説明

溝蓋の固定装置

【課題】凹状の空間部をなくして通行の安全性を確保し、かつ安定した固定状態が得られる溝蓋の固定装置を提供する。
【解決手段】蓋受枠4に螺子杆9を立設する一方、螺子杆9が挿通される透孔20が形成された底板19を備える収納凹部18を、螺子杆9に対応する溝蓋13の所定位置に配設し、蓋受枠4に乗載した溝蓋13の収納凹部18内に、下面を底板19に面接触した状態で上面を溝蓋13の上面と略面一とする断面ロ字形の筒状固定具31を埋設して、その空洞部35内に配したナット部材21を、収納凹部18の透孔20と筒状固定具31の挿通孔36とを挿通した螺子杆9に螺着することにより、筒状固定具31を介して溝蓋13と溝受枠4とを固定するようにしたものである。これにより、溝蓋13と溝受枠4との固定状態が比較的長期に亘って安定し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内や屋外の通路の側部に設けられた側溝や該通路を横断するように設けられた横断溝等の排水溝路に被着される溝蓋を、蓋受枠に固定するための溝蓋の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、側溝や横断溝等の排水溝路の上部開口を覆う溝蓋は、排水溝路の上部に配設された蓋受枠に乗載した状態で、排水溝路に着脱可能に被着されているが、単に溝蓋を蓋受枠に乗載しただけの状態では、人や自動車の通行によって溝蓋がガタ付いて騒音が発生したり、自動車の通行による衝撃で被着位置からずれるという不具合がある。
【0003】
このような不具合を解消するために、ボルトとナットにより溝蓋を蓋受枠に固定するようにした溝蓋の固定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、図11に示すように、排水溝路aの上部に配設された蓋受枠bにボルトcを立設する一方、該ボルトcに対応する溝蓋dの下面の所定位置に、ボルト挿通孔fを備えた底板eを配設し、該底板eのボルト挿通孔fに下方から挿通させた前記ボルトcの突出端にナットgを螺合させて緊締することにより、溝蓋dを蓋受枠bに固定するようにしたものである。
【0004】
また、図12に示すように、前記ナットgの装着部に生じる凹状の空間部hに断面コ字形のキャップjを嵌合し、該キャップjによって空間部hを塞ぐようにした構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−45376号公報(段落番号[0002]、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に開示されているような一般的な溝蓋の固定装置にあっては、ナットgの回動操作にボックスレンチk(図11参照)が用いられるため、該ボックスレンチkを上方から挿入し得る大きな凹状の空間部hがナットgの装着部に形成される。このため、該空間部hにハイヒールの踵や杖の先端が嵌り易いという問題点があった。また、図12のように、キャップjによって空間部hを塞ぐようにした構成にあっては、キャップjが遊嵌状に嵌め込まれているだけであるため、自動車の通行による衝撃で浮き上がったり、外れたりする虞があった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点を解消するためになされたものであり、ナットの装着部における凹状の空間部をなくして歩行の安全性を確保し得るとともに、構成部材が衝撃で浮き上がったり、外れたりすることのない安定した固定状態が得られる溝蓋の固定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排水溝路に設けられた蓋受枠に乗載される溝蓋を該蓋受枠に固定するための溝蓋の固定装置において、前記蓋受枠に立設された螺子杆と、該螺子杆に対応する溝蓋の所定位置に配設され、前記螺子杆を下方から挿通可能な透孔が形成された底板を備える収納凹部と、上端部に回動操作用工具が係合可能な係合孔が形成され、かつ下端部に前記螺子杆と螺合可能な螺子孔が形成されたナット部材と、下面が前記収納凹部の底板に面接触し且つ上面が前記溝蓋の上面と略面一となる状態で前記収納凹部に埋設されるものであって、前記螺子杆を下方から挿通可能な挿通孔が形成された下板部と、前記回動操作用工具の係合先端部を挿通可能な操作孔が形成された上板部と、前記ナット部材を両端開口から入出可能な空洞部とを備えた断面ロ字形の筒状固定具とを備え、前記ナット部材を空洞部内に配した筒状固定具を、蓋受枠に乗載した溝蓋の収納凹部に埋設して、該収納凹部の透孔と前記挿通孔とを挿通した螺子杆に前記ナット部材を螺合することにより、筒状固定具を介して溝蓋と溝受枠とを固定するようにした溝蓋の固定装置である。
【0009】
ここで、排水溝路に設けられる蓋受枠としては、水平縁部と該水平縁部の外端から立ち上がる垂直縁部とを備え、排水溝路の上部内縁に左右一対で配設されて、前記両水平縁部上に溝蓋の左右側縁を乗載するようにしたものが適用され、この場合には、螺子杆が水平縁部に立設される。また、他の蓋受枠としては、排水溝路の上部に配設される左右の支持枠と、該支持枠間に横架された蓋受杆とによって構成されて、該蓋受杆上に溝蓋を乗載するようにしたものが適用され、この場合には、螺子杆が蓋受杆に立設される。
【0010】
かかる構成によれば、筒状固定具の空洞部内に配したナット部材を螺子杆に螺合して緊締することにより、筒状固定具の下面と収納凹部の底板上面とを圧接させ、溝蓋を蓋受枠に固定することができる。ここで、筒状固定具は、前記緊締作用を介して、収納凹部の底板と面接触して固定されることから、圧接する接触面を比較的広く確保することができる。そのため、溝蓋を蓋受枠に安定して固定し易いという利点もある。
【0011】
さらに、上記のように固定した状態では、筒状固定具の上面が溝蓋の上面と略面一となり、該筒状固定具により収納凹部の上部を遮蔽することができるため、従来のような凹状の空間部h(図11参照)が生じることがなく、これによって歩行の安全性が確保される。また、ナット部材と螺子杆との緊締作用を介して筒状固定具が固定されることから、該筒状固定具が衝撃で浮き上がったり、外れたりすることのない安定した固定状態が得られる。
【0012】
上記のナット部材は上端部に形成された係合孔に係合される回動操作用工具によって回動し得るので、ナット部材の周囲にボックスレンチk(図11参照)の挿入を許容する隙間を形成する必要がない。そのため、筒状固定具の上面を比較的広く確保し易いことから、例えばハイヒールの踵や杖の先端等が挟まってしまうことも可及的に防ぎ得る。また、ナット部材は筒状固定具の空洞部内に配されることから、上記した固定状態で緩み難く、比較的長期に亘って固定状態を安定して維持できる。尚、仮に緩みを生じたとしても、ナット部材が外れ難いため、筒状固定具を収納凹部内に埋設した状態で維持でき得る。
【0013】
上述した溝蓋の固定装置であって、収納凹部の底板の透孔が、排水溝路の長手方向に沿った長孔形状を成すものである構成が提案される。
【0014】
かかる構成によれば、溝蓋を蓋受枠に対して、透孔の長孔寸法の範囲内で移動可能となることから、溝蓋を所望位置に配置できる。すなわち、透孔は、螺子杆を挿通することにより、溝蓋の位置決めを容易にできると共に、所望位置に適宜修正して配置できる。
【0015】
上述した溝蓋の固定装置であって、筒状固定具の下板部の挿通孔が、蓋受枠の長手方向に沿った長孔形状をなし、かつナット部材を挿通不能とする孔幅に形成されたものである構成が提案される。ここで、孔幅は、蓋受枠の長手方向と直交する方向に沿った幅である。
【0016】
かかる構成によれば、筒状固定具を、挿通孔の長孔寸法の範囲内で螺子杆に対して移動可能となることから、該筒状固定具の配置を適宜位置決めし易い。ここで、上記した長孔形状の透孔を備えた構成の場合には、筒状固定具を所望位置に一層位置決めし易く、これに伴って該溝蓋を蓋受枠に固定する作業性が向上する。また、挿通孔の孔幅がナット部材を挿通不能であることにより、該ナット部材の緊締作用を介した固定状態を一層安定させることができる。
【0017】
上述した溝蓋の固定装置であって、筒状固定具の上板部の操作孔が、長孔形状の挿通孔と対向し且つ該挿通孔と略同一形状に形成されたものである構成が提案される。
【0018】
かかる構成によれば、筒状固定具の固定位置に応じて回動操作用工具を操作孔から挿通可能であり、所望位置に位置決めした筒状固定具をナット部材の緊締作用により安定して固定できる。また、ナット部材が操作孔を挿通できずに筒状固定具の空洞部内で保持されることから、該ナット部材が螺子杆との緊締状態から仮に緩んだとしても外れ難く、筒状固定具を収納凹部内に埋設した状態で安定して維持できる。また、筒状固定具は、その製造の際に、挿通孔と操作孔とを形成し易いという利点がある。
【0019】
上述した溝蓋の固定装置であって、ナット部材が、その外周に、互いに対向する一対の側面部と、該側面部間の幅よりも幅広な互いに対向する幅広側部とを備えてなり、筒状固定具の空洞部内に入出可能かつ該空洞部内で回転不能に形成され、ナット部材を前記一対の側面部に沿って嵌入可能とし且つ前記対向する幅広側部間の幅に比して狭い間隔を成す互いに対向する一対の弾性側片部を備えた戻止め具を備え、戻止め具とその両弾性側片部間に嵌入したナット部材とを筒状固定部の空洞部内に配した状態で、弾性側片部の弾性力に抗することによりナット部材を回転可能としている構成が提案される。
【0020】
かかる構成によれば、戻止め具とその両弾性側片部間に嵌入したナット部材とを空洞部内に配した筒状固定部を溝蓋の収納凹部に埋設して、前記ナット部材を、戻止め具の弾性側片部の弾性力に抗して回動させることにより、螺子杆に螺合して緊締することができると共に、前記緊締した状態で、ナット部材の回転を抑制して該緊締状態が緩んでしまうことを抑制できる。これは、両弾性側片部の弾性力に抗する力を作用させてその間隔を拡げなければ、該弾性側片部間をナット部材の幅広側部が回転通過できないことに因る。このように、本構成では、人や自動車の通行により生ずる振動によって、前記ナット部材の緊締状態が緩むことを抑制できる。
【0021】
ここで、戻止め具は、螺子杆を挿通可能な透孔が設けられ、ナット部材を乗載する矩形状の底板部を備え、弾性側片部が該底板部の両側縁から夫々起立するように設けられているものである構成が提案される。尚、本構成の戻止め具としては、断面略コ字形の構成が好適である。
【0022】
かかる構成によれば、ナット部材の緊締作用により、戻止め具を該ナット部材と筒状固定部の下板部との間で挟圧して固定できることから、ナット部材の緩みを抑制するという上述した作用効果が一層向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ナット部材を空洞部内に配した筒状固定具を、蓋受枠に乗載した溝蓋の収納凹部に埋設して、該収納凹部の透孔と筒状固定具の挿通孔とを挿通した螺子杆に前記ナット部材を螺合することにより溝蓋と溝受枠とを固定するようにしたものであるから、筒状固定具を介して溝蓋を溝受枠に安定して固定し易い。そして、固定状態では、収納凹部の上部が遮蔽されることから、これに伴って通行の安全性が確保され得る。また、ナット部材が筒状固定具の空洞部内で螺子杆に緊締されて螺着されることから、これらの構成部材が衝撃で浮き上がったり、外れたりすることのない安定した固定状態が得られると共に、筒状固定具を埋設状態で比較的長期に亘って安定して維持できる。
【0024】
また、上述した溝蓋の固定装置にあって、ナット部材をその側面部に沿って嵌入可能とし且つ幅広側部の幅より狭い間隔を成す一対の弾性側片部を備えた戻止め具を備えた構成の場合には、戻止め具とその弾性側片部間に嵌入したナット部材とを空洞部内に配した筒状固定具を溝蓋の収納凹部に埋設して、前記弾性側片部の弾性力に抗して該ナット部材を螺子杆に螺合して緊締した状態で、該弾性側片部の弾性力に従ってナット部材の回転が抑制されることから、人や自動車の通行により生ずる振動によって、前記ナット部材の緊締状態が緩むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1にかかる固定装置29による、溝蓋13の施工状態を示す縦断面図である。
【図2】同上の溝蓋13の施工状態を示す平面図である。
【図3】同上の固定装置29の取り付け過程を説明する縦断面図である。
【図4】同上の固定装置29の、他の施工状態を示す平面図である。
【図5】実施例2にかかる固定装置29による、溝蓋51の施工状態を示す縦断面図である。
【図6】同上の溝蓋51の施工状態を示す平面図である。
【図7】実施例3にかかる固定装置69による溝蓋13の施工状態を示す、(A)溝蓋13の横方向に沿った拡大縦断面図と、(B)溝蓋13の長手方向に沿った拡大縦断面図である。
【図8】同上の溝蓋13の施工状態を示す拡大平面図である。
【図9】同上の固定装置69を構成するナット部材71と戻止め具81とを表す(A)平面図と、(B)正面図である。
【図10】別例の筒状固定具91を表す(A)平面図と、(B)縦断面図である。
【図11】従来の溝蓋の固定装置を示す縦断面図である。
【図12】従来のキャップjを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明にかかる溝蓋の固定装置の実施例を、添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
排水溝路1は、図1に示すように、地盤の所定深さ位置に断面略コ字形に打設したコンクリート11により構築されている。尚、この排水溝路1の周囲上部には、タイル12等の舗装材10が連続状に施設されている。
【0028】
この排水溝路1の対向する上部内縁には、図1,3に示すように、水平縁部5と該水平縁部5の外端から立ち上がる垂直縁部6とを備えた略L形の左右一対の蓋受枠4,4が排水溝路1の長手方向に沿って夫々配設されている。蓋受枠4,4は、金属製アングル材からなり、その長さは、排水溝路1の長手方向に沿う所定の長さとなっている。
【0029】
上記した蓋受枠4,4の各水平縁部5,5には、後述する溝蓋13の少なくとも長手方向の両端近傍部に対応する位置に、螺子杆9が夫々立設されている。この螺子杆9は、蓋受枠4の水平縁部5に下方から挿通されて、該水平縁部5の上方に所定長さで突出する溶接ボルトの雄螺子部によって構成されており(図3(A)参照)、該溶接ボルトは蓋受枠4の水平縁部5の下面に溶接を介して回動不能に固着されている。
【0030】
上記の蓋受枠4,4の水平縁部5,5上には溝蓋13が乗載される。この溝蓋13は、図2のように、蓋受枠4に直交する方向に沿って所定間隔で並列する複数のメインバー14と、該メインバー14に直交する適数本のクロスバー15と、該クロスバー15に沿って各メインバー14の左右両端部に配設されたサイドバー16,16とを備えた金属性のグレーチングからなり、蓋受枠4,4の水平縁部5,5に乗載されることによって、該蓋受枠4,4の垂直縁部6,6間に設けられた開口部2を通水可能に覆っている。尚、各メインバー14の相互間隔は、少なくともハイヒールの踵や杖の先端が嵌り難い9mm以下の所定間隔に設定されている。
【0031】
溝蓋13の左右両側部には、前記蓋受枠4の螺子杆9に対応する位置に収納凹部18が夫々設けられている。収納凹部18は、相互に隣接する適数本(図示した例では二本)のメインバー14の端部を切除することによって、その両側に位置する二本のメインバー14,14とサイドバー16とによって三方が囲繞され、さらにもう一方が、サイドバー16に対向するように前記両側のメインバー14,14間に設けられた短尺の区画バー17により区画されてなる。ここで、区画バー17は、その両端部が前記両側に位置する二本のメインバー14,14に溶接されると共に、端部を切除した二本のメインバー14,14に溶接されている。そして、二本のメインバー14,14、サイドバー16、および区画バー17により囲繞された空間部の底部を遮蔽するように矩形状の底板19が配設されている。この底板19は、その四辺縁が前記二本のメインバー14,14、サイドバー16、および区画バー17の側面に溶接されており、図1,3のように、前記螺子杆9を下方から挿通可能な透孔20が形成されている。
【0032】
ここで、底板19に設けられた透孔20は、図2のように、排水溝路1の長手方向に沿った長孔形状に形成され、該長手方向と直交する方向に沿った孔幅が前記螺子杆9を遊嵌する寸法としている。これにより、透孔20に螺子杆9を挿通した状態で、孔形状寸法の範囲内で溝蓋13を長手方向と幅方向とに移動可能である(図4参照)。
【0033】
上記の収納凹部18内には、筒状固定具31が入出可能に配設される。この筒状固定具31は、図1〜3のように、矩形状の下板部32と、該下板部32の両側縁から起立する側板部33,33と、各側板部33,33の上側縁に連成された上板部34とから構成された断面ロ字形の四角筒状を成す。ここで、下板部32と上板部34とは互いに対向し、両側板部33,33は互いに対向するように形成されており、これらに囲繞された内部に断面矩形状の空洞部35が形成されている。この筒状固定具31は、下板部32の下面を収納凹部18の底板19の上面に面接触するようにして該収納凹部18内に収納した状態で、上板部34の上面が溝蓋13の上面と略面一となる。この状態で、収納凹部18の上部が筒状固定具31の上板部34により略遮蔽される。このように収納凹部18内に収納されるように、筒状固定具31の寸法形状が設定されている。
【0034】
さらに、筒状固定具31の下板部32には、上記した螺子杆9を下方から挿通可能な長孔形状の挿通孔36が設けられ、上板部34には、挿通孔36と対向するように長孔形状の操作孔37が設けられている。挿通孔36と操作孔37とは同じ形状寸法に形成されており、排水溝路1の長手方向に沿って長孔形状を成し、かつ該長手方向と直交する方向に沿った孔幅が前記螺子杆9を遊嵌する寸法としている。そして、この孔幅は、後述するナット部材21を挿通不能とする幅寸法に形成されている。これにより、ナット部材21が挿通孔36および操作孔37を通じて入出できない。尚、挿通孔36と操作孔37とが異なる形状寸法に形成されていても良い。
【0035】
前記透孔20に挿通される螺子杆9は、収納凹部18内に上記した筒状固定具31を収納した状態で、該筒状固定具31の空洞部35内でナット部材21と螺合可能な所定高さ位置まで突出する長さ寸法に設定されている。この螺子杆9の突出端にはナット部材21が螺合される。
【0036】
ナット部材21は、筒状固定具31の空洞部35内にその両端開口から挿通可能とするように、かつ該筒状固定具31の挿通孔36および操作孔37から入出不能とするように、長さ寸法および横幅寸法が設定された六角柱形状に形成されている。尚、横幅寸法は、ナット部材21を螺子杆9に螺合した状態で、該ナット部材21の下端面が底板19の上面と接触するように形成されており、さらに、該接触する面積を広く確保できるように設定されていることが好ましい。
【0037】
このナット部材21には、その上端部に、回動操作用工具として六角レンチ60(図3(B)参照)の先端を係合可能な断面六角形の係合孔22が形成されている。そして、下端部に、前記螺子杆9と螺合可能な螺子孔23が形成されている。これら係合孔22と螺子孔23とが上下方向に連通するように形成されている。尚、ナット部材21は、六角柱形状に限定されるものではなく、他の角柱状や円柱状であっても良い。また、係合孔22としては、断面形状が四角等の角孔や、マイナスドライバーやプラスドライバーを係合可能な孔形状であっても良い。係合孔の孔形状に応じた回動操作用工具が用いられる。
【0038】
本実施例1にあって、上述した螺子杆9、収納凹部18、ナット部材21及び筒状固定具31によって溝蓋13の固定装置29が構成されている。
【0039】
次に、上記した溝蓋13の固定装置29の使用態様について説明する。
図3(A)のように、排水溝路1の対向する上部内縁に配設された蓋受枠4,4に溝蓋13を乗載する。この際、蓋受枠4の螺子杆9に溝蓋13の収納凹部18の透孔20を遊嵌するようにして乗載することから、該螺子杆9がガイドの役割をし且つ溝蓋13を排水溝路1に対して比較的容易に位置決めして配置できる。これにより、溝蓋13の取り替え作業等も比較的容易に行い得る。
【0040】
溝蓋13を蓋受枠4,4に乗載し、該蓋受枠4に立設されている螺子杆9を底板19の透孔20に下方から挿通させた状態において、図3(B)のように、空洞部35内にナット部材21を配した筒状固定具31を収納凹部18内に配する。ここで、収納凹部18内で突出する螺子杆9を、挿通孔36を介して筒状固定具31の空洞部35内に挿入すると共に、操作孔37から六角レンチによりナット部材21を回動操作して螺子杆9に螺合する。この螺合により、筒状固定具31が収納凹部18内に進入し、該筒状固定具31の下面が該収納凹部18の底板19の上面に圧接するように、ナット部材21を緊締させる。この緊締作用によって、図3(C)のように、筒状固定具31を介して溝蓋13が蓋受枠4に固定される。この固定された状態では、筒状固定具31の上面が溝蓋13の上面と略面一となり、収納凹部18の上端部を遮蔽する(図1参照)。このように筒状固定具31が収納凹部18内に埋設された状態では、ナット部材21と螺子杆9とが緊締状態で螺着されていることから、筒状固定具31が収納凹部18内に固定され、これらの構成部材が衝撃で浮き上がったり、外れたりすることのない安定した固定状態となっている。特に、ナット部材21が筒状固定具31の空洞部35内で螺着され且つ埋設状態で空洞部35外へ排出できないことから、螺子杆9との螺合状態が解除され難く、比較的長期に亘って固定状態を維持できる。また、筒状固定具31により収納凹部18の上部を遮蔽することから、従来のような凹状の空間部h(図11参照)が生じず、これによって歩行や走行などの通行の安全性が確保される。
【0041】
さらに、筒状固定具31を埋設する際に、その挿通孔36に挿通する螺子杆9がガイドの役割をすると共に、該挿通孔36および操作孔37が長孔形状であることから、上述したように溝蓋13の、溝受枠4,4に対する位置決めを妨げず、該位置決めを容易に行うことを助ける。これにより、筒状固定具31の装着作業が比較的容易に行い得ると共に、溝蓋13を取り外す際にも、その作業性を向上できる。尚、図4(A)のように、蓋受枠4,4に対して長手方向および横方向にスライドした位置でも、溝蓋13を安定して固定することができる。さらに、図4(B)のように、溝蓋13を蓋受枠4,4に対して傾いた状態で取り付けたとしても、同様に安定して固定することができる。
【実施例2】
【0042】
実施例2における排水溝路1は、図5のように、断面略U字状のU字溝41を地盤の所定深さ位置に一列状に埋設することによって構築されている。このU字溝41の側壁42,42の上端に、断面L字形の左右一対の支持枠45,45が固設されており、該支持枠45,45間に複数の蓋受杆49が横架されている。ここで、支持枠45は垂直な立ち上がり縁46に水平縁47が連成されてなり、左右の支持枠45,45の立ち上がり縁46,46に前記蓋受杆49の両端が接合されている。この左右一対の支持枠45,45と複数の蓋受杆49とによって、本発明の蓋受枠43が構成されている。蓋受杆49は、金属製の角パイプからなり、後述する溝蓋51の、その少なくとも長手方向の両端近傍部に対応する位置に配設されている。そして、蓋受杆49には、その幅方向の中間部に螺子杆9が夫々立設されている。ここで、螺子杆9を構成するボルトは、該ボルトの頭部が蓋受杆49の下面に溶接されて回動不能に固着されている。尚、このように配設された蓋受枠43の左右の水平縁47,47上には、排水溝路1の周囲上部に敷設されるコンクリート11やタイル12等の舗装材10が連続状に敷設されている。
【0043】
また、上記蓋受枠43の各蓋受杆49上に乗載される溝蓋51は、図6のように、支持枠45,45の長手方向に沿って所定間隔(9mm以下)で並列されたメインバー52と、該メインバー52に直交する適数本のクロスバー53とが格子状に組み付けられ、さらに、その長手方向の両端部にエンドバー54が接合された金属製のグレーチングからなる。その他、収納凹部18を画成するための区画バー17や底板19、収納凹部18に埋設される筒状固定具31、上記螺子杆9に螺合されるナット部材21の各構成は、上述した実施例1と同じであり、これら構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0044】
上記した溝蓋51の固定装置29にあっては、該溝蓋51を蓋受杆49に乗載し、該蓋受杆49に立設されている螺子杆9を底板19の透孔20に下方向から挿通させた状態において、筒状固定具31の空洞部35内に配したナット部材21を螺子杆9に螺合して緊締させることにより、筒状固定具31の下面を底板19の上面に圧接して、該筒状固定具31を介して溝蓋51を蓋受枠43に固定させる。ここで、筒状固定具31を収納凹部18内に埋設した状態で、該筒状固定具31の上面と溝蓋51の上面とが略面一となると共に、該収納凹部18の上部が遮蔽される。このような本実施例2の構成にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏し得る。
【実施例3】
【0045】
実施例3における溝蓋13の固定装置69は、図7〜9のように、上述した実施例1と同様の筒状固定具31の空洞部35内に配されるナット部材71と戻止め具81とを備えた構成である。ここで、ナット部材71と戻止め具81以外は、上述した実施例1と同様の構成であり、重複する構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略する。また、固定装置69は、上述した実施例1と同様の排水溝路1に溝蓋13を固定するためのものである。
【0046】
ナット部材71は、図9のように、高さ寸法が短尺の円柱状の下端部73と、該下端部73の上側に形成された六角柱形状の主胴部72とから成る。ここで、下端部73の外径が、主胴部72の外接円の外径に比して大きくなっている。尚、上述した実施例1と同様に、ナット部材71は、筒状固定具31の空洞部35内にその両端開口から挿通可能とするように、かつ該筒状固定具31の挿通孔36および操作孔37から入出不能とするように、長さ寸法および横幅寸法が設定されている。
【0047】
このナット部材71の主胴部72は、その横断面が仮想円に内接する略正六角形を成す六角柱形状に形成されており、互いに対向する一対の側面部74a〜74cを三組備えていると共に、夫々の角部により構成される互いに対向する幅広側部75a〜75cを三組備えている。そして、対向する幅広側部75a〜75c間の幅寸法(距離)が、一対の側面部74a〜74c間の幅寸法に比して広くなっている。
【0048】
さらに、ナット部材71は、上述した実施例1と同様に、係合孔22と螺子孔23とを備えている。尚、ナット部材71は、主胴部72が少なくとも一対の側面部と該側面部の幅に比して幅広となる互いに対向する幅広側部とを備えた構成であれば、六角柱形状に限定されるものではなく、他の角柱状であっても良し、平面状の側面部と湾曲状の幅広側部とを備えた構成等であっても良い。
【0049】
一方、戻止め具81は、図9のように、矩形状の底板部82と、該底板部82の互いに対向する側縁から上方へ起立する一対の弾性側片部83,83とを備えた断面略コ字形の構成である。この戻止め具81は、バネ用ステンレス鋼帯(具体的にはSUS304−CSP)により形成されており、いわゆる板バネとしての機能を有している。
【0050】
ここで、底板部82は、その中央に螺子杆9を挿通可能な透孔84が形成されている。また、一対の弾性側片部83,83は、鉛直方向に比して互いに接近する方向に僅かに傾斜し、その上端縁に内側に折曲された折曲上端部86,86が夫々に形成されている。ここで、戻止め具81は、その底板部82に上記ナット部材71の下端部73を乗載でき、且つ一対の弾性側片部83,83間に該ナット部材71を嵌入できるように、その形状寸法が設定されている。すなわち、一対の弾性側片部83,83の折曲上端部86,86間の間隔が、上記ナット部材71の一対の側面部74a〜74cの幅寸法に比して若干狭くなるように設定されている。そのため、ナット部材71は、一対の側面部74a〜74cに沿った方向で、一対の弾性側片部83,83間に嵌入可能となっている。尚、一対の弾性側片部83,83は、折曲上端部86,86間の間隔が、ナット部材71の一対の側面部74a〜74cの幅寸法と同等であっても良い。
【0051】
さらに、戻止め具81は、筒状固定具31の空洞部35内にその両端開口から挿通可能であり、且つ空洞部35内で回動不能であるように、その寸法形状が設定されている。尚、一対の弾性側片部83,83は、内側に傾斜する構成以外に、鉛直方向に沿って形成される構成や、外側に傾斜する構成等としても良い。また、折曲上端部86,86を備えない構成としても良い。
【0052】
このような実施例3の溝蓋13の固定装置69にあっては、図7,8のように、戻止め具81の両弾性側片部83,83間にナット部材71を嵌入して配した状態で、該戻止め具81の弾性側片部83と直交する方向に沿って筒状固定具31の空洞部35内に挿入して配する。そして、溝蓋13を蓋受枠4,4に乗載し、該蓋受枠4に立設されている螺子杆9を底板19の透孔20に下方から挿通させた状態において、前記戻止め具81とナット部材71とを配して空洞部35内に配した筒状固定具31を収納凹部18内に配する。これにより、底板19の透孔20および戻止め具81の透孔84を挿通した螺子杆9に、前記ナット部材71を螺合して緊締させることにより、筒状固定具31の下面を底板19の上面に圧接して、該筒状固定具31を介して溝蓋13を蓋受枠4に固定させる。ここで、ナット部材71は、戻止め具81の両弾性側片部83,83の弾性力によって回転を抑制されているが、六角レンチを用いて該弾性力に抗する力を作用させることによって回動可能となり、前記螺子杆9に螺合できる。そして、締結した状態では、戻止め具81の両弾性側片部83,83の弾性力により、ナット部材71の回転が抑制される。これは、六角レンチ等の回動操作用工具を使用しなければ、戻止め具81の両弾性側片部83,83の弾性力に抗してナット部材71を回動させることができないためである。さらに、前記の締結状態では、戻止め具81が、ナット部材71と筒状固定具31の底板19とにより挟持されて固定される。以上のことから、溝蓋13上を通行する人や自動車等によって生ずる振動により、前記ナット部材71の緊締状態が緩むことを防止できる。
【0053】
尚、本実施例3の構成は、上記したナット部材71の緩み抑制効果に加えて、上述した実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0054】
また、上述した実施例3の構成にあっては、戻止め具81がナット部材71を乗載する底板部82を備えた構成であるが、該底板部を備えない構成であっても良い。例えば、ナット部材71を側方から支持するように一対の弾性側片部を備えた断面略U字形や断面略V字形等であっても良い。
【0055】
一方、上述した実施例3の別例として、図10のように、筒状固定具91が、その空洞部35内に配したナット部材71および戻止め具81の脱落を防止する突部92a,92bを備えた構成も提案される。ここで、突部92a,92bは、筒状固定具91の下板部32の両端に空洞部35内へ突出するように形成されている。そして、突部92aは、一方の開口端の中央部分に設けられており、ナット部材71を戻止め具81に乗載した状態で入出不能とするように、この突部92aの突出長さが設定されている。また、突部92bは、他方の開口端の側部寄りに設けられており、ナット部材71を戻止め具81に乗載した状態で外部から押し込むことによって空洞部35内に配することが可能である。さらに、空洞部35内に配すると、同様の外力を加えなければ取り出すことができない。このような突出長さとするように、突部92bが形成されている。そのため、ナット部材71および戻止め具81は、空洞部35内に配した状態で、該空洞部35内のX位置(図10(B)参照)で突部92aに当接して脱落しないと共に、Y位置(図10(B)参照)で突部92bに当接して脱落しない。
【0056】
かかる別例の構成によれば、筒状固定具91の空洞部35内に、突部92bが設けられた他方の開口から、ナット部材71を戻止め具81に乗載した状態で押し入れると、該ナット部材71と戻止め具81とが筒状固定具91から脱落してしまうことを防止できる。そのため、溝蓋13を固定する作業の際に、その作業性を向上できると共に、ナット部材71や戻止め具81の紛失を防止することもできる。
【0057】
この別例では、実施例3のナット部材71および戻止め具81とを配する筒状固定具91について例示したが、これに限らず、実施例1,2の筒状固定具にも適用可能である。さらに、突部92a,92bとしては、下板部に限らず、側板部や上板部に設けることも可能である。
【0058】
本発明は、上述した実施例の構成に限定されるものではなく、実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 排水溝路
4,43 蓋受枠
9 螺子杆
13,51 溝蓋
18 収納凹部
19 底板
20 透孔
21,71 ナット部材
22 係合孔
23 操作孔
29,69 固定装置
31,91 筒状固定具
32 下板部
33 上板部
35 空洞部
36 挿通孔
37 操作孔
74a〜74c 側面部
75a〜75c 幅広側部
81 戻止め具
82 底板部
83 弾性側片部
84 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝路に設けられた蓋受枠に乗載される溝蓋を該蓋受枠に固定するための溝蓋の固定装置において、
前記蓋受枠に立設された螺子杆と、
該螺子杆に対応する溝蓋の所定位置に配設され、前記螺子杆を下方から挿通可能な透孔が形成された底板を備える収納凹部と、
上端部に回動操作用工具が係合可能な係合孔が形成され、かつ下端部に前記螺子杆と螺合可能な螺子孔が形成されたナット部材と、
下面が前記収納凹部の底板に面接触し且つ上面が前記溝蓋の上面と略面一となる状態で前記収納凹部に埋設されるものであって、前記螺子杆を下方から挿通可能な挿通孔が形成された下板部と、前記回動操作用工具の係合先端部を挿通可能な操作孔が形成された上板部と、前記ナット部材を両端開口から入出可能な空洞部とを備えた断面ロ字形の筒状固定具と
を備え、
前記ナット部材を空洞部内に配した筒状固定具を、蓋受枠に乗載した溝蓋の収納凹部に埋設して、該収納凹部の透孔と前記挿通孔とを挿通した螺子杆に前記ナット部材を螺合することにより、筒状固定具を介して溝蓋と溝受枠とを固定するようにしたものであることを特徴とする溝蓋の固定装置。
【請求項2】
収納凹部の底板の透孔が、排水溝路の長手方向に沿った長孔形状を成すものであることを特徴とする請求項1に記載の溝蓋の固定装置。
【請求項3】
筒状固定具の下板部の挿通孔が、排水溝路の長手方向に沿った長孔形状をなし、かつナット部材を挿通不能とする孔幅に形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溝蓋の固定装置。
【請求項4】
筒状固定具の上板部の操作孔が、長孔形状の挿通孔と対向し且つ該挿通孔と略同一形状に形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の溝蓋の固定装置。
【請求項5】
ナット部材が、その外周に、互いに対向する一対の側面部と、該側面部間の幅よりも幅広な互いに対向する幅広側部とを備えてなり、
筒状固定具の空洞部内に入出可能かつ該空洞部内で回転不能に形成され、ナット部材を前記一対の側面部に沿って嵌入可能とし且つ前記対向する幅広側部間の幅に比して狭い間隔を成す互いに対向する一対の弾性側片部を備えた戻止め具を備え、
戻止め具とその両弾性側片部間に嵌入したナット部材とを筒状固定部の空洞部内に配した状態で、弾性側片部の弾性力に抗することによりナット部材を回転可能としていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の溝蓋の固定装置。
【請求項6】
戻止め具は、螺子杆を挿通可能な透孔が設けられ、ナット部材を乗載する矩形状の底板部を備え、弾性側片部が該底板部の両側縁から夫々起立するように設けられているものであることを特徴とする請求項5に記載の溝蓋の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−211481(P2012−211481A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77922(P2011−77922)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(592094243)カネソウ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】