説明

溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ

【課題】溶接用棒状電極の自動交換用ホルダにおいて、溶接用トーチに棒状電極が良好に取り付けられるようにする。
【解決手段】溶接用トーチに取り付ける棒状電極10を自動的に交換する際に用いる溶接用棒状電極の自動交換用ホルダは、所定角度をなしてV字状に設けられる2つの壁面部を有する切欠部24を備え、前記2つの壁面部の間に前記棒状電極を保持する保持部材23と、前記2つの壁面部の間に配置された前記棒状電極を前記2つの壁面部の交線側に向けて弾性的に付勢する付勢部材25、26と、を備え、前記棒状電極は、前記付勢部材によって付勢されて前記2つの壁面部の交線と平行に前記保持部材の前記2つの壁面部の間に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶接用トーチに取り付ける棒状電極を自動的に交換する際に用いる溶接用棒状電極の自動交換用ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、種々の工業分野において2つ以上の部材を接合する方法として用いられる溶接は、生産効率の向上や作業者による危険作業の回避等の観点から、溶接ロボットに溶接用トーチを取り付けて自動的に溶接することが一般的に行われている。また、例えばTIG溶接などの溶接では、溶接用トーチに取り付けたタングステンからなる棒状電極が摩耗すると交換する必要があるため、この棒状電極の交換についても自動的に交換することが行われている。
【0003】
これに関連して、例えば特許文献1には、タングステン電極を着脱する機構を備えた溶接用トーチと、新しいタングステン電極を所定の位置に収納するとともに使用済みタングステン電極が収納されるときに使用済みタングステン電極を固定可能な機構を有する電極ステーションと、溶接用トーチを溶接位置から電極ステーションの電極交換位置に移動させて電極交換後に溶接位置に戻す機構と、を備えたタングステン電極自動交換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−4979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されるように、溶接用トーチに取り付けるタングステンからなる棒状電極を自動的に交換する場合、棒状電極を着脱可能に把持するコレットチャック等の機構を溶接用トーチに組み込み、この溶接用トーチから使用済みの棒状電極を自動的に取り外した後に、自動交換用ホルダに保持した新しい棒状電極を溶接用トーチに自動的に取り付け、棒状電極を自動的に交換することが行われる。
【0006】
図8は、従来の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダの構成を概略的に示す概略構成図、図9は、従来の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダを説明するための説明図である。溶接用棒状電極を自動的に交換する際に用いる自動交換用ホルダ50としては、例えば、図8に示すように、4本の脚部61を有する基台62上に締結部材Bを用いて取り付けられたものが知られており、該基台62は、自動交換用ホルダ50の下側部分が自動交換用ホルダ50に保持された棒状電極10と干渉しないように形成されている。
【0007】
この自動交換用ホルダ50は、略直方体状の本体部51と、本体部51の上面51aから下面51bにわたって形成された断面円形状の開口部51dに嵌め合わせられるとともに棒状電極10を垂直方向に保持する保持部材53と、本体部51の側面51cに形成された穴部51eに水平方向に取り付けられたボールプランジャーなどの付勢部材55とを備えて構成されている。
【0008】
保持部材53は、図9に示すように、上面53aから下面53bにわたって保持すべき略円柱状の棒状電極10に略等しい径を有する断面円形状の開口部53dを備えて円筒状に形成されるとともに、側面53cにまた、付勢部材55を取り付けるために本体部51の側面51cに形成された穴部51eと同軸状に穴部53eが形成されている。
【0009】
このようにして形成される自動交換用ホルダ50では、棒状電極10を保持部材53の開口部53d内に垂直方向に挿入した状態で、本体部51の穴部51e及び保持部材53の穴部53eに取り付けられた付勢部材55の先端部55aによって棒状電極10の側面10aを水平方向に弾性的に付勢して、棒状部材10が保持部材53に保持されるようになっている。
【0010】
自動交換用ホルダ50を用いて溶接用トーチに取り付けた棒状電極を自動的に交換する場合には、棒状電極を着脱可能に把持する機構が組み込まれた溶接用トーチから使用済みの棒状電極を自動的に取り外した後に、新しい棒状電極10を取り付けるために溶接用トーチが自動交換用ホルダ50の保持部材53に保持した新しい棒状電極10の真上に移動し、その位置から棒状部材10側に下方へ移動して新しい棒状電極10を把持し、棒状電極10を把持すると上方へ移動して新しい棒状電極10を自動的に取り付ける。
【0011】
しかしながら、溶接用トーチから使用済みの棒状電極を取り外した後に、溶接用トーチが自動交換用ホルダ50に保持した新しい棒状電極10の真上からずれた位置に移動し、
溶接用トーチの軸と棒状電極の軸とが傾いた状態で溶接用トーチが棒状部材10側に下方へ移動して、溶接用トーチに新しい棒状電極が取り付けられる場合がある。
【0012】
かかる場合には、溶接用トーチが新しい棒状電極を把持する際に溶接用トーチの軸方向に棒状電極が曲がったり、溶接用トーチが棒状電極を把持した後に溶接用トーチが上方へ移動する際に棒状電極が保持部材に引っかかったりして、溶接用トーチに棒状電極を良好に取り付けることができないことがある。この場合、溶接ロボットの作動を停止して、手動で棒状電極を交換したり取り付け直したりする必要があり、溶接ラインを停止しなければならなくなる。
【0013】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたもので、溶接用トーチに取り付ける棒状電極を自動的に交換する際に用いる溶接用棒状電極の自動交換用ホルダにおいて、溶接用トーチの軸と棒状電極の軸とが傾いた状態で溶接用トーチに棒状電極が取り付けられる場合においても、溶接用トーチに棒状電極が良好に取り付けられるようにする、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本願の請求項1に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダは、溶接用トーチに取り付ける棒状電極を自動的に交換する際に用いる溶接用棒状電極の自動交換用ホルダであって、所定角度をなしてV字状に設けられる2つの壁面部を有する切欠部を備え、前記2つの壁面部の間に前記棒状電極を保持する保持部材と、前記2つの壁面部の間に配置された前記棒状電極を前記2つの壁面部の交線側に向けて弾性的に付勢する付勢部材と、を備え、前記棒状電極は、前記付勢部材によって付勢されて前記2つの壁面部の交線と平行に前記保持部材の前記2つの壁面部の間に保持される、ことを特徴としたものである。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記保持部材は、該保持部材が設置される保持部材設置面と垂直方向に前記2つの壁面部の交線が延びるように配置され、前記棒状電極が、垂直方向に保持される、ことを特徴としたものである。
【0016】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記付勢部材は、前記2つの壁面部の交線方向に離間して少なくとも2つ配置されている、ことを特徴としたものである。
【0017】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、前記付勢部材は、その先端部と前記2つの壁面部の交線との間の距離が調整可能に構成されている、ことを特徴としたものである。
【0018】
また更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に係る発明において、前記保持部材が嵌め合わせられるとともに前記付勢部材が取り付けられる本体部をさらに備え、前記保持部材と前記本体部との間に前記切欠部によって開口部が形成され、該開口部内において前記付勢部材の先端部が前記棒状電極を付勢して前記棒状電極が前記保持部材の前記2つの壁面部の間に保持される、ことを特徴としたものである。
【0019】
また更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に係る発明において、前記付勢部材が、ボールプランジャーである、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本願の請求項1に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダによれば、所定角度をなしてV字状に設けられる2つの壁面部を有する切欠部を備え、2つの壁面部の間に棒状電極を保持する保持部材と、2つの壁面部の間に配置された棒状電極を2つの壁面部の交線側に向けて弾性的に付勢する付勢部材と、を備え、棒状電極は、付勢部材によって付勢されて2つの壁面部の交線と平行に保持部材の2つの壁面部の間に保持されることにより、棒状電極は外部から力が作用した場合に傾動したり移動したりすることができるように保持されているので、溶接用トーチの軸と棒状電極の軸とが傾いた状態で溶接用トーチに棒状部材10が取り付けられる場合においても、棒状電極が曲がったり棒状電極が保持部材に引っかかったりすることを抑制することができ、溶接用トーチに棒状電極が良好に取り付けられるようにすることができる。
【0021】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、保持部材は、該保持部材が設置される保持部材設置面と垂直方向に前記2つの壁面部の交線が延びるように配置され、棒状電極が、垂直方向に保持されることにより、棒状電極の垂直方向上方側から溶接用トーチに棒状電極を取り付けることができ、前記効果をより具体的に実現することができる。
【0022】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、付勢部材は、2つの壁面部の交線方向に離間して少なくとも2つ配置されていることにより、棒状電極を所定位置に安定して保持することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0023】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、付勢部材は、その先端部と2つの壁面部の交線との間の距離が調整可能に構成されていることにより、電極径が異なる棒状電極を保持する場合においても、電極径に応じた保持部材を準備して電極径に応じた保持部材に交換する必要がなく、付勢部材の位置を調整することで電極径が異なる棒状電極を保持することができる。
【0024】
また更に、本願の請求項5に係る発明によれば、保持部材が嵌め合わせられるとともに付勢部材が取り付けられる本体部をさらに備え、保持部材と本体部との間に切欠部によって開口部が形成され、該開口部内において付勢部材の先端部が棒状電極を付勢して棒状電極が保持部材の2つの壁面部の間に保持されることにより、保持部材と付勢部材とを所定の位置関係に安定して配置することができ、前記効果をより有効に得ることができる。
【0025】
また更に、本願の請求項6に係る発明によれば、付勢部材が、ボールプランジャーであることにより、比較的簡単な構成によって、前記効果をより具体的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図2】図1に示す自動交換用ホルダを示す斜視図である。
【図3】図2に示す自動交換用ホルダの要部を示す斜視図である。
【図4】自動交換用ホルダの保持部材を示す斜視図である。
【図5】図2に示す自動交換用ホルダの要部を示す上面図である。
【図6】自動交換用ホルダに保持した棒状電極が溶接用トーチに取り付けられる工程を説明するための説明図である。
【図7】自動交換用ホルダに保持した棒状電極が溶接用トーチに取り付けられる工程を説明するための説明図である。
【図8】従来の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダの構成を概略的に示す概略構成図である。
【図9】従来の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダの構成を概略的に示す概略構成図、図2は、図1に示す自動交換用ホルダを示す斜視図、図3は、図2に示す自動交換用ホルダの要部を示す斜視図、図4は、自動交換用ホルダの保持部材を示す斜視図、図5は、図2に示す自動交換用ホルダの要部を示す上面図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ20は、溶接用トーチに取り付ける棒状電極を自動的に交換する際に用いるものであり、従来の自動交換用ホルダ50と同様に、4本の脚部61を有する基台62上に締結部材Bを用いて取り付けられ、該基台62は、自動交換用ホルダ20の下側部分が自動交換用ホルダ20に保持された棒状電極10と干渉しないように形成されている。
【0029】
図1にはまた、TIG溶接を行う溶接ロボット30が示されており、溶接ロボット30は、そのアーム31にTIG溶接を行うための溶接用トーチ32が取り付けられている。溶接用トーチ32には、コレットチャック等の棒状電極を着脱可能に把持する着脱機構(不図示)が組み込まれ、溶接用トーチ32は、該着脱機構を作動させることによりタングステンからなる棒状電極を取り付けたり取り外したりすることができるようになっている。
【0030】
溶接ロボット30は、図示しない不活性ガス供給機構を通じて供給された不活性ガスの雰囲気中において溶接用トーチ32に取り付けた棒状電極と母材と(共に不図示)の間にアークを発生させ、溶接用トーチ32に取付ブラケット33を介して取り付けられたワイヤ供給ノズル35を通じてフィラーワイヤ34を供給しながら溶接することができるようになっている。
【0031】
溶接ロボット30を用いて溶接する場合、溶接用トーチ32に取り付けた棒状電極が次第に摩耗し、棒状電極が摩耗すると棒状電極を自動的に交換することが行われる。前述したように、溶接用トーチ32から使用済みの棒状電極を自動的に取り外した後に、新しい棒状電極10を取り付けるために溶接用トーチ32が自動交換用ホルダ20に保持した新しい棒状電極10の真上に移動し、その位置から棒状部材10側に下方へ移動して新しい棒状電極10を把持し、棒状電極10を把持すると上方へ移動して、新しい棒状電極10を自動的に取り付けることが行われる。
【0032】
この自動交換用ホルダ20は、図2に示すように、自動交換用ホルダ50と同様に、略直方体状の本体部21と、本体部21の上面21aから下面21bにわたって形成された断面円形状の開口部21dに嵌め合わせられるとともに棒状電極10を垂直方向に保持する保持部材23と、本体部21の側面21cに形成された穴部21e、21fに水平方向に取り付けられた付勢部材としてのボールプランジャー25、26とを備えて構成されている。
【0033】
しかしながら、自動交換用ホルダ20では、図3及び図4に示すように、保持部材23は、上面23aと下面23bと側面23cとを有する円柱体の一部が切り欠かれた切欠部24を備えている。具体的には、保持部材23は、円柱体の側面23cが断面扇形状に切り欠かれた切欠部24を備え、該切欠部24は、平面状に形成される2つの壁面部24a、24bを有している。これら2つの壁面部24a、24bは、該2つの壁面部24a、24bの交線24cに対して所定角度θをなして断面V字状に設けられている。なお、本実施形態では、これに限定されるものではないが、所定角度θが90度に設定され、2つの壁面部24a、24bの交線24cが円柱体の中心軸C1と一致するように形成されている。
【0034】
また、図3に示すように、本体部21には、側面21cに垂直方向に離間して2つの穴部21e、21fが形成され、穴部21e、21fはそれぞれ、本体部21の長手方向と直交する方向に水平方向に延びるように形成されるとともに開口部21dに連通するように形成されている。これら穴部21e、21fにはそれぞれ、ボールプランジャー25、26が水平方向に取り付けられ、ボールプランジャー25、26は、保持部材23の2つの壁面部24a、24bの間において2つの壁面部24a、24bから等しい角度となるように配置されている。
【0035】
ボールプランジャー25、26はそれぞれ、図3及び図5に示すように、その先端部にボール25a、26aを備えており、該ボール25a、26aがボールプランジャー25、26内に配設された図示しない弾性部材としてのバネによって付勢されている。ボールプランジャー25、26の側面25b、26bには雄ねじが形成されるとともに穴部21e、21fの内面に雌ねじが形成されており、ボールプランジャー25、26は、該ボールプランジャー25、26を回転させることによりボールプランジャー25、26の先端部の位置を調整することができるように構成されている。
【0036】
自動交換用ホルダ20では、保持部材23は、2つの壁面部24a、24bの交線24cが開口部21dの中心軸線に平行に延びるように配置されて本体部21に嵌め合わせられ、保持部材23と本体部21との間に切欠部24によって断面扇形状の開口部29が形成されている。保持部材23は、上面23aが本体部21の上面21aと略面一になるように形成されるとともに、下面23bが本体部21の下面21bと略面一になるように形成され、該保持部材23が設置される保持部材設置面である基台62の上面62aと垂直方向に2つの壁面部24a、24bの交線24cが延びるように配置されている。
【0037】
図5に示すように、自動交換用ホルダ20ではまた、ボールプランジャー25、26はそれぞれ、その先端部が断面扇形状の開口部29内に突出するようにして配置され、ボールプランジャー25、26の先端部が、2つの壁面部24a、24bの間に配置された棒状電極10の側面10aを2つの壁面部24a、24bの交線24c側に向けて水平方向に弾性的に付勢して棒状電極10を保持部材23の2つの壁面部24a、24bの間に該2つの壁面部24a、24bの交線24cと平行に垂直方向に保持することができるようになっている。
【0038】
なお、自動交換用ホルダ20では、10本の棒状電極10を保持することができるように10個の開口部21dが形成され、該開口部21dにそれぞれ保持部材23が嵌め合わせられるとともに、該開口部21dに対してそれぞれ垂直方向に離間して形成された2つの穴部21e、21fにそれぞれ付勢部材としてのボールプランジャー25、26が配設されている。自動交換用ホルダ20は、これに限定されるものでなく、その他の本数の棒状電極10を保持することができるように構成することも可能である。
【0039】
このようにして構成される自動交換用ホルダ20では、棒状電極10は、保持部材23の2つの壁面部24a、24bの間においてボールプランジャー25、26によって弾性的に付勢されており、棒状電極10に所定の力が作用した場合には、棒状電極10は上下方向に移動したり、ボールプランジャー25、26の先端部25a、26aが弾性的に移動することができるので傾動したり移動したりすることができるように保持されている。
【0040】
次に、溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ20に保持した棒状電極10の交換について説明する。
図6は、自動交換用ホルダに保持した棒状電極が溶接用トーチに取り付けられる工程を説明するための説明図であり、溶接用トーチの軸と棒状電極の軸とが一致している場合を示している。
【0041】
溶接用トーチ32に取り付けられた棒状電極10の交換時には、溶接用トーチ32から使用済みの棒状電極を自動的に取り外した後に、新しい棒状電極10を取り付けるために溶接用トーチ32が自動交換用ホルダ20に保持した新しい棒状電極10の真上に移動される。
【0042】
図6(a)に示すように、溶接用トーチ32の軸C4が自動交換用ホルダ20に保持した棒状電極10の軸C3と一致している場合には、図6(b)に示すように、溶接用トーチ32をその位置から棒状電極10側に下方へ移動させて棒状電極10を溶接用トーチ20内に所定位置まで挿入し、前記着脱機構を作動させることにより溶接用トーチ32は棒状電極10を把持する。
【0043】
溶接用トーチ32が新しい棒状電極10を把持すると、図6(c)に示すように、溶接用トーチ32を上方へ移動させて棒状電極10を自動交換用ホルダ20の保持部材23から抜き取り、溶接用トーチ32に新しい棒状電極10を取り付けることができる。なお、溶接ロボット30に一連の動きを教示しておくことで、溶接用棒状電極10を自動的に交換することができる。
【0044】
前述したように、溶接用トーチ20に取り付けられた棒状電極10の交換時に、溶接用トーチ10から使用済みの棒状電極を自動的に取り外した後に、新しい棒状電極10を取り付けるために溶接用トーチ32が自動交換用ホルダ20に保持した新しい棒状電極10の真上からずれた位置に移動し、溶接用トーチ32の軸C4と棒状電極10の軸C3とが傾いた状態で溶接用トーチ32が棒状部材10側に下方へ移動して、溶接用トーチに新しい棒状電極10が取り付けられる場合がある。
【0045】
図7は、自動交換用ホルダに保持した棒状電極が溶接用トーチに取り付けられる工程を説明するための説明図であり、溶接用トーチ32の軸C4と棒状電極10の軸C3とが傾いた場合を示している。溶接用トーチ32の軸C4と自動交換用ホルダ20の保持部材23に保持した棒状電極10の軸C3とが一致するように溶接用トーチ32を移動させた場合においても、図7(a)に示すように、溶接用トーチ32が、自動交換用ホルダ20に保持した棒状電極10の軸C3から傾いた状態となる場合がある。
【0046】
図7(a)に示す状態から溶接用トーチ32を棒状電極10側に下方へ移動させて棒状電極10を把持する場合に、本実施形態に係る自動交換用ホルダ20では、溶接用トーチ32内に棒状電極10の先端部が挿入されると、図7(b)に示すように、溶接用トーチ32の下方への移動に伴って溶接用トーチ32の軸C4に棒状電極10の軸C3が一致するように棒状電極10が傾動して溶接用トーチ32内の所定位置まで挿入され、前記着脱機構を作動させることにより溶接用トーチ32は該溶接用トーチ32の軸C4と棒状電極10の軸C3とが一致した状態で棒状電極10を把持する。これは、棒状電極10にボールプランジャー25、26の押し付け力に反する力を与えることで、棒状電極10が切欠部24に沿ってある程度自由に動くことができるためである。
【0047】
溶接用トーチ32が新しい棒状電極10を把持すると、図7(c)に示すように、溶接用トーチ32を上方へ移動させて棒状電極10を自動交換用ホルダ20の保持部材23から抜き取り、溶接用トーチ32に新しい棒状電極10を良好に取り付けることができる。自動交換用ホルダ20では、溶接用トーチ32の軸C4と棒状電極10の軸C3とが傾いた状態で溶接用トーチ32に棒状部材10が取り付けられる場合においても、棒状電極10が曲がったり保持部材23に引っかかったりすることを抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、付勢部材としてのボールプランジャー25、26は、保持部材23の上面23aと下面23bとの間において2つの壁面部24a、24bの交線24c方向に離間して2つ配置されているが、1つの付勢部材によって棒状電極10を水平方向に弾性的に付勢することも可能であるが、付勢部材は、2つの壁面部24a、24bの交線24c方向に離間して少なくとも2つ配置されることが好ましい。これにより、棒状電極10を所定位置に安定して保持することができる。
【0049】
また、本実施形態では、付勢部材25、26は、その先端部の位置を調整することができるように構成され、その先端部と2つの壁面部24a、24bの交線24cとの間の距離が調整可能に構成されていることにより、電極径が異なる棒状電極を保持する場合においても、電極径に応じた保持部材を準備して電極径に応じた保持部材に交換する必要がなく、付勢部材25、26の位置を調整することで電極径が異なる棒状電極10を保持することができる。
【0050】
このように、本実施形態に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ20は、所定角度をなしてV字状に設けられる2つの壁面部24a、24bを有する切欠部24を備え、2つの壁面部24a、24bの間に棒状電極10を保持する保持部材23と、2つの壁面部24a、24bの間に配置された棒状電極10を2つの壁面部24a、24bの交線24c側に向けて弾性的に付勢する付勢部材25、26と、を備え、棒状電極10は、付勢部材25、26によって付勢されて2つの壁面部24a、24bの交線24cと平行に保持部材23の2つの壁面部24a、24bの間に保持される。
【0051】
これにより、棒状電極10は外部から力が作用した場合に傾動したり移動したりすることができるように保持されているので、溶接用トーチ32の軸C4と棒状電極10の軸C3とが傾いた状態で溶接用トーチ32に棒状電極10が取り付けられる場合においても、棒状電極10が曲がったり保持部材23に引っかかったりすることを抑制することができ、溶接用トーチ32に棒状電極10が良好に取り付けられるようにすることができる。
【0052】
また、保持部材23が嵌め合わせられるとともに付勢部材25、26が取り付けられる本体部21をさらに備え、保持部材23と本体部21との間に切欠部24によって開口部29が形成され、該開口部29内において付勢部材25、26の先端部が棒状電極10を付勢して棒状電極10が保持部材23の2つの壁面部24a、24bの間に保持されることにより、保持部材23と付勢部材25、26とを所定の位置関係に安定して配置することができ、前記効果をより有効に得ることができる。
【0053】
本実施形態では、本体部21に嵌め合わせられる保持部材23を円柱状に形成するとともに上面23aから下面23bにわたって切欠部24を形成し、本体部21と保持部材23との間に断面扇形状の開口部29を形成しているが、本体部21に嵌め合わせられる保持部材23を四角柱状に形成するとともに上面から下面にわたって断面三角形状の切欠部を形成し、本体部と保持部材との間に断面三角形状の開口部を形成するようにすることも可能である。
【0054】
また、本実施形態では、TIG溶接を行う溶接ロボット30の溶接用トーチ32に取り付けるタングステンからなる棒状電極10を交換する場合について説明しているが、これに限定するものでなく、本実施形態に係る溶接用棒状電極の自動交換用ホルダは、溶接用棒状電極を溶接ロボットの溶接用トーチに取り付けるその他の溶接についても適用することができる。
【0055】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、溶接用トーチに棒状電極が良好に取り付けられるようにする溶接用棒状電極の自動交換用ホルダを提供することができ、例えばTIG溶接に用いる棒状電極を保持する溶接用棒状電極の自動交換用ホルダに有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 棒状電極
20、50 自動交換用ホルダ
21、51 本体部
23、53 保持部材
24 切欠部
24a、24b 壁面部
24c 交線
25、26 付勢部材
32 溶接用トーチ
62a 保持部材設置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接用トーチに取り付ける棒状電極を自動的に交換する際に用いる溶接用棒状電極の自動交換用ホルダであって、
所定角度をなしてV字状に設けられる2つの壁面部を有する切欠部を備え、前記2つの壁面部の間に前記棒状電極を保持する保持部材と、
前記2つの壁面部の間に配置された前記棒状電極を前記2つの壁面部の交線側に向けて弾性的に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記棒状電極は、前記付勢部材によって付勢されて前記2つの壁面部の交線と平行に前記保持部材の前記2つの壁面部の間に保持される、
ことを特徴とする溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ。
【請求項2】
前記保持部材は、該保持部材が設置される保持部材設置面と垂直方向に前記2つの壁面部の交線が延びるように配置され、
前記棒状電極が、垂直方向に保持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記2つの壁面部の交線方向に離間して少なくとも2つ配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ。
【請求項4】
前記付勢部材は、その先端部と前記2つの壁面部の交線との間の距離が調整可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ。
【請求項5】
前記保持部材が嵌め合わせられるとともに前記付勢部材が取り付けられる本体部をさらに備え、
前記保持部材と前記本体部との間に前記切欠部によって開口部が形成され、
該開口部内において前記付勢部材の先端部が前記棒状電極を付勢して前記棒状電極が前記保持部材の前記2つの壁面部の間に保持される、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ。
【請求項6】
前記付勢部材が、ボールプランジャーである、
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の溶接用棒状電極の自動交換用ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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