説明

溶接装置

【課題】装置内の放熱ユニットの内部に装置外から吸入した空気を当てて冷却を行う溶接装置において、放熱ユニットを構成する放熱フィンに付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒュームを除去する際、冷却ファンを取り付けるための金具を取り外して作業をする必要があり、機器のメンテナンス性が悪いという課題がある。また、放熱フィンに付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒュームの堆積状況を目視で確認できないという課題もある。
【解決手段】冷却ファンを放熱ユニットに取り付けるための取付金具の側面に少なくとも1つ開口部を設けることにより、放熱フィンに付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒュームを除去する際、冷却ファン取付金具を取り外すことなく開口部から作業することが可能となり、メンテナンス性が向上する。また、放熱フィンに付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒュームの堆積状況を視認することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却ファンを用いて冷却を行う溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用機器の稼働率は非常に高くなっている。このような状況下で、産業用機器の一例である溶接装置においても、メンテナンスの容易性が重視されている。従来の溶接装置として、冷却ファンを設けて冷却を行うものが知られている(例えば特許文献1参照)。図4は従来の溶接装置の概略構成を示す図である。
【0003】
図4において、溶接装置は、筐体1と、筐体1に設けられた空気吸排口2と、筐体1内に設けられた冷却ファン3と、放熱ユニット5と、放熱ユニット5の表面に取り付けられた主半導体6と、冷却ファン3を放熱ユニット5に取り付けるための冷却ファン取付金具4とを備えている。
【0004】
なお、実際は、例えばアーク溶接を行うための種々の構成物や配線等が必要であるが、省略している。また、アーク溶接を行わせるための回路構成についても同様に省略している。
【0005】
上記した従来の溶接装置は、高熱を発する主半導体6(例えばパワートランジスタ等のスイッチング素子)を冷却する際に、放熱ユニット5内に空気を流通させて冷却を行うものであり、溶接装置の筐体1の内部から外部に空気を排出させる、あるいは、筐体1の外部から内部へ空気を吸入させて、冷却を行う。
【0006】
より具体的には、図4で示すように、主半導体6を放熱ユニット5に取り付け、冷却ファン3を動作させて外部から吸入した空気を放熱ユニット5内に流し、空気吸排口2から筐体1の外部へ熱せられた空気を排出することで溶接装置の内部の冷却を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−105741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の溶接装置では、放熱ユニット5の内部に筐体1の外部から吸引した空気を当てて冷却を行うため、粉塵や溶接ヒューム等が放熱ユニット5を構成する図示しないヒートシンクの放熱フィンの上部に付着あるいは堆積する。そして、付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒューム等を除去する際、冷却ファン取付金具4を取り外して作業を行わなければならず、作業性が悪いという課題を有していた。
【0009】
また、冷却ファン取付金具4の内部が外部から見えないため、粉塵や溶接ヒュームの堆積状況が目視で確認できないという課題も有していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の溶接装置は、筐体と、前記筐体内に鉛直方向に設けられ空洞部を形成する外周部を備えたトンネル形状の放熱ユニットと、前記筐体内に設けられ前記放熱ユニットの空洞部に空気を流通させるための冷却ファンと、4つの側面と1つの平面を備えた箱形状であり前記平面に前記冷却ファンを取り付けた状態で前記冷却ファンが前記放熱ユニットの上方の開口部に面するように前記放熱ユニットと接続することで前記放熱ユニットに前記冷却ファンを取り付けるための冷却ファン取付金具とを備え、前記冷却ファン取付金具の少なくとも1つの側面に開口部を設けたものである。
【0011】
また、本発明の溶接装置は、上記に加えて、筐体は、4つの側板として、前面板と、前記前面板に対向する位置にある後面板と、前記前面板と直交する位置にある第1の側面板と、前記第1の側面板と対向する位置にある第2の側面板とを備え、冷却ファン取付金具の4つの側面のうち、前記第1の側面板と対向する位置にある側面と前記第2の側面板と対向する位置にある側面とに開口部を設けたものである。
【0012】
また、本発明の溶接装置は、上記に加えて、放熱ユニットは複数の放熱フィンを有するヒートシンクを2つ対向させて組み合わせることで構成され、一方のヒートシンクは第1の側面板と対向する位置に配置され、他方のヒートシンクは第2の側面板と対向する位置に配置されるものである。
【0013】
また、本発明の溶接装置は、上記に加えて、冷却ファン取付金具の側面に対して着脱可能であり開口部を塞ぐための取付板を設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、冷却ファン取付金具の少なくとも1つの側面に開口部を設けることで、放熱フィン上部に付着あるいは堆積した粉塵やヒューム等を除去する際、冷却ファン取付金具を取り外すことなく開口部を介して作業を行うことが可能となる。従って、機器のメンテナンス性が向上する。
【0015】
また、放熱フィンに付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒューム等の堆積状況を、冷却ファン取付金具の側面の開口部から目視で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における溶接装置の概略構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における溶接装置の冷却ファンと冷却ファン取付金具と放熱ユニットを示す図
【図3】本発明の実施の形態1における溶接装置の他の概略構成を示す図
【図4】従来の溶接装置の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図3を用いて説明する。
【0018】
(実施の形態1)
先ず、図1を用いて、本実施の形態における溶接装置の構成について説明する。
【0019】
図1は本実施の形態における溶接装置の概略構成を示す図である。なお、実際はアーク溶接を行うための種々の構成物や配線等が必要であるが、本実施の形態の説明には直接関係しないので説明を省略する。また、アーク溶接を行うための回路構成についても同様に説明を省略する。
【0020】
図1において、溶接装置は、筐体201を備えている。そして、筐体201は、4つの側板として、前面板211と、前面板211に対向する位置にある後面板212と、前面板211と直交する位置にある第1の側面板207と、第1の側面板207と対向する位置にある第2の側面板208を備えている。
【0021】
また、筐体201の内部には、鉛直下方向に冷却風を送る冷却ファン202と、鉛直方向に空洞部を形成する放熱ユニット204と、冷却ファン202を放熱ユニット204に取り付けるための冷却ファン取付金具203と、放熱ユニット204の表面に取り付けられた主半導体206が設けられている。
【0022】
そして、放熱ユニット204は、筐体1内に鉛直方向に設けられ空洞部を形成する外周部を備えたトンネル形状である。また、図2に示すように、放熱ユニット204は、ヒートシンク210を2つ対向させて組み合わせることで構成されている。
【0023】
また、冷却ファン取付金具203は、4つの側面と1つの平面を備えた箱形状であり、この平面は冷却ファン202の冷却風を通すための穴が設けられており、この平面に冷却ファン202を取り付けた状態で冷却ファン202が放熱ユニット204の上方の開口部に面するように放熱ユニット204と接続することで、放熱ユニット204に冷却ファン202を取り付けるためのものである。そして、冷却ファン取付金具203の4つの側面のうち2つの側面には、開口部205が各々1つ設けられている。
【0024】
以上のように構成された溶接装置について、その動作を説明する。
【0025】
溶接装置が起動されると、溶接出力の制御を行うため等のスイッチング素子として使用される主半導体206が動作し、これにより主半導体206が発熱する。また、溶接装置が起動されると、冷却ファン202も動作を開始する。冷却ファン202の動作により生じる冷却風が、トンネル形状の放熱ユニット204内に送られ、これにより放熱ユニット204が冷却され、その結果、放熱ユニット204に取り付けられた主半導体206が冷却される。そして、熱を帯びた冷却風は放熱ユニット204開口部の下方から溶接装置の外部へ排出される。
【0026】
このように、冷却ファン202を用いて冷却を行うと、放熱ユニット204の内部に筐体201の外部から吸引した空気が流れることとなり、粉塵や溶接ヒューム等が図2に示す放熱ユニット204を構成するヒートシンク210の放熱フィン209の上部に付着あるいは堆積する。そして、このような状態になると冷却効率が悪化する。
【0027】
そこで、本実施の形態では、例えば、筐体201の4つの側板のうち少なくとも1つを取り外す等して筐体201の少なくとも一部を開放する。そして、冷却ファン取付金具203には開口部205が設けられているので、この筐体201の一部を開放した状態において、開口部205から放熱ユニット204を構成するヒートシンク210の放熱フィン209の上部の粉塵等の状態を容易に視認することができる。
【0028】
また、開口部205が設けられていることにより、冷却ファン202や冷却ファン取付金具203を取り外すこと無く、この開口部205から放熱フィン209に対して気体を噴射する、あるいは、ブラシ等により放熱フィン209の上部付近を清掃することができ、冷却効率の悪化を抑制することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、冷却ファン取付金具203に開口部205を設けることにより、放熱ユニット204の内部に付着あるいは堆積する粉塵や溶接ヒューム等の視認ができ、また、これらを容易に除去することができ、メンテナンスにかかる手間や時間を大幅に節約することができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、筐体201の第1の側面板207に対向する位置にある冷却ファン取付金具203の側板と、筐体201の第2の側面板208に対向する位置にある冷却ファン取付金具203の側板の各々に開口部205を設け、開口部205を2つとしている。このような位置に開口部205を設けることにより、筐体201の第1の側面板207と第2の側面板208のどちらを外しても、放熱ユニット204内部に付着あるいは堆積する粉塵や溶接ヒューム等の視認や除去を行うことができ、メンテナンスにかかる手間や時間を大幅に節約することができ、利便性を高めることができる。
【0031】
また、本実施の形態では、放熱ユニット204は、複数の放熱フィン209を有するヒートシンク210を2つ対向させて組み合わせることで構成され、一方のヒートシンク210は第1の側面板207と対向する位置に配置され、他方のヒートシンク210は第2の側面板208と対向する位置に配置される。すなわち、冷却ファン取付金具203の4つの側面の内、放熱ユニット204を構成するヒートシンク210の放熱フィン209の長手方向に直交する方向の面に開口部205を設けている。このような構成とすることにより、例えば、開口部205から放熱フィン209に対して気体を噴射して粉塵等を除去する際に、放熱フィン209の上部だけでなく放熱フィン209同士の内部の隙間に付着あるいは堆積した粉塵等も除去することが可能となる。
【0032】
なお、上記では、開口部205を2つ設ける例を示したが、これに限らず、冷却ファン取付金具203の4つの側面のうちどの側面に設けても良いし、いくつ設けるようにしても良い。すなわち、例えば、図3に示すように冷却ファン取付金具203の1つの側面のみに開口部205を設けて開口部205を1つとしても良いし、図示していないが冷却ファン取付金具203の4つの側面全てに開口部205を設けて開口部205を4つとしても良い。また、1つの側面に複数の開口部205を設けるようにしてもよい。
【0033】
また、筐体201内部において、開口部205を塞ぐために、冷却ファン取付金具203の側面に着脱可能な取付板(図示せず)を設けるようにしてもよい。そして、溶接装置の通常運転時で放熱ユニット204の内部の視認や清掃を行わない時には取付板を取り付けた状態とし、溶接装置の停止状態で視認や清掃を行う時には取付板を取り外した状態とする。このように、視認や清掃を行わない時に取付板を取り付けて開口部205を塞ぐことにより、開口部205を塞がない場合と比べて、溶接装置の通常運転時の冷却ファン202による冷却効率を高めることができる。
【0034】
なお、取付板の着脱方法としては、例えば、取付板に貫通穴を設け、冷却ファン取付金具203の側面にねじ穴設け、取付板の貫通穴にねじを通して冷却ファン取付金具203の側面にねじ穴に螺合することで取付板の取り付けを行い、このねじを外すことで取付板を外すようにしてもよい。
【0035】
また、取付板は、開口部205を完全に塞ぐものであってもよいし、メッシュ状にして開口部205の一部を塞ぐようにしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の溶接装置によれば、放熱ユニット内部に付着あるいは堆積した粉塵や溶接ヒュームを容易に除去することができてメンテナンス性を高めることができ、冷却機能を有する溶接装置として産業上有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 筐体
2 空気吸排口
3 冷却ファン
4 冷却ファン取付金具
5 放熱ユニット
6 主半導体
201 筐体
202 冷却ファン
203 冷却ファン取付金具
204 放熱ユニット
205 開口部
206 主半導体
207 第1の側面板
208 第2の側面板
209 放熱フィン
210 ヒートシンク
211 前面板
212 後面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に鉛直方向に設けられ空洞部を形成する外周部を備えたトンネル形状の放熱ユニットと、前記筐体内に設けられ前記放熱ユニットの空洞部に空気を流通させるための冷却ファンと、4つの側面と1つの平面を備えた箱形状であり前記平面に前記冷却ファンを取り付けた状態で前記冷却ファンが前記放熱ユニットの上方の開口部に面するように前記放熱ユニットと接続することで前記放熱ユニットに前記冷却ファンを取り付けるための冷却ファン取付金具とを備え、前記冷却ファン取付金具の少なくとも1つの側面に開口部を設けた溶接装置。
【請求項2】
筐体は、4つの側板として、前面板と、前記前面板に対向する位置にある後面板と、前記前面板と直交する位置にある第1の側面板と、前記第1の側面板と対向する位置にある第2の側面板とを備え、冷却ファン取付金具の4つの側面のうち、前記第1の側面板と対向する位置にある側面と前記第2の側面板と対向する位置にある側面とに開口部を設けた請求項1記載の溶接装置。
【請求項3】
放熱ユニットは複数の放熱フィンを有するヒートシンクを2つ対向させて組み合わせることで構成され、一方のヒートシンクは第1の側面板と対向する位置に配置され、他方のヒートシンクは第2の側面板と対向する位置に配置される請求項2記載の溶接装置。
【請求項4】
冷却ファン取付金具の側面に対して着脱可能であり開口部を塞ぐための取付板を設けた請求項1から3のいずれか1項に記載の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−125878(P2011−125878A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284701(P2009−284701)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】