説明

溶剤の回収装置、溶剤の回収方法及びポリマーと溶剤の分離方法

【課題】本発明の目的は、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する新規な装置を提供することにある。
【解決手段】ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する装置であって、溶液貯槽部、液膜形成部、液膜乾燥部、液膜剥離部、液膜搬送部、及び溶剤回収部、を含むことを特徴とする、溶剤の回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤の回収装置、回収方法およびポリマーと溶剤の分離方法に関する。更に詳しくは本発明は、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から溶剤を回収する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い性能と品質の均一性が要求される光学用のポリカーボネートフィルムなどの光学用ポリマーフィルムは溶液製膜法で製造される場合が多い。ポリカーボネートの場合には、溶剤として塩化メチレンを用い、該溶剤にポリカーボネートの濃度が10〜30重量%程度溶解させた溶液を用いるのが一般的である。
【0003】
このような光学用途のポリマーフィルムの製造においては、要求特性の高度化によって溶液製膜されるポリマーの種類の変更、濃度の変更などいわゆる銘柄変更(銘変)などの煩雑さが増している。銘変時には、例えばポリカーボネートであっても、ポリカーボネートホモポリマーで溶液濃度を変えて製膜する場合やポリカーボネートホモポリマーから各種の共重合ポリカーボネート等へ溶液種を変えて製膜する場合がある。例えば、銘変時に、今まで製膜に使用した溶液の残溶液とこれから製膜に使用する溶液とを置き換える際には、溶液同士が輸送系で混合して特性の変った溶液が生成されるのは避けるのが難しい。同種のポリカーボネート溶液であっても濃度が異なるものが混合した場合は製膜されたフィルムにダイ筋や漣状の表面欠点が生じ易い。このような問題を避けるためには前使用溶液を用いた配管をよく洗浄し、新しい溶剤で充分な置換をしなければならない。
【0004】
また、運転休止などの銘変時には余剰のポリカーボネート溶液が多量に発生することがある。例えば、このような溶液は、製膜を中断して再使用するために保管されるがその場合は予備の溶液タンクに保管したり、少量の場合は通常SUS製のドラム缶やポリタンクに保管される。しかし、これらの溶液は、保管中に溶液の特性、例えば溶液濃度が変わったり、溶液の中でポリカーボネートが再結晶化したりすることがあり、それらを再び使うことは難しく、ついには系外に廃棄せざるを得なくなる場合もある。
【0005】
上述のように溶液製膜においては、製膜の中断や終了時にポリマー溶液が残ったり、あるいは工程(特に配管内)を洗浄することによって、ポリマーが溶剤に溶解した溶液が多量に発生することが少なくない。
【0006】
従来技術として、例えば、特許文献1には発泡スチロールのリサイクル方法が開示されている。この方法は発泡スチロールの溶媒、リモネンや塩化メチレンをベント口を備えた混練、溶融押し出し機にて、溶媒を脱揮させた後、ポリスチレンとして溶融押し出し、ペレットに再生するとともに、脱揮した溶媒を熱交換器で凝縮し、回収する方法である。しかしながら、このような方法は装置が大型となること、また溶融押出し工程を含むため高分子樹脂を熱劣化させる懸念もある。別の方法として、ポリカーボネート溶液を例えば、塩化メチレンと混合する液体、たとえばアルコール類や、水などに投入してポリカーボネートと塩化メチレンとを分離する方法も考えられるが、このような方法は、これらの溶液の取り扱いにさらに煩雑なプロセスが必要となるため実施するのは実際的ではない。
【特許文献1】特開2001−146531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する新規な装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤とポリマーとを回収する新規な方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とからなる溶液から、ポリマーと溶剤を分離する新規な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは大掛かりな設備を使わないで、ポリカーボネートなどのポリマーを溶解した粘性のある溶液から、溶質であるポリマーと溶剤とを簡便な方法(装置)で分離し、再生し、再使用する方法を検討した。
【0009】
特に、高粘度のポリマー溶液から、ポリマー屑や、溶媒並びにそれら分解物などを極力発生させないで、ポリマー及び溶剤を劣化させずに分離・回収することに注力した。そして、ポリマーを溶融させるような高温にする必要がなく、フィルム形態としてポリマーを取り出すことによって、ポリマーと溶剤を分離し、溶媒を回収し、溶剤だけでなくポリマーも回収する比較的簡便な方法を見出し本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
〔1〕ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する装置であって、溶液貯槽部、液膜形成部、液膜乾燥部、液膜剥離部、液膜搬送部、及び溶剤回収部、を含むことを特徴とする、溶剤の回収装置(以下、本発明の回収装置という)。
〔2〕液膜形成部は、溶液と接触するための回転体を含むものである、上記の回収装置。
〔3〕溶剤回収部は、溶剤を液体として捕捉する凝縮部を含むものである、上記の回収装置。
〔4〕実質的な密閉空間内にある、上記の回収装置。
〔5〕ポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、かつ溶剤が塩化メチレンである、上記の回収装置。
〔6〕ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する方法であって、
(1)溶液を支持体に接触させ該支持体上に液膜を形成させ、
(2)前記液膜を加熱し、
(3)ついで該液膜を前記支持体から剥離させ、
(4)剥離した液膜を搬送しフィルムとして取り出し、
(5)一方、前記加熱により蒸発した溶剤を冷却により捕捉して回収する、
ことを特徴とする溶剤の回収方法(以上、本発明の回収方法という)。
〔7〕支持体が回転体である、上記の回収方法。
〔8〕実質的な密閉空間内で行なう、上記の回収方法。
〔9〕ポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、かつ溶剤が塩化メチレンである、上記の回収方法。
〔10〕ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とからなる溶液から、ポリマーと溶剤とを分離する方法であって、
(1)溶液を支持体に接触させ該支持体上に液膜を形成させ、
(2)前記液膜を加熱し、
(3)ついで前記加熱により蒸発した溶剤を冷却し凝縮する、
ことを特徴とするポリマーと溶剤の分離方法(以下、本発明の分離方法という)。
〔11〕支持体が回転体である、上記の分離方法。
〔12〕実質的な密閉空間内で行なう、上記の分離方法。
〔13〕ポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、かつ溶剤が塩化メチレンである、上記の分離方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回収装置、回収方法及び分離方法により、ポリカーボネート等のポリマーを塩化メチレン等の溶剤に溶解した溶液から、ポリマーと溶剤を、比較的低温で、かつ小さな設備で、効率的に分離し回収することができる。そして、該ポリマー及び溶剤は元の原料の状態と基本的に変質していないため、これらを無駄なく有効に再活用することができる。比較的高温の操作では無いので回収装置の外周部を耐薬品性、耐熱性の透明高分子樹脂材料などで作ることができる。また、装置全体をかかる材料で何重にも覆うことができる。こうすることによって、使えば外部から中の装置の運転状況がわかり、トラブル発生時など対応がしやすくなり、溶剤が何らかのトラブルで外部に散逸することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の回収装置について説明する。
本発明の回収装置は、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を分離し回収する装置であり、溶液貯槽部、液膜形成部、液膜乾燥部、液膜剥離部、液膜搬送部、及び溶剤回収部、を含む。
【0013】
ここで、前記ポリマーとしては、このポリマーを溶解し得る溶剤との組み合わせによって決定されるが、一般に溶解性の点を考慮すると、前記ポリマーは基本的に非晶性である熱可塑性高分子がよく、例えば、芳香族系ポリカーボネート、ポリアリレート、シクロオレフィン共重合ポリマー(非晶性ポリオレフィン)、ポリエーテルスルフォンなどを挙げることができる。これらのポリマーは、2種類以上用いてもよいが、ポリマーを回収して再利用する場合には、できればポリマーは1種類の方がよい。
【0014】
溶剤としては、上記ポリマーを溶解し得るものであることが必要である。例えば、ポリマーが芳香族ポリカーボネートの場合には、かかる溶剤としては、塩化メチレン、1,3−ジオキソラン等が例示できる。ポリアリレートの場合には、塩化メチレンが例示できる。非晶性ポリオレフィンの場合には、キシレンやトルエンが例示できる。この中で、本発明においては溶剤の沸点が高すぎないものを用いる方が(例えば沸点が60℃以下、好ましくは20℃〜60℃)、回収装置が設備的に小さくて済み、溶剤の回収効率も高いので好ましい。また、これらの溶剤は2種類以上用いてもよいが、溶剤を高効率で回収して単体で再利用する場合には、できれば溶剤は1種類の方がよい。
【0015】
上記ポリマーを溶剤に溶解した溶液における、ポリマーの濃度としては、用いる溶媒の溶解能、ポリマーの分子量、繰返し単位の構造などにより一概には言えないが、後述するように液膜を形成できることが重要で、通常は10〜30重量%の範囲である。例えばポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、溶剤が塩化メチレンの場合には、溶液のポリマー濃度は15〜25重量%の範囲が好適である。
【0016】
ポリマー及び溶剤を含む溶液中には、例えば可塑剤、滑材、耐熱安定剤、耐候剤などの他の成分が含有されていてもよい。しかしながら、かかる溶液から純度の高いポリマーを分離・回収するには、そのような他の成分は存在しないことが好ましい。特に、回収したポリマーを高い透明性が求められる光学用途などに適用するには他の成分は含有していないことが好ましい。
【0017】
本発明においては、上記溶液を、溶液貯槽部、液膜形成部、液膜乾燥部、液膜剥離部、液膜搬送部、及び溶剤回収部を含む装置を用いて、該溶液から溶剤を分離し回収する。
溶液貯槽部は、液膜形成部で液膜を形成させるために、上記溶液を一時的あるいは長い間保管したり保存し溜めておくため部分であり、いわゆる溶液槽である。かかる溶液槽は溶液の温度を一定に保てるものがよく、また溶液の濃度を均一にするために攪拌できる装置がついていてもよい。また溶媒に腐食されたり溶解されない材質のものでできている。
【0018】
溶液貯槽部中の前記溶液は次に液膜形成部で液膜化される。
この際前記溶液は、溶液貯槽部から直接、または連結管などを通して液膜形成部に運ばれる。
液膜形成部は、上記溶液が液膜化され膜状物が形成される部分である。該液膜形成部は膜状物を形成するための支持体を有する。支持体としては、金属製やプラスチックフィルムなどの平板やドラムなどの回転体を用いることができる。
【0019】
上記溶液はこの液膜形成部に、例えば20重量%の溶液(計算密度を1.33g/cmとする)を厚み1mm、1m幅の液膜として、1m/分の速度で吐出する場合、その吐出量は1.330kg/分の吐出量で吐出され(この中において、ポリカーボネートは0.266Kg/分、塩化メチレンは1.064Kg/分である)、支持体上に広がり、溶剤を十分に含有する液膜が形成される。
【0020】
この液膜はついで液膜乾燥部において乾燥され、溶剤を蒸発させ液膜中の溶剤量を減少させる。該液膜乾燥部は、上記液膜形成部から液膜剥離部に至るまでの間に配置される。該液膜乾燥は上記支持体の一部分で行なわれてもよいし、液膜剥離部において支持体から剥離されたあと継続して行なってもよい。液膜の乾燥は、例えばドライヤーなどで温風を吹きつけたり、雰囲気を減圧にしたり、これらを組み合わせて行なうことができる。乾燥温度としては、用いる溶剤によって適宜設定することができる。該溶剤の沸点付近かそれより少し高い温度で行うことができる。例えば溶剤として塩化メチレンを用いる場合には、30〜60℃の範囲が好ましい。
【0021】
液膜乾燥部で乾燥された液膜に含まれていた溶剤は蒸発、気化し、溶剤回収部で捕集される。捕集する方法としては、例えば冷却し液化する方法が簡便である。
液膜乾燥部で乾燥された液膜は、液膜剥離部において支持体から引き離される。このときの液膜中の溶剤の含有量としては、液膜が自立性のある程度であるのが好ましく、例えば、ポリマーを100とした場合に、10〜20重量%である。剥離された液膜は、必要に応じて液膜乾燥部においてさらに乾燥される。
【0022】
液膜剥離部において剥離された液膜は、液膜搬送部で搬送され、液膜中の溶剤が実質的に含まれない状態か、あるいは所望の含有量としたのちフィルムとして回収される。液膜搬送部は、通常フィルムを搬送させる公知のものを使用することができるが、例えば搬送ロール、ニップロールを挙げることができる。
【0023】
本発明においては、上記操作を一つの装置内で行い、その装置は実質的に密閉であることが好ましい。すなわち、溶液貯槽部、液膜形成部、液膜乾燥部、液膜剥離部、液膜搬送部、及び溶剤回収部は、実質的に密閉空間中に配置されることにより、溶剤を大気中に放出することなく回収することができる。実質的にとは、溶剤と分離して最終的に得たフィルムを回収装置外(該密閉空間外)へ取り出す場合において、かかる部分が構造的に密閉にならない場合を指す。
【0024】
以下、本発明を図面を用い具体例にて詳細に説明するが、本発明はこれに限られたものではない。
なお、以下のおいては、ポリマーとしてポリカーボネートを用い、溶剤として塩化メチレンを用いた場合を説明する。
【0025】
図1は本発明の装置の全体の概略図の一例を示している。図中1は本発明の装置の概略を点線で囲って示している。この図において、点線で囲った部分が本発明の回収装置である。
溶液槽2に分離回収するためのポリカーボネートの塩化メチレン溶液を流し込む、この液面を極力一定高さに保つようにするため、より大きな溜めタンク100との間の連通管方式で結ぶか、液面計を設置してその高さを一定に保つように工夫する。溶液槽2において、溶媒の蒸発を早めるとその蒸発潜熱によって槽が冷えるので、温度が下がり過ぎないように槽の外部から暖めると良い。槽の上液面はこの液面からの塩化メチレンの蒸発を防ぐために、隔壁3を置いて上側の雰囲気とは遮断するのがよい。こうして上からの温風4によって液面が乾燥し皮張るのを防ぐ。温風の温度は室温〜80℃がよい。
【0026】
また槽(回収装置または装置1)の内壁は塩化メチレンの蒸気が接触した場合冷却され凝縮して、内壁を伝って凝縮液体が流下できる構造にすると良い。用いられるポリカーボネートの溶液濃度は10〜30重量%、粘度が数千センチポイズ〜数万センチポイズとするのがよい。この程度の溶液粘度であれば溶液面5からドラム表面6に溶液の膜をつけて溶液を汲み上げることが容易である。この溶液汲み上げのためのドラムの表面は必要な場合耐薬品性の樹脂やフッソ系の樹脂で被覆して、半乾燥されたポリカーボネートの液を含む膜(液膜)がロールから容易に離れるようにする。またロール類6〜8の表面は硬質クロムメッキした後、サンドブラストする方法で表面を粗すなどを実施するのも液膜がロール表面から離れ易くするのに役立つ。ドラム、ロール類とこれを回動させる部品は塩化水素と極力接触しないようにするため表面を耐塩化メチレンの樹脂等を塗布したものを用いるなどの工夫が必要である。周囲の材料は塩化メチレンに侵されたり、塩化メチレンに溶けない高分子材料を用いることが望ましいが、各ロール表面も耐塩化メチレン製のプラスチック被覆などを実施すれば装置が腐食しにくいので更に好ましい。室温のように比較的低い温度でも塩化メチレンが除々に塩化水素を生成して、ゆっくりと金属類を腐食するからである。
【0027】
この際汲み上げられ形成された液膜の厚みは100μm〜数100μmの厚みとするのが液膜から塩化メチレンを蒸発させるのに好都合である。ドラム6は低くとも40℃以上の温度で内部から加温するようにする、この温度は高くとも60℃以下である、60℃を超えると水が含まれている場合(溶液中には一般に数百ppmの水が含まれている)、水が塩化メチレンと反応して塩化水素を急激に発生しやすくなるからである。この加熱温度が低すぎるとフィルムから効率的に塩化メチレンを蒸発させるのが難しい。このドラム6の直径は汲み上げる液膜の厚みとそれを乾燥する時間とを考慮して約2000mm、幅約500mmを用いるのが好ましい。ドラムの内部からの加温は50〜55℃の温風を用いるか、または内部に熱媒を流して加熱しても良い。ドラムの周速度は1m/分〜数m/分程度とする。ドラム6に液膜を約3/4周接触させた後、引き取りロール7を介して液膜をフィルムとしてドラムから剥離させて引取り、その後、フィルムの両面から温風吹きつけノズル4などを用いて乾燥温風を吹きつけて、次の搬送ロール8までの間でフィルムを搬送させながら乾燥させる。このときの温風の温度としては約80℃以下がよい、温風の温度は、剥離直後と、乾燥が進んだあととで、適宜変えてもよい。
【0028】
また、剥離する前の液膜がドラム上にある際に温風を吹きつけ乾燥させる場合には、温風の温度や風量も適宜制御して設定するのがよい。好ましい温風の温度範囲は40〜60℃である。
【0029】
フィルムを更に搬送ロール9に巻き掛けて乾燥室1(乾燥室1を回収装置1とするほうが良い)からフィルムとして取り出して、その後粉砕機で粉砕してフレークスを作成する。このフレークスは塩化メチレンに溶解させて再使用に供することができる。なお、フレークスにする前のフィルム中の残溜塩化メチレン量は15重量%以下にする。これが多い場合はフィルムを接触させておくと面同士が粘着するので本発明においては、粉砕前のフィルムの残溜塩化メチレンを15重量%以下、より好ましくは12重量%以下とするのが良い。
【0030】
一方フィルムから分離した空気の混合した気体状の塩化メチレンは溶剤回収部である冷却板(凝縮部)10で冷却して、液化させ、導管11を通じてきれいな水を張った曝気層(保管タンク101)の中に送り込んで、よく混合させて水と塩化メチレンとが反応して生成した塩化水素も水の中に溶かし込む。その後水と塩化メチレンの混合物を静置タンク102内で静置させて塩化メチレンと水の密度差(塩化メチレンが重いため下層、水層は上面)で分離させる。
【0031】
また、本発明の装置内にある塩化メチレンを混合した空気を空気輸送によって活性炭方式の吸着槽103に送って分離し、水蒸気で脱着させて曝気槽に送って、凝縮液体と同様に処理する。冷却板(凝縮部)10は蒸発した塩化メチレンを冷却して液化するための冷却板12を含む。この冷却板12は上側からまたは内側を水などで冷却する構造とするのが良い。また、この回収装置1の外壁の外側に水膜を流下させて冷却しても良い。冷却板(凝縮部)10や回収装置1の内壁で凝縮した塩化メチレンはこの壁面を流下して樋13の中に入り、次工程へ送られる。静置タンク102内の上澄み水は微量の塩酸を含むのでアルカリで中和させて排水する。こうして高温下で水と反応して生じた塩化水素は水系に除去できる。さらに塩化メチレンは次工程である、モレキュラーシーブによって脱水する仕組みの脱水槽104にて脱水して溶媒タンク(図は省略)に保管し、再使用する。
【0032】
なお溶液中のポリマーが一種以上が混合したものの場合は、フィルムとして回収したのち、解重合すれば個々のポリマーとして回収し再度原料としてリサイクルできる。
図2は、支持体がドラムの場合であり、溶液の支持体への付与方法が溶液を押出しダイ14のスリットからドラムの上に流下させ、次いで乾燥させる方式を示している。
図3は、溶液の汲み上げがベルト状の回動する支持体よりなる場合を示す。
【0033】
本発明の装置全体は、建屋に納め、万が一空気中に漏れだした塩化メチレンは空気と共に吸着槽に送って吸着させ再生させるようにするのが良い。この建屋の内壁は金属表面が剥き出しにならないようにする。これは塩化水素、塩酸による腐食を防ぐためである。
この際、耐溶剤性でかつ、塩化メチレン耐性が高いポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルムや耐塩化メチレン性が大でかつ耐熱性が優れるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレートなどの材料で先に述べた金属面を被覆したものを用いると更に良い。
【0034】
本発明の装置の運転は高温(例えば100℃以上)の操作がまず無いので装置の外周部を高分子樹脂材料などで作ることができる。こうすることによって例えば透明樹脂を使えば本発明の装置について外部から内部の運転状況が判り、異常発生時などに対応がしやすい利点がある。この装置全体を床から天井まで重量構造体以外はすべてプラスチック材料で囲った建屋に収納するのが良い。またプラスチック材料で何重にも建屋を覆えば、塩化メチレンが外気中に漏れ出すことを防ぐことができるので好ましい。各囲いの傍らの適当な場所に塩化メチレンの空気中濃度を常時監視できるように設備をすると更に好ましい。金属材料はSUS−316Lなどの耐腐食性の材料を用いるのが普通であるが、特に高温で塩化メチレンを含むガスと接触する部分の設備はハステロイなどの更に腐食に強い金属材料を用いるのが好ましい。
【0035】
かくして本発明によれば、例えば上記のような回収装置を用いることにより、本発明の回収方法が提供される。すなわち、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する方法であって、(1)溶液を支持体に接触させ該支持体上に液膜を形成させ、(2)前記液膜を加熱し、(3)ついで該液膜を前記支持体から剥離させ、(4)剥離した液膜を搬送しフィルムとして取り出し、(5)一方、前記加熱により蒸発した溶剤を冷却により捕捉することによって溶剤を回収する方法である。このような本発明の回収方法は、上記説明によって十分理解される。
【0036】
また上記装置により、本発明の分離方法、すなわち、ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とからなる溶液から、ポリマーと溶剤とを分離する方法であって、(1)溶液を支持体に接触させ該支持体上に液膜を形成させ、(2)前記液膜を加熱し、(3)ついで前記加熱により蒸発した溶剤を冷却し凝縮する、ポリマーと溶剤の分離方法が提供される。このような本発明の分離方法は、上記説明によって十分理解される。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
図1に示した、溶液槽2にポリカーボネートの塩化メチレン溶液20重量%を外部の溶液溜めタンク100から流入させた。タンク100とこの溶液槽2の温度は15〜18℃に保持した。このタンクの液面は一定になるようにタンク100からの流量を自動調節して維持した。このようにして、溶液の液面5を汲み上げロール(ドラム)6の下面にわずか接触するようにして、溶液をロール上に液膜として汲み上げた。液膜の厚みは約250μmとなるようにロールの速度を調整した。この際汲み上げロールをロール内面から55℃になるように温風で加熱するようにした。この加熱によって液膜の乾燥が早く進む。液膜の塩化メチレン量が約20%になったところで冷却ロールから半乾燥フィルムを剥がし、引き取りロール7を介して引き上げ、次の搬送ロールを通して装置の外に出した。引き取りロール7と搬送ロール8の空間でフィルムを両面から55℃の温風を吹き付けて更に乾燥した。液膜から放出され槽の中にある塩化メチレンは図に示した冷却板(凝縮部)10で冷却して、凝縮させ、傾斜させて設置してある流路を通して流下させ樋13に集めた。また、外周壁面で凝縮した塩化メチレンは壁を伝って樋13に集められ、溶媒導管11を通って次の工程に送られる。搬送ロール8,9を通じて回収装置の外に出たフィルムは厚み約50μmであった。こうして得られたフィルムの塩化メチレンの残量は5重量%であった。これを更に粉砕機に掛けフレークス状の粉砕品を得た。これを再度塩化メチレンに溶解し、溶液製膜し、光学フィルムを作成した。このフィルムの特性は、分子量、色相、異物などが回収をしないで製膜した新品のポリカーボネートフィルムと変わらず、この回収操作によりポリカーボネート樹脂の実質的な劣化(変化)は起こってないことが確認された。
【0038】
溶液から分離された塩化メチレンは次の工程である保管タンク101に蓄えた。そして、この分離槽の中にある塩化メチレン蒸気は空気と共に活性炭を媒体とする塩化メチレンの吸着槽(活性炭層)103に送り込んで塩化メチレンと空気とを分離した。吸着された塩化メチレンを水蒸気で脱着して次工程の保管タンク101〜102に蓄えた。その後、この含水塩化メチレンを、モレキュラーシーブを脱水剤として用いる脱水装置104に通して水分を除き、新品の塩化メチレンと同様にして再使用した。この塩化メチレンの純度について、揮発成分、不揮発成分、並びに酸成分等を分析したところ、新品の塩化メチレンと実質的に変化が無いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の回収装置、回収方法及び分離方法は、ポリマーと溶剤とを分離し回収できるので、それぞれを原料として再利用することができ、また環境に配慮したものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の装置の一概念図である。
【図2】本発明の装置の一概念図である。
【図3】本発明の装置の一概念図である。
【符号の説明】
【0041】
1 回収装置
2 溶液槽
3 隔壁
4 温風吹きつけノズル
5 溶液面
6 ドラム
7 引き取りロール((溶)液膜剥離部)
8 搬送ロール(ニップロール)
9 搬送ロール(ニップロール)
10 冷却板(凝縮部)
11 溶媒導管
12 冷却板
13 樋
14 押出しダイ
100 溶液溜めタンク
101 保管タンク
102 静置タンク
103 吸着槽(活性炭層)
104 脱水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する装置であって、
溶液貯槽部、液膜形成部、液膜乾燥部、液膜剥離部、液膜搬送部、及び溶剤回収部、を含むことを特徴とする、溶剤の回収装置。
【請求項2】
液膜形成部は、溶液と接触するための回転体を含むものである、請求項1記載の回収装置。
【請求項3】
溶剤回収部は、溶剤を液体として捕捉する凝縮部を含むものである、請求項1または2記載の回収装置。
【請求項4】
実質的な密閉空間内にある、請求項1〜3のいずれかに記載の回収装置。
【請求項5】
ポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、かつ溶剤が塩化メチレンである、請求項1〜4のいずれかに記載の回収装置。
【請求項6】
ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とを含む溶液から、溶剤を回収する方法であって、
(1)溶液を支持体に接触させ該支持体上に液膜を形成させ、
(2)前記液膜を加熱し、
(3)ついで該液膜を前記支持体から剥離させ、
(4)剥離した液膜を搬送しフィルムとして取り出し、
(5)一方、前記加熱により蒸発した溶剤を冷却により捕捉して回収する、
ことを特徴とする溶剤の回収方法。
【請求項7】
支持体が回転体である、請求項6記載の回収方法。
【請求項8】
実質的な密閉空間内で行なう、請求項6または7記載の回収方法。
【請求項9】
ポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、かつ溶剤が塩化メチレンである、請求項6〜8のいずれかに記載の回収方法。
【請求項10】
ポリマーと該ポリマーを溶解した溶剤とからなる溶液から、ポリマーと溶剤とを分離する方法であって、
(1)溶液を支持体に接触させ該支持体上に液膜を形成させ、
(2)前記液膜を加熱し、
(3)ついで前記加熱により蒸発した溶剤を冷却し凝縮する、
ことを特徴とするポリマーと溶剤の分離方法。
【請求項11】
支持体が回転体である、請求項10記載の分離方法。
【請求項12】
実質的な密閉空間内で行なう、請求項10または11記載の分離方法。
【請求項13】
ポリマーが芳香族ポリカーボネートであり、かつ溶剤が塩化メチレンである、請求項10〜12のいずれかに記載の分離方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−119550(P2007−119550A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311253(P2005−311253)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】