に対して0.1〜10質量%、および(B)リン酸エステル化合物を潤滑油全量に対して0.1〜5質量%含有することを特徴とする湿式クラッチ用潤滑油。
【請求項2】
エステル部に炭素数7〜9のアルキル基を有するオレイン酸エステルが、オレイン酸−2−エチル−ヘキシルである請求項1に記載の湿式クラッチ用潤滑油。
【請求項3】
リン酸エステル化合物が、リン酸エステル、亜リン酸エステル、及びそれらのアミン塩から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の湿式クラッチ用潤滑油。
【請求項4】
湿式クラッチ用潤滑油が、電子制御カップリング、LSDギヤ、又は湿式ブレーキのいずれかに使用されるものである請求項1〜3のいずれかに記載の湿式クラッチ用潤滑油。



【公開番号】特開2009−263439(P2009−263439A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112207(P2008−112207)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(398053147)コスモ石油ルブリカンツ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】