説明

溶剤可溶性ポリイミド共重合体及びポリイミドワニス

【課題】
高い溶剤可溶性を有し、且つ柔軟性に優れ、さらにシロキサン系のアウトガスを実質的に発生させないポリイミド共重合体を提供する。
【解決手段】
(A)成分:
(a1)エステル基を含有するテトラカルボン酸二無水物、及び、
(a2)3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
並びに、
(B)成分:
(b1)エーテル基を含有する芳香族ジアミン、及び、
(b2)オキシアルキレン基を含有するジアミン
とを、イミド化して得られるポリイミド共重合体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤可溶なポリイミド共重合体に関し、より詳しくは、シロキサン系アウトガスを実質的に発生しない、溶剤溶解性に優れ且つ柔軟性及び耐熱性のバランスに優れたポリイミド共重合体、及び、該ポリイミド共重合体を含有するポリイミドワニスを提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子材料分野、光学材料分野においては、小型化、薄型化、軽量化等への対応の必要性から、耐熱性、安定性、電気特性等に優れる樹脂として、ポリイミドが各種基材の、接着、絶縁、保護などの用途に用いられている。この用途に用いられるポリイミドは、通常ワニスの形態で供給されているが、一般に、(i)ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を溶解したタイプと、(ii)溶剤可溶なポリイミドを溶解したタイプとの2種に大別される。前者の場合、硬化物を得るためには、脱溶剤と同時にイミド化反応とを行う必要があるため、乾燥、硬化処理には、300℃以上の温度が必要であり、係る温度では、電子部品が劣化、損傷する虞が有るため好ましくない。更に、イミド化の際に発生する水が、ポリイミド硬化物に、欠陥を形成したり、ボイド、膨れ、或いは基材との間に、空隙を生じさせ、接着不良、絶縁不良を引き起こす原因となっている。一方、後者の場合には、イミド化反応は完結しているため、硬化物を得るには、溶剤を揮発させるだけで良い。そのため、処理温度を低くすることができる上、イミド化反応に伴う水の発生が無いため、欠陥の少ない硬化物が得られやすい利点を有している。
【0003】
しかしながら、従来公知の溶剤可溶性のポリイミドは、分子鎖が剛直なため、耐熱性には優れるものの、柔軟性に欠け、屈曲性に劣る傾向が見られた。これらの性能を改善する目的で、ジアミン成分として、ポリシロキサンジアミンを原料とした溶剤可溶なポリイミドが提案されている(特許文献1〜4)。しかし、このポリイミドにおいては柔軟性の向上や低吸湿率化が認められるものの、高温下で、多量のシロキサン系のアウトガスが発生する等の問題点を有している。シロキサン系アウトガスは、ポリイミド被膜に欠陥を与えたり、ポリイミドと基材との密着性を低下させる原因となる。更に基板等の半導体部品の殆どはシリコン系無機材料であり、シロキサン系アウトガスは、これらと親和性が高く容易に反応し、半導体としての信頼性を低下させる原因となるため好ましくない。
【0004】
また、ポリオキシアルキレン鎖を含むブロック共重合ポリイミドが、柔軟性、熱安定性に比較的優れた熱可塑性エラストマーとして提案されている(特許文献5)。しかしながら、該熱可塑性エラストマーは、ガラス転移温度(Tg)が約−80℃と低く、ゴムの代替用途としては使用可能ではあるが、電気・電子材料分野や光学材料分野等の耐熱性を要求される材料としては、満足できるものではなかった。
【0005】
更に、近年の環境問題への意識、省エネルギー化への要望の中で、溶剤含有量の少ない、即ちポリイミド樹脂濃度が高いポリイミドワニスが求められている。しかしながら、ポリイミド樹脂の濃度を高めると、ワニス粘度の安定性が悪くなり、保管中に不溶物が析出したり、粘度が高くなったりする等の問題点が生じるため、ポリイミド樹脂濃度の高いポリイミドワニスを得ることは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−331285号公報
【特許文献2】特開平9−40777号公報
【特許文献3】特開平10−218993号公報
【特許文献4】特開2000−103848号公報
【特許文献5】特開平5−262875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶剤溶解性が特に高く、ポリイミドワニスの粘度安定性に優れ、且つ柔軟性と耐熱性のバランスに優れ、実質的にシロキサン系のアウトガスを発生させない溶剤可溶性のポリイミド共重合体、及び、該ポリイミド共重合体を含有するポリイミドワニス、及びそれから得られるポリイミド成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、ポリイミド共重合体の開発過程において、次の知見を得た。
(1)ポリイミド共重合体の酸成分として、エステル基含有の酸無水物と、スルホン基含有の酸無水物とを併用することにより、柔軟性に優れ、且つ高い溶剤溶解性のポリイミド共重合体が得られること。
(2)ポリイミド共重合体のジアミン成分として、ポリオキシアルキレン基含有ジアミンと、芳香族ジアミンを併用することにより、柔軟性と耐熱性のバランスに優れたポリイミド共重合体が得られること。
(3)上記(1)と上記(2)との要件を充足するポリイミド共重合体の溶剤可溶性が極めて高いこと。
(4)酸成分をジアミン成分に対して過剰量用いてイミド化することによって得られるポリイミド共重合体のワニスは、保存安定性(粘度安定性)に優れること。。
(5)更に、フェノール系酸化防止剤を含有させることにより、熱劣化が抑制され、長期加熱後にも優れた柔軟性を保持し得ること。
本発明は係る知見に基づいて完成されたものであり、以下のポリイミド共重合体及びボリイミドワニスを提供するものである。
【0009】
[項1](A)成分:
(a1)一般式(1)
【化1】

[式中、Xは、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、1,3−フェニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。]
で表される少なくとも1種のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物、及び、
(a2)一般式(2)
【化2】

で表される3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
並びに、
(B)成分:
(b1)一般式(3)
【化3】

[式中、Yは−O−、−SO−、−C(CH−又は−C(CF−を表す。]
で表される少なくとも一種の芳香族ジアミン、及び、
(b2)一般式(4)
【化4】

[式中、R、R、Rはそれぞれ水素又はメチル基を表す。Aは、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。h、i、jは、それぞれ0〜50の整数を表し、且つh+i+jの合計は2〜50の整数を表す。]
で表される少なくとも一種のオキシアルキレン基含有ジアミン
を、イミド化して得られるポリイミド共重合体。
【0010】
[項2] (A)成分と(B)成分とのモル比が、(A):(B)=1.01〜1.20:1である上記項1に記載のポリイミド共重合体。
【0011】
[項3] ポリイミド共重合体が、酸価1〜50mgKOH/gである上記項1又は2に記載のポリイミド共重合体。
【0012】
[項4] (a1)成分と(a2)成分とのモル比が、(a1):(a2)=95:5〜40:60である上記項1〜3のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【0013】
[項5] (b1)成分と(b2)成分とのモル比が、(b1):(b2)=90:10〜10:90である上記項1〜4のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【0014】
[項6] Xがエチレン基である上記項1〜5のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【0015】
[項7] h、i、jがそれぞれ0〜35の整数であり、且つh+i+jの合計が12〜35の整数である上記項1〜6のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【0016】
[項8] Aがテトラメチレン基である上記項1〜7に記載のポリイミド共重合体。
【0017】
[項9] 上記項1〜8のいずれかに記載のポリイミド共重合体及び有機溶剤からなるポリイミドワニス。
【0018】
[項10] ポリイミド共重合体100重量部に対して、有機溶剤が80〜10000重量部である上記項9に記載のポリイミドワニス。
【0019】
[項11] 有機溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項9又は10に記載のポリイミドワニス。
【0020】
[項12] 更に、ポリイミド共重合体100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤0.01〜5重量部含有する上記項9〜11のいずれかに記載のポリイミドワニス。
【0021】
[項13] 上記項9〜12のいずれかに記載のポリイミドワニスから得られるポリイミド成形体。
[項14] 少なくとも4つの構造単位を有する溶剤可溶性ポリイミド共重合体であって、4つの構造単位が、
(i)一般式(5)
【化5】

[式中、Xは、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、1,3−フェニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。Yは−O−、−SO−、−C(CH−又は−C(CF−を表す。]
で表される構造単位の少なくとも1種、
(ii)一般式(6)
【化6】

[式中、Xは一般式(5)におけると同義である。R、R、Rは、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜4のアルキレン基を表す。h、i、jは、それぞれ0〜50の整数を表し、且つh+i+jの合計は2〜50の整数を表す。]
で表される構造単位の少なくとも1種、
(iii)一般式(7)
【化7】

[式中、Yは一般式(3)におけると同義である。]
で表される構造単位の少なくとも1種、及び
(iv)一般式(8)
【化8】

[式中、R、R、R3は、それぞれ一般式(6)におけると同義である。Aは、一般式(6)におけると同義である。h、i、jはそれぞれ0〜50の整数を表し、且つh+i+jの合計は2〜50の整数を表す。]
で表される構造単位の少なくとも1種、
である溶剤可溶性ポリイミド共重合体。
【0022】
[項15] 一般式(5)及び一般式(6)で表される構造単位の合計が、一般式(5)乃至一般式(8)で表される構造単位中の40〜95モル%であり、一般式(7)及び一般式(8)で表される構造単位が、一般式(5)乃至一般式(8)で表される構造単位中の60〜5モル%である上記項14に記載の溶剤可溶性ポリイミド共重合体。
【0023】
[項16] 一般式(5)及び一般式(7)で表される構造単位の合計が、一般式(5)乃至一般式(8)で表される構造単位中の40〜90モル%であり、一般式(6)及び一般式(8)で表される構造単位の合計が、一般式(5)乃至一般式(8)で表される構造単位中の60〜10モル%である上記項14又は15に記載の溶剤可溶性ポリイミド共重合体。
【0024】
[項17] X1がエチレン基である上記項14〜16のいずれかに記載の溶剤可溶性ポリイミド共重合体。
【0025】
[項18] h、i、jがそれぞれ0〜35の整数であり、且つh+i+jの合計が12〜35の整数である上記項14〜17のいずれかに記載のポリイミドランダム共重合体。
【0026】
[項19] Aがテトラメチレン基である上記項14〜18のいずれかに記載の溶剤可溶性ポリイミドランダム共重合体。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲において、(A)成分のモル数は、(a1)成分モル数と(a2)成分モル数との合計であり、同様に、(B)成分のモル数は、(b1)成分モル数と(b2)成分モル数との合計である。よって、「(A)成分の(B)成分に対するモル比は、[(a1)成分モル数+(a2)成分モル数]の[(b1)成分モル数+(b2)成分モル数]の比を指す。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、次のような優れた効果が奏される。
(1)本発明で使用する上記(a1)成分、(a2)成分、(b1)成分及び(b2)成分をイミド化してえられたポリイミド共重合体は、これら4成分に由来する構造をバランス良く含有しているために、ポリイミド本来の高い耐熱性、電気絶縁性等に優れているだけではなく、ポリアミド酸型でないにもかかわらず、溶剤への溶解性が高いという利点を有する。
(2)また、本発明のポリイミド共重合体は、柔軟性に優れている。
(3)さらに、本発明のポリイミド共重合体は、ポリアミド酸型でもなく、シロキサン含有タイプでもないため、塗布、乾燥工程において、水、シロキサン系アウトガスを発生させることが実質的にない。
(4)イミド化の際に、酸成分をアミン成分に対して過剰に使用して得られるポリイミド共重合体を含有するポリイミドワニスは、保存安定性(粘度安定性)に優れている。
(5)更に、フェノール系酸化防止剤を含有したポリイミドワニスから得られるポリイミド成形体は、長期加熱後にも優れた柔軟性を保持し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ポリイミド共重合体
本発明のポリイミド共重合体は、テトラカルボン酸二無水物(A)と、ジアミン(B)とを常法に従ってイミド化して得られる溶剤可溶性のポリイミド共重合体である。該ポリイミド共重合体は、(A)成分として、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物(a1)及び、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(a2)を使用し、(B)成分として、エーテル基含有芳香族ジアミン(b1)及び、ポリオキシアルキレンジアミン(b2)を使用し、これら(A)成分と(B)成分とを、好ましくは不活性ガス雰囲気下、有機溶剤中で加熱撹拌しながらイミド化反応に供することにより調製される。得られるポリイミド共重合体は、通常、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)及び一般式(8)で表される4つの構造単位を有する溶剤可溶性のポリイミドランダム共重合体である。
【0030】
テトラカルボン酸二無水物(A)成分
本発明のポリイミド共重合体の製造に際しては、(A)成分として、下記(a1)成分及び(a2)成分の2種類を使用する。
【0031】
(a1)成分は、一般式(1)で表され、具体的には、1,2−エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロピレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−テトラメチレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,5−ペンタメチレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサメチレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−フェニレンビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−フェニレンビス(アンヒドロトリメリテート)等が例示される。これらの中でも、耐熱性と柔軟性のバランスに特に優れる点から、1,2−エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)が推奨される。
【0032】
(a1)成分は、単独で又は2種以上を組み合わせてイミド化反応に供することができる。
【0033】
(a2)成分は、一般式(2)で表される3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物である。
【0034】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物が例示される。これらのうち、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]−ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等、ビシクロ[2,2,2]−オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0035】
芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等が挙げられる。
【0036】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0037】
ジアミン(B)成分
本発明のポリイミド共重合体の製造に際しては、(B)成分として、下記(b1)成分及び(b2)成分の2種類を使用する。
【0038】
(b1)成分は、一般式(3)で表され、具体的には、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]トリフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]トリフルオロプロパン等が例示される。これらの中でも、柔軟性と耐熱性のバランスに特に優れる点から、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホンが推奨される。
【0039】
上記(b1)成分は、単独で又は2種以上を混合して、イミド化反応に供することができる。
【0040】
(b2)成分は、一般式(4)で表され、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシテトラメチレン基からなる群から選ばれる少なくとも一種のオキシアルキレン基を繰り返し単位として有するオキシアルキレン基含有ジアミンが例示される。
【0041】
上記(b2)成分の中でも、柔軟性に優れる点から、テトラメチレン基を含有するポリオキシアルキレン基含有ジアミン、即ち、Aがテトラメチレン基であるものが好ましい。
【0042】
h、i、jの値は、それぞれ0〜50、好ましくはそれぞれ0〜35の整数であり、且つh+i+jの合計は2〜50、好ましくは5〜35、より好ましくは12〜35の整数である。かかる範囲内において、特に、柔軟性と耐熱性のバランスに優れたポリイミド共重合体が得られるため好ましい。
【0043】
また、上記(b1)成分は、市販されており、市販品の具体例としては、HUNTSMAN社製 JEFFAMIN D−230、D−400、D−2000、XTJ00(ED−600)、XTJ−502(ED2003)、EDR−148、XTJ−542、XTJ−533、XTJ−536などが例示される。
【0044】
上記(b2)成分は、各々単独で又は2種以上組み合わせてイミド化反応に供することができる。
【0045】
さらに、本発明の効果を損ねない範囲で、当該分野で用いられている公知のジアミンを用いることができる。このようなジアミンの具体例としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)、9,9−ビス(3−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノ−3,3’5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’5,5’−テトラプロピルジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの脂肪族(脂環式含む)ジアミンが挙げられる。
【0046】
イミド化反応
本発明のポリイミド共重合体は、上記(A)成分と(B)成分とから公知の方法にて従って製造することができる。例えば、有機溶剤中にて(A)成分と(B)成分とを重縮合反応する方法が挙げられ、その際のイミド化の方法としては、(1)(A)成分と(B)成分とを有機溶剤中で加熱し生成水を系外に留去させる方法や、(2)ポリイミド前駆体であるポリアミド酸を製造後、無水酢酸等の脱水作用のある化合物を使用する方法等がある。
【0047】
上記製造方法(1)、(2)のうち特に(1)の方法が工業的に好ましい。(1)の、より具体的な方法として、有機溶剤中に(A)成分及び(B)成分を溶解させた後、100〜250℃に加熱し、共沸溶剤により反応系中の生成水を留去して重縮合反応することにより本発明のポリイミド共重合体を得る方法が例示できる。
【0048】
イミド化反応に際して、(A)成分の(a1)成分と(a2)成分との使用比率は特に限定されないが、得られるポリイミド共重合体の柔軟性と溶剤溶解性に優れる点で、反応開始時の(a1)成分と(a2)成分とのモル比が、(a1):(a2)=95:5〜40:60の範囲が好ましく、特に好ましくは、(a1):(a2)=60:40〜40:60の範囲が推奨される。
【0049】
また、使用する(B)成分の(b1)成分と(b2)成分との使用比率は、特に限定されないが、得られるポリイミド共重合体の柔軟性と耐熱性のバランスに優れる点で、反応開始時の(b1)成分と(b2)成分とのモル比が、(b1):(b2)=90:10〜10:90の範囲が好ましく、特に、(b1):(b2)=90:10〜40:60の範囲が推奨される。
【0050】
さらに、(A)成分と(B)成分との使用比率は、特に限定されないが、通常、反応開始時の(A)成分:(B)成分のモル比が、0.9〜1.5:1である。ポリイミドワニスの粘度安定性に優れる点から、(A)成分と(B)成分とのモル比が、(A):(B)=1.01〜1.20:1が好ましく、ポリイミド樹脂の機械物性に優れる点から、(A)成分と(B)成分のモル比が、(A):(B)=1.0〜1.05:1の範囲であることが推奨される。
【0051】
その他本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、耐熱性や接着性向上、分子量制御等を目的に1官能の酸無水物やアミン等のエンドキャップ剤を併用することができる。係るエンドキャップ剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物、アニリン、メチルアニリン、アリルアミン等モノアミン化合物などが挙げられる。
【0052】
イミド化反応の際に使用する有機溶剤としては、非プロトン性極性溶剤が好適に用いられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジメチルイミダゾリドン、ジグライム、トリグライム、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン等が例示され、これらは単独で又は混合系として用いることもできる。これらのうち特に、重合性、粘度安定性の点からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0053】
有機溶剤の使用量としては、(A)成分及び(B)成分の総重量に対して、通常100〜1000重量%、好ましくは、200〜800重量%の範囲が例示される。
【0054】
また、反応の際に、イミド化反応により生成する水を系外へ効率良く取り出す目的で、有機溶剤の一部を共沸溶剤に代えることができる。該共沸溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が例示される。これらの共沸溶剤を使用する場合、その使用量は、通常、全有機溶剤中の1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲が推奨される。
【0055】
反応時間としては、(A)成分の種類及び(B)成分の種類、(A)成分と(B)成分とのモル比等により異なるが、通常0.5〜24時間が好ましい。
【0056】
本発明のポリイミド共重合体の分子量には特に制限がないが、溶剤溶解性、機械的強度、熱特性のバランスに優れる点で、数平均分子量としては、5,000〜100,000、好ましくは8,000〜50,000、特に好ましくは10,000〜35,000の範囲が例示され、重量平均分子量としては、10,000〜200,000、好ましくは15,000〜100,000、より好ましくは20,000〜100,000、特に好ましくは25,000〜80,000の範囲が例示される。尚、ここでいう分子量は、後述の実施例に記載の方法で測定した分子量である。
【0057】
本発明のポリイミド共重合体の酸価としては特に制限がないが、得られるポリイミドワニスの粘度安定性に優れる点から、酸価が1〜50mgKOH/g、好ましくは2〜30mgKOH/g、特に好ましくは5〜30mgKOH/gの範囲が例示される。
【0058】
本発明のポリイミド共重合体のガラス転移温度(Tg)としては、柔軟性及び耐熱性の点から0〜120℃の範囲が範囲が好ましく、特に20〜100℃の範囲が推奨される。Tgが0℃より低い場合には、耐熱性に劣る傾向があり、Tgが120℃より高い場合には、柔軟性に劣る傾向が見られ好ましくない。
【0059】
本発明のポリイミド共重合体の引張弾性率としては、柔軟性の点から300〜2000Mpa、特に500〜1500Mpaの範囲が好ましい。
【0060】
かくして得られる重合溶液は、本発明のポリイミド共重合体を含有するポリイミド樹脂溶液である。該ポリイミド共重合体は、ポリイミド化反応時の、(a1)成分及び(a2)成分、並びに、(b1)成分及び(b2)成分に由来する構造単位を有している。前記4成分から得られるポリイミド共重合体は、通常、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)及び一般式(8)で表される4つの構造単位を有する溶剤可溶性のポリイミドランダム共重合体である。
【0061】
ポリイミドワニス
本発明のポリイミドワニスは、通常、本発明のポリイミド共重合体100重量部に対して、有機溶剤80〜10000重量部を含有している。ポリイミドワニスの粘度安定性及び取り扱いの容易さの点から、ポリイミド共重合体100重量部に対して、有機溶剤が100〜2000重量部が好ましく、更に好ましくは110〜500重量部、特に好ましくは、120〜300重量部の範囲が推奨される。
【0062】
ポリイミドワニスの製造方法としては、特に制限がなく、例えば、イミド化反応終了後の反応液をそのままポリイミドワニスとして用いることができる他、イミド化反応に用いた溶剤を低沸点の溶剤に置換したり、或いは、該ポリイミド樹脂溶液を加熱乾燥又は貧溶剤を添加するなどして本発明のポリイミド共重合体を単離した後、所望の有機溶剤に溶解してポリイミドワニスとすることができる。
【0063】
上記有機溶剤としては、原則としては、前記イミド化反応の際に使用した有機溶剤であるが、これに限らず、各種のものが使用でき、なかでも、非プロトン性極性溶剤が好適に用いられる。非プロトン性有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3−ジメチルイミダゾリドン、ジグライム、トリグライム、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン等が例示される。これらは単独で又は混合系として用いることもできる。これらのうち特に、ポリイミドワニスの粘度安定性、吸湿性の点からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0064】
また、ポリイミドワニスからポリイミド樹脂の塗膜を得る際に、乾燥工程を効率よく行う目的で、有機溶剤の一部を低沸点溶剤に代えることができる。係る低沸点溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が例示される。これらの低沸点溶剤を使用する場合、その使用量は、全有機溶剤量に対して、1〜30重量%、好ましくは、5〜20重量%の範囲が推奨される。
【0065】
更に、本発明のポリイミド共重合体100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤0.01〜5重量部を配合することにより、本発明のポリイミドワニスから得られるポリイミド成形体の耐熱性(長期加熱後の柔軟性の保持)を高めることができる。係る酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤等が例示され、この中でもフェノール酸化防止剤が好ましく、特に炭素数6〜100、より好ましくは炭素数10〜80のフェノール系酸化防止剤は、ポリイミド共重合体に、優れた耐熱性(長期加熱後の弾性率の保持率)を与える点で好ましい。このようなフェノール系化合物の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4−t−ブチルカカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−トコフェロール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。この中でも、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0066】
係る酸化防止剤は、1種で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの酸化防止剤は、使用する場合、ポリイミド共重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部の範囲が例示される。
【0067】
他の成分
本発明のポリイミドワニスには、必要に応じて、この分野で慣用されている成分を添加してもよい。例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂(本発明のポリイミド共重合体を除く。)、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの高分子化合物、難燃剤、消泡剤、などが例示される。
【0068】
かくして得られるポリイミドワニスは、絶縁塗料、金属、プラスチック等のポリイミド系コーティング材料として用いることができ、ポリイミドワニスを基材に塗布した後、乾燥することにより本発明のポリイミドの塗膜を得ることができる。さらに、該ポリイミドワニスを従来公知の方法に従ってキャスト、加熱脱溶剤することによりポリイミドフィルムを得ることもできる。さらに、本発明のポリイミド共重合体は、FPCやTABのベースフィルム又は接着フィルムとして、或いは電線の被覆材料などとして用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0070】
1.化合物の略号
TMEG:1,2−エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)((a1)成分)
DSDA:3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物((a2)成分)
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジ無水フタル酸
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン((b1)成分)
BAPS:ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン((b1)成分)
D−400:HUNTSMAN社製 「ジェファーミン D−400」、一般式(4)において、Aが1,2−プロピレン基、R〜R=メチル基、h+i+jの合計が5又は6であるポリオキシアルキレン基含有ジアミン((b2)成分)
D−2000:HUNTSMAN社製 「ジェファーミン D−2000」、一般式(4)において、Aが1,2−プロピレン基、R〜R=メチル基、h+i+jの合計が33であるポリオキシアルキレン基含有ジアミン((b2)成分)
XTJ−542:HUNTSMAN社製 「ジェファーミン XTJ−542」、一般式(4)において、Aがテトラメチレン基、R〜R=メチル基、h+i+jの合計が14であるポリオキシアルキレンジアミン((b2)成分)
DPE:4,4’−オキシジアニリン
TPE−R:1,3−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン
GBL:γ−ブチロラクトン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0071】
2.試験
(1)酸価
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド樹脂溶液約2gを精秤し、THF60mlで希釈した後、JIS K0070−1966に準じて酸価を測定し、ポリイミド共重合体純分に換算した。
【0072】
(2)分子量測定
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド樹脂溶液約1gをジメチルホルムアミド約30mlで希釈して、分子量測定用の試料溶液を調製した。該試料溶液について、ジメチルホルムアミドを移動相としたゲルパーミエーションクロマトクラフィー(GPC)により、ポリエチレンオキサイド換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0073】
(3)Tg(ガラス転移温度)(℃)
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド樹脂溶液を、ポリテトラフルオロエチレンシート上に塗布して、120℃、1.5時間の条件で乾燥して、厚み約50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを裁断して、約10mgをTg測定用試料とした。この測定試料について、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)を使用し、5℃から毎分10℃の昇温速度で昇温したときの変曲点をガラス転移点とした。
【0074】
(4)引張弾性率(MPa)
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド樹脂溶液を、ポリテトラフルオロエチレンシート上に塗布して、120℃、1.5時間の条件で、乾燥して、厚み約50μmのポリイミドフィルムを得た得られたポリイミドフィルムから、10mmx80mmの試料片を切り抜いて、測定用試料を作成した。この測定試料について、インストロン社製インストロン万能試験機を使用し、チャック間距離50mm、引張り速度10mm/min、試験温度25℃にて、弾性率(初期値)を測定した。
また、ポリイミドフィルムを150℃x100hrの条件下で加熱した後の弾性率(加熱後)を同様に測定した。
【0075】
(5)体積固有抵抗値(Ω・cm)
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド樹脂溶液を、ポリテトラフルオロエチレンシート上に塗布して、120℃、1.5時間の条件で、乾燥して、厚み約50μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを切断して15cmx15cmの試験片を作成した。この試料について、ADVANTEST社製の振動容量型エレクトロメーターTR8401、絶縁抵抗測定用電源TR300C、絶縁抵抗計TR43Cを使用し、印加電圧500V、25℃x60%RHの条件下で体積抵抗を測定した。
【0076】
(6)粘度
イミド化反応終了後の反応生成物であるポリイミド樹脂溶液について、B型粘度計を用いて、25℃の条件下で粘度を測定した。また、そのポリイミド樹脂溶液を25℃x60%RHの条件下で1ヶ月間保存した後に、粘度を測定した。
【0077】
実施例1
窒素導入管、撹拌機、留出口、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、GBL 270g、キシレン 30g、(A)成分として、TMEG 20.9g(0.051mol)(a1)、及びDSDA 18.2g(0.051mol)(a2)、(B)成分として、BAPP 24.6g(0.060mol)(b1)、及びD−400(平均分子量400)16.0g(0.040mol)(b2)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら、180℃まで昇温した。生成水を系外に留去させながらイミド化反応を5時間を行ない、樹脂濃度約20重量%のポリイミド化反応終了後の反応液を得た。このポリイミド化反応終了後の反応液を用いて、ポリイミド共重合体の重合度と酸価を測定した。又、この反応液の一部をメタノール中に投じ、沈殿したポリマーを室温、減圧下にて乾燥し赤外線吸収スペクトル分析を行った。その結果、1715cm−1、1780cm−1にイミド環に由来するカルボニル基の特性吸収を確認した。 また、ポリイミド化反応終了後の反応液から、ポリイミドフィルムを作成して、Tg、弾性率(初期値、加熱後)及び体積抵抗値の測定を行った。
【0078】
実施例2
実施例1で得られたポリイミド化反応終了後の反応液に、、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンをポリイミド共重合体100重量部に対して、酸化防止剤0.1重量部となるように溶解させてポリイミドワニスを作成した。このポリイミドワニスから、ポリイミドフィルムを作成し、Tg、弾性率、体積抵抗値の測定を行った。これらの結果を表1に示した。
【0079】
実施例3〜16
イミド化反応の原料組成比を、表1に記載の原料組成比とした以外は、実施例1と同様にして、イミド化反応を行い、得られたポリイミド化反応終了後の反応液を得た。実施例1と同様にしてポリイミド共重合体を単離したところ、これらは、いずれも赤外線吸収スペクトル分析において、1715cm−1、1780cm−1にイミド環に由来するカルボニル基の特性吸収があることを確認した。又、ポリイミド化反応終了後の反応液を用いて、ポリイミド共重合体の重合度と酸価を測定した。このイミド化反応終了後の反応液から、ポリイミドフィルムを作成して、Tg、弾性率(初期値)及び体積抵抗値を測定した。また、イミド化反応終了後の反応液に、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを、ポリイミド共重合体100重量部に対して、酸化防止剤として、0.1重量部となるように添加、溶解した後、ポリイミドフィルムを作成した。このフィルムを用いて、加熱後の弾性率を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0080】
比較例1
実施例1と同様にして、表2に記載の原料組成でイミド化反応させて溶剤可溶性ポリイミド共重合体を得た。これらは、いずれも赤外線吸収スペクトル分析において、1715cm−1、1780cm−1にイミド環に由来するカルボニル基の特性吸収があることを確認した。得られたポリイミド共重合体の分子量及び諸特性を表2に示す。得られたポリイミド共重合体のTg及び弾性率が高く、柔軟性に欠けていることが明かである。
【0081】
比較例2〜6
実施例1と同様にして、表2に記載の原料組成でイミド化反応を行ったが、反応終了後に樹脂が析出、ポリイミド樹脂溶液がゲル化し、溶剤可溶性のポリイミド樹脂は得られなかった。
【0082】
実施例17〜20
実施例1、3、4、14及び16で得られたポリイミド樹脂ワニスについて、製造直後の粘度と、1ヶ月保管後の粘度を測定した。その結果を表3に示した。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、耐熱性、柔軟性のバランスに優れた、シロキサン系アウトガスを実質的に発生させない、溶剤可溶なポリイミド共重合体を提供する事が可能できる。該ポリイミド共重合体は、電気・電子部品などのエレクトロニクス分野、光学材料分野、塗料、接着剤などの様々な分野で利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:
(a1)一般式(1)
【化1】

[式中、Xは、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、1,3−フェニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。]
で表される少なくとも1種のエステル基含有テトラカルボン酸二無水物、及び、
(a2)一般式(2)
【化2】

で表される3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
並びに、
(B)成分:
(b1)一般式(3)
【化3】

[式中、Yは−O−、−SO−、−C(CH−又は−C(CF−を表す。]
で表される少なくとも一種の芳香族ジアミン、及び、
(b2)一般式(4)
【化4】

[式中、R、R、Rはそれぞれ水素又はメチル基を表す。Aは、炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。h、i、jは、それぞれ0〜50の整数を表し、且つh+i+jの合計は2〜50の整数を表す。]
で表される少なくとも一種のオキシアルキレン基含有ジアミン
を、イミド化して得られるポリイミド共重合体。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分とのモル比が、(A):(B)=1.01〜1.20:1である請求項1に記載のポリイミド共重合体。
【請求項3】
ポリイミド共重合体が、酸価1〜50mgKOH/gである請求項1又は2に記載のポリイミド共重合体。
【請求項4】
(a1)成分と(a2)成分とのモル比が、(a1):(a2)=95:5〜40:60である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【請求項5】
(b1)成分と(b2)成分とのモル比が、(b1):(b2)=90:10〜10:90である請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【請求項6】
がエチレン基である請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【請求項7】
h、i、jがそれぞれ0〜35の整数であり、且つh+i+jの合計が12〜35の整数である請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【請求項8】
がテトラメチレン基である請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミド共重合体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリイミド共重合体及び有機溶剤を含有するポリイミドワニス。
【請求項10】
ポリイミド共重合体100重量部に対して、有機溶剤が80〜10000重量部である請求項9に記載のポリイミドワニス。
【請求項11】
有機溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9又は10に記載のポリイミドワニス。
【請求項12】
更に、ポリイミド共重合体100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤0.01〜5重量部を含有する請求項9〜11のいずれかに記載のポリイミドワニス。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載のポリイミドワニスから得られるポリイミド成形体。
【請求項14】
少なくとも4つの構造単位を有する溶剤可溶性ポリイミド共重合体であって、4つの構造単位が、
(i)一般式(5)
【化5】

[式中、Xは、炭素数2〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、1,3−フェニレン基又は1,4−フェニレン基を表す。Yは、−O−、−SO−、−C(CH−又は−C(CF−を表す。]
で表される構造単位の少なくとも1種、
(ii)一般式(6)
【化6】

[式中、Xは一般式(5)におけると同義である。R、R、Rは、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜4のアルキレン基を表す。h、i、jは、それぞれ0〜50の整数を表し、且つh+i+jの合計は2〜50の整数を表す。]
で表される構造単位の少なくとも1種、
(iii)一般式(7)
【化7】

[式中、Yは一般式(5)におけると同義である。]
で表される構造単位の少なくとも1種、及び
(iv)一般式(8)
【化8】

[式中、R、R、R3は、それぞれ一般式(6)におけると同義である。Aは、一般式(6)におけると同義である。h、i、jはそれぞれ0〜50の整数を表し、且つh+i+jの合計は2〜50の整数を表す。]
で表される構造単位の少なくとも1種、
である溶剤可溶性ポリイミド共重合体。

【公開番号】特開2006−22302(P2006−22302A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37203(P2005−37203)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】