説明

湿潤可能なポリマー繊維

【課題】 合成ポリマーの湿潤可能な繊維およびフィラメント材を提供すること。
【解決手段】 湿潤材を混合したポリマーを有する組成物から作成した湿潤可能な繊維または湿潤可能なフィラメント。このポリマーはオレフィンポリマー、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される。上記湿潤材はモノグリセリドと、モノグリセリドおよび少なくとも85重量%のモノグリセリド含有量を有する混合グリセリドの組み合わせとからなる群から選択されるグリセリドを主成分とする。各グリセリドにおける単一または複数の脂肪酸エステル基は約12個乃至22個の炭素原子を有する。上記オレフィンポリマーは、好ましくはポリプロピレン、LLDPE,LDPEおよびHDPEであり、さらに好ましくはポリプロピレンである。上記ポリアミドは、好ましくはナイロン6およびナイロン6,6である。また、上記ポリエステルは、好ましくはポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートである。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
発明の技術分野
本発明は合成ポリマーの湿潤可能な繊維およびフィラメント材に関する。
【0002】
背景技術
繊維やフィラメント材に形成できる多くのオレフィン系ポリマーがある。この種のポリマーには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、および、エチレンおよびプロピレンと高級オレフィン類および共役ジエン類のようなオレフィン系モノマーとのコポリマーが含まれる。オレフィン系ポリマーはそれらの疎水性の特性により知られる。それゆえ、このようなポリマーの繊維またはフィラメントの形態における湿潤性はそのポリマー繊維またはフィラメント材中またはその上に与えられた湿潤剤によって付与される。
【0003】
このような繊維またはフィラメント材はバッテリーセパレーター(例えば、米国特許第3,847,676号)、使い捨て可能なおしめ(例えば、米国特許第4,073,852号)、ワイパー材(例えば、米国特許第4,307,143号)、紙(例えば、米国特許第4,273,892号)およびフィルター補助剤(例えば、米国特許第4,274,971号)の製造に有用である。
【0004】
米国特許第4,189,420号は、とりわけ、ポリブテンと2個乃至6個の炭素原子からなる少なくとも1個のアシル基と8個乃至22個の炭素原子を含む少なくとも1個のアシル基を有する混合グリセリドとを配合した特定のエチレンポリマーを開示している。
【0005】
米国特許第3,048,266号は、とりわけ、ポリエチレンオキシド誘導体の防曇剤を含有するポリオレフィンフィルムを開示している。
【0006】
米国特許第3,048,263号は、とりわけ、脂肪酸のモノグリセリドおよび、必要に応じて、脂肪酸のジグリセリドからなる防曇剤を含有するポリオレフィンフィルムを開示している。なお、この特許明細書に開示されているモノグリセリドの一例としてグリセリルモノステアレートが挙げられている。
【0007】
米国特許第2,462,331号は、とりわけ、飽和または不飽和モノカルボン酸系脂肪酸の金属塩の多価アルコールエステルのポリエチレン内への含浸を開示している。
【0008】
米国特許第4,578,414号は、好ましくは、湿潤可能な繊維および/またはフィラメント材の形成に使用する湿潤剤を配合した線形低密度ポリエチレンコポリマー(LLDPE)のオレフィンポリマーを開示している。この湿潤剤は、(1)モノ−、ジ−、および/または、トリ−グリセリドを伴うアルコキシル化アルキルフェノール、(2)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、または、(3),(2)および(1)の一部分の組合せの少なくとも1種を有している。
【0009】
実質的に熱可塑性のポリマーがストランド素材またはモノフィラメント材として押出成形可能であるが、これらのポリエチレンおよび一定種のエチレンコポリマーのような材料の多くが細いデニール繊維またはマルチフィラメント材の形成に適していることは一般に知られていない。細いデニール材またはフィラメント材は約15よりも小さいデニール値の押出しストランド材を言う。また、ステープルファイバーの紡糸またはマルチフィラメント糸の場合におけるフィラメントの束にかけられる機械的および熱的な条件はモノフィラメントの場合における条件に対して極めて異なっていることが認識されている。すなわち、任意の人工ポリマーがモノフィラメントとして押出成形できても、このことによって、この材料が細いデニール材またはマルチフィラメント材の押出材として使用可能であるとは限らない。
【0010】
合成繊維はメルトスピニング(melt spinning)として知られる方法によって連続フィラメントとして形成される。すなわち、プラスチックペレットがホッパー内に供給されて単一スクリュー押出機内で溶融される。この溶融ポリマーはろ過した後に、数千個の小孔を有する紡糸口金を通して押出す前に計量される。その後、この繊維は空気により固化され、連続的に増加する速度でローラーの作用により引っ張られる。引っ張られたフィラメントはその後スプール上に巻かれる。これらのスプールはトウ(tows)と呼ばれる束に形成され、製造者の仕様に応じてステーブルファイバーに切断される。
【0011】
これらの繊維材は織物や不織布の主成分となる。不織布は織りまたは編み以外の処理により得られる従来にない布地である。近年において、個人用衛生管理、おむつ又はおしめ、成人用失禁、医療用、構造用、土壌用布地および自動化用途における不織布の使用量が増大しつつある。不織布は天然または合成の繊維あるいはこれらの組合せにより形成できる。通常、これらの繊維は形成または押出し成形された後に熱的、機械的または化学的手段により薄いシート内に結合される。市場において用いられている主な種類の不織布は不織式(spunbonded type)および溶融吹込式(melt blown type)が含まれる。これらの材料の種類およびその製造者については以下のパラグラフにおいて説明する。極めて多くの場合に、2種以上の不織布が層状構造または複合構造を形成するために用いられる。また、これらの不織布はさらに結合されて他の用途に適合する強度を付与する場合がある。
【0012】
不織式不織布の製造においては、ポリマーチップが一般にホッパーを介して供給されて単一スクリュー押出機内で溶融される。なお、装置に色素等の添加材を供給するための副次的な供給装置が備えられている場合もある。この溶融したポリマーは計量された後に、数千個の小孔から押し出されて連続的なフィラメントが形成される。これらのフィラメントは引っ張られてベンチュリの作用により絡み合わされて集積ベルト上に堆積される。このような未結合の絡み合った繊維はその後2個の加熱したカレンダーロールに通されて繊維の互いの接触点において熱的に結合する。その後、この不織布は巻き取られ、その布が被覆されて最終製品となる。あるいは、または、上記に加えて、これらの繊維はニードルパンチングおよび化学結合を介して結合することもある。このような不織布に一般に用いられるポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドおよびポリエステルのようなポリオレフィンである。この中で、ポリプロピレンは30乃至40の範囲内における一定の溶融流速で最も一般に使用される。ポリプロピレンは他のポリマーと比較した場合に処理しやすくコストが安い。従って、ポリプロピレンの不織布は乳幼児のおむつ又はおしめ、女性用の衛生用品、層構造材、成人用失禁用具、医療用衣類、農業用被覆製品等に用いられている。
【0013】
一方、溶融吹込式不織布の製造方法においては、ポリマーチップがホッパーを介して供給されて単一スクリュー押出機内で溶融される。なお、装置に着色用マスターバッチまたは色素等の添加材を供給できる副次的な供給装置が備えられている場合もある。その後、この溶融ポリマーは垂直または水平に配置された極細のダイホールから押し出される。これらの繊維はその後極めて高速の極めて熱い空気の作用にかけられて延伸されてミクロン以下の直径の繊維に加工される。その後、繊維は冷却されながら互いの接触点において結合される。一般には、別の結合処理はない。この溶融吹込製品は一般にフィルター、ワイパー、バッテリーセパレーターおよび絶縁体に使用される。
【0014】
布地繊維における界面活性剤の使用
布地繊維に界面活性剤を使用することが知られている。例えば、これらの界面活性剤は紡糸仕上剤として使用されて引き伸ばしや織りの前に合成繊維間の凝集力を与える。この処理はまたローラー間または繊維間の摩擦力を減少してローラーの摩滅や繊維の破損を防止する。これらの界面活性剤はまた仕上繊維製品に添加されて、例えば、親水性、疎水性または撥油性のような所望の仕上特性を与える。このような界面活性剤の例としては、カチオン性(第4級アンモニウム化合物)、アニオン性(リン酸塩、硫酸塩)または非イオン性(エステル、アルコール、エトキシレート等)が挙げられる。
【0015】
しかしながら、これらの使用方法はスプレイ、コーティング、パディング等の典型的な方法が専らであった。同様の手法は織物または編物および不織布においてこれまで使用されてきた。また、界面活性剤は最終製品における濃度よりも高い濃度で溶融段階のプラスチックに混合されることもあった。この材料は、その後、冷却されて、添加剤としてのコンセントレート(濃縮物)またはマスターバッチとして知られるペレットの形態で販売されていた。繊維紡糸、不織布製造および他の関連処理において表面を変性するためにマスターバッチを使用することは最終用途、材料の表面への転移、ポリマーおよび付加的な特性、処理環境およびコストに依存する。シロキサンまたはフッ素ベースの界面活性剤は親水性または疎水性のいずれにもなり得る特別な(tailor-made)官能基を有している。このシロキサンまたはフッ素材料は表面上において活性になることが示されている。しかしながら、これらの材料は極めて高価で転移性が高いことが知られており、それゆえ、排除できる。そこで、おしめ又はおむつおよび衛生用品を市場に供給する不織布業界は耐久性のある再湿潤特性の高いコスト的に有利な添加配合物を常に探し求めている状態であった。
【0016】
しかしながら、上記の表面コーティング仕様には以下の不都合点がある。すなわち、1)生産高が減少してより広い床面積を必要とし、2)スプレイ処理が関連する場合に、過剰スプレイおよび漏れが環境に影響し、3)コーティング剤が繊維に良好に結合しないことが多く、貯蔵中や他の処理または使用において部分的に失われる場合があり、さらに、4)コーティングの不均一さに関して常に品質管理上の問題がある。
【0017】
近年、この技術分野は添加物を溶融段階において混ぜて溶融安定な配合物を形成するように進展した。この添加物の融点または分子量がそのポリマー内への混入中の処理能力および紡糸または吹込み段階における処理能力を決定する。すなわち、分離量が小さいほど、粘度が低くなり、これによって、混合できる液体添加剤の量が決定される。溶融混合および最終品製造用の溶融混合したコンセントレートの使用において留意すべき2点は混合と転移特性であり、1)溶融段階における混合は添加剤のポリマー中における溶解度、添加剤およびポリマーの種類、化学的特性、極性、分子量、融点等に依存し、2)添加剤の表面への転移は固体状態における添加剤の拡散特性、分子量、構造、純度等に依存する。
【0018】
上述のパラメータが特定の用途に対して注意深く選択される限り、表面変性および添加剤混合処理を適性に行なうことができる。種々の添加剤およびそれらの溶融段階における異なる種類のポリマーとの混合については既に当該技術分野において知られている。しかしながら、コンセントレートまたはマスターバッチ剤のコスト的に有利な配合物の認定およびそれらの商業ベースに見合う製造方法についてはまだ見い出されていない。既に述べたように、混合できる添加剤の量には限界があり、この量は添加剤の種類、ポリマーの種類および日用品市場に適合した市場価値のあるコンセントレートを製造する装置の種類に依存する。
【0019】
我々の知る限りにおいては、従来技術においてモノ−、ジ−またはトリ−グリセリドの混合物が使用され、この混合物は表面を「ブルーミングする(bloom)」または表面に転移する傾向を有する液体の形態をしている。この結果、界面活性剤の一部または大半の部分が親水性材料と接触して他の表面に転移する。また、このような界面活性剤は貯蔵中に消失することがあり、不充分な温度安定性を有している(米国特許第4,578,414号)。それゆえ、容易に混合できて市場価値のある転移または移動に対して抵抗する湿潤剤の存在が必要となっている。
【0020】
発明の概要
従って、本発明は、湿潤剤を混合したポリマーからなる組成物により作成される湿潤可能な繊維またはフィラメント材を提供し、上記ポリマーがオレフィンポリマー、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択され、上記湿潤材が、主に、モノ−グリセリド、モノ−グリセリドおよび少なくとも85重量%のモノ−グリセリド含有量を有する混合グリセリドの組合せからなる群から選択されるグリセリドからなる。これらの制限により、室温において固体で一定の、好ましくは上記ポリマーよりも低い、融点を有するグリセリドが提供される。実施形態の一例において、上記グリセリドは以下の実験式を有し、
2C−OR1

HC−OR2

2C−OR3
当該実験式において、−OR1,−OR2および−OR3は、それぞれ、水酸基または脂肪酸エステル基を示すが、これらのうちの1個だけは約12個乃至約22個の炭素原子を有する脂肪酸エステル基である。好ましくは、−OR2基は水酸基である。さらに好ましくは、上記モノ−グリセリドがグリセリルモノステアレートである。なお、モノ−グリセリドの組合せも使用可能である。
【0021】
また、別の実施形態においては、上記グリセリドが混合グリセリドであって、この混合グリセリドが少なくとも1種のモノ−グリセリドと、ジ−グリセリドおよびトリ−グリセリドからなる群から選択される少なくとも1種の他のグリセリドとの組合せであり、この組合せにおける各グリセリドが以下の実験式を有しており、
2C−OR4

HC−OR5

2C−OR6
当該実験式において、−OR4,−OR5および−OR6は、それぞれ、水酸基または脂肪酸エステル基を示し、モノ−グリセリドが1個のみの脂肪酸エステル基を有し、ジ−グリセリドが2個の脂肪酸エステル基を有し、さらに、トリ−グリセリドが3個の脂肪酸エステル基を有している。これらの各脂肪酸エステル基は同一であっても異なっていてもよく、約12個乃至約22個の炭素原子を有している。この場合の混合グリセリド中のモノ−グリセリド含有量もまた少なくとも85重量%である。
【0022】
上記オレフィンポリマーは好ましくはポリプロピレン、LLDPE、LDPEおよびHDPEであり、さらに好ましくはポリプロピレンである。また、上記ポリアミドは好ましくはナイロン6およびナイロン6,6である。また、上記ポリエステルは好ましくはポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートである。
【0023】
上記湿潤剤は約0.1重量%乃至約20重量%、好ましくは約1重量%乃至約10重量%の量で存在している。
【0024】
本発明の湿潤可能な繊維またはフィラメント材は、おしめ又はおむつの内張り、バッテリー電池のセパレーター、フィルター、紙強化基材、分離膜、水分通過性ダイアフラムおよび構造材料強化基材のような最終製品の一部分または大部分を構成するのに有用である。本発明の繊維はまた他の繊維との混合要素として有用であり、これによって、繊維の熱可塑特性ならびに湿潤性、軟化度および潤滑性が好都合になる。これらの繊維またはフィラメント材は織物、不織布または編物の形態にすることができる。また、これらの繊維またはフィラメント材は水性媒体中において分散液の形態にできる。さらに、これらの繊維またはフィラメント材は比較的小さなデニール値で形成することができる。
【0025】
また、本発明は、例えば、湿潤材を含有するポリプロピレン(PP)ホモポリマーのようなポリマーを有するコンセントレートを提供する。このコンセントレートは改善された「織物のような(textile-like)」感触および伸び率を有する親水性で滑らかな繊維および不織布の形成に用いられる。好ましくは、本発明において使用する湿潤剤は少なくとも85重量%のモノグリセリドを含有する固体のグリセリドモノステアレート(GMS)である。この材料は一定の溶融特性を有しており、貯蔵状態(40℃乃至50℃で1kgの圧力下)および他の環境において、繊維またはフィラメント材との接触において他の基材に対して非転移性であることが分かっている。使用されるオレフィンの種類はLDPE、LLDPE、HDPEおよびPPホモポリマーとオレフィン系コポリマーを含む。
【0026】
発明の詳細な説明
従って、本発明は、湿潤剤を混合したポリマーからなる組成物により作成される湿潤可能な繊維またはフィラメント材を提供し、上記ポリマーがオレフィンポリマー、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択され、上記湿潤材が、主に、モノ−グリセリド、モノ−グリセリドおよび少なくとも85重量%のモノ−グリセリド含有量を有する混合グリセリドの組合せからなる群から選択されるグリセリドからなる。これらの制限により、室温において固体で一定の、好ましくは上記ポリマーよりも低い、融点を有するグリセリドが提供される。実施形態の一例において、上記グリセリドは以下の実験式を有し、
2C−OR1

HC−OR2

2C−OR3
当該実験式において、−OR1,−OR2および−OR3は、それぞれ、水酸基または脂肪酸エステル基を示すが、これらのうちの1個だけは約12個乃至約22個の炭素原子を有する脂肪酸エステル基である。好ましくは、−OR2基は水酸基である。さらに好ましくは、上記モノ−グリセリドがグリセリルモノステアレートである。なお、モノ−グリセリドの組合せも使用可能である。
【0027】
また、別の実施形態においては、上記グリセリドが混合グリセリドであって、この混合グリセリドが少なくとも1種のモノ−グリセリドと、ジ−グリセリドおよびトリ−グリセリドからなる群から選択される少なくとも1種の他のグリセリドとの組合せであり、この組合せにおける各グリセリドが以下の実験式を有しており、
2C−OR4

HC−OR5

2C−OR6
当該実験式において、−OR4,−OR5および−OR6は、それぞれ、水酸基または脂肪酸エステル基を示し、モノ−グリセリドが1個のみの脂肪酸エステル基を有し、ジ−グリセリドが2個の脂肪酸エステル基を有し、さらに、トリ−グリセリドが3個の脂肪酸エステル基を有している。これらの各脂肪酸エステル基は同一であっても異なっていてもよく、約12個乃至約22個の炭素原子を有している。この場合の混合グリセリド中のモノ−グリセリド含有量もまた少なくとも85重量%である。なお、この少なくとも85%という制限は任意のモノ−グリセリドに対して異なる純度を有するグリセリドを混合することによって達成される。
【0028】
オレフィンポリマー
使用する典型的な有機ポリマー材料は合成有機ポリマーおよびコポリマーを含み、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマーおよびエチレン−1−ヘキセンコポリマー、および、共役ジエンモノマーのホモポリマーおよびコポリマー、2種以上の共役ジエンのコポリマー、および、1種の共役ジエンおよび他のビニルモノマーのコポリマーを含み、上記の共役ジエンは、好ましくは、例えば、ブタジエン、イソプレン等の4乃至8個の炭素原子を含有するものである。
【0029】
ポリアミド
ポリアミドもまた使用でき、このポリアミドはα−ポリアミド、α;ω−ポリアミド、および、これらの混合物および/またはコポリマーである。α−ポリアミドの例としてはポリカプロラクタム(ナイロン6)、および、α;ω−ポリアミドの例としてはポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)が挙げられる。これについては、本明細書に参考文献として含まれるModicに付与された米国特許第4,906,687号を参照されたい。なお、好ましいポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)およびポリスチレンのような有機炭化水素ポリマーが含まれる。
【0030】
ポリエステル
他の有用なポリエステルの基はジカルボン酸とグリコールとの重縮合により形成される構造を有する熱可塑性ポリエステルである。これらのポリエステルは、ジカルボン酸またはその低級アルキルエステル、酸ハロゲン化物またはその酸無水物誘導体とグリコールとの直接エステル化またはエステル交換反応によるように、当該技術分野において周知の方法に従って作成できる。
【0031】
さらに、本発明において有用なポリエステルを作成するのに適するジカルボン酸は、2個乃至約25個の炭素原子、好ましくは、15個までの炭素原子を有するものである。このようなジカルボン酸はアルキレン、アルキリデン、シクロアルキレンおよびシクロアルキリデンのような炭化水素基を含む脂肪族化合物とすることができる。この炭化水素基は炭素−炭素間の多重結合におけるような不飽和部分を含み、脂肪族分子上にアリル基を含むアリル脂肪族化合物(aryaliphatic)のように置換されていてもよい。好適な脂肪族ジカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸である。また、上記ジカルボン酸は少なくとも1個の芳香環、好ましくは、2個までの芳香環を有する芳香族化合物であり、この芳香環に炭化水素置換基が含まれていてもよい。この芳香族ジカルボン酸が2個以上の芳香環を含む場合、これらの環は、炭素−炭素結合、アルキレンまたはアルキリデン基のような炭化水素架橋基、あるいは、オキソ結合、チオ結合またはスルホン結合のような他の架橋基によって、接続できる。好適な芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’ビフェニルジカルボン酸、4,4’ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルプロパンおよび4,4’−ジカルボキシジフェニルオクタンである。さらに、脂肪族カルボン酸部分および芳香族カルボン酸部分の両方を有して、これら2種の酸の部分が、炭素−炭素結合、アルキレンまたはアルキリデン基のような炭化水素架橋基、あるいは、オキソ基のような他の架橋基によって、接続しているジカルボン酸もまた本発明における使用に適している。このような好適なジカルボン酸の例として、4−カルボキシフェニル酢酸、4−カルボキシフェノキシ酢酸、4−カルボキシフェノキシプロピオン酸、4−カルボキシフェノキシ酪酸、4−カルボキシフェノキシ吉草酸、4−カルボキシフェノキシヘキサン酸およびβ−(2−アルキル−4−カルボキシフェノキシ)プロピオン酸が挙げられる。なお、ジカルボン酸の混合物もまた使用できる。さらに、テレフタル酸が特に好ましい。
【0032】
また、本発明に有用なポリエステルを作成するのに適するグリコールは2個乃至約12個の炭素原子の多価アルコール、好ましくは、アルキレングリコール、芳香族グリコールおよびジヒドロキシエーテルのような二価アルコール(ジオール)を含む。さらに、アルキレングリコールの好適例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−へキシレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカメチレングリコールおよび1,12−ドデカメチレングリコールが挙げられる。また、他の適当なアルキレングリコールは1,4−シクロヘキサンジメタノールのような脂環式ジオールである。さらに、芳香族グリコールによって全体的または部分的に置き換えることができる。好適な芳香族グリコールはp−キシリレングリコール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンおよびこれらの化合物のアルキル置換誘導体のような芳香族ジヒドロキシ化合物を含む。さらに、好ましいグリコールは直鎖アルキレングリコールであり、さらに好ましくは、2個乃至4個の炭素原子を有する直鎖アルキレングリコールである。
【0033】
さらに、これらのポリエステルの好ましい群はポリ(アルキレンアクリレート)であり、特に、結晶状コポリマーのポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)およびポリ(ブチレンテレフタレート)のようなポリ(アルキレンテレフタレート)である。
【0034】
このポリ(アルキレンテレフタレート)はアルキレングリコールとジメチルテレフタレートまたはテレフタル酸の重縮合により形成できる。直鎖状のアルキレングリコールを用いる場合、このポリ(アルキレンテレフタレート)は以下の一般式を有する。
(−C(O)−Ph−C(O)−O(−(CH2m−O−))n
この式において、Phはp−フェニレン基(−C64−)であり、mは使用した直鎖状アルキレングリコール中の炭素原子数であり、nは70乃至280の間で変化する。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)の形成にエチレングリコール(m=2)が使用され、ポリ(プロピレンテレフタレート)の形成に1,3−プロピレングリコール(m=3)が使用され、ポリ(ブチレンテレフタレート)の形成に1,4−ブチレングリコール(m=4)が使用される。これらのポリ(アルキレンテレフタレート)の分子量は一般に約20,000乃至約50,000の範囲で変化する。なお、これらのポリマーを製造するための好適な方法が本明細書に参考文献として含まれる米国特許第2,465,319号および英国特許第1,305,130号に記載されている。
【0035】
市販のポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(ブチレンテレフタレート)はVALOX(登録商標)熱可塑性ポリエステルという商標名でゼネラルエレクトリック(GE)社から入手可能である。他の市販のポリマーにはCelanese社のCELANEX(登録商標)、Eastman Kodak社のTENITE(登録商標)およびGoodyear Chemical社のVITUF(登録商標)(PBT)およびCLEARTUF(登録商標)(PET)が含まれる。他の市販の好適なポリエステルはAmoco社のARDEL(登録商標)ポリアクリレートがある。なお、これらの化学式については米国特許第4,906,687号を参照されたい。
【0036】
また、グリコールおよびテレフタル酸またはイソフタル酸の直線状及び分岐状ポリエステルおよびコポリエステルは多年にわたって市販されており、米国特許第2,465,319号および同第3,047,539号に記載されている。
【0037】
本発明は、特に微小デニール値の湿潤性の優れた持続性を有する繊維およびフィラメント材を形成するための、例えば、ポリオレフィン樹脂のようなポリマーと添加材との組成物を使用することにより構成されている。正味のポリオレフィンは疎水性材料であって正味のポリオレフィン樹脂から形成される繊維構造を有しており、水によって容易に湿潤しない。水性媒体中における繊維の分散および繊維構造の組合せを介する水性媒体中の、あるいは、当該媒体の移送に関係するような特定用途において、この疎水性はポリオレフィン繊維の特性を低減することになる。従って、持続性または使用可変性の表面湿潤性をポリオレフィン繊維構造に賦与することによって、ろ過構造、移送膜および強化基材としてのそれらの使用効果を改善しその範囲を拡張できる。
【0038】
本発明のポリマー配合物は好ましくは約0.1重量%乃至約20重量%の範囲の、単一または組合せの、界面活性(湿潤)剤を含有しており、最も好ましくは、約1重量%乃至約10重量%の範囲の量が使用される。
【0039】
さらに、この界面活性剤のポリマーへの混合は、ロールミル、Banbury型ミキサー内における混合または押出機のバレル内における混合等の一般に使用される技法により当該活性剤を溶融ポリマー内に混合することにより行なわれる。さらに、界面活性剤を未加熱のポリマー粒子に混合することによって熱履歴(heat history)(上昇温度において保持される時間)が短縮でき、ポリマー全体に活性剤が実質的に均一分散されて溶融温度における強制的な混合に要する時間が減少できる。
【0040】
都合の良いことに、この界面活性剤は特定の場合に必要とされる他の添加物(着色材、色素等)と同時にまたは連続的に添加できる。また、この界面活性剤を他の添加物と予め混合しておいて、その混合物をその後にポリマーに添加することもできる。なお、これらの界面活性剤は、特定の場合において、他の添加物を補助してポリマー中により容易にまたは均一に分散あるいは溶解する付加的な作用効果を有すると考えられる。バッチ間における品質管理を容易にするためには、ポリマー/活性剤混合物の濃縮したマスターバッチを用いて、これらを付加量のポリマーと段階的に連続的に混合することによって、最終の所望とされる配合物を得るようにすることが好ましい。このマスターバッチまたは正味の添加物は、新しく作成して重合容器またはトレインから出した溶融状態のポリマー内に注入して、この溶融ポリマーが冷えて固化するまたはその後の処理に運ばれる前に、このポリマーと混合してもよい。なお、オレフィンポリマーが上述のポリプロピレン、LDPE、LLDPE、HDPE、あるいは、フリーラジカル開始剤または配位触媒を使用して形成した他のオレフィンポリマーまたはコポリマーであれば、これらの混合物またはアロイを使用することは本発明の範囲内である。ポリプロピレンは配位触媒(例:周知のチーグラー(Ziegler)またはナッタ(Natta)触媒またはこれらの変形物)を使用して作成したオレフィンポリマーの一例であるが、ポリエチレンに比して低密度を呈する性質を有する。
【0041】
ポリオレフィン繊維の使用は織物およびその関連業界において進歩的領域である。すなわち、より高価な合成および天然繊維の代替という経済的観点から材料としての利点が認識できる。このポリオレフィン繊維が参入しつつある領域は使い捨ておむつ又はおしめの市場である。使い捨ておむつ又はおしめは現在では不織布すなわち繊維ウェブを皮膚接触内張り部として使用している。この内張りは裏張りと接合しておしめ又はおむつを一体に保持すると共に、吸取り機構により皮膚からの水分を除去して皮膚の接触面に爽快感を与える。内張り用の材料は現在ポリプロピレンを伴うポリエステルおよびセルロースが市場のシェアを増加しつつある。このような内張りは極めて細い可変長の内部接続した繊維から構成されている。ポリエステルの内張りはかなり容易に濡れて効果的に水分を吸い取るがポリエステルウェブは感触が粗い。一方、本発明に従って湿潤剤により処理したポリエステルはより柔らかな感触を与える。また、セルロースは濡れるが、水を吸収すると共にこれを保持する。ポリプロピレンはポリエステルよりも柔らかなウェブを形成するが濡れ性に乏しく、界面活性剤の添加が必要である。このことは、内張りの毛管組織内に流体を強制的に吸収することを困難にして、流体の移送速度および効率を低下している。
【0042】
線形の低密度ポリエチレン(LLDPE)繊維はポリプロピレンおよび高密度ポリエチレンに比して柔らかさの点で優れた触感性を有している。さらに、この線形低密度樹脂と界面活性剤の組合せとの溶融混合およびこの混合物の溶融紡糸によって、正味の線形低密度ポリエチレン樹脂の繊維よりも優れた触感性を有する湿潤可能な繊維が得られる。すなわち、この湿潤可能な線形低密度ポリエチレン繊維のウェブは迅速な濡れ性と繊維組織を介する水性媒体の良好な移送作用効果を呈する。従って、これらの繊維構造は良好な性能特性を示すと共に、オレフィンポリマーの新しい市場を開く手段を提供する。湿潤性は近接する固相および液相の間の界面エネルギーの最小化を含む表面現象である。水とポリオレフィンの場合、湿潤性は一般にポリマー表面の変化を必要とする。すなわち、この特性はコポリマー組成物を介して、あるいは、補助的な界面活性剤の作用により得られる。しかしながら、コポリマーはポリオレフィンの材料特性を低下させ、コスト高にして処理をより困難にする場合が多い。一方、界面活性剤は一般に移動性の物質であり、ポリマー表面上において介在的な混和可能層として凝集する。この表面層の移動度によって当該層は溶解し機械的に分散するようになる。また、界面活性剤がポリオレフィン基材に対して強い親和性を有する場合においては、繊維の特性は可塑化および/または不所望な構造的再配列によって低下する。界面活性剤は一般に適用化または活性化のための付加的な処理工程を必要とし、従来技術においては、繊維または織物製品の形成後に加えられる場合が多い。
【0043】
本発明は、後添加剤(post-added agents)に対して、樹脂に直接混合する表面活性物質の実施形態を含む。この混合樹脂は従来処理方法により製造でき、湿潤特性がその製造された製品に備えられている。本発明におけるこの樹脂は容易に処理でき、特性における不都合な変化を示さない。さらに、濡れの程度および濡れの持続性のような広範囲の湿潤特性が添加剤の濃度および添加剤の組成を変化させることによって得られる。また、溶解や機械的分散に対する抵抗力が、部分的に基材組織中に埋め込まれると共に介在領域内に存在する少なくとも1種の表面活性物質を供給することによって、制御される。
【0044】
従って、本発明は、製造した繊維構造中にコポリマーを導入または表面処理するのではなく、バルクのポリマー樹脂内に直接界面活性剤を混合する点において従来技術とは異なる。この界面活性剤は、形成された繊維の表面に露出する親水性部分と、ポリマー組織内に部分的に埋め込まれている界面活性剤の疎水性部分とによって、ポリマーに絡み付く。さらに、湿潤性の持続性は添加剤の組成およびその濃度によって制御できる。
【0045】
本発明の好ましい混合物は、最終の総合的混合物の一部となり得る他の添加物(例えば、色素、着色剤、充填剤等)の重量は考慮に入れないで、約80%乃至約99.9%のオレフィンポリマーと、その残り重量分の湿潤剤(または本明細書に開示するような湿潤剤の混合物)とから構成されている。以下の実施例は本発明の特定の実施形態を示すが、本発明は当該特定の実施形態によって制限されるものではない。
【0046】
すなわち、本発明を実施する新規なプラスチック組成物は多数の方法により作成できる。また、この新規なプラスチック組成物は、全ての要素の直接的添加、任意の単一マスターバッチが最終組成物よりも多い比率で湿潤剤を含有しているマスターバッチ処理、または、他の任意の配合法のような幾つかの既知の技法のいずれかに従って配合できる。
【0047】
このマスターバッチ法は1種以上の「パッケージ(packages)」または組成物の作成を含み、これらの組成物が上記の有機ポリマー材料と共に均一な混合物に混合される。このマスターバッチ法においては、湿潤剤は最終組成物における濃度よりも高い濃度で初期的に存在している。さらに、分離したマスターバッチ組成物は、その後、適当な割合で混ぜ合わされて本発明を実施するポリマー組成物が形成される。このマスターバッチ法は、最終ポリマー組成物および最終の繊維またはフィラメント材における湿潤材の分散度を改善する点で好ましい。
【0048】
他の好ましい方法は、主に、ポリマーをその分解温度よりも低い一定の温度で加熱する工程と、湿潤材の初期的な成分を混合する工程と、さらに混合してほぼ均一なプラスチック組成物を得る工程とから構成されている。この組成物は、その後、処理されて繊維およびフィラメント材を形成できる。あるいは、上記プラスチック組成物は押出成形後に冷却して固体の押出し成形品を形成できる。なお、従来のプラスチック加工設備が上記ポリマーの溶融、ポリマーと湿潤剤の混合および得られたプラスチック組成物の押出成形に使用できる。また、温度、時間および圧力のような加工条件は当該技術分野における熟練者において明らかにし得る。
【0049】
本発明の新規なポリマー組成物は非反応性の添加剤を含むことも可能である。この「非反応性添加剤(non-reactive additives)」とは、組成物中の湿潤剤の特性に直接関与しないが、ポリマー組成物の配合において一般に使用される充填剤や補強剤のような改質用添加物を意味する。例えば、本発明の組成物は、上記湿潤剤およびポリマーの他に、色素、顔料および粒状充填剤のような添加物を含んでいてもよい。特に、このような粒状充填剤として、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレー(粘土)、ガラスおよび雲母の使用が考えられる。
【0050】
本発明を実施するポリマー組成物には酸化防止剤および安定化剤を使用することもできる。すなわち、このような添加物がポリマー組成物の湿潤性に悪作用を及ぼす可能性があっても、酸化防止剤または安定化剤を加えて高温処理を可能にすることが必要となる場合がある。
【0051】
このような目的のための好ましい酸化防止剤はテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナメート)]メタンである。この組成物はCiba-Geigy社からIRGANOX1010として販売され、本明細書に参考文献として含まれる米国特許第3,285,855号および同第3,644,482号に開示されている。また、別の適当な酸化防止剤が本明細書に参考文献として含まれる米国特許第3,867,324号に開示されている。このような酸化防止剤は全量でプラスチック組成物の約0.001重量%乃至約0.05重量%の割合で使用する。
【0052】
本発明は我々の知見を界面活性剤化学およびその応用技術に慎重に適用した結果である。従来技術は親水性の不織布または繊維を形成する場合に溶融した混合可能な界面活性剤の使用を含む。しかしながら、これらの界面活性剤の作用効率は加工性の欠如、湿潤性の問題、転移、毒性、皮膚への刺激性、取扱い性の問題等によって深刻な制限がある。高含有量のモノグリセリドを有するグリセリドは、低含有量のモノグリセリドを有する類似の製品に比して、そのより多くの水酸基による湿潤性の点で最も作用効率が高い。このようなすばらしい点はより遅れた湿潤特性をもたらす従来技術においては見られないものであった。すなわち、これらの水酸基はエステル基よりもより優れた電子吸引作用を有している。
【0053】
本発明において使用するグリセリルモノステアレート(GMS)は65℃乃至75℃の融点を有する固体である。この物質は処理中において、特に、マスターバッチ作成および繊維紡糸または不織布製造において補助的に作用する。一方、液体の添加物の場合は、この添加物がポリマーの粘度を激変し、処理中の注入時にポリマーの温度を低下させるために、処理を行なうことが困難である。この結果、この液体を加熱してこれを分解させたり熱エネルギーを浪費しない限り、「コールドスポット(cold spots)」が生じる。一方、本発明における固体添加物の混合においては、グリセリルモノステアレート(GMS)が液体添加物に比してより容易かつ均一に混合体を形成する。
【0054】
繊維に関する従来技術においては、グリセリドの混合物は湿潤特性を改善するための他の添加物に付随してのみ使用されていた。しかしながら、本発明においては、この添加物はこれ自体で使用され、制御された転移および所望の湿潤特性が72時間以内に実現でき、このことが添加物の量および繊維の配向性および結晶度によって決まる。
【0055】
液体添加物の場合は、相転移が起こらずに、供給、押出成形および冷却時において同一の状態に保たれる。さらに、この添加物は冷却中に相分離して仕上製品の表面に転移する。この転移は添加物の拡散性に依存し、この拡散性は添加物の化学的構造、分子量等に依存する。この添加物の界面活性剤は2つの部分、すなわち、ポリオレフィンと混和可能なアルキル鎖疎水性部分と、ポリマーと完全に混和不可能な極性の親水性基を含む。この場合も、湿潤性はポリマーの表面上に存在する水酸基とカルボニル基の数によって決まる。一方、本発明における添加物は固体であって、明確な溶融特性および結晶化特性を有している。このことは、冷却時において、添加物が再結晶して固体を形成して、この固体が独立したクリスタライトとなるか、ポリプロピレンと共結晶化(co-crystallize)する可能性があることを意味する。このことは、本体および表面の両方がこのメカニズムによって改質可能である点で興味深い。発明者らは他の接触面への非転移性における改善がポリマー表面上に析出した固体GMSの薄層によると考えている。なお、このGMSはそれ自体の結晶構造を形成してポリプロピレンとは共結晶化しないと考えられ、この効果が図3に示されている。一般的に、ポリマーの一部でない添加物はポリマーの組織化していないアモルファス領域内に存在する。結晶化中および繊維形成の十分後においても、ポリプロピレン(PP)の場合において、固体GMSは繊維の中心コアの近傍のPP結晶領域から排除される。従って、グリセリドの親水性部分が繊維の表面に露出した状態で、グリセリドの疎水性部分は繊維のアモルファス領域内においてPPに絡みあっている。この時点で、表面上に支配的に水酸基を有するか、あるいは、カルボニル基を有するかによって大きく異なる。すなわち、高モノエステル含有量のグリセリドは水酸基をより多く有する低モノエステル含有量のグリセリドよりも優れた作用効果を有する。液体界面活性剤は一般に拭き取られるか洗い流されて、この界面活性剤が表面上に塗布されるか溶融混合されるかは実際には問題ではない。一方、本発明に従うプラスチック内への固化した界面活性剤の混入は2種類の均一な相を安定な形態で形成する。
【0056】
実施例
配合物
配合物#1
固体の湿潤剤(商標名Eastman 18-06K、Eastman Chemical 社による少なくとも90重量%のグリセリドモノステアレート(GMS)である蒸留モノグリセリド)をポリオレフィンにおいて1重量%乃至60重量%の濃度で使用した。理想的なコンセントレートまたはマスターバッチは最大量の湿潤剤を含有するものである。この配合物においては、ポリプロピレン中の湿潤剤濃度(溶融流量−12、Montel U. S. A.社により販売されるMontel 6301)を30重量%とした。この結果、他の任意の添加物、顔料または充填剤を配合物中に使用できた。このコンセントレートを(減量)処理(let down)して、最終濃度が1.0,3重量%および5重量%の湿潤剤のポリプロピレン繊維を形成した。これよりも高い濃度にすると、コストが高くなり、紡糸処理中のスクリューはずれのような処理の問題が生じやすくなる。
【0057】
配合物#2
液体の湿潤剤(商標名ATMER 685、ICI surfactants社によるC12−C16の脂肪酸アダクトを有する混合グリセリド−米国特許第4,578,414号参照)を30重量%でポリプロピレン(溶融流量−12、Montel 6301)において使用した。このコンセントレートを使用して最終濃度が5重量%の湿潤剤を含有する繊維を形成した。
【0058】
配合物#3
液体界面活性剤の組み合わせ(20重量%の30モルのエトキシル化のノニルフェノールエトキシレートと10重量%のATMER 685)を30重量%でポリプロピレン(MFR−12、Montel 6301(MFRは溶融流量を意味する))において使用した。このコンセントレートを使用して繊維中の添加物の最終濃度を5重量%にした。
【0059】
溶融紡糸試験に使用した配合物#4および配合物#5は高溶融流量樹脂に適応するように使用したポリプロピレンに関して若干変化している。すなわち、以下の2種類の異なる配合物を溶融吹込み(melt-blowing)試験用に作成した。
【0060】
配合物#4
この配合物はMyverol GMS固体添加剤を10重量%、35MFRのポリプロピレンホモポリマー(Amoco Polypropylene Homopolymer Resin Grade 7956)を20重量%および1000MFR(Escorene(登録商標)PP3456G)プロピレンを70重量%含む。このコンセントレートを20重量%に(減量)処理(let-down)してGMSの最終濃度が2%の溶融吹込みしたポリプロピレン不織布を形成した。
【0061】
配合物#5
この配合物は液体添加剤(商標名ATMER 688、ICI America社により販売される)を20重量%、35MFRのポリプロピレンホモポリマー(Amoco Polypropylene Homopolymer Resin Grade 7956、Amoco Chemical Companyにより販売される)を20重量%および1000MFRポリプロピレン(Escorene(登録商標)PP3456G、Exxonにより販売される)を60重量%含む。このコンセントレートを15重量%に(減量)処理(let-down)して最終濃度が3重量%の溶融吹込み不織布を得た。
【0062】
配合物#6
配合物#6は、少なくとも90重量%のモノグリセリド、特にグリセリルモノステアレートを有する蒸留モノグリセリドであるEastoman Chemical Companyから販売される湿潤剤Eastman 18-06Kの量を除いて配合物#1と同一である。すなわち、この配合物は25重量%の湿潤剤を含有する。
【0063】
処理方法
Leistriz Corporation(ニュルンベルグ、ドイツ)により製造される実験室スケールの同時回転式二軸スクリュー押出機(L/Dが32:1で8個の処理ゾーンを有する34mm径スクリュー)を用いて#1から#6までの配合物をそれぞれ作成した。ダイ温度を175℃に保って、押出機の最初の2個の処理ゾーンにおける加熱素子をオフにして低融点の湿潤添加剤の押出機の供給スロート部における滞積を防いだ。残りの6個の処理ゾーンを165℃(ゾーン3)、165℃(ゾーン4)、170℃(ゾーン4)、160℃(ゾーン5)および150℃(ゾーン6)にそれぞれ維持した。スクリュー速度を150rpm乃至200rpmに設定した。固体湿潤剤をポリプロピレンに予め混合して機械的に攪拌することにより均一の混合物を得た。その後、この混合物を直接ホッパー内に供給して、本発明においては、液体注入を避けた。温度を湿潤剤およびポリマーのいずれも劣化させないように選定した。固体界面活性剤を使用することにより、液体界面活性剤の場合に比して、処理が簡単になり、処理速度も増加した。これによって、湿潤剤をポリマーに混合するための押出機のバレル部中において利用できる時間がより多くなる。従って、配合物#1および配合物#4は、押出機に供給する前にまず湿潤剤とポリプロピレンを乾燥混合することによって形成される。
【0064】
しかしながら、配合物#2,#3および配合物#5の作成はポリマーの溶融時に押出機内に液体湿潤剤および液体湿潤剤混合物を注入する処理を含む。押出機内に液体添加剤を入れるための4個のポートがある。ゾーン3における第1の注入ポートは配合物#2,#3および配合物#5の作成に要する湿潤剤のより長い混入時間を可能にするように使用される。注入ポンプには、ギアポンプとして知られる容量形装置、ギア速度を調整して単位時間当たりの液量を調節するための制御装置、温度モニターおよび液体レギュレーター、および液体添加剤(すなわち、液体湿潤剤)を収容する液だめと押出機のポートを接続する絶縁ホースが備えられている。液体添加剤の温度安定性および粘度によって、この液体添加剤とポリマーの最適な混合物を得るために最終の処理速度が選択される。
【0065】
このようにして作成したコンセントレートの添加剤濃度について示差熱量測定法(DSC)およびFTIR法を用いて試験して、コンセントレート中の添加剤濃度を決定した。この分析にはMettler DSC 25と温度コントローラTA 4000を使用した。加熱処理を30℃から200℃まで10℃/分の速度でDSC処理をプログラムすることにより行なった。その後、冷却処理を200℃から30℃まで10℃/分の速度で試料を冷却することにより行なった。配合物#1の場合のDSC加熱曲線を図1に示すが、同図によって、湿潤剤がポリマーよりも先に溶けることが分かる。さらに、1グラム当たりのジュール単位での湿潤剤を溶かすのに要するエネルギーをコンセントレートを溶かすのに要する全エネルギー(ポリプロピレン+添加剤の1グラム当たりのジュール単位での値)で割ることによって定量を行なった。配合物#1の場合、この値は約40%であって、押出配合中における湿潤剤の損失が最小または皆無であることが分かった。しかしながら、液体添加剤の定量はDSC法では行なえないので、FTIR法または密度測定法のような他の技法の使用が必要となる。そこで、FTIRを用いた湿潤剤の定量結果を図2に示す。この評価についてはNicolet FTIRモデル5DXCを使用した。すなわち、吸光度モードを添加剤の定量に使用した。−OH基の存在は3400cm−1の近辺で見られ、−C=O基は1740cm−1において見られる。さらに、処理によってほとんど変化しないポリプロピレンのピーク(2700cm−1近辺)により規格化すると、配合物#1における湿潤剤は、配合物#2および配合物#3における添加剤に比して、4倍以上の−OH基を有していることが分かった。なお、場合によっては、DSC法とFTIR法の両方を順番に用いて配合物における添加物の量を決定することも可能である。さらに、配合物#1においてジ−およびトリ−グリセリドが全く存在しないことがFTIR曲線(配合物#2および配合物#3の1600cmおよび1500cm−1近辺)から極めて顕著に分かる。以上の添加物の定量結果を表1に示す。
【0066】
転移および移動性
上記のコンセントレートをCarverプレス機を用いて押圧して薄いフィルム(約3ミル厚)を作成し、FTIRを用いて走査して−OH基の存在を定量した。プレス機の温度は200℃に維持され、4000psiの一定圧力を1分かけた。このプレス処理物を同一圧力下でほぼ同時間冷却した。−OH基のピーク面積をポリプロピレン樹脂のピーク面積で割ってフィルムの厚さにおける変化について規格化した。この結果、配合物#1によって密集した油分の少ないフィルムが得られた。これらのフィルムコットンクロスを用いて手で1分間拭いた。拭く前に走査した同一領域を拭いた後にFTIRで分析して−OH基の存在量における変化を検出し、その結果を表1に示した。この結果、液体添加剤の場合にかなり高い消失(約10倍)が見られそれらの弱い擦り定着性が示された。すなわち、最終製品はそのような消失を貯蔵、取扱いおよび紡糸処理後に生じることになる。なお、この水酸基の存在比率はFTIR曲線を用いて以下のように決定した。
水酸基存在比率(HR)=−OH(3700−3000cm−1)のピーク面積
/PP(2752−2693cm−1)のピーク面積
【0067】
表1
サンプル番号 拭く前のHR 拭いた後のHR 消失率
配合物#1 86.04 85.77 0.31
配合物#2 19.27 18.57 3.6
配合物#3 21.62 20.86 3.5
【0068】
以上の結果により、非転移性の点で配合物#1が最良であることが分かった。しかも、配合物#1における湿潤剤の量が約30%で、残りの2種の配合物における量より多いことも注意する必要がある。それゆえ、配合物#1においては、添加物の存在量が高いにも関わらず、非転移性もまた優れていることになる。この非転移性の理由は、界面活性剤が冷却中に固化または結晶化することによると考えられ、この結果を図3に示す。すなわち、このDSC曲線は、配合物#1のコンセントレートの冷却時に、処理中の冷却速度に応じて、ポリプロピレンと湿潤剤との間でいずれが最初に結晶化するかについて競争が生じることを示している。従って、2種類の別のクリスタライト物質(湿潤剤は50℃近辺でPPは115℃近辺)が形成されることになる。
【0069】
フィラメント材/繊維への溶融紡糸加工
ここで言う(減量)処理率(Let-Down-Ratio(LDR%))とは、繊維やフィルム等を形成するため、すなわち、仕上品における一定の最終量の添加物を得るために、ポリマーに添加された添加物を含有するコンセントレートの重量%である。異なる配合物を用いて押出配合により作成したコンセントレートは繊維紡糸用のポリプロピレン樹脂(MFR−35、Amoco Polypropylene Homopolymer Resin Grade 7956)と共に均一に乾燥混合される。次いで、繊維紡糸をこのコンセントレート、すなわち、配合物#1,#2および配合物#3を用いてHills Research Line上で行って、フィラメント当たり4デニール(dpf)でマルチフィラメントを形成する。紡糸中は円形断面を有するダイを使用し、溶融温度を220℃に維持した。その後、フィラメントを周囲空気により冷却した。溶融物が紡糸口金から出ると、フィラメントが3本のローラーにより可変速度で引き延ばされて4dpfの最終デニールになる。この紡糸仕上処理は防止中において表面特性を変化させるようには行なわれない。なお、対照の繊維を添加物を有する繊維の作成前に形成しておく。表2に繊維紡糸により作成した異なる組のフィラメントを示す。この結果、配合物#1に関与する全てのサンプル、すなわち、F11,F12およびF13は圧力低下、スクリューはずれ、フィラメントの破損および巻取り困難等の紡糸処理上の不都合を生じなかった。しかしながら、サンプルF23(使用配合物#2)およびF33(使用配合物#3)の紡糸中においては、出口圧が変動してスクリューはずれを示し、多くの破損フィラメントが生じた。
【0070】
表2
サンプル番号 配合内容
F11 溶融流量12のポリプロピレンにおける2.5%LDRの配合物#1
F12 溶融流量12のポリプロピレンにおける7.5%LDRの配合物#1
F13 溶融流量12のポリプロピレンにおける12.5%LDRの配合物#1
F23 溶融流量12のポリプロピレンにおける17.0%LDRの配合物#2
F33 溶融流量12のポリプロピレンにおける17.0%LDRの配合物#3
【0071】
湿潤性
その後、マルチフィラメントを従来形のカードラップ上に巻き取ってさらに試験した。すなわち、このように処理することにより湿潤性試験用の平坦面が得られる。さらに、FTIRを採用して添加物量をフィラメント部分について評価した。湿潤性の評価は繊維の表面上に着色水(食品用赤色色素)を滴下してフィラメントによる水の吸収に要する時間を計測して行なった。湿潤剤添加物の場合、繊維中の最終濃度によって、転移の時間依存性が高くなる。フィラメントに関するこれらの試験結果を表3に示す。
【0072】
表3
サンプル番号 分散状態 湿潤状態 完全湿潤に要する時間
F11 無し 無し 無し
F12 瞬時 部分的 5分
F13 瞬時 瞬時 1分
F23 無し 無し 無し
F33 瞬時 瞬時 5分
【0073】
これらの結果から、最も高いモノグリセリド含有量を有する湿潤剤(配合物#1における添加剤)が評価した添加物の中で分散状態(垂直状態で行なった場合は吸水状態)および湿潤状態に関して最良であった。低い配向性および結晶度を有する繊維の作用効果が繊維中における湿潤剤の最終濃度で3%乃至5%の間で見られた。しかしながら、上記の評価法にはカード上にラップしたフィラメントにおける平坦面の仮定という欠陥がある。すなわち、カード上にラップされた全ての繊維が同一平面内に存在しているわけではないので、平坦な表面が存在することは極めて稀であり、この評価方法は本発明において使用する界面活性剤の繊維表面を改質する能力を評価するための定量的スクリーニング試験の傾向が強い。
【0074】
柔軟さの評価は主観的であり個人個人により異なる。フィラメントのスプールが多くの人により触感されて主観的な結論が出される。この結果、サンプルF12およびサンプルF13のスプールは他のサンプルに比して触感においてより滑らかであり柔らかであることが分かった。
【0075】
溶融吹込み不織布
さらに、本発明の界面活性剤の効果を溶融吹込み不織布においても評価した。この試験はテネシー大学(テネシー州、ノックスビル)におけるTextiles and Nonwovens Development Center (TANDEC)において6インチ幅ダイの溶融吹込み研究設備によって行なった。この溶融吹込み処理は極めて細い繊維を得るために、典型的には、約400MFR乃至1200MFRのポリプロピレン材による高い溶融流量を必要とする。この実施例では、ポリプロピレンとしてEscorene(登録商標)PP3546ポリプロピレンを使用した。繊維の直径は、通常、平均して2ミクロン乃至5ミクロンであり、ポリマーの種類、ポリマーの粘度、処理速度、処理温度、空気温度および空気速度の関数である。このようにして作成した異なる溶融吹込み繊維を表4に示す。
【0076】
表4
サンプル番号 配合内容
MB4 溶融流量1000のポリプロピレンにおける20%LDRの配合物#4
MB5 溶融流量1000のポリプロピレンにおける15%LDRの配合物#5
【0077】
以下の処理パラメータを溶融吹込み不織布の作成において使用した。
ダイ温度:230℃
空気温度:220℃
処理速度:5.8Kg/時
基本重量:60グラム/平方メートル(sq.m.)
ダイ−コレクタ間距離:30cm
コレクタ速度:10m/分
繊維直径:2−5ミクロン
【0078】
湿潤性
次に、上記の溶融吹込み不織布の湿潤性を繊維の表面に着色水(食品用赤色色素)を滴下して評価した。溶融紡糸繊維のカードラップとは異なって、溶融吹込みウェブ/繊維は平坦面を有しているので、湿潤性評価が容易である。表5に異なるサンプルについての結果を示す。
【0079】
表5
サンプル番号 湿潤性 分散性
MB4 瞬時(1分以内) 瞬時(1分以内)
MB5 無し(疎水性) 無し(疎水性)
【0080】
この溶融吹込み繊維の比較的高い配向性および結晶度は、溶融紡糸繊維に比して、比較的少量の湿潤剤を有する他の場合の疎水性ポリプロピレン溶融吹込み繊維の表面改質に役立つ。
【0081】
スパンボンド(spunbond)不織布
おむつ又はおしめ用の表面シートにスパンボンド不織布を使用した。紡糸段階後のポリプロピレンフィラメントを一定圧力下で2本の加熱カレンダーローラーを用いる熱的手段によって互いに結合した。繊維直径は、通常、平均して15ミクロン乃至25ミクロンであり、ポリマーの種類、ポリマーの粘度、および、ポリマー温度、空気の圧力および温度のような処理条件、配向性等の関数である。このスパンボンド試料の試験はTANDECにおいて1メートル幅の研究用Reicofilスパンボンドラインを用いて行なった。
【0082】
配合物#6とExxon PP3445ポリプロピレン(MFR−35、Exxonから入手可能)(MFRはASTM法のD1238に従って決定し、単位はg/10分である)のコンセントレートを用いて作成した異なるスパンボンド繊維を表6に示す。
【0083】
表6
サンプル番号 配合内容
SB1 対照用ポリプロピレン
SB2 2%LDRの配合物#6
SB3 6%LDRの配合物#6
SB4 10%LDRの配合物#6
SB5 15%LDRの配合物#6
【0084】
以下の処理パラメータを上記のスパンボンド不織布の作成に使用した。
ダイ温度:230℃
処理速度:73Kg/時
繊維幅:1メートル
平均繊維直径:23ミクロン
コレクタ速度:55m/分
カレンダー温度:137℃
カレンダー圧力:18Kg/平方センチ(Sq.cm)
結合面積:14%
【0085】
湿潤性
上記のスパンボンド繊維の湿潤性を繊維の表面に着色水を滴下することによって評価し、その結果を表7に示す。
【0086】
表7
サンプル番号 湿潤性 分散度
SB1 無し 無し
SB2 僅かに有り 無し
SB3 良好 僅かに有り
SB4 瞬時 瞬時
SB5 瞬時 瞬時
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は配合物#1(加熱)のDSC曲線を示している図である。
【図2】図2は配合物#1,#2および配合物#3に対応するFTIR曲線を示している図である。
【図3】図3は配合物#1(冷却)のDSC曲線を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤剤を混合したポリマーからなる組成物により作成される湿潤可能な繊維またはフィラメントであって、前記ポリマーがオレフィンポリマー、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択され、かつアルキルアクリレート基を含まず、前記湿潤剤が、室温で固体状態であり、モノ−グリセリドを主成分とし、
前記モノグリセリドが以下の構造式を有するモノグリセリドである、複合されていない繊維またはフィラメント
2C−OR1

HC−OR2

2C−OR3
(当該構造式において、−OR1,−OR2および−OR3は、それぞれ、水酸基または脂肪酸エステル基を独立して示すが、これらのうちの1個だけは12個乃至22個の炭素原子を有する脂肪酸エステル基である)。
【請求項2】
前記−OR2基が水酸基である請求項1に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項3】
前記モノ−グリセリドがグリセリルモノステアレートである請求項1または2に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項4】
前記グリセリルモノステアレートがα−グリセリルモノステアレートである請求項3に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項5】
湿潤剤を混合したポリマーからなる組成物により作成される湿潤可能な繊維またはフィラメントであって、前記ポリマーがオレフィンポリマー、ポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択され、かつアルキルアクリレート基を含まず、前記湿潤剤が、モノ−グリセリドおよび少なくとも85重量%のモノ−グリセリド含有量を有する混合グリセリドの組み合わせを主成分とし、
前記混合グリセリドが少なくとも1種のモノ−グリセリドと、ジ−グリセリドおよびトリ−グリセリドからなる群から選択される少なくとも1種の別のグリセリドとの組合せであり、この組合せにおける各グリセリドが以下の構造式を有している、複合されていない繊維またはフィラメント
2C−OR4

HC−OR5

2C−OR6
(当該構造式において、−OR4,−OR5および−OR6は、それぞれ、水酸基または脂肪酸エステル基を独立して示し、モノ−グリセリドが1個のみの脂肪酸エステル基を有し、ジ−グリセリドが2個の脂肪酸エステル基を有し、さらに、トリ−グリセリドが3個の脂肪酸エステル基を有しており、これらの各脂肪酸エステル基が同一または互いに異なっていて、12個乃至22個の炭素原子を有している)。
【請求項6】
前記ポリマーがオレフィンポリマーである請求項1〜5のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項7】
前記オレフィンポリマーがポリプロピレンである請求項6に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項8】
前記オレフィンポリマーがLLDPEである請求項6に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項9】
前記オレフィンポリマーがLDPEである請求項6に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項10】
前記オレフィンポリマーがHDPEである請求項6に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項11】
前記オレフィンポリマーがコポリマーである請求項6に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項12】
前記ポリマーがポリアミドである請求項1〜5のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項13】
前記ポリアミドがナイロン6およびナイロン6,6からなる群から選択される請求項12に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項14】
前記ポリマーがポリエステルである請求項1〜5のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項15】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される請求項14に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項16】
前記湿潤剤が0.1重量%乃至20重量%で存在している請求項1〜15のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項17】
前記湿潤剤が1重量%乃至10重量%で存在している請求項16に記載の繊維またはフィラメント。
【請求項18】
前記繊維またはフィラメントが織布の形態である請求項1〜17のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項19】
前記繊維またはフィラメントが不織布の形態である請求項1〜17のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項20】
前記繊維またはフィラメントが編布の形態である請求項1〜17のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項21】
他の繊維と組み合わせた時に、全体に熱可塑性、柔軟さおよび湿潤性が賦与される請求項1〜20のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項22】
おむつ製品又はおしめ製品、バッテリー電池セパレーター、フィルター、紙、膜、水分通過性ダイアフラムおよび構造材料からなる群から選択される製品の湿潤可能部分として使用される請求項1〜21のいずれに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項23】
水性媒体中の分散液の形態である請求項1〜22のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。
【請求項24】
0.5乃至10のデニール値を有する請求項1〜22のいずれかに記載の繊維またはフィラメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−150770(P2008−150770A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323165(P2007−323165)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【分割の表示】特願平11−505883の分割
【原出願日】平成10年6月26日(1998.6.26)
【出願人】(599128701)
【氏名又は名称原語表記】TECHMER PM.
【住所又は居所原語表記】18420 Laurel Park Road, Rancho Dominguez, California 90220, U.S.A.
【Fターム(参考)】