説明

溶接管用渦流探傷装置

【課題】 溶接欠陥の検出性能を向上する溶接管用渦流探傷装置を提供する。
【解決手段】 溶接管1を溶接線上より励磁する励磁コイル2と、溶接線上に並ぶ複数の検出コイル3とを有し、これら検出コイル3の出力を比較することにより探傷を行う溶接管用渦流探傷装置において、検出コイル3が臨む溶接線の長さを検出コイル3により異ならせた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プローブ型の探傷コイルを用いた溶接管用渦流探傷装置に係り、特に、溶接欠陥の検出性能を向上する溶接管用渦流探傷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属製の溶接管の軸方向に形成されている溶接部を探傷(欠陥検出)する装置として渦流探傷装置が知られている。渦流探傷装置に使用される探傷コイルには、貫通型の探傷コイルとプローブ型の探傷コイルがある。貫通型の探傷コイルは、溶接管の全周を探傷するので、溶接部以外の部分から発生している形状変化等に起因したノイズを拾うことになるため、溶接部に対する探傷精度を上げることが困難である。これに対してプローブ型の探傷コイルは、溶接管の溶接線上を探傷するので、溶接部の探傷に適している。
【0003】従来のプローブ型の探傷コイルの構造は、図4に示されるように、2つの検出コイル3a,3bを溶接管の溶接線上に並べたものである。探傷は、両検出コイル3a,3bの電気的バランスの変化量を検出する自己比較形式で行われる。各検出コイル3a,3bは、断面形状が同じ大きさの長方形であり、各々断面の長径が溶接線(図示せず)に直交するよう配置されている。2は、励磁コイルであり、2つの検出コイル3a,3bを挟むコア4の開放端を溶接線に臨ませることにより、溶接管1を励磁することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、溶接管1の溶接部に発生する欠陥は、管軸方向に連続して発生するものが多い。管軸方向に長く伸びた欠陥があると、従来の自己比較形式のプローブ型の探傷コイルでは、両検出コイル3a,3bが同じ幅及び同じ長さの欠陥部分に臨むので、両検出コイル3a,3bの電気的バランスに変化がでなくなり、うまく探傷できないことがある。このように、従来の渦流探傷装置は、管軸方向に伸びた欠陥に対して検出性能に限界があった。
【0005】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、溶接欠陥の検出性能を向上する溶接管用渦流探傷装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、溶接管を溶接線上より励磁する励磁コイルと、溶接線上に並ぶ複数の検出コイルとを有し、これら検出コイルの出力を比較することにより探傷を行う溶接管用渦流探傷装置において、検出コイルが臨む溶接線の長さを検出コイルにより異ならせたものである。
【0007】各検出コイルの断面の径を一方向に長く形成し、ある検出コイルは断面の長径が溶接線に沿うよう配置し、別の検出コイルは断面の長径が溶接線に交差するよう配置してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0009】図1に示されるように、本発明に係る溶接管用渦流探傷装置は、溶接管1を溶接線(図示せず)上より励磁する励磁コイル(一次コイルとも言う)2と、溶接線上に並ぶ2つの検出コイル(二次コイルとも言う)3とを有する。励磁コイル2のためのコ字型のフェライトコア4は、互いに向き合う2つの側壁部コア4a,4bとこれら側壁部間をつなぐ上底部コア4cとからなり、下底部が開放端となっている。上底部コア4cに励磁コイル2が巻かれている。この励磁コイル2の軸を溶接管1の管軸と平行にし、2つの側壁部コア4a,4bを溶接線に臨ませてある。2つの検出コイル3は、側壁部コア4a,4b間の空間に収容されている。
【0010】2つの検出コイル3は、いずれも平板状のフェライトコア5に巻かれており、断面形状が同じ大きさの長方形であるが、一方の検出コイル3aは断面の長径が溶接線に対して平行になるよう配置され、もう一方の検出コイル3bは断面の長径が溶接線に直交するよう配置されている。これら2つの検出コイル3a,3bの電気的バランスの変化量が検出信号として出力される。
【0011】図2は、溶接管1に臨む検出コイル端面を上から見たイメージ図である。
【0012】6は、溶接管1の溶接線7に沿って発生し管軸方向に連続した溶接欠陥である。2つの検出コイル3a,3bが共に溶接欠陥6上を通過中の状態が示されている。この状態で、検出コイル3aが臨む欠陥部分の長さは、検出コイル3aの断面の長径の長さに相当し、一方、検出コイル3bが臨む欠陥部分の長さは、検出コイル3bの断面の短径に相当するので、検出コイル3aが臨む欠陥部分の長さは、検出コイル3bが臨む欠陥部分の長さよりも長い。よって、検出コイル3aは、検出コイル3bよりも誘導電流の影響を大きく受けることになる。これにより、2つの検出コイル3a,3bの電気的バランスの変化量が生じやすくなる。
【0013】本発明の溶接管用渦流探傷装置による探傷結果を従来の溶接管用渦流探傷装置による探傷結果と比較する。図3(a)に示されるように、従来技術では、ノイズレベルが大きく、欠陥信号の振幅に近い大きさである。これに対し、図3(b)に示されるように、本発明では、同等の欠陥信号の振幅が得られ、かつノイズレベルが極めて小さく、欠陥信号/ノイズレベルで表されるS/N比が大幅に向上していることが分かる。
【0014】本発明は、自己比較形式のプローブ型探傷コイルを使用する渦流探傷装置の全てに応用が可能であり、回転プローブ型渦流探傷装置についても同様に応用可能である。
【0015】また、本発明は、溶接管の管軸方向に長く伸びた欠陥のように、同一線上に連続して発生する欠陥の検出に極めて有効である。
【0016】本発明の溶接管用渦流探傷装置を溶接管の製造ラインに試験的に導入し、人工的に溶接欠陥6を与えた溶接管を検査したところ、溶接部の探傷精度を大幅に向上させることができた。従来技術では、φ0.3ドリルホールによる人工欠陥までしか探傷できなかったのに対し、本発明ではφ0.2ドリルホールによる人工欠陥まで探傷可能になった。
【0017】
【発明の効果】本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0018】(1)検出コイルが臨む溶接線の長さを検出コイルにより異ならせたので、溶接線に沿って伸びた長い溶接欠陥に対して両検出コイルの電気的バランスの変化を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す溶接管用渦流探傷装置の構成図である。
【図2】本発明による検出コイル端面のイメージ図である。
【図3】2つの検出コイルの電気的バランスの変化量を示す波形図であり、(a)は従来技術、(b)は本発明によるものである。
【図4】従来の溶接管用渦流探傷装置の構成図である。
【符号の説明】
1 溶接管
2 励磁コイル
3(3a,3b) 検出コイル
4、5 フェライトコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶接管を溶接線上より励磁する励磁コイルと、溶接線上に並ぶ複数の検出コイルとを有し、これら検出コイルの電気的バランスにより探傷を行う溶接管用渦流探傷装置において、検出コイルが臨む溶接線の長さを検出コイルにより異ならせたことを特徴とする溶接管用渦流探傷装置。
【請求項2】 各検出コイルの断面の径を一方向に長く形成し、ある検出コイルは断面の長径が溶接線に沿うよう配置し、別の検出コイルは断面の長径が溶接線に交差するよう配置したことを特徴とする請求項1記載の溶接管用渦流探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−162388(P2002−162388A)
【公開日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−357895(P2000−357895)
【出願日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】