溶液中での成長ホルモンの安定化
本発明は、成長ホルモン、又は物質であって内因性hGHの放出を刺激する又は活性を増強する物質;ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;クエン酸バッファー及び安定化剤を含んで成る液体製剤に、そしてそれらを調製する方法に関連する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、液体成長ホルモン(GH)製剤に関連し、そして詳細には、成長ホルモンの溶解度を有意に向上させ且つ長期に渡り粒状物質を伴わない状態を維持するヒト成長ホルモン(GH)の液体製剤に関連する。本発明は更に、かかる液体GH製剤の調製のための方法に、そしてそのある提示の形態に関連する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ソマトロピン(INN)又はソマトトロピンとしても知られているヒト成長ホルモン(hGH)は、下垂体前葉のソマトトロピン細胞によって生産され且つ分泌されるタンパク質ホルモンである。ヒト成長ホルモンは、子供における体細胞増殖及び成人における代謝において、タンパク質、炭水化物及び脂質の代謝に対するその効果を通じて重要な役割を果たす。
【0003】
ヒト成長ホルモンは、2つのジスルフィド結合(その1つは、Cys−53とCys−165の間であり、分子中で巨大なループを形成し、そして他の1つはCys−182とCys−189の間であり、C末端付近で小ループを形成する)を有する191個のアミノ酸のポリペプチド単鎖である。このアミノ酸配列を裏付けるDNA配列は、Martialら(1979)によって報じられている。精製されたhGHは、その凍結乾燥形態において白色非晶質粉末である。それは、6.5〜8.5のpHで水性バッファー中に容易に溶ける(濃度>10mg/L)。
【0004】
hGHは溶液中で、主にモノマーとして存在し、ダイマー及びより高い分子量オリゴマーとして小画分で存在している。所定の条件下で、hGHは、より高量のダイマー、トリマー及びより高量のオリゴマーを形成するために誘導されて良い。
【0005】
hGHのいくつかの誘導体が公知であり、例えば、天然に生じる誘導体、変異体及び代謝産物、主に生合成hGHの分解産物及び遺伝的方法によって生産されたhGHの人工誘導体がある。hGHの天然に生じる誘導体の1つの例は、胎盤中で発見される成長ホルモンの変異体である。遺伝子座の他のメンバーはChenら(1989)に開示されている。
【0006】
メチオニルhGHは、組換えDNA技術によって生産されたhGHの最初の形態であった。この化合物は、実際に、そのN末端において更なる1つのメチオニン残基を有するhGHの誘導体である(Goeddelら、1979)。
【0007】
20-K-hGHといわれるhGHの天然に生じる変体は、下垂体及び血流中で生じることが報じられている(Lewisら、1978;Lewisら、1980)。Glu32〜Gln46から15個のアミノ酸を欠く化合物は、メッセンジャーリボ核酸の選択的スプライシングにより生じる(DeNoteら、1981)。この化合物は、hGHの全てではないが多くの生物学的特長を共有する。
【0008】
20-Kh-GHは下垂体で生産されて血中へと分泌される。それは成人の成長ホルモン生産量約5%を占め、そして子供の成長ホルモン生産量の約20%を占める。それは、22kD成長ホルモンと同じ成長促進活性を有し、そして22kD形態と同等以上の脂質分解活性を有することが報じられている。それは、22kD成長ホルモンと同等の、成長ホルモンレセプターに対する親和性を有して結合し、そして22kDホルモンの1/10の乳腺刺激生物活性を有する。22kDのとは異なり、20k-h-GHは高インスリン活性が弱い。
【0009】
hGHの多くの誘導体は、分子のタンパク質分解解裂修飾により生じる。hGHの代謝のための主となる経路にはタンパク質分解解裂が伴う。残基130〜150の周辺のhGHの領域は、タンパク質分解解裂に対して非常に敏感であり、そしてこの領域においてニック又は欠失を有するhGHのいくつかの誘導体が報じられている(Thorlacius-Ussing、1987)。hGHの巨大ループにおけるこの領域、及びそこでのペプチド結合の解裂により、Cys53とCys165でのジスルフィド結合を介して連結している2つの鎖の生成がもたらされる。これら2鎖形態の多くは、生物学的活性が増加していることが報じられている(Singhら、1974)。ヒト成長ホルモンの多くの誘導体は、酵素の使用により人工的に生じている。酵素のトリプシン及びサブチリシンなどは、hGHを分子じゅう様々な点で修飾するために使用されている(Lweisら、1977;Griffら、1982)。かかる誘導体の1つ、2鎖同化タンパク質(2-CAP)は、トリプシンを使用することで、hGHのタンパク質分解解裂を調節することにより形成されている(Beckerら、1989)。2-CAPは、全hGH分子の成長促進活性が大まかに保たれていてそして炭水化物代謝に対する効果の大部分が無効にされていることにおいて、完全なhGH分子と非常に異なった生物学的特徴を有することが発見されている。
【0010】
タンパク質中のアスパラギン及びグルタミン残基は、適当な条件下で脱アミド化反応に対して感受性である。複数のhGHがこの種類の反応を受け、Asn-152のアスパラギン酸への転換がもたらされることが示されており、そしてまた、程度は低いが、Gln-137のグルタミン酸への転換も示されている(Lewisら、1981)。脱アミド化したhGHは、酵素サブチリシンによるタンパク質分解解裂に対する感受性が変わっていることが示されており、このことは、脱アミド化は、hGHのタンパク質分解解裂を指示する上で生理学的に有意でありうることを示唆している。生合成hGHは、所定の保存条件下で分解し、異なるアスパラギン(Asn-149)における脱アミド化をもたらすことが知られている。これは、脱アミド化の一次部位であるが、Asn152における脱アミド化も確認されている(Beckerら、1988)。Gln137における脱アミド化は生合成hGHにおいては報じられていない。
【0011】
タンパク質中のメチオニン残基は酸化に対して感受性であり、主にスルホキシドに対して感受性である。下垂体により誘導されたhGH及び生合成hGHのどちらもMet-14及びMet-125でのスルホキシド化を受ける(Beckerら、1988)。Met-170おける酸化は、下垂体誘導物において報じられているが、生合成hGHにおいては報じられていない。脱アミドhGH及びMet14スルホキシドhGHはどちらも完全な生物活性示すことが発見されている(Beckerら、1988)。
【0012】
hGHのトランケーション形態は、酵素の作用によって又は遺伝的方法によってのいずれかの作用により生産されている。トリプシンの作用を調節して生じた2-CAPは、hGHのN末端において最初の8つの残基が除去されている。hGHの他のトランケーション形態は、適切な宿主中で発現前に遺伝子を修飾することによって生産されている。最初の13個の残基は、ポリペプチド鎖が解裂されておらず、固有の生物学的特徴を有する誘導体をもたらすために除去されている(Gertlerら、1986)。
【0013】
ヒト成長ホルモンは本来、死体の下垂体から獲得されていたが、これらの調製物は、電気泳動的に均一ではなく、そして抗体が50%のオーダーの調製物で処理した患者の血清中に出現し、免疫源性は不活性成分に帰属する。組換えDNA技術により、多数の異なる系においてhGHを無限に提供するための生産が可能になった。培養培地からのhGHの精製は、少量の汚染性タンパク質が存在することによってのみ促進される。実際に、hGHはラボスケールで逆相HPLCカラム上での単一の段階によって精製されて良いことが示されている(Hsuingら(1989))。
【0014】
組換えヒト成長ホルモンrhGHは、Serono International S.A.によって、SEROSTIM(登録商標)として生産されており、その製品は、AIDS患者における体重減少及び体力消耗を治療するために、迅速FDA承認が与えられている。SAIZEN(登録商標)は、子供のGH欠損症、女児のターナー症候群、並びに子供の慢性腎疾患のために必要な組換えヒト成長ホルモンである。PROTROPIN(登録商標)はGenentech,Inc(South SanFrancisco,CA)によって生産されており、天然配列hGHとは構造において僅かに異なり、N-末端に更なるメチオニン残基を有する。組換えhGHは、凍結乾燥形態において、hGH+更なる賦形剤の例えば、グリシン及びマンニトールを含むバイアルとして市販されている。同伴希釈用バイアルが供されており、患者が所定用量を投与する前に所望の濃度に製品を再生することができる。組換えhGHは、周知の態様の例えば、予め充填されている注射器としても市販されている。
【0015】
一般に、組換え天然配列hGH、組換えN-メチオニル-hGH、又はヒトにおいて下垂体が誘導した物質の薬理学的又は生物活性おいて有意な違いがないことが確認されている(Mooreら、1988;Jorgenssonら、1988)。
【0016】
hGHが、治療剤として商業上入手可能であるために、安定な製剤が調製されなければならない。かかる製剤は、適切な保存時間に渡り活性を保つことができ且つ患者によって投与のために許容されなければならない。
【0017】
ヒトGHは様々な方法で処方されている。例えば、米国特許第5、096,885号は、hGHに加えて、グリシン、マンニトール、バッファー及び任意に非イオン性界面活性剤を含んで成り、hGH:グリシンのモル比が1:50である、hGHの医薬的に許容できる安定な製剤を開示している。
【0018】
WO93/19776は、バッファー物質としてクエン酸及び任意に成長ホルモンの例えば、インスリン様成長因子又は上皮成長因子、アミノ酸の例えば、グリシン又はアラニン、マンニトール又は他の糖アルコール、グリセロール及び/又は防腐剤の例えば、ベンジルアルコールを含んで成るGHの注射可能製剤を開示する。
【0019】
WO94/101398は、hGH、バッファー、非イオン界面活性剤、及び任意にマンニトール、天然塩及び/又は防腐剤を含むGH製剤を開示する。
【0020】
EP-0131864は、分子量8500Da超を有するタンパク質の水性溶液を開示しており、それは、安定化剤として、直鎖状ポリオキシアルキレン鎖を含む界面活性剤を加えることによって界面における吸着から保護されており、タンパク質の変性及び沈殿に対して保護されている。
【0021】
EP-0211601は、成長促進ホルモン及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン単位を含み且つ平均分子量が約1,100〜約40,000Daを有するブロックコポリマーの水性混合物を含んで成り、成長促進ホルモンの流動性及びその生物活性を投与まで維持する成長促進製剤を開示している。
【0022】
WO97/29767は、成長ホルモン、クエン酸三ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、ベンジルアルコール、プルロニックF-68を含んで成り、pH5.6を有する液体製剤を開示する。
【0023】
US5,567,677号は、ヒト成長ホルモン、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、グリシン、マンニトール、任意にベンジルアルコールを含んで成る液体製剤を開示する。
【0024】
hGHの医薬製剤は、特に溶液中で不安定になりがちである。化学的に分解した物質の例えば、脱アミド化した又はスルホキシル化された形態のhGHが生じ、そしてダイマー又はより高分子量の集合化物質が、物理的不安定性によりもたらされうる(Beckerら(1988);Beckerら、1987;Pearlman及びNguyen(1988))。
【0025】
hGHが溶液中で不安定である結果、hGHの医薬製剤は、一般に、使用前に再生しなければならない凍結乾燥形態である。再生は通常、医薬的に許容できる希釈剤の例えば、注射のための滅菌水、滅菌生理食塩水又は適切な無菌の医薬的に許容できる希釈剤によって行われている。
【0026】
hGHの再生溶液は、化学的且つ物理的分解反応を最小にするために好適に4℃で保存されているが、しかし、かかる保存条件下で、最大で14日に渡る場合、いくらかの分解が生じる。
【0027】
液体形態において提供されているhGHの医薬製剤であって、特に長期に渡り沈殿もしくは凝集もしくは任意の他の凝集物質の形成を伴わずにhGHの安定性を維持するものは、特に有利だろう。
【0028】
従って、本発明の目的は、不都合な粒子状物質の形成をもたらさず且つ長い保存時間を有する成長ホルモンの液体製剤を提供することである。
【発明の開示】
【0029】
発明の概要
成長ホルモンの溶解度は、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールを液体製剤に対して加えることによって有意に増加させることができうる。液体成長ホルモン製剤は、室温及び+5℃(もしクエン酸バッファーが使用されていれば)で保存されていて良い。
【0030】
従って、本発明の第一の観点は、液体製剤であって、
成長ホルモン又は内因性hGHの放出を刺激するかあるいは活性を増強する物質;
ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;
クエン酸バッファー;及び
安定化剤、
を含んで成る液体製剤に関連する。
【0031】
本発明の第二の観点は、本発明の液体製剤を生産するための方法に関連する。
【0032】
第三の観点において、本発明は、ある成長ホルモンの単回投与又は多重投与をするための本発明の製剤の使用に関連する。
【0033】
本発明の他の観点は、本発明の液体製剤のある提示形態に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明の構成において、成長ホルモンの溶解度を有意に改善し、よって、実質的に粒状物質を伴わない溶液を獲得することを可能にする特異的な集団が発見されている。
【0035】
バッファーとしてクエン酸を伴うことにより液体製剤中での成長ホルモンの安定性が長期に渡る向上が達成されたことが更に発見されている。
【0036】
従って、本発明は、液体製剤であって:
成長ホルモン、又は内生hGHの放出を刺激するもしくは活性を増強する、物質;
ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;
クエン酸バッファー;及び
安定化剤、
を含んで成る液体製剤に関連する。
【0037】
本発明に従い処方されて良い成長ホルモンは、製剤の意図された使用に基づいて、任意の生物種の例えば、ウシ、ブタ、ウマ又はネコに由来しうる。内生hGHの放出を刺激又は活性を増強する物質は、例えば、成長因子放出ホルモンである。
【0038】
好適に、次の物質が本発明に従い使用されて良くそれは:
a)ヒト成長ホルモン;
b)hGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)の断片;
c)(a)又は(b)と70%以上の同一性を有し且つhGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)又は(b)の変異体;
d)穏和なストリンジェント条件下で(a)又は(b)をコードする天然DNA配列の相補体に対してハイブリダイズするDNA配列によってコードされ且つhGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)又は(b)の変異体;又は
e)hGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)、(b)、(c)又は(d)の塩又は機能的誘導体、
である。
【0039】
ヒト成長ホルモンを含んで成る製剤が本発明により好まれている。
【0040】
用語「ヒト成長ホルモン」又は「hGH」は、本明細書中で使用されている場合、上記のように、天然に生じる誘導体及び合成誘導体が挙げられ、限定されないが、20kD及び22kDヒト成長ホルモン、GH-V、及び「発明の背景」に詳細を記載したような、成長ホルモン遺伝子座の他のメンバーが挙げられる。
【0041】
hGHは、天然に生じるヒト成長ホルモンであって良い、又は好適に組換えhGHであって良い。組換えGHは、真核又は原核宿主の任意の適切な宿主のいずれかにおいて発現しうる。大腸菌は、例えば、hGHの発現のために特に適した宿主である。酵母、昆虫、又は哺乳類細胞は更に組換え成長ホルモンの発現に適している。好適に、hGHはヒト又は動物細胞中、例えばチャイニーズハムスターオバレイ(CHO)細胞中で発現させられる。
【0042】
用語「hGH」又は「成長ホルモン」とは、本明細書中で使用されている場合、機能的誘導体、断片、変異体、類似物、又は成長ホルモンの生物活性を維持している、即ち、成長ホルモンに対してアゴニストとして働く塩をも含む。他の用語において、それらは成長ホルモンレセプターに対して結合してレセプターのシグナル伝達作用を開始することができる。
【0043】
用語「機能的誘導体」、又は「化学誘導体」とは、本明細書中で使用されている場合、当業者に公知の手段によってN末端又はC末端集団の残基上で側鎖として生ずる機能的集団から調製されて良い誘導体を網羅し、そしてそれらは医薬的に許容でき、そして本明細書中に記載のようにhGHの生物活性、即ち、hGHレセプターを結合させてレセプターシグナル伝達を破壊することなく、そしてそれを含む組成物に対して毒性の特性を付与することはない限り本発明中に含まれて良い。誘導体は、化学成分の例えば、炭水化物又はリン酸塩残基を有して良く、但し、かかる誘導体は、hGHの生物活性を維持し且つ医薬的に許容できる。
【0044】
例えば、誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は一次もしくは二次アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル成分(例えば、アルカノール又はカルボキシアロイル基)により形成されたアミノ酸残基のN-アシル誘導体もしくは遊離アミノ基又はアシル成分により形成された遊離ヒドロキシ基(例えば、セリル又はセレノイル残基)のO−アシル誘導体を含んで良い。かかる誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコール側鎖も挙げられ、それは抗原部位をマスクしそして体流体中での分子の滞留時間を延長しうる。
【0045】
錯化剤により誘導体化されて良い又はそれと組み合わされて良い成長ホルモンは長持ちする。従って、本発明の好適な実施態様は、ヒト成長ホルモンのPEG化バージョンに関連する。体内での長期持続する活性を示すために遺伝子操作された成長ホルモンも本発明のhGH誘導体の例である。
【0046】
N-末端においてアシル化されているhGHが単離及び同定されている(Lewisら、1979)。もしも、アシル化が調節的な役割を果たすか又は単に精製による人的な結果であるかどうかは不明である。しかし、この分子はGH活性を、他のhGH誘導体と類似の態様で示すことが期待されている。従って、好適な実施態様において、本発明は、そのN-末端でアシル化されている成長ホルモンに関連する。
【0047】
好適に、本発明の医薬製剤は、鎖間ジスルフィド結合により連結したジスルフィドダイマー、共有結合不可逆的ジスルフィドダイマー、非共有結合ダイマー、及びそれらの混合物からなる群から選択されたヒト成長ホルモンのダイマーを含んで成る。
【0048】
用語「塩」とは、本明細書中、カルボキシル基の塩及びhGH分子又はその類似物のアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当業者に公知の手段によって形成されて良く、そして無機塩の例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、銅又は亜鉛の塩など、並びにアミンなどの有機塩基により形成された塩の例えば、トリハロメタン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、プロカインなどが挙げられる。酸付加塩の例えば、鉱酸による塩の例えば、塩化水素酸又は硫酸、及び有機酸による塩の例えば、酢酸又はシュウ酸が挙げられる。当然、全てのかかる塩は、本発明に対応するhGHの生物活性、即ち、hGHレセプターに対して結合してレセプターシグナル伝達を開始する能力を維持していなければならない。
【0049】
更なる好適な実施態様において、本発明はヒト成長ホルモンの断片に関連する。
【0050】
本発明の成長ホルモンの「断片」とは、所望の生物活性を維持するより短いペプチドである、分子の任意の亜集団を意味する。断片は、アミノ酸を、hGH分子のいずれかの末端から除去し、そしてその残りをhGHレセプターアゴニストとしてのその特性について試験することによって調製されて良い。アミノ酸をポリペプチドのN-末端又はC-末端のいずれかからある時間に除去するためのプロテアーゼが公知であり、そして所望の生物活性を維持する断片をそのようにして特定することには、慣用の実験のみが関わる。
【0051】
好適に、本発明のhGH断片は、欠失がhGHの生物活性、即ち、hGHレセプターに対する結合及び当該レセプターを介してシグナル伝達を開始することに影響を及ぼさない限り内部欠失を有していて良い。本発明の好適である断片は、グルタミン酸(Glu)32〜グルタミン酸46にかけての15個のアミノ酸を欠いている。
【0052】
hGH断片は更にC-末端又はN-末端においてトランケーションされて良い。ヒト成長ホルモンの最初の8個のN-末端残基又は最初の13個のN-末端残基を欠くトランケーションされたhGHも本発明にかかり好適である。
【0053】
単鎖C-末端hGH断片は、hGHの生物活性を維持することが記載されている(米国特許第5,869,452号を参照のこと)。従って、hGHのC-末端断片は、本発明にかかり好適である。断片hGH177-191(hGHの残基177〜191(LRIVQCRSVEGSCGF)を少なくとも含んで成る)は、特に本発明において好適である。更に好適なものは、このペプチドの誘導体であり、例えば、US6,335,319又はWO99/12969に記載のペプチド変異体、例えば、環状ペプチドである。
【0054】
更に、ぺプチドであって、hGHレセプターアゴニスト活性を有し、hGHであり、その類似物又は変異体、塩、機能的誘導体又はそれらの断片であるペプチドは、hGHポリペプチドに隣接する更なるアミノ酸残基をも含む。生じる分子が、コアポリペプチドのhGHレセプターアゴニストに結合能力を維持している限り、当業者は慣用の実験によって、かかる隣接する残基がコアペプチドの塩基性及び新規特性、即ち、そのレセプターアゴニスト特性に影響を及ぼすかどうかを特定することができる。
【0055】
更に、本発明の好適なGH変異体の例は、メチオニンヒト成長ホルモン(Met-h-GH)であり、それはヒト成長ホルモンのN-末端において更なるメチオニン残基を有する。
【0056】
本発明の好適なhGHの変異体は、メチオニルhGHを含んで成り、それは更なるメチオニン残基をそのN-末端に有するヒト成長ホルモンである。更に好適な変異体は、Glu32〜Glu46の15個のアミノ酸残基を欠いているヒト成長ホルモンである。
【0057】
本発明のヒト成長ホルモンの「変異体」とは、タンパク質全体又はその断片のいずれかに対して実質上類似している分子を意味する。変異体は、「ミューテイン」ともよばれている。変異体は、hGHの異性体の例えば、選択的スプライシングによって生じた変異体であって良い。変異体(ポリ)ペプチドは、当業者に周知の方法を使用することで、変異体ペプチドの直接化学合成によって調製されて良い。当然、変異体ヒト成長ホルモンは、少なくともhGHと類似するhGHレセプター結合活性及びシグナル伝達開始活性を有するだろうし、それ故、hGHに対して類似する活性を有すると予測されている。
【0058】
ヒト成長ホルモンのアミノ酸配列変異体は、DNAにおける突然変異によって調製されて良く、それは、合成ヒト成長ホルモン誘導体をコードする。かかる変異としては、例えば、アミノ酸配列内での残基の欠失、挿入及び置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意組み合わせも最終構築体に到達するために行われて良く、但し、最終構築体が所望の活性を有する。明らかに、変異体ペプチドをコードするDNA中で生じる突然変異が、読み枠を変えることがあってはならない。
【0059】
遺伝子レベルで、これらの変異体は、ペプチド分子をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異によって調製され、従って、変異体をコードするDNAを生産し、その後組換え細胞培養においてDNAを発現するように調製されて良い(Adelmanら、1983によって例示されているように)。変異体は典型的に、非変異体ペプチドと少なくとも同じ性質の生物学的活性を示す。
【0060】
本発明のヒト成長ホルモンの「類似物」とは、非天然の分子を意味し、それは実質上典型的に、分子全体又はその活性断片のいずれかに類似する。本発明中で有用なヒト成長ホルモンの類似物は、GH活性を示すだろう。
【0061】
本発明のヒト成長ホルモンにおいてなされうる典型的な置換の種類は、様々な生物種の相同タンパク質間でのアミノ酸変化の頻度及び変化の分析に基づいて良い。かかる分析に基づいて、本明細書中、保存的置換が、次の5つの集団のうちの1つ以内との交換体として定義されて良い。
【0062】
【化1】
【0063】
前記集団内で、以下のような置換が「非常に保存的」であると考えられている。
【0064】
【化2】
【0065】
半保存的置換は、上記集団(I)〜(IV)の2つの集団間での変換であると定義されており、それは超集団(A)((I)、(II)、及び(III)を含んで成る)、又は超集団(B)(上記(IV)及び(V)を含んで成る)に限定されている。置換は、遺伝的にコードされたアミノ酸又は更に天然に生じるアミノ酸に限定されない。エピトープがペプチド合成によって調製されている場合、所望のアミノ酸が直接使用されて良い。代わりに、遺伝子によりコードされたアミノ酸は、それを、選定の側鎖又は末端残基と反応することができる有機誘導剤と反応させることによって修飾させられて良い。
【0066】
最も共通するシステニル残基は、αハロアセテート(及び対応するアミン)の例えばクロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応し、カルボキシメチル誘導体又はカルボキシアミドメチル誘導体を与える。システニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾール)プロピオン酸、クロロアセチルフォスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル−2−ピリジニルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によっても誘導体化されている。
【0067】
ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0においてジエチルプロカルボネートとの反応によって誘導体化されており、何故ならこの剤はヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるからだ。パラブロモフェナシルブロミドも有用であり;この反応は、好適にpH6.0で0.1Mのカコジル酸ナトリウム中で行われて良い。
【0068】
リジン残基及びアミノ末端残基は、コハク酸又は他のカルボン酸無水物と反応している。これらの剤による誘導体化は、リジン残基の電荷を反転させる効果を有する。αアミノ酸含有残基を誘導するための他の適切な剤としては、イミドエステルの例えば、メチルピコリンイミデート;ピリオキサールリン酸;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア;2,4−ペンタンジオン/及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0069】
アルギニン残基は、1又は複数の常用の試薬、とりわけ、フェニルグリオキサール;2,3-ブタンエジオン;及びニンヒドリンとの反応によって修飾されている。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基の高pKaが理由で、反応はアルカリ条件下で行われることが必要となる。更に、これらの残基は、リジンの基、並びにアルギニンεアミノ基と反応しうる。
【0070】
チロシン残基の特異的修飾はそれ自体、大々的に研究されており、特に、芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応によってスペクトル標識をチロシン残基中に導入することにおける注目を伴っている。最も共通して、N−アセチルイミダゾール及びテトラニトロメタンも、O−アセチルチロシル物質及びε−ニトロ誘導体をそれぞれ形成するために使用されて良い。
【0071】
カルボキシル側鎖集団(アスパルトイル又はグルタミル集団)は、カルボジイミド(R'N−C−N−R')の例えば、1−シクロヘキシル−3−[2−モルホリニル−(4−エチル)]カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応によって選択的に修飾されて良い。更に、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラジニル及びグルタミニル残基へと転換されて良い。
【0072】
グルタミニル及びアスパラジニル残基は、対応するグルタミル及びアスパルチル残基へと頻繁に脱アミド化されて良い。代わりに、これらの残基は、穏和な酸性条件下で脱アミド化されて良い。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲内である。
【0073】
本発明において使用するためのhGHの類似物を獲得するために使用されて良いタンパク質におけるアミノ酸置換体の生産の例はMarkらの米国特許第RE33,653号;4,959,314号;4,588,585号及び4,737,462号、Kothsらの5,116,943号、Namenらの4,965,195号;及びLeeらの5,017,691号並びに米国特許第4,904,584号に提示されたリジン置換タンパク質(Shawら)中に提示されているなどに示された公知の方法段階の全てが含まれる。更に、成長ホルモン変異体は、例えば、米国特許第6,143,523号(Cunninghamら)に記載されている。
【0074】
本発明にかかり使用されて良いヒト成長ホルモンレセプターに対して結合し且つシグナル伝達を開始させる物質は特に、米国特許第5,851,992号;5,849,704号;5,849,700号;5,849,535号;5,843,453号;5,834,598号;5,688,666号;5,654,010号;5,635,604号;5,633,352号;5,597,709号;及び5,534,617号などにおいて開示された、刊行物中で公知の成長ホルモン類似物及び模倣物質でもある。
【0075】
好適に、hGH変異体又は類似物は、コア配列を有し、それは天然配列又はその生物活性断片の配列と同じであり、それは天然アミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有し、そしてその生物活性を維持する。一層好適に、かかる配列は天然配列に対して80%以上の同一性、90%以上の同一性、又は最も好適に95%以上の同一性を天然配列に対して有する。
【0076】
「同一性」とは、配列を比較することによって特定された、2以上のポリペプチド配列又は2以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般に、同一性とは、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列それぞれの、比較される配列の全長に渡る、正確なヌクレオチド対ヌクレオチド又はアミノ酸対アミノ酸の対応を意味する。
【0077】
正確な対応がない場合の配列に関して、「%同一性」が特定されて良い。一般に、比較される2つの配列は、配列間での相互関係を最大に得るように並べられている。これには、配列の1つ又は両方のいずれかにおいて、アライメントの程度を高めるために「ギャップ」を入れることを含んで良い。%同一性は、比較される各配列の全長に渡り特定(いわゆるグローバルアライメント)されて良く、それは特に同じ又は非常に類似する長さの配列に対して適しており、又はより短い、規定の長さ(いわゆるローカルアライメント)のために適しており、即ち同じではない長さの配列のために一層適している。
【0078】
2以上の配列の同一性及びホモロジーを比較するための方法が当業者に周知である。従って、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1(Devereux Jら、1984)において入手可能である、例えばプログラムBESTFIT及びGAPが、2つのポリヌクレオチド間での%同一性並びに2つのポリペプチド配列間での%同一性及び%ホモロジーを特定するために使用されて良い。BESTFITは、Smith及びWatermanの「ローカルホモロジー」(1981)を使用し、そして2つの配列間での最も類似性のある単一の領域を発見する。配列間での同一性及び/又は類似性を特定するための他のプログラムは当業界でも公知であり、例えば、BLASTファミリーのプログラム(Altschul S F et al, 1990, Altschulら、1997, www.ncbi.nlm.nih.govにおけるNCBIのホームページを介してアクセス可能)及びFASTA(Pearson WR, 1990; Pearson 1988)が挙げられる。
【0079】
本発明の変異体又はミューテインのための好適な変化とは「保存的」置換として知られていることである。成長ホルモンポリペプチド又はタンパク質の保存的アミノ酸置換には、メンバー間での置換は分子の生物機能を保存するだろう十分に類似する物理化学的特性を有する集団の中の同義アミノ酸を含みうる(Grantham 1974)。アミノ酸の挿入及び欠失は、特にもし、挿入又は欠失が少数個、例えば、30個以下、及び好適には10個以下のアミノ酸を伴い、そして機能的コンフォメーションに対して致命的であるアミノ酸の例えばシステイン残基を除去又は置換しないなら、それらの機能を変化させること無く上記配列において作られて良いことが明らかである。かかる欠失及び/又は挿入によって生産されたタンパク質及びミューテインは、本発明の範囲内である。
【0080】
本発明の類似物又は変異体は、以下の手順に従い特定されても良い。天然配列のDNAは従来技術に対して公知であり、そして刊行物中で発見される(Martialら、1979)。任意の核酸の例えば、DNA又はRNAによってコードされるポリペプチドは、天然DNA又はRNAの相補体に対して、ストリンジェント条件下又は穏和にストリンジェントな条件下で、ポリペプチドが天然配列の生物活性を維持する限り、本発明の範囲内である。
【0081】
ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーション実験において使用される温度の関数であり、ハイブリダイゼーション溶液中の一価陽イオンのモル及びホルムアミドの%の関数である。任意の条件を伴うストリンジェンシーの程度を特定するために、当業者は最初に、DNA-DNAハイブリッドの融解温度Tmとして表した100%同一性のハイブリッドの安定性を特定するためのMeinkothら(1984)の等式:
Tm=81.5℃+16.6(LogM)+0.41(%GC)−0.61(%形成)−500/L
(式中、Mは一価陽イオンのモルであり、%GCは、DNA中のG及びCヌクレオチドの%であり、%形成はハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの%であり、そしてLは、塩基対中のハイブリッドの長さである)使用する。各1℃について、Tmは、100%同一性ハイブリッドについて計算されたものから下がり、許容されるミスマッチの量は、1%ごと上がる。従って、もし任意の特定の塩及びホルムアミド濃度においてハイブリダイゼーション実験のために使用されるTmは、Meinkothの等式に従い、100%ハイブリッドについて計算されたTmよりも10℃低く、最大約10%のミスマッチがあってさえもハイブリダイゼーションは生じるだろう。
【0082】
本明細書中で使用された場合、高ストリンジェント条件は、最大で15%の配列分散を寛容できるものであり、一方で、穏和なストリンジェント条件とは、最大で20%の配列分散を許容できるものである。限定ではなく、高ストリンジェント(ハイブリッドの計算したTmよりも12〜15℃下)及び穏和(ハイブリッドの計算したTmよりも15〜20℃下)条件の例は、2×SSC(標準クエン酸塩類溶液)及び0.5%SDSの洗浄溶液を、ハイブリッドの計算したTmより下の適度な温度で使用する。ストリンジェントの最終的な条件は、特に、もし使用されるハイブリダイゼーション条件が、安定なハイブリッド伴って、安定性が少ないハイブリッドを形成するものであれば特に洗浄条件が理由である。より高いストリンジェントにおける洗浄条件により安定性が少ないハイブリッドが除去される。上記高ストリンジェント条件〜穏和なストリンジェント洗浄条件と共に使用されて良い共通のハイブリダイゼーション条件は、6×SSC (又は6×SSPE)、5×Denhardt試薬、0.5%SDS、100μg/ml変性、断片化サケ精子DNAの溶液中で、温度がTmよりおよそ20〜25℃下でのハイブリダイゼーションである。もし混合プローブが使用されていれば、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)がSSCの代わりに使用されて良い(Ausubel,1987〜1998)。
【0083】
本発明は、ヒト成長ホルモン誘導体を調製するための組換え方法を供し、これらの誘導体は、当業者に周知の常用のタンパク質合成方法によって調製されて良い。
【0084】
本発明の製剤は、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールを含んで成る。このポリマーは非イオン界面活性剤である。本明細書中、界面活性剤は、「テンシオアクチブ(tensioactive)」又は「テンシオアクチブ剤(tensioactive agent)」ともよばれうる。更に好適な実施態様において、製剤はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールを0.5〜5mg/mlもしくは1〜2mg/mlの範囲もしくは1.5mg/mlの濃度で含んで成る。
【0085】
好適な製剤において、界面活性剤はプルロニックポリオールの例えば、F68である。プルロニックF68は本発明にかかり非常に好適である。
【0086】
界面活性剤プルロニックF68(BASF、Poloxamer188としても知られている)によりGHを処方することによって、安定な製剤が獲得され、それにより沈殿、凝集又は任意の種類の任意の粒状物質の生成が避けられる。
【0087】
プルロニックF68は、酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)のブロックコポリマーである。酸化プロピレンブロック(PO)が、2つの酸化エチレン(EO)ブロックに挟まれている。
【0088】
【化3】
【0089】
プルロニック界面活性剤は、2段階の方法により合成されている。
1.所望の分子量の疎水性物質を、酸化プロピレンをプロピレングリコールの2つのヒドロキシル基に対して調節して添加することによって生成され;そして
2.酸化エチレンを加え、親水性基の間で疎水性物質を挟む。
【0090】
プルロニックF68において、ポリオキシエチレン(親水性物質)は80%であり、そして疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は約1967Daである。
【0091】
プルロニックF68の典型的な特性は以下のとおりである:
平均分子量:8400;
融点/流動点:52℃;
物理形態(20℃):固体;
粘度(Brookfield)cps:1000[液体(25℃)、ペースト(60℃)
及び固体(77℃)];
表面張力(dynes/cm、25℃);
0.1%濃度:50.3
0. 01%濃度:51.2
0.001%濃度:53.6
表面張力(dynes/cm、25℃ vs Nujol);
0.1%濃度: 19.8
0.01%濃度: 24.0
0.01%濃度: 26.0
Draves 湿化、秒、25℃
1.0%濃度:>360
0.1%濃度:>360
泡の高さ
ロスマイル(Ross Miles)、0.1%、mm、50℃:35
ロスマイル、0.1%、mm、26℃:40
動力、0.1%, mm、400ml/分:>600
水性溶液中での曇り点、℃
1%濃度:>100
10%濃度:>100
HLB(親水性物質-脂質バランス):29
【0092】
プルロニックF68に類似する特性を有する他のポリマーも本発明の製剤中で使用されて良い。
【0093】
当業者は、1又は複数の更なる界面活性剤もポリエチレン−ポリプロピレングリコールに加えて使用されて良いことを理解するだろう。
【0094】
本発明の製剤は、更に安定化剤を含んで成る。安定化剤は、等張剤ともよばれうる。
【0095】
「等張剤」は、生理化学的に許容でき且つ適切な等張性を製剤に対して与え、製剤と接している細胞膜を介して水の網状(net)の流れを予防する化合物である。グリセリンなどの化合物は、公知の濃度でかかる目的のために通常使用されている。他の適切な等張剤としては、限定ではないが、アミノ酸又はタンパク質(例えば、グリセリン又はアルブミン)、塩(例えば、塩化ナトリウム)、及び糖(例えば、デキストロース、スクロース及びラクトース)である。
【0096】
本発明において使用されて良い安定化剤(スタビライザー)又は等張剤としては、還元剤の例えば、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース及びラフィノースが挙げられる。マンニトール、キシリトール、エリトリトール、トレイトール、ソルビトール及びグリセロールが挙げられる。
【0097】
好適な実施態様において、安定化剤又は等張剤はスクロースである。
【0098】
更に好適な実施態様において、当該製剤はスクロースを10mg/ml〜100mg/mlもしくは20mg/ml〜80mg/mlの範囲もしくは約60mg/mlで有する。
【0099】
本発明の製剤は、更にクエン酸バッファーを含んで成る。本発明において使用されて良いクエン酸バッファーとしては、クエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0100】
用語「バッファー」又は「生理的に許容できるバッファー」とは、製剤中、医薬又は獣医的使用のために安全であることが知られており且つ製剤のための所望のpH範囲において製剤のpHを維持又は調節する効果を有する化合物の溶液を意味する。穏和な酸性pH〜適度に塩基性のpHにpHを調節するために許容できるバッファーとしては限定ではないが、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、トリス、及びヒスチジンなどの化合物が挙げられる。「トリス」とは、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3-プロパンジオールを意味し、そして任意の医薬的に共用でききるその塩を意味する。
【0101】
前記製剤がクエン酸塩を1〜100mMもしくは5〜50mMの範囲もしくは10〜20mMの濃度で含んで成ることが好適である。
【0102】
本発明によれば、製剤のpHは5〜7もしくは5.5〜6.5の範囲もしくはおよそ6である。一層好適に、pHは5.9である。
【0103】
本発明の製剤は、更に水性希釈剤を含んで成りうる。
【0104】
用語「水性希釈剤」とは、水を含む液状溶媒を意味する。水性溶媒系は単に水からなって良い、又は水+1又は複数の水混和性溶媒からなって良く、そして溶解した溶質の糖、バッファー、塩又は他の賦形剤を含んで良い。
【0105】
製剤は1又は複数の水性溶媒を含んで成って良い。通常使用される、非水性溶媒は、短鎖有機アルコールの例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、短鎖ケトンの例えば、アセトン、及びポリアルコールの例えば、グリセロールである。
【0106】
本発明の製剤は、好適に更に防腐剤を含んで成る。防腐剤の添加は、もし成長ホルモンが多回投与量投与を目的とされているならば特に好適である。
【0107】
「防腐剤」は化合物であり、例えば、本質的に細菌の作用を下げ、それによって多回使用製剤の生産を促すために製剤中に含まれて良い化合物である。潜在的な防腐剤の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム)、及び塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他の種類の防腐剤としては、芳香族アルコールの例えば、フェノール、ブチルアルコール及びベンジルアルコール、アルキルパラベンの例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールが挙げられる。
【0108】
防腐剤は、本明細書中、静細菌性物質であっても良い。用語「静細菌物質」とは、抗細菌剤として作用するよう、製剤に対して加えられた化合物又は組成物を意味する。本発明の製剤を含む保存されたGHは、好適に、市販されて価値のある多回使用製品であるために有効な防腐効果のための法的規制ガイドラインに合致する。静細菌物質の例としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールが挙げられる。
【0109】
好適に、防腐剤は1〜10mg/mlもしくは2〜5mg/mlの範囲又は3mg/mlの濃度で存在している。
【0110】
本発明の好適な防腐剤はフェノールである。
【0111】
第二の観点において、本発明は、本発明に従い、製剤の成分の水性溶液を調製する段階を含んで成る液体製剤を生産するための方法に関連する。
【0112】
本発明は更に、所定量の製剤を滅菌容器中へと配置する段階を含んで成る液体製剤を生産する方法に関連する。典型的に、かかる量はmlの範囲にある。
【0113】
治療投与のためのhGHの液体製剤は、hGHと所望の程度の純度を有する安定化剤を医薬的に許容できる賦形剤、バッファー又は防腐剤 (Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osoll A著(1980))を組み合わせることによって調製されて良い。許容できる賦形剤は、使用された濃度及び投与量において患者に対して毒性が無いものであり、例えば、バッファー、防腐剤、抗酸化物質、pH調節剤及び等張性調節剤が挙げられる。
【0114】
成長ホルモンの液体製剤は、もし所望されれば、1又は複数の他の安定化賦形剤をも含んで良い。更なる安定化賦形剤としては、例えば、アミノ酸の例えば、グリシン又はアラニン、マンニトール又は他のアルコール、又はグリセロールが挙げられる。加えて、液体製剤は、他の成長因子の例えば、インスリン様成長因子又はIGF結合タンパク質をも含む。
【0115】
本発明に従い調製された製剤によって供されたhGHの安定性の増加により、安定化剤の不在下で通常使用されるものよりも一層濃縮されて良いhGH製剤のより幅広い使用が可能になる。例えば、hGH液体製剤は、hGH製剤のエアロゾル化又は無針注射の間に生ずるhGHの界面で誘導されるhGHの分解を減らす。
【0116】
用語「安定性」とは、本発明の成長ホルモンの製剤の物理的、化学的、及び構造的な安定性(生物学的有効性の維持も含む)を意味する。タンパク質製剤の安定性は、より高次ポリマーを形成するためにタンパク質分子の化学的分解又は凝集によって、脱グリコシル化、グリコシル化の修飾、酸化又は本発明に含まれるGHポリペプチドの生物学的な活性を少なくとも1つ減少させる他の任意の構造的修飾によって、生じさせられて良い。
【0117】
自動注射器は当業界で公知であり、例えば、Easy ject(商標登録)とよばれるものがあり、それは特にhGHを投与するために有用である。 無針投与も本発明との関連において使用されて良く、当業界で公知で特別な装置を使用する。
【0118】
本発明の更なる観点は、本発明の製剤を投与することを含んで成る医薬組成物に関連する。本発明の範囲内の組成物としては、1以上のヒト成長ホルモンもしくは本発明にかかるその誘導体、類似物質、もしくは変異体を、その意図した目的を達成するために有効な量で含んで成る全ての組成物が挙げられる。個々の要請は多彩な一方で、 各成分の有効な量の最適な範囲を特定することは当業者に公知である。典型的な投与量は約0.001〜約0.1mg/kg体重/日を含んで成る。患者に対して投与された場合、hGH療法は、この疾患において示されうる他の療法と一緒に投与されて良い。
【0119】
用語「投与」又は「投与すること」とは、本発明の製剤を、疾患又は症状を治療するためにそれらを必要としている患者の体内に導入することを意味する。
【0120】
本発明の好適な実施態様において、hGHは1日約0.1〜10mg又は約0.5〜6mgの投与量で投与されている。更に好適な投与量は、約1mg のヒト成長ホルモン/ヒト/日である。
【0121】
更に好適な実施態様において、hGHは、交互投与量で投与されており、第1の投与量は第2の投与量よりも高い。好適に、第1の投与量は、約1mgであり、そして第2の投与量は、約0.5mgである。週間投与量は、患者の要請に依存して好適に約6mgもしくは約5mgもしくは約4.5mgである。
【0122】
用語「患者」とは、疾患又は症状を治療される哺乳動物を意味する。患者は、限定されないが、起源は次の、ヒト、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、ウサギなどである。
【0123】
本発明の製剤は、多くの様々な投与計画のために適している。例えば、投与は、非経口的に、例えば、皮下、静脈内、筋内、口内、腹腔内、エアロゾル、経皮、鞘内、又は直腸経路によって投与されて良い。投与量は受容者の年齢、健康及び体重、以前又は現在の治療の種類に依存して良く、もしあれば、治療の頻度及び望まれる効果の性質に依存する。
【0124】
本発明に従えば、好適な投与経路は、皮下及び筋内投与経路である。
更に好適な投与経路は、経口経路である。
【0125】
本発明にかかる組成物又は製剤の適切な投与量は、受容者の年齢、健康及び体重、現在の治療の種類、もしあれば治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存すると解される。しかし、最も好適な投与量は、当業者により、実験を行わなくても理解され且つ特定可能であるとされるように調製されて良い。これは典型的に、標準的な投与量の調整、例えば、患者の体重が低い場合は、投与量を減らすことなどを伴う。
【0126】
各治療に必要な合計投与量は、複数の投与量において(多回投与)又は単一の投与量(「単回投与」)において投与されて良い。
【0127】
表現「多投与使用」とは、GH製剤の単一のバイアル、アンプル又はカートリッジの1回超の注射の使用、例えば、2、3、4、5、6回以上の注射の使用を含むことを意味する。注射は、例えば、6、12、24、48又は72時間の間隔があけられて良い。
【0128】
従って、本発明は更に単回投与のために本発明の製剤を使用することに関連する。代わりの観点において、本発明は、多回投与のための本発明の製剤の使用に関連する。本発明により処方されたhGH製剤の典型的な量は、単回投与のために8もしくは10もしくは12mg/mlであり、又は多回投与のために0.8もしくは2もしくは4mg/mlである。
【0129】
組成物は、単独で又は疾患に対して向けられたもしくはその症状に対して向けられた他の治療剤との組み合わせにおいて投与されて良い。
【0130】
本発明のhGH製剤は、バイアル中に分注されて良い。用語「バイアル」とは、広くは、滅菌状態で入れられているGHを固体又は液体形態で維持するために適した容器を意味する。本明細書中で使用されるようなアンプルの例としては、アンプル、カートリッジ、ブリスターパック、又は他の、GHを患者に対して注射器、ポンプ(浸透圧ポンプなど)、カテーテル、経皮パッチ、肺又は経粘膜スプレーを介して投与するために適している容器が挙げられる。経皮、肺、経粘膜又は経皮投与のために製品をパッケージングするために適したバイアルは当業者に公知である。
【0131】
hGH製剤の安定性が増加することにより、適温での長期保存が可能になりその温度とは、例えば、凍結温度(例えば、−20℃)より下、又は凍結温度より上の、好適には、2〜8℃、一層好適には+5℃、または室温の例えば、+25℃でさえもある。
【0132】
in vivo投与のために使用されるhGHの製剤は、滅菌されていなければならない。このことは、例えば、滅菌ろ過膜を介するろ過によって容易に達成される。
【0133】
一般に治療hGH液体製剤は、滅菌アクセスポートを有する容器の例えば、皮下注射針によって穿刺されて良いストッパーを有する静脈溶液バッグ又はバイアル中に置かれている。
【0134】
従って、本発明の更なる観点は、使用前に保存するために適した容器内に滅菌状態でハーメチック密封した本発明の液体製剤の、ある提示形態に関連する。
【0135】
本発明が完全に記載されていることで、当業者には同じことが広い範囲の同等のパラメーター、濃度及び条件内で、実験をすることなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われて良いことが理解されるだろう。
【0136】
本発明は、その特異的な実施態様との関連において記載されているが、更なる変更ができると解されるだろう。本願は、一般に、本発明の次のような全ての変形、使用又は適合、本発明の原理を全て網羅し、そして本発明が属する当業界内の公知又は慣例として本発明からの出発を、そして添付の請求の範囲において開示されたような本明細書中に開示された本質的な特徴に対して適用されて良いことを意味する。
【0137】
本明細書中引用された全ての引用文献の例えば、米国又は任意の海外で発行された刊行又は未刊行の米国又は外国特許出願など、ジャーナルの記事又は要は、本明細書中、全データ、テーブル、図及び引用文献中に示された文章によって組み込まれている。更に、引用文献中で引用されている文献の内容全体も参照によって組み込まれている。
【0138】
公知の方法段階、常用の方法段階、公知の方法又は常用の方法に対する参考文献は、いかなる場合も、本発明の全ての観点、記載又は実施態様が当業界で開示され、述べられ又は提示さえていることを認めるものではない。
【0139】
特異的な実施態様の前記記載は、本発明の一般的な性質を完全に開示し、当業者が、当業界内の知識(例えば、本明細書中に引用された文献の内容)を適用することによって、かかる特異的な実施態様を容易に変更及び/又は様々な適用のために適合させるこが、実験をせずに、本発明の一般的な概念から逸脱することなくできる。従って、かかる適合及び修飾は、本明細書中に記載の教示及び説明に基づいて、開示された実施態様と同等の範囲内の意味を示す。本明細書中に記載の語彙又は用語は、説明の目的のためであり限定を目的とはせず、従って、本明細書中に記載の用語又は語彙は、当業界で通常の知識の組み合わせにおいて、本明細書中に記載の教示及び説明の観点から当業者によって解釈されるだろう。
【0140】
本発明を説明することで、それは次の臨床研究の例を参照することによって一層容易に理解されるだろう。その例は、本発明の説明のために供されており、そして本発明を限定する目的はない。
【実施例】
【0141】
実施例
実施例1:hGHの分解の特性決定
Rigginテストは、各分解形態(単一ピークは1超の分解産物を含みうる)に対して特異的ではないので、広範囲のr-hGH液体製剤の分解プロファイルの特性決定を行った。
【0142】
戦略
この研究の戦略を、下に記載のように2つの段階に分けた。
【0143】
第一段階:
1. 25℃で6月間保存した開発液体製剤、バッチPDOI/573D6Hから、Riggin 法による全ピークの単離。
2. 全分子のマススペクトロメトリーによるピークの特性決定。
3. マススペクトロメトリーと連動させたペプチドマッピングによって最も豊富なピークの特性決定をすること。
【0144】
第二段階:
1. 第一段階の研究において特性決定したピークを使用して代替のクロマトグラフィー法を開発し、各々は、ある分解経路 (1つは脱アミド形態のため、1つは酸化形態のため、1つはN-トランケーション形態のためなど)に対して特異的である。
2.この方法を設定した後、これらを使用して、2種類のr-hGH液体製剤サンプル(どれも4℃で保存並びに6日間40℃で保存することによるストレス条件に委ねた):
Saizen 液体 Lot SJC201(40℃で6日)
Saizen液体 Lot SJC201(4℃で18月)
Serostimマンノース液体 Lot E4C101(40℃で16日)
Serostimマンノース液体 Lot E4C101(4℃で18月)
中の各分解産物の含有量を評価した。
【0145】
これらのサンプルを、有効期限に近い凍結乾燥した製剤、Saizen凍結乾燥 Lot B821A.に対して分析した。
【0146】
このバッチも、分子を完全に特性決定するために、マススペクトロメトリーに連結させたペプチドマッピングによっても試験した。
3.獲得したデータから分解経路を確立した。
【0147】
結果
この特性決定によりr-hGHの分解形態は次のとおりであることを評価することが可能になった。
・アスパラギン酸の異性体化に由来するIso-Asp130(メジャー)及びIso-Asp107(セカンダリー)。
・Asn149又は152のいずれかにおける、そしてAsn99における脱アミド化。
・Asp異性体化又はAsn脱アミド化(主にAsp130のスクシンイミド)のいずれかのスクシンイミド中間体。
・2つのN-末端アミノ酸の欠失に由来するDes-Phe-Pro r-hGH。
・主にメチオニン14における酸化。
・以下の方法を開発した:
・酸化形態のための、TFA中でのRP-HPLC
・脱アミド形態のためのイオン交換クロマトグラフィー
・iso-Asp130及びiso-Asp107の両方についてのペプチドマッピング
・Des-Phe-Pro r-hGHのためのHI-HPLC
・他方スクシンイミド形態は、Riggin法(主たるものはAsp 130のスクシンイミドである)によって定量可能である。
【0148】
サンプル中で検出された分解形態の量を表Aに示している。
【0149】
上記データを比較することによって、r-hGHの液体製剤中での主要な分解経路は:
・脱アミド化
・アスパラギン酸の異性体化
・2つのN-末端アミノ酸の欠失
【0150】
酸化は40℃で6日に渡る保存によっては増えない。
【0151】
【表1】
【0152】
実施例2: 単回投与量投与のためのhGH液体製剤
序
r-hGHの液体製剤を開発し、それは凍結乾燥した産物よりも簡単な医薬体裁を示す。段階的に進む方法を採用し、r-hGHの新たな液体製剤の安全性を確実にした。分解プロファイルの広範囲な特性決定を行い、並びに全身毒性及び局所寛容性の研究をこの新たな製剤について行った。加えて、比較生体利用効率研究を行い、新たな液体製剤と現在承認されている凍結乾燥製剤との間での生物学的等価性を証明した。
【0153】
医薬開発の一部として、製剤の適切さ及び安定性を以下のパラメーターについて評価した。
・pH及びバッファー
・バッファーのイオン強度
・賦形剤
【0154】
次いで、候補製剤の安定性を選定の容器中で研究し、製造方法、オーバーフィル及び容器密封システムを決定した。
【0155】
この開発の後に、薬物製品を、3mlのガラスカートリッジに充填したクエン酸バッファー(pH5.85)、スクロース及びPoloxamer188(中の組換えヒト成長ホルモンの水性溶液として提示した。薬物製品を12.0mg/ml濃度で充填し、そしてブロモブチルストッパーを備える3ml公称容量カートリッジ入れた。カートリッジを、6.0mgのr-hGHを患者に対してデリバリーするための注射のための0.5mlのr-hGH 溶液で満たした。
【0156】
薬物製品の成分
薬物製品を、3mlのI型ガラスカートリッジに充填したクエン酸バッファー、スクロース及びポロキサマー188中のソマトトロピン(ヒト組換え成長細胞、r-hGH)の単回投与量水溶液として提示した。
【0157】
0.5mlの溶液が投与された場合に、患者に対して6.0mg/投与量r-hGHがデリバリーされるために、薬物製品を、12.Omg/mlの濃度で処方した。
【0158】
薬物物質
薬物物質と製剤賦形剤との適合性
薬物物質と製剤賦形剤の適合性を、r-hGH凍結乾燥製剤の開発の間に行われる実験並びに液体製品製剤の実現可能性を調べる目的の予備スクリーニング研究の間に行われる実験を考慮して、評価した。これらの研究により次のことが示された:
・r-hGHメイン分解産物は、脱アミド化形態でありそしてこれはpHが厳密に相関していること。pHおよそ6.0がかかる分解を最小にする。
・溶解度は、pH、静細菌剤及び機械的ストレスの存在によって影響される更なる重要なパラメーターである。r-hGHの沈殿を避けるために、製剤の成分の中で適切な平衡を発見することが必須である。
【0159】
バッファー剤の選択
選定のバッファー剤を、以下のことを考慮して評価した:
・脱アミド化速度に対するバッファー剤濃度の効果;
・タンパク質の溶解度に対するバッファー剤濃度の効果;
・pH安定性に対するバッファー剤濃度の効果
【0160】
薬物物質及びバッファー(酢酸バッファー及びクエン酸バッファー)を含むいくつかの溶液を製造し、そしてr-hGH沈殿を誘導するために振動ストレス試験に委ねた。同様液を、分解経路を加速させるために25±2℃でも保存した。
【0161】
結果は次のことを示す:
・バッファー剤濃度は、r-hGH脱アミド化に対して相当する影響を有すること;特に、濃度が高くなれば、分解が高くなる;
・バッファー剤濃度は、r-hGH溶解に対して相当する影響を与えること; 特に、濃度が高くなれば、溶解度が低くなる;
・10mMの酢酸バッファーに比べて、クエン酸を酸性化剤として使用することでpHが6近くでより良く安定化する。
【0162】
賦形剤の選択
薬物物質と2つの異なる賦形剤(スクロース及びマンニトール)の適合性を、それらのr-hGH溶解度及び脱アミド化速度に対する影響を評価することで評価した。
【0163】
バッファー系及びスクロース又はマンニトールを含むいくつかの溶液を製造し、そしてr-hGH沈殿を誘導するために振動ストレス試験に委ねた。また、分解経路を加速させるために同溶液を+25±2℃で保存した。
【0164】
実験結果により示されたことは:
・スクロース又はマンニトールのいずれもr-hGH溶解度を向上したこと;
・マンニトール又はスクロースを製剤に加えることにより、RP-HPLCによって試験したr-hGHの分解が僅かに増加したこと(図1)
である。
【0165】
図1は、マンニトールもしくはスクロースを含みもしくは賦形剤を含まないr-hGH液体製剤の+25℃±2℃で4週間の保存後のRP-HPLC結果を示す。
【0166】
界面活性剤の選択
バッファー剤、等張剤(スクロース又はマンニトール)及び評価の下の界面活性剤(張力活性剤(tensioactive agent))(ポリソルベート20又はポロキサマー188)を製造し、そしてr-hGH沈殿を誘導する振動ストレス試験(Vortexを使用することによって行った機械的ストレス試験)に委ねた。2つの濃度の界面活性剤をこの予備評価の間に試験した: 1つは高濃度の1.0mg/mlでありそして1つは低濃度の0.01mg/mlである。その後、製剤を視覚的に検査した。同溶液を、分解経路を加促させるために+25±2℃で保存した。
【0167】
結果から示されることは次のとおりである:
・試験した高濃度(1.Omg/ml)の張力活性剤により、低量の例えば0.01mg/mlを加えることによって、いくらかの有意な陽性効果は確認されたものの、有意にタンパク質の溶解度が向上した。
・張力活性剤(ポロキサマー188又はポリソルベート20を1.0又は0.01mg/mlの濃度で)を製剤に対して加えることにより僅かにr-hGH(図.2)の分解が増加する;
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は同等にr-hGH 溶解度を向上させる。
【0168】
図2は、張力活性剤を様々な濃度で含むr-hGH液体製剤及び張力活性剤を含まない製剤を+25±2℃で4週間保存した後のRP-HPLC結果を示す。
【0169】
液体多回投与製剤を平行して開発する間、ポリソルベート20は、静細菌剤の例えば、m-クレゾール及びフェノールの存在下で乳白色の懸濁の形成を誘導することが確認された。この効果により、ポロキサマー188を好適な界面活性剤として選択した。
【0170】
スクリーニング研究に由来する全体的な結論:
処方前研究の結果を次のようにまとめている:
・バッファー剤の濃度は、r-hGH脱アミド化及び溶解度に対する影響を有する;(20mM超のバッファーモル濃度により分子の分解がより多く誘導される)
・クエン酸を酸性化剤として使用することにより、10mMの酢酸バッファーとは対照的に、pHが6.0付近でより良く安定化する;
・スクロース又はマンニトールによりr-hGH溶解度が向上し、そして僅かにr-hGHの分解が高まる;
・1.0mg/ml以上の濃度で界面活性剤が存在することにより僅かにタンパク質の溶解度が向上する。
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は同等にr-hGH溶解度を向上させる;
・液体多回投与製剤を開発する目的の並行研究から、ポリソルベート20と静細菌剤の例えば、フェノール又はm−クレソールなどの不適合性が確認され、その使用が制限される。
【0171】
候補製剤
先のスクリーニング研究から、5つの候補製剤をラボスケールで製造し、そして促進(+25±2℃)及び長期(5±3℃)安定性の研究に委ねた。各製剤の1つの試料をハロブチル密封系を装える3mlのガラスカートリッジに充填した。
【0172】
5つの製剤の組成を下の表1に記載している。
【0173】
【表2】
【0174】
ラボスケールバッチ及び安定性の結果
以下の表2及び3には、最も関連する安定性指示パラメーター(r-hGH含量、類縁タンパク質、ダイマー及び高分子量物質、粒状物質及びpH)について製剤を試験することで獲得された結果を報じている。
【0175】
タンパク質に関するRP-HPLCデータを線形回帰によって統計的に分析した。獲得した結果を次のように示した。
・8.0及び12.0mg/mlにおける酢酸バッファー製剤は、クエン酸又はクエン酸バッファーを含む製剤よりも分解速度が速く;このことにより酢酸バッファーの、r-hGH製剤としての酢酸塩の使用が除外される(図3);
・候補製剤#3、#4及び#5の回帰線は、同じ勾配及び同じ切片を示した;
・クエン酸バッファー及びクエン酸塩は分解速度が類似している;
・r-hGH濃度はかかる分解について関連する役割をしない(図4)
【0176】
ラボスケール候補製剤分解速度が様々である理由は、製剤間のpHの差異による。酢酸バッファー製剤、並びにクエン酸を酸性化剤として含む製剤は、1月保存の後パラメーターの有意な増加(図5(+25℃での安定性)及び(図6(+4℃での安定性))を示した。pHと脱アミド化速度の間の関係は当業者に周知であり、そしてそれは、この分解を減らすために最も重要な、調節のためのパラメーターである。クエン酸バッファーを伴う製剤は安定なpHを有し、それは、当該製剤が他に比べてより良い安定性が有ることの説明となりうる。
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】
加えて、r-hGH含量に関するSE-HPLCは、直線回帰モデルによって 統計的に解析した結果である。結果を次のとおり示す:
・統計的に有意な差違はラボスケールバッチの間ではなく且つ統計的に有意な傾向は安定性期間に渡り確認されなかった。表4及び5において、統計的結果を報じている。
【0180】
【表5】
【0181】
【表6】
【0182】
更に、候補製剤間でパラメーター粒状物質について差違が確認されなかった。
【0183】
結論
5つの候補製剤に対する安定性研究により、r-hGHの分解速度をコントロールするためのpHの重要な役割を確認した。従って、以下の製剤をパイロットスケールでの生産のために選択した。
【0184】
【表7】
【0185】
賦形剤
上に記載した製剤開発で、液体r-hGH製剤の安定化に必要な賦形剤を決定した。これらの賦形剤を:
・機能
・選定の濃度
・薬種モノグラフとのコンプライアンス
を説明するために記載している。
【0186】
スクロース
スクロースの機能は、等張環境を創り出すこと及びタンパク質を安定化させることである。完成製品のために選択されるスクロースの濃度は60.0mg/mlである。
【0187】
使用したスクロースはUSP及びPh.Eurに適合している。
【0188】
クエン酸バッファー
10mMのクエン酸を、水酸化ナトリウム溶液の添加によって、pH5.8〜6.2に調節し、脱アミド化したタンパク質の形成を減らししかも適度な溶解性を保つ。
【0189】
クエン酸バッファーはPh.Eur.及びUSPに適合している。
【0190】
ポロキサマー188
ポロキサマー188を、r-hGHの溶解度を高めそして粒状物質の形成を避けるために使用している。
【0191】
1.5mg/mlの濃度を選択した。何故ならそれは、かかるタンパク質の溶解度を高めることにおいて最も有効であるからだ。
【0192】
使用したポロキサマー188は、USP及びPh.Eurに適合する。
【0193】
注射のための水
全ての賦形剤を、所望の濃度でWFI中に完全に溶かしている。
【0194】
使用しWFIはUSP及びPh.Eurに適合する。
【0195】
実施例4:製剤開発
適切な処方前研究及び安定性の評価により、ラボスケールバッチで使用可能であることがもたらされ、最終製剤を選択した。
【0196】
物理化学的及び生物学的特性
pHの効果
pHの効果を確かめるために行った研究に基づいて、pHはr-hGHの安定性に対する有意なパラメーターであることを確認した。特に、5.8〜6.2のpH範囲は、r-hGHの主たる分解経路の1つである脱アミド化を最小にすることができる。
【0197】
イオン強度の効果
この実験により、液体製剤中に存在するバッファー系のモル濃度の増加が、RP-HPLCによって検出されるより高い分解速度を誘導しうること並びにr-hGH溶解度を減らし且つ沈殿を誘導することを証明した。従って、バッファー系を、pHを最適にししかもr-hGH安定性に対する負の効果を最小にするために10mMの濃度で選択している。
【0198】
凝集(ダイマー及びHMW物質)
行った実験研究により、液体製剤中に存在するr-hGHは、促進(+25±2℃)又は長期条件(+5±3℃)における保存の間に凝集体を形成することがないことが示された。
【0199】
生物活性
In-vivo生物活性(下垂体切除したラットにおける体重増)をバイオアッセイによって試験した。新に開発した液体製剤並びに凍結乾燥した製剤の両方に関する比活性結果は、比活性に関して確立された承認基準に適合した。
【0200】
分解プロファイル
広範囲にわたる特性決定を行い、新に開発した液体製剤の分解プロファイルと現在承認されている凍結乾燥製剤の分解特性プロファイルを比較した。得られた結果により、r-hGHの同じ分解プロファイルが保存の間に獲得され、液体製剤に関するRP-HPLCにより、より多量の類縁タンパク質が同定されたことが証明された。
【0201】
実施例5:製造方法の開発
この液体製剤の製剤方法は、次の段階からなる:
・液体製剤の化合物化;
・0.45μm膜による前ろ過
・0.22μm膜による滅菌ろ過
・カートリッジへの充填
・各カートリッジのクリンピング。
【0202】
これは、この医薬形態のための標準的な製造方法である(次のページのフローチャートも参照のこと)。最も重要な方法段階は、無菌ろ過による滅菌である。液体単回投与量製剤を開発する間、化合物化した薬物製品溶液は、ろ過前に僅かにオパール色を幾分呈していたことを確認している。このオパール色は、おそらく、弱酸性のpHにおいて溶解度が低いことに関連する天然のr-hGHの幾分の沈殿が理由である。0.22μmの膜を介する滅菌ろ過が、製品製造方法の間に困難且つ危険性のある段階となることを避けるために、0.45μm膜を介する前ろ過を加えた。
【0203】
【表8】
【0204】
従って、製造設備に関連する制約を考慮して、前ろ過段階を加えることが滅菌ろ過する前に溶液を清澄化するために適しているかどうかを調べる目的で研究を行った。その制約とは:
15g/cm2を超えないろ過率
1.5atmを超えない窒素圧
である。
【0205】
前ろ過段階を調べるために使用した製剤の組成を表6に報じている。
【0206】
【表9】
【0207】
研究結果は次のとおりである:
・17g/cm2の化合物を、1atmで0.45μmの膜上でろ過できうる。
・31g/cm2の前ろ過物を、1atmで0.22μmの膜上でろ過できうる。
【0208】
この研究により、0.45μm膜、1atmの窒素加圧を使用する前ろ過段階を導入することは、0.22μmの膜による無菌ろ過をする前にr-hGH液体化合物溶液を清澄化するために適していることが結論づけられた。薬物製品製造者によって提示される15g/cm2のろ過率は前ろ過又は無菌ろ過をするためにも適している。
【0209】
以下のフローチャートでは、パイロットスケールの製造方法を要約する。
【0210】
実施例6:多回投与量投与のための液体GH製剤の開発
薬物物質と賦形剤の適合性
ここで結果を下のようにまとめている:
・r-hGH主分解産物は脱アミド化形態であり、そしてこれはpHに関連する。6.0周辺のpH値がかかる分解を最小化する;
・溶解度はpH、静細菌剤の存在及び機械的ストレスによって影響を受ける更なる重要なパラメーターである。
r-hGHの沈殿を避けるために、製剤成分のなかで適切な平衡を発見することは必須である。
【0211】
バッファー剤の選択
液体製剤中に加えるために、バッファー剤の選択を、以下のことを考慮して評価した:
・脱アミド化速度に対するバッファー剤濃度の効果;
・タンパク質溶解度に対するバッファー剤濃度の効果;
・pH安定性に対するバッファー剤濃度の効果
【0212】
薬物物質(6.0及び12.0mg/mL)及びバッファー剤(酢酸及びクエン酸)を含むいくつかの溶液を製造してr-hGH試験を誘導するために振動ストレス試験に更に;同溶液を40±2℃でも分解経路を加速させるために保存した。
【0213】
結果を次のとおり示した:
・バッファー剤濃度はr-hGH脱アミド化に対する相当する影響を有する;モル濃度が高くなれば、分解が高くなる;
・バッファー剤濃度はr-hGH溶解に対する相当する影響を有する;モル濃度が高くなれば、溶解度が下がる。
・10mM酢酸バッファーに対して、クエン酸を酸性化剤として使用することでpHが6.0付近によりよく安定化する。
【0214】
等張剤の選択
薬物物質の2つの異なる等張剤(マンニトール及びスクロース)との適合性を、そのr-hGH溶解度及び脱アミド化速度に対する影響を評価することにより行った。
【0215】
薬物物質(6.0及び12.0mg/mLで)及びバッファー(酢酸及びクエン酸)を含むいくつかの溶液を製造して、r-hGHの沈殿を誘導するために振動ストレス試験に委ねた;同溶液を、分解経路の促進をするために、+40±2℃でも保存した。
【0216】
結果により次のことが示される:
・スクロース又はマンニトールはr-hGH溶解度を向上させる;
・マンニトール又はスクロースを製剤に対して添加することで、r-hGHの分解を僅かに高まる
【0217】
界面活性剤の選択
6.0及び12.0mg/mLにおいていくつかの製剤を製造して、r-hGH沈殿を誘導するために、振動ストレス試験に委ねた;同溶液を、分解経路を促進するために、+25±2℃でも保存した。
【0218】
結果により次のことが示された:
・試験した、より高界面活性剤濃度(1.0mg/ml)は、有意にタンパク質溶解度を高めたが、低量の例えば0.01mg/mlを加えることでもいくらか陽性効果が確認された。
・界面活性剤を製剤に対して加えることで、r-hGHの分解が僅かに増加した。
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は同等にr-hGH溶解度を向上させた。
【0219】
静細菌剤の選択
r-hGHが0.8mg/mlにおいて、0.9%ベンジルアルコール又は0.3%フェノールを含有するいくつかの製剤を製造して静細菌効率スクリーニング研究に委ねた。M−クレゾールは、その界面活性剤との不適合性の理由により試験しなかった。
【0220】
結果により次のことが示される:
・0.9%ベンジルアルコール及び0.3%フェノールはどちらも、Eu.Ph.の基準に適合する。
【0221】
前処方研究からの全体的な結論
前処方研究の結果を次のようにまとめている:
・バッファー剤濃度は、r-hGH脱アミド化及び可溶化に対して影響を有する;
・クエン酸を酸性化剤として使用することは、10mMの酢酸バッファーに対してpHを6.0付近によりよく安定化する;
・スクロース又はマンニトールはr-hGH溶解度を向上させそして有意にr-hGHの分解を高める;
・1.0mg/ml以上の濃度で界面活性剤が存在することにより、有意にタンパク質溶解度が向上し、たとえより低量、例えば0.01mg/mlを加えることでも陽性の効果が確認された;
・張力活性剤を製剤に対して加えることによりr-hGHの分解が僅かに増加する;
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は、r-hGH溶解度を同等に向上させる;
・M-クレゾールは界面活性剤と適合しない;
・0.9%ベンジルアルコール及び0.3%フェノールはEu.Phの基準Bに適合する
【0222】
候補製剤の安定性研究
前記前処方研究から、r-hGHが0.8mg/ml及び4.0mg/mlにおける、酢酸とクエン酸の両方をバッファー剤として、そしてベンジルアルコール又はフェノールを静細菌剤として含む8つの候補製剤をラボスケールで製造し、そして促進(+25±2℃)及び長期(5±3℃)安定性試験に委ねた。各製剤のサンプルをWest Pharmaceuticalブロモブチル4023/50プランジャを備えた3mLガラスカートリッジに充填した。この最初の8つの候補の第一のみ安定性試験組の間、0.8mg/mlにおいて1つの更なる製剤(10mMのクエン酸バッファー及びフェノールを含む)を製造することを決めた。9つの製剤の組成を下の表に記載している。
【0223】
【表10】
【0224】
【表11】
【0225】
候補製剤の安定性結果
候補製剤の安定性データは、+25±2℃で最大6月の促進条件及び5±3℃における12月長期条件を使用できる(表を参照のこと)。
【0226】
結果により次のことが示された:
・酢酸バッファーを含む製剤は、クエン酸又はクエン酸バッファーを含む製剤よりも安定性が少ない;
・クエン酸バッファーを含む製剤は溶液のpHをより良く安定化させる;
・前記安定期間について確認された分解経路のみがRP-HPLCによって検出可能なr-hGHの脱アミド化である;
・0.9%ベンジルアルコールを含む製剤は、均一の作用を示さず、この理由については取り下げた(discharged)。これはおそらくベンジルアルコールに様々なバッチに存在する不純物に関連するだろう;
・タンパク質濃度は分解速度に影響を与えない;
・クエン酸バッファー及びクエン酸製剤の+5±3℃において見積もられた分解速度は類似するものであり(0.7〜0.8%/月)、一方で、酢酸バッファーを含む製剤の約1.1%/月の分解速度を有する。
【0227】
上記の結果に基づいて、製造側へ技術移転するために、クエン酸バッファー及びフェノールを含む製剤を選択することを決めた。
【0228】
実施例7:多回投与量投与のための特異的製剤
多回投与量投与のための製剤を安定性及び溶解度について試験した。
【0229】
製剤6〜8(多回投与量投与)を表9に記載している。
【0230】
【表12】
【0231】
これら3つの製剤の+25℃及び+5℃における、RP-HPLCによる分解したタンパク質の%によって測定した場合の、安定性データを図7及び8にそれぞれ記載している。
【0232】
以下の結論がこの実験から導かれうる。
・0.5%フェノール製剤は、粒状物質に富みタンパク質含量が減少する;
・+0.9%BA及び+0.25%フェノール製剤について、タンパク質含量の減少は確認されない;
・25℃及び5℃における保存の間にpHが有意に増加する(6.0〜6.4−6.5);
・高分子量物質の増加はない;
・0.9%BA及び0.25%フェノール溶液において粒状物質はない。
【0233】
製剤9〜17(多回投与量投与のため)は次の通りである
【0234】
【表13】
【0235】
【表14】
【0236】
これら3つの製剤の、RP-HPLCにより分解したタンパク質の%によって測定した場合の+25℃及び+5℃における安定性データをそれぞれ図9及び10に示している。+25℃で6月の期間に渡るpH変化を図11に記載している。
【0237】
次のような結論をこの一連の結果から導くことができうる:
・タンパク質含量の減少は+5℃での安定性に渡りなかった
・酢酸製剤及びクエン酸製剤について+5℃及び+25℃での安定性に渡り、pHの有意な変化はなかった、即ち、クエン酸バッファー製剤についてと有意差はなかった。
・5℃での安定性に渡り高分子量物質の増加はなかった。
・溶液中で粒状物質はなかった。
【0238】
【表15】
【表16】
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】マンニトールもしくはスクロースを含みもしくは賦形剤を含まないr-hGH液体製剤の+25±25℃において4週間保存した後のRP-HELC結果である。
【図2】様々な濃度で界面活性剤を含むr-hGH液体製剤及び界面活性剤を含まないr-hGH液体製剤の25±2℃において4週間保存した後のRP-HPLC結果である。
【図3】+25±2℃で最大6月保存した類縁タンパク質に関するRP-HPLCによって試験したラボスケール製剤の減衰直線である。
【図4】+25±2℃で最大6月保存した類縁タンパク質に関するRP-HPLCによって試験したラボスケール候補製剤#3.#4及び#5の減衰直線である。
【図5】25±2℃で最大6月保存したラボスケール製剤のpHである。
【図6】5±3℃で最大12月保存したラボスケール製剤のpHである。
【図7】hGH多回投与製剤の5℃における安定性、製剤6(四角)、7(丸)、及び8(菱形)である。
【図8】hGH多回投与製剤の5℃における安定性、製剤6(四角)、7(三角)、及び8(丸)である。
【図9】25℃(月)における様々な多回投与製剤におけるhGHの安定性である。
【図10】5℃(月)における様々な多回投与製剤におけるhGHの安定性である。
【図11】+25℃で6月に渡る酢酸塩(四角及び菱形)、クエン酸(三角)又はクエン酸塩(半四角(half square))を含んで成る多回投与製剤のpHである。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、液体成長ホルモン(GH)製剤に関連し、そして詳細には、成長ホルモンの溶解度を有意に向上させ且つ長期に渡り粒状物質を伴わない状態を維持するヒト成長ホルモン(GH)の液体製剤に関連する。本発明は更に、かかる液体GH製剤の調製のための方法に、そしてそのある提示の形態に関連する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ソマトロピン(INN)又はソマトトロピンとしても知られているヒト成長ホルモン(hGH)は、下垂体前葉のソマトトロピン細胞によって生産され且つ分泌されるタンパク質ホルモンである。ヒト成長ホルモンは、子供における体細胞増殖及び成人における代謝において、タンパク質、炭水化物及び脂質の代謝に対するその効果を通じて重要な役割を果たす。
【0003】
ヒト成長ホルモンは、2つのジスルフィド結合(その1つは、Cys−53とCys−165の間であり、分子中で巨大なループを形成し、そして他の1つはCys−182とCys−189の間であり、C末端付近で小ループを形成する)を有する191個のアミノ酸のポリペプチド単鎖である。このアミノ酸配列を裏付けるDNA配列は、Martialら(1979)によって報じられている。精製されたhGHは、その凍結乾燥形態において白色非晶質粉末である。それは、6.5〜8.5のpHで水性バッファー中に容易に溶ける(濃度>10mg/L)。
【0004】
hGHは溶液中で、主にモノマーとして存在し、ダイマー及びより高い分子量オリゴマーとして小画分で存在している。所定の条件下で、hGHは、より高量のダイマー、トリマー及びより高量のオリゴマーを形成するために誘導されて良い。
【0005】
hGHのいくつかの誘導体が公知であり、例えば、天然に生じる誘導体、変異体及び代謝産物、主に生合成hGHの分解産物及び遺伝的方法によって生産されたhGHの人工誘導体がある。hGHの天然に生じる誘導体の1つの例は、胎盤中で発見される成長ホルモンの変異体である。遺伝子座の他のメンバーはChenら(1989)に開示されている。
【0006】
メチオニルhGHは、組換えDNA技術によって生産されたhGHの最初の形態であった。この化合物は、実際に、そのN末端において更なる1つのメチオニン残基を有するhGHの誘導体である(Goeddelら、1979)。
【0007】
20-K-hGHといわれるhGHの天然に生じる変体は、下垂体及び血流中で生じることが報じられている(Lewisら、1978;Lewisら、1980)。Glu32〜Gln46から15個のアミノ酸を欠く化合物は、メッセンジャーリボ核酸の選択的スプライシングにより生じる(DeNoteら、1981)。この化合物は、hGHの全てではないが多くの生物学的特長を共有する。
【0008】
20-Kh-GHは下垂体で生産されて血中へと分泌される。それは成人の成長ホルモン生産量約5%を占め、そして子供の成長ホルモン生産量の約20%を占める。それは、22kD成長ホルモンと同じ成長促進活性を有し、そして22kD形態と同等以上の脂質分解活性を有することが報じられている。それは、22kD成長ホルモンと同等の、成長ホルモンレセプターに対する親和性を有して結合し、そして22kDホルモンの1/10の乳腺刺激生物活性を有する。22kDのとは異なり、20k-h-GHは高インスリン活性が弱い。
【0009】
hGHの多くの誘導体は、分子のタンパク質分解解裂修飾により生じる。hGHの代謝のための主となる経路にはタンパク質分解解裂が伴う。残基130〜150の周辺のhGHの領域は、タンパク質分解解裂に対して非常に敏感であり、そしてこの領域においてニック又は欠失を有するhGHのいくつかの誘導体が報じられている(Thorlacius-Ussing、1987)。hGHの巨大ループにおけるこの領域、及びそこでのペプチド結合の解裂により、Cys53とCys165でのジスルフィド結合を介して連結している2つの鎖の生成がもたらされる。これら2鎖形態の多くは、生物学的活性が増加していることが報じられている(Singhら、1974)。ヒト成長ホルモンの多くの誘導体は、酵素の使用により人工的に生じている。酵素のトリプシン及びサブチリシンなどは、hGHを分子じゅう様々な点で修飾するために使用されている(Lweisら、1977;Griffら、1982)。かかる誘導体の1つ、2鎖同化タンパク質(2-CAP)は、トリプシンを使用することで、hGHのタンパク質分解解裂を調節することにより形成されている(Beckerら、1989)。2-CAPは、全hGH分子の成長促進活性が大まかに保たれていてそして炭水化物代謝に対する効果の大部分が無効にされていることにおいて、完全なhGH分子と非常に異なった生物学的特徴を有することが発見されている。
【0010】
タンパク質中のアスパラギン及びグルタミン残基は、適当な条件下で脱アミド化反応に対して感受性である。複数のhGHがこの種類の反応を受け、Asn-152のアスパラギン酸への転換がもたらされることが示されており、そしてまた、程度は低いが、Gln-137のグルタミン酸への転換も示されている(Lewisら、1981)。脱アミド化したhGHは、酵素サブチリシンによるタンパク質分解解裂に対する感受性が変わっていることが示されており、このことは、脱アミド化は、hGHのタンパク質分解解裂を指示する上で生理学的に有意でありうることを示唆している。生合成hGHは、所定の保存条件下で分解し、異なるアスパラギン(Asn-149)における脱アミド化をもたらすことが知られている。これは、脱アミド化の一次部位であるが、Asn152における脱アミド化も確認されている(Beckerら、1988)。Gln137における脱アミド化は生合成hGHにおいては報じられていない。
【0011】
タンパク質中のメチオニン残基は酸化に対して感受性であり、主にスルホキシドに対して感受性である。下垂体により誘導されたhGH及び生合成hGHのどちらもMet-14及びMet-125でのスルホキシド化を受ける(Beckerら、1988)。Met-170おける酸化は、下垂体誘導物において報じられているが、生合成hGHにおいては報じられていない。脱アミドhGH及びMet14スルホキシドhGHはどちらも完全な生物活性示すことが発見されている(Beckerら、1988)。
【0012】
hGHのトランケーション形態は、酵素の作用によって又は遺伝的方法によってのいずれかの作用により生産されている。トリプシンの作用を調節して生じた2-CAPは、hGHのN末端において最初の8つの残基が除去されている。hGHの他のトランケーション形態は、適切な宿主中で発現前に遺伝子を修飾することによって生産されている。最初の13個の残基は、ポリペプチド鎖が解裂されておらず、固有の生物学的特徴を有する誘導体をもたらすために除去されている(Gertlerら、1986)。
【0013】
ヒト成長ホルモンは本来、死体の下垂体から獲得されていたが、これらの調製物は、電気泳動的に均一ではなく、そして抗体が50%のオーダーの調製物で処理した患者の血清中に出現し、免疫源性は不活性成分に帰属する。組換えDNA技術により、多数の異なる系においてhGHを無限に提供するための生産が可能になった。培養培地からのhGHの精製は、少量の汚染性タンパク質が存在することによってのみ促進される。実際に、hGHはラボスケールで逆相HPLCカラム上での単一の段階によって精製されて良いことが示されている(Hsuingら(1989))。
【0014】
組換えヒト成長ホルモンrhGHは、Serono International S.A.によって、SEROSTIM(登録商標)として生産されており、その製品は、AIDS患者における体重減少及び体力消耗を治療するために、迅速FDA承認が与えられている。SAIZEN(登録商標)は、子供のGH欠損症、女児のターナー症候群、並びに子供の慢性腎疾患のために必要な組換えヒト成長ホルモンである。PROTROPIN(登録商標)はGenentech,Inc(South SanFrancisco,CA)によって生産されており、天然配列hGHとは構造において僅かに異なり、N-末端に更なるメチオニン残基を有する。組換えhGHは、凍結乾燥形態において、hGH+更なる賦形剤の例えば、グリシン及びマンニトールを含むバイアルとして市販されている。同伴希釈用バイアルが供されており、患者が所定用量を投与する前に所望の濃度に製品を再生することができる。組換えhGHは、周知の態様の例えば、予め充填されている注射器としても市販されている。
【0015】
一般に、組換え天然配列hGH、組換えN-メチオニル-hGH、又はヒトにおいて下垂体が誘導した物質の薬理学的又は生物活性おいて有意な違いがないことが確認されている(Mooreら、1988;Jorgenssonら、1988)。
【0016】
hGHが、治療剤として商業上入手可能であるために、安定な製剤が調製されなければならない。かかる製剤は、適切な保存時間に渡り活性を保つことができ且つ患者によって投与のために許容されなければならない。
【0017】
ヒトGHは様々な方法で処方されている。例えば、米国特許第5、096,885号は、hGHに加えて、グリシン、マンニトール、バッファー及び任意に非イオン性界面活性剤を含んで成り、hGH:グリシンのモル比が1:50である、hGHの医薬的に許容できる安定な製剤を開示している。
【0018】
WO93/19776は、バッファー物質としてクエン酸及び任意に成長ホルモンの例えば、インスリン様成長因子又は上皮成長因子、アミノ酸の例えば、グリシン又はアラニン、マンニトール又は他の糖アルコール、グリセロール及び/又は防腐剤の例えば、ベンジルアルコールを含んで成るGHの注射可能製剤を開示する。
【0019】
WO94/101398は、hGH、バッファー、非イオン界面活性剤、及び任意にマンニトール、天然塩及び/又は防腐剤を含むGH製剤を開示する。
【0020】
EP-0131864は、分子量8500Da超を有するタンパク質の水性溶液を開示しており、それは、安定化剤として、直鎖状ポリオキシアルキレン鎖を含む界面活性剤を加えることによって界面における吸着から保護されており、タンパク質の変性及び沈殿に対して保護されている。
【0021】
EP-0211601は、成長促進ホルモン及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン単位を含み且つ平均分子量が約1,100〜約40,000Daを有するブロックコポリマーの水性混合物を含んで成り、成長促進ホルモンの流動性及びその生物活性を投与まで維持する成長促進製剤を開示している。
【0022】
WO97/29767は、成長ホルモン、クエン酸三ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、ベンジルアルコール、プルロニックF-68を含んで成り、pH5.6を有する液体製剤を開示する。
【0023】
US5,567,677号は、ヒト成長ホルモン、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、グリシン、マンニトール、任意にベンジルアルコールを含んで成る液体製剤を開示する。
【0024】
hGHの医薬製剤は、特に溶液中で不安定になりがちである。化学的に分解した物質の例えば、脱アミド化した又はスルホキシル化された形態のhGHが生じ、そしてダイマー又はより高分子量の集合化物質が、物理的不安定性によりもたらされうる(Beckerら(1988);Beckerら、1987;Pearlman及びNguyen(1988))。
【0025】
hGHが溶液中で不安定である結果、hGHの医薬製剤は、一般に、使用前に再生しなければならない凍結乾燥形態である。再生は通常、医薬的に許容できる希釈剤の例えば、注射のための滅菌水、滅菌生理食塩水又は適切な無菌の医薬的に許容できる希釈剤によって行われている。
【0026】
hGHの再生溶液は、化学的且つ物理的分解反応を最小にするために好適に4℃で保存されているが、しかし、かかる保存条件下で、最大で14日に渡る場合、いくらかの分解が生じる。
【0027】
液体形態において提供されているhGHの医薬製剤であって、特に長期に渡り沈殿もしくは凝集もしくは任意の他の凝集物質の形成を伴わずにhGHの安定性を維持するものは、特に有利だろう。
【0028】
従って、本発明の目的は、不都合な粒子状物質の形成をもたらさず且つ長い保存時間を有する成長ホルモンの液体製剤を提供することである。
【発明の開示】
【0029】
発明の概要
成長ホルモンの溶解度は、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールを液体製剤に対して加えることによって有意に増加させることができうる。液体成長ホルモン製剤は、室温及び+5℃(もしクエン酸バッファーが使用されていれば)で保存されていて良い。
【0030】
従って、本発明の第一の観点は、液体製剤であって、
成長ホルモン又は内因性hGHの放出を刺激するかあるいは活性を増強する物質;
ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;
クエン酸バッファー;及び
安定化剤、
を含んで成る液体製剤に関連する。
【0031】
本発明の第二の観点は、本発明の液体製剤を生産するための方法に関連する。
【0032】
第三の観点において、本発明は、ある成長ホルモンの単回投与又は多重投与をするための本発明の製剤の使用に関連する。
【0033】
本発明の他の観点は、本発明の液体製剤のある提示形態に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明の構成において、成長ホルモンの溶解度を有意に改善し、よって、実質的に粒状物質を伴わない溶液を獲得することを可能にする特異的な集団が発見されている。
【0035】
バッファーとしてクエン酸を伴うことにより液体製剤中での成長ホルモンの安定性が長期に渡る向上が達成されたことが更に発見されている。
【0036】
従って、本発明は、液体製剤であって:
成長ホルモン、又は内生hGHの放出を刺激するもしくは活性を増強する、物質;
ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;
クエン酸バッファー;及び
安定化剤、
を含んで成る液体製剤に関連する。
【0037】
本発明に従い処方されて良い成長ホルモンは、製剤の意図された使用に基づいて、任意の生物種の例えば、ウシ、ブタ、ウマ又はネコに由来しうる。内生hGHの放出を刺激又は活性を増強する物質は、例えば、成長因子放出ホルモンである。
【0038】
好適に、次の物質が本発明に従い使用されて良くそれは:
a)ヒト成長ホルモン;
b)hGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)の断片;
c)(a)又は(b)と70%以上の同一性を有し且つhGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)又は(b)の変異体;
d)穏和なストリンジェント条件下で(a)又は(b)をコードする天然DNA配列の相補体に対してハイブリダイズするDNA配列によってコードされ且つhGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)又は(b)の変異体;又は
e)hGHレセプターに対してアゴニスト活性を有する(a)、(b)、(c)又は(d)の塩又は機能的誘導体、
である。
【0039】
ヒト成長ホルモンを含んで成る製剤が本発明により好まれている。
【0040】
用語「ヒト成長ホルモン」又は「hGH」は、本明細書中で使用されている場合、上記のように、天然に生じる誘導体及び合成誘導体が挙げられ、限定されないが、20kD及び22kDヒト成長ホルモン、GH-V、及び「発明の背景」に詳細を記載したような、成長ホルモン遺伝子座の他のメンバーが挙げられる。
【0041】
hGHは、天然に生じるヒト成長ホルモンであって良い、又は好適に組換えhGHであって良い。組換えGHは、真核又は原核宿主の任意の適切な宿主のいずれかにおいて発現しうる。大腸菌は、例えば、hGHの発現のために特に適した宿主である。酵母、昆虫、又は哺乳類細胞は更に組換え成長ホルモンの発現に適している。好適に、hGHはヒト又は動物細胞中、例えばチャイニーズハムスターオバレイ(CHO)細胞中で発現させられる。
【0042】
用語「hGH」又は「成長ホルモン」とは、本明細書中で使用されている場合、機能的誘導体、断片、変異体、類似物、又は成長ホルモンの生物活性を維持している、即ち、成長ホルモンに対してアゴニストとして働く塩をも含む。他の用語において、それらは成長ホルモンレセプターに対して結合してレセプターのシグナル伝達作用を開始することができる。
【0043】
用語「機能的誘導体」、又は「化学誘導体」とは、本明細書中で使用されている場合、当業者に公知の手段によってN末端又はC末端集団の残基上で側鎖として生ずる機能的集団から調製されて良い誘導体を網羅し、そしてそれらは医薬的に許容でき、そして本明細書中に記載のようにhGHの生物活性、即ち、hGHレセプターを結合させてレセプターシグナル伝達を破壊することなく、そしてそれを含む組成物に対して毒性の特性を付与することはない限り本発明中に含まれて良い。誘導体は、化学成分の例えば、炭水化物又はリン酸塩残基を有して良く、但し、かかる誘導体は、hGHの生物活性を維持し且つ医薬的に許容できる。
【0044】
例えば、誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は一次もしくは二次アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル成分(例えば、アルカノール又はカルボキシアロイル基)により形成されたアミノ酸残基のN-アシル誘導体もしくは遊離アミノ基又はアシル成分により形成された遊離ヒドロキシ基(例えば、セリル又はセレノイル残基)のO−アシル誘導体を含んで良い。かかる誘導体としては、例えば、ポリエチレングリコール側鎖も挙げられ、それは抗原部位をマスクしそして体流体中での分子の滞留時間を延長しうる。
【0045】
錯化剤により誘導体化されて良い又はそれと組み合わされて良い成長ホルモンは長持ちする。従って、本発明の好適な実施態様は、ヒト成長ホルモンのPEG化バージョンに関連する。体内での長期持続する活性を示すために遺伝子操作された成長ホルモンも本発明のhGH誘導体の例である。
【0046】
N-末端においてアシル化されているhGHが単離及び同定されている(Lewisら、1979)。もしも、アシル化が調節的な役割を果たすか又は単に精製による人的な結果であるかどうかは不明である。しかし、この分子はGH活性を、他のhGH誘導体と類似の態様で示すことが期待されている。従って、好適な実施態様において、本発明は、そのN-末端でアシル化されている成長ホルモンに関連する。
【0047】
好適に、本発明の医薬製剤は、鎖間ジスルフィド結合により連結したジスルフィドダイマー、共有結合不可逆的ジスルフィドダイマー、非共有結合ダイマー、及びそれらの混合物からなる群から選択されたヒト成長ホルモンのダイマーを含んで成る。
【0048】
用語「塩」とは、本明細書中、カルボキシル基の塩及びhGH分子又はその類似物のアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当業者に公知の手段によって形成されて良く、そして無機塩の例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、銅又は亜鉛の塩など、並びにアミンなどの有機塩基により形成された塩の例えば、トリハロメタン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、プロカインなどが挙げられる。酸付加塩の例えば、鉱酸による塩の例えば、塩化水素酸又は硫酸、及び有機酸による塩の例えば、酢酸又はシュウ酸が挙げられる。当然、全てのかかる塩は、本発明に対応するhGHの生物活性、即ち、hGHレセプターに対して結合してレセプターシグナル伝達を開始する能力を維持していなければならない。
【0049】
更なる好適な実施態様において、本発明はヒト成長ホルモンの断片に関連する。
【0050】
本発明の成長ホルモンの「断片」とは、所望の生物活性を維持するより短いペプチドである、分子の任意の亜集団を意味する。断片は、アミノ酸を、hGH分子のいずれかの末端から除去し、そしてその残りをhGHレセプターアゴニストとしてのその特性について試験することによって調製されて良い。アミノ酸をポリペプチドのN-末端又はC-末端のいずれかからある時間に除去するためのプロテアーゼが公知であり、そして所望の生物活性を維持する断片をそのようにして特定することには、慣用の実験のみが関わる。
【0051】
好適に、本発明のhGH断片は、欠失がhGHの生物活性、即ち、hGHレセプターに対する結合及び当該レセプターを介してシグナル伝達を開始することに影響を及ぼさない限り内部欠失を有していて良い。本発明の好適である断片は、グルタミン酸(Glu)32〜グルタミン酸46にかけての15個のアミノ酸を欠いている。
【0052】
hGH断片は更にC-末端又はN-末端においてトランケーションされて良い。ヒト成長ホルモンの最初の8個のN-末端残基又は最初の13個のN-末端残基を欠くトランケーションされたhGHも本発明にかかり好適である。
【0053】
単鎖C-末端hGH断片は、hGHの生物活性を維持することが記載されている(米国特許第5,869,452号を参照のこと)。従って、hGHのC-末端断片は、本発明にかかり好適である。断片hGH177-191(hGHの残基177〜191(LRIVQCRSVEGSCGF)を少なくとも含んで成る)は、特に本発明において好適である。更に好適なものは、このペプチドの誘導体であり、例えば、US6,335,319又はWO99/12969に記載のペプチド変異体、例えば、環状ペプチドである。
【0054】
更に、ぺプチドであって、hGHレセプターアゴニスト活性を有し、hGHであり、その類似物又は変異体、塩、機能的誘導体又はそれらの断片であるペプチドは、hGHポリペプチドに隣接する更なるアミノ酸残基をも含む。生じる分子が、コアポリペプチドのhGHレセプターアゴニストに結合能力を維持している限り、当業者は慣用の実験によって、かかる隣接する残基がコアペプチドの塩基性及び新規特性、即ち、そのレセプターアゴニスト特性に影響を及ぼすかどうかを特定することができる。
【0055】
更に、本発明の好適なGH変異体の例は、メチオニンヒト成長ホルモン(Met-h-GH)であり、それはヒト成長ホルモンのN-末端において更なるメチオニン残基を有する。
【0056】
本発明の好適なhGHの変異体は、メチオニルhGHを含んで成り、それは更なるメチオニン残基をそのN-末端に有するヒト成長ホルモンである。更に好適な変異体は、Glu32〜Glu46の15個のアミノ酸残基を欠いているヒト成長ホルモンである。
【0057】
本発明のヒト成長ホルモンの「変異体」とは、タンパク質全体又はその断片のいずれかに対して実質上類似している分子を意味する。変異体は、「ミューテイン」ともよばれている。変異体は、hGHの異性体の例えば、選択的スプライシングによって生じた変異体であって良い。変異体(ポリ)ペプチドは、当業者に周知の方法を使用することで、変異体ペプチドの直接化学合成によって調製されて良い。当然、変異体ヒト成長ホルモンは、少なくともhGHと類似するhGHレセプター結合活性及びシグナル伝達開始活性を有するだろうし、それ故、hGHに対して類似する活性を有すると予測されている。
【0058】
ヒト成長ホルモンのアミノ酸配列変異体は、DNAにおける突然変異によって調製されて良く、それは、合成ヒト成長ホルモン誘導体をコードする。かかる変異としては、例えば、アミノ酸配列内での残基の欠失、挿入及び置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意組み合わせも最終構築体に到達するために行われて良く、但し、最終構築体が所望の活性を有する。明らかに、変異体ペプチドをコードするDNA中で生じる突然変異が、読み枠を変えることがあってはならない。
【0059】
遺伝子レベルで、これらの変異体は、ペプチド分子をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異によって調製され、従って、変異体をコードするDNAを生産し、その後組換え細胞培養においてDNAを発現するように調製されて良い(Adelmanら、1983によって例示されているように)。変異体は典型的に、非変異体ペプチドと少なくとも同じ性質の生物学的活性を示す。
【0060】
本発明のヒト成長ホルモンの「類似物」とは、非天然の分子を意味し、それは実質上典型的に、分子全体又はその活性断片のいずれかに類似する。本発明中で有用なヒト成長ホルモンの類似物は、GH活性を示すだろう。
【0061】
本発明のヒト成長ホルモンにおいてなされうる典型的な置換の種類は、様々な生物種の相同タンパク質間でのアミノ酸変化の頻度及び変化の分析に基づいて良い。かかる分析に基づいて、本明細書中、保存的置換が、次の5つの集団のうちの1つ以内との交換体として定義されて良い。
【0062】
【化1】
【0063】
前記集団内で、以下のような置換が「非常に保存的」であると考えられている。
【0064】
【化2】
【0065】
半保存的置換は、上記集団(I)〜(IV)の2つの集団間での変換であると定義されており、それは超集団(A)((I)、(II)、及び(III)を含んで成る)、又は超集団(B)(上記(IV)及び(V)を含んで成る)に限定されている。置換は、遺伝的にコードされたアミノ酸又は更に天然に生じるアミノ酸に限定されない。エピトープがペプチド合成によって調製されている場合、所望のアミノ酸が直接使用されて良い。代わりに、遺伝子によりコードされたアミノ酸は、それを、選定の側鎖又は末端残基と反応することができる有機誘導剤と反応させることによって修飾させられて良い。
【0066】
最も共通するシステニル残基は、αハロアセテート(及び対応するアミン)の例えばクロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応し、カルボキシメチル誘導体又はカルボキシアミドメチル誘導体を与える。システニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾール)プロピオン酸、クロロアセチルフォスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル−2−ピリジニルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によっても誘導体化されている。
【0067】
ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0においてジエチルプロカルボネートとの反応によって誘導体化されており、何故ならこの剤はヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるからだ。パラブロモフェナシルブロミドも有用であり;この反応は、好適にpH6.0で0.1Mのカコジル酸ナトリウム中で行われて良い。
【0068】
リジン残基及びアミノ末端残基は、コハク酸又は他のカルボン酸無水物と反応している。これらの剤による誘導体化は、リジン残基の電荷を反転させる効果を有する。αアミノ酸含有残基を誘導するための他の適切な剤としては、イミドエステルの例えば、メチルピコリンイミデート;ピリオキサールリン酸;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア;2,4−ペンタンジオン/及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0069】
アルギニン残基は、1又は複数の常用の試薬、とりわけ、フェニルグリオキサール;2,3-ブタンエジオン;及びニンヒドリンとの反応によって修飾されている。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基の高pKaが理由で、反応はアルカリ条件下で行われることが必要となる。更に、これらの残基は、リジンの基、並びにアルギニンεアミノ基と反応しうる。
【0070】
チロシン残基の特異的修飾はそれ自体、大々的に研究されており、特に、芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応によってスペクトル標識をチロシン残基中に導入することにおける注目を伴っている。最も共通して、N−アセチルイミダゾール及びテトラニトロメタンも、O−アセチルチロシル物質及びε−ニトロ誘導体をそれぞれ形成するために使用されて良い。
【0071】
カルボキシル側鎖集団(アスパルトイル又はグルタミル集団)は、カルボジイミド(R'N−C−N−R')の例えば、1−シクロヘキシル−3−[2−モルホリニル−(4−エチル)]カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応によって選択的に修飾されて良い。更に、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラジニル及びグルタミニル残基へと転換されて良い。
【0072】
グルタミニル及びアスパラジニル残基は、対応するグルタミル及びアスパルチル残基へと頻繁に脱アミド化されて良い。代わりに、これらの残基は、穏和な酸性条件下で脱アミド化されて良い。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲内である。
【0073】
本発明において使用するためのhGHの類似物を獲得するために使用されて良いタンパク質におけるアミノ酸置換体の生産の例はMarkらの米国特許第RE33,653号;4,959,314号;4,588,585号及び4,737,462号、Kothsらの5,116,943号、Namenらの4,965,195号;及びLeeらの5,017,691号並びに米国特許第4,904,584号に提示されたリジン置換タンパク質(Shawら)中に提示されているなどに示された公知の方法段階の全てが含まれる。更に、成長ホルモン変異体は、例えば、米国特許第6,143,523号(Cunninghamら)に記載されている。
【0074】
本発明にかかり使用されて良いヒト成長ホルモンレセプターに対して結合し且つシグナル伝達を開始させる物質は特に、米国特許第5,851,992号;5,849,704号;5,849,700号;5,849,535号;5,843,453号;5,834,598号;5,688,666号;5,654,010号;5,635,604号;5,633,352号;5,597,709号;及び5,534,617号などにおいて開示された、刊行物中で公知の成長ホルモン類似物及び模倣物質でもある。
【0075】
好適に、hGH変異体又は類似物は、コア配列を有し、それは天然配列又はその生物活性断片の配列と同じであり、それは天然アミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有し、そしてその生物活性を維持する。一層好適に、かかる配列は天然配列に対して80%以上の同一性、90%以上の同一性、又は最も好適に95%以上の同一性を天然配列に対して有する。
【0076】
「同一性」とは、配列を比較することによって特定された、2以上のポリペプチド配列又は2以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般に、同一性とは、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド配列それぞれの、比較される配列の全長に渡る、正確なヌクレオチド対ヌクレオチド又はアミノ酸対アミノ酸の対応を意味する。
【0077】
正確な対応がない場合の配列に関して、「%同一性」が特定されて良い。一般に、比較される2つの配列は、配列間での相互関係を最大に得るように並べられている。これには、配列の1つ又は両方のいずれかにおいて、アライメントの程度を高めるために「ギャップ」を入れることを含んで良い。%同一性は、比較される各配列の全長に渡り特定(いわゆるグローバルアライメント)されて良く、それは特に同じ又は非常に類似する長さの配列に対して適しており、又はより短い、規定の長さ(いわゆるローカルアライメント)のために適しており、即ち同じではない長さの配列のために一層適している。
【0078】
2以上の配列の同一性及びホモロジーを比較するための方法が当業者に周知である。従って、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 9.1(Devereux Jら、1984)において入手可能である、例えばプログラムBESTFIT及びGAPが、2つのポリヌクレオチド間での%同一性並びに2つのポリペプチド配列間での%同一性及び%ホモロジーを特定するために使用されて良い。BESTFITは、Smith及びWatermanの「ローカルホモロジー」(1981)を使用し、そして2つの配列間での最も類似性のある単一の領域を発見する。配列間での同一性及び/又は類似性を特定するための他のプログラムは当業界でも公知であり、例えば、BLASTファミリーのプログラム(Altschul S F et al, 1990, Altschulら、1997, www.ncbi.nlm.nih.govにおけるNCBIのホームページを介してアクセス可能)及びFASTA(Pearson WR, 1990; Pearson 1988)が挙げられる。
【0079】
本発明の変異体又はミューテインのための好適な変化とは「保存的」置換として知られていることである。成長ホルモンポリペプチド又はタンパク質の保存的アミノ酸置換には、メンバー間での置換は分子の生物機能を保存するだろう十分に類似する物理化学的特性を有する集団の中の同義アミノ酸を含みうる(Grantham 1974)。アミノ酸の挿入及び欠失は、特にもし、挿入又は欠失が少数個、例えば、30個以下、及び好適には10個以下のアミノ酸を伴い、そして機能的コンフォメーションに対して致命的であるアミノ酸の例えばシステイン残基を除去又は置換しないなら、それらの機能を変化させること無く上記配列において作られて良いことが明らかである。かかる欠失及び/又は挿入によって生産されたタンパク質及びミューテインは、本発明の範囲内である。
【0080】
本発明の類似物又は変異体は、以下の手順に従い特定されても良い。天然配列のDNAは従来技術に対して公知であり、そして刊行物中で発見される(Martialら、1979)。任意の核酸の例えば、DNA又はRNAによってコードされるポリペプチドは、天然DNA又はRNAの相補体に対して、ストリンジェント条件下又は穏和にストリンジェントな条件下で、ポリペプチドが天然配列の生物活性を維持する限り、本発明の範囲内である。
【0081】
ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーション実験において使用される温度の関数であり、ハイブリダイゼーション溶液中の一価陽イオンのモル及びホルムアミドの%の関数である。任意の条件を伴うストリンジェンシーの程度を特定するために、当業者は最初に、DNA-DNAハイブリッドの融解温度Tmとして表した100%同一性のハイブリッドの安定性を特定するためのMeinkothら(1984)の等式:
Tm=81.5℃+16.6(LogM)+0.41(%GC)−0.61(%形成)−500/L
(式中、Mは一価陽イオンのモルであり、%GCは、DNA中のG及びCヌクレオチドの%であり、%形成はハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの%であり、そしてLは、塩基対中のハイブリッドの長さである)使用する。各1℃について、Tmは、100%同一性ハイブリッドについて計算されたものから下がり、許容されるミスマッチの量は、1%ごと上がる。従って、もし任意の特定の塩及びホルムアミド濃度においてハイブリダイゼーション実験のために使用されるTmは、Meinkothの等式に従い、100%ハイブリッドについて計算されたTmよりも10℃低く、最大約10%のミスマッチがあってさえもハイブリダイゼーションは生じるだろう。
【0082】
本明細書中で使用された場合、高ストリンジェント条件は、最大で15%の配列分散を寛容できるものであり、一方で、穏和なストリンジェント条件とは、最大で20%の配列分散を許容できるものである。限定ではなく、高ストリンジェント(ハイブリッドの計算したTmよりも12〜15℃下)及び穏和(ハイブリッドの計算したTmよりも15〜20℃下)条件の例は、2×SSC(標準クエン酸塩類溶液)及び0.5%SDSの洗浄溶液を、ハイブリッドの計算したTmより下の適度な温度で使用する。ストリンジェントの最終的な条件は、特に、もし使用されるハイブリダイゼーション条件が、安定なハイブリッド伴って、安定性が少ないハイブリッドを形成するものであれば特に洗浄条件が理由である。より高いストリンジェントにおける洗浄条件により安定性が少ないハイブリッドが除去される。上記高ストリンジェント条件〜穏和なストリンジェント洗浄条件と共に使用されて良い共通のハイブリダイゼーション条件は、6×SSC (又は6×SSPE)、5×Denhardt試薬、0.5%SDS、100μg/ml変性、断片化サケ精子DNAの溶液中で、温度がTmよりおよそ20〜25℃下でのハイブリダイゼーションである。もし混合プローブが使用されていれば、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)がSSCの代わりに使用されて良い(Ausubel,1987〜1998)。
【0083】
本発明は、ヒト成長ホルモン誘導体を調製するための組換え方法を供し、これらの誘導体は、当業者に周知の常用のタンパク質合成方法によって調製されて良い。
【0084】
本発明の製剤は、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールを含んで成る。このポリマーは非イオン界面活性剤である。本明細書中、界面活性剤は、「テンシオアクチブ(tensioactive)」又は「テンシオアクチブ剤(tensioactive agent)」ともよばれうる。更に好適な実施態様において、製剤はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールを0.5〜5mg/mlもしくは1〜2mg/mlの範囲もしくは1.5mg/mlの濃度で含んで成る。
【0085】
好適な製剤において、界面活性剤はプルロニックポリオールの例えば、F68である。プルロニックF68は本発明にかかり非常に好適である。
【0086】
界面活性剤プルロニックF68(BASF、Poloxamer188としても知られている)によりGHを処方することによって、安定な製剤が獲得され、それにより沈殿、凝集又は任意の種類の任意の粒状物質の生成が避けられる。
【0087】
プルロニックF68は、酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)のブロックコポリマーである。酸化プロピレンブロック(PO)が、2つの酸化エチレン(EO)ブロックに挟まれている。
【0088】
【化3】
【0089】
プルロニック界面活性剤は、2段階の方法により合成されている。
1.所望の分子量の疎水性物質を、酸化プロピレンをプロピレングリコールの2つのヒドロキシル基に対して調節して添加することによって生成され;そして
2.酸化エチレンを加え、親水性基の間で疎水性物質を挟む。
【0090】
プルロニックF68において、ポリオキシエチレン(親水性物質)は80%であり、そして疎水性物質(ポリオキシプロピレン)の分子量は約1967Daである。
【0091】
プルロニックF68の典型的な特性は以下のとおりである:
平均分子量:8400;
融点/流動点:52℃;
物理形態(20℃):固体;
粘度(Brookfield)cps:1000[液体(25℃)、ペースト(60℃)
及び固体(77℃)];
表面張力(dynes/cm、25℃);
0.1%濃度:50.3
0. 01%濃度:51.2
0.001%濃度:53.6
表面張力(dynes/cm、25℃ vs Nujol);
0.1%濃度: 19.8
0.01%濃度: 24.0
0.01%濃度: 26.0
Draves 湿化、秒、25℃
1.0%濃度:>360
0.1%濃度:>360
泡の高さ
ロスマイル(Ross Miles)、0.1%、mm、50℃:35
ロスマイル、0.1%、mm、26℃:40
動力、0.1%, mm、400ml/分:>600
水性溶液中での曇り点、℃
1%濃度:>100
10%濃度:>100
HLB(親水性物質-脂質バランス):29
【0092】
プルロニックF68に類似する特性を有する他のポリマーも本発明の製剤中で使用されて良い。
【0093】
当業者は、1又は複数の更なる界面活性剤もポリエチレン−ポリプロピレングリコールに加えて使用されて良いことを理解するだろう。
【0094】
本発明の製剤は、更に安定化剤を含んで成る。安定化剤は、等張剤ともよばれうる。
【0095】
「等張剤」は、生理化学的に許容でき且つ適切な等張性を製剤に対して与え、製剤と接している細胞膜を介して水の網状(net)の流れを予防する化合物である。グリセリンなどの化合物は、公知の濃度でかかる目的のために通常使用されている。他の適切な等張剤としては、限定ではないが、アミノ酸又はタンパク質(例えば、グリセリン又はアルブミン)、塩(例えば、塩化ナトリウム)、及び糖(例えば、デキストロース、スクロース及びラクトース)である。
【0096】
本発明において使用されて良い安定化剤(スタビライザー)又は等張剤としては、還元剤の例えば、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース及びラフィノースが挙げられる。マンニトール、キシリトール、エリトリトール、トレイトール、ソルビトール及びグリセロールが挙げられる。
【0097】
好適な実施態様において、安定化剤又は等張剤はスクロースである。
【0098】
更に好適な実施態様において、当該製剤はスクロースを10mg/ml〜100mg/mlもしくは20mg/ml〜80mg/mlの範囲もしくは約60mg/mlで有する。
【0099】
本発明の製剤は、更にクエン酸バッファーを含んで成る。本発明において使用されて良いクエン酸バッファーとしては、クエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0100】
用語「バッファー」又は「生理的に許容できるバッファー」とは、製剤中、医薬又は獣医的使用のために安全であることが知られており且つ製剤のための所望のpH範囲において製剤のpHを維持又は調節する効果を有する化合物の溶液を意味する。穏和な酸性pH〜適度に塩基性のpHにpHを調節するために許容できるバッファーとしては限定ではないが、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、トリス、及びヒスチジンなどの化合物が挙げられる。「トリス」とは、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3-プロパンジオールを意味し、そして任意の医薬的に共用でききるその塩を意味する。
【0101】
前記製剤がクエン酸塩を1〜100mMもしくは5〜50mMの範囲もしくは10〜20mMの濃度で含んで成ることが好適である。
【0102】
本発明によれば、製剤のpHは5〜7もしくは5.5〜6.5の範囲もしくはおよそ6である。一層好適に、pHは5.9である。
【0103】
本発明の製剤は、更に水性希釈剤を含んで成りうる。
【0104】
用語「水性希釈剤」とは、水を含む液状溶媒を意味する。水性溶媒系は単に水からなって良い、又は水+1又は複数の水混和性溶媒からなって良く、そして溶解した溶質の糖、バッファー、塩又は他の賦形剤を含んで良い。
【0105】
製剤は1又は複数の水性溶媒を含んで成って良い。通常使用される、非水性溶媒は、短鎖有機アルコールの例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、短鎖ケトンの例えば、アセトン、及びポリアルコールの例えば、グリセロールである。
【0106】
本発明の製剤は、好適に更に防腐剤を含んで成る。防腐剤の添加は、もし成長ホルモンが多回投与量投与を目的とされているならば特に好適である。
【0107】
「防腐剤」は化合物であり、例えば、本質的に細菌の作用を下げ、それによって多回使用製剤の生産を促すために製剤中に含まれて良い化合物である。潜在的な防腐剤の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物である塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム)、及び塩化ベンゼトニウムが挙げられる。他の種類の防腐剤としては、芳香族アルコールの例えば、フェノール、ブチルアルコール及びベンジルアルコール、アルキルパラベンの例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールが挙げられる。
【0108】
防腐剤は、本明細書中、静細菌性物質であっても良い。用語「静細菌物質」とは、抗細菌剤として作用するよう、製剤に対して加えられた化合物又は組成物を意味する。本発明の製剤を含む保存されたGHは、好適に、市販されて価値のある多回使用製品であるために有効な防腐効果のための法的規制ガイドラインに合致する。静細菌物質の例としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサールが挙げられる。
【0109】
好適に、防腐剤は1〜10mg/mlもしくは2〜5mg/mlの範囲又は3mg/mlの濃度で存在している。
【0110】
本発明の好適な防腐剤はフェノールである。
【0111】
第二の観点において、本発明は、本発明に従い、製剤の成分の水性溶液を調製する段階を含んで成る液体製剤を生産するための方法に関連する。
【0112】
本発明は更に、所定量の製剤を滅菌容器中へと配置する段階を含んで成る液体製剤を生産する方法に関連する。典型的に、かかる量はmlの範囲にある。
【0113】
治療投与のためのhGHの液体製剤は、hGHと所望の程度の純度を有する安定化剤を医薬的に許容できる賦形剤、バッファー又は防腐剤 (Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osoll A著(1980))を組み合わせることによって調製されて良い。許容できる賦形剤は、使用された濃度及び投与量において患者に対して毒性が無いものであり、例えば、バッファー、防腐剤、抗酸化物質、pH調節剤及び等張性調節剤が挙げられる。
【0114】
成長ホルモンの液体製剤は、もし所望されれば、1又は複数の他の安定化賦形剤をも含んで良い。更なる安定化賦形剤としては、例えば、アミノ酸の例えば、グリシン又はアラニン、マンニトール又は他のアルコール、又はグリセロールが挙げられる。加えて、液体製剤は、他の成長因子の例えば、インスリン様成長因子又はIGF結合タンパク質をも含む。
【0115】
本発明に従い調製された製剤によって供されたhGHの安定性の増加により、安定化剤の不在下で通常使用されるものよりも一層濃縮されて良いhGH製剤のより幅広い使用が可能になる。例えば、hGH液体製剤は、hGH製剤のエアロゾル化又は無針注射の間に生ずるhGHの界面で誘導されるhGHの分解を減らす。
【0116】
用語「安定性」とは、本発明の成長ホルモンの製剤の物理的、化学的、及び構造的な安定性(生物学的有効性の維持も含む)を意味する。タンパク質製剤の安定性は、より高次ポリマーを形成するためにタンパク質分子の化学的分解又は凝集によって、脱グリコシル化、グリコシル化の修飾、酸化又は本発明に含まれるGHポリペプチドの生物学的な活性を少なくとも1つ減少させる他の任意の構造的修飾によって、生じさせられて良い。
【0117】
自動注射器は当業界で公知であり、例えば、Easy ject(商標登録)とよばれるものがあり、それは特にhGHを投与するために有用である。 無針投与も本発明との関連において使用されて良く、当業界で公知で特別な装置を使用する。
【0118】
本発明の更なる観点は、本発明の製剤を投与することを含んで成る医薬組成物に関連する。本発明の範囲内の組成物としては、1以上のヒト成長ホルモンもしくは本発明にかかるその誘導体、類似物質、もしくは変異体を、その意図した目的を達成するために有効な量で含んで成る全ての組成物が挙げられる。個々の要請は多彩な一方で、 各成分の有効な量の最適な範囲を特定することは当業者に公知である。典型的な投与量は約0.001〜約0.1mg/kg体重/日を含んで成る。患者に対して投与された場合、hGH療法は、この疾患において示されうる他の療法と一緒に投与されて良い。
【0119】
用語「投与」又は「投与すること」とは、本発明の製剤を、疾患又は症状を治療するためにそれらを必要としている患者の体内に導入することを意味する。
【0120】
本発明の好適な実施態様において、hGHは1日約0.1〜10mg又は約0.5〜6mgの投与量で投与されている。更に好適な投与量は、約1mg のヒト成長ホルモン/ヒト/日である。
【0121】
更に好適な実施態様において、hGHは、交互投与量で投与されており、第1の投与量は第2の投与量よりも高い。好適に、第1の投与量は、約1mgであり、そして第2の投与量は、約0.5mgである。週間投与量は、患者の要請に依存して好適に約6mgもしくは約5mgもしくは約4.5mgである。
【0122】
用語「患者」とは、疾患又は症状を治療される哺乳動物を意味する。患者は、限定されないが、起源は次の、ヒト、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、ウサギなどである。
【0123】
本発明の製剤は、多くの様々な投与計画のために適している。例えば、投与は、非経口的に、例えば、皮下、静脈内、筋内、口内、腹腔内、エアロゾル、経皮、鞘内、又は直腸経路によって投与されて良い。投与量は受容者の年齢、健康及び体重、以前又は現在の治療の種類に依存して良く、もしあれば、治療の頻度及び望まれる効果の性質に依存する。
【0124】
本発明に従えば、好適な投与経路は、皮下及び筋内投与経路である。
更に好適な投与経路は、経口経路である。
【0125】
本発明にかかる組成物又は製剤の適切な投与量は、受容者の年齢、健康及び体重、現在の治療の種類、もしあれば治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存すると解される。しかし、最も好適な投与量は、当業者により、実験を行わなくても理解され且つ特定可能であるとされるように調製されて良い。これは典型的に、標準的な投与量の調整、例えば、患者の体重が低い場合は、投与量を減らすことなどを伴う。
【0126】
各治療に必要な合計投与量は、複数の投与量において(多回投与)又は単一の投与量(「単回投与」)において投与されて良い。
【0127】
表現「多投与使用」とは、GH製剤の単一のバイアル、アンプル又はカートリッジの1回超の注射の使用、例えば、2、3、4、5、6回以上の注射の使用を含むことを意味する。注射は、例えば、6、12、24、48又は72時間の間隔があけられて良い。
【0128】
従って、本発明は更に単回投与のために本発明の製剤を使用することに関連する。代わりの観点において、本発明は、多回投与のための本発明の製剤の使用に関連する。本発明により処方されたhGH製剤の典型的な量は、単回投与のために8もしくは10もしくは12mg/mlであり、又は多回投与のために0.8もしくは2もしくは4mg/mlである。
【0129】
組成物は、単独で又は疾患に対して向けられたもしくはその症状に対して向けられた他の治療剤との組み合わせにおいて投与されて良い。
【0130】
本発明のhGH製剤は、バイアル中に分注されて良い。用語「バイアル」とは、広くは、滅菌状態で入れられているGHを固体又は液体形態で維持するために適した容器を意味する。本明細書中で使用されるようなアンプルの例としては、アンプル、カートリッジ、ブリスターパック、又は他の、GHを患者に対して注射器、ポンプ(浸透圧ポンプなど)、カテーテル、経皮パッチ、肺又は経粘膜スプレーを介して投与するために適している容器が挙げられる。経皮、肺、経粘膜又は経皮投与のために製品をパッケージングするために適したバイアルは当業者に公知である。
【0131】
hGH製剤の安定性が増加することにより、適温での長期保存が可能になりその温度とは、例えば、凍結温度(例えば、−20℃)より下、又は凍結温度より上の、好適には、2〜8℃、一層好適には+5℃、または室温の例えば、+25℃でさえもある。
【0132】
in vivo投与のために使用されるhGHの製剤は、滅菌されていなければならない。このことは、例えば、滅菌ろ過膜を介するろ過によって容易に達成される。
【0133】
一般に治療hGH液体製剤は、滅菌アクセスポートを有する容器の例えば、皮下注射針によって穿刺されて良いストッパーを有する静脈溶液バッグ又はバイアル中に置かれている。
【0134】
従って、本発明の更なる観点は、使用前に保存するために適した容器内に滅菌状態でハーメチック密封した本発明の液体製剤の、ある提示形態に関連する。
【0135】
本発明が完全に記載されていることで、当業者には同じことが広い範囲の同等のパラメーター、濃度及び条件内で、実験をすることなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われて良いことが理解されるだろう。
【0136】
本発明は、その特異的な実施態様との関連において記載されているが、更なる変更ができると解されるだろう。本願は、一般に、本発明の次のような全ての変形、使用又は適合、本発明の原理を全て網羅し、そして本発明が属する当業界内の公知又は慣例として本発明からの出発を、そして添付の請求の範囲において開示されたような本明細書中に開示された本質的な特徴に対して適用されて良いことを意味する。
【0137】
本明細書中引用された全ての引用文献の例えば、米国又は任意の海外で発行された刊行又は未刊行の米国又は外国特許出願など、ジャーナルの記事又は要は、本明細書中、全データ、テーブル、図及び引用文献中に示された文章によって組み込まれている。更に、引用文献中で引用されている文献の内容全体も参照によって組み込まれている。
【0138】
公知の方法段階、常用の方法段階、公知の方法又は常用の方法に対する参考文献は、いかなる場合も、本発明の全ての観点、記載又は実施態様が当業界で開示され、述べられ又は提示さえていることを認めるものではない。
【0139】
特異的な実施態様の前記記載は、本発明の一般的な性質を完全に開示し、当業者が、当業界内の知識(例えば、本明細書中に引用された文献の内容)を適用することによって、かかる特異的な実施態様を容易に変更及び/又は様々な適用のために適合させるこが、実験をせずに、本発明の一般的な概念から逸脱することなくできる。従って、かかる適合及び修飾は、本明細書中に記載の教示及び説明に基づいて、開示された実施態様と同等の範囲内の意味を示す。本明細書中に記載の語彙又は用語は、説明の目的のためであり限定を目的とはせず、従って、本明細書中に記載の用語又は語彙は、当業界で通常の知識の組み合わせにおいて、本明細書中に記載の教示及び説明の観点から当業者によって解釈されるだろう。
【0140】
本発明を説明することで、それは次の臨床研究の例を参照することによって一層容易に理解されるだろう。その例は、本発明の説明のために供されており、そして本発明を限定する目的はない。
【実施例】
【0141】
実施例
実施例1:hGHの分解の特性決定
Rigginテストは、各分解形態(単一ピークは1超の分解産物を含みうる)に対して特異的ではないので、広範囲のr-hGH液体製剤の分解プロファイルの特性決定を行った。
【0142】
戦略
この研究の戦略を、下に記載のように2つの段階に分けた。
【0143】
第一段階:
1. 25℃で6月間保存した開発液体製剤、バッチPDOI/573D6Hから、Riggin 法による全ピークの単離。
2. 全分子のマススペクトロメトリーによるピークの特性決定。
3. マススペクトロメトリーと連動させたペプチドマッピングによって最も豊富なピークの特性決定をすること。
【0144】
第二段階:
1. 第一段階の研究において特性決定したピークを使用して代替のクロマトグラフィー法を開発し、各々は、ある分解経路 (1つは脱アミド形態のため、1つは酸化形態のため、1つはN-トランケーション形態のためなど)に対して特異的である。
2.この方法を設定した後、これらを使用して、2種類のr-hGH液体製剤サンプル(どれも4℃で保存並びに6日間40℃で保存することによるストレス条件に委ねた):
Saizen 液体 Lot SJC201(40℃で6日)
Saizen液体 Lot SJC201(4℃で18月)
Serostimマンノース液体 Lot E4C101(40℃で16日)
Serostimマンノース液体 Lot E4C101(4℃で18月)
中の各分解産物の含有量を評価した。
【0145】
これらのサンプルを、有効期限に近い凍結乾燥した製剤、Saizen凍結乾燥 Lot B821A.に対して分析した。
【0146】
このバッチも、分子を完全に特性決定するために、マススペクトロメトリーに連結させたペプチドマッピングによっても試験した。
3.獲得したデータから分解経路を確立した。
【0147】
結果
この特性決定によりr-hGHの分解形態は次のとおりであることを評価することが可能になった。
・アスパラギン酸の異性体化に由来するIso-Asp130(メジャー)及びIso-Asp107(セカンダリー)。
・Asn149又は152のいずれかにおける、そしてAsn99における脱アミド化。
・Asp異性体化又はAsn脱アミド化(主にAsp130のスクシンイミド)のいずれかのスクシンイミド中間体。
・2つのN-末端アミノ酸の欠失に由来するDes-Phe-Pro r-hGH。
・主にメチオニン14における酸化。
・以下の方法を開発した:
・酸化形態のための、TFA中でのRP-HPLC
・脱アミド形態のためのイオン交換クロマトグラフィー
・iso-Asp130及びiso-Asp107の両方についてのペプチドマッピング
・Des-Phe-Pro r-hGHのためのHI-HPLC
・他方スクシンイミド形態は、Riggin法(主たるものはAsp 130のスクシンイミドである)によって定量可能である。
【0148】
サンプル中で検出された分解形態の量を表Aに示している。
【0149】
上記データを比較することによって、r-hGHの液体製剤中での主要な分解経路は:
・脱アミド化
・アスパラギン酸の異性体化
・2つのN-末端アミノ酸の欠失
【0150】
酸化は40℃で6日に渡る保存によっては増えない。
【0151】
【表1】
【0152】
実施例2: 単回投与量投与のためのhGH液体製剤
序
r-hGHの液体製剤を開発し、それは凍結乾燥した産物よりも簡単な医薬体裁を示す。段階的に進む方法を採用し、r-hGHの新たな液体製剤の安全性を確実にした。分解プロファイルの広範囲な特性決定を行い、並びに全身毒性及び局所寛容性の研究をこの新たな製剤について行った。加えて、比較生体利用効率研究を行い、新たな液体製剤と現在承認されている凍結乾燥製剤との間での生物学的等価性を証明した。
【0153】
医薬開発の一部として、製剤の適切さ及び安定性を以下のパラメーターについて評価した。
・pH及びバッファー
・バッファーのイオン強度
・賦形剤
【0154】
次いで、候補製剤の安定性を選定の容器中で研究し、製造方法、オーバーフィル及び容器密封システムを決定した。
【0155】
この開発の後に、薬物製品を、3mlのガラスカートリッジに充填したクエン酸バッファー(pH5.85)、スクロース及びPoloxamer188(中の組換えヒト成長ホルモンの水性溶液として提示した。薬物製品を12.0mg/ml濃度で充填し、そしてブロモブチルストッパーを備える3ml公称容量カートリッジ入れた。カートリッジを、6.0mgのr-hGHを患者に対してデリバリーするための注射のための0.5mlのr-hGH 溶液で満たした。
【0156】
薬物製品の成分
薬物製品を、3mlのI型ガラスカートリッジに充填したクエン酸バッファー、スクロース及びポロキサマー188中のソマトトロピン(ヒト組換え成長細胞、r-hGH)の単回投与量水溶液として提示した。
【0157】
0.5mlの溶液が投与された場合に、患者に対して6.0mg/投与量r-hGHがデリバリーされるために、薬物製品を、12.Omg/mlの濃度で処方した。
【0158】
薬物物質
薬物物質と製剤賦形剤との適合性
薬物物質と製剤賦形剤の適合性を、r-hGH凍結乾燥製剤の開発の間に行われる実験並びに液体製品製剤の実現可能性を調べる目的の予備スクリーニング研究の間に行われる実験を考慮して、評価した。これらの研究により次のことが示された:
・r-hGHメイン分解産物は、脱アミド化形態でありそしてこれはpHが厳密に相関していること。pHおよそ6.0がかかる分解を最小にする。
・溶解度は、pH、静細菌剤及び機械的ストレスの存在によって影響される更なる重要なパラメーターである。r-hGHの沈殿を避けるために、製剤の成分の中で適切な平衡を発見することが必須である。
【0159】
バッファー剤の選択
選定のバッファー剤を、以下のことを考慮して評価した:
・脱アミド化速度に対するバッファー剤濃度の効果;
・タンパク質の溶解度に対するバッファー剤濃度の効果;
・pH安定性に対するバッファー剤濃度の効果
【0160】
薬物物質及びバッファー(酢酸バッファー及びクエン酸バッファー)を含むいくつかの溶液を製造し、そしてr-hGH沈殿を誘導するために振動ストレス試験に委ねた。同様液を、分解経路を加速させるために25±2℃でも保存した。
【0161】
結果は次のことを示す:
・バッファー剤濃度は、r-hGH脱アミド化に対して相当する影響を有すること;特に、濃度が高くなれば、分解が高くなる;
・バッファー剤濃度は、r-hGH溶解に対して相当する影響を与えること; 特に、濃度が高くなれば、溶解度が低くなる;
・10mMの酢酸バッファーに比べて、クエン酸を酸性化剤として使用することでpHが6近くでより良く安定化する。
【0162】
賦形剤の選択
薬物物質と2つの異なる賦形剤(スクロース及びマンニトール)の適合性を、それらのr-hGH溶解度及び脱アミド化速度に対する影響を評価することで評価した。
【0163】
バッファー系及びスクロース又はマンニトールを含むいくつかの溶液を製造し、そしてr-hGH沈殿を誘導するために振動ストレス試験に委ねた。また、分解経路を加速させるために同溶液を+25±2℃で保存した。
【0164】
実験結果により示されたことは:
・スクロース又はマンニトールのいずれもr-hGH溶解度を向上したこと;
・マンニトール又はスクロースを製剤に加えることにより、RP-HPLCによって試験したr-hGHの分解が僅かに増加したこと(図1)
である。
【0165】
図1は、マンニトールもしくはスクロースを含みもしくは賦形剤を含まないr-hGH液体製剤の+25℃±2℃で4週間の保存後のRP-HPLC結果を示す。
【0166】
界面活性剤の選択
バッファー剤、等張剤(スクロース又はマンニトール)及び評価の下の界面活性剤(張力活性剤(tensioactive agent))(ポリソルベート20又はポロキサマー188)を製造し、そしてr-hGH沈殿を誘導する振動ストレス試験(Vortexを使用することによって行った機械的ストレス試験)に委ねた。2つの濃度の界面活性剤をこの予備評価の間に試験した: 1つは高濃度の1.0mg/mlでありそして1つは低濃度の0.01mg/mlである。その後、製剤を視覚的に検査した。同溶液を、分解経路を加促させるために+25±2℃で保存した。
【0167】
結果から示されることは次のとおりである:
・試験した高濃度(1.Omg/ml)の張力活性剤により、低量の例えば0.01mg/mlを加えることによって、いくらかの有意な陽性効果は確認されたものの、有意にタンパク質の溶解度が向上した。
・張力活性剤(ポロキサマー188又はポリソルベート20を1.0又は0.01mg/mlの濃度で)を製剤に対して加えることにより僅かにr-hGH(図.2)の分解が増加する;
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は同等にr-hGH 溶解度を向上させる。
【0168】
図2は、張力活性剤を様々な濃度で含むr-hGH液体製剤及び張力活性剤を含まない製剤を+25±2℃で4週間保存した後のRP-HPLC結果を示す。
【0169】
液体多回投与製剤を平行して開発する間、ポリソルベート20は、静細菌剤の例えば、m-クレゾール及びフェノールの存在下で乳白色の懸濁の形成を誘導することが確認された。この効果により、ポロキサマー188を好適な界面活性剤として選択した。
【0170】
スクリーニング研究に由来する全体的な結論:
処方前研究の結果を次のようにまとめている:
・バッファー剤の濃度は、r-hGH脱アミド化及び溶解度に対する影響を有する;(20mM超のバッファーモル濃度により分子の分解がより多く誘導される)
・クエン酸を酸性化剤として使用することにより、10mMの酢酸バッファーとは対照的に、pHが6.0付近でより良く安定化する;
・スクロース又はマンニトールによりr-hGH溶解度が向上し、そして僅かにr-hGHの分解が高まる;
・1.0mg/ml以上の濃度で界面活性剤が存在することにより僅かにタンパク質の溶解度が向上する。
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は同等にr-hGH溶解度を向上させる;
・液体多回投与製剤を開発する目的の並行研究から、ポリソルベート20と静細菌剤の例えば、フェノール又はm−クレソールなどの不適合性が確認され、その使用が制限される。
【0171】
候補製剤
先のスクリーニング研究から、5つの候補製剤をラボスケールで製造し、そして促進(+25±2℃)及び長期(5±3℃)安定性の研究に委ねた。各製剤の1つの試料をハロブチル密封系を装える3mlのガラスカートリッジに充填した。
【0172】
5つの製剤の組成を下の表1に記載している。
【0173】
【表2】
【0174】
ラボスケールバッチ及び安定性の結果
以下の表2及び3には、最も関連する安定性指示パラメーター(r-hGH含量、類縁タンパク質、ダイマー及び高分子量物質、粒状物質及びpH)について製剤を試験することで獲得された結果を報じている。
【0175】
タンパク質に関するRP-HPLCデータを線形回帰によって統計的に分析した。獲得した結果を次のように示した。
・8.0及び12.0mg/mlにおける酢酸バッファー製剤は、クエン酸又はクエン酸バッファーを含む製剤よりも分解速度が速く;このことにより酢酸バッファーの、r-hGH製剤としての酢酸塩の使用が除外される(図3);
・候補製剤#3、#4及び#5の回帰線は、同じ勾配及び同じ切片を示した;
・クエン酸バッファー及びクエン酸塩は分解速度が類似している;
・r-hGH濃度はかかる分解について関連する役割をしない(図4)
【0176】
ラボスケール候補製剤分解速度が様々である理由は、製剤間のpHの差異による。酢酸バッファー製剤、並びにクエン酸を酸性化剤として含む製剤は、1月保存の後パラメーターの有意な増加(図5(+25℃での安定性)及び(図6(+4℃での安定性))を示した。pHと脱アミド化速度の間の関係は当業者に周知であり、そしてそれは、この分解を減らすために最も重要な、調節のためのパラメーターである。クエン酸バッファーを伴う製剤は安定なpHを有し、それは、当該製剤が他に比べてより良い安定性が有ることの説明となりうる。
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】
加えて、r-hGH含量に関するSE-HPLCは、直線回帰モデルによって 統計的に解析した結果である。結果を次のとおり示す:
・統計的に有意な差違はラボスケールバッチの間ではなく且つ統計的に有意な傾向は安定性期間に渡り確認されなかった。表4及び5において、統計的結果を報じている。
【0180】
【表5】
【0181】
【表6】
【0182】
更に、候補製剤間でパラメーター粒状物質について差違が確認されなかった。
【0183】
結論
5つの候補製剤に対する安定性研究により、r-hGHの分解速度をコントロールするためのpHの重要な役割を確認した。従って、以下の製剤をパイロットスケールでの生産のために選択した。
【0184】
【表7】
【0185】
賦形剤
上に記載した製剤開発で、液体r-hGH製剤の安定化に必要な賦形剤を決定した。これらの賦形剤を:
・機能
・選定の濃度
・薬種モノグラフとのコンプライアンス
を説明するために記載している。
【0186】
スクロース
スクロースの機能は、等張環境を創り出すこと及びタンパク質を安定化させることである。完成製品のために選択されるスクロースの濃度は60.0mg/mlである。
【0187】
使用したスクロースはUSP及びPh.Eurに適合している。
【0188】
クエン酸バッファー
10mMのクエン酸を、水酸化ナトリウム溶液の添加によって、pH5.8〜6.2に調節し、脱アミド化したタンパク質の形成を減らししかも適度な溶解性を保つ。
【0189】
クエン酸バッファーはPh.Eur.及びUSPに適合している。
【0190】
ポロキサマー188
ポロキサマー188を、r-hGHの溶解度を高めそして粒状物質の形成を避けるために使用している。
【0191】
1.5mg/mlの濃度を選択した。何故ならそれは、かかるタンパク質の溶解度を高めることにおいて最も有効であるからだ。
【0192】
使用したポロキサマー188は、USP及びPh.Eurに適合する。
【0193】
注射のための水
全ての賦形剤を、所望の濃度でWFI中に完全に溶かしている。
【0194】
使用しWFIはUSP及びPh.Eurに適合する。
【0195】
実施例4:製剤開発
適切な処方前研究及び安定性の評価により、ラボスケールバッチで使用可能であることがもたらされ、最終製剤を選択した。
【0196】
物理化学的及び生物学的特性
pHの効果
pHの効果を確かめるために行った研究に基づいて、pHはr-hGHの安定性に対する有意なパラメーターであることを確認した。特に、5.8〜6.2のpH範囲は、r-hGHの主たる分解経路の1つである脱アミド化を最小にすることができる。
【0197】
イオン強度の効果
この実験により、液体製剤中に存在するバッファー系のモル濃度の増加が、RP-HPLCによって検出されるより高い分解速度を誘導しうること並びにr-hGH溶解度を減らし且つ沈殿を誘導することを証明した。従って、バッファー系を、pHを最適にししかもr-hGH安定性に対する負の効果を最小にするために10mMの濃度で選択している。
【0198】
凝集(ダイマー及びHMW物質)
行った実験研究により、液体製剤中に存在するr-hGHは、促進(+25±2℃)又は長期条件(+5±3℃)における保存の間に凝集体を形成することがないことが示された。
【0199】
生物活性
In-vivo生物活性(下垂体切除したラットにおける体重増)をバイオアッセイによって試験した。新に開発した液体製剤並びに凍結乾燥した製剤の両方に関する比活性結果は、比活性に関して確立された承認基準に適合した。
【0200】
分解プロファイル
広範囲にわたる特性決定を行い、新に開発した液体製剤の分解プロファイルと現在承認されている凍結乾燥製剤の分解特性プロファイルを比較した。得られた結果により、r-hGHの同じ分解プロファイルが保存の間に獲得され、液体製剤に関するRP-HPLCにより、より多量の類縁タンパク質が同定されたことが証明された。
【0201】
実施例5:製造方法の開発
この液体製剤の製剤方法は、次の段階からなる:
・液体製剤の化合物化;
・0.45μm膜による前ろ過
・0.22μm膜による滅菌ろ過
・カートリッジへの充填
・各カートリッジのクリンピング。
【0202】
これは、この医薬形態のための標準的な製造方法である(次のページのフローチャートも参照のこと)。最も重要な方法段階は、無菌ろ過による滅菌である。液体単回投与量製剤を開発する間、化合物化した薬物製品溶液は、ろ過前に僅かにオパール色を幾分呈していたことを確認している。このオパール色は、おそらく、弱酸性のpHにおいて溶解度が低いことに関連する天然のr-hGHの幾分の沈殿が理由である。0.22μmの膜を介する滅菌ろ過が、製品製造方法の間に困難且つ危険性のある段階となることを避けるために、0.45μm膜を介する前ろ過を加えた。
【0203】
【表8】
【0204】
従って、製造設備に関連する制約を考慮して、前ろ過段階を加えることが滅菌ろ過する前に溶液を清澄化するために適しているかどうかを調べる目的で研究を行った。その制約とは:
15g/cm2を超えないろ過率
1.5atmを超えない窒素圧
である。
【0205】
前ろ過段階を調べるために使用した製剤の組成を表6に報じている。
【0206】
【表9】
【0207】
研究結果は次のとおりである:
・17g/cm2の化合物を、1atmで0.45μmの膜上でろ過できうる。
・31g/cm2の前ろ過物を、1atmで0.22μmの膜上でろ過できうる。
【0208】
この研究により、0.45μm膜、1atmの窒素加圧を使用する前ろ過段階を導入することは、0.22μmの膜による無菌ろ過をする前にr-hGH液体化合物溶液を清澄化するために適していることが結論づけられた。薬物製品製造者によって提示される15g/cm2のろ過率は前ろ過又は無菌ろ過をするためにも適している。
【0209】
以下のフローチャートでは、パイロットスケールの製造方法を要約する。
【0210】
実施例6:多回投与量投与のための液体GH製剤の開発
薬物物質と賦形剤の適合性
ここで結果を下のようにまとめている:
・r-hGH主分解産物は脱アミド化形態であり、そしてこれはpHに関連する。6.0周辺のpH値がかかる分解を最小化する;
・溶解度はpH、静細菌剤の存在及び機械的ストレスによって影響を受ける更なる重要なパラメーターである。
r-hGHの沈殿を避けるために、製剤成分のなかで適切な平衡を発見することは必須である。
【0211】
バッファー剤の選択
液体製剤中に加えるために、バッファー剤の選択を、以下のことを考慮して評価した:
・脱アミド化速度に対するバッファー剤濃度の効果;
・タンパク質溶解度に対するバッファー剤濃度の効果;
・pH安定性に対するバッファー剤濃度の効果
【0212】
薬物物質(6.0及び12.0mg/mL)及びバッファー剤(酢酸及びクエン酸)を含むいくつかの溶液を製造してr-hGH試験を誘導するために振動ストレス試験に更に;同溶液を40±2℃でも分解経路を加速させるために保存した。
【0213】
結果を次のとおり示した:
・バッファー剤濃度はr-hGH脱アミド化に対する相当する影響を有する;モル濃度が高くなれば、分解が高くなる;
・バッファー剤濃度はr-hGH溶解に対する相当する影響を有する;モル濃度が高くなれば、溶解度が下がる。
・10mM酢酸バッファーに対して、クエン酸を酸性化剤として使用することでpHが6.0付近によりよく安定化する。
【0214】
等張剤の選択
薬物物質の2つの異なる等張剤(マンニトール及びスクロース)との適合性を、そのr-hGH溶解度及び脱アミド化速度に対する影響を評価することにより行った。
【0215】
薬物物質(6.0及び12.0mg/mLで)及びバッファー(酢酸及びクエン酸)を含むいくつかの溶液を製造して、r-hGHの沈殿を誘導するために振動ストレス試験に委ねた;同溶液を、分解経路の促進をするために、+40±2℃でも保存した。
【0216】
結果により次のことが示される:
・スクロース又はマンニトールはr-hGH溶解度を向上させる;
・マンニトール又はスクロースを製剤に対して添加することで、r-hGHの分解を僅かに高まる
【0217】
界面活性剤の選択
6.0及び12.0mg/mLにおいていくつかの製剤を製造して、r-hGH沈殿を誘導するために、振動ストレス試験に委ねた;同溶液を、分解経路を促進するために、+25±2℃でも保存した。
【0218】
結果により次のことが示された:
・試験した、より高界面活性剤濃度(1.0mg/ml)は、有意にタンパク質溶解度を高めたが、低量の例えば0.01mg/mlを加えることでもいくらか陽性効果が確認された。
・界面活性剤を製剤に対して加えることで、r-hGHの分解が僅かに増加した。
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は同等にr-hGH溶解度を向上させた。
【0219】
静細菌剤の選択
r-hGHが0.8mg/mlにおいて、0.9%ベンジルアルコール又は0.3%フェノールを含有するいくつかの製剤を製造して静細菌効率スクリーニング研究に委ねた。M−クレゾールは、その界面活性剤との不適合性の理由により試験しなかった。
【0220】
結果により次のことが示される:
・0.9%ベンジルアルコール及び0.3%フェノールはどちらも、Eu.Ph.の基準に適合する。
【0221】
前処方研究からの全体的な結論
前処方研究の結果を次のようにまとめている:
・バッファー剤濃度は、r-hGH脱アミド化及び可溶化に対して影響を有する;
・クエン酸を酸性化剤として使用することは、10mMの酢酸バッファーに対してpHを6.0付近によりよく安定化する;
・スクロース又はマンニトールはr-hGH溶解度を向上させそして有意にr-hGHの分解を高める;
・1.0mg/ml以上の濃度で界面活性剤が存在することにより、有意にタンパク質溶解度が向上し、たとえより低量、例えば0.01mg/mlを加えることでも陽性の効果が確認された;
・張力活性剤を製剤に対して加えることによりr-hGHの分解が僅かに増加する;
・ポロキサマー188及びポリソルベート20は、r-hGH溶解度を同等に向上させる;
・M-クレゾールは界面活性剤と適合しない;
・0.9%ベンジルアルコール及び0.3%フェノールはEu.Phの基準Bに適合する
【0222】
候補製剤の安定性研究
前記前処方研究から、r-hGHが0.8mg/ml及び4.0mg/mlにおける、酢酸とクエン酸の両方をバッファー剤として、そしてベンジルアルコール又はフェノールを静細菌剤として含む8つの候補製剤をラボスケールで製造し、そして促進(+25±2℃)及び長期(5±3℃)安定性試験に委ねた。各製剤のサンプルをWest Pharmaceuticalブロモブチル4023/50プランジャを備えた3mLガラスカートリッジに充填した。この最初の8つの候補の第一のみ安定性試験組の間、0.8mg/mlにおいて1つの更なる製剤(10mMのクエン酸バッファー及びフェノールを含む)を製造することを決めた。9つの製剤の組成を下の表に記載している。
【0223】
【表10】
【0224】
【表11】
【0225】
候補製剤の安定性結果
候補製剤の安定性データは、+25±2℃で最大6月の促進条件及び5±3℃における12月長期条件を使用できる(表を参照のこと)。
【0226】
結果により次のことが示された:
・酢酸バッファーを含む製剤は、クエン酸又はクエン酸バッファーを含む製剤よりも安定性が少ない;
・クエン酸バッファーを含む製剤は溶液のpHをより良く安定化させる;
・前記安定期間について確認された分解経路のみがRP-HPLCによって検出可能なr-hGHの脱アミド化である;
・0.9%ベンジルアルコールを含む製剤は、均一の作用を示さず、この理由については取り下げた(discharged)。これはおそらくベンジルアルコールに様々なバッチに存在する不純物に関連するだろう;
・タンパク質濃度は分解速度に影響を与えない;
・クエン酸バッファー及びクエン酸製剤の+5±3℃において見積もられた分解速度は類似するものであり(0.7〜0.8%/月)、一方で、酢酸バッファーを含む製剤の約1.1%/月の分解速度を有する。
【0227】
上記の結果に基づいて、製造側へ技術移転するために、クエン酸バッファー及びフェノールを含む製剤を選択することを決めた。
【0228】
実施例7:多回投与量投与のための特異的製剤
多回投与量投与のための製剤を安定性及び溶解度について試験した。
【0229】
製剤6〜8(多回投与量投与)を表9に記載している。
【0230】
【表12】
【0231】
これら3つの製剤の+25℃及び+5℃における、RP-HPLCによる分解したタンパク質の%によって測定した場合の、安定性データを図7及び8にそれぞれ記載している。
【0232】
以下の結論がこの実験から導かれうる。
・0.5%フェノール製剤は、粒状物質に富みタンパク質含量が減少する;
・+0.9%BA及び+0.25%フェノール製剤について、タンパク質含量の減少は確認されない;
・25℃及び5℃における保存の間にpHが有意に増加する(6.0〜6.4−6.5);
・高分子量物質の増加はない;
・0.9%BA及び0.25%フェノール溶液において粒状物質はない。
【0233】
製剤9〜17(多回投与量投与のため)は次の通りである
【0234】
【表13】
【0235】
【表14】
【0236】
これら3つの製剤の、RP-HPLCにより分解したタンパク質の%によって測定した場合の+25℃及び+5℃における安定性データをそれぞれ図9及び10に示している。+25℃で6月の期間に渡るpH変化を図11に記載している。
【0237】
次のような結論をこの一連の結果から導くことができうる:
・タンパク質含量の減少は+5℃での安定性に渡りなかった
・酢酸製剤及びクエン酸製剤について+5℃及び+25℃での安定性に渡り、pHの有意な変化はなかった、即ち、クエン酸バッファー製剤についてと有意差はなかった。
・5℃での安定性に渡り高分子量物質の増加はなかった。
・溶液中で粒状物質はなかった。
【0238】
【表15】
【表16】
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】マンニトールもしくはスクロースを含みもしくは賦形剤を含まないr-hGH液体製剤の+25±25℃において4週間保存した後のRP-HELC結果である。
【図2】様々な濃度で界面活性剤を含むr-hGH液体製剤及び界面活性剤を含まないr-hGH液体製剤の25±2℃において4週間保存した後のRP-HPLC結果である。
【図3】+25±2℃で最大6月保存した類縁タンパク質に関するRP-HPLCによって試験したラボスケール製剤の減衰直線である。
【図4】+25±2℃で最大6月保存した類縁タンパク質に関するRP-HPLCによって試験したラボスケール候補製剤#3.#4及び#5の減衰直線である。
【図5】25±2℃で最大6月保存したラボスケール製剤のpHである。
【図6】5±3℃で最大12月保存したラボスケール製剤のpHである。
【図7】hGH多回投与製剤の5℃における安定性、製剤6(四角)、7(丸)、及び8(菱形)である。
【図8】hGH多回投与製剤の5℃における安定性、製剤6(四角)、7(三角)、及び8(丸)である。
【図9】25℃(月)における様々な多回投与製剤におけるhGHの安定性である。
【図10】5℃(月)における様々な多回投与製剤におけるhGHの安定性である。
【図11】+25℃で6月に渡る酢酸塩(四角及び菱形)、クエン酸(三角)又はクエン酸塩(半四角(half square))を含んで成る多回投与製剤のpHである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体製剤であって
a)成長ホルモン、又は内生hGHの放出を刺激するかあるいは活性を増強する物質;
b)ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;
c)クエン酸バッファー; 及び
d)安定化剤、
を含んで成る液体製剤。
【請求項2】
前記成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
物質であって、内生hGHの放出を刺激する又は活性を増強する物質が成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記安定化剤がスクロースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
スクロースを10mg/ml〜100mg/mlもしくは20mg/ml〜80mg/mlの範囲の濃度もしくは約60mg/mlで含んで成る、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
クエン酸塩を1〜100mMもしくは5〜50mMもしくは10〜20mMの濃度範囲において含んで成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
5〜7もしくは5.5〜6.5もしくは約6のpHを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
ポリエチレン−ポリプロピレングリコールを0.5〜5mg/mlもしくは1〜2mg/ml又は1.5mg/mlの濃度範囲において含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレン−ポリプロピレングリコールがプルロニックポリオールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記プルロニックポリオールが、プルロニックF68である、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
更に防腐剤を含んで成る請求項1〜10のいずれ項に記載の製剤。
【請求項12】
前記防腐剤を1〜10mg/mlもしくは2〜5mg/mlの濃度範囲もしくは3mg/mlで含んで成る、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記防腐剤がフェノールである、請求項11又は12に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤がpH5.9を有し、そしてr-hGH、スクロース、ポロキサマー188、クエン酸及び/又はクエン酸バッファー及び任意に注射のための水からなる、1〜13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
前記製剤がpH5.9を有し、そしてr-hGH、スクロース、ポロキサマー188、クエン酸、フェノール及び任意に注射のための水からなる、1〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
(a)〜(d)の成分の水溶液を調製する段階を含んで成る、請求項1〜15のいずれか1項に記載の液体製剤を生産するための方法。
【請求項17】
所定量の製剤を滅菌容器中に配置する段階を含んで成る、請求項1〜15のいずれか1項に記載の液体製剤を生産するための方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の製剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項19】
使用前に、保存に適した容器内に滅菌状態でハーメチック密封した請求項1〜13のいずれか1項に記載の液体製剤の提示形態。
【請求項1】
液体製剤であって
a)成長ホルモン、又は内生hGHの放出を刺激するかあるいは活性を増強する物質;
b)ポリエチレン−ポリプロピレングリコール;
c)クエン酸バッファー; 及び
d)安定化剤、
を含んで成る液体製剤。
【請求項2】
前記成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
物質であって、内生hGHの放出を刺激する又は活性を増強する物質が成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記安定化剤がスクロースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
スクロースを10mg/ml〜100mg/mlもしくは20mg/ml〜80mg/mlの範囲の濃度もしくは約60mg/mlで含んで成る、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
クエン酸塩を1〜100mMもしくは5〜50mMもしくは10〜20mMの濃度範囲において含んで成る請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
5〜7もしくは5.5〜6.5もしくは約6のpHを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
ポリエチレン−ポリプロピレングリコールを0.5〜5mg/mlもしくは1〜2mg/ml又は1.5mg/mlの濃度範囲において含んで成る、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレン−ポリプロピレングリコールがプルロニックポリオールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記プルロニックポリオールが、プルロニックF68である、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
更に防腐剤を含んで成る請求項1〜10のいずれ項に記載の製剤。
【請求項12】
前記防腐剤を1〜10mg/mlもしくは2〜5mg/mlの濃度範囲もしくは3mg/mlで含んで成る、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記防腐剤がフェノールである、請求項11又は12に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤がpH5.9を有し、そしてr-hGH、スクロース、ポロキサマー188、クエン酸及び/又はクエン酸バッファー及び任意に注射のための水からなる、1〜13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
前記製剤がpH5.9を有し、そしてr-hGH、スクロース、ポロキサマー188、クエン酸、フェノール及び任意に注射のための水からなる、1〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
(a)〜(d)の成分の水溶液を調製する段階を含んで成る、請求項1〜15のいずれか1項に記載の液体製剤を生産するための方法。
【請求項17】
所定量の製剤を滅菌容器中に配置する段階を含んで成る、請求項1〜15のいずれか1項に記載の液体製剤を生産するための方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の製剤を含んで成る医薬組成物。
【請求項19】
使用前に、保存に適した容器内に滅菌状態でハーメチック密封した請求項1〜13のいずれか1項に記載の液体製剤の提示形態。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−520366(P2006−520366A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505458(P2006−505458)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050286
【国際公開番号】WO2004/082707
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050286
【国際公開番号】WO2004/082707
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】
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