説明

湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法

【課題】表面の湿度を最適に保持した状態でセメント硬化物の湿潤養生を行うことができる湿潤養生管理システムを提供する。
【解決手段】湿潤養生管理システム10Aは、コンクリート11の所定深さに設置された湿度センサ12と、コンクリート11表面13に水14を撒水する撒水機15と、撒水機15を制御するコントローラ16とから形成されている。コントローラ16は、湿度センサ12から出力された実測相対湿度と下限相対湿度とを比較する湿度比較手段と、実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、撒水機15を介してコンクリート11表面13に水14を撒水させる撒水開始指示手段と、撒水機15によって水14を撒水中に、湿度センサ12から出力された実測相対湿度が飽和した場合、撒水機15からの水14の撒水を停止させる撒水停止指示手段とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント硬化物の湿潤状態を管理しつつ、そのセメント硬化物の湿潤養生を行う湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
打設されたトンネル覆工コンクリートに水を吹き付けてそのコンクリートの養生を行うトンネル覆工コンクリート養生装置がある(特許文献1参照)。この養生装置は、トンネル覆工コンクリートに霧状の水を吹き付ける噴霧機構と、トンネル内においてその噴霧機構を移動させる移動機構とから形成されている。噴霧機構は、移動機構を利用してトンネル内を移動しつつ、トンネル覆工コンクリートの表面に所定量の霧状の水を吹き付ける。この養生装置では、トンネル覆工コンクリート表面の湿度分布を湿度センサによって測定し、コンクリート表面の湿度が適正になるように水の吹き付け量を調節する。
【特許文献1】特開2006−89995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載のトンネル覆工コンクリート養生装置は、トンネル覆工コンクリート表面の湿度分布を湿度センサによって測定しているが、その湿度センサによって測定される湿度は外気のそれと略同一となり、コンクリート内部の相対湿度を測定することはできない。この養生装置は、湿潤養生に必要なトンネル覆工コンクリート内部の相対湿度を管理することができず、コンクリート内部の相対湿度に基づいてその表面を最適な湿度に保持することができないから、表面の湿度を最適に保持した状態でコンクリートの湿潤養生を行うことができない。また、測定されるトンネル覆工コンクリート表面の湿度が外気のそれと略同一となるから、トンネル覆工コンクリート表面の湿度分布に基づいて水を噴霧すると、コンクリートに噴霧される水量が多くなるとともに、コンクリートへの水の噴霧回数が多くなり、水の無駄が生じる。さらに、滴水による地盤の泥濘化が進み、無駄な排水の処理にかかる費用が増大するとともに、無駄な排水の処理に手間と時間とを要する。
【0004】
本発明の目的は、セメント硬化物内部の相対湿度に基づいてセメント硬化物の表面を最適な湿度に保持し、表面の湿度を最適に保持した状態でセメント硬化物の湿潤養生を行うことができる湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法を提供することにある。本発明の他の目的は、水の無駄を省き、手間と時間とを要せず、最適な表面湿度環境を実現しつつセメント硬化物の湿潤養生を行うことができる湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、セメント硬化物の湿潤状態を管理しつつ、そのセメント硬化物の湿潤養生を行う湿潤養生管理システムである。
前記第1の前提における本発明の特徴は、湿潤養生管理システムが、セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された湿度センサと、セメント硬化物の表面に水を撒水する撒水機構と、コントローラとから形成され、コントローラが、湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較する湿度比較手段と、実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、撒水機構を介してセメント硬化物の表面に水を撒水させる撒水開始指示手段と、撒水機構によって水を撒水中に、湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、撒水機構からの水の撒水を停止させる撒水停止指示手段とを有することにある。
【0006】
本発明にかかる湿潤養生管理システムの一例として、コントローラには、セメントの種類と養生温度とに対応した養生期間が格納され、コントローラは、養生期間が経過するまで撒水開始指示手段と撒水停止指示手段とを実行する。
【0007】
本発明にかかる湿潤養生管理システムの他の一例としては、湿潤養生管理システムが、セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された温度センサと、撒水機構から撒水される水を加熱する加熱機構とを含み、コントローラが、撒水機構から撒水される水の温度を、温度センサから出力された実測温度付近に加熱機構を介して加熱する水温調節手段を含む。
【0008】
本発明にかかる湿潤養生管理システムの他の一例としては、湿度センサがセメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、湿度比較手段では、各湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、撒水開始指示手段では、各湿度センサから出力された実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、それら湿度センサに対応する箇所におけるセメント硬化物の表面に水を撒水させ、撒水停止指示手段では、各湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、飽和した実測相対湿度を測定した湿度センサに対応する箇所において水の撒水を停止させる。
【0009】
本発明にかかる湿潤養生管理システムの他の一例としては、温度センサがセメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、水温調節手段では、各温度センサに対応する箇所におけるセメント硬化物の表面に撒水される水の温度を、それら温度センサから出力された実測温度付近に加熱する。
【0010】
本発明にかかる湿潤養生管理システムの他の一例としては、湿度センサを設置する深さがセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、下限相対湿度が95%RHである。
【0011】
本発明にかかる湿潤養生管理システムの他の一例としては、温度センサを設置する深さがセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、加熱機構によって加熱される水の温度が温度センサから出力される実測温度を挟んで±5℃の範囲にある。
【0012】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、セメント硬化物の湿潤状態を管理しつつ、前記セメント硬化物の湿潤養生を行う湿潤養生管理方法である。
【0013】
前記第2の前提における本発明の特徴は、湿潤養生管理方法が、セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された湿度センサと、セメント硬化物の表面に水を撒水する撒水機構と、コントローラとを備え、コントローラが、湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較する湿度比較プロセスと、実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、撒水機構を介してセメント硬化物の表面に水を撒水させる撒水開始指示プロセスと、撒水機構によって水を撒水中に、湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、撒水機構からの水の撒水を停止させる撒水停止指示プロセスとを実行することにある。
【0014】
本発明にかかる湿潤養生管理方法の一例として、コントローラには、セメントの種類と養生温度とに対応した養生期間が格納され、コントローラは、養生期間が経過するまで撒水開始指示プロセスと撒水停止指示プロセスとを実行する。
【0015】
本発明にかかる湿潤養生管理方法の他の一例としては、湿潤養生管理方法が、セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された温度センサと、撒水機構から撒水される水を加熱する加熱機構とを備え、コントローラが、撒水機構から撒水される水の温度を、温度センサから出力された実測温度付近に加熱機構を介して加熱する水温調節プロセスを実行する。
【0016】
本発明にかかる湿潤養生管理方法の他の一例としては、湿度センサが、セメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、湿度比較プロセスでは、各湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、撒水開始指示プロセスでは、各湿度センサから出力された実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、それら湿度センサに対応する箇所におけるセメント硬化物の表面に水を撒水させ、撒水停止指示プロセスでは、各湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、飽和した実測相対湿度を測定した湿度センサに対応する箇所において水の撒水を停止させる。
【0017】
本発明にかかる湿潤養生管理方法の他の一例としては、温度センサが、セメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、水温調節プロセスでは、各温度センサに対応する箇所におけるセメント硬化物の表面に撒水される水の温度を、それら温度センサから出力された実測温度付近に加熱する。
【0018】
本発明にかかる湿潤養生管理方法の他の一例としては、湿度センサを設置する深さがセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、下限相対湿度が95%RHである。
【0019】
本発明にかかる湿潤養生管理方法の他の一例としては、温度センサを設置する深さがセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、加熱機構によって加熱される水の温度が温度センサから出力される実測温度を挟んで±5℃の範囲にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法によれば、湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、撒水機構からセメント硬化物の表面に水を撒水させるから、セメント硬化物内部の相対湿度の低下に応じて水を撒水することで、湿潤養生中におけるセメント硬化物の表面を最適な湿度に保持することができる。この湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、表面湿度を最適に保持した状態でセメント硬化物の湿潤養生を行うことができ、機械的強度や耐久性に優れたセメント硬化物を作ることができる。また、湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、撒水機構からの水の撒水を停止させるから、最小限の水によってセメント硬化物の表面湿度を最適に保持することができる。この湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、多量の水を使用することなく、セメント硬化物の表面を最適な湿度に保持することができるから、滴水による地盤の泥濘化を防ぐことができ、排水処理の費用や手間、時間を省くことができる。
【0021】
セメントの種類と養生温度とに対応した養生期間が経過するまで撒水開始指示手段(撒水開始指示プロセス)と撒水停止指示手段(撒水停止指示プロセス)とを実行する湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、養生期間が経過した後、撒水の開始および停止を行うことはないから、養生期間経過後における不要な撒水を防ぐことができ、水の無駄を省くことができる。
【0022】
加熱機構を利用し、撒水機構から撒水される水の温度を温度センサから出力された実測温度付近に加熱する湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、撒水する水の温度を養生中に発熱したセメント硬化物の温度に近づけることで、セメント硬化物の温度と略同温度の水を撒水することができるから、撒水によってセメント硬化物の表面が急激に冷却されることはなく、セメント硬化物の表面を急冷することによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0023】
湿度センサがセメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置された湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、各湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、各湿度センサから出力された実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、それら湿度センサに対応する箇所におけるセメント硬化物の表面に水を撒水させるから、セメント硬化物が大型化したとしても、そのセメント硬化物が曝露された外部環境の局所的な変化に対応しつつ、セメント硬化物全域の表面を最適な湿度に保持することができ、表面全域の湿度を最適に保持した状態でセメント硬化物の湿潤養生を行うことができる。この湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、各湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、飽和した実測相対湿度を測定した湿度センサに対応する箇所において水の撒水を停止させるから、セメント硬化物が曝露された外部環境の局所的な変化に対応しつつ、最小限の水によってセメント硬化物の表面全域の湿度を最適に保持することができる。
【0024】
温度センサがセメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置された湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、各温度センサに対応する箇所におけるセメント硬化物の表面に撒水される水の温度を、それら温度センサから出力された実測温度付近に加熱するから、セメント硬化物が大型化したとしても、そのセメント硬化物が曝露された外部環境の局所的な変化に対応しつつ、撒水する水の温度を養生中に発熱したセメント硬化物の温度に近づけることができ、セメント硬化物の温度と略同温度の水をセメント硬化物の表面全域に撒水することができる。この湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、撒水によってセメント硬化物の表面が急激に冷却されることはなく、セメント硬化物の表面を急冷することによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0025】
湿度センサを設置する深さがセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、下限相対湿度が95%RHである湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、湿度センサをセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲に設置することで、セメント硬化物の表面近傍の相対湿度を確実に測定することができ、セメント硬化物の表面における湿度変化を確実に捉えることができる。この湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、セメント硬化物内部の相対湿度に基づいてその表面を最適な湿度に保持することができ、表面湿度を最適に保持した状態でセメント硬化物の湿潤養生を行うことができる。
【0026】
温度センサを設置する深さがセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、加熱機構によって加熱される水の温度が温度センサから出力される実測温度を挟んで±5℃の範囲にある湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、温度センサをセメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲に設置することで、セメント硬化物の表面近傍の温度を確実に測定することができ、セメント硬化物の表面における温度変化を確実に捉えることができる。この湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法は、加熱機構によって加熱される水の温度が温度センサから出力される実測温度を挟んで±5℃の範囲にあるから、撒水する水の温度が養生中に発熱したセメント硬化物の温度に近づき、セメント硬化物の温度と略同温度の水を撒水することができ、撒水によってセメント硬化物の表面が急激に冷却されることはなく、セメント硬化物の表面を急冷することによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付の図面を参照し、本発明に係る湿潤養生管理システムおよび湿潤養生管理方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、一例として示す湿潤養生管理システム10Aの概略構成図であり、図2は、図1の1−1線断面図である。図3は、一例として示す湿度センサ12の斜視図であり、図4は、図3の2−2線端面図である。図5は、相対湿度と経過時間との関係の一例を示す図である。図1では、コンクリート11に向かって水14を撒水している状態で示す。図1,2では、上下方向を矢印A、横方向を矢印Bで示し(図1のみ)、厚み方法を矢印Cで示す。図5では、縦軸に相対温度が示され、横軸に経過時間が示されている。
【0028】
湿潤養生管理方法を実施するための湿潤養生管理システム10Aは、打設されたコンクリート11(セメント硬化物)の相対湿度を時系列に測定する湿度センサ12と、コンクリート11の表面13に水14を撒水する自動撒水機15(撒水機構)と、湿度センサ12から出力された相対湿度に基づいて撒水機15を制御するコントローラ16とから形成されている。
【0029】
コンクリート11は、原料セメントと水と骨材とを混合して混合物を作り、その混合物を所定形状の型枠に打設することで作ることができる。図示のコンクリート11は、型枠が外された後の養生中の状態にある。型枠は、それを付けたまま混合物の表面が硬化するまで養生し、その後に外す。なお、コンクリート11を図示の四角柱状に限定するものではなく、型枠の形状によって円柱状や多角柱状等の他のあらゆる形状のコンクリートを作ることができる。このシステムは、脱型後のコンクリート11のみならず、打設後から脱型前までのコンクリートについても実施することができる。
【0030】
原料セメントには、固化対象物に有効に作用する固化材が添加されている。原料セメントは、水を取り込んで水和反応を生じ、ケイ酸カルシウム水和物の生成等の複数の固化反応を連続的に促進する。原料セメントを水で混練すると、直ちに水和反応を起こし、セメント中の化合物が水と反応して新しい水和物が次々と生成されることで水和反応が促進される。時間が経過すると、流動性を失い凝結し、硬化が進み、強度が発現する。コンクリート11の養生中の特に初期から中期には、セメントの水和熱の影響でコンクリート11の内部が高温になる。原料セメントには、プレミックスセメント,ポルトランドセメント,高炉セメント,フライアッシュセメント,シリカセメントのうちの少なくとも1つが使用されている。原料セメントには、それらのうちのいずれかを単独で用いてもよく、それらを所定の割合で混合した混合セメントを用いてもよい。水には、水道水、河川水、湖沼水、井戸水、地下水等が使用されている。骨材には、粗骨材や細骨材が使用されている。
【0031】
湿度センサ12には、高分子型湿度センサを使用することが好ましいが、セラミック型湿度センサを使用することもできる。湿度センサ12は、図3,4に示すように、プラスチック製のケース17と、測定部18と、測定部18から延びるリード線19とから形成されている。ケース17は、6面を有する直方体であって、その内部に収納室20を備え、頂面21に開口22が形成されている。ケースの頂面21を除く底面23および各側面23には、防水フィルム25が固着され、防水加工が施されている。頂面21には、開口22全域を覆う不透液性かつ透湿性のプラスチックフィルム26が固着されている。プラスチックフィルム26には、ポリビニルアルコールフィルムやセルロースアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ナイロンフィルム、ポリウレタンフィルムを使用することができる。測定部18は、ケース17の収納部20に収納されている。リード線19は、収納室20からケース17の外側に延出している。
【0032】
この湿度センサ12では、その測定部18をケース17の収納室20に収納することで、測定部18が直接コンクリート11に接触することはなく、測定部18がコンクリート11に接することによる相対湿度の測定不能を防ぐことができる。湿度センサ12では、ケース17の開口22に不透液性かつ透湿性のプラスチックフィルム26が固着されているから、湿分がフィルム26を透過して収納室20に進入し、測定部18においてコンクリート11の相対湿度を測定することができる。さらに、開口22から水分が収納室20に進入することはなく、測定部18が水に接することによる相対湿度の測定不能を防ぐことができる。
【0033】
ケース17に収納された湿度センサ12の測定部18は、コンクリート11の表面13(一側面)からその内部27(厚み方向内部)に向かって所定深さに設置されている。センサ12の測定部18を設置する深さLは、コンクリート11の表面13からその内部27に向かって1cm以上5cm以下の範囲にある。センサ12の測定部18を設置する深さLが1cm未満では、ケース17をコンクリート11の内部27に設置することが困難となり、センサ12を介してコンクリート11の相対湿度を測定することができない。センサ12の測定部18を設置する深さLが5cmを超過すると、その位置におけるコンクリート11の湿度変化が遅く、コンクリート11の表面13近傍の湿度変化と一致せず、コンクリート11の表面13の湿度変化を適格に捉えることができない。
【0034】
ケース17の外側に延出するリード線19は、コンクリート11の表面13から外側に露出している。リード線19には、図示はしていないが、無線通信可能な無線ユニットが接続されている。無線ユニットは、ハウジングと送受信装置とから形成されている。湿度センサ12は、コンクリート11の表面13近傍におけるコンクリート11内部27の相対湿度を測定し、測定した相対湿度を無線ユニットに出力する。無線ユニットは、センサ12からリード線19を介して出力された相対湿度をコントローラ16に時系列に送信する。
【0035】
自動撒水機15は、制御装置とポンプと噴射ノズルとから形成され(図示せず)、ノズルから水14を自動的に撒水する。撒水機15は、コンクリート11の表面13全域に水14を撒水することができる位置に設置されている。撒水機15では、弁機構を調節することで撒水水量を調整可能であり、コンクリート11の大きさに応じてその撒水水量が事前に調整されている。撒水機15の制御装置は、センサ12と同様の無線通信可能な無線ユニットに接続されている(図示せず)。撒水機15の制御装置は、コントローラ16から無線ユニットに送信されるON信号によって撒水を開始し、コントローラ16から無線ユニットに送信されるOFF信号によって撒水を停止する。
【0036】
コントローラ16は、中央処理部(CPUまたはMPU)とメモリ(大容量ハードディスク)とを有するコンピュータであり、キーボード28およびディスプレイ29が装備されている。コントローラ16には、無線ユニット(図示せず)が内蔵されている。コントローラ16は、センサ12に接続された無線ユニットから送信される実測相対湿度を無線ユニットを介して受信し、受信した実測相対湿度を時系列に格納する。コントローラ16は、ON信号またはOFF信号を無線ユニットを介して撒水機15に接続された無線ユニットに送信する。コントローラ16のメモリには、各種手段(各種プロセス)をコントローラ16に実行させるためのアプリケーションが格納されている。さらにメモリには、下限相対湿度とセメントの種類および養生温度に対応した養生期間とが格納されている。下限相対湿度は、95%RHに設定されている。しかし、下限相対湿度を95%RHに限定するものではなく、キーボード28を介して下限相対湿度を自由に変更することができる。養生期間の一例として、たとえばセメントが普通ポルトランドセメントで養生温度が5℃の場合の養生期間は9日以上である。養生期間は、ディスプレイ30に表示される各種類のセメントのうちの特定のそれを選択するとともに、養生温度を指定することで、自動的に設定される。
【0037】
コントローラ16の中央処理部は、オペレーティングシステムによる制御に基づいて、メモリからアプリケーションを起動し、起動したアプリケーションに従って、以下の各手段(各プロセス)を実行する。中央処理部は、湿度センサ12から送信(出力)された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較する湿度比較手段(湿度比較プロセス)を実行し、実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、自動撒水機15を介してコンクリート11の表面13に水14を撒水させる撒水開始指示手段(撒水開始指示プロセス)を実行する。中央処理部は、撒水機15を介して水14を撒水中に、湿度センサ12から出力された実測相対湿度が飽和した場合、撒水機15からの水14の撒水を停止させる撒水停止指示手段(撒水停止指示プロセス)を実行する。なお、中央処理部は、あらかじめ選択された養生期間が経過するまで撒水開始指示手段(撒水開始指示プロセス)と撒水停止指示手段(撒水停止指示プロセス)とを繰り返し実行する。
【0038】
このシステム10Aにおけるコンクリート11の湿潤養生の一例を説明すると、以下のとおりである。システム10Aを起動させると、湿度センサ12や自動撒水機15、コントローラ16が稼動する。センサ12は、コンクリート11の相対湿度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定した実測相対湿度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。コントローラ16の中央処理部は、湿度センサ12から受信した実測相対湿度をメモリに時系列に格納しつつ、実測相対湿度と下限相対湿度とを比較演算する(湿度比較手段、湿度比較プロセス)。
【0039】
コンクリート11の表面13を含むその近傍の相対湿度は、時間が経過するにつれて次第に減少する。ゆえに、センサ12が測定するコンクリート11の実測相対湿度も時間の経過とともに次第に低下する。中央処理部は、図5に示すように、センサ12から送信された相対湿度が95%RH(下限相対湿度)未満になると、無線ユニットを介して自動撒水機15の無線ユニットにON信号を送信する。ON信号を受信した無線ユニットは、ON信号を撒水機15の制御装置に出力する。ON信号を受信した撒水機15の制御装置は、ポンプを起動し、噴射ノズルからコンクリート11の表面13への撒水を開始する(撒水開始指示手段、撒水開始指示プロセス)。
【0040】
水14を撒水すると、その水14がコンクリート11表面13から内部27に滲入し、コンクリート11の表面13近傍の相対湿度が回復する。ゆえに、センサ12が測定するコンクリート11の実測相対湿度が増加する。コントローラ16の中央処理部は、図5に示すように、水14の撒水中に湿度センサ12から出力された相対湿度が飽和(湿度センサ12の最大表示99%RH)すると、無線ユニットを介して自動撒水機15の無線ユニットにOFF信号を送信する。OFF信号を受信した無線ユニットは、OFF信号を撒水機15の制御装置に出力する。OFF信号を受信した撒水機15の制御装置は、ポンプを停止し、コンクリート11表面13への撒水を停止する(撒水停止指示手段、撒水停止指示プロセス)。再び相対湿度が95%RH(下限相対湿度)未満になると、自動撒水機15を介して撒水を開始し、水14の撒水中に相対湿度が飽和すると、撒水機15からの撒水を停止する。中央処理部は、水14の撒水量および撒水時間をメモリに時系列に格納する。
【0041】
コントローラ16の中央処理部は、そのタイマ機能を使用して養生開始時からの経過期間を判別し、経過時間とあらかじめ設定された養生期間とを比較演算する。中央処理部は、経過期間が養生期間内にあると判断すると、撒水開始指示手段(撒水開始指示プロセス)と撒水停止指示手段(撒水停止指示プロセス)とを継続して実行する。中央処理部は、経過期間が養生期間を経過したと判断すると、撒水機15の無線ユニットに対するON信号やOFF信号の送信を停止するとともに、無線ユニットを介して湿度センサ12や撒水機15の無線ユニットにスイッチ停止信号を送信する。湿度センサ12や撒水機15は、スイッチ停止信号に従ってスイッチをOFFにし、その稼動を停止する。
【0042】
この湿潤養生管理システム10Aおよび湿潤養生管理方法は、コンクリート11の表面13近傍のコンクリート11内部27の相対湿度を測定することで、コンクリート11の表面13の相対湿度に近似した値を得ることができる。湿潤養生管理システム10Aおよび湿潤養生管理方法は、コンクリート11の表面13近傍における相対湿度の低下に応じてコンクリート11の表面13に水14を撒水するから、コンクリート11の表面13を最適な湿度に保持することができる。ゆえに、コンクリート11表面13の湿度を最適に保持した状態でコンクリート11の湿潤養生を行うことができ、機械的強度や耐久性に優れたコンクリート11を作ることができる。また、湿度センサ12から出力された相対湿度が飽和すると、撒水機15からの水14の撒水を停止するから、最小限の水14によってコンクリート11表面13の湿度を最適に保持することができる。
【0043】
この湿潤養生管理システム10Aおよび湿潤養生管理方法は、多量の水14を使用することなく、コンクリート11の表面13を最適な湿度に保持することができるから、滴水による地盤の泥濘化を防ぐことができ、排水処理の費用や手間、時間を省くことができる。湿潤養生管理システム10Aおよび湿潤養生管理方法は、あらかじめ設定された養生期間が経過した後、撒水の開始および停止を行うことはないから、養生期間経過後における不要な撒水を防ぐことができ、水14の無駄を確実に省くことができる。
【0044】
この湿潤養生管理システム10Aおよび湿潤養生管理方法は、メモリに時系列に格納されたコンクリート11の実測相対湿度、コンクリート11に撒水した水14の撒水量、水14の撒水時間を利用し、それらの値を類似環境下における構造物の次回の湿潤養生(たとえば、覆工コンクリートの次スパン以降の湿潤養生)に反映させることができる。ゆえに、類似した環境下の別のコンクリートにそれらの値を適用することで、そのコンクリートにおける適切な湿潤養生を行うことができる。
【0045】
図6は、他の一例として示す湿潤養生管理システム10Bの概略構成図である。このシステム10Bが図1のそれと異なるのは、コンクリート11の内部27に温度センサ30が設置されている点および自動撒水機15(撒水機構)にヒータ31(加熱機構)が設置されている点にある。なお、このシステム10Bにおけるその他の構成は図1のそれと同一であるから、図1のシステム10Aと同一の符号を付することで、このシステム10Bにおけるその他の構成の説明は省略する。
【0046】
このシステム10Bは、湿度センサ12と、脱型後のコンクリート11(セメント硬化物)の温度を時系列に測定する温度センサ30と、自動撒水機15と、撒水機15から撒水される水14の温度を時系列に測定する温度センサ(図示せず)と、撒水機15から撒水される水14を所定の温度に加熱するヒータ31と、コントローラ16とから形成されている。湿度センサ12や自動撒水機15、コントローラ16は、図1のシステム10Aのそれらと同一であるから、それらの説明は省略する。なお、湿度センサ12の測定部18を設置する深さLは、図1のセンサ12のそれと同一である(図2参照)。撒水機15は、コンクリート11の表面13全域に水14を撒水することができる位置に設置されている。
【0047】
コントローラ15の中央処理部は、図1のシステム10Aの各手段(各プロセス)に加え、以下の手段(プロセス)を実行する。中央処理部は、温度センサ30から送信(出力)された実測温度と温度センサから送信された水14の温度とを比較演算する水温比較手段(水温比較プロセス)を実行し、水14の温度が実測温度の範囲以下であると判断すると、撒水機15から撒水される水14の温度を、温度センサ30から送信(出力)された実測温度付近にヒータ31を介して加熱する水温調節手段(水温調節プロセス)を実行する。中央処理部は、センサ30から送信された温度をそのまま指定温度として撒水機15の無線ユニットに送信する。あるいは、センサ30から送信された温度を±5℃の範囲で調節し、調節した温度を指定温度として撒水機15の無線ユニットに送信する。センサ30からの温度に対する±の範囲はキーボード28を介して自由に変更することができる。
【0048】
温度センサ30には、熱電対や抵抗温度センサ、サーミスタ、IC温度センサ、磁気温度センサを使用することができる。温度センサ30の測定部は、湿度センサ12のそれと同様に、コンクリート11の表面13(一側面)からその内部27(厚み方向内側)に向かって所定深さに設置されている(図2援用)。センサ30の測定部を設置する深さLは、コンクリート11の表面13からその内部27に向かって1cm以上5cm以下の範囲にある。センサ30の測定部を設置する深さLが1cm未満では、コンクリート11が曝露された外部環境の変化にセンサ30が影響され、コンクリート11の表面13近傍のコンクリート11内部27の温度を正確に測定することができない。センサ30の測定部を設置する深さLが5cmを超過すると、測定したコンクリート11の実測温度がコンクリート11の表面13近傍のコンクリート11内部27の温度と一致せず、コンクリート11の表面13近傍におけるコンクリート11内部27の温度を正確に測定することができない。温度センサ30の測定部は、無線通信可能な無線ユニットに接続されている(図示せず)。無線ユニットは、湿度センサ12に接続されたそれと同一であるから、その説明は省略する。センサ30は、コンクリート11の表面13近傍におけるコンクリート11内部27の温度を測定し、測定した温度を無線ユニットに出力する。無線ユニットは、センサ31からリード線32を介して出力された温度をコントローラ15の無線ユニットに時系列に送信する。
【0049】
撒水機15の温度センサは、その測定部が撒水機15の貯水槽(図示せず)に設置されている。ヒータ31は、制御装置と加熱装置とから形成され(図示せず)、水14を所定温度に加熱する。ヒータ31の加熱装置は、撒水機15の貯水槽に設置されている。ヒータ31の制御装置と温度センサとは、撒水機15の制御装置とともに無線通信可能な無線ユニットに接続されている(図示せず)。温度センサは、貯水槽に貯水された水14の温度を時系列に測定し、測定した温度を無線ユニットに出力する。無線ユニットは、温度センサから出力された水14の温度を無線によってコントローラ15に送信する。ヒータ32の制御装置は、コントローラ15から無線ユニットに送信される指定温度信号に従って、貯水槽に貯水された水14を加熱装置を介して加熱し、撒水機15から撒水される水14の温度を指定温度に加熱する。
【0050】
このシステム10Bにおけるコンクリート11の湿潤養生の一例を説明すると、以下のとおりである。システム10Bを起動させると、湿度センサ12や温度センサ30、自動撒水機15、ヒータ31、コントローラ16が稼動する。湿度センサ12は、コンクリート11の相対湿度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定した実測相対湿度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。温度センサ30は、コンクリート11の温度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定した実測温度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。温度センサは、撒水機15の水14の温度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定した水14の温度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。
【0051】
コントローラ16の中央処理部は、温度センサ30から受信した実測温度をメモリに時系列に格納しつつ、実測温度と温度センサから送信された水14の温度とを比較演算する(水温比較手段、水温比較プロセス)。中央処理部は、水14の温度が実測温度の範囲以下であると判断すると、温度センサ30から送信された温度を指定温度として撒水機15およびヒータ31の無線ユニットに送信する。または、温度センサ30から送信された実測温度を±5℃の範囲で調節し、調節した温度を指定温度として撒水機15およびヒータ31の無線ユニットに送信する。無線ユニットは、受信した指定温度をヒータ31の制御装置に出力する。ヒータ31の制御装置は、貯水槽に貯水された水14を加熱装置を介して指定温度に加熱する(水温調節手段、水温調節プロセス)。
【0052】
なお、コントローラ15の中央処理部は、温度センサ30から送信された実測温度と温度センサから送信された水14の温度とを比較演算することなく、実測温度を指定温度として撒水機15およびヒータ31の無線ユニットに送信し、または、温度センサ30から送信された実測温度を±5℃の範囲で調節し、調節した温度を指定温度として撒水機15およびヒータ31の無線ユニットに送信することもできる。この場合、撒水機15の温度センサは、無線ユニットに接続されることなく、ヒータ31の制御装置に接続される。ヒータ31の制御装置は、温度センサが測定した温度が指定温度以下であると判断すると、貯水槽に貯水された水14を加熱装置を介して指定温度に加熱する(水温調節手段、水温調節プロセス)。
【0053】
コントローラ16の中央処理部は、湿度センサ12から受信した実測相対湿度をメモリに時系列に格納しつつ、実測相対湿度と下限相対湿度とを比較演算する(湿度比較手段、湿度比較プロセス)。中央処理部は、センサ12から送信された相対湿度が95%RH(下限相対湿度)未満になると(図5参照)、無線ユニットを介して自動撒水機15およびヒータ31の無線ユニットにON信号を送信する。ON信号を受信した無線ユニットは、ON信号を撒水機15の制御装置に出力する。ON信号を受信した撒水機15の制御装置は、ポンプを起動し、噴射ノズルからコンクリート11の表面13への撒水を開始する(撒水開始指示手段、撒水開始指示プロセス)。撒水機15の噴射ノズルから撒水される水14は、ヒータ31を介してあらかじめ指定温度に加熱されている。
【0054】
水14を撒水すると、その水14がコンクリート11表面13から内部27に滲入し、コンクリート11の表面13近傍の相対湿度が回復する。コントローラ16の中央処理部は、水14の撒水中に湿度センサ12から出力された相対湿度が飽和(湿度センサ12の最大表示99%RH)すると(図5参照)、無線ユニットを介して自動撒水機15およびヒータ31の無線ユニットにOFF信号を送信する。OFF信号を受信した無線ユニットは、OFF信号を撒水機15の制御装置に出力する。OFF信号を受信した撒水機15の制御装置は、ポンプを停止し、コンクリート11表面13への撒水を停止する(撒水停止指示手段、撒水停止指示プロセス)。再び相対湿度が95%RH(下限相対湿度)未満になると、自動撒水機15を介して撒水を開始し、水14の撒水中に相対湿度が飽和すると、撒水機15からの撒水を停止する。
【0055】
コントローラ16の中央処理部は、養生開始時からの経過期間が養生期間内にあると判断すると、撒水開始指示手段(撒水開始指示プロセス)と撒水停止指示手段(撒水停止指示プロセス)とを継続して実行する。中央処理部は、経過期間が養生期間を経過したと判断すると、撒水機15およびヒータ31の無線ユニットに対するON信号やOFF信号の送信を停止するとともに、無線ユニットを介し、湿度センサ12や温度センサ30、ヒータ31、自動撒水機15が接続された無線ユニットにスイッチ停止信号を送信する。湿度センサ12や温度センサ30、ヒータ31、自動撒水機15は、スイッチ停止信号に従ってスイッチをOFFにし、その稼動を停止する。中央処理部は、水14の撒水量および撒水時間をメモリに時系列に格納する。
【0056】
この湿潤養生管理システム10Bおよび湿潤養生管理方法は、図1のシステム10Aが有する効果に加え、以下の効果を有する。湿潤養生管理システム10Bおよび湿潤養生管理方法は、撒水する水14の温度を養生中に発熱したコンクリート11の表面13近傍の温度に近づけることで、コンクリート11の表面13温度と略同温度の水14を撒水することができ、撒水によってコンクリート11の表面13が急激に冷却されることはなく、コンクリート11の表面13を急冷することによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0057】
この湿潤養生管理システム10Bおよび湿潤養生管理方法は、メモリに時系列に格納されたコンクリート11の実測相対湿度、コンクリート11の実測温度、コンクリート11に撒水した水14の撒水量、水14の撒水時間を利用し、それらの値を類似環境下における構造物の次回の湿潤養生(たとえば、覆工コンクリートの次スパン以降の湿潤養生)に反映させることができる。ゆえに、類似した環境下の別のコンクリートにそれらの値を適用することで、そのコンクリートにおける適切な湿潤養生を行うことができる。
【0058】
図7は、他の一例として示す湿潤養生管理システム10Cの概略構成図である。このシステム10Cが図6のそれと異なるのは、複数の湿度センサ12A,12B,12Cと複数の温度センサ30A,30B,30Cとがコンクリート11の横方向(延出方向)へ所定間隔で設置されている点および複数の自動撒水機15A,15B,15Cと複数のヒータ31A,31B,31Cとがコンクリート11の横方向(延出方向)へ所定間隔で設置されている点にある。なお、このシステム10Cのその他の構成は図1や図6のそれらと同一であるから、図1,6のシステム10A,10Bと同一の符号を付することで、このシステム10Cにおけるその他の構成の説明は省略する。
【0059】
このシステム10Cは、複数の湿度センサ12A,12B,12Cと、複数の温度センサ30A,30B,30Cと、複数の自動撒水機15A,15B,15Cと、複数のヒータ31A,31B,31Cと、コントローラ16とから形成されている。湿度センサ12A,12B,12Cや温度センサ30A,30B,30C、自動撒水機15A,15B,15C、ヒータ31A,31B,31C、コントローラ16は、図1や図6のシステム10A,10Bのそれらと同一であるから、それらの説明は省略する。
【0060】
湿度センサ12A,12B,12Cと温度センサ30A,30B,30Cとは、1組のそれらが互いに対となり、コンクリート11の表面13近傍におけるコンクリート11内部27に設置されている。それらセンサ12A,12B,12C,30A,30B,30Cの対はコンクリート11の横方向へ略等間隔で並んでいるが、コンクリート11の形状やコンクリート11が曝露された環境等に応じて、それらセンサ12A,12B,12C,30A,30B,30Cの対の配置を適宜決定することができる。なお、湿度センサ12A,12B,12Cや温度センサ30A,30B,30Cの測定部を設置する深さLは、図1,6のセンサ12,30のそれと同一である。各撒水機15A,15B,15Cは、それらセンサ12A,12B,12C,30A,30B,30Cに対応するコンクリート11の箇所における表面13全域に水14を撒水することができる位置に設置されている。
【0061】
このシステム10Cにおけるコンクリート11の湿潤養生の一例を説明すると、以下のとおりである。システム10Cを起動させると、各湿度センサ12A,12B,12Cや各温度センサ30A,30B,30C、各自動撒水機15A,15B,15C、各ヒータ31A,31B,31C、コントローラ16が稼動する。それら湿度センサ12A,12B,12Cは、各センサ12A,12B,12Cが設置されたコンクリート11の箇所における相対湿度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定したそれら実測相対湿度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。それら温度センサ30A,30B,30Cは、各センサ30A,30B,30Cが設置されたコンクリート11の箇所における温度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定したそれら実測温度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。温度センサは、撒水機15A,15B,15Cの水14の温度をエンドレスかつ時系列に測定し、測定した水14の温度を無線ユニットを介してコントローラ16の無線ユニットに送信(出力)する。
【0062】
コントローラ16の中央処理部は、各温度センサ30A,30B,30Cから受信した実測温度をメモリに時系列に格納しつつ、それら実測温度と各温度センサから送信された水14の温度とを比較演算する(水温比較手段、水温比較プロセス)。温度センサ30A,30B,30Cの実測温度と比較する水14の温度を測定する温度センサは、温度センサ30A,30B,30Cに対応する箇所に水14を撒水する撒水機15A,15B,15Cに設置された温度センサである。中央処理部は、水14の温度が実測温度の範囲以下であると判断すると、温度センサ30A,30B,30Cから送信された温度を指定温度として撒水機15A,15B,15Cおよびヒータ31A,31B,31Cの無線ユニットに送信する。または、温度センサ30A,30B,30Cから送信された実測温度を±5℃の範囲で調節し、調節した温度を指定温度として撒水機15A,15B,15Cおよびヒータ31A,31B,31Cの無線ユニットに送信する。無線ユニットは、受信した指定温度をヒータ31A,31B,31Cの制御装置に出力する。ヒータ31A,31B,31Cの制御装置は、貯水槽に貯水された水14を加熱装置を介して指定温度に加熱する(水温調節手段、水温調節プロセス)。
【0063】
なお、図6のシステム10Bと同様に、コントローラ16の中央処理部は、各温度センサ30A,30B,30Cから送信された実測温度と各温度センサから送信された水14の温度とを比較演算することなく、実測温度を指定温度として撒水機15A,15B,15Cおよびヒータ31A,31B,31Cの各無線ユニットに送信し、または、温度センサ30A,30B,30Cから送信された実測温度を±5℃の範囲で調節し、調節した温度を指定温度として撒水機15A,15B,15Cおよびヒータ31A,31B,31Cの各無線ユニットに送信することもできる。ヒータ31A,31B,31Cの制御装置は、温度センサが測定した温度が指定温度以下であると判断すると、貯水槽に貯水された水14を加熱装置を介して指定温度に加熱する(水温調節手段、水温調節プロセス)。
【0064】
コントローラ16の中央処理部は、各湿度センサ12A,12B,12Cから受信した実測相対湿度をメモリに時系列に格納しつつ、それら相対湿度(実測相対湿度)と下限相対湿度とを比較演算する(湿度比較手段、湿度比較プロセス)。中央処理部は、各センサ12A,12B,12Cから送信された相対湿度が95%RH(下限相対湿度)未満になると(図5参照)、無線ユニットを介し、相対湿度95%RH未満を測定したセンサ12A,12B,12Cに対応する自動撒水機15A,15B,15Cの無線ユニットにON信号を送信する。ON信号を受信した無線ユニットは、ON信号を撒水機15A,15B,15Cの制御装置に出力する。ON信号を受信した撒水機15A,15B,15Cの制御装置は、ポンプを起動し、噴射ノズルからコンクリート11表面13への撒水を開始する(撒水開始指示手段、撒水開始指示プロセス)。撒水機15A,15B,15Cの噴射ノズルから撒水される水14は、ヒータ31A,31B,31Cを介してあらかじめ指定温度に加熱されている。このシステム10Cでは、相対湿度95%RH未満を測定したセンサ12A,12B,12Cに対応する自動撒水機15A,15B,15Cのみから水14が撒水され、それ以外のセンサ12A,12B,12Cに対応する自動撒水機15A,15B,15Cから水14は撒水されない。
【0065】
水14を撒水すると、その水14がコンクリート11表面13から内部27に滲入し、コンクリート11の表面13近傍の相対湿度が回復する。コントローラ16の中央処理部は、水14の撒水中に湿度センサ12A,12B,12Cから出力された相対湿度が飽和(湿度センサ12の最大表示99%RH)すると(図5参照)、無線ユニットを介し、水14を撒水中の自動撒水機15A,15B,15Cの無線ユニットにOFF信号を送信する。OFF信号を受信した無線ユニットは、OFF信号を撒水機15A,15B,15Cの制御装置に出力する。OFF信号を受信した撒水機15A,15B,15Cの制御装置は、ポンプを停止し、コンクリート11表面13への撒水を停止する(撒水停止指示手段、撒水停止指示プロセス)。このシステム10Cでは、相対湿度の飽和を測定したセンサ12A,12B,12Cに対応する自動撒水機15A,15B,15Cのみからの撒水が停止され、それ以外のセンサ12A,12B,12Cに対応する自動撒水機15A,15B,15Cからの撒水は停止されない。再び相対湿度が95%RH(下限相対湿度)未満になると、自動撒水機15A,15B,15Cを介して撒水を開始し、水14の撒水中に相対湿度が飽和すると、撒水機15A,15B,15Cからの撒水を停止する。
【0066】
コントローラ16の中央処理部は、養生開始時からの経過期間が養生期間内にあると判断すると、撒水開始指示手段(撒水開始指示プロセス)と撒水停止指示手段(撒水停止指示プロセス)とを継続して実行する。中央処理部は、経過期間が養生期間を経過したと判断すると、各撒水機15A,15B,15Cおよびヒータ31A,31B,31Cの無線ユニットに対するON信号やOFF信号の送信を停止するとともに、無線ユニットを介し、湿度センサ12A,12B,12Cや温度センサ30A,30B,30C、ヒータ31A,31B,31C、自動撒水機15A,15B,15Cが接続された各無線ユニットにスイッチ停止信号を送信する。各湿度センサ12A,12B,12Cや各温度センサ30A,30B,30C、各ヒータ31A,31B,31C、各自動撒水機15A,15B,15Cは、スイッチ停止信号に従ってスイッチをOFFにし、その稼動を停止する。中央処理部は、水14の撒水量および撒水時間をメモリに時系列に格納する。
【0067】
この湿潤養生管理システム10Cおよび湿潤養生管理方法は、図1や図6に示すシステム10A,10Bが有する効果に加え、以下の効果を有する。湿潤養生管理システム10Cおよび湿潤養生管理方法は、各湿度センサ12A,12B,12Cから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、それら湿度センサ12A,12B,12Cから出力された実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、それら湿度センサ12A,12B,12Cに対応する箇所におけるコンクリート11の表面13に水14を撒水するから、コンクリート11が大型化したとしても、コンクリート11が曝露された外部環境の局所的な変化に対応しつつ、コンクリート11の表面13全域を最適な湿度に保持することができ、表面13全域の湿度を最適に保持した状態でコンクリート11の湿潤養生を行うことができる。湿潤養生管理システム10Cおよび湿潤養生管理方法は、各湿度センサ12A,12B,12Cから出力された実測相対湿度が飽和した場合、飽和した実測相対湿度を測定した湿度センサ12A,12B,12Cに対応する箇所において水14の撒水を停止するから、コンクリート11が曝露された外部環境の局所的な変化に対応しつつ、最小限の水14によってコンクリート11の表面13全域の湿度を最適に保持することができる。
【0068】
この湿潤養生管理システム10Cおよび湿潤養生管理方法は、各温度センサ30A,30B,30Cに対応する箇所におけるコンクリート11の表面13に撒水する水14の温度を、それら温度センサ30A,30B,30Cから出力された実測温度付近に加熱するから、コンクリート11が大型化したとしても、コンクリート11が曝露された外部環境の局所的な変化に対応しつつ、撒水する水14の温度を養生中に発熱したコンクリート11の温度に近づけることができ、コンクリート11の温度と略同温度の水14をコンクリート11の表面13全域に撒水することができる。湿潤養生管理システム10Cおよび湿潤養生管理方法は、撒水によってコンクリート11の表面13が急激に冷却されることはなく、コンクリート11の表面13を急冷することによる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0069】
それら湿潤養生管理システム10A,10B,10Cおよび湿潤養生管理方法では、自動撒水機15を利用して水14を撒水しているが、湿度センサ12から送信された実測相対湿度が下限相対湿度未満になった時点で、コントローラ16が撒水開始メッセージをディスプレイ29に表示させ、それによって作業者が手作業で水を撒水してもよい。湿度センサ12から送信された実測相対湿度が飽和すると、コントローラ16が撒水停止メッセージをディスプレイ29に表示させ、それによって作業者が撒水を停止する。
【0070】
それら湿潤養生管理システム10A,10B,10Cおよび湿潤養生管理方法では、各センサ12,31からの実測相対湿度や実測温度が無線によってコントローラ16に送信され、コントローラ16からのON信号やOFF信号、指定温度が無線によって撒水機15やヒータ31に送信されているが、各センサ12,30とコントローラ16とを有線で接続し、コントローラ16と撒水機15やヒータ31とを有線で接続することができ、無線ユニットを省くことができる。また、図7に示す湿潤養生管理システム10Cおよび湿潤養生管理方法では、複数の撒水機15A,15B,15Cを利用しているが、1台の撒水機が案内レールを介して移動可能に配置され、撒水機が相対湿度95%RH未満を測定した湿度センサ12A,12B,12Cに対応する箇所に移動し、移動した箇所におけるコンクリート11の表面13に水14を撒水することもできる。なお、それら湿潤養生管理システム10A,10B,10Cおよび湿潤養生管理方法は、コンクリートの湿潤養生のみならず、モルタルの湿潤養生にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】一例として示す湿潤養生管理システムの概略構成図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】一例として示す湿度センサの斜視図。
【図4】図3のB−B線端面図。
【図5】相対湿度と経過時間との関係の一例を示す図。
【図6】他の一例として示す湿潤養生管理システムの概略構成図。
【図7】他の一例として示す湿潤養生管理システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0072】
10A〜10C 湿潤養生管理システム
11 コンクリート(セメント硬化物)
12 湿度センサ
13 表面
14 水
15 自動撒水機(撒水機構)
16 コントローラ
17 ケース
18 測定部
19 リード線
20 収納部
22 開口
25 防水フィルム
26 フィルム
27 内部
30 温度センサ
31 ヒータ(加熱機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント硬化物の湿潤状態を管理しつつ、前記セメント硬化物の湿潤養生を行う湿潤養生管理システムにおいて、
前記システムが、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された湿度センサと、前記セメント硬化物の表面に水を撒水する撒水機構と、コントローラとから形成され、
前記コントローラが、前記湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較する湿度比較手段と、前記実測相対湿度が前記下限相対湿度未満になった時点で、前記撒水機構を介して前記セメント硬化物の表面に水を撒水させる撒水開始指示手段と、前記撒水機構によって水を撒水中に、前記湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、前記撒水機構からの水の撒水を停止させる撒水停止指示手段とを有することを特徴とする湿潤養生管理システム。
【請求項2】
前記コントローラには、セメントの種類と養生温度とに対応した養生期間が格納され、前記コントローラは、前記養生期間が経過するまで前記撒水開始指示手段と前記撒水停止指示手段とを実行する請求項1記載の湿潤養生管理システム。
【請求項3】
前記湿潤養生管理システムが、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された温度センサと、前記撒水機構から撒水される水を加熱する加熱機構とを含み、前記コントローラが、前記撒水機構から撒水される水の温度を、前記温度センサから出力された実測温度付近に前記加熱機構を介して加熱する水温調節手段を含む請求項1または請求項2に記載の湿潤養生管理システム。
【請求項4】
前記湿度センサが、前記セメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、前記湿度比較手段では、各湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、前記撒水開始指示手段では、各湿度センサから出力された実測相対湿度が前記下限相対湿度未満になった時点で、それら湿度センサに対応する箇所における前記セメント硬化物の表面に水を撒水させ、前記撒水停止指示手段では、各湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、飽和した実測相対湿度を測定した湿度センサに対応する箇所において水の撒水を停止させる請求項1ないし請求項3いずれかに記載の湿潤養生管理システム。
【請求項5】
前記温度センサが、前記セメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、前記水温調節手段では、各温度センサに対応する箇所における前記セメント硬化物の表面に撒水される水の温度を、それら温度センサから出力された実測温度付近に加熱する請求項2ないし請求項4いずれかに記載の湿潤養生管理システム。
【請求項6】
前記湿度センサを設置する深さが、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、前記下限相対湿度が、95%RHである請求項1ないし請求項5いずれかに記載の湿潤養生管理システム。
【請求項7】
前記温度センサを設置する深さが、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、前記加熱機構によって加熱される水の温度が、前記温度センサから出力される実測温度を挟んで±5℃の範囲にある請求項2ないし請求項6いずれかに記載の湿潤養生管理システム。
【請求項8】
セメント硬化物の湿潤状態を管理しつつ、前記セメント硬化物の湿潤養生を行う湿潤養生管理方法において、
前記湿潤養生管理方法が、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された湿度センサと、前記セメント硬化物の表面に水を撒水する撒水機構と、コントローラとを備え、
前記コントローラが、前記湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較する湿度比較プロセスと、前記実測相対湿度が前記下限相対湿度未満になった時点で、前記撒水機構を介して前記セメント硬化物の表面に水を撒水させる撒水開始指示プロセスと、前記撒水機構によって水を撒水中に、前記湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、前記撒水機構からの水の撒水を停止させる撒水停止指示プロセスとを実行することを特徴とする湿潤養生管理方法。
【請求項9】
前記コントローラには、セメントの種類と養生温度とに対応した養生期間が格納され、前記コントローラは、前記養生期間が経過するまで前記撒水開始指示プロセスと前記撒水停止指示プロセスとを実行する請求項8記載の湿潤養生管理方法。
【請求項10】
前記湿潤養生管理方法が、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって所定深さに設置された温度センサと、前記撒水機構から撒水される水を加熱する加熱機構とを備え、前記コントローラが、前記撒水機構から撒水される水の温度を、前記温度センサから出力された実測温度付近に前記加熱機構を介して加熱する水温調節プロセスを実行する請求項8または請求項9に記載の湿潤養生管理方法。
【請求項11】
前記湿度センサが、前記セメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、前記湿度比較プロセスでは、各湿度センサから出力された実測相対湿度とあらかじめ設定された下限相対湿度とを比較し、前記撒水開始指示プロセスでは、各湿度センサから出力された実測相対湿度が前記下限相対湿度未満になった時点で、それら湿度センサに対応する箇所における前記セメント硬化物の表面に水を撒水させ、前記撒水停止指示プロセスでは、各湿度センサから出力された実測相対湿度が飽和した場合、飽和した実測相対湿度を測定した湿度センサに対応する箇所において水の撒水を停止させる請求項8ないし請求項10いずれかに記載の湿潤養生管理方法。
【請求項12】
前記温度センサが、前記セメント硬化物の延出方向に向かって所定間隔で複数設置され、前記水温調節プロセスでは、各温度センサに対応する箇所における前記セメント硬化物の表面に撒水される水の温度を、それら温度センサから出力された実測温度付近に加熱する請求項9ないし請求項11いずれかに記載の湿潤養生管理方法。
【請求項13】
前記湿度センサを設置する深さが、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、前記下限相対湿度が、95%RHである請求項8ないし請求項12いずれかに記載の湿潤養生管理方法。
【請求項14】
前記温度センサを設置する深さが、前記セメント硬化物の表面から該セメント硬化物の内部に向かって1cm〜5cmの範囲にあり、前記加熱機構によって加熱される水の温度が、前記温度センサから出力される実測温度を挟んで±5℃の範囲にある請求項9ないし請求項13いずれかに記載の湿潤養生管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−144321(P2009−144321A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319338(P2007−319338)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】