説明

湿潤高感度表面のマイクロエレクロトニック・デバイス

本発明は、サンプル流体を有するサンプル・チャンバー(1)に隣接して位置する高感度表面(22)の湿潤度を決定する方法を有するマイクロエレクトロニック・デバイス(100)に関する。ある特定の実施形態では、該デバイスは、サンプル・チャンバーにおいて磁界(B)を発生させるための磁気励起ワイヤー(11、13)を含む磁気センサー・デバイス又は磁性粒子によって生じる反応場を感知するためのGMRセンサー(12)であってもよい。検出器モジュール(30)は任意的に導体(11、12、13)の抵抗を測定するように適合することができ、それは電流によって生じる熱放散を通して、高感度表面(22)の湿潤度に依存する。もう1つの実施形態では、導体のキャパシタンスが測定され、該キャパシタンスは高感度表面で、気泡(4)の存在による影響を受ける。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度表面のキャリア及びサンプル流体が提供されるサンプル・チャンバーを含むマイクロエレクロトニック・デバイスに関する。さらに、本発明は、そのようなデバイスの使用及びそのようなマイクロエレクトロニック・デバイスにおける高感度表面の湿潤(wetting)度を決定する方法に関する。

【背景技術】
【0002】
磁気センサーは、特許文献1及び特許文献2によって知られており、例としてターゲット分子(例えば、磁性ビードでラベル付けされた生体分子など)の検出をするためのマイクロ流体バイオセンサーに使用される。該デバイスでは、磁気励起場を生成するためのワイヤー及び巨大磁気抵抗効果(GMRs)を含む検出ユニットのアレイが提供され、該検出ユニットは、磁化された固定化した複数のビードによって生成される磁気反応場の検出をする。GMRsの信号(抵抗変化)は従って、センサー近辺のビードの数を示す。センサーの表面の疎水性によって、センサーの表面の湿潤(wetting)は常に完全ではなく、気泡が存在する。これらの気泡の位置においてターゲット分子は、センサーの表面に付着することができなく、その結果、センサーの信号が不正確になる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/010543 A1号 パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/010542 A1号 パンフレット
【特許文献3】米国特許第2004/256248 A1号明細書
【特許文献4】米国特許第2003/109798 A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第471 986 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該状況に基づいて、マイクロエレクトロニック・デバイスの気泡による効果を考慮することを可能にする方法を提供することが、本発明の目的である。

【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1、請求項14に記載された方法及び請求項16による使用によって達成することができる。望まれる実施形態は従属項で公開されている。
【0006】
本発明によるマイクロエレクトロニック・デバイスは、意図される特定の応用により、多種である機能のどれを提供してもよい。それは特に、サンプル流体の取り扱いを可能にするマイクロ流体デバイスとして設計してもよい。サンプル流体の取り扱いは、例えば生物化学的反応の実施及び/又はそのような流体中の特性物質の検出などである。マイクロエレクトロニック・デバイスは次のような特徴を有する:
(a)高感度表面及び少なくとも1つの導電体を含む「キャリア」であり、該キャリアは通常さらに、基盤(例えばシリコンのような通常の半導体物質)を含む。該少なくとも1つの導電体は従って、マイクロエレクトロニクスの技術に精通している当事者によって知られている段階によって基盤の中に埋め込まれる又は表面に配置される。それは、如何なる形状、寸法及び構成(線状、長方形、平ら、多量、均一、パターンを持つ、構造化されているなど)であってもよい。「高感度表面」という用語は、キャリア表面のこの部分の設計及び機能を決して制限してはいけないが、個別の名称を提供しなければいけなく、その名称はこの表面の典型的な目的に沿って選ばれなければいけない(言い換えれば、隣接するサンプル物質の物理的特性を感知すること)。
(b)高感度表面に隣接して配置され、その中でサンプル流体が提供される「サンプル・チャンバー」であり、キャリアは従って、少なくとも1つの、サンプル流体がキャリアと接触するインターフェースである高感度表面を有するサンプル・チャンバーの壁を構成する。
(c)測定する領域において高感度表面の湿潤度を示す少なくとも1つの導体からの測定信号を感知する「検出器モジュール」であり、検出器モジュールは、キャリアに統合される電気回路でもよい。あるいは全体的又は部分的にキャリアの外側にあってもよい。それは通常、電線によって該少なくとも1つの導体に接続されるが、検出器モジュールと導体との間のワイヤレス・コミュニケーションであることも可能である。考慮された「測定領域」の「湿潤度」は測定領域の高感度表面のどれだけが実際に、特定のサンプル流体に接触(「濡らし(wetted)」)するか接触しない(「濡らし無し(non-wetted)」)か、反映する。測定領域の濡らされていない部分に接触する媒体は、根本的に、サンプル流体とは異なった如何なる固体物質、流体又は気体であってもよい。下記において、簡略化のため(なお、一般性は喪失されない)この媒体は、気体であると推定する。湿潤度は従って、気泡が高感度表面にどの程度付着するか示す。最もシンプルなケースでは、「濡れ」の状態及び「濡れ無し(ドライ)」の状態を表わす2つの値のみを有してもよい。しかしながら、一般的に湿潤度は、例えば高感度表面の濡らされた割合(言い換えれば、サンプル流体に接触されると見なされる領域の百分率の値)を表わす、濡れの異なった程度を表わす複数個の値又は値の連続体であってもよい。単一の導体は通常、高感度表面全体の湿潤度を表わすことはできないため、測定信号の解釈は、その導体に属した測定領域に限定しなければいけない。

【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による磁気センサー・デバイスの主なスケッチを表わし、その高感度表面の湿潤度を測定する方法を表わす;
【図2】プラスの温度係数を持つ物質において導体のオーミック抵抗の高感度表面の湿潤された部分への依存を示すグラフを表わす;
【図3】湿潤度の容量測定をするための、4つの象限に配置された長方形の電極の形式での導体を表わす;及び
【図4】湿潤度の容量測定をするための、かみ合う櫛の構造をした2つの電極を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記で説明されたマイクロエレクトロニック・デバイスは、高感度表面の湿潤度を決定する方法を提供し、それは、多数のマイクロ流体の取り扱い及び調査において重要なパラメータである。その上、当該方法は、マイクロエレクトロニック・デバイスの基盤の中での実施が簡単であり、一般的に既に他の目的でそこに存在している1つ又は2つの半導体によって提供される測定信号に基づく。従ってそれは多くの場合、従来のマイクロエレクトロニック・デバイスに、測定信号を感知及び評価する検出器モジュールを追加するだけで充分である。
【0009】
導体で測定される多様な電気信号は、関連する表面の湿潤度に敏感であり、従って湿潤度を示す測定信号として適切である。本発明の第1に望ましい実施形態では、測定信号は少なくとも1つの導体を含む回路のインピーダンス(又は、さらに正確にはインピーダンスの値の表示)を含む。最もシンプルなケースでは、その回路は導体だけを含んでもよく、あるいは複数個の導体が存在する場合、それらの導体は直列又は並列で接続してもよい。
【0010】
「インピーダンス」は従来、(パッシブな)回路の2つの端子の間の複雑な周波数に依存する電気抵抗Zとして定義されており、該端子は、それらに印加される電圧V及び電流IをV=Z・Iによって関連づけられる。インピーダンスは通常、容量性、誘導性及び(オームの法則に従う)抵抗の要素を持つ。回路のインピーダンスの値は容易に測定することができ、それは導体を囲む物質に(言い換えれば、隣接する高感度表面の湿潤度に対して)敏感である。
【0011】
上記のケースにおける特定の実施形態では、測定信号は、少なくとも1つの導体のオーミック抵抗を有する。当該オーミック抵抗は、単に導体に(直流の)電流を通し、オームの法則によって電圧を測定することによって決定してもよい。電流が導体を離れ、近辺の高感度表面及びサンプル・チャンバーを通って流れる場合、導体の端部の2つの端子の間で観測される電気抵抗は、明らかに高感度表面の湿潤度に依存する。導体自体のオーミック抵抗(周辺は無しで)に対して湿潤度が及ぼすもう1つの影響は、熱によって与えられる。導体を通る電流によって生じる熱は、湿潤度に依存して異なった方式で放散される;湿潤度は従って、温度及び温度係数によって導電体のオーミック抵抗も決定する。
【0012】
本発明のもう1つの実施形態では、測定信号はカウンター電極に対して少なくとも1つの導体のキャパシタンスを含む。当該カウンター電極は、導体を囲む設置された物質又は望ましくはキャリアの第2導体であってもよい。後者のケースでは、2つの導体は、キャパシタの電極として考えられ、該電極の間の電界が中間物質の誘電特性を感知する。流体及び気体は通常、大きく異なった誘電特性を持つため、キャパシタの電極間の高感度表面をアレンジすることによって、キャパシタンスが湿潤度に依存することになる。
【0013】
最もシンプルなケースではマイクロエレクトロニック・デバイスはただ1つの導電体を含むが、程度の差はあるとしても常に多数の導体(通常数百個)を含む。望ましい実施形態では、高感度表面に重ならない形状で配置された複数個の導体が含まれる。導体は例えば、キャリアの基盤の構造化された金属層で形成されていてもよい。そのような金属層(例えば金層)は多くの場合、生物学的調査に使用されるマイクロエレクトロニック・デバイスに存在する。それは、そのような金属層が生体分子を束縛することができる表面を提供するからである。2つの隣接する導体はこの場合、そのすぐ上(言い換えれば、導体の上部の領域に対応する高感度表面の測定領域)の容積の液体又は気体の存在を感知できる。
【0014】
上記の実施形態のさらなる進展段階では、少なくとも3つの導体が1点で会う(meet)形で配置され、「会う(meet)」という表現は電気的な接触無しにお互いに近づくという意味として解釈するべきである。特に、4つの長方形の導体が座標系の象限に配置されることが可能である。異なった対の2つの導体は従って1つのキャパシタとして駆動されることができ、出会う点(meeting point)の上の容積を含んだ異なった容積の湿潤度を測定することを可能にする。
【0015】
複数個の重なり合わない導体を有するマイクロエレクトロニック・デバイスのもう1つの実施形態では、少なくとも2つの導体がかみ合う櫛のように形作る。この設計では、2つの導体が長距離においてお互いに近づき、それに相当した高いキャパシタンス及び高感度を生み出す。
【0016】
本発明がさらに進化した応用では、検出器モジュールは、「局地化ユニット」を含み、それは、異なる測定領域に相当する測定信号から高感度表面の湿潤がされていないスポットの位置を推測するためのものである。従って、異なる導体での測定から得た情報(通常、高感度表面の異なる(だが、通常重なり合う)測定領域に関連する)は、測定の空間解を改善するように組合せることができる。第1測定領域の測定が、例えば湿潤の10%を示す場合、それは、該第1測定領域の如何なる場所において、それに相当する量の気泡による。しかし、第2測定領域の測定においてその一部が第1測定領域と重複しており、湿潤度の100%を示す場合、気泡は明らかに重複エリアにあるはずはなく、その気泡の空間的局地化を改善する。
【0017】
検出器モジュールは、任意的に交互の電気駆動信号を有する少なくとも1つの導体を供給するためにドライバを含んでもよい。当該駆動信号は、例えば、特定の周波数を持つ正弦波電圧又は電流である。従って該電流によって引き起こされる効果は通常、他の効果から隔離することを可能にする、対応する周波数への依存である。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態で、特に上記の実施形態と共に実現してもよいものでは、検出器モジュールは、周波数領域で(例えば、バンドパスフィルターによって)測定信号を処理するために「スペクトル処理ユニット」を含む。導体の駆動信号が、例えば前述の実施形態のように交互である場合、この信号によって生じるある一定の物理的効果が特性周波数で現れる。周波数領域での測定信号の処理は従って、これらの効果を他の要素から識別し引き離すことを可能にする。
【0019】
マイクロエレクトロニック・デバイスはさらに、磁界及び/又は電界をサンプル・チャンバーの中で発生させるために電磁界発生器を含んでもよい。磁界発生器は例えば、磁気バイオセンサーに使用される。電界発生器は多くの場合、流体及び/又は粒子の移動のためのマイクロ流体デバイスの中に存在する。電磁界発生器は特に1つ又は複数のワイヤーによって実施され、これらのワイヤーは同時に、湿潤度を示す測定信号の感知をする導体として使用してもよい。
【0020】
その上、マイクロエレクトロニック・デバイスは少なくとも1つの光学、磁気、機械、音響、熱及び/又は電気センサー素子を含んでもよい。これらのセンサーのコンセプトのいくつかは、特許文献4に記載されており、本文献に参考文献として含まれている。センサー素子は、望ましくは湿潤度を決定するのに同時に使用する導体を含んでよい。磁気センサー・デバイスに磁界を発生させるための励起ワイヤー及び磁性ビードによって生じる漂遊磁界の検出をするホール(Hall)センサー又は磁気抵抗素子を与えてもよい。磁気抵抗素子は特に、巨大磁気抵抗(GMR)、トンネル磁気抵抗(TMR)又は異方性磁気抵抗(AMR)でよい。
【0021】
本発明はさらに、マイクロエレクトロニック・デバイスにおけるキャリアの高感度表面の湿潤度を決定する方法に関する。該方法において、検出器モジュールはキャリアの中の少なくとも1つの導体からの測定信号の感知及びその測定信号から関連する測定領域の湿潤度の推測をする。
【0022】
該方法の望ましい実施形態では、少なくとも1つの導体が熱の放散を発生させるために電流で駆動される。その熱放散は近辺の表面の湿潤度に依存し、湿潤度は温度を決定することから、すぐに測定可能な導体のオーミック抵抗を決定する。
【0023】
本発明はさらに上記で説明されたマイクロエレクトロニック・デバイスの分子診断学、生体サンプル分析又は化学的サンプル分析、食物分析及び/又は法医学的分析での使用に関する。特に、上記で述べたマイクロエレクトロニック・デバイスは、分子診断学に基づいて診療に使用してもよい。分子診断学は例えば、直接又は間接的にターゲット分子に付着した磁性ビード又は蛍光性粒子の援助によって達成される。
【0024】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照することによって明確になり解明される。これらの実施形態は、それに伴う図面の援助による例を手段として説明される。

【実施例1】
【0025】
図1は、超常磁性のビーズ2の検出のためのシングル・センサー・ユニット100の原理を表わす。そのようなセンサー・ユニット100のアレイ(例えば100)から成るマイクロエレクトロニック(バイオ)センサー・デバイスは、サンプル・チャンバー1の中に提供されている溶液(例えば血液または唾液)の異なった多数のターゲット分子(例えばたんぱく質、DNA、アミノ酸、乱用薬物など)の濃度を同時に測定するのに使用してもよい。束縛法の1つの可能な例は、いわゆる「サンドイッチ分析」であり、それはターゲット分子が結びつく第1抗体3を有する基盤21の上の「高感度表面」22を提供することによって達成される。第2抗体を持つ超常磁性ビーズ2は、次に、束縛されているターゲット分子(簡略化のためターゲット分子及び第2抗体は図には表わされていない)に付着してもよい。センサー・ユニット100の基盤21に埋め込まれているパラレル励起ワイヤー11及び13を通る電流が、励起磁界Bを引き起こし、その次に超常磁性ビーズ2を磁化する。超常磁性ビーズ2からの反応場B’が面内磁化要素をセンサー・ユニット100の巨大磁気抵抗(GMR)の中に導入し、その結果、センサー電流を通して感知される測定可能な抵抗変化が現れる。示される実施形態では、励起電流及びセンサー電流は、「検出器モジュール」30のドライバ31によって供給される。
【0026】
図はさらに、気泡4が高感度表面22に付着してもよいことを示す。これらの気泡がターゲット分子及びビーズ2を関連する表面に束縛されるのを防ぐと、それらの存在が測定結果に大きく影響する。従って、高感度表面22の定義された湿潤度(望ましくは100%)を確実に提供する又は測定の評価の段階でその影響を考慮に入れて湿潤度を決定することのどちらかが必要である。下記では、磁気センサー・ユニットの様々な実施形態が説明されており、高感度表面22の湿潤度を決定することを可能にする。取得された情報は次に(とりわけ)上記で述べられた2つのアプローチのいずれかに使用できる(言い換えれば立証された望まれる湿潤度に達するまでサンプル流体をフィードバック・ループの中で処理すること又は決定された湿潤度によって磁性粒子の測定された濃度を訂正すること)。
【0027】
本発明の第1実施形態では、気泡の熱検出が提案されており、それは、空気及び水の熱伝導性(空気の熱伝導率:0.025W/(mK);水の熱伝導率:0.6W/(mK))の大きな差を使用する。図1に示されるようなセンサー・ユニット100が活性化されると(言い換えれば、電流がワイヤーの中を流れると)、エネルギーがGMRセンサー12及び励起ワイヤー11、13の両方に放散され、その結果、これらの構成物で局地的な過熱が起こる。高感度表面22が乾燥している場合、空気の熱伝導率が低いことから、ほぼ全ての熱は基盤21の中から運び出される。しかし、高感度表面22が水っぽい液体で濡らされた場合、熱のかなりの割合が液体の中から運び出される。さらに効率的なこの熱輸送は、放散する素子及び残りのダイの構造物においてさらに低い温度上昇を起こす。高感度表面22が部分的に濡らされている場合、これは中程度の温度上昇をもたらす。
【0028】
GMRセンサー12のような素子又は励起ワイヤー11、13の(オーミック)抵抗は:
【数1】

として表わされ、R0は温度T0での素子の抵抗であり、Tは実温度で、αは素子の抵抗の温度係数である。素子の抵抗Rはさらに、それぞれ濡れた表面及び乾燥した表面の割合に相当する2つの要素で相加的に構成され:
【数2】

に従う。Xは(未知の)濡らされた表面面積、Aは素子「測定領域」(言い換えれば、見なされる素子に影響する高感度表面22の部分)、Rdryは温度Tdryにおいて、完全に乾燥しているときに素子が到達する抵抗及びRwetは温度Twetにおいて素子が完全に濡らされているときに到達する抵抗である。濡れ(wetting)の比x/Aは、従って素子の抵抗Rに直接比例する。この関係は、言い換えれば濡らされた表面面積の比x/Aの関数であり、図2に概略的に表わされている。
【0029】
上記の分析によると、濡らされている割合x/Aは、電流が通される素子の抵抗Rをモニターすることによって測定できる。これは、電気測定によってセンサー・ユニットがいかに濡らすことができるか決定することが可能であることを意味する。
【0030】
GMRセンサー12又は励起ワイヤー11、13を通る電流Iは通常、該センサーの標準操作時には変調交流であり:
【数3】

である。
【0031】
生じるパワーP及び熱放散は、この電流I及びそれに伴う電圧Vの積で与えられ:
【数4】

従って、周波数領域では、放散によるインピーダンス変化の1つの要素は、変調周波数ωの2倍で起こる。検出器モジュール30の「スペクトル処理ユニット」32で測定されたインピーダンスの復調又はフィルターをかけることによって、この要素は実際のバイオセンサーの測定を妨げずに正確に測定することができる。次の段階では、抵抗値Rは測定された要素から決定され、それは濡れている割合x/Aが示すものを表わす。
【実施例2】
【0032】
気泡を検出するもう1つの解決法では、容量性測定を実施することができるように、センサー・ユニットの最上層にパターン(模様)をつけることが提案されている。水溶液と空気との間のキャパシタンスの違いは非常に大きいため(水の誘電定数:79;空気の誘電定数:1)、キャパシタンスの測定は、気泡の存在を検出するには非常に敏感な方法である。
【0033】
容量センサー自体は、バイオセンサー・ユニットと組み合わされる平面センサーであってもよい。バイオセンサー・ユニットは通常、図1に示されるように(シリコンの)基盤21に埋め込まれている。このチップの最上層は一般的に金層で構成され、生体物質の結びつきを促進する。この金層には、平面容量センサーを実施するようにパターンを施すことができ、磁気センサー・エリア23上の象限に配置された4つの2次電極14、15、16及び17から成る。考えられるパターンは図3に示される。
【0034】
金属最上層のパターン付けは、位置表示が測定から得ることができるように実行してもよい。図3に表わされる最上層のパターン付けにおいて、キャパシタンスは各対の2つの電極間(すなわち14と15、14と16、14と17、15と16、15と17及び16と17)で測定することができる。相対的な測定の結果は従って、表面の気泡位置を示す。例えば、電極17だけを含むキャパシタンスが低く、他の全てが最大値である場合、これは気泡が電極17のすぐ上にあることを示す。位置の情報が得られる、他の検出器の構成も可能である。
【実施例3】
【0035】
それよりもさらに敏感な容量センサーは、図4に描かれているように側面の櫛の構造として実施できる。このパターンのアドミタンスY(すなわちインピーダンスの逆数)はおよそ、
【数5】

に等しく、Nは櫛の歯数であり、σ及びεrはそれぞれ流体の伝導率及び誘電率、lは歯の長さ、dはギャップ幅、及びtは金層の厚さである。
【0036】
熱検出に適用可能な解析に類似して、容量センサーのアドミタンスは濡れたチップ面積の比x/Aに反比例する。従って適切な周波数でアドミタンスを測定することによって濡れの割合が測定できる。
【0037】
注目すべきは、バイオセンサーの応用では測定された効果は、伝導率σを増加させる塩の濃度が高い物体又はバッファ流体でセンサーが充填されているため、大きくなる。その上、磁気センサー・エリア23上にある図4に表わされている櫛のような構造は、図3に表わされる位置依存性の検出器の異なった象限の間のギャップで実施することができる。効果的に、これはキャパシタのプレート面積を増やし、従って方法の感度を上げる。
【0038】
要約では、マイクロエレクトロニック・デバイス、特にバイオセンサーでの表面湿潤を電気領域で測定する方法が提示されている。バイオセンサーの表面エリアの湿潤をモニターすることは不可欠であり、それはセンサーの不完全な湿潤は間違った読み込みをもたらすからである。
【0039】
1つの特有の方法は熱領域で効果を測定することである。この解決法の主な利点は:
-外部の要素を必要としないこと;
-既に得られる信号の使用;及び
-気泡がアクティブ・センサー表面の位置で明確に検出できること;
である。
【0040】
もう1つの特有の方法は、異なったセンサー・エリアの間のキャパシタンスを測定することである。この解決法の主な利点は:
-空気と水溶液との間のキャパシタンスの違いは非常に大きく、高感度な測定に至ること;
-気泡の存在がアクティブ・センサー表面の位置で明確に検出できること;及び
-気泡検出のほかに他の目的でも該構造が使用できること;
である。
【0041】
最後に、本応用において、「含む」又は「有する」という用語は、他の素子又は段階を除外してはいなく、単一のプロセッサ又は他のユニットがいくつかの手段の機能を実行してもよい。本発明は、ありとあらゆる新規な特徴及びありとあらゆる特徴の組み合わせに存する。さらに、請求項の参照符号は本発明の目的を限定してはいけない。

【符号の説明】
【0042】
1…サンプル・チャンバー
2…磁性ビード
3…抗体
4…気泡
11…励起ワイヤー
12…GMRセンサー
13…励起ワイヤー
14…象限電極
15…象限電極
16…象限電極
17…象限電極
18…導体
19…導体
21…基盤
22…高感度表面
23…磁気センサー・エリア
30…検出器モジュール
31…ドライバ
32…スペクトル処理ユニット
100…センサー・ユニット
200…センサー・ユニット
300…センサー・ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)高感度表面及び少なくとも1つの導体を有するキャリア;
(b)サンプル流体が提供される、前記高感度表面に隣接して配置されるサンプル・チャン
バー;及び
(c)関連する測定領域における前記高感度表面の湿潤度を示す、前記導体からの測定信号
を感知するための検出器モジュール;
を含むマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項2】
特に請求項1によるマイクロエレクトロニック・デバイスであり、
(a)高感度表面及び少なくとも1つの導体を有するキャリア;
(b)サンプル流体が提供される前記高感度表面に隣接して配置されるサンプル・チャンバ
ー;及び
(c)前記高感度表面の湿潤度を示す、複数の導体からの測定信号を感知するための検出器
モジュール;
を含むマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項3】
前記導体のオーミック抵抗を含む前記測定信号を特徴とする、請求項1に記載されたマ
イクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項4】
前記測定信号が、カウンター電極に対する前記導体のキャパシタンスを含むことを特徴
とする、請求項1に記載された前記マイクロエレクトロノック・デバイス。
【請求項5】
前記カウンター電極が前記キャリアの第2導体であることを特徴とする、請求項4に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項6】
前記高感度表面で重複しない形状で配置されている複数個の導体を含むことを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項7】
少なくとも3つの導体が1点で会う形状で配置していることを特徴とする、請求項6に
記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項8】
前記導体がかみ合う櫛の形状であることを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項9】
前記検出器モジュールが、異なった測定領域に相当する測定信号から前記高感度表面上
の濡れていない(un-wetted)スポットの位置を推測するための局地化ユニットを含むことを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項10】
前記検出器モジュールが、少なくとも1つの交流電気駆動信号を有する導体を供給する
ためのドライバを含むことを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項11】
前記検出器モジュールが、周波数領域において測定信号を処理するためのスペクトル処理ユニットを含むことを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項12】
前記サンプル・チャンバーに磁界及び/又は電界を発生させるための電磁界発生器を含むことを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項13】
少なくとも1つの光学、機械、音響、熱又は電気センサー素子を含むことを特徴とする、請求項1に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイス。
【請求項14】
マイクロエレクトロニック・デバイスの中のキャリアの高感度表面の湿潤度を決定する方法であり、
(a)該キャリアの中の少なくとも1つの導体から測定信号を感知する段階;及び
(b)該測定信号から関連した測定領域の湿潤度を推測する段階;
を含む方法。
【請求項15】
前記導体が周辺に放散される熱を発生させる電流で駆動されることを特徴とする、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
分子診断学、生体サンプル分析又は化学的サンプル分析における、上記の請求項1乃至13に記載されたマイクロエレクトロニック・デバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−513861(P2010−513861A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540946(P2009−540946)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055024
【国際公開番号】WO2008/072183
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】