説明

溶接装置

【課題】適切に溶接ヒュームを回収し、溶接ビート面等を観察し、溶接時に発生する可聴音を計測し、環境を考慮した最適な溶接を行う溶接装置を提供することにある。
【解決手段】図1に示す消耗性電極を有する溶接トーチ18を用いてアーク溶接を行う制御機構を備えた溶接用アーム1と、溶接する溶接トーチ18と、溶接ヒューム12を吸引する溶接ヒューム吸引ノズル管16と、溶接時の溶融金属を観察するCCDカメラ19と、溶接時に発生する可聴音を計測する可聴音センサー20を備えた溶接用トーチ機構2と、前記溶接トーチ機構2から撮像された溶融金属を画像解析する画像解析装置8と、溶接時の可聴音を解析する装置(可聴音解析装置)9、溶接ヒューム12を回収する装置(溶接ヒューム回収装置)10と、溶接トーチ18におけるアーク電流を制御するアークセンター信号変換装置11を備えたことを特徴とする溶接装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アーク溶接において、一般にアーク溶接は溶接棒(溶接ワイヤ)と母材との間にアークを発生させ、溶材と母材の一部を溶融して接合する方法であるため、強烈な光と熱を発生し、溶融した金属からはスパッタや金属蒸気、さらにはそれが酸化した溶接ヒュームなどが放出される。特に自動車等で使用される溶融亜鉛めっき鋼板の溶接では、酸化亜鉛のヒュームによる多量の白煙が発生し、この白煙を多量に吸入すれば金属熱と呼ばれる症状(悪感)が出ることが指摘されている。このように強烈な光、溶接ヒューム等は人体に有害であることが指摘されている。溶接ヒュームが、一度に多量の溶接ヒュームを発生するため、溶接ヒュームを吸引する場合、不適切な吸引により、溶融金属表面付近に乱気流が発生するので、ブローホール等が発生し、溶接不良になる場合がある。
適切な溶接を行うためには、溶融状態の溶接ビード面、気泡等が発生する溶融金属を観察あるいは監視する必要があり、従来、CCDカメラを溶接トーチ近傍に設置することが行われている。しかし、アーク発生部はシールドガスノズル等に囲まれているため、CCDカメラは溶接トーチに対して大きな角度を取らざるを得ず、長大なアームの先端に取り付けられるため被溶接物と干渉して適用がきわめて困難である等の様々な問題がある。
この発明は、溶接ロボットにおいて、溶接ヒュームの回収技術、溶接金属のモリタリング技術に関するものである。
そこで、溶接装置において、溶接ヒュームを回収し、溶接ビート面等を観察し、溶接時に発生する可聴音を計測し、環境を考慮した適切な溶接を行う溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接ヒュームの回収技術は、主に溶接ヒュームを吸引によって行われている。また、カメラ等の観察、監視は、主に溶接トーチと別個に設置され、カメラ等が1台で対応している場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−210561号公報
【特許文献2】特開2000−254428号公報
【特許文献3】特開2001−062589号公報
【特許文献4】特開2000−157821号公報
【特許文献5】特開2003−326362号公報
【特許文献6】特開平11−047930号公報
【特許文献7】特開平11−216563号公報
【特許文献8】特開平09−076063号公報
【特許文献9】特開平08−103871号公報
【特許文献10】特開平08−010949号公報
【特許文献11】特開平07−266044号公報
【特許文献12】特開平07−080643号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「溶接ヒュームの手引」株式会社 進和商會
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶接ヒュームが、一度に多量の溶接ヒュームを発生するため、溶接ヒュームを吸引する場合、不適切な吸引により、溶融金属表面付近に乱気流が発生するので、ブローホール等が発生し、溶接不良になる場合がある。
【0006】
適切な溶接を行うためには、溶融状態の溶接ビード面、気泡等が発生する溶融金属を観察あるいは監視する必要があり、従来、CCD(Charge Coupled Device)カメラを溶接トーチ近傍に設置することが行われている。しかし、アーク発生部はシールドガスノズル等に囲まれているため、CCDカメラは溶接トーチに対して大きな角度を取らざるを得ず、長大なアームの先端に取り付けられるため被溶接物と干渉して適用がきわめて困難である。従来の溶接ビード面の観察において、カメラが1台あるいは溶接トーチとの近傍でない位置に設置しているため、溶融金属を多角的に観察することが困難である。溶接時に発生する溶接ヒュームによるCCDカメラレンズにおける溶接ヒューム付着の問題、溶接時の熱によって、CCDカメラレンズの変形あるいはCCDカメラケーブルが燃焼する可能性がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、溶接ヒュームが発生する溶接作業において、溶接ヒュームを回収し、溶融金属を正確に観察あるいは監視することによって、環境に優しく、最適な溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するための請求項1の発明の溶接装置は、消耗性電極を有する溶接トーチ機構を用いてアーク溶接を行う制御機構を備えた溶接用アームと、溶接可能なトーチと、溶接ヒュームを吸引することが可能なノズルと、溶接時の溶融金属を観察することが可能なCCDカメラと、溶接時に発生する可聴音を計測することが可能なセンサーを備えた溶接トーチ機構と、前記溶接トーチ機構から撮像された溶融金属を画像解析する画像解析装置と、溶接時の可聴音を計測し、可聴音を解析する可聴音解析装置、溶接ヒュームを吸引し、溶接ヒュームを回収する溶接ヒューム回収装置と、溶接トーチにおけるアーク電流を制御するアークセンサー信号変換装置を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、溶接ヒュームを吸引することが可能な手段と、フィルター付CCDカメラを有し、溶融金属を観察することが可能な手段と、溶接時の可聴音を計測することが可能な手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項3の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、溶接ヒューム吸引ノズル管と、フィルター付CCDカメラと、溶接時の可聴音を計測するセンサーとを備えたことを特徴としている。
【0011】
また、請求項4の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、溶接トーチを中心に上部側に溶接時の可聴音を計測するセンサーと、溶接トーチを中心に下部側及び左右に溶接ヒューム吸引ノズル管と、前述の可聴音を計測するセンサーと溶接ヒューム吸引ノズル管の隙間にフィルター付CCDカメラが連結されたことを特徴としている。
【0012】
また、請求項5の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、筒形状の溶接トーチ本体の先端部にアークの遮光フードが設けられたことを特徴としている。
【0013】
また、請求項6の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、CCDカメラを内蔵する管内に炭酸ガスを噴射することによって、前記のCCDカメラから過熱を防止する手段と、溶接トーチ機構内の冷却効果を促進する手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
また、請求項7の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、フィルター付CCDカメラは、炭酸ガスを噴射することによって、前記のCCDカメラフィルターから溶接ヒュームの付着を防止する手段を備えたことを特徴としている。
【0015】
また、請求項8の発明の溶接装置では、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、フィルター付CCDカメラは、CCDカメラ冷却管に内蔵され、CCDカメラ冷却管内に炭酸ガスを流すことによって、CCDカメラを冷却し、さらに、CCDカメラ冷却管の先端の一部にストッパーガイドを設置し、炭酸ガスの流れをCCDカメラフィルターに強制的に流すことによって、前記のCCDカメラフィルターから溶接ヒュームの付着を防止し、排出あるいは飛散した溶接ヒュームを前記の溶接ヒューム吸引ノズル管から吸引する手段を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
以上の記載より明らかなように、請求項1の発明の溶接装置によれば、消耗性電極を有する溶接トーチ機構を用いてアーク溶接を行う制御機構を備えた溶接用アームと、溶接可能なトーチと、溶接ヒュームを吸引することが可能なノズルと、溶接時の溶融金属を観察することが可能なCCDカメラと、溶接時に発生する可聴音を計測することが可能なセンサーを備えた溶接トーチ機構と、前記溶接トーチ機構から撮像された溶融金属を画像解析する画像解析装置と、溶接時の可聴音を計測し、可聴音を解析する可聴音解析装置、溶接ヒュームを吸引し、溶接ヒュームを回収する溶接ヒューム回収装置と、溶接トーチにおけるアーク電流を制御するアークセンサー信号変換装置を備えることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0017】
以上の記載より明らかなように、請求項2の発明の溶接装置によれば、請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、溶接ヒュームを吸引することが可能な手段と、フィルター付CCDカメラを有し、溶融金属を観察することが可能な手段と、溶接時の可聴音を計測することが可能な手段とを備えることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0018】
以上の記載より明らかなように、請求項3の発明の溶接装置によれば、請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、溶接ヒューム吸引ノズル管と、フィルター付CCDカメラと、溶接時の可聴音を計測するセンサーとを備えることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0019】
以上の記載より明らかなように、請求項4の発明の溶接装置によれば、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、溶接トーチを中心に上部側に溶接時の可聴音を計測するセンサーと、溶接トーチを中心に下部側及び左右に溶接ヒューム吸引ノズル管と、前述の可聴音を計測するセンサーと溶接ヒューム吸引ノズル管の隙間にフィルター付CCDカメラが連結されることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0020】
以上の記載より明らかなように、請求項5の発明の溶接装置によれば、請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、筒形状の溶接トーチ本体の先端部にアークの遮光フードが設けることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0021】
以上の記載より明らかなように、請求項6の発明の溶接装置によれば、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、CCDカメラを内蔵する管内に炭酸ガスを噴射することによって、前記のCCDカメラから過熱を防止する手段と、溶接トーチ機構内の冷却効果を促進する手段を備えることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0022】
以上の記載より明らかなように、請求項7の発明の溶接装置によれば、請求項1に記載した溶接トーチ機構において、フィルター付CCDカメラは、炭酸ガスを噴射することによって、前記のCCDカメラフィルターから溶接ヒュームの付着を防止する手段を備えることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【0023】
以上の記載より明らかなように、請求項8の発明の溶接装置によれば、 請求項1に記載した溶接トーチ機構において、フィルター付CCDカメラは、CCDカメラ冷却管に内蔵され、CCDカメラ冷却管内に炭酸ガスを流すことによって、CCDカメラを冷却し、さらに、CCDカメラ冷却管の先端の一部にストッパーガイドを設置し、炭酸ガスの流れをCCDカメラフィルターに強制的に流すことによって、前記のCCDカメラフィルターから溶接ヒュームの付着を防止し、排出あるいは飛散した溶接ヒュームを前記の溶接ヒューム吸引ノズル管から吸引する手段を備えることによって、環境に優しく、適切な溶接を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明を実施するための最良の形態を示す溶接装置全体構成を表す概略図である。
【図2】実施例の溶接装置における溶接トーチ機構の側断面図である。
【図3】実施例の溶接装置における溶接トーチ機構の正面図である。
【図4】図3のA―A線に沿った断面図である。
【図5】実施例の溶接装置における溶接トーチ機構のCCDカメラ及びCCDカメラ冷却管の断面図である。
【図6】図5のB-B矢視正面図である。
【図7】ストッパーガイドを取り除いたCCDカメラ冷却管の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る溶接装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明の溶接装置の概略図を示し、詳細に説明する。本発明の溶接装置において、溶接トーチ機構2を支持する溶接用アーム1から構成されている。溶接用アーム1は、固定台3に取り付けられ、上下左右に運動可能である機能を持つ複数の連結部4からなる。溶接トーチ機構2は、鉄板5との間にアーク6を発生させる溶接棒7、溶融金属を画像解析する画像解析装置8と、溶接時の可聴音を計測し、可聴音を解析する可聴音解析装置9、溶接ヒュームを吸引し、溶接ヒュームを回収する溶接ヒューム回収装置10と、溶接トーチにおけるアーク電流を制御するアークセンター信号変換装置11から構成されている。
図2は、本発明の溶接装置における溶接トーチ機構2の側断面図を示し、溶接トーチ機構2を詳細に説明する。溶接トーチ機構2は、溶接ヒューム12を発散させないために取り付けた遮光フード13内に溶融金属を観察するCCDカメラ19を内蔵し、CCDカメラ
19を冷却し、保護する機能をもつCCDカメラ冷却管14、溶接時の可聴音を計測するセンサー(可聴音センサー20)を内蔵し、溶接ヒューム12等から上記の可聴音センサー20を保護する機能をもつ可聴音センサー保護管15、溶接ヒューム12を吸引する機能を持つ溶接ヒューム吸引ノズル管16及び溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17、鉄板5との間にアーク6を発生させる溶接棒7を取り付けた溶接トーチ18から構成されている。図2に示すように、CCDカメラ19を内蔵したCCDカメラ冷却管14は、溶融金属を画像解析する画像解析装置8に、可聴音センサーを内蔵している可聴音センサー保護管15は、溶接時に発生する可聴音を解析する可聴音解析装置9に接続されている。溶接ヒューム
12は、溶接ヒューム吸引ノズル管16及び溶接ヒューム吸引ノズル管16上に取り付けられた溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17から吸引され、溶接ヒューム回収装置10で処理が行われる。
図3は、本発明の溶接装置における溶接トーチ機構2の正面図を示し、詳細に説明する。溶接トーチ18は円筒形状をなし、溶接トーチ機構2の中央部に溶接トーチ18が設けられ、外周部に円筒状の遮光フード13が取り付けられる。溶接トーチ18と遮光フード
13の間に、4本の円筒状のCCDカメラ19を内蔵した円筒状のCCDカメラ冷却管14が等間隔で設置されている。前述のCCDカメラ19を内蔵したCCDカメラ冷却管14の1本置きに3本の円筒状の溶接ヒューム吸引ノズル管16が設けられ、残りの1本に可聴音センサー20が設けられている。
CCDカメラ冷却管14は、上部側に溶接ヒューム12等を遮断するストッパーガイド
21が取り付けられている。溶接ヒューム吸引ノズル管16は、CCDカメラ冷却管14に隣接し、CCDカメラ冷却管14近傍の溶接ヒューム12等を吸引するために、取り付けられている。溶接ヒューム吸引ノズル管16において、溶接ヒューム吸引ノズル管16の上部側、または左右に小径の溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17が取り付けられている。溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17は、CCDカメラ19近傍の溶接ヒューム12等を吸引し、溶接ヒューム12等を処理するので、4本のCCDカメラ19から容易に溶融金属を多角的な監視することが可能となる。CCDカメラ19を内蔵したCCDカメラ冷却管14は、4本であるので、溶接ヒューム吸引ノズル管16は、3本であるため、効率的にCCDカメラ
19近傍の溶接ヒューム12等を吸引する目的で、2本の溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17を持つ溶接ヒューム吸引ノズル管16が1本取り付けられている。なお、残り2本の溶接ヒューム吸引ノズル管16は、それぞれ1本の溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17が設けられている。
さらに、可聴音センサー20が、溶接時に発生する異常な発生音を計測することによって、適切な溶接条件を設定することが可能である。
図4は、本発明の溶接装置における溶接トーチ機構2の図3のA―A線に沿った断面図を示し、詳細に説明する。遮光フード13を取り付けた溶接トーチ18を中心に、上部側から可聴音センサー20を内蔵している可聴音センサー保護管15、CCDカメラ19を内蔵したCCDカメラ冷却管14、溶接ヒューム吸引ノズル管16、CCDカメラ19を内蔵したCCDカメラ冷却管14、溶接ヒューム吸引ノズル管16から構成されている。図4に示すように、CCDカメラ19を内蔵するCCDカメラ冷却管14内に炭酸ガス22を噴射することによって、前記のCCDカメラ19の過熱を防止することができ、溶接トーチ機構2内の冷却効果を促進することが可能である。CCDカメラ19を冷却する管のガスは、空気の場合、冷却効果がなく、溶融金属中に空気の侵入によって、ブローホール発生、鉄表面の酸化によるスラグ発生等の溶接表面の悪化が懸念される。炭酸ガスは冷却効果が期待でき、かつ溶融金属に悪影響を及ぼさない可能性がある。溶接ヒューム吸引ノズル管16から、溶接ヒューム12等を吸引し、さらにCCDカメラ19近傍の溶接ヒューム12等も除去することができる。また、溶接トーチ18からシールドガスとして、炭酸ガス22を噴射させながらアーク6を保護している。CCDカメラ19を保護するために、CCDカメラ冷却管
14に流れる炭酸ガス22の一部は、溶接ヒューム12と一緒に溶接ヒューム吸引ノズル管16及び溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17から吸引され、処理される。CCDカメラ
19を保護するために、CCDカメラ冷却管14に流れる炭酸ガス22の一部は、アーク6のシールドガスとして、使用される。
図5は、本発明の溶接装置における溶接トーチ機構2のCCDカメラ19及びCCDカメラ冷却管14の断面図であり、詳細に説明する。CCDカメラ冷却管14内において、CCDカメラ19、CCDカメラフィルター24を装着したCCDカメラレンズ25から構成されている。CCDカメラ冷却管14は、ストッパーガイド21が取り付けられている。図5に示すように、CCDカメラ冷却管14にストッパーガイド21を取り付けた場合、炭酸ガス通路26を流れる炭酸ガス22によって、CCDカメラフィルター24表面に付着する溶接ヒューム12を除去することができ、容易に溶融金属を観察することが可能となる。
図6は、図5のB-B矢視正面図であり、詳細に説明する。CCDカメラ冷却管14において、CCDカメラ19のCCDカメラレンズ25を溶接ヒューム12等から保護するために、CCDカメラレンズ25の先端にCCDカメラレンズ25全体を覆うようにCCDカメラフィルター24が装着されている。CCDカメラ冷却管14の図6においては、上部側から下部側の方向に炭酸ガス22を流すことによって、CCDカメラフィルター24に付着した溶接ヒューム12等の除去あるいは溶接ヒューム12等がCCDカメラフィルター24に付着させない目的で、炭酸ガス22の方向をCCDカメラ冷却管14の上部側から下部側の方向へ導く機能を持つストッパーガイド21がCCDカメラ冷却管14の上部側に取り付けられている。ストッパーガイド21は、溶接ヒューム12等からCCDカメラレンズ25を保護し、炭酸ガス22の流れを変える偏向板としての機能をもつ。ストッパーガイド21の形状は、炭酸ガス22がCCDカメラフィルター24において、CCDカメラ冷却管14の下部側に設置されている炭酸ガス噴射孔28の方向に流れやすく、かつCCDカメラレンズ25から溶融金属の形状が広い視野で観察できるように半円形リング状である。さらに、ストッパーガイド21は、CCDカメラレンズ25の中央部に対応する部分において、半円形状に開口されている。
CCDカメラ冷却管14内の円形状CCDカメラ19の両側面部に、CCDカメラ19を熱からの保護及び固定する目的で、断熱材27が設けられている。断熱材27の形状は、円形状CCDカメラ19と一致する形状である。断熱材27と断熱材27との隙間に炭酸ガス噴射孔28がある。
ストッパーガイド21によって下側方向に向きを変えられた炭酸ガス22の噴射力、及び溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17の吸引力の相乗効果でCCDカメラフィルター24表面に付着している溶接ヒューム12等は、炭酸ガス噴射孔28の下側方向に移動させられる。炭酸ガス噴射孔28から噴射された炭酸ガス22によって、炭酸ガス噴射孔28付近に移動させられた溶接ヒューム12等は、溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17がある方向に吹き飛ばされて、溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17に吸引され、溶接ヒューム回収装置10で処理される。
図7は、ストッパーガイド21を取り除いたCCDカメラ冷却管の正面図であり、詳細に説明する。CCDカメラ冷却管14の上部側において、炭酸ガス噴射孔29が形成されており、炭酸ガス噴射孔29から炭酸ガス22が噴射される。炭酸ガス噴射孔29の形状(外周)は、円弧状の形状をしていて、円形状CCDカメラレンズ25の装着しているCCDカメラフィルター24について、広範囲に炭酸ガス22を噴射して、溶接ヒューム12等を取り除くため、CCDカメラ冷却管14の円周の約4分1程度の大きさである。炭酸ガス噴射孔29の下には、CCDカメラフィルター24を装着したCCDカメラレンズ25及びCCDカメラ19が設けられている。
炭酸ガス噴射孔28は、CCDカメラ冷却管14の下部側に形成されている。炭酸ガス噴射孔28及び炭酸ガス噴射孔29は、CCDカメラ冷却管14の長さ方向に形成されている。
炭酸ガス噴射孔28は、前述のCCDカメラフィルター24に下向きの炭酸ガス22によって、吹き飛ばされた溶接ヒューム12等をさらに溶接ヒューム吸引ノズル分岐管17がある方向に吹き飛ばす機能を持たせ、炭酸ガス22の噴出力を高めるために、噴射孔の面積を小さくしている。CCDカメラ冷却管14内の上部側の炭酸ガス噴射孔29及び下部側の炭酸ガス噴射孔28の間に円形状CCDカメラ19を熱からの保護及びCCDカメラ19を固定する目的で、2つの断熱材27が左右対称位置に設けられている。
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものでなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 溶接用アーム
2 溶接トーチ機構
3 固定台
4 連結部
5 鉄板
6 アーク
7 溶接棒
8 画像解析装置
9 可聴音解析装置
10 溶接ヒューム回収装置
11 アークセンサー信号変換装置
12 溶接ヒューム
13 遮光フード
14 CCDカメラ冷却管
15 可聴音センサー保護管
16 溶接ヒューム吸引ノズル管
17 溶接ヒューム吸引ノズル分岐管
18 溶接トーチ
19 CCDカメラ
20 可聴音センサー
21 ストッパーガイド
22 炭酸ガス
23 溶接ヒューム吸引ホース
24 CCDカメラフィルター
25 CCDカメラレンズ
26 炭酸ガス通路
27 断熱材
28 炭酸ガス噴射孔
29 炭酸ガス噴射孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗性電極を有する溶接トーチ機構を用いてアーク溶接を行う制御機構を備えた溶接用アームと、溶接可能なトーチと、溶接ヒュームを吸引することが可能なノズルと、溶接時の溶融金属を観察することが可能なCCDカメラと、溶接時に発生する可聴音を計測することが可能なセンサーを備えた溶接トーチ機構と、前記溶接トーチ機構から撮像された溶融金属を画像解析する画像解析装置と、溶接時の可聴音を計測し、可聴音を解析する可聴音解析装置、溶接ヒュームを吸引し、溶接ヒュームを回収する溶接ヒューム回収装置と、溶接トーチにおけるアーク電流を制御するアークセンサー信号変換装置を備えたことを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、溶接ヒュームを吸引することが可能な手段と、フィルター付CCDカメラを有し、溶融金属を観察することが可能な手段と、溶接時の可聴音を計測することが可能な手段とを備えたことを特徴とする溶接装置。
【請求項3】
請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、溶接ヒューム吸引ノズル管と、フィルター付CCDカメラと、溶接時の可聴音を計測するセンサーとを備えたことを特徴とする溶接装置。
【請求項4】
請求項1に記載した溶接トーチ機構において、溶接トーチを中心に上部側に溶接時の可聴音を計測するセンサーと、溶接トーチを中心に下部側及び左右に溶接ヒューム吸引ノズル管と、前述の可聴音を計測するセンサーと溶接ヒューム吸引ノズル管の隙間にフィルター付CCDカメラが連結されたことを特徴とする溶接装置。
【請求項5】
請求項1に記載した溶接装置において、溶接トーチ機構は、筒形状の溶接トーチ本体の先端部にアークの遮光フードが設けられたことを特徴とする溶接装置。
【請求項6】
請求項1に記載した溶接トーチ機構において、CCDカメラを内蔵する管内に炭酸ガスを噴射することによって、前記のCCDカメラから過熱を防止する手段と、溶接トーチ機構内の冷却効果を促進する手段を備えたことを特徴とする溶接装置。
【請求項7】
請求項1に記載した溶接トーチ機構において、フィルター付CCDカメラは、炭酸ガスを噴射することによって、前記のCCDカメラフィルターから溶接ヒュームの付着を防止する手段を備えたことを特徴とする溶接装置。
【請求項8】
請求項1に記載した溶接トーチ機構において、フィルター付CCDカメラは、CCDカメラ冷却管に内蔵され、CCDカメラ冷却管内に炭酸ガスを流すことによって、CCDカメラを冷却し、さらに、CCDカメラ冷却管の先端の一部にストッパーガイドを設置し、炭酸ガスの流れをCCDカメラフィルターに強制的に流すことによって、前記のCCDカメラフィルターから溶接ヒュームの付着を防止し、排出あるいは飛散した溶接ヒュームを前記の溶接ヒューム吸引ノズル管から吸引する手段を備えたことを特徴とする溶接装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−214435(P2010−214435A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65414(P2009−65414)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】