説明

溶媒和していない結晶性1−(4−(2−ピペリジニルエトキシ)フェノキシ)−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−ヒドロキシナフタレン塩酸塩

本発明は、結晶性の溶媒和していない1−(4−(2−ピペリジニルエトキシ)フェノキシ)−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−ヒドロキシナフタレン塩酸塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
子宮平滑筋腫/平滑筋腫(子宮筋腫疾患)は、子宮筋腫、子宮肥大、子宮平滑筋腫、子宮筋肥大、子宮線維症(fibrosis uteri)、および線維性子宮炎(fibrotic metritis)を含む様々な名称で呼ばれている臨床に関する問題である。特に子宮筋腫は、子宮の壁に線維組織の不適切な沈着がみられる状態である。この状態は、女性の月経困難や不妊の原因である。
【0002】
子宮内膜症は、重篤な月経困難の状態であり、激しい痛み、子宮内または腹腔への出血を伴い、不妊につながることが多い。症状の原因は、正常なホルモン調節に不適当に応答し、不適当な組織に局在する場違いな内皮増殖と考えられる。内皮増殖が不適当な場所で存在するために、組織は、局所的な炎症様応答を開始し、マクロファージ浸潤および疼痛応答の開始につながる一連の事象を引き起こすと考えられる。子宮筋腫および子宮内膜症の原因がエストロゲンに対する線維組織および/または内皮組織の不適当な応答であると示唆する証拠がある。
【0003】
ここ十年で選択的なエストロゲンレセプター調節物質(SERM)を開示する多くの出版物が出ている。例えば,米国特許第5,484,795号,同第5,484,798号,同第5,510,358号,同第5,998,401号およびWO96/09040。これらのSERMの多くは、一般に言えば、骨および循環系において有益なエストロゲンアゴニスト活性を有すると同時に乳房において有益なエストロゲンアンタゴニスト活性を有することが分かっている。そのような化合物の小さくて特に有用な集団は、子宮においてエストロゲンアンタゴニスト効果を有することも分かっている。このSERMプロファイルを有する化合物は、子宮筋腫および/または子宮内膜症の処置において特に有望である。
【0004】
しかしながら、そのようなSERM化合物の、子宮筋腫および/または子宮内膜症の処置のための臨床上の使用は、特に閉経前の女性において、有意の卵巣刺激作用を有するその化合物の傾向によって阻まれている。従って、現在、卵巣を有意に刺激することなく子宮においてエストロゲンアンタゴニストとして振る舞う新しいSERM化合物に対する必要性は大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の要旨
本発明は、銅放射線源(CuKα、λ=1.54056Å)から得られるパターンが、2θで15.2±0.1、17.6±0.1、18.6±0.1および24.1±0.1°にピークを含んでなるX線回折パターンを有する、結晶性の溶媒和していない1−(4−(2−ピペリジニルエトキシ)フェノキシ)−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−ヒドロキシナフタレン 塩酸塩、すなわち次式で示される化合物(以下、「F−III」と称する)に関する。
【化1】

【0006】
本発明はさらに、F−IIIおよび製薬的な担体を含有する医薬製剤に関する。別の態様では、本発明の医薬製剤は、子宮内膜症および/または子宮平滑筋腫の治療において用いるために適合化することができる。
【0007】
本発明はさらに、子宮内膜症および/または子宮平滑筋腫を処置するための方法であって、必要とする患者に有効量のF−IIIを投与することを含んでなる方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、子宮内膜症および/または子宮平滑筋腫の処置において使用するためのF−IIIに関する。本発明はさらに、子宮内膜症および/または子宮平滑筋腫を処置するための医薬の製造のためのF−IIIの使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の詳細な記載
溶媒和していない結晶形であるので、F−IIIは、1−(4−(2−ピペリジニルエトキシ)フェノキシ)−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−ヒドロキシナフタレン塩酸塩の無水形態であると理解される。
【0010】
X線粉末回折(XRD)を用いてF−IIIの特徴付けを行った。XRDは結晶性の物質における長距離秩序(long-range order)を検出する技術である。X線粉末回折(XRD)パターンは、CuKα源(λ=1.54056Å)および最小50kVおよび40mAで作動するKevex固体状態Si(Li)検出器を取り付けたSiemens D5000X線粉末回折計によって得られた。サンプルのスキャンは、発散および受光スリット1mmおよび検出スリット0.1mmを用い、ステップサイズ0.02°(2θ)、最大スキャン速度3.0秒/ステップにて、4〜35°(2θ)の範囲で行った。合成フルオロ金雲母マイカ(NIST675)を内部標準として用いてサンプルの変位誤差を補正した。
【0011】
本明細書に開示したF−IIIに関するXRDパターンは、高度な結晶性を有する物質であることを示すシャープなピークとフラットなベースラインを特徴とする。
F−IIIの最大ピークと等しいかまたはその10%よりも大きい強度を有する全てのピークについての、2θでのピーク角の位置および対応するI/Ioデータを表1に示す。表1のすべてのデータの精度は±0.1°(2θ)である。
【表1】

【0012】
ある特定の結晶形に関して、結晶の形態や晶癖等の要因から生じる選択配向に起因して回折ピークの相対強度が変化し得ることは結晶学の分野においてよく知られている。選択配向の効果が存在する場合、ピーク強度は変わるが、多型の特徴的なピークの位置は変わらない。例えば、米国薬局方第23版、国民医薬品集、1843-1844頁、1995参照。さらに、ある特定の結晶形態に関して、ピーク角度の位置がわずかに変化することがあることは結晶学の分野ではよく知られている。例えば、ピークの位置は、分析するサンプルの温度の変動、サンプルの変位、または内部標準の存在あるいは不在に起因してシフトし得る。本発明の場合、±0.1°(2θ)のピーク位置の変動は、これらの潜在的な変動を考慮に入れて、本発明の結晶性の塩の明確な同定を妨げるものではない。
【0013】
また、13C交差分極マジックアングルスピニング(CP/MAS)NMR(固相NMRまたはSSNMR)を使用してF−IIIの特徴付けを行った。このスペクトルは100.573MHzの炭素周波数で作動するVarian Unity Inova 400 MHz NMR分光計を用いて得た。取得パラメーターは、以下のとおりである:90°プロトンr.f.パルス幅4.0μs、接触時間2.5ms、パルス繰り返し時間15s、MAS周波数10kHz、分光幅50kHz、および収集時間50ms。化学シフトは、サンプル置換により、ヘキサメチルベンゼン(δ=17.3ppm)のメチル基を参照した。Form IIIについての化学シフトデータは以下のとおりである:20.7、23.8、25.3、38.4、51.2、52.4、56.8、59.8、110.8、113.3、114.6、118.0、118.3、122.3、122.9、125.4、127.2、130.0、132.0、137.9、142.2、143.1、147.3、151.3、153.8、および158.0 ppm。
【0014】
製造例1
1−(2−{4−[2−(4−メタンスルホニル−フェニル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イルオキシ]−フェノキシ}−エチル)−ピペリジン塩酸塩
還流冷却器および窒素パージ用通気口を設けた三股フラスコに6−メトキシテトラロン(1.0当量)、4−ブロモフェニル−メチル−スルホン(1.02〜1.05当量)、酢酸パラジウムPd(OAC)2(0.025当量)、[(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)](DPEphosリガンド、0.026当量)およびトルエン10〜12体積を加えた。ナトリウムt-ブトキシド(2.5当量)を一度に加え、混合物を約40℃まで発熱させた。75℃〜80℃に加熱した。HPLC分析により判断して反応が完了したら、室温に冷却した。12体積の水を加えて温度を40℃未満に維持した。2〜3時間攪拌した。ポリプロピレンパッドを用いて濾過し、水(3x2体積)で洗浄した。フィルターケーキを50℃で一晩乾燥して2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−メトキシテトラロンを得た。
【0015】
2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−メトキシテトラロン(1.0当量)、ハイフロ(20%/重量)、およびトルエン(7.5体積)を混合した。PBr3(1.5〜1.75当量)を室温にて攪拌しながら一度に加えた。内容物を還流温度(約110℃)に一晩加熱した。HPLC分析により判断して反応が完結したら(通常15時間)、溶液を45℃または90℃に冷却し、20体積のテトラヒドロフラン(THF)をゆっくりと加えた。45℃または90℃にて30分間攪拌し、加温しながらハイフロのパッド上で濾過した。パッドを2×2体積のTHFで45℃または90℃にて洗浄した。濾液を約7体積まで濃縮した。残った混合物に7.5体積の水を加えて温度を40℃以下に維持した(注意:水を最初に添加したときには大量HBrの発生とともに非常に発熱する)。スラリーを室温へ冷却し、2〜3時間攪拌した。ポリプロピレンパッドで濾過し、2x2体積の水で洗浄した。フィルターケーキを、減圧下、60℃で一晩乾燥して1−ブロモ−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−3,4−ジヒドロ−6−メトキシナフタレンを得た。
【0016】
1−ブロモ−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−3,4−ジヒドロ−6−メトキシナフタレンおよび2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ、1.8当量)を10体積のアセトニトリルおよび5体積のTHF中で混合した。窒素雰囲気下、反応物を73〜75℃に加熱した。反応の進行を、反応が完結するまでGC解析でモニターした。反応の完結にはさらにDDQ(0.2−0.3当量)が必要であることもある。内容物を常温に冷却し、10体積の1N水酸化ナトリウムを加えた。約1時間攪拌し、濾過した。フィルターケーキを2体積の水、3x5体積の50%アセトニトリル/水、最後に3体積のメタノールでリンスした。フィルターケーキを65℃で減圧乾燥して1−ブロモ−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−メトキシナフタレンを得た。
【0017】
1−ブロモ−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−メトキシナフタレン、4−(2−ピペリジニルエトキシ)フェノール(2.0当量)、炭酸セシウム(2.0〜2.1当量)および塩化銅(0.15当量)を12体積のジグリムに加えた。フラスコを約2分間脱気した後、窒素でパージした。脱気/窒素パージを3回繰り返した。HPLC分析により判断して反応が完結するまで内容物を130℃に加熱した。反応が完結したら、内容物を常温近くまで冷却し、12体積の水酸化アンモニウムを加え、約30分間攪拌した。固体を濾取し、固体を9体積の30%MeOH/NH4OHで洗浄し、フィルター支持体上でこの固体をスラリー化した。固体を2×9体積の30%NH4OH/MeOHで洗浄し、フィルター支持体上でこの固体をスラリー化した。4体積のメタノールで洗浄した。フィルターケーキを60℃にて減圧乾燥して表題化合物の遊離塩基を得た。9体積のトルエン中で遊離塩基をスラリー化し、このスラリーを70〜75℃に加熱した。1.1当量の塩化水素ガスを2体積のエタノールに溶解した。このエタノール性HCl溶液を熱トルエンスラリーに加えた。溶液を常温に冷却し、1〜2時間攪拌した。濾過し、少量のトルエンで洗浄した。フィルターケーキを65℃で減圧乾燥して標題の化合物を得た。
【実施例】
【0018】
実施例1
F−III
1−(2−{4−[2−(4−メタンスルホニル−フェニル)−6−メトキシ−ナフタレン−1−イルオキシ]−フェノキシ}−エチル)−ピペリジン塩酸塩を5体積の1,2−ジクロロエタン(DCE)と混合し、混合物を10℃以下に冷却した。5当量の三塩化ホウ素を表面下で添加した。HPLC分析により判断して反応が完結するまで常温で攪拌した。反応物を、温度を<50℃に維持しながら、5.6体積の3A−エタノール(約5%メタノールでのエタノール変性)中にクエンチした。常温まで冷却し、1〜3時間攪拌した。固体を濾過し、フィルターケーキを3A−エタノールでリンスした。フィルターケーキを65℃で減圧乾燥した。この混合物のおよそ還流温度にて単離した生成物を9.8体積の3Aエタノールおよび1.5体積の脱イオン水に溶解した。この溶液を約30分間還流した後、混合物を常温に冷却した。常温にしたら、得られたスラリーを常温で1〜2時間攪拌した後、濾過し、フィルターケーキを3Aエタノールでリンスした。このフィルターケーキを、還流温度にて19体積のアセトニトリルおよび1.4体積の脱イオン水に溶解した。合計12.1体積の蒸留物が除去されるまで蒸留により水を共沸留去した。得られたスラリーを常温まで冷却し、濾過し、フィルターケーキをアセトニトリルでリンスして標題の化合物を得た。
【0019】
製剤(医薬組成物)
本発明の化合物は、好ましくは、患者に投与する前に単位投与剤型、即ち、個々の送達ビークル、例えば、錠剤またはカプセルに製剤化する。用語「患者」には、女性のヒトおよびヒトでない雌性動物、例えばコンパニオンアニマル(イヌ、ネコ、ウマなど)が挙げられる。処置される好ましい患者は女性のヒトである。
【0020】
本発明の医薬組成物は、周知で容易に入手可能な成分を用いる既知の手法によって製造する。本発明の製剤の製造においては、活性成分(F−III)は通常、担体と混合、または担体によって希釈、またはカプセル、サシェ、ペーパーまたはその他の容器の形態であってよい担体内に入れられる。担体が希釈剤として供する場合、担体は、活性成分のためのビークル、賦形剤または媒体として作用する固体、半固体または液体の物質であってよい。従って、組成物は、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、サシェ、カシェ、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ剤、エアロゾル剤(固体としてまたは液体媒体中の)、軟質および硬質ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射溶液および滅菌包装粉末剤の形態をとることができる。
【0021】
適当な担体、賦形剤、および希釈剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、珪酸カルシウム、微晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油が挙げられる。製剤にはさらに滑沢剤、湿潤剤、例えば、ポリソルベート80またはラウリル硫酸塩、乳化剤および懸濁剤、保存料、甘味料または香味剤を含有させることができる。本発明の組成物は、患者に投与した後で、活性成分の、迅速な、徐放性のまたは遅延させた放出をもたらすように製剤化する。
【0022】
製剤例
10mgカプセルまたは錠剤
約156mgの充填剤(ラクトース、マンニトール、またはデキストロース)、約20mgの錠剤分解物質(微晶性セルロース、またはデンプン)、約4mgの超錠剤分解物質(super disintegrant)(クロスポビドン、またはデンプングリコール酸ナトリウム)、約4mgの結合剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース)および約10mgのF−IIIを造粒機に加え、混合して粉末を均一に分布させた。ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース(乾燥粉末の約2〜4重量%に十分な量)、およびポリソルベート80またはナトリウムラウリル硫酸塩等の湿潤剤(0.5〜3重量%に十分な量)からなる水性の造粒溶液を、粉末を混合しながら一定の速度でスプレーした。造粒物をスクリーンを用いて湿潤状態でふるいにかけ、大きな凝集体の状態でバラバラにした。フィルターにかけた造粒粉末を流動床法によるかまたは対流式オーブン中で乾燥した。乾燥した造粒粉末をミルにかけるかまたは他の適当な装置にかけて均一のサイズにした後、ミキサーに移した。造粒粉末を、滑沢剤(製剤重量の約1重量%のステアリン酸マグネシウム、またはフマル酸ステアリルナトリウム)およびさらなる錠剤崩壊物質(外部粉末の約2〜4重量%)とともに均一にブレンドした。完成した粉末を硬質ゼラチンカプセルに封入するかまたはこの粉末を圧縮して錠剤にした(次いで、以下に記載するように錠剤をフィルムコーティングする)。この方法で製造したカプセルまたは錠剤の合計重量は約200mgであった。
【0023】
45mgカプセル剤または錠剤
約162mgの充填剤(ラクトース、マンニトールまたはデンプン)、約10mgの錠剤崩壊物質(クロスポビドンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)および約45mgのF−IIIを造粒機に加え、混合して粉末を均一に分布させた。ポビドン(約35重量%)およびポリソルベート80(約10重量%)からなる水性の造粒溶液を、粉末を混合しながら一定の速度で粉末にスプレーした。造粒物をスクリーンを湿潤状態で用いてふるいにかけ、大きな凝集体の状態でバラバラにした。フィルターにかけた造粒粉末を流動床法によるかまたは対流式オーブン中で乾燥した。乾燥した造粒粉末をミルにかけるかまたは他の適当な装置にかけて均一のサイズにした後、ミキサーに移した。造粒粉末を、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム:製剤重量の約1重量%)およびさらなる錠剤崩壊物質(外部粉末の約2重量%)とともに均一にブレンドした。完成した粉末を硬質ゼラチンカプセルに封入するかまたはこの粉末を圧縮して錠剤にした(次いで、以下に記載するように錠剤をフィルムコーティングする)。この方法で製造したカプセルまたは錠剤の合計重量は約230mgであった。
【0024】
あるいは、錠剤を製造するために、充填剤、錠剤崩壊物質、およびF−IIIをミキサーに加え、混合して粉末を均一に分布させた。粉末が均一に混合したら滑沢剤を加え、再度ブレンドした。ブレンドした物質を打錠機に移して、錠剤を製造し、次いで適当なフィルム形成剤を用いてフィルムコーティングを施した。
【0025】
生物学的アッセイ
石川細胞増殖アッセイ:このアッセイは、本発明の化合物単独での存在下でのアゴニストモード、および増殖のエストラジオール刺激をブロックする本発明化合物の能力が測定されるアンタゴニストモードの両方において細胞増殖を測定する(アルカリホスファターゼの値を用いて)。
【0026】
石川ヒト子宮内腫瘍細胞を、10%(V/V)ウシ胎児血清(FBS)(Gibco BRL)を添加したMEM(最小必須培地、Earle塩およびL−グルタミン添加、Gibco BRL, Gaithersburg, MD)中に維持した。アッセイの前日に、増殖培地をアッセイ培地に置き換えた:DMEM/F−12(3:1)(Dulbecco修飾Eagle培地:栄養混合培地F−12、3:1混合物、フェノールレッド不含、Gibco BRL)(5%デキストランコートチャコール処理ウシ胎児血清(DCC−FBS)(Hyclone, Logen, UT)、L−グルタミン(2mM)、MEMピルビン酸ナトリウム(1mM)、HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]2mM)(全てGibcoBRL製)を添加)。一晩インキュベーションした後、石川細胞を、Ca+2およびMg+2を含まないDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(1X)(D−PBS)(GibcoBRL)でリンスし、0.25%トリプシン/EDTA(フェノールレッド不含)(GibcoBRL)と3分間インキュベーションすることによりトリプシン処理した。細胞をアッセイ培地に再懸濁し、細胞数を250、000細胞/mLに調節した。培地100μL中の約25、000個の細胞を平底96ウェルマイクロタイタープレート(Costar3596)に加え、5%CO2加湿インキュベーター中、37℃にて24時間インキュベーションした。翌日、化合物の段階希釈をアッセイ培地中で調製した(アッセイにおける最終濃度の6倍)。アッセイはデュアルモード、すなわちアゴニストモードおよびアンタゴニストモードで行った。アゴニストモードについては、プレートに25μl/ウェルのアッセイ培地を加えた後、25μl/ウェルの希釈した本発明化合物を添加した(最終濃度の6倍)。アンタゴニストモードについては、プレートに25μL/ウェルの6nM E2(β−エストラジオール、Sigma、St.Louis、MO)、次いで、25μl/ウェルの希釈した本発明化合物(最終濃度の6倍)を加えた。5%CO2加湿インキュベーター中、37℃にて48時間インキュベーションした後、培地をウェルから吸引し、各マイクロカルチャーに100μlの新鮮なアッセイ培地を添加した。化合物の段階希釈物を調製し、上記のとおり細胞に加えた。5%CO2加湿インキュベーター中37℃にて72時間インキュベーションした後、培地を除去し、プレートをDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(1X)(D−PBS)(GibcoBRL)で2回リンスすることにより分析物をクエンチした。プレートを5分間乾燥し、−70℃で少なくとも1時間冷凍した。次いで、プレートをフリーザーから取り出し、室温で解凍した。各ウェルに対して100μLの1−Step(商標)PNPP(Pierce Chemical Company、Rockford、IL)を加えた。20分間インキュベーションした後、分光計を用いて405nmにてプレートを読み取った。
【0027】
データを線形補間法に当てはめてEC50(アゴニストモード)またはIC50(アンタゴニストモード)値を求めた。アンタゴニストモードについて、各化合物の%効果をE2(1nM)単独に対して計算した。アゴニストモードについて、各化合物の%効果をタモキシフェンに対する応答に対して計算した。
【0028】
アゴニストモードでは、F−IIIを試験した結果、刺激はタモキシフェンよりも小さい。アンタゴニストモードでは、F−IIIは1nMエストラジオール応答の少なくとも70%以上の阻害を示す。
【0029】
10日間ラットホルモン(卵巣刺激)スクリーン:最初に、卵巣毒性の最初のスクリーニングを10日間ラットホルモン試験を用いて行い、GYNSERM、F−III投与後にエストラジオールおよび黄体形成ホルモンのレベルを測定した。このスクリーニングは、化合物を成熟(9〜10週齢)F344雌性ラットに10日間経口投与することにより行った。LHおよびエストラジオールレベルを評価するために、10日目の投与から約2時間後に、素早く断頭し、体幹(Trunk)血液を回収する。遠心分離により得た血清を取り出し、分析するまで−60℃以下で保存する。LHおよびエストラジオールの血清レベルをラジオイムノアッセイ(RIA)法により測定する。
【0030】
ラットLH一次抗体および参照調製物(ラットLH:RP−3)はPituitary Hormonesand Antisera Center、Harbor-UCLA Medical Center、Torrance、CAのA.F.Parlow博士から入手する。100μLのサンプルに対して、LHアッセイの検出上限は30ng/mLであり、検出下限は0.1ng/mLである。
【0031】
E2臨床アッセイ。DiaSorins.r.l.、Saluggia(Vercelli)、Italy.検出の上限は1000pg/mLであり検出の下限は5pg/mLである。上記アッセイにおいてF−IIIを試験したが、循環エストラジオールまたはLHレベルが有意に上昇することはない。
【0032】
有用性
乳房および子宮組織におけるエストロゲンのアンタゴニストとして、F−IIIは、エストロゲンがその状態において原因となる役割を担うことが示されている状態を処置するのに有用である。骨格および循環系におけるエストロゲンのアゴニストとして、F−IIIは、エストロゲンがその状態において有益な役割を担うことが示されている状態を処置するのに有用である。
【0033】
本明細書において用いられる「処置する」および「処置」なる語には、その一般に受け入れられている意味、即ち、本明細書に記載した病理学的状態あるいはその続発症の進行または重篤度の、緩和(alleviating)、改善(ameliorating)、管理(managing)、予防(preventing)、制止(prohibiting)、抑制(restraining)、遅延(slowing)、中止(stopping)、または逆転(reversing)を包含する。用語「予防する」は、本発明の化合物の受容者が本明細書に記載したいずれかの病理学的状態またはその続発症を被るまたは発症する可能性を減少することを意味する。
【0034】
本発明の化合物がそれに対する処置において有用である疾患、障害または状態としては(1)子宮および/または乳癌;(2)子宮内膜症;(3)子宮平滑筋腫/平滑筋腫;および(4)骨粗鬆症が挙げられるがこれに限定されない。本明細書に記載した子宮平滑筋腫/平滑筋腫の処置は、疼痛、頻尿、および子宮の出血等の関連する症状も減少し得る。
【0035】
用量
本明細書で用いられる用語「有効量」は、本明細書に記載した状態またはその有害な影響を処置することが可能なF−IIIの量を意味する。
【0036】
投与する具体的な量は、各々の状況を取り巻く特定の事情によって決定される。これらの事情としては、投与経路、その患者の過去の病歴、処置する病理学的状態または症状、処置するその状態/症状の重篤度および受容者の年齢および性別が挙げられる。受容者の患者の主治医は、関連する事情に照らして治療用量を決定する。
【0037】
一般にF−IIIの最小限の有効量は1日約5mgを超える。典型的には、有効量は1日最大で約350mgを超えない。正確な用量は、患者の「用量滴定」の医学分野での標準的なプラクティスにしたがって決定することができる。すなわち、最初に化合物を低用量で投与し、望ましい治療効果が観察されるまで投与量を徐々に増大させる。
【0038】
投与経路
F−IIIを、筋肉内、鼻内、膣内、静脈内、経口、直腸、皮下、局所および経皮を含む様々な経路で投与することができる。好ましい投与経路は、経口である。
【0039】
組み合わせ治療
F−IIIを他の薬物と組み合わせて用い、これらの化合物が有用であるような疾患または状態の処置において用いることができる。そのような他の薬物は、一般に用いられている経路および量で投与することができ、故に、本発明の塩と同時またはそれに続いて投与することができる。F−IIIを1以上の他の薬物と同時に用いる場合、本発明の化合物に加えてそのような他の薬物を含有する医薬の単位投与剤型は好ましい。従って、本発明の医薬組成物は、1以上の他の活性成分を含有するものを包含する。本発明の化合物と組み合わせて、別々に、または同じ医薬組成物として投与することができる、他の活性成分の一例としては、ホルモン置換治療(HRT)において用いられる薬剤が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】F−IIIのXRDパターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅放射線源(CuKα、λ=1.54056Å)から得られるパターンが、2θで15.2±0.1、17.6±0.1、18.6±0.1および24.1±0.1°にピークを含んでなるX線回折パターンを有する、結晶性の溶媒和していない1−(4−(2−ピペリジニルエトキシ)フェノキシ)−2−(4−メタンスルホニルフェニル)−6−ヒドロキシナフタレン塩酸塩。
【請求項2】
前記X線回折パターンがさらに2θで16.9±0.1、19.2±0.1、21.3±0.1および21.6±0.1°にピークを含んでなる、請求項1記載の塩。
【請求項3】
有効量の請求項1または2のいずれかに記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む子宮内膜症の治療方法。
【請求項4】
有効量の請求項1または2のいずれかに記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む子宮平滑筋腫の治療方法。
【請求項5】
子宮内膜症および/または子宮平滑筋腫の治療において使用するための請求項1または2のいずれかに示される化合物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−537991(P2007−537991A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536491(P2006−536491)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/000020
【国際公開番号】WO2004/075894
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】