説明

湿紙の乾燥装置及び古紙再生処理装置

【課題】加熱手段の加熱に要する熱量を抑えることができ、湿紙を効率よく乾燥することの可能な湿紙の乾燥装置及び該湿紙の乾燥装置を備えた古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】湿紙の乾燥装置Vは、湿潤状態にある湿紙を搬送する搬送ベルト16と、前記搬送ベルト16が外周面に巻回されるとともに、前記湿紙を加熱する加熱手段63を内部に設けた乾燥ローラ50とを備え、前記搬送ベルト16により搬送される湿紙を加熱手段62により加熱し、乾燥させる湿紙の乾燥装置Vにおいて、前記乾燥ローラ50の外周面であって、前記搬送ベルト16が巻回された部分の近傍位置に、前記乾燥ローラ50の外周面を覆う覆い部材53が配設されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿紙の乾燥装置及び古紙再生処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙原料としてのパルプ懸濁液を抄紙し、得られた湿紙を乾燥する湿紙の乾燥装置が知られており、下記特許文献1には、乾燥用のシリンダーの外周面であって、帯状の湿紙が巻回されていない外周面露出部分に対向した位置に、該外周面露出部分を覆う状態に円弧状断熱蓋を配設した帯材乾燥装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2510119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の帯材乾燥装置は、円弧状断熱蓋が、乾燥用のシリンダーの帯状の湿紙が巻回されていない外周面露出部分にのみ配設したので、シリンダーの帯状の湿紙が巻回されている部分から、外方への放熱により、シリンダーの加熱に多大な熱量が必要となる。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、加熱手段の加熱に要する熱量を抑えることができ、湿紙を効率よく乾燥することの可能な湿紙の乾燥装置及び該湿紙の乾燥装置を備えた古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、湿潤状態にある湿紙を搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトが外周面に巻回されるとともに、前記湿紙を加熱する加熱手段を内部に設けた乾燥ローラとを備え、前記搬送ベルトにより搬送される湿紙を加熱手段により加熱し、乾燥させる湿紙の乾燥装置において、前記乾燥ローラの外周面であって、前記搬送ベルトが巻回された部分の近傍位置に、前記乾燥ローラの外周面を覆う覆い部材が配設されてなる湿紙の乾燥装置である。
【0007】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、覆い部材と乾燥ローラとの間に形成された空間に向けて空気を送る送風手段を設けてなるものである。
【0008】
そして、第3の発明は、前記第2の発明において、覆い部材は、乾燥ローラの外周面に沿って延在する円弧状曲面部を有し、前記円弧状曲面部と乾燥ローラの外周面との距離が、送風手段による空気の流れの上流側が広く、下流側が狭く形成されているものである。
【0009】
更に、第4の発明は、前記第2又は第3の発明において、覆い部材と乾燥ローラとの間に形成された空間内の空気を、外部へ排出する排気手段を設けたものである。
【0010】
更に、第5の発明は、古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部と、再生パルプ製造部で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部と、湿紙形成部で形成された湿紙を脱水する脱水部と、脱水部で脱水された湿紙を乾燥する前記第1乃至第5のうちいずれか一つの湿紙の乾燥装置とを備えた古紙再生処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、乾燥ローラの外周面であって、前記搬送ベルトが巻回された部分の近傍位置に、乾燥ローラの外周面を覆う覆い部材が配設されてなるので、乾燥ローラの外周面から外方へ熱が放出され、乾燥ローラの表面温度が低下するのを抑制することができる。よって、加熱手段の加熱に要する熱量を抑えることができ、湿紙を効率よく乾燥させることができる。
【0012】
また、第2の発明によれば、覆い部材と乾燥ローラとの間に形成された空間に向けて空気を送る送風手段を設けてなるので、送風手段によって覆い部材と乾燥ローラとの間の空間に、空気の流通路を形成し、加熱により高湿度となり、覆い部材により加熱ローラの近傍に閉じ込められた空気を乾燥ローラの近傍から移動させることができ、効率よく湿紙の乾燥を行える。
【0013】
そして、第3の発明によれば、覆い部材は、乾燥ローラの外周面に沿って延在する円弧状曲面部を有し、前記円弧状曲面部と乾燥ローラの外周面との距離が、送風手段による空気の流れの上流側が広く、下流側が狭く形成されているので、覆い部材と乾燥ローラとの間の空間を流れる空気の流速が段々と速くなり、加速される。よって、湿紙を加熱することで湿紙から蒸発した水分を、乾燥ローラの近傍から素早く移動させることができ、乾燥効率をより向上させることができる。
【0014】
更に、第4の発明によれば、覆い部材と乾燥ローラとの間に形成された空間内の空気を、外部へ排出する排気手段を設けたので、乾燥ローラの周囲の空気の湿度を低下させることができ、一旦蒸発した水分が結露し、乾燥後の湿紙に再付着したために再生紙の品質を低下させるといった不具合の発生を防止できる。
【0015】
更に、第5の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の張力調整装置と、請求項3または請求項4に記載の蛇行補正装置とを備えたので、張力調整装置により吸水ベルトの張力を調整しつつ、蛇行補正装置により吸水ベルトの蛇行を補正することができ、吸水ベルトに過大な力をかけることなく適正に走行させ、湿紙を脱水することができる。
【0016】
更に、第6の発明によれば、古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部と、再生パルプ製造部で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部と、湿紙形成部で形成された湿紙を脱水する脱水部と、脱水部で脱水された湿紙を乾燥する前記第1乃至5のいずれかの湿紙の乾燥装置とを備えた古紙再生処理装置であるので、古紙から得られた湿紙を、効率よく乾燥し、再生紙を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙再生処理装置の構成概略図である。
【図2】前記古紙再生処理装置の抄紙部の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】前記抄紙部の乾燥部の構成を示す拡大図である。
【図4】前記乾燥部の拡大斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る古紙再生処理装置の乾燥部の構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる湿紙の乾燥装置を備えた古紙再生処理装置の概略構成図である。図1において、古紙再生処理装置100は、再生パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3、仕上部4及び各部を制御する制御部8を備えてなる。
【0019】
尚、以下では、本発明の湿紙の乾燥装置Vを、古紙6を原料として再生紙7を製造する古紙再生処理装置100の抄紙部3に用いた場合について記載するが、必ずしもこれに限定されず、木材等の他のパルプ原料を用いた製紙装置の抄紙部に用いても構わない。
【0020】
再生パルプ製造部1は、古紙10を離解してパルプ懸濁液を製造するものであり、脱墨部2は、再生パルプ製造部1において製造されたパルプ懸濁液を脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙して湿紙を形成し、得られた湿紙を脱水し、乾燥するものであり、仕上部4は、抄紙部3において得られた仕上げ前の再生紙7を裁断等することにより仕上げを行って定型サイズの再生紙7を得るものである。制御部8は古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。再生パルプ製造部1及び脱墨部2は、それぞれ公知の再生パルプ製造装置及び脱墨装置を利用可能である。
【0021】
図2は、抄紙部3を構成する抄紙装置Sの縦断面図である。尚、以下では、図2に示す抄紙装置Sの右側を「前側」、左側を「後側」、図2の紙面の手前を「右側」、紙面の奥側を「左側」として説明することとする。抄紙部3は、湿紙形成部11、脱水部14及び乾燥部15がケーシング41内に収容されてなる。湿紙形成部11は、ヘッドボックス12とワイヤー部13とを有する。ケーシング41内には、左右一対の側板37,38が配設されており、この側板37,38が各部を構成するほとんどのローラを、回動自在に軸支している。
【0022】
ヘッドボックス12は、脱墨後のパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に均一に供給するためのものであり、パルプ懸濁液を貯留する貯留部18と、貯留部18に貯留するパルプ懸濁液を抄紙ワイヤー23上に流出させる流出部19と、貯留部18の底部に形成されたパルプ懸濁液の流入部20とを有する。
【0023】
ワイヤー部13は、複数のローラ24に掛け渡され、展張された無端状の抄紙ワイヤー23を備えている。抄紙ワイヤー23の上側の往路軌道の下方には、パルプ懸濁液を水切りする複数の縦板26が、抄紙ワイヤー23の走行方向に所定間隔で配置されており、各縦板26は抄紙ワイヤー23の走行方向と交差する方向に向けて、且つ、抄紙ワイヤー23の下面に摺動接触させて配置されている。これにより、縦板26が抄紙ワイヤー23の網目から流下する白水を下方へと導くようになっている。
【0024】
また、縦板26の下方には、該縦板26より、または抄紙ワイヤー23の網目から直接流下する白水を受ける受水部27を設けている。受水部27は、下方に設置された白水タンク29に接続されている。白水タンク29は、内部に収容する白水を再生パルプ製造部1及び脱墨部2に送るための図示しない配管及びポンプを備え、受水部27において回収した白水を再利用可能に構成している。
【0025】
脱水部14は、湿紙の脱水装置Dにより構成され、該湿紙の脱水装置Dは、吸水ベルト31と、複数のローラ32と、脱水ローラ対43とを備えている。吸水ベルト31は、湿潤状態にある湿紙を搬送するものであり、フェルト、毛布等の吸水性の素材により無端状に形成され、複数のローラ32の間に掛け渡されてなる。吸水ベルト31は下方に配設された抄紙ワイヤー23及び上方に配設された乾燥部15の搬送ベルト16に所定箇所でそれぞれ当接しており、この当接部分において、順次湿紙を転移するようになっている。
【0026】
脱水ローラ対43は、吸水ベルト31と搬送ベルト16との当接箇所に設置されている。脱水ローラ対43は吸水ベルト31と搬送ベルト16を表裏方向に挟持し、両ベルト間の湿紙を押圧して脱水しつつ、湿紙を吸水ベルト31から搬送ベルト16に転移させるものである。脱水ローラ対43は吸水ベルト31の内方に設置された第1脱水ローラ45と、搬送ベルト16の内方であって、第1脱水ローラ45の対向位置に設置された第2脱水ローラ46とからなる。
【0027】
第2脱水ローラ46は図示しない駆動部に連結され、駆動部の駆動により、第2脱水ローラ46が回転駆動される。第2脱水ローラ46の回転によって、吸水ベルト31及び搬送ベルト16を走行させるとともに、吸水ベルト31及び搬送ベルト16を介して、第2脱水ローラ46に所定圧力で転接する第1脱水ローラ45を従動回転させる。
【0028】
乾燥部15は、湿紙の乾燥装置Vにより構成され、該湿紙の乾燥装置Vは、搬送ベルト16と、挟持用ベルト48と、乾燥ローラ50と、複数のローラ51と、覆い部材53と、カレンダー部54と、送風手段56と、排気手段55とを備えている。搬送ベルト16は、乾燥ローラ50及び複数のローラ51の間に掛け渡されている。挟持用ベルト48は、乾燥ローラ50及び複数のローラ57に掛け渡されている。搬送ベルト16と挟持用ベルト48とは、乾燥ローラ50に巻回された範囲を含む所定箇所で重ね合わされて走行し、この搬送ベルト16と挟持用ベルト48との間で、湿潤状態にある湿紙を挟持して搬送する。搬送ベルト16及び挟持用ベルトの材質は特に限定されず、例えば、布、耐熱樹脂または金属等とする。
【0029】
図3は、乾燥ローラ50及びその周辺の構成を示す拡大図、図4は搬送ベルト16、乾燥ローラ50、支持ローラ61、覆い部材53、送風手段56、排気手段55の拡大斜視図である。図3,4に示すように、乾燥ローラ50は、中空円筒状に形成された筒体58を備え、該筒体58の筒心Cに直交する左右の側面は、円盤形状の蓋体59により閉塞されている。また、筒体59は、3個の支持ローラ61により回転自在に支持されている。筒体58の内周面には、加熱手段62を備えており、該加熱手段62は、柔軟で可撓性を有し、シート状に形成されたシリコンラバーヒータ等の加熱体により構成され、該加熱体が、乾燥ローラの内周面に全周に亘って貼着されている。
【0030】
また、図3に示すように、乾燥ローラ50の前側には、筒体58の表面温度を検出する温度センサ66を設けている。本実施形態では、温度センサ66が、筒体58の表面に摺接し、筒体58の温度を検出する構成としたが、筒体58に非接触のセンサを用いてもよい。
【0031】
筒体58は、後側の半円部分に、搬送ベルト16及び挟持用ベルト48が重ね合わされた状態で巻回されている。そして、筒体58は、搬送ベルト16及び挟持用ベルト48が図示しない各々の駆動部によってそれぞれ走行駆動されることにより、従動して回転するようになっている。
【0032】
覆い部材53は、乾燥ローラ50の筒体58の外周面であって、搬送ベルト16及び挟持用ベルト48が巻回された部分の近傍位置に配設されている。より詳しくは、覆い部材53は、搬送ベルト16及び挟持用ベルト48が巻回されている部分の筒体58の上半分を覆うよう乾燥ローラ50の外周面に近接して設置されている。
【0033】
覆い部材53は、筒体58の筒心C方向の長さより長く形成され、乾燥ローラ50の外周面に沿って延設された円弧状曲面部68を有する。ここで、乾燥ローラ50は常に回転しているので、乾燥ローラ50の外周面のうち、覆い部材53により覆われる部位は、常に変化していることとなる。覆い部材53は、左右の側壁37,38に螺子69により固定されている。この覆い部材53は、金属製薄板や耐熱性合成樹脂等を加工して形成される。
【0034】
カレンダー部54は、覆い部材53の設置位置の下方に設けられている。カレンダー部54は、乾燥ローラ50の外周面に対向して設置され、挟持用ベルト48を挟持用ベルト退避機構74により湿紙から離間させた状態で、搬送ベルト16との間で湿紙を挟むプレスローラ73を有する。プレスローラ73は、湿紙に当接するプレス位置と、湿紙から離間する退避位置とに亘って変位可能に構成されている。
【0035】
送風手段56は、乾燥ローラ50の後方位置であって、覆い部材53の下端縁より下方位置に配設されている。送風手段56は、左右幅方向に並設された複数の軸流ファンにより構成される。送風手段56は、覆い部材53と乾燥ローラ50との間の空間63へ向けて下方から空気を送るようになっている。この結果、覆い部材53と乾燥ローラ50との間の空間63は、送風手段56からの空気の流通路となっている。
【0036】
排気手段55は、乾燥ローラ50の真上となるケーシング41の上面に設けられている。排気手段55は、左右幅方向に並設された複数の軸流ファンにより構成される。排気手段55は、乾燥ローラ50の上方に滞留する湿度の高い空気をケーシング41の上面より上方ヘと排出する。また、送風手段56から覆い部材53と乾燥ローラ50との間の空間63へ送られ、該空間63内を上方へと円弧状に流れた結果、高湿度となった空気も、覆い部材53の上端縁から流出した際に、排気手段55により、ケーシング41の上面より外部ヘ排出することができる。
【0037】
(仕上部)
図1に示す仕上部4は、帯状の紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0038】
(作用)
本実施形態にかかる製紙装置100の作用につき以下に説明する。まず、再生パルプ製造部1において所定量の古紙10を所定量の水とともに所定時間攪拌することで、パルプ懸濁液を製造する。次に、得られたパルプ懸濁液を脱墨部2へ送り、脱墨処理を行って、脱墨後のパルプ懸濁液を得る。脱墨後のパルプ懸濁液に対し、脱墨部2においてまたは脱墨部2から抄紙部3への流通経路の途中位置で加水し、抄紙に適する所定のパルプ濃度に調製し、抄紙部3のヘッドボックス12へ送る。
【0039】
ヘッドボックス12では、パルプ懸濁液が流入部20から貯留部18に流入され、流出部19から抄紙ワイヤー23上に流出される。抄紙ワイヤー23上に供給されたパルプ懸濁液のうち液体分が抄紙ワイヤー23の網目を通り抜け、縦板26により下方の受水部27へと導かれ、受水部27で受水された後、白水タンク29内に収容される。白水タンク29内の白水は、再生パルプ製造部1や脱墨部2等へ送られ、再利用される。抄紙ワイヤー23上に残存した再生パルプにより、水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙が形成される。
【0040】
抄紙ワイヤー23上の湿紙が吸水ベルト31との当接部30に至ると、抄紙ワイヤー23から吸水ベルト31へと転移される。吸水ベルト31は、湿潤状態にある湿紙を担持しつつ走行することで、湿紙に含まれる水分を吸水ベルト31側に吸収させ、脱水する。更に、脱水ローラ対43の設置位置で、脱水ローラ対43により湿紙を挟持押圧し、脱水するとともに、搬送ベルト16に転移する。
【0041】
吸水ベルト31から搬送ベルト16に転移した湿紙は、挟持用ベルト48との間に挟持され、加熱手段62によって加熱された乾燥ローラ50に、搬送ベルト16を介して当接されることで乾燥が行われ、仕上げ前の帯状の再生紙7が得られる。尚、乾燥ローラ50は、温度センサ66によって温度が検出され、所定温度に維持されている。
【0042】
この湿紙の乾燥の際、カレンダー部54では、プレスローラ73を退避位置からプレス位置へ移動し、プレスローラ73により湿紙を搬送ベルト16及び乾燥ローラ50に押し当ててプレスすることで、得られる再生紙7の平坦度を高める。
【0043】
乾燥ローラ50の近傍位置には、覆い部材53が配設されているので、乾燥ローラ50の外周面から外方へ熱が放出され、乾燥ローラ50の表面温度が低下するのを抑制することができる。よって、加熱手段62の加熱に要する熱量を抑えることができ、湿紙を効率よく乾燥させることができる。
【0044】
また、湿紙の乾燥の際、制御部8が、送風手段56を駆動した場合には、覆い部材53と乾燥ローラ50との間の空間63に、空気を送り、乾燥ローラ50の外周面に沿って空気の流れを生じさせることができる。これにより、乾燥ローラ50からの放熱で温められ、また湿紙から水分が蒸発することで湿度が高くなった空気が、覆い部材53と乾燥ローラ50との間の空間63を上方へ流通する。これにより、覆い部材53を設けることで湿度が高くなった乾燥ローラ50の周囲の空気を流通させ、湿度を低下させることができ、湿紙をより効率よく乾燥することができる。
【0045】
更に、制御部8が、排気手段55を駆動した場合には、乾燥ローラ50の上方の空間に滞留する空気を、ケーシング41の外部へ排出することができる。また、制御部8が、送風手段56と排気手段55の両者とも同時に駆動した場合、送風手段56より覆い部材53と乾燥ローラ50との間の空間63へ送られ、該空間63を円弧を描いて上方へ流通した空気を、排気手段55によりケーシング41の外方ヘ排出することができる。これにより、加熱により高湿度となった乾燥ローラ50の周囲の空気を、乾燥ローラ50の近傍から移動させ、外部に排出することができる。
【0046】
これにより、ケーシング41内の湿度を低下させることができ、ケーシング41内で一旦水蒸気となった水分が、ローラ51、57等に付着し、結露するのを防止することができる。通常、ケーシング41内が高湿度となった場合には、ローラ51,57等に水蒸気が付着し結露してしまうことがある。この場合には、ローラ51,57から搬送ベルト16や挟持用ベルト48に、結露した水分が転移し、更には、乾燥途中の湿紙に付着することがあり、得られる再生紙7の品質を低下させる不具合が生じることがある。しかし、排気手段55を駆動することで、ケーシング41内の湿度を低く抑えることができるので、かかる不具合を防止できる。
【0047】
乾燥部15で得られた仕上げ前の帯状の再生紙7を、仕上部4に送り、裁断刃で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。裁断刃により裁断された再生紙7の端材は、図1に示すように再生パルプ製造部1に戻され、再度再生紙7の製造に利用される。
【0048】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態にかかる湿紙の乾燥装置Vaの乾燥ローラ50及びその周辺の構成を示す拡大図である。上記第1の実施形態では、覆い部材53が乾燥ローラ50の外周面に略平行に設置され、円弧状曲面部68と乾燥ローラ50の外周面との距離S(図3参照)が、いずれの箇所でも略同程度とされた。一方、本第2の実施形態では、円弧状曲面部68aと乾燥ローラ50の外周面との間が、送風手段56aによる空気の流れの上流側の距離Lが長く、下流側の距離Mが短く形成されている。
【0049】
また、送風手段56aを第1の実施形態におけるプロペラファン等の軸流ファンに替えてシロッコファンやターボファン等の輻流ファンを用いている。
【0050】
本第2の実施形態に係る湿紙の乾燥装置Vaによって湿紙を乾燥する際、制御部8が、送風手段56aを駆動し、覆い部材53aと乾燥ローラ50との間の空間63aに空気を送る。覆い部材53aは、円弧状曲面部68aと乾燥ローラ50の外周面との間が、送風手段56aによる空気の流れの上流側の距離Lが広く、下流側の距離Mが狭くなるよう設置されているので、この空間63aを流れる空気の流速が段々と速くなり、加速される。特に、送風手段56aに輻流ファンを用いているので、軸流ファンを用いる場合より風圧を高く維持することができ、空間63aを流れる空気の流速を十分に加速させることができる。これにより、湿紙を加熱することで湿紙から蒸発した水分を、覆い部材53aと乾燥ローラ50との間の空間63aから素早く移動させることができ、乾燥効率をより向上させることができる。
【0051】
そして、制御部8が排気手段55を駆動することで、覆い部材53の上端縁より前方へ流れ出た空気は、排気手段55に吸引され、ケーシング41の外方へ排出される。
【0052】
尚、上記実施形態では、古紙再生処理装置100に脱墨部2を設けたが、脱墨部2を省略しても構わない。また、送風手段56及び排気手段55は、ともに左右幅方向に並設された複数の軸流ファンまたは輻流ファンにより構成したが、送風手段56及び排気手段55は、いずれも必ずしも設ける必要はない。また、軸流ファンとしたところをシロッコファンやターボファン等としてもよく、斜流ファン等他の送風機を用いても構わない。
【0053】
また、覆い部材53は、金属製薄板や耐熱性合成樹脂等を加工して形成されたが、他の構成であってもよく、また必要により、金属製薄板や耐熱性合成樹脂等を加工して形成された覆い部材53の表裏いずれか又は双方の面に、発泡スチロール等の多孔質材料等からなる断熱材層を設けても構わない(図示省略)。また、送風手段56は、覆い部材53,53aと乾燥ローラ50との間に形成された空間63,63aに向けて空気を送ることとしたが、これに限定されず、例えば、カレンダー部に向けて送風する等、湿紙の乾燥装置のケーシング内の空気を流通させるよう他の部分に向けて送風してもよい。
【符号の説明】
【0054】
V,Va 湿紙の乾燥装置
1 再生パルプ製造部
11 湿紙形成部
14 脱水部
15 乾燥部
16 搬送ベルト
50 乾燥ローラ
53,53a 覆い部材
55 排気手段
56,56a 送風手段
62 加熱手段
68,68a 円弧状曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤状態にある湿紙を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトが外周面に巻回されるとともに、前記湿紙を加熱する加熱手段を内部に設けた乾燥ローラとを備え、
前記搬送ベルトにより搬送される湿紙を加熱手段により加熱し、乾燥させる湿紙の乾燥装置において、
前記乾燥ローラの外周面であって、前記搬送ベルトが巻回された部分の近傍位置に、前記乾燥ローラの外周面を覆う覆い部材が配設されてなることを特徴とする湿紙の乾燥装置。
【請求項2】
覆い部材と乾燥ローラとの間に形成された空間に向けて空気を送る送風手段を設けてなる請求項1に記載の湿紙の乾燥装置。
【請求項3】
覆い部材は、乾燥ローラの外周面に沿って延在する円弧状曲面部を有し、
前記円弧状曲面部と乾燥ローラの外周面との距離が、送風手段による空気の流れの上流側が広く、下流側が狭く形成されている請求項2に記載の湿紙の乾燥装置。
【請求項4】
覆い部材と乾燥ローラとの間に形成された空間内の空気を、外部へ排出する排気手段を設けた請求項2または請求項3に記載の湿紙乾燥装置。
【請求項5】
古紙を離解してパルプ懸濁液を製造する再生パルプ製造部と、
再生パルプ製造部で製造されたパルプ懸濁液を抄紙し湿紙を形成する湿紙形成部と、
湿紙形成部で形成された湿紙を脱水する脱水部と、
脱水部で脱水された湿紙を乾燥する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の湿紙の乾燥装置とを備えた古紙再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127030(P2012−127030A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280658(P2010−280658)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】