説明

湿式処理装置

【課題】片面の表面処理、及び両面の表面処理の両方に対応可能な湿式処理装置を提供する。
【解決手段】帯状基板3上の表面処理をするための処理液体4を貯留するとともに、帯状基板3の搬入口7と、帯状基板3の搬出口9とを有する処理槽5を有する湿式処理装置1において、処理槽5内の処理液体4の液面に水平に帯状基板3の処理面13aを配置し、処理液体4の液面の高さを制御するための、取り外し可能な側面パネル2を有することを特徴とする湿式処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムをはじめとする帯状基板等、被めっき材の表面を液体にてそのフィルム表面の処理を施す、または、めっき処理を施す湿式処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の湿式処理装置の構成は以下のようになっていた。すなわち、帯状基板上の表面処理をするための処理液体を貯留するとともに、前記帯状基板の搬入口と、前記帯状基板の搬出口とを有する処理槽を備えたものとなっていた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1や下記特許文献2に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−147582号公報
【特許文献2】特開2007−162122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例における課題は、処理槽内の処理液体の液面高さを固定しなければならず、製造する仕様によって、帯状基板の片面のみを処理する場合と、帯状基板の両面のみを処理する場合とで、2種類の湿式処理装置を準備する必要があった。
【0005】
すなわち、上記従来例においては、例えば携帯電話の液晶パネルの駆動回路に用いられるフレキシブルプリント基板回路の場合、片面に電気回路が必要である仕様と、両面に電気回路が必要である仕様、それぞれの湿式処理装置を製造ライン中に準備する必要があり、その設備投資が高額になっていた。
【0006】
そこで、本発明は、片面の表面処理、及び両面の表面処理の両方に対応可能な湿式処理装置とすることにより、その湿式処理装置への設備投資(すなわち製造コスト)を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、帯状基板上の表面処理をするための処理液体を貯留するとともに、前記帯状基板の搬入口と、前記帯状基板の搬出口とを有する処理槽を有する湿式処理装置において、前記処理槽内の前期処理液体の液面に水平に前記帯状基板の処理面を配置し、前期処理液体の液面の高さを制御するための、取り外し可能な側面パネルを有する、ことを特徴とする湿式処理装置とした。
【0008】
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、処理槽内の処理液体の液面に水平に前記帯状基板の処理する面を配置し、前期処理液体の液面の高さを制御するための取り外し可能な側面パネルを配置する事によって、処理槽内の処理液体の液面高さを調整可能にすることによって、片面の表面処理、及び両面の表面処理の両方に対応可能な湿式処理装置とすることができる。
【0010】
すなわち、本発明においては、処理槽内の処理液体の液面に水平に前記帯状基板の処理する面を配置し、前期処理液体の液面の高さを制御するための取り外し可能な側面パネルを配置する事によって、処理槽内の処理液体の液面高さを調整可能とし、片面の表面処理、及び両面の表面処理の両方に対応可能な湿式処理装置とすることができたので、その結果として、その湿式処理装置への設備投資(すなわち製造コスト)を低減することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置の構成を示す斜視図であり、図1(a)は、側面パネル2が無い場合の斜視図、図1(b)は側面パネル2がある場合の斜視図
【図2】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置の構成を示す側面図であり、図2(a)は、側面パネル2が無い場合の側面図、図2(b)は側面パネル2がある場合の側面図
【図3】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置を用いた表面処理システムで製造する金属薄膜基板の構成図
【図4】本発明の一実施形態に係る湿式処理装置を用いた表面処理システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に述べる実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0013】
〔1〕実施の形態1
[湿式処理装置の構成]
図1は本実施形態の湿式処理装置1の構成を示す斜視図であり、図1(a)は、側面パネル2が無い場合の斜視図、図1(b)は側面パネル2がある場合の奢侈図を示すものである。
【0014】
また、図2は本実施形態の湿式処理装置の構成を示す側面図であり、図2(a)は、側面パネル2が無い場合の側面図、図2(b)は側面パネル2がある場合の側面図を示すものである。なお、図1(a)、図1(b)、図2(a)、図2(b)中の矢印Aは、帯状基板3が移動する方向(すなわち、搬入や搬出される方向)を示すものである。
【0015】
図1、図2に示すように、湿式処理装置1は、帯状基板3上の表面処理をするための処理液体4を貯留する処理槽5を配置している。
【0016】
また、処理槽5は、帯状基板3が搬入される側の壁面である搬入側壁面6に搬入口7と、帯状基板3が搬出される側の壁面である搬出側壁面8に搬出口9を配置している。また、搬入口7、及び搬出口8の処理槽5の外側には、帯状基板3を矢印Aの方向に搬入、搬出するためのローラ10を配置している。また、この処理槽5の側面11、12(側面12は、図1、図2中に図示なし)上には、側面パネル2を配置しており、取り外し可能となっている。ここで、図1(a)、図2(a)中は側面パネル2が取り外された状態を示し、図1(b)、図2(b)は側面パネル2が取り付けられた状態を示している。
【0017】
また、図1(a)、図2(a)は、帯状基板3の片面(図1(a)、図2(a)中の処理面13a)を、液体処理する場合の湿式処理装置1を示している。ここで、処理面13aは処理槽5中の処理液体4の液面対して水平方向になるように配置し、更に、常時、液面に対して上に浮いた状態になるように、搬入口7側のローラ10と搬出側のローラ10を調整してある。
【0018】
また、図1(b)、図2(b)は、帯状基板3の両面(図2(b)、図2(b)中の処理面13b、13c)を、液体処理する場合の湿式処理装置1を示している。ここで、処理面13b、13cは処理槽5中の処理液体4の液面対して水平方向になるように配置し、更に、側面パネル2を配置することによって、常時、処理面13b、13cが処理液体4中に配置されている。
【0019】
このような構成にすることによって、側面パネル2を取り付けることによって、処理液体4の液面を制御することができる。すなわち、側面パネル2が取り外されたときは、処理液体4の液面上に帯状基板3の片面が浮いている状態にて、帯状基板3の片面(13a)の表面処理を行い、側面パネル2が取り付けられたときは、処理液体4中に帯状基板3が配置されることで、帯状基板3の両面(13b、13c)の表面処理を行うような湿式処理装置1とすることができる。
【0020】
ここで、この湿式処理装置1による液体処理の例としては、(1)帯状基板3のアルカリ処理、(2)帯状基板3上(両面)の湿式めっき法によるニッケルリン(Ni−P)薄膜の形成、(3)帯状基板3上の洗浄等、様々な液体処理に適応可能である。
【0021】
また、この湿式処理装置1で使用される処理液体4としては、用途(液体処理の種類)に応じて選択される。例えば、前述(1)帯状基板3上(両面)のアルカリ処理の場合は、アルカリ水溶液(水酸化カリウム等)を用い、(2)帯状基板3上(両面)の湿式めっき法によるニッケルリン(Ni−P)薄膜の形成の場合は無電界ニッケルリンめっき液(3)帯状基板3上(両面)の洗浄の場合は純水、等を用いればよい。
【0022】
また、帯状基板3は、特に限定されず、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレート(POLYETHYLENE TEREPHTHALATE、略称PET)、樹脂シート等が挙げられる。
【0023】
また、本実施形態においては、搬入口7、及び搬出口8の処理槽5の外側に、帯状基板3を矢印Aの方向に搬入、搬出するためのローラ10を配置したが、このローラ10は処理槽5の内側に配置してもよい。
[実施例:湿式処理装置を用いた表面処理システム]
図3は、実施の形態1における湿式処理装置を用いた表面処理システムで製造する金属薄膜基板の構成図を示すものである。本実施形態におけるは帯状基板3として帯状のポリイミド基板15を用いた。なお、本実施の形態においては、金属薄膜版14は、ポリイミド基板15の両面に表面処理層16を形成し、更に、表面処理層16上(両面)にニッケルリン(NI−P)層17を形成している。
図4は、実施の形態1における湿式処理装置を用いた表面処理システムの構成図を示すものである。ロール状に巻かれた巻出しロール18から搬出された帯状のポリイミド基板15(帯状基板3に相当)が、脱脂槽19、アルカリ処理槽20、触媒槽21、還元槽22、無電界ニッケルリンめっき槽23、乾燥槽24にて処理を施され、図3に示す金属薄膜基板14が形成される。その後、この金属薄膜基板14(すなわちポリイミド基板15)は、ロール25にロール状に巻き取られる。
【0024】
ここで、水洗槽26は、前述の脱脂槽19、アルカリ処理槽20、触媒槽21、還元槽22、無電界ニッケルリンめっき槽23、乾燥槽24の間に配置され、それぞれのところで、ポリイミド基板15の表面を純水にて洗浄する工程である。
【0025】
また、図4中のS1は前処理工程、S2は表面処理層形成工程、S3はニッケルリン層形成工程、S4は乾燥工程を示し、その液体処理に関しては、後述する。
【0026】
また、本実施の形態1において、図1に示す湿式処理装置は、図3中の水洗槽26、脱脂槽19、アルカリ処理槽20、触媒槽21、還元槽22に用いられている。
【0027】
以上が、実施の形態1における湿式処理装置を用いた表面処理システム28の構成である。なお、本実施の形態においては、図3に示すように、ポリイミド基板15(帯状基板3に相当)の両面に薄膜形成(液体処理した場合に相当)を行なった例を示したが、片面も場合も同様である。
【0028】
それでは、以下に、図4中のS1、S2、S3、S4に関して説明する。
【0029】
(S1:前処理工程)
ステップS1においては、脱脂槽19にてポリイミド基板15表面(本実施の形態においては両面)に付着している異物及び油分などを除去する。
【0030】
(S2:表面処理工程)
次に、ポリイミド基板15の表面処理を行い、そのポリイミド基板15上に表面処理層16を形成する。まず、ポリイミド基板2の表面を、アルカリ処理槽20にて、アルカリ性水溶液にポリイミド基板15の表面を浸ける。このアルカリ処理槽20によって、ポリイミド基板2表面のイミド環がアルカリ加水分解し、カルボン酸が生成される。
【0031】
その後、ポリイミド基板15を、触媒槽22に貯留された金属触媒を含む水溶液に浸漬させる。ニッケルリンめっきの触媒となり得るものならどのような触媒を用いても良いが、特にパラジウム触媒が好ましく用いられる。触媒付与工程における触媒の濃度、処理時間、温度等の諸条件は、適宜変更可能である。このことにより、触媒が、ポリイミド基板15の表面に付与される。
【0032】
さらに、ポリイミド基板15を、還元槽23に貯留された、ポリイミド基板15の表面に付与された金属触媒を還元させる還元剤に浸漬させる。このことにより、アルカリ処理層に付与された触媒が還元される。還元処理溶液における還元剤の濃度、処理時間、温度等の諸条件は適宜変更可能である。
【0033】
以上のように、この表面処理工程によって、表面処理層16が形成される。
【0034】
(S3:ニッケルリン層形成工程)
次に、ポリイミド基板15上(両面)の表面処理層16上(両面)に、無電界めっき法によってニッケルリン層17を形成する。以上のように、このニッケルリン形成工程によって、表面処理層16が形成される。
【0035】
(S4:乾燥工程)
次に、ポリイミド基板15上(両面)の表面処理層16上(両面)にニッケルリン層17(両面)に形成された金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)を、乾燥槽25にて、金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)上の水分を除去する(すなわち乾燥させる)。本実施の形態においての乾燥条件は、乾燥槽25の内部の温度(乾燥温度)を120℃、乾燥時間を2分とした。
【0036】
この乾燥工程が必要な理由は、金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)を巻取りロール26にてロール状に巻き取るため、表面に水分が残っている場合は、その後の工程(例えば、金属薄膜基板14上に、銅薄膜を形成する工程)にて、ロール上の金属薄膜基板14(S3後のポリイミド基板15に相当)が、帯状にするのを困難になることを防止するため、更に、ニッケルリン層17の表面が酸化してしまうからである。
【0037】
以上が本発明の一実施形態である湿式処理装置1を用いた表面処理システム27の一実施例である。
【0038】
また、以上のように本発明の湿式処理装置は、処理槽5内の処理液体4の液面に水平に帯状基板3の処理する面を配置し、処理液体4の液面の高さを制御するための取り外し可能な側面パネル2を配置する事によって、処理槽5内の処理液体4の液面高さを調整可能にすることによって、片面の表面処理、及び両面の表面処理の両方に対応可能な湿式処理装置1とすることができる。
【0039】
すなわち、本発明においては、処理槽5の処理液体4の液面に水平に帯状基板3の処理する面を配置し、処理液体4の液面の高さを制御するための取り外し可能な側面パネル2を配置する事によって、処理槽5内の処理液体の液面高さを調整可能とし、片面の表面処理、及び両面の表面処理の両方に対応可能な湿式処理装置とすることができたので、その結果として、その湿式処理装置への設備投資(すなわち製造コスト)を低減することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の積層板の製造方法によれば、湿式処理装置、たとえば、携帯電話等、電子機器に用いられるフレキシブルプリント基板(FPC)を製造するための湿式めっき装置等に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 湿式処理装置
2 側面パネル
3 帯状基板
4 処理液体
5 処理槽
6 搬入側壁面
7 搬入口
8 搬出側壁面
9 搬出口
10 ローラ
11 側面
12 側面
13a、13b、13c 処理面
14 金属薄膜基板
15 ポリイミド基板
16 表面処理層
17 ニッケルリン層
18 巻出しロール
19 脱脂槽
20 アルカリ処理槽
21 触媒槽
22 還元槽
23 無電界ニッケルリンめっき槽
24 乾燥槽
25 巻取りロール
26 水洗槽
27 表面処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状基板上の表面処理をするための処理液体を貯留するとともに、前記帯状基板の搬入口と、前記帯状基板の搬出口とを有する処理槽を有する湿式処理装置において、
前記処理槽内の前期処理液体の液面に水平に前記帯状基板の処理面を配置し、
前記処理液体の液面の高さを制御するための、取り外し可能な側面パネルを有する、
ことを特徴とする湿式処理装置
【請求項2】
前記側面パネルを取り付けられたときは、前記処理液体内部に前記帯状基板が配置されることで前記帯状基板の両面の表面処理を行い、
前記側面パネルが取り外されたときは、前記処理液体の液面上に前記帯状基板の片面が浮いている状態にて、前記帯状基板の片面の表面処理を行う、
ことを特徴とする湿式処理装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174126(P2011−174126A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38346(P2010−38346)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】