説明

準直流磁界を用いた位置追跡

【課題】「準DC」磁界を用いて物体の位置および姿勢を追跡するための改善された方法およびシステムを提供する。
【解決手段】センサーの位置を追跡する方法であって、その方法は、センサーの近傍に周期的な磁界を生み出すことを含み、その磁界は、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する。第1および第2の磁界測定信号が、正および負の極性の相の間の各々でセンサーでの磁界に応答して生み出される。センサーの位置は、第1および第2の磁界測定値信号に応答して求められる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、大まかに言って、磁気的位置追跡システムに関し、より詳しく言うと、磁気的位置追跡システムの測定誤差を低減する方法およびシステムに関する。
【0002】
〔背景技術〕
医療手技に含まれる物体の座標を追跡するためのさまざまな方法およびシステムが当該技術分野で知られている。それらのシステムのいくつかは、磁界測定を用いている。米国特許第5,391,199号および同第5,443,489号は、その開示内容を参照することによって本明細書に組み込まれ、体内プローブの座標が一つ以上の磁気トランスデューサを用いて求められるシステムを記載している。そのようなシステムは、医療用プローブまたはカテーテルに関する位置情報を生み出すために用いられる。コイルなどのセンサーが、プローブ内に配置され、外部から印加された磁界に応答して信号を生み出す。磁界は、既知の相対的に離れた位置の外部の基準座標系に固定された放射器コイルのような磁界トランスデューサによって生み出される。
【0003】
磁気的位置追跡に関連する別の方法およびシステムも、例えば、PCT特許公開WO 96/05768、米国特許第6,690,963号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、同第6,332,089号、米国特許出願公開2002/0065455 A1、同2003/0120150 A1、および、同2004/0068178 A1に記載されていて、これらの開示内容は参照されることによって本明細書に組み込まれる。これらの公報は、心臓カテーテル、整形外科移植片、および、さまざまな医療手技で用いられる医療用ツールなどの、体内の物体の位置を追跡する方法およびシステムを記載している。
【0004】
上記の参考資料に記載されたシステムのいくつかを含むいくつかの位置追跡システムは、交流(AC)磁界を用いる。その他の位置追跡システムは、直流(DC)磁界を用いる。米国特許第4,945,305号は、その開示内容が参照されることによって本明細書に組み込まれ、パルス状のDC磁気信号を用いて、送信アンテナに対する受信アンテナの位置を測定するシステムを記載している。送信アンテナは、パルス状の直流信号によって、一度に一つずつ駆動される。受信アンテナは、送信された磁界および地球の磁場を測定する。コンピュータが受信された信号を位置および姿勢の出力に変換する。
【0005】
米国特許第5,453,686号は、その開示内容が参照されることによって本明細書に組み込まれ、時分割多重化されたパルス状のDC信号を複数の電磁界発生要素に印加することによって複数の電磁界を生み出すシステムを記載している。その電磁界が、遠隔のセンサーで検出されて、生み出された電磁界の各々の変化率が検出される。遠隔のセンサーの出力は、生み出された電磁界の定常状態成分を生み出すため、合計される。定常状態成分は、遠隔の物体の位置および姿勢に解析される。
【0006】
〔発明の概要〕
AC磁気的位置追跡システムでは、磁界は、磁界発生器を、交流の、典型的には正弦波の駆動信号で駆動することによって、生み出される(この故に、磁界の名前は「AC磁界」である)。AC磁界を用いる位置追跡システム(簡単のために、本明細書では「ACシステム」と呼ぶ。)は、追跡される物体の近傍に位置する金属製のまたはその他の磁界に反応する物品によって引き起こされた測定誤差を生じやすい。当該分野では、AC磁界(または、時間的に変化する磁界強度を備えた任意の磁界)がそのような物品中にうず電流を誘起することが、よく知られている。うず電流は、次に、寄生磁界を生み出し、寄生磁界が位置追跡システムの測定をゆがめる。DC磁界(すなわち、注目の測定期間の間に一定の磁界強度を有する磁界)を用いる位置追跡システムは、うず電流によるゆがみに対してより敏感でない。
【0007】
一方、DC磁界に基づく位置測定は、測定が以下に記載されるように基準ラインのドリフトにさらされるので、より安定でないことが多い。さらに、DCシステムは、必然的に、その測定値に地球の磁場を組み込んでいて、そのことが位置測定での別の誤差要因を構成している。パルス状のDC磁界は、地球の磁場の効果を測定値から控除できるようにするが、それでもなお、基準ラインのドリフトに対する調整のための別の較正手順を必要とする。
【0008】
本発明の実施の形態は、「準DC」磁界を用いて物体の位置および姿勢を追跡するための改善された方法およびシステムを提供する。開示された方法およびシステムは、DCシステムのうず電流不感受性の特性を提供し、同時にバイアスのドリフトおよび地球の磁場を補償する能力を提供する。
【0009】
いくつかの実施の形態では、準DC磁界は、周期的な駆動信号によって生み出され、その周期的な駆動信号は、方形波の形状を有する。駆動信号(および対応する磁界)は、正の極性および負の極性を備えた2つの相の間を交互に行き来する。各相では、磁界はDC磁界とみなすことができ、うず電流の効果を除去している。位置および姿勢追跡システムは、2つの相で測定された測定値を組み合わせて、バイアスのドリフト、および、地球の磁場を原因とする測定誤差を相殺する。
【0010】
したがって、本発明の実施の形態に基づけば、センサーの位置を追跡する方法が提供され、その方法は、
センサーの近傍に周期的な磁界を生み出す過程であって、磁界は、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する、周期的な磁界を生み出す過程と、
正の極性の相および負の極性の相の各々の間にセンサーでの磁界に応答して第1の磁界測定信号および第2の磁界測定信号を生み出す過程と、
第1の磁界測定信号および第2の磁界測定信号に応答してセンサーの位置を求める過程と
を具備する。
【0011】
ある実施の形態では、センサーは患者の体内に植え込まれている。それに加えて、または、その代わりに、センサーは、患者を治療するために用いられる医療用器具に結合されている。
【0012】
別の実施の形態では、正の極性の相および負の極性の相の各々は、少なくとも10ミリ秒の期間に亘って一定である。さらに別の実施の形態では、正の振幅は負の振幅と等しい。
【0013】
さらに別の実施の形態では、センサーの位置を求める過程は、第1および第2の磁界測定信号に論理演算を実行することを含む。別の実施の形態では、論理演算の実行は、第1および第2の磁界測定信号を加算して、位置信号を生み出すことを含む。
【0014】
ある実施の形態では、第1のおよび第2の磁界測定信号は、過渡期間を含み、第1および第2の磁界測定信号を生み出す過程は、過渡期間の外側でそれらの信号を測定することを含む。
【0015】
別の実施の形態では、周期的な磁界を生み出す過程は、2つ以上の異なる対応する位置で生み出された2つ以上の周期的な磁界を多重化することを含む。
【0016】
本発明の実施の形態に基づけば、位置トランスデューサの位置を追跡する方法が、さらに提供され、その方法は、
対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する周期的な磁界を生み出すように位置トランスデューサを動作させる過程と、
既知の位置で磁界を検出して、正の極性の相および負の極性の相の各々の間に、検出された磁界に応答して、第1および第2の磁界測定信号を生み出す過程と、
第1および第2の磁界測定信号に応答して位置トランスデューサの位置を求める過程と
を具備する。
【0017】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡する装置が、さらに提供され、その装置は、
物体の近傍に周期的な磁界を生み出すように準備された少なくとも一つの位置パッドであって、周期的な磁界は、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する、少なくとも一つの位置パッドと、
物体に結合され、正の極性の相および負の極性の相の各々の間に磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出すように準備された、位置センサーと、
第1および第2の磁界測定信号に応答してセンサーの位置を求めるように準備されたプロセッサと
を具備する。
【0018】
本発明のある実施の形態に基づけば、物体の位置を追跡する装置が、さらに提供され、その装置は、
物体に結合され、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する周期的な磁界を生み出すように準備された、磁界発生器と、
正および負の極性の相の各々の間に磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出すように準備された、位置パッドと、
第1および第2の磁界測定信号に応答してセンサーの位置を求めるように準備された、プロセッサと
を具備する。
【0019】
本発明は、図面と共に、本発明の実施の形態の以下の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【0020】
〔実施の形態の詳細な説明〕
システムの説明.
図1は、本発明のある実施の形態に基づく、磁気的位置および姿勢追跡システム20の模式的な絵図である。外科医22は、医療用ツール28を用いて、患者26に医療手技を施す。外科医を案内する追跡システムは、位置パッド32を含み、位置パッド32は磁界発生器として機能する。位置パッドは、典型的には、磁界発生コイルを含み、磁界発生コイルは、手術部位を含む予め決められた作業体積中のいたるところに準DC磁界を生み出す。その磁界は、コンソール36によって生み出された駆動信号に応答して生み出される。磁界は、以下により詳しく記載されるように、患者の体内に導入された小型のセンサーユニット34によって検出される。例えば、図1では、センサーユニットは、患者の脚部に植え込まれている。
【0021】
各センサーユニットは、位置センサーを含み、位置センサーは、位置センサーの近傍の磁界を検出するように設計されている。位置パッド32によって生み出された磁界は、センサーユニット34に、センサーユニットの位置および姿勢を表す位置信号を生み出して送信するようにさせる。位置信号は、無線制御ユニットによって受信され、無線制御ユニットはコンピュータ37に接続されていて、無線制御ユニットおよびコンピュータ37は両方ともコンソール36内に配置されている。コンピュータ37はシステム20の中央プロセッサとして役立ち、センサーユニット34の相対的な位置および姿勢座標を計算するために、受信された信号を処理する。計算の結果は、典型的には、ディスプレイ38上で外科医に表示される。(本特許出願および特許請求の範囲の文脈で、用語「位置」および「位置座標」は、センサーユニットの位置および姿勢の両方を意味する。典型的には、位置は6次元座標で表される。)
【0022】
追跡システムは、センサーユニット34の位置および姿勢を測定し表示することによって、外科医が手術手技を実行するのを案内し、この例では、膝関節の手術を実行するのを案内する。いくつかの応用では、センサーユニット34と同様のユニットが、ツール28にも納められている。そのような応用では、追跡システムは、体内のセンサーユニットに対するツールの位置を測定し表示する場合もある。
【0023】
図1に示されたシステムは、整形外科での応用に関連している。整形外科での応用のための位置追跡システムに関するさらに詳細な記載は、2004年3月5日に出願され、いまは、米国特許出願第11/062,258号として出願されている、米国仮特許出願第60/550,924号に見出され、その出願は本特許出願の承継人に譲渡されていて、その出願の開示内容は参照されたことによって本明細書に組み込まれる。しかし、この例示的なシステムは、概念を明瞭にするためにのみ選択された。その他のシステム構成およびその他の応用が、当業者には明らかであるだろうし、本発明の範囲内に包含されるとみなされる。例えば、任意の個数のセンサーユニット34および位置パッド32が用いられてよい。センサーユニットは、別のタイプの移植片および医療用ツール内に納められてもよく、カテーテルおよび内視鏡のような侵襲的医療器具内に納められてもよい。位置パッドは、代わりに、患者の体に取り付けられてもよい。
【0024】
位置パッド32およびセンサーユニット34は、磁界を送信または受信するように設計されている。言い換えれば、センサーユニット34が磁界を受信するように構成されているときは、位置パッド32は磁界を生み出すように構成されている。それに代わり、位置パッドは、移植片および/またはツール内に納められた磁界発生器によって生み出された磁界を検出するように構成されていてもよい。以下の記載では、位置パッド32が磁界を生み出し、その磁界が移植片内およびツール28内のセンサーユニット34によって受信されることが前提とされている。送信機および受信機の役割分担が逆の構成では、本発明の原理は、センサーユニット内の磁界トランスデューサを駆動することによって準DC磁界を生み出し、位置パッドでの磁界を検出することによって、センサーユニット34の位置を測定するために用いられる。
【0025】
図2は、本発明のある実施の形態に基づくセンサーユニット34の詳細を模式的に示すブロック図である。センサーユニット34は、位置センサー40を含み、位置センサー40はその近傍の磁界を検出し測定するように設計されている。センサーユニットは、典型的には、互いに直角をなす姿勢で取り付けられた3つの位置センサー40を含んでいる。各センサー40は、そのセンサーの姿勢に基づいて、磁界の成分を測定する。準DC磁界の各相の間に検出された磁界は、実質的にDC磁界である。したがって、位置センサー40は、DC磁界を検出するように設計されている。ある実施の形態では、センサー40は、検出された磁界に比例してその電気伝導率が変化する磁気抵抗性トランスデューサを含む。それに代わって、センサー40は、検出された磁界に比例した電圧を生み出すホール効果トランスデューサを含んでいてもよい。さらにそれらに代わって、DC磁界を測定するのに適した任意の別のセンサーが位置センサー40を実現するために用いられてもよい。
【0026】
位置センサー40は、磁界の成分を検出し、制御回路42によって処理される電圧を生み出す。回路42は、その電圧に応答して位置信号を生み出し、その位置信号を送信コイル44を用いてコンソール36内の無線制御ユニットに送信する。電源ユニット46は、制御回路42を作動させるために電力を供給する。いくつかの実施の形態では、電源ユニット46はバッテリーを含む。別の実施の形態では、電源ユニット46は、電力コイルを含み、その電力コイルが、外部のシステムからセンサーユニットへ送信された無線周波(RF)エネルギーを受信する。これらの実施の形態では、電源ユニットは、受信したRF信号を整流し、その結果得られたDC電圧を回路42に電力を供給するために用いる。
【0027】
いくつかの実施の形態では、センサーユニット34は、配線によってコンソール36に接続されている。例えば、センサーユニット34は、カテーテルまたは同様の侵襲的器具の遠位末端部内に納められている。カテーテルは、遠位末端部が外部のシステムと接続された配線を含んでいる。そのような実施の形態では、送信コイル44は省略され、位置信号は配線による接続によって外部のシステムに送られる。それに加えて、または、その代わりに、電源ユニット46が同じように省略されてもよく、電力は配線による接続を介して制御回路に供給される。
【0028】
図3Aは、本発明のある実施の形態に基づく、準DC磁界の磁界強度を模式的に示した信号図である。曲線50は、準DC駆動信号に応答して位置パッド32の一つによって生み出された磁界の磁界強度を示している。生み出された磁界(「一次磁界」とも呼ばれる。)は、対称的な方形波の形状を有する。この実施の形態では、磁界は正の極性の相および負の極性の相を含み、両方の相は等しい振幅の絶対値(図中ではAで示されている。)を有している。各極性の相は、期間Tを有している。駆動信号および磁界の周波数は、したがって、f=1/2Tによって定義される。図3Aの例示的な実施の形態では、一次磁界の負および正の極性の相は、等しい振幅および等しい期間を有して示されているが、別の実施の形態では、負および正の極性の相の振幅は等しくなくてもよい。同様に、正および負の極性の相の期間は、等しくなくてもよい。
【0029】
図3Bは、本発明のある実施の形態に基づく、検出された準DC磁界を模式的に示した信号図である。曲線52は、曲線50によって示された磁界に応答してセンサーユニット34の一つの位置センサー40の一つによって生み出された信号の典型的な信号振幅を示している。曲線52によって示されているように、信号は、対称的ではない。曲線52によって示された例では、負の極性の相の振幅の絶対値(図ではAn で示されている。)は、正の極性の相の振幅の絶対値(Ap で示されている。)よりも大きい。
【0030】
検出された準DC磁界の非対称性は、主に2つの要因によって引き起こされていて、すなわち、基準ラインのドリフト、および、地球の磁場、によって引き起こされている。基準ラインのドリフトは、磁界強度の測定の緩やかな時間的変動を示す用語である。そのような変動は、例えば、温度変化、および、センサーユニット内および外部のシステム内の測定された信号を増幅、フィルタリング、および、サンプリングするために用いられる電子回路中のコンポーネントの値のドリフト、によって引き起こされる。
【0031】
基準ラインのドリフトは、等価磁界ベクトルによって表すことができ、その等価磁界ベクトルは、位置センサーの近傍内の一次磁界ベクトルにベクトル加算される。各位置センサー40は、この組み合わせ磁界の成分を検出するので、そのバイアスドリフトのベクトルは、検出された磁界のある極性の相の値を減らし、逆の極性の相の値を同じ量だけ増やす。この作用の結果が、曲線52に示されているような正および負の極性の相の振幅の非対称性あるいはオフセットである。
【0032】
地球の磁場と組み合わされた準DC一次磁界の測定は、同様の非対称性の作用を引き起こす。検出された準DC磁界のある極性の相は、地球の磁場の寄与によって増やされ、一方、逆の極性の相は、同じ量だけ減らされる。両方の場合で、誤差は、検出された磁界の正および負の極性の相の値を減算することによって、求められる。補正された磁界の推定値は、検出された正および負の極性の相の平均値を計算することによって生み出される。図3Aおよび図3Bの表示に従えば、誤差は、ε=(Ap −An )/2によって与えられる。補正された磁界の推定値は、A=Ap −ε、または、A=An +ε、または、直接、A=(Ap +An )/2によって、与えられる。(全ての計算は、Ap 、および、An が、正の数であり、検出された磁界強度の絶対値を表していることを前提としている。)以下の図4に記載された位置追跡方法は、バイアスドリフトおよび地球の磁場を原因とする誤差を補償するために、準DC磁界の2つの極性の相で測定されたそのような測定値を用いる。
【0033】
いくつかの実施の形態では、準DC磁界の相異なる極性の測定値がセンサーユニットの較正を単純化するためにも用いられる。いくつかの場合では、較正は完全に省略される。
【0034】
非対称性の作用に加えて、曲線52に示された検出された磁界は、正および負の極性の相の間の移行の付近に過渡部54を含んでいる。過渡部は、曲線50に示されているような一次磁界のはっきりとした方形波の形状から偏移している。過渡部54は、例えば、うず電流、または、磁界自体ではなく一次磁界の変動によって励起された寄生磁界のその他の発生源(これらの寄生効果は、AC磁界に基づく測位システムでの主要な誤差の誘因の一つである。)、によって引き起こされる。センサー40を用いる開示された準DCシステム中の磁界を検出する場合、過渡部は、過渡部が減衰して磁界強度が安定した後に、測定を実施することによって、回避される。これらの測定条件の下で、検出された磁界が間違いなくDC磁界とみなすことができる。
【0035】
準DC磁界の周波数も、過渡部54のような過渡応答に関連して選択される。上述したように、各極性の相で磁界をDC磁界とみなすことが望ましい。そのようにするために、準DC磁界の正および負の極性の相の各々が、うず電流のような寄生作用が磁界を検出する前に減衰するように、十分に長い期間Tに亘って一定に留まらなければならない。10ミリ秒以上である(50Hz以下の方形波周波数に相当する。)Tの値は、典型的には、準DCの動作のために十分であると考えられるが、その他の範囲の値が用いられてもよい。
【0036】
準DC磁界の周波数の選択に影響するその他の要因は、望まれる測定値のリフレッシュ率(すなわち、単位時間当たりの位置測定値の数)である。リフレッシュ率は、典型的には、センサーユニットの予想される動力学、および、望まれる測定値の精度および分解能に基づいて決定される。
【0037】
位置検出方法.
図4は、本発明のある実施の形態に基づく、位置追跡方法を模式的に示したフロー図である。その方法の以下の説明は、単純化するために、単一の位置パッド32および単一のセンサーユニット34を考察する。複数の位置パッドおよび複数のセンサーユニットを含む一般化された場合のシステムは、後に説明される。
【0038】
位置追跡方法は、磁界生成ステップ60で、位置追跡システムが、準DC磁界を生み出すことから始まる。コンソール36は、可動範囲全体に準DC磁界を生み出すように、位置パッド32を駆動するために用いられる準DC駆動信号を生み出す。
【0039】
位置パッドによって生み出された準DC磁界は、磁界検出ステップ62で、センサーユニット34の位置センサー40によって検出される。制御回路42は、検出された磁界の正および負の極性の相に対応する電圧または電流を検出する(検出された電圧または電流は、上記の図3Bの曲線52の磁界強度Ap およびAn に相当する)。
【0040】
制御回路は、出力計算ステップ64で、測定値Ap およびAnに相当する磁界測定信号を生み出し、補正された磁界の推定値を生み出す。ある実施の形態では、制御ユニットは、次に、上述したように、補正された磁界の推定値を表す位置信号を生み出し、その位置信号をコンピュータ37に送る。ある実施の形態では、制御回路は、上記の関係A=(Ap +An )/2を用いて補正された磁界の推定値を計算するフィルターを含んでいる。別の実施の形態では、値Ap およびAn を表す磁界測定値信号は、制御回路によってコンピュータ37に送られ、補正された磁界の推定値および位置信号の計算は、コンピュータによって実行される。それに代わって、測定値Ap およびAn を用いた補正された磁界の推定値の計算のための任意のその他の適切な方法が用いられてもよい。そのような方法は、ソフトウェアまたはハードウェアによる実現の何れを含んでいてもよい。補正された磁界の推定値は、次に、コンピュータ37によって、センサーユニット34の位置座標を計算するために、用いられる。
【0041】
多くの実際の場合で、システム20は、複数の位置パッド32を含む。そのような実施の形態では、各位置パッド32は、個別にその準DC磁界を生み出し、その間、他の位置パッドはどのような磁界をも決して生み出さない。異なる位置パッドの間での任意の適切な時分割多重化(TDM)割り当てが、このような条件を満たすために、用いられる。しかし、ある一つの位置パッドによって生み出された正および負の極性の相が互いに時間的に隣接していることが望ましい。このような隣接によって、一次磁界が両方の相で同じであること、および、バイアスドリフトがほぼ一定に留まること、が確実にされる。ある実施の形態では、ステップ60からステップ64が、予め決められた(TDM)シーケンスに基づいて、各位置パッド32毎に繰り返される。コンピュータ37は、各位置パッドの検出された磁界に応答するセンサーユニットからの複数の位置信号を受け取る。コンピュータは、当業者に知られた位置計算方法を用いて、センサーユニットの位置座標を計算するために、これらの位置信号を用いる。
【0042】
上記の方法は、各センサーユニットが他のセンサーユニットと独立してその測定を実行するので、変更せずに、複数のセンサーユニット34を含むシステムで用いることができる。
【0043】
本明細書に記載されたシステムおよび方法は、準DC磁界の医療用位置追跡システムでの使用を主に扱うが、本発明の原理は、非医療用位置追跡システム、および、その他の用途にも用いることができる。したがって、上記の実施の形態が例示のために記載されたこと、および、本発明がこれまでに具体的に示され記載されたものに限定されないこと、が適正に評価されるはずである。むしろ、本発明の範囲は、これまでに記載されたさまざまな特徴の組み合わせおよび部分的な組み合わせの両方、および、上記の記載を読むことによって当業者が思いつくはずでありかつ従来技術には開示されていない、さまざまな特徴の変形および変更を含む。
【0044】
[実施の態様]
この発明の具体的な実施態様は以下の通りである。
(1)センサーの位置を追跡する方法であって、
前記センサーの近傍に周期的な磁界を生み出す過程であって、前記磁界が、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する、磁界を生み出す過程と、
前記正および負の極性の相の各々の間に前記センサーでの前記磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出す過程と、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記センサーの前記位置を求める過程と、
を具備する、センサーの位置を追跡する方法。
(2)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
前記センサーが、患者の体内に植え込まれている、
センサーの位置を追跡する方法。
(3)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
前記センサーが、患者の治療に用いられる医療用器具に結合されている、
センサーの位置を追跡する方法。
(4)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
前記正および負の極性の相の各々が、少なくとも10ミリ秒の期間に亘って一定である、
センサーの位置を追跡する方法。
(5)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
前記正の振幅が前記負の振幅と等しい、
センサーの位置を追跡する方法。
(6)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
センサーの位置を求める前記過程が、前記第1および第2の磁界測定信号に論理演算を実行することを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
(7)前記実施態様(6)に記載の方法であって、
前記論理演算の実行が、前記第1および第2の磁界測定信号を加算して、位置信号を生み出すことを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
(8)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
前記第1および第2の磁界測定信号が、過渡期間を含み、
第1および第2の磁界測定信号を生み出す前記過程が、前記過渡期間の外側で前記測定信号を生み出すことを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
(9)前記実施態様(1)に記載の方法であって、
周期的な磁界を生み出す前記過程が、2つ以上の異なる対応する位置で生み出された2つ以上の周期的な磁界を多重化することを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
(10)位置トランスデューサの位置を追跡する方法であって、
対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する周期的な磁界を生み出すように前記位置トランスデューサを作動させる過程と、
前記正および負の極性の相の各々の間に、既知の位置での前記磁界を検出して、前記検出された磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出す過程と、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記位置トランスデューサの前記位置を求める過程と
を具備する、
位置トランスデューサの位置を追跡する方法。
【0045】
(11)物体の位置を追跡する装置であって、
前記物体の近傍に周期的な磁界を生み出すように準備された少なくとも一つの位置パッドであって、前記磁界が、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する、少なくとも一つの位置パッドと、
前記物体に取り付けられ、前記正および負の極性の相の各々の間に前記磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出すように準備された、位置センサーと、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記センサーの位置を求めるように準備されたプロセッサと
を具備する、
物体の位置を追跡する装置。
(12)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記センサーが、患者の体内に植え込まれている、
物体の位置を追跡する装置。
(13)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記センサーが。患者を治療するために用いられる医療用器具に結合されている、
物体の位置を追跡する装置。
(14)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記正および負の極性の相の各々が、少なくとも10ミリ秒の期間に亘って一定である、
物体の位置を追跡する装置。
(15)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記正の振幅が、前記負の振幅と等しい、
物体の位置を追跡する装置。
(16)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記プロセッサが、前記第1および第2の磁界測定信号に論理演算を実行することによって、前記センサーの位置を求めるように適合されている、
物体の位置を追跡する装置。
(17)前記実施態様(16)に記載の装置であって、
前記論理演算が、前記第1および第2の磁界測定信号を加算して、位置信号を生み出すことを含む、
物体の位置を追跡する装置。
(18)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記第1および第2の磁界測定信号が、過渡期間を含み、
前記プロセッサが、前記過渡期間の外側で前記磁界測定信号を測定するように適合されている、
物体の位置を追跡する装置。
(19)前記実施態様(11)に記載の装置であって、
前記少なくとも一つの位置パッドが、2つ以上の異なる対応する位置の複数の位置パッドを含み、
前記複数の位置パッドが、2つ以上の周期的な磁界を生み出すように多重化されている、
物体の位置を追跡する装置。
(20)物体の位置を追跡する装置であって、
前記物体に結合され、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する周期的な磁界を生み出すように準備された、磁界発生器と、
前記正および負の極性の相の各々の間に前記磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出すように準備された、位置パッドと、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記センサーの前記位置を求めるように準備された、プロセッサと
を具備する、
物体の位置を追跡する装置。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のある実施の形態に基づく、磁気的位置追跡システムの模式的な絵図である。
【図2】本発明のある実施の形態に基づくセンサーユニットを模式的に示したブロック図である。
【図3A】本発明のある実施の形態に基づく磁界強度を模式的に示した信号図である。
【図3B】本発明のある実施の形態に基づく検出された磁界を模式的に示した信号図である。
【図4】本発明のある実施の形態に基づく位置検出の方法を模式的に示したフロー図である。
【符号の説明】
【0047】
20 磁気的位置および姿勢追跡システム
22 外科医
26 患者
28 医療用ツール
32 位置パッド
34 センサーユニット
36 コンソール
37 コンピュータ
38 ディスプレイ
40 位置センサー
42 制御回路
44 送信コイル
46 電源ユニット
50 曲線
52 曲線
54 過渡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーの位置を追跡する方法であって、
前記センサーの近傍に周期的な磁界を生み出す過程であって、前記磁界が、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する、磁界を生み出す過程と、
前記正および負の極性の相の各々の間に前記センサーでの前記磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出す過程と、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記センサーの前記位置を求める過程と、
を具備する、センサーの位置を追跡する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記センサーが、患者の体内に植え込まれている、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記センサーが、患者の治療に用いられる医療用器具に結合されている、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記正および負の極性の相の各々が、少なくとも10ミリ秒の期間に亘って一定である、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記正の振幅が前記負の振幅と等しい、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
センサーの位置を求める前記過程が、前記第1および第2の磁界測定信号に論理演算を実行することを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記論理演算の実行が、前記第1および第2の磁界測定信号を加算して、位置信号を生み出すことを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1および第2の磁界測定信号が、過渡期間を含み、
第1および第2の磁界測定信号を生み出す前記過程が、前記過渡期間の外側で前記測定信号を生み出すことを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
周期的な磁界を生み出す前記過程が、2つ以上の異なる対応する位置で生み出された2つ以上の周期的な磁界を多重化することを含む、
センサーの位置を追跡する方法。
【請求項10】
位置トランスデューサの位置を追跡する方法であって、
対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する周期的な磁界を生み出すように前記位置トランスデューサを作動させる過程と、
前記正および負の極性の相の各々の間に、既知の位置での前記磁界を検出して、前記検出された磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出す過程と、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記位置トランスデューサの前記位置を求める過程と
を具備する、
位置トランスデューサの位置を追跡する方法。
【請求項11】
物体の位置を追跡する装置であって、
前記物体の近傍に周期的な磁界を生み出すように準備された少なくとも一つの位置パッドであって、前記磁界が、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する、少なくとも一つの位置パッドと、
前記物体に取り付けられ、前記正および負の極性の相の各々の間に前記磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出すように準備された、位置センサーと、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記センサーの位置を求めるように準備されたプロセッサと
を具備する、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
前記センサーが、患者の体内に植え込まれている、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置であって、
前記センサーが。患者を治療するために用いられる医療用器具に結合されている、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置であって、
前記正および負の極性の相の各々が、少なくとも10ミリ秒の期間に亘って一定である、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置であって、
前記正の振幅が、前記負の振幅と等しい、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項16】
請求項11に記載の装置であって、
前記プロセッサが、前記第1および第2の磁界測定信号に論理演算を実行することによって、前記センサーの位置を求めるように適合されている、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、
前記論理演算が、前記第1および第2の磁界測定信号を加算して、位置信号を生み出すことを含む、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項18】
請求項11に記載の装置であって、
前記第1および第2の磁界測定信号が、過渡期間を含み、
前記プロセッサが、前記過渡期間の外側で前記磁界測定信号を測定するように適合されている、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項19】
請求項11に記載の装置であって、
前記少なくとも一つの位置パッドが、2つ以上の異なる対応する位置の複数の位置パッドを含み、
前記複数の位置パッドが、2つ以上の周期的な磁界を生み出すように多重化されている、
物体の位置を追跡する装置。
【請求項20】
物体の位置を追跡する装置であって、
前記物体に結合され、対応する正および負の一定の振幅を備えた正の極性の相および負の極性の相を有する周期的な磁界を生み出すように準備された、磁界発生器と、
前記正および負の極性の相の各々の間に前記磁界に応答して第1および第2の磁界測定信号を生み出すように準備された、位置パッドと、
前記第1および第2の磁界測定信号に応答して前記センサーの前記位置を求めるように準備された、プロセッサと
を具備する、
物体の位置を追跡する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−346443(P2006−346443A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−135518(P2006−135518)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】