溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法
【課題】 高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を提供する。
【解決手段】 溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、軸Axと向かい合う軸受面の中心に設けられた貫通孔11aと、軸受面に設けられた複数の溝部12dと、を備えており、複数の溝部12dは、それぞれ、貫通孔11aから離隔した位置から始まり、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部12d1と、第一溝部12d1の外側端部と連通し、外側に向かうにつれて周方向の他方に向かって延び、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外側面に開放される第二溝部12d2と、を備えている。
【解決手段】 溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、軸Axと向かい合う軸受面の中心に設けられた貫通孔11aと、軸受面に設けられた複数の溝部12dと、を備えており、複数の溝部12dは、それぞれ、貫通孔11aから離隔した位置から始まり、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部12d1と、第一溝部12d1の外側端部と連通し、外側に向かうにつれて周方向の他方に向かって延び、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外側面に開放される第二溝部12d2と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動圧スラスト気体軸受およびその製造方法に係り、特に軸受面に複数の溝が設けられた溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、溝付き動圧スラスト気体軸受は、軸受面に溝部が設けられた動圧スラスト気体軸受であり、静粛、低振動、メンテナンスフリーなどの特徴を有することに加え、気体を潤滑剤として利用し、潤滑油が不要であることから、環境負荷が極めて低い点でも有用である。
このような理由から、溝付き動圧スラスト気体軸受は、主に室内で使用される情報関連機器、OA機器などの支持要素として広く用いられている。
【0003】
かかる溝付き動圧スラスト気体軸受の設計に際して、外乱などの振動要因に対応するために、軸受すきまを形成する気体潤滑膜の剛性、すなわち軸受剛性を高めることが要求される。
かかる要求に対して、ヘリングボーン形状の溝が設けられた溝付き動圧スラスト軸受の特性を解析し、ヘリングボーン形状の溝部の最適化を行う手法およびかかる手法により最適化された溝付き動圧スラスト軸受が開示されている(非特許文献1,2参照)。
【非特許文献1】橋本 巨、落合 成行,「高速スラスト気体軸受の特性解析と最適設計(第1報,静・動特性解析とその実験的検証)」,日本機械学会論文集(C編),社団法人 日本機械学会,2006年4月,72巻,716号
【非特許文献2】橋本 巨、落合 成行,難波 唯志,「高速スラスト気体軸受の特性解析と最適設計(第2報,最適設計問題への適用)」,日本機械学会論文集(C編),社団法人 日本機械学会,2006年4月,72巻,716号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法により最適化された溝付き動圧スラスト気体軸受は、軸受剛性の飛躍的な向上には至っておらず、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、前記した事情を鑑みて創案されたものであり、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受であって、前記複数の溝部は、それぞれ、前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部と、前記第一溝部の外側端部と連通し、外側に向かうにつれて周方向の他方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される第二溝部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、第一溝部ではステップ効果により正圧が発生し、第二溝部では逆ステップ効果により負圧が発生する。したがって、高い軸受剛性を実現することができる。
【0008】
また、前記周方向の一方は、軸受の回転方向とは逆方向であることが望ましい。
【0009】
また、前記第一溝部と前記第二溝部との連結部である折れ曲がり部の当該溝付き動圧スラスト気体軸受の中心からの距離lと、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外径r1との比l/r1が、0.80≦l/r1≦0.95を満たすことが望ましい。
【0010】
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を提供することができる。
【0011】
また、前記第一溝部と前記第二溝部とがなす折れ曲がり角度Ψが、Ψ≧90°を満たすことが望ましい。
【0012】
また、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における前記複数の溝部の幅の合計をb1、複数のランド部の幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9を満たすことが望ましい。
【0013】
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を提供することができる。
【0014】
また、前記複数の溝部の深さhgが、10[μm]≦hg≦30[μm]を満たすことが望ましい。
【0015】
また、前記複数の溝部の数Nが、8≦N≦18を満たすことが望ましい。
【0016】
また、前記軸受面の中心から前記複数の溝部の内端までの長さをrs、前記軸受面の半径をr1としたとき、これらの比であるシール径比Rs(=rs/r1)が、0.45≦Rs≦0.70を満たすことが望ましい。
【0017】
また、前記課題を解決するため、請求項9に記載の発明は、制御装置および加工装置による、軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受の製造方法であって、前記制御装置が、前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される複数の仮想螺旋溝部を設定するステップと、前記制御装置が、前記仮想螺旋溝部を当該溝付き動圧スラスト気体軸受の半径方向に分割し、分割節点を半径を固定したまま周方向に移動させることにより前記仮想螺旋溝部の形状を変形させ、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状を算出するステップと、前記制御装置が、前記加工装置を制御することにより、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状に基づいて、前記複数の溝部を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によると、螺旋(スパイラル)溝付き動圧スラスト気体軸受の溝部形状を進化させ、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図1(a)における斜線部分は溝を表している。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、略円盤形状の部材であり、貫通孔11aが形成された内周部11と、複数の溝12dが形成された外周部12と、を備えている。
【0022】
内周部11は、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの内側の略円盤形状部分であり、その中央には、貫通孔11aが形成されている。
貫通孔11aは、内周部11の中央に設けられた平面視円形の孔であり、内周部11の軸受面(軸Axと対向する面)から軸受面の反対側の面まで貫通している。
なお、貫通孔11aは省略可能である。
【0023】
外周部12は、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの内周部11を囲む部分であり、その軸受面には、複数の溝部12dが形成されている。
複数の溝部12dは、外周部12の軸受面に形成されている。
複数の溝部12dは、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外側面に開放されており、貫通孔11aとは連通していない。すなわち、複数の溝部12dは、貫通孔11aと離隔している。また、複数の溝12dは、その中間部に折れ曲がり部12d3を有している。
複数の溝部12dは、内側から順に、貫通孔11aと離隔した位置から始まり、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部12d1と、折れ曲がり部12d3において第一溝部12d1と接続され、外側に向かうにつれて周方向の他方へ向かって延びる第二溝部12d2と、から構成されている。
【0024】
内周部11の軸受面と、外周部12の軸受面における複数の溝部12dが形成されていない部分(複数のランド部12e)とは、面一である。
【0025】
かかる構成によると、第一溝部12d1ではステップ効果により正圧が発生し、第二溝部12d2では逆ステップ効果により負圧が発生する。したがって、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、高い軸受剛性を実現することができる。
【0026】
また、第一溝部12d1と第二溝部12d2との連結部である折れ曲がり部12d3の溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの中心からの距離lと、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外径r1との比l/r1が、下記式(1)を満たすことが望ましい。
0.80≦l/r1≦0.95 …式(1)
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを提供することができる。
【0027】
また、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外周における複数の溝部12dの幅の合計をb1、複数のランド部12eの幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、下記式(2)を満たすことが望ましい。
0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9 …式(2)
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを提供することができる。
【0028】
(製造方法)
続いて、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の製造装置(以下、「軸受製造装置」と記載する。)を示すブロック図である。図3は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(r,θ)座標系による図、(b)は(ξ,η)座標系による図である。図4は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(ξ,η)座標系による図,(b)は(a)の部分拡大図であり、コントロールボリュームを説明するための図である。図5は、仮想螺旋溝部の変形を説明するための図であり、(a)は変形前の仮想螺旋溝部を示す模式図、(b)は変形後の仮想螺旋溝部を示す模式図である。
図2に示すように、本発明の実施形態に係る軸受製造装置20は、入力装置21と、制御装置22と、軸受加工装置23と、を備えている。
【0029】
入力装置21は、例えば、キーボードであり、利用者により、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの製造に必要な与条件を入力するためのものである。
与条件としては、例えば軸荷重、軸回転数、軸受内半径r2、流入角βなどが挙げられる。
入力された与条件は、制御装置22に出力される。
【0030】
制御装置22は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、入力装置21から入力された与条件と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を行うことによって、後記する各種制御を実行する。
【0031】
軸受加工装置23は、制御装置22の制御により、軸受前駆体の軸受面に複数の溝部12dを加工し、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを製造する。
【0032】
ここで、制御装置22は、機能部として、記憶部22aと、仮想螺旋溝部設定部22bと、変形仮想螺旋溝部算出部22cと、軸受加工装置駆動部22dと、を備えている。
【0033】
記憶部22aは、入力装置21から入力された与条件を記憶する。
【0034】
仮想螺旋溝部設定部22bは、記憶部22aに記憶された与条件(軸受内半径r2、流入角βなど)に基づいて、基本形状(溝形状の最適設計の出発点)となる仮想螺旋溝部の溝形状を設定する。
仮想螺旋溝部の溝形状は、従来の溝付き動圧スラスト気体軸受におけるスパイラル型の溝形状と同一であり、下記式(3)(4)により表される。
θ=(1/a)・log(r/r2) …式(3)
a=cot{(90−β)π/180} …式(4)
ここで、rは径方向座標、θは円周方向座標である。
【0035】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、関数の柔軟さと扱いやすさを考慮して、仮想螺旋溝部の溝形状を3次スプライン関数を用いて表す。
すなわち、変形仮想螺旋溝部算出部22cは、仮想螺旋溝部を適当な区間でr方向に等分割し、fi=f(ri)とすることで、スプライン補間関数s(r)を得る。
スプライン補間関数s(r)は、下記式(5)により表される。
s(r)=Mi(ri+1−r)3/(6Δr)+Mi(r−ri)3/(6Δr)
+(θi−MiΔr2/6)(ri+1−r)/Δr
+(θi+1−Mi+1Δr2/6)(r−ri)/Δr …式(5)
ここで、ri,θiは、それぞれ、i番目の節点におけるスパイラル曲線のr座標、θ座標である。また、Δrはrの増分、すなわち、r方向の分割幅(rの等分割区間)であり、下記式(6)により表される。
Δr=ri+1−ri …式(6)
また、Miは、Δrとθの増分から決まる量、すなわち、ベクトルMの構成要素であり、下記式(7)により表される。
【数1】
ただし、式(8)〜(14)である。
【数2】
ιi=1/2 (i=2,3,…n) …式(11)
κi=1−ιi (i=1,2,…n−1) …式(12)
λi=(θi+1−θi)/Δr (i=1,2,…n−1) …式(13)
νi=3(λi−λi−1)/Δr (i=2,3,…n) …式(14)
すなわち、変形仮想螺旋溝部算出部22cは、式(5)を用いて軸受面の全区間におけるスプライン関数を求めることにより、任意の溝形状を表すことができる。
【0036】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、節点pi(ri,θi)のr座標を固定し、θ座標を正または負方向に微小角度Δθiだけ変化させて新たな節点pi’(ri,θi+Δθi)を算出する。
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、新たな節点pi’(ri,θi+Δθi)と式(3)とを用いて変形された仮想螺旋溝部の溝形状を算出し、以下の最適化手法に従って仮想螺旋溝部の形状を変形・進化させる。
【0037】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、新たな仮想螺旋溝部の溝形状を、(r,θ)座標系から(ξ,η)座標系に変換し、軸の回転およびスクイーズ運動によってコントロールボリューム内に流入出する気体の質量流量の連続性から、レイノルズ相当式を得る。
ここで、(ξ,η)座標系は、溝形状の座標に倣った座標系である。図3に示すように、(r,θ)座標系では複雑な溝形状であっても、(ξ,η)座標系に変換することにより、扇形の簡単な形状で表現することができる。すなわち、ξ,ηは、それぞれ境界適合座標系に基づいた変換座標である。
(ξ,η)座標系において、変換に用いられる関数は溝形状によって異なり、スパイラルグルーブ軸受の場合には、下記式(15)(16)が用いられる。
ξ=r …式(15)
η=θ−ln(r/rs)/tanβ …式(16)
本発明では、下記式(17)(18)が用いられる。
ξ=r …式(17)
η=θ−[Mi(ri+1−r)3/(6Δr)+Mi(r−ri)3/(6Δr)
+(θi−MiΔr2/6)(ri+1−r)/Δr
+(θi+1−Mi+1Δr2/6)(r−ri)/Δr] …式(18)
なお、コントロールボリュームCVとは、図4に示すように、軸受面内の微小領域を表したものである。
レイノルズ相当式は、下記式(17)により表される。
Qξ2I+Qξ1III−Qξ2II−Qξ2IV+Qη2I+Qη1II−Qη2III−Qη1IV=QV …式(19)
【0038】
さらに、軸と軸受との隙間(軸受隙間)hおよび圧力pの微小変動を仮定し、これらの物理量を下記式(20)(21)により表す。
【数3】
ここで、tは時刻であり、ωfは軸方向の角振動数であり、Qξ,Qηは、それぞれξ,η方向の単位幅当りの気体の質量流量であり、軸受隙間hと圧力pとの関数である。Qξ,Qηは、下記式(22)〜(38)により表される。
【数4】
【0039】
ここで、ρは、空気潤滑膜(気体潤滑膜)の密度である。
またμは、空気潤滑膜の粘度である。
また、ωsは、軸の角速度である。
また、ξ1,ξ2は、それぞれ積分変数ξの下限および上限であり、η1,η2は、それぞれ積分変数ηの下限および上限である。
【0040】
たとえば、Qξ2Iは、コントロールボリュームCVの領域I(i−,j−)に矢印方向に流入する質量流量であり、Qη2Iは、コントロールボリュームCVの領域I(i−,j−)に矢印方向に流入する質量流量である。QVは、コントロールボリュームCV全体における気体の質量流量である。
また、h0は定常状態の軸受隙間を表す。また、p0は定常状態の圧力(空気潤滑膜圧力の静的成分)を表す。すなわち、軸が振動していない場合には、軸受隙間h=h0、圧力p=p0である。
また、εは気体潤滑膜厚の微小振動振幅を表す。
また、ptは、軸受の動特性を解析する際に便宜的に用いられるものであり、複素数として与えられるものであり、一般的に、動的な圧力成分(空気潤滑膜圧力の動的成分)などと呼ばれている。ptに物理的な意味はないが、ptの実数部の分布を軸受面全体に渡って積分したものが弾性係数(軸受剛性)に相当し、ptの虚数部の分布を軸受面全体に渡って積分したものが減衰係数に相当する。このことは軸受の動特性解析を行う一般的な方法として知られている。
【0041】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、式(20)(21)を式(19)に代入してニュートンラフソン法を用いて数値的に順次解くことにより、圧力分布を算出する。
そして、変形仮想螺旋溝部算出部22cは、かかる圧力分布に基づいて、気体潤滑膜の弾性係数、すなわち、軸受剛性を算出する。
【0042】
ここで、スプライン補間における仮想螺旋溝部の分割数は、近似の精度、計算時間などを考慮して4分割(節点5)とする。
ここで、最も内側の節点p0(r0,θ0)は、内周部11と重なるため、変化させる節点は4つ(節点p1〜p4)とする。
これにより、設計変数ベクトルXが、θ方向の更新される4つの増分(i番目の節点におけるθ方向の変化量)Δθi(i=1〜4)を要素とし、下記式(39)により定義される。
X=(Δθ1,Δθ2,Δθ3,Δθ4) …式(39)
【0043】
一方、設計変数および状態量に課せられる制約条件は、下記式(40)とする。
gi(X)≧0(i=1〜9) …式(40)
【0044】
制約関数gi(X)(i=1〜2n+2、ここでは、i=1〜10)は、下記式(24)〜(33)により表される。
g1(X)=Δθ1−θ1min …式(41)
g2(X)=Δθ1max−Δθ1 …式(42)
g3(X)=Δθ2−θ2min …式(43)
g4(X)=Δθ2max−Δθ2 …式(44)
g5(X)=Δθ3−θ3min …式(45)
g6(X)=Δθ3max−Δθ3 …式(46)
g7(X)=Δθ4−θ4min …式(47)
g8(X)=Δθ4max−Δθ4 …式(48)
g9(X)=hr−hrmin …式(49)
g10(X)=c …式(50)
ここで、hrは空気潤滑膜厚さ(気体潤滑膜厚さ)であり、hrminはhrの最小値であり、cは軸受の減衰係数(空気潤滑膜の減衰係数)である。また、添え字のmax,minは、それぞれ状態量の最大値および最小値であることを表す。なお、軸受隙間hは、軸受の溝部(溝の底部)から軸までの間隔(hgとhrの合計)とhrを一般化したものである。
ここで、軸受剛性(空気潤滑膜の弾性係数)kの最大化を図るため、目的関数f(X)を下記式(51)により定義する。
f(X)=k …式(51)
すなわち、制約条件gi(X)において、f(X)が最大となるXを探索する。
【0045】
本実施形態では、f(X)が最大となるXを探索するにあたり、格子探索と逐次2次計画法(SQP)とを組み合わせたハイブリッド法を用いる。詳細には、まず、設計変数の許容範囲内に対して広域的な格子探索を行い、局所最適解の候補を絞り込む。
続いて、絞り込んだ局所最適解の候補を試行値として、SQPにより最適解を求める。
最適解が複数ある場合には、目的関数f(X)が最大となるものを大域的最適解として選択する。
【0046】
かかる構成によると、螺旋(スパイラル)溝付き動圧スラスト気体軸受の溝形状を進化させ、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を製造することができる。
【実施例】
【0047】
続いて、本発明の実施例について、計算例と実験例とについて説明する。
計算例において、溝付き動圧スラスト軸受の与条件を表1に示す。表1において、溝幅比αは、溝付き動圧スラスト気体軸受けの外周における複数の溝部12dの割合の値であり、外周溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における複数の溝部12dの幅の合計をb1、複数のランド部12eの幅の合計をb2としたとき、下記式(52)により表される。
α=b1/(b1+b2) …式(52)
また、溝の角度βは、与条件、すなわち、最適化前の螺旋(スパイラル)溝付き動圧スラスト気体軸受における溝の流入角(溝の外端と軸受の外周部とがなす角)である。
【0048】
【表1】
【0049】
また、制約条件を下記式(53)〜(55)のように設定した。
Δθimin=−π (i=1〜4) …式(53)
Δθimax=π (i=1〜4) …式(54)
hrmin=5.0[μm] …式(55)
【0050】
4つの設計変数に対して許容設計範囲内で広域的な格子探索を実行した結果、軸受剛性が最大となるのは、概ね設計変数Δθ3が最大値Δθ3max、他の3つの設計変数Δθ1,Δθ2,Δθ4がそれぞれ最小値Δθ1min,Δθ2min,Δθ4minのときであることから、試行値としてこれらの値Δθ1min,Δθ2min,Δθ3max,Δθ4minを用いることにした。
【0051】
図6は、溝付き動圧スラスト気体軸受の形状を説明するための模式図であり、(a)は基本形状のスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(b)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受に至るまでの途中経過の溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(c)および(d)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図である。図6における斜線部分は溝を表している。
図6(a)に示すように、スパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受10Aは、複数のスパイラル溝部12aを備えている。
図6(b)に示すように、溝付き動圧スラスト気体軸受10Bは、複数の溝部12bを備えている。
図6(c)に示すように、溝付き動圧スラスト気体軸受10Cは、軸回転数40000[rpm]で最適化された軸受の一例であり、複数の溝部12cを備えている。
図6(d)に示すように、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、軸回転数40000[rpm]で最適化された軸受の一例である。なお、軸回転数50000,60000[rpm]で最適化された軸受を、それぞれ溝付き動圧スラスト気体軸受10E,10Fとする。
【0052】
図6(c)に示すように、第一溝部12c1と第二溝部12c2とがなす折れ曲がり角度Ψは、下記式(56)を満たすことが望ましい。
Ψ≧90° …式(56)
また、角度Ψは、下記式(57)を満たすことがより望ましい。
90°≦Ψ<180° …式(57)
この条件は、図6(d)に示す溝付き動圧スラスト気体軸受10Dも満たしている。
折れ曲がり角度Ψを90°以上とすることで、弾性係数kが大幅に上昇し、軸受の最適化が実現される。
【0053】
図7は、軸受の剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。
図7(a)に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10D,10E,10Fは、すべての軸回転数領域で剛性すなわち弾性係数kが最も大きいことがわかる。
また、溝付き動圧スラスト気体軸受10D,10E,10Fの軸受剛性はほぼ同程度の値であることから、ある特定の軸回転数において最適化された溝付き動圧スラスト気体軸受は、それ以外の広範囲の軸回転数領域においても有用である。
また、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Cも、従来のスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受10Aと比べて高い軸受剛性を示すことがわかる。
【0054】
ここで、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の効果を実験的に検証するため、設計与条件を軸荷重14.7[N]、軸回転数を40000[rpm]として溝付き動圧スラスト気体軸受を製造した。さらに、かかる溝付き動圧スラスト気体軸受の諸特性を測定し、計算結果との比較を行った。
【0055】
図8は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の諸特性を測定するための測定装置を示す図である。
図8に示すように、測定装置30は、空気バネ式除振台31と、高周波モータ32と、回転軸33と、ステータ34と、テンションゲージ35と、インパルスハンマ36と、マイクロメータ37を備えている。
空気バネ式除振台31は、測定における外乱の影響を除去するためのものであり、測定装置30の他の各構成は、空気バネ除振台31の上に設置されている。
高周波モータ32は、回転軸33を回転させる。
回転軸33は、ステータ34と対向しており、高周波モータ32により回転駆動される。
ステータ34は、軸受を保持する部材であり、ステータ34のラジアル方向の支持には、静圧空気軸受が使用されている。かかる構成により、摩擦の無い状態での軸方向の1自由度運動を軸受に対して実現している。軸受は、ステータ34下部にアタッチメントを介して設置される。
テンションゲージ35は、摩擦トルクを測定するためのものである。
インパルスハンマ36は、剛性すなわち弾性係数を測定するためのものである。
マイクロメータ37は、装置の回転開始時および回転停止時に軸受面が接触するのを防止するためのものであり、その下部にステータ34が吊るされている。マイクロメータ37は、回転開始時および回転停止時にステータ34を所定高さに吊るし、所定の回転数に達した後にステータ34を徐々に下ろすように構成されている。
なお、気体膜厚を測定するためのセンサとして、図示しないEddy-current proximity probe(エミック(株)製 S-5021C)を使用するとともに、かかるセンサへの温度の影響を、図示しない温度センサにより補正した。
【0056】
なお、測定装置30により、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受と、基本形状として採用したスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受と、ポケット軸受と、の諸特性を測定した。
なお、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受として、軸荷重14.7[N]、軸回転数40000[rpm]として最適化されたものを使用した。
実験は、ステータ34の軸荷重を14.7[N]として、軸回転数を36000〜40000[rpm]の範囲で1000[rpm]ごとに設定し、軸受剛性(弾性係数k)、気体膜厚および摩擦トルクをそれぞれ10回ずつ測定した。
【0057】
図9は、軸受剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。図中の線は計算結果を、プロットは実験による測定結果を、それぞれ示している。
図9(a)に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、いずれの軸回転数においても軸受剛性すなわち弾性係数kが最も大きい。
また、図9(b)に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、その空気潤滑膜厚さhrが許容膜厚(hrmin=5.0[μm])を十分に上回っている。
したがって、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の有用性が確認された。
【0058】
(圧力分布)
図10は、軸受けの形状と圧力分布との関係を示す図であり、(a)はスパイラルグルーブ軸受の形状と圧力分布を示し、(b)はヘリングボーン軸受けの形状と圧力分布を示し、(c)は本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の形状と圧力分布を示す。図10における圧力分布は、上が正圧、下が負圧である。図10(c)に示すように、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、第一溝部12d1ではステップ効果により正圧が発生し、第二溝部12d2では逆ステップ効果により負圧が発生する。したがって、高い軸受剛性を実現することができる。
【0059】
(設計緒元と弾性係数との関係)
図11は、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受における設計緒元と弾性係数との関係を示す図であり、(a)は溝深さhgと溝幅比b1/(b1+b2)と弾性係数kとの関係を示すグラフ、(b)はシール径比Rsと溝数Nと弾性係数kとの関係を示すグラフである。
【0060】
図11(a)(b)に示すように、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における複数の溝部の幅の合計をb1、複数のランド部の幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、下記式(2)を満たすことが望ましい。
0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9 …式(2)
【0061】
また、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、複数の溝部の深さhgが、下記式(58)を満たすことが望ましい。
10[μm]≦hg≦30[μm] …式(58)
【0062】
また、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、複数の溝部の数Nが、下記式(59)を満たすことが望ましい。
8≦N≦18 …式(59)
【0063】
また、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、軸受面の中心から前記複数の溝部の内端までの長さ(シール径)をrs、前記軸受面の半径(軸受外半径)をr1としたとき、これらの比であるシール径比Rs(=rs/r1)が、下記式(60)を満たすことが望ましい。
0.45≦Rs≦0.70 …式(60)
【0064】
(最適化計算例)
また、荷重条件、回転数などを変更して最適化計算を実施した結果を表2に示す。
【表2】
ここで、内径(軸受内半径)r2は、貫通孔11aの径である(図1参照)。また、各ケースに共通の設計諸元を下記式(61)〜(64)に示す。
hg=20[μm] …式(61)
Rs=0.58 …式(62)
b1/(b1+b2)=0.636 …式(63)
β=16[度] …式(64)
【0065】
表2に示すように、第一溝部12d1と第二溝部12d2との連結部である折れ曲がり部12d3の溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの中心からの距離lと、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外径r1との比l/r1が、下記式(1)を満たすことが望ましい。
0.80≦l/r1≦0.95 …式(1)
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを提供することができる。
【0066】
例えば、ケース1において、折れ曲がり位置をl/r1=0.779とした場合の軸受剛性を計算すると、k=4882200[N/m]となり、ケース1の軸受の軸受剛性k=14967000[N/m]の1/3程度の軸受剛性しか得られない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の製造装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(r,θ)座標系による図、(b)は(ξ,η)座標系による図である。
【図4】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(ξ,η)座標系による図,(b)は(a)の部分拡大図であり、コントロールボリュームを説明するための図である。
【図5】仮想螺旋溝部の変形を説明するための図であり、(a)は変形前の仮想螺旋溝部を示す模式図、(b)は変形後の仮想螺旋溝を示す模式図である。
【図6】溝付き動圧スラスト気体軸受の形状を説明するための模式図であり、(a)は基本形状のスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(b)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受に至るまでの途中経過の溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(c)および(d)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図である。
【図7】軸受の剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の諸特性を測定するための測定装置を示す図である。
【図9】軸受剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。
【図10】軸受けの形状と圧力分布との関係を示す図であり、(a)はスパイラルグルーブ軸受の形状と圧力分布を示し、(b)はヘリングボーン軸受けの形状と圧力分布を示し、(c)は本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の形状と圧力分布を示す。
【図11】本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受における設計緒元と弾性係数との関係を示す図であり、(a)は溝深さhgと溝幅比b1/(b1+b2)と弾性係数kとの関係を示すグラフ、(b)はシール径比Rsと溝数Nと弾性係数kとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
10C,10D 溝付き動圧スラスト気体軸受
11a 貫通孔
12c,12d 溝部
12c1,12d1 第一溝部
12c2,12d2 第二溝部
20 溝付き動圧スラスト気体軸受の製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、動圧スラスト気体軸受およびその製造方法に係り、特に軸受面に複数の溝が設けられた溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、溝付き動圧スラスト気体軸受は、軸受面に溝部が設けられた動圧スラスト気体軸受であり、静粛、低振動、メンテナンスフリーなどの特徴を有することに加え、気体を潤滑剤として利用し、潤滑油が不要であることから、環境負荷が極めて低い点でも有用である。
このような理由から、溝付き動圧スラスト気体軸受は、主に室内で使用される情報関連機器、OA機器などの支持要素として広く用いられている。
【0003】
かかる溝付き動圧スラスト気体軸受の設計に際して、外乱などの振動要因に対応するために、軸受すきまを形成する気体潤滑膜の剛性、すなわち軸受剛性を高めることが要求される。
かかる要求に対して、ヘリングボーン形状の溝が設けられた溝付き動圧スラスト軸受の特性を解析し、ヘリングボーン形状の溝部の最適化を行う手法およびかかる手法により最適化された溝付き動圧スラスト軸受が開示されている(非特許文献1,2参照)。
【非特許文献1】橋本 巨、落合 成行,「高速スラスト気体軸受の特性解析と最適設計(第1報,静・動特性解析とその実験的検証)」,日本機械学会論文集(C編),社団法人 日本機械学会,2006年4月,72巻,716号
【非特許文献2】橋本 巨、落合 成行,難波 唯志,「高速スラスト気体軸受の特性解析と最適設計(第2報,最適設計問題への適用)」,日本機械学会論文集(C編),社団法人 日本機械学会,2006年4月,72巻,716号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法により最適化された溝付き動圧スラスト気体軸受は、軸受剛性の飛躍的な向上には至っておらず、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、前記した事情を鑑みて創案されたものであり、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受であって、前記複数の溝部は、それぞれ、前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部と、前記第一溝部の外側端部と連通し、外側に向かうにつれて周方向の他方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される第二溝部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によると、第一溝部ではステップ効果により正圧が発生し、第二溝部では逆ステップ効果により負圧が発生する。したがって、高い軸受剛性を実現することができる。
【0008】
また、前記周方向の一方は、軸受の回転方向とは逆方向であることが望ましい。
【0009】
また、前記第一溝部と前記第二溝部との連結部である折れ曲がり部の当該溝付き動圧スラスト気体軸受の中心からの距離lと、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外径r1との比l/r1が、0.80≦l/r1≦0.95を満たすことが望ましい。
【0010】
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を提供することができる。
【0011】
また、前記第一溝部と前記第二溝部とがなす折れ曲がり角度Ψが、Ψ≧90°を満たすことが望ましい。
【0012】
また、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における前記複数の溝部の幅の合計をb1、複数のランド部の幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9を満たすことが望ましい。
【0013】
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を提供することができる。
【0014】
また、前記複数の溝部の深さhgが、10[μm]≦hg≦30[μm]を満たすことが望ましい。
【0015】
また、前記複数の溝部の数Nが、8≦N≦18を満たすことが望ましい。
【0016】
また、前記軸受面の中心から前記複数の溝部の内端までの長さをrs、前記軸受面の半径をr1としたとき、これらの比であるシール径比Rs(=rs/r1)が、0.45≦Rs≦0.70を満たすことが望ましい。
【0017】
また、前記課題を解決するため、請求項9に記載の発明は、制御装置および加工装置による、軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受の製造方法であって、前記制御装置が、前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される複数の仮想螺旋溝部を設定するステップと、前記制御装置が、前記仮想螺旋溝部を当該溝付き動圧スラスト気体軸受の半径方向に分割し、分割節点を半径を固定したまま周方向に移動させることにより前記仮想螺旋溝部の形状を変形させ、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状を算出するステップと、前記制御装置が、前記加工装置を制御することにより、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状に基づいて、前記複数の溝部を形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
かかる構成によると、螺旋(スパイラル)溝付き動圧スラスト気体軸受の溝部形状を進化させ、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図1(a)における斜線部分は溝を表している。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、略円盤形状の部材であり、貫通孔11aが形成された内周部11と、複数の溝12dが形成された外周部12と、を備えている。
【0022】
内周部11は、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの内側の略円盤形状部分であり、その中央には、貫通孔11aが形成されている。
貫通孔11aは、内周部11の中央に設けられた平面視円形の孔であり、内周部11の軸受面(軸Axと対向する面)から軸受面の反対側の面まで貫通している。
なお、貫通孔11aは省略可能である。
【0023】
外周部12は、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの内周部11を囲む部分であり、その軸受面には、複数の溝部12dが形成されている。
複数の溝部12dは、外周部12の軸受面に形成されている。
複数の溝部12dは、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外側面に開放されており、貫通孔11aとは連通していない。すなわち、複数の溝部12dは、貫通孔11aと離隔している。また、複数の溝12dは、その中間部に折れ曲がり部12d3を有している。
複数の溝部12dは、内側から順に、貫通孔11aと離隔した位置から始まり、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部12d1と、折れ曲がり部12d3において第一溝部12d1と接続され、外側に向かうにつれて周方向の他方へ向かって延びる第二溝部12d2と、から構成されている。
【0024】
内周部11の軸受面と、外周部12の軸受面における複数の溝部12dが形成されていない部分(複数のランド部12e)とは、面一である。
【0025】
かかる構成によると、第一溝部12d1ではステップ効果により正圧が発生し、第二溝部12d2では逆ステップ効果により負圧が発生する。したがって、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、高い軸受剛性を実現することができる。
【0026】
また、第一溝部12d1と第二溝部12d2との連結部である折れ曲がり部12d3の溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの中心からの距離lと、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外径r1との比l/r1が、下記式(1)を満たすことが望ましい。
0.80≦l/r1≦0.95 …式(1)
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを提供することができる。
【0027】
また、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外周における複数の溝部12dの幅の合計をb1、複数のランド部12eの幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、下記式(2)を満たすことが望ましい。
0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9 …式(2)
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを提供することができる。
【0028】
(製造方法)
続いて、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の製造装置(以下、「軸受製造装置」と記載する。)を示すブロック図である。図3は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(r,θ)座標系による図、(b)は(ξ,η)座標系による図である。図4は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(ξ,η)座標系による図,(b)は(a)の部分拡大図であり、コントロールボリュームを説明するための図である。図5は、仮想螺旋溝部の変形を説明するための図であり、(a)は変形前の仮想螺旋溝部を示す模式図、(b)は変形後の仮想螺旋溝部を示す模式図である。
図2に示すように、本発明の実施形態に係る軸受製造装置20は、入力装置21と、制御装置22と、軸受加工装置23と、を備えている。
【0029】
入力装置21は、例えば、キーボードであり、利用者により、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの製造に必要な与条件を入力するためのものである。
与条件としては、例えば軸荷重、軸回転数、軸受内半径r2、流入角βなどが挙げられる。
入力された与条件は、制御装置22に出力される。
【0030】
制御装置22は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、入力装置21から入力された与条件と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を行うことによって、後記する各種制御を実行する。
【0031】
軸受加工装置23は、制御装置22の制御により、軸受前駆体の軸受面に複数の溝部12dを加工し、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを製造する。
【0032】
ここで、制御装置22は、機能部として、記憶部22aと、仮想螺旋溝部設定部22bと、変形仮想螺旋溝部算出部22cと、軸受加工装置駆動部22dと、を備えている。
【0033】
記憶部22aは、入力装置21から入力された与条件を記憶する。
【0034】
仮想螺旋溝部設定部22bは、記憶部22aに記憶された与条件(軸受内半径r2、流入角βなど)に基づいて、基本形状(溝形状の最適設計の出発点)となる仮想螺旋溝部の溝形状を設定する。
仮想螺旋溝部の溝形状は、従来の溝付き動圧スラスト気体軸受におけるスパイラル型の溝形状と同一であり、下記式(3)(4)により表される。
θ=(1/a)・log(r/r2) …式(3)
a=cot{(90−β)π/180} …式(4)
ここで、rは径方向座標、θは円周方向座標である。
【0035】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、関数の柔軟さと扱いやすさを考慮して、仮想螺旋溝部の溝形状を3次スプライン関数を用いて表す。
すなわち、変形仮想螺旋溝部算出部22cは、仮想螺旋溝部を適当な区間でr方向に等分割し、fi=f(ri)とすることで、スプライン補間関数s(r)を得る。
スプライン補間関数s(r)は、下記式(5)により表される。
s(r)=Mi(ri+1−r)3/(6Δr)+Mi(r−ri)3/(6Δr)
+(θi−MiΔr2/6)(ri+1−r)/Δr
+(θi+1−Mi+1Δr2/6)(r−ri)/Δr …式(5)
ここで、ri,θiは、それぞれ、i番目の節点におけるスパイラル曲線のr座標、θ座標である。また、Δrはrの増分、すなわち、r方向の分割幅(rの等分割区間)であり、下記式(6)により表される。
Δr=ri+1−ri …式(6)
また、Miは、Δrとθの増分から決まる量、すなわち、ベクトルMの構成要素であり、下記式(7)により表される。
【数1】
ただし、式(8)〜(14)である。
【数2】
ιi=1/2 (i=2,3,…n) …式(11)
κi=1−ιi (i=1,2,…n−1) …式(12)
λi=(θi+1−θi)/Δr (i=1,2,…n−1) …式(13)
νi=3(λi−λi−1)/Δr (i=2,3,…n) …式(14)
すなわち、変形仮想螺旋溝部算出部22cは、式(5)を用いて軸受面の全区間におけるスプライン関数を求めることにより、任意の溝形状を表すことができる。
【0036】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、節点pi(ri,θi)のr座標を固定し、θ座標を正または負方向に微小角度Δθiだけ変化させて新たな節点pi’(ri,θi+Δθi)を算出する。
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、新たな節点pi’(ri,θi+Δθi)と式(3)とを用いて変形された仮想螺旋溝部の溝形状を算出し、以下の最適化手法に従って仮想螺旋溝部の形状を変形・進化させる。
【0037】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、新たな仮想螺旋溝部の溝形状を、(r,θ)座標系から(ξ,η)座標系に変換し、軸の回転およびスクイーズ運動によってコントロールボリューム内に流入出する気体の質量流量の連続性から、レイノルズ相当式を得る。
ここで、(ξ,η)座標系は、溝形状の座標に倣った座標系である。図3に示すように、(r,θ)座標系では複雑な溝形状であっても、(ξ,η)座標系に変換することにより、扇形の簡単な形状で表現することができる。すなわち、ξ,ηは、それぞれ境界適合座標系に基づいた変換座標である。
(ξ,η)座標系において、変換に用いられる関数は溝形状によって異なり、スパイラルグルーブ軸受の場合には、下記式(15)(16)が用いられる。
ξ=r …式(15)
η=θ−ln(r/rs)/tanβ …式(16)
本発明では、下記式(17)(18)が用いられる。
ξ=r …式(17)
η=θ−[Mi(ri+1−r)3/(6Δr)+Mi(r−ri)3/(6Δr)
+(θi−MiΔr2/6)(ri+1−r)/Δr
+(θi+1−Mi+1Δr2/6)(r−ri)/Δr] …式(18)
なお、コントロールボリュームCVとは、図4に示すように、軸受面内の微小領域を表したものである。
レイノルズ相当式は、下記式(17)により表される。
Qξ2I+Qξ1III−Qξ2II−Qξ2IV+Qη2I+Qη1II−Qη2III−Qη1IV=QV …式(19)
【0038】
さらに、軸と軸受との隙間(軸受隙間)hおよび圧力pの微小変動を仮定し、これらの物理量を下記式(20)(21)により表す。
【数3】
ここで、tは時刻であり、ωfは軸方向の角振動数であり、Qξ,Qηは、それぞれξ,η方向の単位幅当りの気体の質量流量であり、軸受隙間hと圧力pとの関数である。Qξ,Qηは、下記式(22)〜(38)により表される。
【数4】
【0039】
ここで、ρは、空気潤滑膜(気体潤滑膜)の密度である。
またμは、空気潤滑膜の粘度である。
また、ωsは、軸の角速度である。
また、ξ1,ξ2は、それぞれ積分変数ξの下限および上限であり、η1,η2は、それぞれ積分変数ηの下限および上限である。
【0040】
たとえば、Qξ2Iは、コントロールボリュームCVの領域I(i−,j−)に矢印方向に流入する質量流量であり、Qη2Iは、コントロールボリュームCVの領域I(i−,j−)に矢印方向に流入する質量流量である。QVは、コントロールボリュームCV全体における気体の質量流量である。
また、h0は定常状態の軸受隙間を表す。また、p0は定常状態の圧力(空気潤滑膜圧力の静的成分)を表す。すなわち、軸が振動していない場合には、軸受隙間h=h0、圧力p=p0である。
また、εは気体潤滑膜厚の微小振動振幅を表す。
また、ptは、軸受の動特性を解析する際に便宜的に用いられるものであり、複素数として与えられるものであり、一般的に、動的な圧力成分(空気潤滑膜圧力の動的成分)などと呼ばれている。ptに物理的な意味はないが、ptの実数部の分布を軸受面全体に渡って積分したものが弾性係数(軸受剛性)に相当し、ptの虚数部の分布を軸受面全体に渡って積分したものが減衰係数に相当する。このことは軸受の動特性解析を行う一般的な方法として知られている。
【0041】
変形仮想螺旋溝部算出部22cは、式(20)(21)を式(19)に代入してニュートンラフソン法を用いて数値的に順次解くことにより、圧力分布を算出する。
そして、変形仮想螺旋溝部算出部22cは、かかる圧力分布に基づいて、気体潤滑膜の弾性係数、すなわち、軸受剛性を算出する。
【0042】
ここで、スプライン補間における仮想螺旋溝部の分割数は、近似の精度、計算時間などを考慮して4分割(節点5)とする。
ここで、最も内側の節点p0(r0,θ0)は、内周部11と重なるため、変化させる節点は4つ(節点p1〜p4)とする。
これにより、設計変数ベクトルXが、θ方向の更新される4つの増分(i番目の節点におけるθ方向の変化量)Δθi(i=1〜4)を要素とし、下記式(39)により定義される。
X=(Δθ1,Δθ2,Δθ3,Δθ4) …式(39)
【0043】
一方、設計変数および状態量に課せられる制約条件は、下記式(40)とする。
gi(X)≧0(i=1〜9) …式(40)
【0044】
制約関数gi(X)(i=1〜2n+2、ここでは、i=1〜10)は、下記式(24)〜(33)により表される。
g1(X)=Δθ1−θ1min …式(41)
g2(X)=Δθ1max−Δθ1 …式(42)
g3(X)=Δθ2−θ2min …式(43)
g4(X)=Δθ2max−Δθ2 …式(44)
g5(X)=Δθ3−θ3min …式(45)
g6(X)=Δθ3max−Δθ3 …式(46)
g7(X)=Δθ4−θ4min …式(47)
g8(X)=Δθ4max−Δθ4 …式(48)
g9(X)=hr−hrmin …式(49)
g10(X)=c …式(50)
ここで、hrは空気潤滑膜厚さ(気体潤滑膜厚さ)であり、hrminはhrの最小値であり、cは軸受の減衰係数(空気潤滑膜の減衰係数)である。また、添え字のmax,minは、それぞれ状態量の最大値および最小値であることを表す。なお、軸受隙間hは、軸受の溝部(溝の底部)から軸までの間隔(hgとhrの合計)とhrを一般化したものである。
ここで、軸受剛性(空気潤滑膜の弾性係数)kの最大化を図るため、目的関数f(X)を下記式(51)により定義する。
f(X)=k …式(51)
すなわち、制約条件gi(X)において、f(X)が最大となるXを探索する。
【0045】
本実施形態では、f(X)が最大となるXを探索するにあたり、格子探索と逐次2次計画法(SQP)とを組み合わせたハイブリッド法を用いる。詳細には、まず、設計変数の許容範囲内に対して広域的な格子探索を行い、局所最適解の候補を絞り込む。
続いて、絞り込んだ局所最適解の候補を試行値として、SQPにより最適解を求める。
最適解が複数ある場合には、目的関数f(X)が最大となるものを大域的最適解として選択する。
【0046】
かかる構成によると、螺旋(スパイラル)溝付き動圧スラスト気体軸受の溝形状を進化させ、高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受を製造することができる。
【実施例】
【0047】
続いて、本発明の実施例について、計算例と実験例とについて説明する。
計算例において、溝付き動圧スラスト軸受の与条件を表1に示す。表1において、溝幅比αは、溝付き動圧スラスト気体軸受けの外周における複数の溝部12dの割合の値であり、外周溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における複数の溝部12dの幅の合計をb1、複数のランド部12eの幅の合計をb2としたとき、下記式(52)により表される。
α=b1/(b1+b2) …式(52)
また、溝の角度βは、与条件、すなわち、最適化前の螺旋(スパイラル)溝付き動圧スラスト気体軸受における溝の流入角(溝の外端と軸受の外周部とがなす角)である。
【0048】
【表1】
【0049】
また、制約条件を下記式(53)〜(55)のように設定した。
Δθimin=−π (i=1〜4) …式(53)
Δθimax=π (i=1〜4) …式(54)
hrmin=5.0[μm] …式(55)
【0050】
4つの設計変数に対して許容設計範囲内で広域的な格子探索を実行した結果、軸受剛性が最大となるのは、概ね設計変数Δθ3が最大値Δθ3max、他の3つの設計変数Δθ1,Δθ2,Δθ4がそれぞれ最小値Δθ1min,Δθ2min,Δθ4minのときであることから、試行値としてこれらの値Δθ1min,Δθ2min,Δθ3max,Δθ4minを用いることにした。
【0051】
図6は、溝付き動圧スラスト気体軸受の形状を説明するための模式図であり、(a)は基本形状のスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(b)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受に至るまでの途中経過の溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(c)および(d)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図である。図6における斜線部分は溝を表している。
図6(a)に示すように、スパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受10Aは、複数のスパイラル溝部12aを備えている。
図6(b)に示すように、溝付き動圧スラスト気体軸受10Bは、複数の溝部12bを備えている。
図6(c)に示すように、溝付き動圧スラスト気体軸受10Cは、軸回転数40000[rpm]で最適化された軸受の一例であり、複数の溝部12cを備えている。
図6(d)に示すように、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、軸回転数40000[rpm]で最適化された軸受の一例である。なお、軸回転数50000,60000[rpm]で最適化された軸受を、それぞれ溝付き動圧スラスト気体軸受10E,10Fとする。
【0052】
図6(c)に示すように、第一溝部12c1と第二溝部12c2とがなす折れ曲がり角度Ψは、下記式(56)を満たすことが望ましい。
Ψ≧90° …式(56)
また、角度Ψは、下記式(57)を満たすことがより望ましい。
90°≦Ψ<180° …式(57)
この条件は、図6(d)に示す溝付き動圧スラスト気体軸受10Dも満たしている。
折れ曲がり角度Ψを90°以上とすることで、弾性係数kが大幅に上昇し、軸受の最適化が実現される。
【0053】
図7は、軸受の剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。
図7(a)に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10D,10E,10Fは、すべての軸回転数領域で剛性すなわち弾性係数kが最も大きいことがわかる。
また、溝付き動圧スラスト気体軸受10D,10E,10Fの軸受剛性はほぼ同程度の値であることから、ある特定の軸回転数において最適化された溝付き動圧スラスト気体軸受は、それ以外の広範囲の軸回転数領域においても有用である。
また、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Cも、従来のスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受10Aと比べて高い軸受剛性を示すことがわかる。
【0054】
ここで、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の効果を実験的に検証するため、設計与条件を軸荷重14.7[N]、軸回転数を40000[rpm]として溝付き動圧スラスト気体軸受を製造した。さらに、かかる溝付き動圧スラスト気体軸受の諸特性を測定し、計算結果との比較を行った。
【0055】
図8は、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の諸特性を測定するための測定装置を示す図である。
図8に示すように、測定装置30は、空気バネ式除振台31と、高周波モータ32と、回転軸33と、ステータ34と、テンションゲージ35と、インパルスハンマ36と、マイクロメータ37を備えている。
空気バネ式除振台31は、測定における外乱の影響を除去するためのものであり、測定装置30の他の各構成は、空気バネ除振台31の上に設置されている。
高周波モータ32は、回転軸33を回転させる。
回転軸33は、ステータ34と対向しており、高周波モータ32により回転駆動される。
ステータ34は、軸受を保持する部材であり、ステータ34のラジアル方向の支持には、静圧空気軸受が使用されている。かかる構成により、摩擦の無い状態での軸方向の1自由度運動を軸受に対して実現している。軸受は、ステータ34下部にアタッチメントを介して設置される。
テンションゲージ35は、摩擦トルクを測定するためのものである。
インパルスハンマ36は、剛性すなわち弾性係数を測定するためのものである。
マイクロメータ37は、装置の回転開始時および回転停止時に軸受面が接触するのを防止するためのものであり、その下部にステータ34が吊るされている。マイクロメータ37は、回転開始時および回転停止時にステータ34を所定高さに吊るし、所定の回転数に達した後にステータ34を徐々に下ろすように構成されている。
なお、気体膜厚を測定するためのセンサとして、図示しないEddy-current proximity probe(エミック(株)製 S-5021C)を使用するとともに、かかるセンサへの温度の影響を、図示しない温度センサにより補正した。
【0056】
なお、測定装置30により、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受と、基本形状として採用したスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受と、ポケット軸受と、の諸特性を測定した。
なお、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受として、軸荷重14.7[N]、軸回転数40000[rpm]として最適化されたものを使用した。
実験は、ステータ34の軸荷重を14.7[N]として、軸回転数を36000〜40000[rpm]の範囲で1000[rpm]ごとに設定し、軸受剛性(弾性係数k)、気体膜厚および摩擦トルクをそれぞれ10回ずつ測定した。
【0057】
図9は、軸受剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。図中の線は計算結果を、プロットは実験による測定結果を、それぞれ示している。
図9(a)に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、いずれの軸回転数においても軸受剛性すなわち弾性係数kが最も大きい。
また、図9(b)に示すように、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、その空気潤滑膜厚さhrが許容膜厚(hrmin=5.0[μm])を十分に上回っている。
したがって、本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の有用性が確認された。
【0058】
(圧力分布)
図10は、軸受けの形状と圧力分布との関係を示す図であり、(a)はスパイラルグルーブ軸受の形状と圧力分布を示し、(b)はヘリングボーン軸受けの形状と圧力分布を示し、(c)は本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の形状と圧力分布を示す。図10における圧力分布は、上が正圧、下が負圧である。図10(c)に示すように、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受10Dは、第一溝部12d1ではステップ効果により正圧が発生し、第二溝部12d2では逆ステップ効果により負圧が発生する。したがって、高い軸受剛性を実現することができる。
【0059】
(設計緒元と弾性係数との関係)
図11は、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受における設計緒元と弾性係数との関係を示す図であり、(a)は溝深さhgと溝幅比b1/(b1+b2)と弾性係数kとの関係を示すグラフ、(b)はシール径比Rsと溝数Nと弾性係数kとの関係を示すグラフである。
【0060】
図11(a)(b)に示すように、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における複数の溝部の幅の合計をb1、複数のランド部の幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、下記式(2)を満たすことが望ましい。
0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9 …式(2)
【0061】
また、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、複数の溝部の深さhgが、下記式(58)を満たすことが望ましい。
10[μm]≦hg≦30[μm] …式(58)
【0062】
また、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、複数の溝部の数Nが、下記式(59)を満たすことが望ましい。
8≦N≦18 …式(59)
【0063】
また、本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受は、軸受面の中心から前記複数の溝部の内端までの長さ(シール径)をrs、前記軸受面の半径(軸受外半径)をr1としたとき、これらの比であるシール径比Rs(=rs/r1)が、下記式(60)を満たすことが望ましい。
0.45≦Rs≦0.70 …式(60)
【0064】
(最適化計算例)
また、荷重条件、回転数などを変更して最適化計算を実施した結果を表2に示す。
【表2】
ここで、内径(軸受内半径)r2は、貫通孔11aの径である(図1参照)。また、各ケースに共通の設計諸元を下記式(61)〜(64)に示す。
hg=20[μm] …式(61)
Rs=0.58 …式(62)
b1/(b1+b2)=0.636 …式(63)
β=16[度] …式(64)
【0065】
表2に示すように、第一溝部12d1と第二溝部12d2との連結部である折れ曲がり部12d3の溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの中心からの距離lと、溝付き動圧スラスト気体軸受10Dの外径r1との比l/r1が、下記式(1)を満たすことが望ましい。
0.80≦l/r1≦0.95 …式(1)
このようにすることで、より高い軸受剛性を有する溝付き動圧スラスト気体軸受10Dを提供することができる。
【0066】
例えば、ケース1において、折れ曲がり位置をl/r1=0.779とした場合の軸受剛性を計算すると、k=4882200[N/m]となり、ケース1の軸受の軸受剛性k=14967000[N/m]の1/3程度の軸受剛性しか得られない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の製造装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(r,θ)座標系による図、(b)は(ξ,η)座標系による図である。
【図4】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図であり、(a)は(ξ,η)座標系による図,(b)は(a)の部分拡大図であり、コントロールボリュームを説明するための図である。
【図5】仮想螺旋溝部の変形を説明するための図であり、(a)は変形前の仮想螺旋溝部を示す模式図、(b)は変形後の仮想螺旋溝を示す模式図である。
【図6】溝付き動圧スラスト気体軸受の形状を説明するための模式図であり、(a)は基本形状のスパイラル溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(b)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受に至るまでの途中経過の溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図、(c)および(d)は本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受を示す図である。
【図7】軸受の剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の諸特性を測定するための測定装置を示す図である。
【図9】軸受剛性、気体膜厚および摩擦トルクと軸回転数との関係を示すグラフである。
【図10】軸受けの形状と圧力分布との関係を示す図であり、(a)はスパイラルグルーブ軸受の形状と圧力分布を示し、(b)はヘリングボーン軸受けの形状と圧力分布を示し、(c)は本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受の形状と圧力分布を示す。
【図11】本発明に係る溝付き動圧スラスト気体軸受における設計緒元と弾性係数との関係を示す図であり、(a)は溝深さhgと溝幅比b1/(b1+b2)と弾性係数kとの関係を示すグラフ、(b)はシール径比Rsと溝数Nと弾性係数kとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
10C,10D 溝付き動圧スラスト気体軸受
11a 貫通孔
12c,12d 溝部
12c1,12d1 第一溝部
12c2,12d2 第二溝部
20 溝付き動圧スラスト気体軸受の製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受であって、
前記複数の溝部は、それぞれ、
前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部と、
前記第一溝部の外側端部と連通し、外側に向かうにつれて周方向の他方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される第二溝部と、
を備えていることを特徴とする溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項2】
前記周方向の一方は、軸受の回転方向とは逆方向であることを特徴とする請求項1に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項3】
前記第一溝部と前記第二溝部との連結部である折れ曲がり部の当該溝付き動圧スラスト気体軸受の中心からの距離lと、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外径r1との比l/r1が、
0.80≦l/r1≦0.95
を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項4】
前記第一溝部と前記第二溝部とがなす折れ曲がり角度Ψが、
Ψ≧90°
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項5】
当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における前記複数の溝部の幅の合計をb1、複数のランド部の幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、
0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項6】
前記複数の溝部の深さhgが、
10[μm]≦hg≦30[μm]
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項7】
前記複数の溝部の数Nが、
8≦N≦18
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項8】
前記軸受面の中心から前記複数の溝部の内端までの長さをrs、前記軸受面の半径をr1としたとき、これらの比であるシール径比Rs(=rs/r1)が、
0.45≦Rs≦0.70
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項9】
制御装置および加工装置による、軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受の製造方法であって、
前記制御装置が、前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される複数の仮想螺旋溝部を設定するステップと、
前記制御装置が、前記仮想螺旋溝部を当該溝付き動圧スラスト気体軸受の半径方向に分割し、分割節点を半径を固定したまま周方向に移動させることにより前記仮想螺旋溝部の形状を変形させ、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状を算出するステップと、
前記制御装置が、前記加工装置を制御することにより、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状に基づいて、前記複数の溝部を形成するステップと、
を含むことを特徴とする溝付き動圧スラスト気体軸受の製造方法。
【請求項1】
軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受であって、
前記複数の溝部は、それぞれ、
前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延びる第一溝部と、
前記第一溝部の外側端部と連通し、外側に向かうにつれて周方向の他方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される第二溝部と、
を備えていることを特徴とする溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項2】
前記周方向の一方は、軸受の回転方向とは逆方向であることを特徴とする請求項1に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項3】
前記第一溝部と前記第二溝部との連結部である折れ曲がり部の当該溝付き動圧スラスト気体軸受の中心からの距離lと、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外径r1との比l/r1が、
0.80≦l/r1≦0.95
を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項4】
前記第一溝部と前記第二溝部とがなす折れ曲がり角度Ψが、
Ψ≧90°
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項5】
当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外周における前記複数の溝部の幅の合計をb1、複数のランド部の幅の合計をb2としたとき、b1/(b1+b2)が、
0.3≦b1/(b1+b2)≦0.9
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項6】
前記複数の溝部の深さhgが、
10[μm]≦hg≦30[μm]
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項7】
前記複数の溝部の数Nが、
8≦N≦18
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項8】
前記軸受面の中心から前記複数の溝部の内端までの長さをrs、前記軸受面の半径をr1としたとき、これらの比であるシール径比Rs(=rs/r1)が、
0.45≦Rs≦0.70
を満たすことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の溝付き動圧スラスト気体軸受。
【請求項9】
制御装置および加工装置による、軸受面に設けられた複数の溝部を備えた溝付き動圧スラスト気体軸受の製造方法であって、
前記制御装置が、前記軸受面の中心から離隔した位置から始まり、その内端が閉じており、外側に向かうにつれて周方向の一方に向かって延び、当該溝付き動圧スラスト気体軸受の外側面に開放される複数の仮想螺旋溝部を設定するステップと、
前記制御装置が、前記仮想螺旋溝部を当該溝付き動圧スラスト気体軸受の半径方向に分割し、分割節点を半径を固定したまま周方向に移動させることにより前記仮想螺旋溝部の形状を変形させ、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状を算出するステップと、
前記制御装置が、前記加工装置を制御することにより、軸受剛性が最大となる、変形された前記仮想螺旋溝部の形状に基づいて、前記複数の溝部を形成するステップと、
を含むことを特徴とする溝付き動圧スラスト気体軸受の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【公開番号】特開2008−38989(P2008−38989A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212149(P2006−212149)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年2月21日に東海大学が主催した「2005年度機械工学専攻研究論文発表会」において文書をもって発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年2月21日に東海大学が主催した「2005年度機械工学専攻研究論文発表会」において文書をもって発表
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】
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