説明

湿式媒体攪拌ミル及び微小粉砕媒体とスラリーの分離機構

【課題】 微小直径の粉砕媒体を安定的に継続使用することができるスラリー内固形物粉砕装置を提供する。
【解決手段】 媒体攪拌型粉砕装置は、一端側にスラリ−入り口を有する筒状の容器2と、該容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸1と、該容器の外において攪拌軸に連結された駆動装置とを備える。攪拌軸は攪拌部材7を有し、攪拌軸と容器内面との間の空間に粉砕媒体が入れられ。攪拌軸には容器の他端近傍に粉砕媒体入り口15を有する中空部12が形成され、この中空部を攪拌軸と容器内面との間の上記空間に連通させるスリット16を有す。攪拌軸の中空部内にスラリ−出口13が配置され、中空部内にスラリー出口を囲むようにスクリーン14が設けられ、該スクリーンが回転駆動されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物、顔料、染料、化学薬品、フェライト等の磁性材料、及びセラミックなどを超微細粒、特にナノメートルサイズまで粉砕又は分散し、例えば塗料、印刷インク、顔料、磁気テープ用コーティング材、ゴム、接着剤、化粧品、及び塗り薬のような医薬などに調整するのに適したサンドミルやビーズミルのような媒体攪拌型粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この用途に使用されている粉砕装置は、筒型の容器内に軸方向に攪拌軸を回転自在に配置し、この攪拌軸に攪拌ピンなどの攪拌部材を放射状に突出するように取り付けた構造を有する。スラリ−入り口は容器の軸方向一端部に、スラリ−取り出し口は容器の軸方向他端部に設けられる。容器内には、該容器内面と攪拌軸との間の空間である粉砕室にガラスビーズなどの粉砕媒体を充填し、スラリ−入り口からスラリ−を導入しながら攪拌軸を回転駆動して攪拌部材を回転させ、スラリ−を粉砕媒体の間に通すことによってスラリ−内の固形物を所望のサイズに微粉砕又は微細分散させる。スラリ−取り出し口には、粉砕媒体をスラリ−から分離するために、スクリーン等の分離手段が設けられる。
従来のこの種の粉砕装置では、粉砕媒体が粉砕室の一部すなわちスラリ−取り出し口付近に集中する傾向があるため、これに伴う幾多の問題が経験された。この問題に対処するため、特許第3400087号公報は、攪拌軸をスラリ−取り出し口側端部において開口する中空構造とし、該端部における開口を媒体循環用入り口として機能させ、攪拌軸の側部にスリットを形成して媒体循環用出口として機能させ、粉砕室内においてスラリ−取り出し口近傍に達した粉砕媒体が、攪拌軸の端部に形成された媒体循環用入り口から攪拌軸の中空内部に入り、媒体循環用出口から粉砕室に戻されるという循環運動をするようにした構造を開示している。また、特許第3246973号公報は、この種の攪拌装置を使用した連続式の粉砕システムを開示する。
【0003】
特公平2−10699号公報は、このような中空構造の攪拌軸を有する粉砕装置において、攪拌軸の中空内部にスラリ−取り出し用の管を固定配置し、この管のスラリ−取入れ口に分離装置を設けた構造を開示する。
【0004】
【特許文献1】特許第3400087号公報
【特許文献2】特許第3246973号公報
【特許文献3】特公平2−10699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1ないし3に開示された従来の構造は、それぞれの目的においては所期の効果を達成するものであるが、近年のナノテクノロジーのもとでの要求には満足に対処することが困難である。具体的に述べると、スラリ−内の固形物をナノメートルのサイズに微粒化し、しかもその微粒化を十分に満足できる短い時間内に達成するためには、粉砕媒体の直径を小さくすることが必要である。従来の粉砕装置において使用されるビーズの直径は、極微粉砕に用いられる極めて小さいものでも0.3mmないし0.5mmであるが、ナノテクノロジーに対処する場合のビーズ直径としては0.2mm以下のものが要求されるようになる。
【0006】
従来の粉砕装置において分離装置として使用されている構造には、ギャップ又はスリット構造のものと、スクリーン構造のものがある。このうち、ギャップ又はスリット構造では、上述した微細な直径のビーズをスラリ−から分離することは極めて困難である。スクリーン構造の分離装置は、スクリーンの目を細かくすることにより微細直径のビーズを分離することは可能であるが、スラリ−の粘度が高い場合や、粉砕又は分散が進行することにより粘度上昇を生じるスラリ−の場合には、上述のように微小サイズの粉砕媒体はスクリーン付近に集中するようになり、異常発熱や異常磨耗、スクリーンの目詰まりなどの問題が生じる。
また、熱により性状が変化するスラリ−の場合には、粉砕装置内でスラリ−の温度上昇を低く抑えるためにスラリ−の流入量を多くして粉砕装置内の滞留時間を低く抑制することが必要になるが、この場合にも、上述の問題が生じる。
【0007】
本発明は、従来の媒体攪拌型粉砕装置における上記の問題に着目して、これらの問題を解決することを目的として得られたもので、微小直径の粉砕媒体を安定的に継続使用することができる粉砕装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明による媒体攪拌型粉砕装置は、一端側にスラリ−入り口を有する筒状の容器と、該容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、該容器の外において攪拌軸に連結された駆動装置とを備える。攪拌軸は攪拌部材を有し、攪拌軸と容器内面との間の空間に粉砕媒体が入れられており、スラリ−入り口からスラリ−を導入しながら駆動装置で攪拌軸を回転駆動することにより、該スラリー内の固形物が粉砕される。攪拌軸は、容器の他端近傍に粉砕媒体入り口を有する中空部が形成され、攪拌軸にはこの中空部を攪拌軸と容器内面との間の上述の空間に連通させるスリットが形成され、スラリ−の動きに伴って容器の前記他端近傍に達した粉砕媒体が、スラリー入り口から攪拌軸の中空部に入り、スリットから記攪拌軸と容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をする。本発明の特徴は、攪拌軸の中空部内にスラリ−出口が配置され、中空部内にスラリー出口を囲むようにスクリーンが設けられ、該スクリーンが回転駆動されるように構成されたことにある。
【0009】
本発明の一態様においては、スラリー出口は攪拌軸に形成され、スクリーンは攪拌軸に固定されて、該攪拌軸とともに回転駆動されるようになっており、攪拌軸内にはスラリー出口に通じるスラリー出口通路が設けられる。
本発明の他の態様においては、スラリー出口は攪拌軸の中空部内に回転自在に配置された管状のスラリ−出口部材により構成され、スクリーンは管状部材に固定され、攪拌軸とは別に該管状部材を回転駆動する手段が設けられる。
本発明においては、スクリーンの目のサイズは、粉砕媒体の直径の1/2以下であることが好ましく、より好ましくは、粉砕媒体の直径の1/3とする。
【0010】
(作用)
本発明の上記した構成によれば、スラリ−から粉砕媒体を分離するためのスクリーンが回転駆動されるため、スクリーン近傍に達したスラリ−及び粉砕媒体には回転運動が誘起され、この回転運動による遠心力はスラリ−よりも粉砕媒体の方が高くなるため、粉砕媒体にはスクリーンから離れる付勢力が生じる。このため、粉砕媒体はスクリーンに接近することなく循環することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図について説明する。
図1(A)及び(B)は、本発明の第一の実施形態を示す縦断面図及び横断面図である。図に示すように、粉砕機1は、円筒状の容器2を備えており、該容器2の両端には蓋部材3及び底部材4が液蜜に取り付けられている。容器2の内部には、軸方向に延びるように回転自在な攪拌軸6が配置され、該攪拌軸6と容器2の内面との間に空間すなわち粉砕室5が形成されている。この粉砕室5にはガラスビーズやセラミックビーズのような粉砕媒体が充填される。粉砕媒体は、ナノメートルサイズの粉砕のためには0.2mm以下の直径である。
【0012】
攪拌軸6には、軸方向及び周方向に間隔をもって放射状に外向きに突出するように複数の棒状攪拌部材7が固定されている。攪拌部材7は、棒状の代わりに円盤状としてもよく、円盤状の場合には、攪拌部材7は、複数個が軸方向に間隔をもって攪拌軸6に固定される。
【0013】
容器2の蓋部材3に隣接する軸方向一端部付近には、スラリ−入り口管11が固定されてスラリ−入り口を構成する。攪拌軸6は、蓋部材3を貫通して容器2の外部に延びる軸部分を有し、この軸部分が支持部材8により容器2に対し回転自在であるが軸方向には移動しないように支持される。攪拌軸6を回転駆動するための駆動装置は、図示しない電動モータその他適当な原動機である。攪拌軸6の上述した軸部分にはプーリー10が取り付けられ、該プーリー10が伝動ベルト9により原動機の出力軸に設けたプーリー(図示せず)に連結されている。この連結により、攪拌軸6が電動モータ等の原動機により回転駆動される。
【0014】
攪拌軸6は、容器2のスラリ−入り口管11から遠い側の端部が符号15で示すように開口したコップ型の中空形状であり、攪拌軸6は、その中空部12に対応する壁部分にスリット16が形成されている。攪拌軸6の端部における上述の開口15は粉砕媒体循環用入り口を構成し、スリット16は粉砕媒体循環用出口17を構成する。
攪拌軸6の中空部12には、攪拌軸6を貫通して該中空部12内に延びるスラリ−出口管18が配置される。スラリ−出口管18の端部は攪拌軸6の中空部12内に位置してスラリ−出口13を構成する。スラリ−出口管18は、スラリ−出口13に連通し、攪拌軸6を軸方向に通るスラリ−出口通路を構成する。
攪拌軸6の中空部12には、スクリーン14がスラリ−出口13を囲むように配置される。このスクリーン14は、攪拌軸6に固定され、該攪拌軸とともに回転する。
作動に際しては、攪拌軸6を連続的に回転駆動しながら、粉砕すべき固形物を含むスラリ−、例えば炭酸カルシウムスラリ−がスラリ−ポンプ(図示せず)により所定の流量でスラリ−入り口管11から連続的に導入される。媒体攪拌型粉砕装置の作動は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0015】
粉砕室5のスラリ−入り口管11から遠い側の端部近傍においては、スラリ−と粉砕媒体は、矢印20で示すように、攪拌軸6の端部の開口15により形成される粉砕媒体循環用入り口から攪拌軸6の中空部12内に入り、スラリ−は、スクリーン14を通り、スラリ−出口13からスラリ−出口管18内を通って取り出される。粉砕媒体は、遠心力の作用により半径方向外向きに付勢されるため、スクリーン14から離れてスリット16により形成される粉砕媒体循環用出口17を通って粉砕室5に戻される。したがって、粉砕媒体が微小直径の場合に、粉砕媒体がスクリーン14を目詰まりさせる恐れはなくなる。その結果、スクリーンの異常磨耗が防止され、異常発熱の問題も生じない。
【0016】
図2は、本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態においては、図1の実施形態に対応する部分は図1と同一の符号付して示し、説明は、図1の実施形態との相違点についてのみ行う。
この実施形態においては、スラリ−出口管18は、攪拌軸6から分離して形成される。スラリ−出口管18の一端部は攪拌軸6の中空部12内に位置してスラリ−出口13を構成する。スラリ−出口13を囲むスクリーン14は、底部材4を軸方向に貫通して容器2の外側に延びる回転軸を有し、この回転軸は、支持部材21により底部材4に対し回転自在であるが軸方向には移動しないように支持される。スクリーン14の回転軸の外側端部にはプーリー23が固定され、この回転軸は、該プーリー23に巻かれた伝動ベルト22を介して図示しない電動モータのような駆動装置により回転駆動される。この実施形態の作動は、図1の実施形態の作動と同一であるので、詳細については説明を省略する。
図3ないし図6は、攪拌部材7の種々の形状を示す断面図である。図3は円盤状の攪拌部材の例を示す。図4は扇型の攪拌部材の例であり、図5は3角形攪拌部材、図6は円柱状攪拌部材の例である。図6の例では、攪拌軸の外面に円柱形状の突出部が形成され、この突出部を貫通してスリット16が形成される。
【0017】
(効果)
本発明においては、攪拌軸に、容器の他端近傍に粉砕媒体入り口を有する中空部と、この中空部を攪拌軸と容器内面との間の空間に連通させるスリットとが形成され、スラリ−の動きに伴って容器端部近傍に達した粉砕媒体が、スラリー入り口から攪拌軸の中空部に入り、スリットから上記空間に戻る循環運動をするので、粉砕媒体が容器端部に集中する傾向が防止される。さらに、本発明によれば、攪拌軸の中空部内にスラリ−出口が配置され、中空部内にスラリー出口を囲むようにスクリーンが設けられ、該スクリーンが回転駆動されるように構成されているため、スラリ−より重い粉砕媒体は、遠心力の作用によりスクリーンから遠ざかる方向に付勢され、ナノメートルサイズの粉砕のために微細粒径の粉砕媒体を使用してもスクリーンを目詰まりさせる恐れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は、本発明の一実施形態を示す媒体攪拌型粉砕装置の縦断面図、(B)は、(A)に示す粉砕装置の横断面図。
【図2】本発明の第二の実施形態を示す媒体攪拌型粉砕装置の縦断面図。
【図3】円盤状攪拌部材の例を示す粉砕装置の横断面図。
【図4】扇型の攪拌部材の例を示す粉砕装置の横断面図。
【図5】3角形状の攪拌部材の例を示す粉砕装置の横断面図。
【図6】円柱状の攪拌部材の例を示す粉砕装置の横断面図。
【符号の説明】
【0019】
1 粉砕機
2 容器
3 蓋部材
4 底部材
5 粉砕室
6 攪拌軸
7 攪拌部材
12 中空部
13 スラリ−出口
14 スクリーン
15 媒体循環用入り口
16 スリット
17 媒体循環用出口
18 スラリ−出口管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にスラリ−入り口を有する筒状の容器と、
前記容器内に長手方向に延びるように配置された回転自在な攪拌軸と、
前記容器の外において前記攪拌軸に連結された駆動装置と、
を備え、
前記攪拌軸は、攪拌部材を有し、前記攪拌軸と前記容器内面との間の空間に粉砕媒体が入れられており、前記スラリ−入り口からスラリ−を導入しながら前記駆動装置により前記攪拌軸を回転駆動することにより、該スラリー内の固形物が粉砕されるようになっており、
前記攪拌軸は、前記容器の他端近傍に粉砕媒体入り口を有する中空部が形成され、前記攪拌軸にはこの中空部を前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に連通させるスリットが形成され、スラリ−の動きに伴って前記容器の前記他端近傍に達した前記粉砕媒体が、前記スラリー入り口から前記攪拌軸の前記中空部に入り、前記スリットから前記攪拌軸と前記容器内面との間の前記空間に戻る循環運動をするようになった媒体攪拌型粉砕装置であって、
前記攪拌軸の前記中空部内にスラリ−出口が配置され、前記中空部内に前記スラリー出口を囲むようにスクリーンが設けられ、前記スクリーンが回転駆動されるようになったことを特徴とする媒体攪拌型粉砕装置。
【請求項2】
請求項1に記載した粉砕装置であって、前記スラリー出口は前記攪拌軸に形成され、前記スクリーンは前記攪拌軸に固定されて、該攪拌軸とともに回転駆動されるようになっており、前記攪拌軸内には前記スラリー出口に通じるスラリー出口通路が設けられた粉砕装置。
【請求項3】
請求項1に記載した粉砕装置であって、前記スラリー出口は前記攪拌軸の前記中空部内に回転自在に配置された管状のスラリ−出口部材により構成され、前記スクリーンは前記管状部材に固定され、前記攪拌軸とは別に前記管状部材を回転駆動する手段が設けられた粉砕装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載した粉砕装置であって、前記攪拌部材は、前記攪拌軸の周面から放射状に突出する部材である粉砕装置。
【請求項5】
請求項4に記載した粉砕装置であって、前記攪拌部材は、軸方向に間隔をもって前記攪拌軸の周面から放射状に突出するように配置された複数の円盤状部材である粉砕装置。
【請求項6】
請求項4に記載した粉砕装置であって、前記攪拌部材は、軸方向に及び周方向間隔をもって前記攪拌軸の周面から放射状に突出するように配置された複数の棒状部材である粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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