説明

溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度の分析方法及びイオン濃度分析計

【課題】電気導電率を利用したイオン濃度分析の温度報償を行う。
【解決手段】イオン不純物を含む被測定溶液の液温と電気伝導率を同期して測定し、同期した液温と電気伝導率からなる被測定溶液データを出力する電気伝導率測定部10と、前記イオン不純物を単一に含む溶液における、前記イオン不純物の濃度、前記溶液の液温及び電気伝導率からなる溶液データを備える溶液データベース11と、前記被測定溶液データ及び前記データベースから供される溶液データとから、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物の濃度を同定する濃度分析部12とを備えることを特徴とする溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度分析装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液に含まれるイオンの濃度を、その溶液の電気伝導率を測定することで分析する方法及び使用する分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子製造や精密機器製造などに使用される水は、通常、純水が使用され、その不純物濃度の分析は、電気抵抗の変化として電気伝導率計により分析され管理されている(例えば、特許文献1参照)。
従来、この電気伝導率計は、水中のイオン(NaやClなどのイオン)総量を電気抵抗としてS/m又はΩ・m単位で示し、溶液に含まれる不純物の総量を測定して不純物濃度の分析を行っている。
【0003】
その測定原理は、に示すように、溶液52に金属製又はカーボン製の電極51を浸漬し、交流電源53で、一般に周波数1kHzの交流電圧を印加し、電極51間の電気抵抗図10を電流計54で測定することで、汚染度や濃度を測定するものである。そのため、高濃度の薬液から超純水まで幅広く応用されており、小型で簡単、しかも瞬時に測定できるので安価な製品が多く販売されている。
【0004】
このように電気伝導率の測定は簡単にできるが、溶液中に溶解しているイオン不純物は溶液の液温によって電気伝導率が大きく変化するため、電気伝導率の測定は溶液の液温を一定にしないと基準が定まらず、実際問題として測定の度に、例えば25℃に液温を保つことは困難であり、そこで温度センサーを組み込んだ電極を用いて、電気伝導率と液温の両データをコンピュータのような演算機に取り込み、実際は測定する溶液が低温、或いは高温であっても測定する液温に関係なく液温が25℃の時の電気伝導率を算出する方法が採られている。
尚、電気伝導率計の校正用方法として標準溶液に塩化カリウムを用いて行う手法などは「JIS−K−0552」に記載されている。
【特許文献1】特開2008−215753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電気伝導率計を使用したイオン濃度分析では、その測定原理から溶液中の総イオン量を求めているために、溶液中のイオン不純物の種類が既知であり、単一薬液だけからなる溶液の場合には、その電気伝導率からイオン不純物の含有量又は濃度は、図11に示す電気伝導率と濃度の関係から算出できるが、イオン不純物が既知の場合であっても複数のイオン化不純物が混じった溶液では、従来の電気伝導率計では、イオン総量による電気伝導率の値を表示するのみで、含まれるイオン不純物を分離して各々の含有量を分析することは難しい。
【0006】
即ち、異なった2種類以上のイオン不純物又は薬液を含む溶液の電気伝導率を測定した場合には、合成された電気伝導率が表示される為に各々のイオン不純物又は薬液の含有量の違いが、従来の電気伝導率計では測ることができず、同時に、同じような電気伝導率を示すが異なる成分からなる溶液を混合した場合にも、その電気伝導率には何ら変化が無く、従って分別することもできない。
【0007】
ところで、溶液中の電気伝導率を知る方法には、溶液の温度を25℃に保ち、その時の電気伝導率を計測する方法、並びに計算機に電気伝導率と溶液の液温の両データを取り込み、被測定溶液の液温に関係なく25℃の時の値を求めるように演算補正を行う温度補償方法とがある。現在、多くの製品は後者の温度補償を行なう回路を取り入れ、液温を意識せずに測定が可能となっているが、溶液中のイオン不純物の種類によっては、その温度特性が異なり、温度補償を行っても溶液中に含まれるイオン不純物により、その補正値が各々異なるので必ずしも正しく演算補正がされているとは言えなかった。
【0008】
又、液温が25℃より高温側或いは低温側に離れるほど正しい値を示さなくなるので、高精度を要求される電気伝導率計では溶液の種類毎に、その温度補償特性をプログラムして演算できる電気伝導率計も開発されているが、イオン不純物の温度特性に関しては考慮されていないため、イオン不純物の濃度を分析することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、このような状況を鑑み、本発明の課題を解決する手段として、イオン不純物により温度特性が異なることを利用し、溶液に含まれるイオン不純物の濃度を電気伝導率を用いて分析する電気伝導率型イオン濃度分析計及びイオン濃度の分析方法を提供するものである。
本発明の第一の発明は、イオン不純物を含む被測定溶液の液温と電気伝導率を同期して測定し、同期した液温と電気伝導率からなる被測定溶液データを出力する電気伝導率測定部と、単一の前記イオン不純物を含む以外は前記被測定溶液と同一溶液における、前記イオン不純物の濃度、前記溶液の液温及び電気伝導率からなる溶液データを備える溶液データベースと、この被測定溶液データ及び溶液データベースから供される溶液データとから、被測定溶液に含まれるイオン不純物の濃度を同定する濃度分析部とを備える溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度分析装置である。
【0010】
本発明の第二の発明は、イオン不純物を含む被測定溶液の液温と電気伝導率電極により電気伝導率を同期して測定し、同期した液温と電気伝導率及び電気伝導率電極の電源周波数からなる被測定溶液データを出力する電気伝導率測定部と、単一のイオン不純物を含む以外は被測定溶液と同一溶液における、イオン不純物の濃度、溶液の液温及び電気伝導率からなる溶液データを備える溶液データベースと、被測定溶液データ及び溶液データベースから供される溶液データとから被測定溶液に含まれるイオン不純物の濃度を同定する濃度分析部とを備える溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度分析装置である。
【0011】
本発明の第三の発明は、第一の発明に記載の電気伝導率測定部が、被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、この温度センサーと同期して被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極と、温度センサーと電気伝導率電極を備え、被測定溶液が満たされる測定チャンバと、被測定溶液の液温を制御する液温制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第四の発明は、第二の発明に記載の電気伝導率測定部が、被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、この温度センサーと同期して被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極と、温度センサーと電気伝導率電極を備え、被測定溶液が満たされる測定チャンバと、被測定溶液の液温を制御する液温制御部と、電気伝導率電極の電源周波数を制御する周波数制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第五の発明は、被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、この温度センサーと同期して被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極を備える電気伝導率計を用いて、被測定溶液の液温を変化させて、被測定溶液の電気伝導率を測定することにより、被測定溶液に含まれるイオン不純物濃度を同定することを特徴とする溶液のイオン濃度分析方法である。
【0014】
本発明の第六の発明は、被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、この温度センサーと同期して被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極を備える電気伝導率計を用いて、電気伝導率電極の電源周波数を変化させて、被測定溶液の電気伝導率を測定することにより、被測定溶液に含まれるイオン不純物濃度を同定することを特徴とする溶液のイオン濃度分析方法である。
【0015】
本発明の第七の発明は、被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、この温度センサーと同期して被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極を備える電気伝導率計を用いて、被測定溶液の液温及び電気伝導率電極の電源周波数を変化させて、被測定溶液の電気伝導率を測定することにより、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物濃度を同定することを特徴とする溶液のイオン濃度分析方法である。
【0016】
本発明の第八の発明は、被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、この温度センサーと同期して被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極と、温度センサーと電気伝導率電極を備えて被測定溶液が満たされる測定チャンバと、被測定溶液の液温を制御する液温制御部とを備える電気伝導率計である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば電気伝導率測定を従来の25℃換算方式ではなく広範囲な液温変化或いは周波数変化に同期した電気伝導率変化を連続的に捉え、イオン化した各種物質の濃度分析を行うことで、従来の電気伝導率計による分析では困難であった多薬液混合溶液の薬液の識別分析を可能とするもので工業上顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明に係るイオン濃度分析装置の構成を示す図で、電気伝導率測定部10、溶液データベース11、及び濃度分析部12を備える。
電気伝導率測定部10は、少なくとも1種以上のイオン不純物を含む被測定溶液の液温、電気伝導率、電極電源周波数の3者の適宜組み合わせを、同期させながら測定し、その測定データを被溶液測定データとして出力する。
【0019】
溶液データベース11は、被測定溶液に含まれるイオン不純物毎に、その濃度が既知である被測定溶液と同成分組成の溶液における、イオン不純物の濃度と溶液の液温変化に伴う電気伝導率変化、或いは電源周波数変化に伴う電気伝導率変化を示す溶液データを備える。
【0020】
濃度分析部12は、電気伝導率測定部10から出力される被測定溶液データ及び溶液データベース11から取り込む溶液データの両者の相関関係からイオン不純物の濃度を分析する。
【0021】
図2に電気伝導率測定部10の構成を示す。
電気伝導率測定部10は、測定チャンバ26に電気伝導率電極20及び温度センサー23が、測定チャンバ26に満たされた被測定溶液27に浸るように配置され、この溶液の液温制御は、液温制御部25により測定チャンバ26を直接若しくは間接的に加温、冷却する方法、或いは溶液自体を加温、冷却する方法で行われる。
【0022】
電気伝導率電極20には、周波数制御部21により周波数を制御した交流電源22が接続され、電気伝導率電極20及び温度センサー23により計測された電気伝導率及び液温は、測定・制御回路24に送られ、被測定溶液データとして出力される。
【0023】
ここで、電気伝導率電極20で使用される交流電源22は、一般に1kHzの周波数で使用され、本発明の第一の発明においても同じ交流電源を用いるが、本発明の第二発明においては、図3に示されるように電気伝導率電極の交流電源の周波数が変化するにつれて電気伝導率も大きく変化する知見から、一定の液温状態で、交流電源の周波数を変化させながら、そのときの電気伝導率を計測することで、イオン不純物の濃度分析を行うもので、その使用する周波数帯はHzオーダーからMHzオーダー、通常は、100kHzから10MHz程度変化して計測する。尚、液温、周波数の両者を変化させて行うこともできる。
【0024】
イオン不純物の濃度分析は、測定・制御回路24から出力された被測定溶液データを、パーソナルコンピュータ或いはワークステーションなどの演算機器で構成される濃度分析部に入力し、各種演算処理を行い、イオン不純物の濃度を同定する。
【0025】
このイオン不純物の濃度分析に際しては、図4、図5の分析スキームを用いる。
図4は、本発明の第一の発明に対応するもので、被測定溶液の液温を変化させて電気伝導率を計測した場合の分析手法を示すものである。
図5は、本発明の第二の発明に対応するもので、交流電源の周波数を変化させて電気伝導率を計測する場合の分析手法を説明するものである。
【0026】
先ず、図4においては、イオン不純物、例えば2種類のイオン不純物I、Iを含む被測定溶液Aを低温から高温へと液温変化を与え、この液温変化に併せて液温TLi、その液温時の電気伝導率Pを測定し、それらを演算機器に取り込み、被測定溶液Aの液温と電気伝導率を対とする、データ構造:[A,TLi,P](i=1〜n)で表される被測定溶液データ:DAM(i)を得る。
【0027】
この被測定溶液データ:DAM(i)と、溶液データベースに記録されているイオン不純物I、Iの濃度C1j、C2jが既知である溶液Aの液温、電気伝導率の対データ組DAI1(i,j)、データ構造:[A,I,C1j,TLi,P]、及びDAI2(i,j)、データ構造:[A,I,C2j,TLi,P]との相関関係を求めることで、被測定溶液Aに含まれるイオン不純物I、Iの濃度が求められる。
【0028】
次に、図5においては、イオン不純物、例えば2種類のイオン不純物I、Iを含む被測定溶液Aを液温Tを一定、例えば25℃に保持した状態で、100Hzから10MHzの周波数帯に周波数変化を与え、この周波数変化に併せて周波数Hの時の電気伝導率Pを測定し、それらを演算機器に取り込み、被測定溶液Aの周波数と電気伝導率を対とするデータ構造:[A,TLk,H,P](i=1〜n,k=1〜l)で表される被測定溶液データ:DAM(i,k)を得る。
【0029】
この被測定溶液データ:DAM(i,k)と、溶液データベースに記録されているイオン不純物I、Iの濃度C1j、C2jが既知である溶液Aの液温、周波数、電気伝導率の対データ組DAI1(i,j,k)、データ構造:[A,I,C1j,TLk,H,P]、及びDAI2(i,j,k)、データ構造:[A,I,C2j,TLk,H,P]との相関関係を求めることで、被測定溶液Aに含まれるイオン不純物I、Iが求められる。
【0030】
図4及び図5において、被測定溶液データと溶液データからイオン不純物の濃度を求めるには、補間法、比例法、最小二乗法などの数値解析手法、及び回帰分析などの統計解析手法を用いて求める。
【0031】
以下に、図を用いて本発明のイオン濃度分析装置をより詳細に説明する。
図6は、被測定溶液の液温を変化させ、そのときの電気伝導率を測定してイオン濃度を分析するイオン濃度分析装置の電気伝導率測定部を示すもので、(a)は液温制御を流通式で行うもので、(b)は液温制御をバッチ式で行うものを示している。
【0032】
図6(a)における電気伝導率測定部10aは、測定チャンバ26に設けられる電気伝導率電極20及び温度センサー23と、電気伝導率電極20並びに温度センサー23で計測されたデータを被測定溶液データとして出力する測定・制御回路24と、測定チャンバ26内の被測定溶液27の液温を変化させる液温制御部25aで構成され、この液温制御部25aは、流通式と呼ばれる、常時、被測定溶液27を溶液供給口から流したまま液温制御をする方法で、時間と共に変化する溶液や大気と接触すると特性が変わる溶液の電気伝導率の測定で一般に用いられる。
【0033】
図6(b)の電気伝導率測定部10bは、測定チャンバ26に設けられる電気伝導率電極20及び温度センサー23と、電気伝導率電極20並びに温度センサー23で計測されたデータを被測定溶液データとして出力する測定・制御回路24と、測定チャンバ26内の被測定溶液27の液温を変化させる液温制御部25bは、バッチ式と呼ばれる、溶液供給口から電磁弁28を介して測定チャンバ26に一定量の被測定溶液27を貯留し、それを加熱・冷却して液温制御する方法である。
【0034】
図7は、電気伝導率電極に接続される交流電源の周波数を変化させ、そのときの電気伝導率を測定してイオン濃度を分析するイオン濃度分析装置の電気伝導率測定部を示している。
【0035】
図7の電気伝導率測定部10cは、周波数制御部21を備える交流電源(図示せず)に接続され、測定チャンバ26に設けられる電気伝導率電極20及び温度センサー23と、電気伝導率電極20並びに温度センサー23で計測されたデータを被測定溶液データとして出力する測定・制御回路24と、測定チャンバ26内の被測定溶液27の液温を変化させる液温制御部25aで構成されている。
【0036】
電気伝導率測定部10cで用いる温度センサーは応答性が速いPt(100%)を用いれば計測は可能であるが、高周波数に対応させるためには接液部での被測定溶液によって生じる誘電率とストレート容量及び外部に引き出すリード線がインダクタンスとなる為に超小型化及び高周波対応設計を施すことが望まれる。
【0037】
この電気伝導率測定部の測定手順の一例を図6(a)の電気伝導率測定部を使用して示す。
(1)被測定溶液27を圧力を掛けて液温制御部に連続通水する。ここで、液温制御部には、ペルチェ素子を使用した装置にすると印加する直流電源の極性を正接続、逆接続に切り替えることで、冷却・加熱に切り替わり、液温制御を容易にする。又、圧力が低く流れない場合には自給式ポンプを測定水供給口前に付加する。
【0038】
(2)温度調整された被測定溶液は測定チャンバに入り、電気伝導率及び液温が計測され、測定・制御回路に信号が送られ、そこで処理されて被測定溶液データとして出力される。尚、測定チャンバは必要に応じて断熱構成とされる。
【0039】
(3)測定が終了後、被測定溶液を排出する。
【0040】
測定手順の大要は、電気伝導率測定部10b、10c共に通じるもので、即ち、測定チャンバ26に貯留される被測定溶液27の液温を測定液温範囲に制御し、その液温変化中に電気伝導率を測定する(電気伝導率測定部10a、10b)、或いは、測定チャンバ26に貯留される被測定溶液27の液温を測定液温に制御し、電気伝導率電極の交流電源の周波数の変化中に電気伝導率を測定する(電気伝導率測定部10c)ものである。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
化粧用乳液の溶液中に水分が混入し、その濃度がある値以上になると警報を出す濃度警報器に使用した場合、この溶液では溶液データである図8(a)に示されるように、従来の25℃における電気伝導率測定では、数%オーダーの水分含有では、その値は全く変化しないことから、混入判別は困難であることが判る。
【0042】
そこで、本発明の分析装置により液温変化で電気伝導率を計測すると図8(b)に示されるように、従来の電気伝導率計では判別できない水分含有が40℃から50℃の範囲で電気伝導率を計測すれば水分混入が判別でき、その警報の発令が可能となることが判る。
このような実施例は、液体製品の製造において、洗浄目的で薬品や水を流しても製品と洗浄水との識別を可能とするものである。
【0043】
(実施例2)
2種類の薬液を混合した溶液を従来の25℃で計測する電気伝導率計で計測すると、薬液の電気伝導率の値が近い場合、その混合比率は電気伝導率では判別できず、従って管理ができないが、本発明では、液温を変化させて電気伝導率を測定した被測定溶液データを、混合した薬液毎のイオン不純物の濃度、液温変化による電気伝導率変化を記録した溶液データベースの溶液データと比較し、その相関関係から混合比率の分析が行われる。
【0044】
血液中の脂肪分の濃度を電気伝導率から知ろうとする場合、血液並びに脂肪は、温度変化に対しては変質しやすいので、液温(血液温度)を変化させながら電気伝導率を計測する方法は採れないが、図9に示す電気伝導率の周波数依存性を有している。
そこで、周波数を変化させて電気伝導率を測定した被測定溶液データを、溶液データベース内の標準血液データ(脂肪濃度が既知の血液)及び脂肪データと比較し、その相関関係から脂肪濃度の分析が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るイオン濃度分析装置の構成を示す図である。
【図2】図1の電気伝導率測定部10の構成を示す図である。
【図3】溶液の電気伝導率の電極周波数依存性を示す図である。
【図4】液温変化におけるイオンの濃度分析スキーム図である。
【図5】周波数変化によるイオンの濃度分析スキーム図である。
【図6】液温変化によるイオン濃度分析装置の電気伝導率測定部を示す図で、(a)は流通式の液温制御で、(b)はバッチ式の液温制御である。
【図7】周波数変化によるイオン濃度分析装置の電気伝導率測定部を示す図である。
【図8】実施例1における水分含有時の液温変化による電気伝導率を示す図で、(a)は溶液データをグラフ化したもので、(b)は図8(a)に測定した電気伝導率を重畳したグラフである。
【図9】実施例3における血液と脂肪の周波数変化による電気伝導率を示す図である。
【図10】電気伝導率電極の測定原理を示す図である。
【図11】溶液中のイオン濃度と電気伝導率の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1 イオン濃度分析装置
10、10a、10b、10c 電気伝導率測定部
11 溶液データベース
12 濃度分析部
20 電気伝導率電極
21 周波数制御部
22 交流電源
23 温度センサー
24 測定・制御回路
25a、25b 液温制御部
26 測定チャンバ
27 被測定溶液
28 電磁弁

51 電極
52 溶液
53 交流電源
54 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン不純物を含む被測定溶液の液温と電気伝導率を同期して測定し、同期した液温と電気伝導率からなる被測定溶液データを出力する電気伝導率測定部と、
単一の前記イオン不純物を含む以外は前記被測定溶液と同一溶液における、前記イオン不純物の濃度、前記溶液の液温及び電気伝導率からなる溶液データを備える溶液データベースと、
前記被測定溶液データ及び前記データベースから供される溶液データとから、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物の濃度を同定する濃度分析部と、
を備えることを特徴とする溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度分析装置。
【請求項2】
イオン不純物を含む被測定溶液の液温と電気伝導率電極により電気伝導率を同期して測定し、同期した液温と電気伝導率及び前記電気伝導率電極の電源周波数からなる被測定溶液データを出力する電気伝導率測定部と、
単一の前記イオン不純物を含む以外は前記被測定溶液と同一溶液における、前記イオン不純物の濃度、前記溶液の液温及び電気伝導率からなる溶液データを備える溶液データベースと、
前記被測定溶液データ及び前記データベースから供される溶液データとから、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物の濃度を同定する濃度分析部と、
を備えることを特徴とする溶液のイオン濃度分析装置。
【請求項3】
前記電気伝導率測定部が、
被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、
前記温度センサーと同期して前記被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極と、
前記温度センサーと前記電気伝導率電極を備え、前記被測定溶液が満たされる測定チャンバと、
前記被測定溶液の液温を制御する液温制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度分析装置。
【請求項4】
前記電気伝導率測定部が、
被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、
前記温度センサーと同期して前記被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極と、
前記温度センサーと前記電気伝導率電極を備え、前記被測定溶液が満たされる測定チャンバと、
前記被測定溶液の液温を制御する液温制御部と、
前記電気伝導率電極の電源周波数を制御する周波数制御部と、
を備えることを特徴とする請求項2記載の溶液の電気伝導率を利用したイオン濃度分析装置。
【請求項5】
被測定溶液の液温を測定する温度センサーと前記温度センサーと同期して前記被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極を備える電気伝導率計を用いて、被測定溶液の液温を変化させて、被測定溶液の電気伝導率を測定することにより、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物濃度を同定することを特徴とする溶液のイオン濃度分析方法。
【請求項6】
被測定溶液の液温を測定する温度センサーと前記温度センサーと同期して前記被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極を備える電気伝導率計を用いて、前記電気伝導率電極の電源周波数を変化させて、被測定溶液の電気伝導率を測定することにより、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物濃度を同定することを特徴とする溶液のイオン濃度分析方法。
【請求項7】
被測定溶液の液温を測定する温度センサーと前記温度センサーと同期して前記被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極を備える電気伝導率計を用いて、前記被測定溶液の液温及び前記電気伝導率電極の電源周波数を変化させて、被測定溶液の電気伝導率を測定することにより、前記被測定溶液に含まれるイオン不純物濃度を同定することを特徴とする溶液のイオン濃度分析方法。
【請求項8】
被測定溶液の液温を測定する温度センサーと、
前記温度センサーと同期して前記被測定溶液の電気伝導率を測定する電気伝導率電極と、
前記温度センサーと前記電気伝導率電極を備え、前記被測定溶液が満たされる測定チャンバと、
前記被測定溶液の液温を制御する液温制御部と、
を備えることを特徴とする電気伝導率計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−96532(P2010−96532A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265372(P2008−265372)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(592086112)株式会社ティ・アンド・シー・テクニカル (1)
【Fターム(参考)】