説明

湿式画像形成装置における現像機構および湿式画像形成装置

【課題】 現像ローラ用クリーニングブレードの現像ローラとの当接部から現像液回収タンクに向けて形成されるトナーの膜を除去することができる現像機構および該現像機構を備える湿式画像形成装置を提供すること
【解決手段】 現像機構は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像形成を行う湿式画像形成装置における現像機構であって、トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、潜像担持ローラにトナーを供給するため、現像液を担持する現像液担持ローラと、現像に用いられなかった現像液を現像液担持ローラから掻き取る現像液掻き取り部と、現像液掻き取り部により掻き取られた現像液の流路上に表面が位置するように配設され、現像液掻き取り部によって掻き取られた現像液により形成されるトナーの膜にせん断力を与えるせん断力付与手段と、を有する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湿式の画像形成装置に搭載され、画像形成に使用される現像機構に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを記録紙に転写させて画像を形成する装置には、例えば、粉状のトナーを現像ローラ表面に担持させて画像を形成する乾式画像形成装置や、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を現像ローラ表面に担持させて画像を形成する湿式画像形成装置が知られている。なお、後者の装置で用いられるトナーは前者の装置で用いられるトナーよりも微細であるため、後者の装置では前者の装置よりも高画質な画像を形成することができる。湿式が像形成装置としては、例えば以下の特許文献1に例示される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−14541号公報
【0004】
特許文献1に例示されるような、一般的な湿式画像形成装置は、現像液が移動する順に、現像液塗布ローラ(例えばアニロクスローラ等)、現像液現像ローラ、感光ドラムを有する現像機構を備える。現像ローラ近傍には、帯電コロナが配設されている。現像ローラは、表面が導電性を有する部材で形成されており、帯電コロナによるコロナ帯電によって該表面が一様に帯電される。現像液塗布ローラによって現像ローラに塗布される現像液は、該帯電の作用によって、キャリア液のみの層(以下、便宜上、キャリア層という)とトナーが高濃度に含まれる層(以下、便宜上、トナー層という)とに分離する。そして現像液は、トナー層が現像ローラ表面に接した状態で、現像ローラと感光ドラムの転接部に到達する。
【0005】
感光ドラム表面は、現像液との転接部に位置する前にレーザ光等によってプリント情報の潜像が形成されている。現像液中のトナーは、現像ローラ表面と、感光ドラム表面における潜像部分と非潜像部分との電位差によって、該潜像部分にのみ付着する。これにより、感光ドラムの潜像は現像されてトナー像となる。トナー像は、給紙機構を介して給紙される記録紙に転写される。つまり、記録紙に画像が形成される。
【0006】
現像ローラにおいて、現像に用いられなかった現像液は、現像ローラ表面に当接された現像ローラ用クリーニングブレードによって掻き取られ上記の各ローラ下方に配設される回収タンクに回収される。該回収タンクに回収された現像液は、ポンプやスクリュー等の循環機構によって貯蔵タンクに搬送され、トナー濃度を調整された後、再利用される。なお、貯蔵タンクに搬送されることなく、各ローラ下方に配設される回収タンク内でトナー濃度調整される構成、つまり、回収タンクが貯蔵タンクを兼ねる構成の画像形成装置もある。
【0007】
ここで、上記の通り、現像ローラ表面に塗布された現像液は、キャリア層とトナー層の二層に分離されている。キャリア層は粘度が低いため、現像ローラ用クリーニングブレードによって掻き取られ、あるいは自然に流下し、現像液回収タンクに容易に回収される。しかし、トナー層は、キャリア液に比べてトナーの比率が高く、しかも、現像ローラ表面におけるトナーは、コロナ帯電によって凝集されている。従って、トナー層は、キャリア層に比べて高い粘性を持っており、流下しにくい状態にある。そのため、現像ローラ用クリーニングブレードの現像ローラとの当接部から現像液回収タンクに向けて、帯状に延出するいわゆるトナーの膜が形成されてしまう。
【0008】
上記トナーの膜を放置しておくと、貯蔵タンクにおけるトナー濃度の調整が複雑になる等、現像液の潤滑な回収、再利用の妨げになるおそれがある。また、トナーの膜が回収タンク底部や上記クリーニングブレードに堆積していき、回収タンクからあふれるあるいは現像ローラのクリーニング性能の低下を招くといった不具合のおそれも想定される。しかし、上記トナーの膜について従来の湿式画像形成装置に搭載される現像機構では何らの補償もされていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記の事情に鑑み、本発明は、現像ローラ用クリーニングブレードの現像ローラとの当接部から現像液回収タンクに向けて形成されるトナーの膜を除去することができる現像機構および該現像機構を備える湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る現像機構は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像形成を行う湿式画像形成装置における現像機構であって、トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、潜像担持ローラにトナーを供給するため、現像液を担持する現像液担持ローラと、現像に用いられなかった現像液を現像液担持ローラから掻き取る現像液掻き取り部と、現像液掻き取り部により掻き取られた現像液の流路上に表面が位置するように配設され、現像液掻き取り部によって掻き取られた現像液により形成されるトナーの膜にせん断力を与えるせん断力付与手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の現像機構によれば、帯電した現像液担持ローラに担持された現像液が現像液掻き取り部によって掻き取られることにより形成されるトナーの膜にせん断力を付加することによって、該膜を有効に切断し、除去することができる。
【0012】
また請求項2に記載の現像機構によれば、せん断力付与手段を、現像液担持ローラの軸と平行な軸により回転自在に構成された円筒状の表面を持つ回転ローラを有する構成にすることができる。
【0013】
請求項3に記載の現像機構によれば、回転ローラは、潜像担持ローラに近接配置されており、潜像担持ローラと同方向に回転することにより、潜像担持ローラに付着したキャリア液を圧搾するような構成にしても良い。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、回転ローラに潜像担持ローラからキャリア液を圧搾する機能も付与し、しかも圧搾したキャリア液をトナーの膜に与えて該膜の粘性を下げつつ該膜にせん断力を付与することができる。つまり、回転ローラに複数の機能を付与することにより、部品点数の減少や装置の小型化に寄与しつつ、より効果的にトナーの膜を除去することができる。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、上記回転ローラは、潜像担持ローラに近接配置されており、潜像担持ローラにおける潜像部分よりも高電位で帯電することにより、潜像担持ローラに付着したトナーを該潜像担持ローラに付勢することもできる。
【0016】
また、請求項5に記載の現像機構は、少なくとも現像液担持ローラと現像液掻き取り部の下方に位置し、各ローラから流下する現像液を回収する回収タンクと、回収タンク内に配設され、回収タンクに回収された現像液をトナー濃度調整用の貯蔵タンクに搬送する搬送手段と、をさらに有する。この場合、上記せん断力付与手段として該搬送手段を用いることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の現像機構によれば、搬送手段は、現像液担持ローラの軸と平行な軸により回転自在に構成されたはすば部材である。
【0018】
請求項7に記載の湿式画像形成装置は、上記の種々の特徴を持つ現像機構と、記録紙を該現像機構の潜像担持ローラを介して排紙口へ搬送する搬送機構と、記録紙に所定の画像が形成されるように現像機構と搬送機構を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、現像液担持ローラに付着した現像液を掻き取ることにより発生するトナーの膜を効果的に除去することにより、現像液の潤滑な回収や再利用が実現される。また、トナーの膜が回収タンク底部や上記クリーニングブレードに堆積していくことにより、回収タンクから凝集されたトナーがあふれる、あるいは現像ローラのクリーニング性能の低下を招くといったおそれ有効に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の湿式画像形成装置である湿式プリンタについて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の湿式プリンタ100の構成を示した側断面図である。湿式プリンタ100は、キャリア液中にトナーを含んだ現像液DSを現像ローラ表面に担持させて画像を形成する装置であって、コンピュータ等の外部機器から入力される文字または画像に関するプリント情報を、レーザビームを利用した電子写真法によって記録紙Pにプリントして出力する装置である。
【0022】
湿式プリンタ100は、大別して、プリント制御動作や搬送制御動作等を司る制御ユニット20と、各種機構を駆動させる駆動ユニット30と、プリント情報に応じて変調されたレーザ光を出力するレーザスキャニングユニット(Laser Scanning unit、以下、LSUと略記)40と、プリント情報に応じた潜像を、電子写真法によって現像液を用いて現像する現像機構50と、現像機構50で現像されたトナー像を転写位置において記録紙P上に転写する転写部70と、記録紙Pを搬送する搬送機構(11、12、13、14、15、16)と、搬送機構により搬送される記録紙P上に転写されたトナー像を定着させる定着ユニット80から構成されている。
【0023】
湿式プリンタ100の各種機構の駆動源である駆動ユニット30は、各種機構を駆動させるアクチュエータを複数備えている。これらのアクチュエータは、全て制御ユニット20に接続されており、制御ユニット20より駆動制御されている。駆動ユニット30は、例えば、現像機構50を構成する現像ローラ55や感光ドラム61、定着ユニット80を構成するヒートローラ81などを回動させる。
【0024】
湿式プリンタ100のハウジングの一端側の側面には、記録紙Pがセットされる給紙トレイ11および記録紙Pが導入される搬入口12が形成されている。また、該プリンタ100の他端側の側面には、記録紙Pが排出される排出口15および排紙トレイ16が形成されている。搬入口12から湿式プリンタ100内部に搬送された記録紙Pは、搬送路13を転写部70が成す転写位置まで搬送される。転写位置まで搬送された記録紙Pは、表面にプリント情報を示したトナーが転写される。次いで記録紙Pは、搬送路14を定着ユニット80が成す定着位置まで搬送される。定着位置まで搬送された記録紙Pは、上記転写位置において転写されたトナーが定着される。そして記録紙Pは、排出口15から湿式プリンタ100外部に排出される。
【0025】
LSU40は、感光ドラム61表面に潜像を形成する為の露光手段の一例である。LSU40は、レーザダイオード41、コリメータレンズ42、シリンドリカルレンズ43と、ポリゴンミラー44、結像レンズ45、偏向ミラー46から構成されている。なお、露光手段は、LSU40以外の構成、例えばLED(Light Emitting Diode)や縮小光学系を採用したものであっても良い。
【0026】
レーザダイオード41は、制御ユニット20によって駆動制御され、入力されるプリント情報に基づいて点灯/消灯する(すなわちレーザ光Lを変調する)。そしてレーザダイオード41から射出されたレーザ光Lは、コリメータレンズ42に入射し、これによって拡散光から平行光束に変換される。
【0027】
平行光束に変換されたレーザ光Lは、シリンドリカルレンズ43によってポリゴンミラー44反射面近傍において副走査方向にのみ収束される。なお、本文では、副走査方向とは図1に示す記録紙Pの搬送方向に対応する方向(感光ドラム61周面上ではその回転軸と直交する(接線)方向)であり、該方向に直交する方向であって、感光ドラム61上においてレーザ光が走査される方向を主走査方向(感光ドラム61上ではその軸方向)とする。また、各図中、レーザ光Lを一点鎖線で示す。
【0028】
ポリゴンミラー44は図示しないモータによって回転している為、シリンドリカルレンズ43によってポリゴンミラー44反射面のある部分において線状に収束(副走査方向にのみ収束)したレーザ光Lは、主走査方向に走査するよう偏向され、結像レンズ45に入射する。そしてレーザ光Lは、結像レンズ45によって感光ドラム61上を主走査方向に一定速度で走査するよう収束される。収束したレーザ光Lは、偏向ミラー46によって感光ドラム61に偏向され、当該感光ドラム61上において結像する。ここで、レーザ光Lが主走査しつつ変調する為、プリント情報に応じた走査ラインが感光ドラム61上に形成される。また、感光ドラム61が副走査方向に回転する為、当該感光ドラム61上において走査ラインが副走査方向に複数形成される。この結果、感光ドラム61上に2次元の文字・画像情報の潜像が形成される。なお、レーザ光Lは、副走査方向に関して、ポリゴンミラー44反射面と感光ドラム61上とにおいて共役である。この為、ポリゴンミラー44の面倒れが発生しても、副走査方向の走査ラインピッチのずれは発生しない。
【0029】
図2は、現像機構50近傍を拡大して示す図である。現像機構50は、回収タンク51、アッドローラ52、計量ローラ53、計量ブレード54、現像ローラ55、現像ローラ用帯電コロナ56、スクイーズローラ57、現像ローラ用クリーニング部58、スクイーズローラ用クリーニングブレード59、感光ドラム61、感光ドラム用帯電コロナ62、感光ドラム用クリーニングブレード63を有する。なお、上記各ローラは、回転方向は各々異なるものの、回転軸は、いずれも図1や図2の紙面に対して直交する方向に延出している。
【0030】
以下、現像機構50内における現像液の流れを説明し、現像機構50において行われる現像処理について説明する。
【0031】
現像液は、現像液貯蔵タンク92内で常に一定のトナー濃度となるように攪拌されつつ濃度調整されている。画像形成時、現像液は、現像液貯蔵タンク92からポンプ等の汲み上げ手段を介して一定量ずつ回収タンク51内部に注入される。なお、現像液は、回収タンク51に設けられた注入口51eを介して内部に注入される。注入された現像液は、時計回りに回転駆動するアッドローラ52と反時計回りに回転駆動する計量ローラ53によって形成される凹部に一時的に溜まる。そして、該現像液は、アッドローラ52によって計量ローラ53に供給される。計量ローラ53に供給された現像液は、計量ローラ53の表面に当接された計量ブレード54によってその一部が掻き取られる(すなわち計量される)。
【0032】
ここで、計量ローラ53は、図1において反時計回りに回転駆動しており、その表面に所定のピッチで刻まれたラインであって、該表面に対して溝部に形成されたラインを複数本有している。計量ローラ53に供給された現像液の一部は、該溝部に収容される為、計量ブレード54によって掻き取られることがない。従って、計量ローラ53表面には溝部に収容され、正確に計量された現像液のみが残る。計量ローラ53に残存した現像液は、計量ローラ53と転接した現像ローラ55にムラの無い状態で塗布される。
【0033】
計量ローラ53により現像ローラ55に塗布された直後の現像液は、トナー層厚が均一である。図2に示すように、現像ローラ55は、時計回りに回転駆動している。従って、上記トナー層厚が均一な現像液DSは、現像ローラ55表面に担持された状態で、現像ローラ用帯電コロナ56を通過する。
【0034】
現像ローラ55は、表面が導電性を有する部材で形成されており、現像ローラ用帯電コロナ56によるコロナ帯電によってその表面が一様に帯電される。現像ローラ用帯電コロナ56による帯電は、現像ローラ55と現像液DS表層間に電界を発生させる。そのため、現像液中において、キャリア液に均一に分布したトナーは、キャリア液中を移動して現像ローラ55表面に圧着された状態になる。すなわち現像ローラ用帯電コロナ56通過後の現像ローラ55表面において、現像液DSは、キャリア層とトナー層の2層構造を成している。なお、後者のトナー層が現像ローラ55表面に接した層となる。
【0035】
現像ローラ55表面において、2層に分離された状態にある現像液DSは、感光ドラム61との転接部に到達する。なお、感光ドラム61は反時計回りに回転駆動する。ここで、感光ドラム61表面には、上述したLSU40からのレーザ光Lによってプリント情報の潜像が形成されている。感光ドラム61は、感光ドラム用帯電コロナ62の作用によって現像ローラ55より高電位に帯電される。また、上記レーザ光によってプリント情報が潜像された部分は、当該レーザ光の作用によって現像ローラ55より低電位となる。この為、感光ドラム61表面の非潜像部分と現像ローラ55表面との間では、トナーは、両者の中で電位の低い方すなわち現像ローラ55表面側に圧着されたままであり、上記非潜像部分に移動しない。つまり非潜像部分では現像されることはない。また、感光ドラム61表面の潜像部分と現像ローラ55表面との間では、トナーTは、両者の中で電位の低い方すなわち感光ドラム61表面の潜像部分に向けて電気永動してその表面に付着する。これにより、感光ドラム61表面の潜像が現像されてトナー像となる。
【0036】
感光ドラム61と現像ローラ55との転接部において、現像された現像液(トナー像)を担持する感光ドラム61表面は、次いでスクイーズローラ57を通過する。スクイーズローラ57は、感光ドラム61に近接配置され、該ドラム61と同方向に回転駆動する。そして、トナー像と共に感光ドラム61表面に付着したキャリア液を、該表面から圧搾する。圧搾されたキャリア液は、スクイーズローラ用クリーニングブレード59によってスクイーズローラ57表面から掻き取られ、回収タンク51に回収される。
【0037】
なお、本実施形態のスクイーズローラ57は、感光ドラム61表面に付着するキャリア液を圧搾して除去するだけではない。スクイーズローラ57には、感光ドラム61表面における非潜像部分よりも高い電位によって帯電されている。従って、感光ドラム61表面に形成されたトナー像は、スクイーズローラ57を通過することにより、より感光ドラム61表面に付勢される。
【0038】
感光ドラム61表面の現像に用いられたトナー像は、転写部70によって記録紙Pに転写される。転写部70は、図1、図2に示すように、中間転写ロール71と、キャリア液スクイーズロール72と、キャリア液クリーニングブレード73と、二次転写ロール74と、を有する。
【0039】
中間転写ロール71にはトナーと逆極性の転写バイアスが印加されている。従って、感光ドラム61表面の現像に用いられたトナー像は、感光ドラム61と中間転写ロール71との転接部において、中間転写ロール71表面に一次転写される。なお、感光ドラム61と中間転写ロール71の転接部において転写されず感光ドラム61表面に付着したままの未転写トナーは、感光ドラム用クリーニングブレード63によりその表面から除去される。また、トナー像と共に中間転写ロール71表面に付着したキャリア液は、キャリア液スクイーズロール72によってその表面から圧搾される。そしてキャリア液クリーニングブレード73によってキャリア液スクイーズロール72表面から除去される。
【0040】
ここで、中間転写ロール71と二次転写ロール74は、記録紙Pの搬送路を挟んで対向する位置に設置されており、所定のニップ圧で転接している。中間転写ロール71表面に転写されたトナー像は、二次転写ロール74との転接部において転写電界やニップ圧等の作用によって搬送路を搬送される記録紙Pに転写される。なお、中間転写ロール71は、二次転写ロール74とのニップ圧が感光ドラム61に直接掛かることを防止する為に、これらの間に介在している。なお、記録紙Pへの転写後に未転写トナーとして中間転写ロール71表面に残存したトナーは、図示しない中間転写ロール用クリーニングユニットによって除去された後、廃トナーとして上記廃トナーボックスに回収される。
【0041】
トナー像が転写された記録紙Pは搬送路14によって定着ユニット80に導かれる。この定着ユニット80は、記録紙P上のトナー像(すなわちプリント情報)を加熱および加圧によって定着させるものであり、記録紙Pを加熱するヒートローラ81と、搬送路を挟んでヒートローラ81と対向した位置に設置されたローラであって、自身とヒートローラ81とによって記録紙Pを挟んで加圧するプレスローラ82から構成されている。この定着ユニット80によってプリント情報が定着された記録紙Pは、排出口15から排出される。
【0042】
以上が、現像機構50において行われる現像処理に関する説明である。次に、本発明の主たる特徴である、トナーの膜除去処理について説明する。
【0043】
感光ドラム61と現像ローラ55との転接部において、現像に用いられなかったトナーを含む現像液DSは、現像ローラ55の回転に伴い、次に現像ローラ用クリーニング部58を通過する。現像ローラ用クリーニング部58は、現像液が通過する順に導電シート58a、クリーニングブレード58bを有する。
【0044】
導電シート58aは、例えばSUSから成る薄い金属シートや導電性を有したPET(polyethylene terephthalate)フィルムなどで形成されている。導電シート58aは、一端が現像ローラ55に接触され、もう一端が帯電した現像液担持体以下の電位に接続されている。そして導電シート58aは、現像液中のトナーを、電位の低い方すなわち現像ローラ55表面から導電シート58aに向けて電気永動させる作用を持つ。従って、導電シート58a通過後の現像液DSが成す2層は、現像ローラ55表面側の層がキャリア液のみの層となり、もう一方の層(すなわち現像ローラ55表面から離れた層)がキャリア液中に高濃度でトナーを含んだ層となる。
【0045】
導電シート58aを通過したトナーは、現像ローラ55表面に当接された現像ローラ用クリーニングブレード58bによって掻き取られ、該表面から除去される。ここで、導電シート58aの上述した作用によって、トナーは現像ローラ55表面から引き離されている。よって、トナーが現像ローラ用クリーニングブレード58近傍に溜まったりローラ表面とブレードとの僅かな隙間を擦り抜けてしまったりすることがなくなり、トナーTは、現像ローラ用クリーニングブレード58bによって良好に掻き取られる。
【0046】
掻き取られた現像液のうち、キャリア層は、粘性が低いため、容易に回収タンク51に回収される。しかし、トナー層は高い粘性をもっている。そのため、現像ローラ用クリーニングブレード58bから鉛直下方に延出するトナーの膜Fが形成される。
【0047】
上述したスクイーズローラ57は、図2に示すように、表面の一部が現像ローラ用クリーニング部58により掻き取られ流下する現像液の流路上、つまりトナーの膜Fの形成領域に位置している。そして、スクイーズローラ57は、反時計方向に回転駆動することにより、表面に当接するトナーの膜Fにせん断力を付与し、トナーの膜Fを順次切断する。トナーの膜Fは、切断されることにより、膜状から液状に変換され除去される。再度液状化した現像液のトナー層成分は、クイーズローラ57表面に担持される。そして、再度液状化した現像液のトナー層成分は、スクイーズローラ用クリーニングブレード59によって掻き取られ、回収タンク51に回収される。
【0048】
なお、スクイーズローラ57と現像ローラ用クリーニング部58は、図2に示すように、スクイーズローラ57の軸Oが、流下する現像液の流路からずれるような位置関係にある。より詳しくは、スクイーズローラ57と現像ローラ用クリーニング部58は、軸Oが流下する現像液の流路よりも感光ドラム61側に位置するような関係にある。これにより、トナーの膜Fがスクイーズローラ57により切断、除去される過程において、スクイーズローラ57の回転方向に逆らって感光ドラム61側に逆流する現象を有効に防止している。
【0049】
回収タンク51に回収された現像液は、表面がはすば状に彫刻されたはすば状ローラ91によって担持されつつ、上述した現像液貯蔵タンク92に搬送される。そして、現像液貯蔵タンク92内において、トナー濃度を再調整された後、再利用される。ここで、トナーの膜Fは、スクイーズローラ57によって有効に除去され、液状化されているため、はすば状ローラ91によって容易に搬送される。つまり、従来のように回収タンク51内に堆積することはない。
【0050】
以上のように、本実施形態の画像形成装置100では、トナーの膜Fを除去すべく、該膜Fにせん断力を付与する手段として、スクイーズローラ57を使用している。スクイーズローラ57を使用することにより、以下の利点が得られる。すなわち、既存のローラをせん断力付与手段として利用することにより、部品点数の減少や装置の小型化に寄与することができる。また、トナーの膜Fにせん断力を付与する際、スクイーズローラ57自体が感光ドラム61表面から圧搾したキャリア液によってトナーの膜Fを攪拌することにもなり、より効果的にトナーの膜Fを除去することもできる。
【0051】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、せん断力付与手段としてスクイーズローラを使用している。本発明に係る現像機構において、せん断力付与手段は、スクイーズローラに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、はすば状ローラ91をせん断力付与手段として使用することも可能である。さらに、トナーの膜Fにせん断力を付与するための専用のローラを新たに設けても良い。専用のローラは、トナーの膜Fにせん断力を付与できる構成であれば必ずしも円筒状のローラである必要はない。例えば、図4に示すように、軸Pから放射状にかつ等間隔に延出する複数の羽板Wを持つ形状のローラを使用しても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、回収タンク51に回収された現像液は、はすば状ローラ91によって担持されつつ、現像液貯蔵タンク92に搬送されると説明したが、本発明に係る現像機構において、現像液を回収し再利用する構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、はすば状ローラ91の代替としてポンプ機構を配設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態の湿式プリンタの構成を示した側断面図である。
【図2】本発明の実施形態の現像ユニット近傍を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態のせん断力付与手段の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
50 現像ユニット
51 回収タンク
51e 注入口
52 アッドローラ
53 計量ローラ
54 計量ブレード
55 現像ローラ
56 現像ローラ用帯電コロナ
57 スクイーズローラ
58 現像ローラ用クリーニング部
61 感光ドラム
62 感光ドラム用帯電コロナ
63 感光ドラム用クリーニングブレード
91 はすば状ローラ
92 現像液貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液中にトナーを含んだ現像液を用いて画像形成を行う湿式画像形成装置における現像機構であって、
前記トナーによって現像される潜像が形成される潜像担持ローラと、
前記潜像担持ローラに前記トナーを供給するため、帯電することにより前記現像液を担持する現像液担持ローラと、
前記現像に用いられなかった前記現像液を前記現像液担持ローラから掻き取る現像液掻き取り部と、
前記現像液掻き取り部により掻き取られた現像液の流路上に表面が位置するように配設され、前記現像液掻き取り部によって掻き取られた現像液により形成されるトナーの膜にせん断力を与えるせん断力付与手段と、を有することを特徴とする現像機構。
【請求項2】
請求項1に記載の現像機構において、
前記せん断力付与手段は、前記現像液担持ローラの軸と平行な軸により回転自在に構成された円筒状の表面を持つ回転ローラを有することを特徴とする現像機構。
【請求項3】
請求項2に記載の現像機構において、
前記回転ローラは、前記潜像担持ローラに近接配置されており、前記潜像担持ローラと同方向に回転することにより、前記潜像担持ローラに付着した前記キャリア液を圧搾することを特徴とする現像機構。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の現像機構において、
前記回転ローラは、前記潜像担持ローラに近接配置されており、前記潜像担持ローラにおける潜像部分よりも高電位で帯電することにより、前記潜像担持ローラに付着した前記トナーを該潜像担持ローラに付勢することを特徴とする現像機構。
【請求項5】
請求項1に記載の現像機構において、
少なくとも前記現像液担持ローラと前記現像液掻き取り部の下方に位置し、流下する現像液を回収する回収タンクと、
前記回収タンク内に配設され、前記回収タンクに回収された前記現像液をトナー濃度調整用の貯蔵タンクに搬送する搬送手段と、をさらに有し、
前記せん断力付与手段は、前記搬送手段であることを特徴とする現像機構。
【請求項6】
請求項5に記載の現像機構において、
前記搬送手段は、前記現像液担持ローラの軸と平行な軸により回転自在に構成されたはすば部材であることを特徴とする現像機構。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の現像機構と、
記録紙を前記現像機構の前記潜像担持ローラを介して排紙口へ搬送する搬送機構と、
前記記録紙に所定の画像が形成されるように前記現像機構と前記搬送機構を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−284636(P2006−284636A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100701(P2005−100701)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】