説明

溶射材料

【課題】 工業炉、金属溶融容器の耐火物損耗部位の補修に使用する溶射材料について、その材料に含まれる金属粒子の酸化発熱反応により、耐火性粒子、低融点粒子を溶融して被補修体に容易に良好に溶着させることにある。
【解決手段】 耐火性粒子と酸化性粉体である金属粒子との混合物を酸素と共に珪石れんがからなる被補修体に吹き付け、上記金属粒子の酸化発熱反応により混合物を溶融させて、被補修体に溶着させるものである。耐火粒子は珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分とし、上記金属粒子は金属シリコンからなるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉、金属溶融容器の耐火物損耗部位の補修に使用する溶射材料であり、その材料に含まれる金属粒子の酸化発熱反応により、耐火性粒子、低融点粒子を溶融し、被補修体に溶着させる溶射材料で、工業炉、金属溶融容器の中でも、特に珪石れんがを使用しているコークス炉炭化室の補修に適している。
【背景技術】
【0002】
製鉄所のコークス炉は、建設してから20年以上のものが多く、特に炭化室の壁の補修が必要である。その補修に操業しながら補修する技術として溶射補修法がある。そして、溶射補修法には、プラズマ溶射、レーザー溶射、火炎溶射があるが、いずれも大掛かりな装置が必要である。
【0003】
一方、テルミット反応等の金属粉の酸化燃焼反応熱で耐火粒子を溶融させ、補修面に溶着させる方法がある。この方法は、金属粒子と耐火粒子の混合物を酸素で高熱の補修面に吹き付け、金属粒子の酸化反応熱で耐火粒子を溶融して溶着させる方式であるため、装置が簡易である特徴を有する。
【0004】
コークス炉は珪石れんがで作られており、珪石れんがの主成分はトリジマイトであるが、炭化室は1300℃位になるので、壁の損傷部位はクリストバライト化していることが多い。石炭を蒸し焼きにしてコークスにする炭化室の扉近くは、できたコークスを押し出す際、扉を開閉するので1300℃位から900℃位の温度変化がある。
【0005】
また、炭化室を補修する際には、扉を長時間開けておくので、400℃近くまで冷やされることもある。炭化室壁の珪石れんがと溶射補修施工体の熱間膨張率が大幅に違うと、これらの温度変化により、溶射補修施工体が壁れんがから剥離し、耐用性が劣る。
【0006】
特開2000−159579では、珪石またはシャモットにコーディライトを添加することにより、熱間膨張率を小さくしているが、1200℃以上ではコーディライトが分解しはじめて、膨張率が大きくなり、剥離しやすくなる。
【0007】
特公平5−21865では、耐火性粒体の少なくともいくらかが、ケルビン温度で表した融点の0.7倍を超える温度まで前もって焼成されたものを使用する。すなわち、シリカ系ではトリジマイトやクリストバライトを使用しているが、溶射により溶融された部位はガラス化し、これが徐々に結晶化するとき、れんがと溶射補修施工体の膨張が違い、接着強度を低下させる。これを防止または抑制するためには、溶射後できるだけ早く結晶化させることが重要である。
また、特開2005−336001では、未焼成の珪石または珪砂を使用して熱膨張率の差を小さくしているが、被補修面との熱膨張率をより近づけることが望まれる。
【0008】
また、溶融されたシリカをできるだけ早く結晶化させるために、結晶化促進剤を添加することが有効である。しかし、Al23が結晶化を阻害するため、溶融部位にAl23ができるだけ入らないようにすることが望ましい。したがって、溶融しやすい微粉にAl23を含有したものや、燃焼してAl23になるAlを含有した燃焼剤を用いない方がよく、特公平5−21865、特開平5−17237、特開2000−159579では結晶化促進剤を添加していなく、金属アルミニウムやAlを含有する合金等を用いているので結晶化にとって好ましくない。
【0009】
金属類を補修壁面の熱で着火させ、その燃焼熱で耐火物粒子を溶融させる方式の溶射では、耐火物粒子である珪石(クリストバライトの融点:1710℃、トリジマイトの融点:1670℃)等の融点が高いため、れんが目地等を溶射補修する時などの溶射速度が速い場合、耐火物粒子が溶けきらなく、リバウンドが多くなる。このため、低融点物を添加すると付着率が向上する。しかし、低融点物はそれが溶融するとき融解熱を必要とし、融点付近で吸熱する。このため、着火温度である600〜900℃に融点のあるものでは、着火を阻害し、かえって付着を悪くする。
【特許文献1】特公平5−21865
【特許文献2】特開平5−17237
【特許文献3】特開2000−159579
【特許文献4】特開2005−336001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年のコークス炉は、使用条件の過酷化や炉寿命の長期延命化といった要求があり、従来の補修材より長寿命化が要求される。コークス炉の炭化室は、冷たい石炭粉を入れ、それを蒸し焼きにしてコークスにするため加熱冷却が繰り返される。
【0011】
コークス炉の炭化室に使用されている珪石れんがと補修材の熱膨張を近似させることで、長期間使用時のれんが面からの剥離損耗を抑制できる。また、溶射直後は材料が溶融してガラス化しているが、これが結晶化するとき膨張があり、その膨張がれんがと補修材の接着強度を低下させる。これを防止または抑制するためには、溶射と同時に結晶化させることが重要である。
【0012】
また、コークス炉の炭化室の補修は、操業上補修に要する時間が限られているため、溶射補修時間は短い方が良い。特に、れんが目地等の溶射補修は溶射遠度が速いため、耐火物粒子の融点を低くしてリバウンドを減らすことが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、耐火性粒子と酸化性粉体である金属粒子との混合物を酸素と共に珪石れんがからなる被補修体に吹き付け、上記金属粒子の酸化発熱反応により混合物を溶融させて、被補修体に溶着させることを特徴とする溶射材料であって、上記耐火粒子は珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分とし、上記金属粒子は金属シリコンからなることを特徴とする溶射材料を提供するにある。
【0014】
また、上記耐火性粒子である珪石れんがは、SiO2成分が90重量%以上で、かつAl23成分が10重量%以下の組成の原料を使用することを特徴とし、その粒度は425〜2000μmが溶射材料の10〜50重量%以上で、75μm以下が10重量%以下で、75〜425μmがその残りであることを特徴とする溶射材料を提供するにある。
【0015】
また、金属シリコン粒子はその添加量が溶射材料に対して10〜30重量%であって、その粒度は75μm以上が溶射材料の5重量%以下で、20μm以下が5〜15重量%で、20〜75μmがその残りであることを特徴とする溶射材料を提供するにある。
【0016】
また、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の1種または複数からなり、その添加量は溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%である結晶化促進剤を添加したことを特徴とする記載の溶射材料を提供するにある。
【0017】
さらに、溶融温度が900℃以上で1500℃以下の合金または鉱物類であって、その添加量が溶射材料に対して0.5〜5重量%であって、その粒度は1000μm以下とする付着向上剤を添加することを特徴とする溶射材料を提供するにある。
【0018】
さらにまた、発火点が300℃以上で800℃以下である炭素系粉末または金属粉末を溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%で着火促進剤として添加することを特徴とする溶射材料を提供するにある。
【0019】
またさらに、平均粒径が0.2μm以下であるシリカ超微粉末を溶射材料に対して外掛けで0.1〜3重量%で粉体流動化促進剤として添加することを特徴とする溶射材料を提供するにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の溶射材料は、耐火性粒子と酸化性紛体である金属粒子との混合物を酸素と共に珪石れんがからなる被補修体に吹き付け、上記金属粒子の酸化発熱反応より混合物を溶融させて、被補修体に溶着させることを特徴とする溶射材料であって、上記耐火粒子は珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分とし、上記金属粒子は金属シリコンからなることを特徴とする溶射材料で、炉壁珪石れんがとの熱膨張を適合させ、かつ溶射と同時に補修材を結晶化し、れんがと補修材の接着強度を高めて、加熱冷却による補修れんが面からの剥離を抑制でき、れんが面からの剥離損耗を抑制でき、耐用性の向上をはかれる。
【0021】
また、上記耐火性粒子である珪石れんがは、SiO2成分が90重量%以上で、かつAl23成分が10重量%以下の組成の原料を使用することを特徴とし、その粒度は425〜2000μmが溶射材料の10〜50重量%以上で、75μm以下が10重量%以下で、75〜425μmがその残りとすることによって、結晶化を促進し、炉壁れんがとの熱膨張も一致して、リバウンドロスを減少できて良好な溶射ができる。
【0022】
また、金属シリコン粒子はその添加量が溶射材料に対して10〜30重量%(耐火性粒子70〜90重量%)であって、その粒度は75μm以上が溶射材料の5重量%以下で、20μm以下が5〜15重量%で、20〜75μmがその残りであることによって、燃焼反応が強く、耐火性粒子が溶融して良好な溶射ができる。
【0023】
また、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の1種または複数からなり、その添加量は溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%である結晶化促進剤を添加することによって、溶射と同時に補修材の結晶化を促進できて付着促進効果がはかれる。
【0024】
さらに、溶融温度が900℃以上で1500℃以下の合金または鉱物類であって、その添加量が溶射材料に対して0.5〜15重量%であって、その粒度は1000μm以下とする付着向上剤を添加することによって、着火阻害を抑止して付着促進効果がはかれる。
【0025】
さらにまた、発火点が300℃以上で800℃以下である炭素系粉末または金属粉末を溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%で着火促進剤として添加することによって、確実に着火促進できて、爆発の危険なく安全に施工できる。
【0026】
またさらに、平均粒径が0.2μm以下であるシリカ超微粉末を溶射材料に対して外掛けで0.1〜3重量%で粉体流動化促進剤として添加することによって、溶射材料のホッパータンク内での棚吊り、切出し阻害を抑止して、安定した施工ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の溶射材料は、耐火性粒子と酸化性粉体である金属粒子との混合物を酸素と共に珪石れんがからなる被補修体に吹き付け、上記金属粒子の酸化発熱反応により混合物を溶融させて、被補修体に溶着させることを特徴とする溶射材料であって、上記耐火粒子は珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分とし、上記金属粒子は金属シリコンからなることを特徴としている。
【0028】
珪石れんがからなる被補修体の欠損部、亀裂部に溶着させ補修する溶射材料として、すなわち、珪石れんがからなる被補修体、特にコークス炉炭化室の炉壁の珪石れんがとそれを補修する溶射材料の熱膨張を、略一致させることを特徴とし、そのために補修に使用する耐火性粒子を珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分として使用することにより熱膨張を適合させ、加熱冷却による補修れんが面からの剥離を抑制し、耐用性の向上を図ることを実現した溶射材料である。
【0029】
また、溶射による熱で耐火性粒子が溶融されてガラス化すると、珪石れんがとの熱膨張を適切に適合させることができない。これを防止する方法としては、溶射と同時に補修材を結晶化させる結晶化促進剤を併用することが好ましい。また、れんが目地等の溶射速度が速い補修では、耐火物粒子の融点を低くしてリバウンドを減らすことが重要であり、付着向上剤として低融点物の添加を行うことが好ましい。
【0030】
本発明の溶射材料の耐火物粒子は、珪石れんがの粉砕粉を主成分として使用するもので、SiO2が90重量%以上で、かつAl23が10重量%以下の高SiO2組成の原料を使用することを特徴とするもので、好ましくはSiO2が95重量%以上で、かつAl23が5重量%以下の高SiO2組成の原料を使用する。Al23が10重量%以上になると結晶化を阻害し、炉壁れんがとの熱膨張が一致しなくなる。
【0031】
さらに、この耐火物粒子の原料として、珪石れんが粉砕粉に対してこれに珪石、珪砂、溶融シリカを混合使用しても良い。混合使用量は、珪石れんが粉に対して50重量%以下が好ましい。炭化室壁の熱で金属を発火させ、燃焼させる本方式の溶射では、耐火粒子の0.5mm以上は完全に溶融しないことが多い。このため、0.5mm以下の耐火物粒子には、Al23が5重量%以下の高SiO2組成の原料を使用することが望ましい。
【0032】
珪石れんがの粉砕粉を主成分として使用する、あるいは珪石れんが粉砕粉、珪石、珪砂、溶融シリカを混合使用する耐火性粒子の粒度は2000μm以下とし、粒度425〜2000μmが溶射材料に対して10〜50重量%とし、75μm以下が10重量%以下で、75〜425μmがその残りであることが望ましい。75μm以下が10重量%以上であると、材料を溶射するときに脈動し、良好な溶射ができない。425μm以上のものが50重量%以上あると、リバウンドが大きく、リバウンドロスが多くなり好ましくない。
【0033】
金属粒子の酸化発熱反応により上記耐火粒子と金属粒子の混合物を溶融させて、被補修体に溶着させる金属粒子として、本発明では金属シリコン粒子を用いる。金属シリコン粒子は、燃焼反応後はSiO2となり、SiO2成分が90重量%以上とする珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分として使用する耐火粒子との組合せにおいて望ましい。金属シリコン粒子は、その添加量が溶射材料に対して10〜30重量%であって、金属シリコン粒子の粒度は、75μm以上が5重量%以下で、かつ20μm以下が5〜15重量%であることが望ましい。金属シリコン粒子の添加量が10重量%以下であると、燃焼反応が弱く、耐火性粒子が溶融しなく良好な溶射ができない。添加量が30重量%以上であると、材料を溶射したとき燃焼反応が強くなりすぎ、被補修体に溶射した溶射体が流れ落ち、良好な溶射ができない。
【0034】
また、金属シリコン粒子の粒度で75μm以上のものは、燃焼反応が弱く好ましくないため、5重量%以下でなければならない。20μm以下が5重量%以下でも、燃焼反応が弱くなり好ましくない。20μm以下が15重量%以上では材料を溶射したとき、燃焼反応が強くなりすぎ、被補修体に溶着した溶射体が流れ落ち、良好な溶射ができない。
上記耐火性粒子は、溶射材料の70〜90重量%、金属シリコン粒子10〜30重量%の比率が上記した良好な溶射できて好ましい。
【0035】
付着向上剤は、溶融温度が900℃以上、1500℃以下の合金類、鉱物類が用いられ、さらにそれを添加したときに、被補修体に溶着した溶射材のAl23成分が5重量%以上になると、結晶化が著しく阻害されるため、Al23成分が5重量%以下になるような成分の合金類、鉱物類を用いるようにすることが望ましい。
【0036】
合金類、鉱物類等では溶融するときに、融解熱として熱を吸熱する。コークス炉炭化室の壁に溶射材料を吹き付けて、その熱で着火させ、溶射材料に混合されている金属を燃焼させ、その熱で耐火粒子を溶融し、溶着する方式では、着火温度が600〜900℃になる。このため、この温度域に融点があるものでは着火を阻害し、溶射の火炎を引っ張ることを阻害するので好ましくなく、融点900℃以上の合金類、鉱物類を用いることとした。また、融点が1500℃を超えると、珪石れんが粉の主成分であるトリジマイトの溶融温度が1670℃であるので、付着促進効果が少なくなる。したがって鉱物類を用いることとした。
【0037】
付着向上剤の添加量としては、溶射材料に対して0.5〜5重量%添加することが望ましい。合金類としては、ケイ化カルシウム(溶融点:980℃)、二酸化マンガン(溶融点:1160℃)、フェロシリコン(溶融点:1420℃)、鉱物類としてはペタライト(溶融点:1300℃)、珪酸カルシウム(溶融点:1450〜1500℃)等の1種または複数を用いることが好ましい。添加量が0.5重量%未満であると、付着性向上効果がなく、5重量%より多いと溶射時に施工体が溶融しすぎて、吹き飛ばされるなどの問題が生じる。
【0038】
ナトリウム、カリウム、リチウムイオンをシリカ溶融物に加えると、ガラス質の結晶化が促進される。これにより結晶化促進剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の1種または複数からなることを特徴とする。結晶化促進剤の添加量は、0.3〜5重量%が好ましく、0.3重量%より少ないと結晶化促進の効果が小さく、5重量%より多いと溶射の際に溶射体が流れ落ち、良好な施工体が得られない。ナトリウム塩としては、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム塩としては塩化カリウム、リチウム塩としては炭酸リチウム等があげられる。
【0039】
着火促進剤は、被溶射体、すなわちコークス炉では炭化室壁面の温度が800℃以下である場合、溶射材料に添加される。発火点が300〜600℃である炭素系粉末または金属粉若しくは炭素系粉末と金属粉の混合物からなることを特徴とし、その添加量は外掛けで5重量%以下であることが好ましい。着火促進剤の発火点が600℃超えであると、壁面温度が800℃以下の場合、溶射開始時に発火しにくい。発火点が300℃未満であると、爆発の危険が大きくなり、安全上好ましくない。
【0040】
着火促進剤が金属アルミニウム粉では、溶射施工体にAl23が入り、結晶化を阻害する割合が増大するので好ましくない。金属マグネシウム粉は、爆発の危険が大きくなり、安全上好ましくない。炭素系粉末の方が燃焼性が良く、施工体に残留しないので好ましいが、これにこだわるものではない。
【0041】
着火促進剤が外掛けで5重量%以上であると、溶射体に炭素系粉末または金属粉が残留し、ガラス化を阻害するので好ましくない。炭素系粉末としてはコークス粉(発火点:400〜600℃)、木炭粉(発火点:320〜400℃)、コーンスターチ粉(発火点:470℃)等があげられ、金属粉末としては鉄粉(発火点:315〜320℃)、マンガン粉(発火点:450℃)、バナジウム粉(発火点:500℃)等があげられる。
【0042】
被補修体に溶着させる金属粒子として本発明では金属シリコン粒子を用いるが、45μm以下の金属シリコン粉を10重量%以上添加する場合、溶射材料がホッパータンク内で棚吊りし、良好な切り出しができなくなる恐れがある。これを防止するため粉体流動化促進剤を添加することが望ましい。粉体流動化促進剤は、平均粒径が0.2μm以下であるシリカ超微粉末が望ましく、その添加量は0.1〜3重量%以下が望ましい。0.1重量%以上で流動化効果を発生するが、3重量%を超える添加では、高価格になる割に流動化促進の効果が増加しない。したがって、好ましくは3重量%以下の添加量として使用する。
【実施例】
【0043】
本発明について、実施例と比較例を表1〜表7のように構成して試験した。そのテスト結果を表1〜表7に示す。表1〜表4のように本実施例のものは、吐出性、着火性、燃焼性が良好であり、リバウンドが少なくて付着率が向上している。また、実施例1−5、実施例4−5と比較例6−9、比較例6−10について図1のようにれんが目地充填試験を行った結果、実施例1−5、4−5は充填深さが50mmであったのに対し、比較例6−9、6−10は充填深さが30mm、35mmであり、実施例の方がれんが目地へも良好に充填できる。
【0044】
そして、実施例4−5と比較例6−9、6−10について、A製鉄所でコークス炉に珪石れんがを入れ、それに溶射し、サンプルを回収した。それから試料を切り出し、珪石れんがと熱間線膨張率を比較した結果を図2に示す。実施例1−5は珪石れんがと同等の熱間線膨張率を示し、加熱冷却による剥離に対し強く、大幅に溶射補修後の耐久性が向上した。
【0045】
表1 本発明の実施例1
【表1】











【0046】
表2 本発明の実施例2
【表2】



【0047】
表3 本発明の実施例3
【表3】















【0048】
表4 本発明の実施例4
【表4】

【0049】
表5 本発明の比較例1
【表5】










【0050】
表6 比較例2
【表6】



【0051】
表7 比較例3
【表7】



【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例と比較例の溶射施工体のれんが目地や充填試験方法説明図、
【0053】
【図2】本発明の実施例と比較例の溶射施工体の熱間線膨張率の比較図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性粒子と酸化性粉体である金属粒子との混合物を酸素と共に珪石れんがからなる被補修体に吹き付け、上記金属粒子の酸化発熱反応により混合物を溶融させて、被補修体に溶着させることを特徴とする溶射材料であって、
上記耐火粒子は珪石れんがの2000μm以下の粉砕粉を主成分とし、上記金属粒子は金属シリコンからなることを特徴とする溶射材料。
【請求項2】
上記耐火性粒子である珪石れんがは、SiO2成分が90重量%以上でかつAl23成分が10重量%以下の組成の原料を使用することを特徴とし、その粒度は425〜2000μmが溶射材料の10〜50重量%以上で、75μm以下が10重量%以下で、75〜425μmがその残りであることを特徴とする請求項1に記載の溶射材料。
【請求項3】
金属シリコン粒子はその添加量が溶射材料に対して10〜30重量%であって、その粒度は75μm以上が溶射材料の5重量%以下で、20μm以下が5〜15重量%で、20〜75μmがその残りであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶射材料。
【請求項4】
ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の1種または複数からなり、その添加量は溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%である結晶化促進剤を添加したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の溶射材料。
【請求項5】
溶融温度が900℃以上で1500℃以下の合金または鉱物類であって、その添加量が溶射材料に対して0.5〜5重量%であって、その粒度は1000μm以下とする付着向上剤を添加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の溶射材料。
【請求項6】
発火点が300℃以上で800℃以下である炭素系粉末または金属粉末を溶射材料に対して外掛けで0.3〜5重量%で着火促進剤として添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の溶射材料。
【請求項7】
平均粒径が0.2μm以下であるシリカ超微粉末を溶射材料に対して外掛けで0.1〜3重量%で粉体流動化促進剤として添加することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の溶射材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−120406(P2009−120406A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292805(P2007−292805)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(000199821)JFE炉材株式会社 (42)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】