説明

溶液成分の回収方法、溶液成分の回収装置及び含浸処理・含浸成分回収システム

【課題】温度により固化する成分を含む溶液から回収した成分の再利用をより図る。
【解決手段】溶液回収装置40は、酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化反応が進行する含浸剤と含浸剤を溶解する溶媒とを含む溶液を分離部41へ収容し、分離部41に収容された溶液へ空気(酸素)を供給すると共に、分離部41の内部空間を減圧し、攪拌部42により溶液を攪拌しながら熱交換部43により溶液の温度を所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう調整し、溶液に含まれる溶媒を気化させ、気化した溶媒を主水回収部51及び副水回収部61により冷却して回収する。このように、酸素を供給しながら所定の分離温度範囲で減圧して含浸剤と溶媒とを分離することにより、含浸剤の固化を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液成分の回収方法、溶液成分の回収装置及び含浸処理・含浸成分回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液成分の回収装置としては、水タンクとポンプとエゼクタとを含む水の循環系において、エゼクタで油水混合溶液を導入した真空チャンバを減圧することにより、真空チャンバ内の油水混合溶液を沸騰させて(水を蒸発させて)油水分離を行い、真空チャンバから水タンクに抜き出して処理水を排出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、水タンクは、底部から天井部に至らない位置まで垂直に配設された内筒を備えた二重構造となっており、天井部に循環水の供給孔を設けると共に、内筒内の底部に循環水の汲み出し口を設けており、外筒と内筒との間の底部に外部への処理水の排出口を設けてあり、微量の油分が内筒の上方に滞留するため、油分と水分とをより分離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−288373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載された溶液成分の回収装置では、内筒を設けこの内筒の上方に油分を滞留させて水分とを分離するものであり、油分及び水分など分離している溶液に対しては有効ともいえるが、例えば溶媒に他の成分が溶解している場合など、溶液の成分が分離しないものについては水タンクに内筒を設けた効果が発揮されず、十分に複数の成分を分離回収することができない場合があった。また、分離回収を望む複数の成分を含む溶液には、例えば温度など所定の条件で固化する成分などが含まれている場合がある。このような溶液の分離については、この特許文献1では考慮されていなかった。このように、複数の成分を十分に分離し、回収した成分の再利用をより図ることが望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、温度により固化する成分を含む溶液から回収した成分の再利用をより図ることができる溶液成分の回収方法、溶液成分の回収装置及び含浸処理・含浸成分回収システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶液成分の回収方法及び溶液成分の回収装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
即ち、本発明の溶液成分の回収方法は、
複数の成分を含む溶液を分離して回収する溶液成分の回収方法であって、
所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分と該第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を減圧し前記所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲で前記第2成分を気化させる分離工程と、
前記分離工程で気化した第2成分を冷却して回収する回収工程と、
を含むものである。
【0008】
この溶液成分の回収方法は、所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分とこの第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を減圧し所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲で第2成分を気化し、この気化した第2成分を冷却して回収する。このように、所定の分離温度範囲で減圧して第1成分と第2成分とを分離することにより、第1成分の固化を防止する。したがって、回収した成分の再利用をより図ることができる。ここで、「所定の分離温度範囲」は、前記第1成分の所定の固化温度を下回る温度であるが、例えば、前記第2成分の凍結温度を超える温度範囲としてもよい。
【0009】
本発明の溶液成分の回収方法において、前記第1成分は、酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する成分であり、前記分離工程では、前記溶液へ酸素を供給しながら減圧して前記第2成分を気化させるものとしてもよい。こうすれば、第1成分の固化の進行をより抑制可能であるため、酸素の非存在下で固化する成分においても回収して再利用をより図ることができる。ここで、「酸素を供給する」とは、酸素を供給するもののほか、酸素を含むガス(例えば空気)を供給するものとしてもよい。
【0010】
本発明の溶液成分の回収方法において、前記分離工程では、前記第2成分を気化している溶液の温度が所定の判定温度に達したときに前記第1成分と前記第2成分との分離を終了したものとして終了する工程であるものとしてもよい。こうすれば、溶液の温度を用いて比較的容易に分離工程の終了を判断することができ、ひいては、回収した成分の再利用をより容易に行うことができる。ここで、「所定の判定温度」は、所定の圧力での第1成分と第2成分との気液平衡関係や溶液の温度上昇などを含む物性の関係を実験により求め、この関係を用いて第2成分の許容含有量に応じて定めることができる。
【0011】
本発明の溶液成分の回収方法において、前記分離工程では、前記第1成分と前記第2成分とを含む溶液を、該第2成分の気化は進行するが該第1成分の気化の進行が抑制される所定の減圧範囲内で減圧し該第2成分を気化させるものとしてもよい。こうすれば、回収された第2成分に第1成分が混入するのをより抑制することができるから、回収した第2成分の再利用をより図ることができる。
【0012】
本発明の溶液成分の回収方法において、前記第1成分は、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーを含み、前記第2成分は、水であるものとしてもよい。ここで、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーとしては、水溶性のメタクリル酸系のモノマーやアクリル酸系のモノマーなどが挙げられる。メタクリル酸系のモノマーとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル及びポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。このうち、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチルがより好ましい。
【0013】
本発明の溶液成分の回収方法において、前記第1成分は、成形したワークに形成されている空隙へ充填される含浸成分であり、前記第2成分は、前記含浸成分を溶解する溶媒であるものとしてもよい。このとき、前記第1成分は、成形したワークに形成されている空隙へ充填する含浸成分としてのアクリル樹脂系の水溶性のモノマーを含み、前記第2成分は、前記含浸成分を溶解する溶媒としての水であるものとしてもよい。
【0014】
本発明の溶液成分の回収装置は、
複数の成分を含む溶液を分離して回収する溶液成分の回収装置であって、
酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分と該第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を収容する内部空間が形成されている分離部と、
前記分離部に接続され酸素を該分離部に収容された溶液へ供給する酸素供給部と、
前記分離部の内部空間を減圧する減圧部と、
前記分離部に収容された溶液を攪拌する攪拌部と前記分離部に収容された溶液と接触して熱交換する熱交換部とを有し、前記所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう前記溶液の温度を調整する溶液温度調整部と、
流体が流通可能な接続管を介して前記分離部に接続され前記分離部に収容された溶液から気化した前記第2成分を冷却して回収する回収部と、
を備えたものである。
【0015】
この溶液成分の回収装置では、酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分と該第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を分離部へ収容し、分離部に収容された溶液へ酸素を供給すると共に、分離部の内部空間を減圧し、溶液温度調整部により溶液を攪拌しながら溶液の温度を所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう調整して第2成分を気化させ、気化した前記第2成分を回収部により冷却して回収する。このように、酸素を供給しながら所定の分離温度範囲で減圧して第1成分と第2成分とを分離することにより、第1成分の固化を防止する。したがって、回収した成分の再利用をより図ることができる。
【0016】
本発明の溶液成分の回収装置において、前記酸素供給部は、前記分離部の下方側に開口部が形成されている供給管と、該供給管へ酸素を所定圧で供給する調圧部とを有しているものとしてもよい。こうすれば、調圧部を用いてより一定の供給量で酸素を分離部に収容された溶液へ供給可能であるため、より第1成分の固化を抑制することができ、ひいては第1成分の再利用を一層図ることができる。また、前記酸素供給部は、前記分離部の下方側に接続されている供給管を有するものとしてもよい。こうすれば、分離部の内部空間が減圧となることで供給管を介して酸素を溶液へ供給可能であるため、より簡易的な構成とすることができる。
【0017】
本発明の溶液成分の回収装置において、前記回収部は、水平方向の部位が水平面に対して傾斜して形成されている前記接続管により接続されているものとしてもよい。こうすれば、例えば接続管で凝縮した第2成分が流れやすいため、接続管内での閉塞などをより抑制することができる。このとき、前記接続管は、水平方向の部位が水平面に対して前記回収部側よりも前記分離部側が下方になるよう傾斜して形成されていることが好ましい。こうすれば、接続管内の成分が分離部側へ流れやすく、例えば分離部で再度分離処理を行い、再利用することができる。
【0018】
本発明の溶液成分の回収装置において、前記回収部は、滑らかな曲面により形成されている前記接続管により接続されているものとしてもよい。こうすれば、接続管で溶液の成分が移動しやすい。特に、接続管が水平方向の部位が水平面に対して傾斜して形成されているものとするのがより好ましい。
【0019】
本発明の溶液成分の回収装置において、前記溶液温度調整部は、前記熱交換部が前記分離部の壁面近傍に配設されており、前記攪拌部が前記収容された溶液を前記分離部の壁面側へ流動させて前記第1成分と前記第2成分との分離を行うものとしてもよい。こうすれば、溶液の温度分布をより均一とすると共に溶液成分の均一性をより保つことが可能であるため、より第1成分の固化を防止し、第1成分の再利用を一層図ることができる。
【0020】
本発明の溶液成分の回収装置において、前記溶液温度調整部は、前記第2成分を気化している溶液の温度が所定の判定温度に達したときに前記第1成分と前記第2成分との分離を終了したものとして分離処理を終了するものとしてもよい。こうすれば、溶液の温度を用いて比較的容易に分離処理の終了を判断することができ、ひいては、回収した成分の再利用をより容易に行うことができる。
【0021】
本発明の溶液成分の回収装置において、前記第1成分は、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーを含み、前記第2成分は、水であるものとしてもよい。また、本発明の溶液成分の回収装置において、前記第1成分は、成形したワークに形成されている空隙へ充填される含浸成分であり、前記第2成分は、前記含浸成分を溶解する溶媒であるものとしてもよい。このとき、前記第1成分は、成形したワークに形成されている空隙へ充填する含浸成分としての水溶性のメタクリル酸系のモノマーであり、前記第2成分は、前記含浸成分を溶解する溶媒としての水であるものとしてもよい。
【0022】
本発明の含浸処理・含浸成分回収システムは、
成形したワークに形成された空隙へ前記第1成分である含浸成分を含浸させる含浸槽と、
前記含浸槽で含浸したワークを前記第2成分である溶媒で洗浄する洗浄槽と、
前記第1成分を含浸成分とし前記第2成分を溶媒とする溶液を回収処理する態様を採用し、前記洗浄槽での洗浄後の前記含浸成分と前記溶媒とを含む溶液を前記分離部に収容する上述した溶液成分の回収装置と、
を備えたものである。
【0023】
本発明の溶液成分の回収装置は回収した成分の再利用をより容易に行うことができることから、これを備えた含浸処理・含浸成分回収システムも同様の効果を奏する。また、上述したいずれかの溶液成分の回収装置の態様を採用すればその態様に応じた効果を奏するものとなる。この含浸処理・含浸成分回収システムでは、ワークへ含浸する処理を実行したあと、廃液としての溶液に含まれる各成分を溶液成分の回収装置で回収して再利用することができる。
【0024】
本発明の含浸処理・含浸成分回収システムにおいて、前記溶液成分の回収装置は、前記分離部で回収した前記第1成分としての含浸成分を前記含浸槽へ供給するものとしてもよい。こうすれば、含浸成分をより効率よく再利用することができる。
【0025】
本発明の含浸処理・含浸成分回収システムにおいて、前記溶液成分の回収装置は、前記回収部で回収した前記第2成分としての溶媒を前記洗浄槽へ供給するものとしてもよい。一般に、含浸成分を微量含む溶媒は、浄化処理を行った上で廃棄することがあるが、含浸成分を含んでいてもそのまま利用可能である洗浄用の溶媒として回収した溶媒を利用することによって、より効率よく溶媒の再利用を図ることができる。また、浄化処理の抑制を図ることができる。
【0026】
本発明の含浸処理・含浸成分回収システムにおいて、前記洗浄槽は、前記ワークを洗浄することにより所定の濃度範囲の前記第1成分を含む溶液を排出する第1洗浄槽と、前記第1洗浄槽の後段に配設され前記第1洗浄槽で洗浄されたワークを更に洗浄することにより前記第1洗浄槽よりも低濃度の前記第1成分を含む溶液を排出し該排出した溶液を前記第1洗浄槽へ供給する第2洗浄槽とを含み、前記溶液成分の回収装置は、前記第1洗浄槽から排出された溶液を前記分離部へ収容して前記第1成分と前記第2成分とを分離し、前記回収部で回収された前記第2成分を前記第2洗浄槽へ供給するものとしてもよい。こうすれば、回収部で回収された第2成分を、第1成分の濃度の低い第2洗浄槽で利用し、第2洗浄槽で利用した第2成分を更に第1成分の濃度の高い第1洗浄槽で利用し、第1成分の濃度が高められたものを溶液の回収装置で分離回収するため、含浸処理での洗浄と、溶媒の回収とをより効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】含浸処理・含浸成分回収システム20の構成の概略を示す構成図。
【図2】溶液回収装置40の構成の概略を示す構成図。
【図3】含浸処理の一例を表すフローチャート。
【図4】溶液成分の回収処理の一例を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。本発明の溶液成分の回収装置は、酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分と該第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を収容する内部空間が形成されている分離部と、分離部に接続され酸素を分離部に収容された溶液へ供給する酸素供給部と、分離部の内部空間を減圧する減圧部と、分離部に収容された溶液を攪拌する攪拌部と分離部に収容された溶液と接触して熱交換する熱交換部とを有し所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう溶液の温度を調整する溶液温度調整部と、流体が流通可能な接続管を介して分離部に接続され分離部に収容された溶液から気化した第2成分を冷却して回収する回収部と、を備え、複数の成分を含む溶液を分離して回収するものである。ここでは、成形したワークに形成されている空隙へ充填される液状の含浸剤を第1成分として用い、この含浸剤を溶解する溶媒を第2成分として用いる装置について、一実施態様として以下具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態である含浸処理・含浸成分回収システム20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、本発明の一実施形態である溶液回収装置40の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の含浸処理・含浸成分回収システム20は、図1に示すように、成形されたワーク10の空隙へ含浸剤を含浸させる含浸処理装置30と、含浸処理装置30から排出された洗浄液(以下溶液とも称する)に含まれる成分を分離して回収する溶液回収装置40とを備えている。このワーク10は、例えば鋳造により成形した成形体であり、鋳造時においてその内部に空隙である鋳巣12が形成されてしまう場合がある。この含浸処理・含浸成分回収システム20では、含浸処理装置30によりこの鋳巣12に含浸剤を充填して固化させる処理(含浸処理)を施し、洗浄液と含浸剤とを含む溶液を排出する一方、溶液回収装置40により分離回収された洗浄液と含浸剤とを含浸処理装置30に戻して洗浄液と含浸剤とを再利用するシステムに構成されている。ここでは、洗浄液(含浸剤を溶解する溶媒)として水を用いた装置について具体的に説明する。
【0030】
含浸処理装置30は、ワーク10に形成された空隙である鋳巣12などへ含浸剤を充填する含浸槽と、含浸剤を充填したワーク10を洗浄する洗浄槽と、鋳巣12に充填された含浸剤を固化する固化槽と、を備えている。含浸槽は、含浸剤を収容した貯液槽21と、貯液槽21から供給された含浸剤と1以上のワーク10とを収容しワーク10へ含浸剤を充填する含浸タンク22と、含浸剤を充填したワーク10から含浸剤を除去する液切遠心槽23とにより構成されている。貯液槽21には、例えば、加熱することにより固化するモノマーなどが含浸剤として収容されている。この含浸剤としては、例えば、所定の固化温度以上に加熱することにより固化反応が促進するものを用いることができ、酸素の非存在下で固化反応が促進するものをも利用することができる。含浸剤としては、例えば、エポキシ樹脂系のモノマーやアクリル樹脂系のモノマーを用いることができる。このうち、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーを主成分として含むものを用いるのが好ましく、水溶性のメタクリル酸系のモノマーやアクリル酸系のモノマーを用いることができ、水溶性のメタクリル酸系のモノマーを用いるのがより好ましい。このメタクリル酸系のモノマーとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル及びポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられ、このうち、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチルが鋳巣12への充填効果が比較的高くより好ましい。また、これらは必要に応じて2種以上を組み合わせてもよい。この含浸剤には、硬化開始剤が混合されていてもよいし、水溶性のモノマーに非水溶性のモノマーが添加されていてもよい。含浸タンク22は、図示しない蓋が配設され密閉可能であり、この蓋により密閉することにより含浸タンク22の内部空間を減圧して鋳巣12から脱気したり、含浸タンク22の内部空間を加圧して鋳巣12への含浸液を充填したりすることが可能となっている。液切遠心槽23は、円筒形の外壁の内側に軸回転可能な円筒形の内壁部が配設されており、内壁部を回転することによりワーク10の外壁に付着した含浸液を遠心分離するように構成されている。この液切遠心槽23の液切りにより生じた含浸液は貯液槽21へ供給する。なお、後述する第1水切遠心槽26、第2水切遠心槽29、第3水切遠心槽33、湯切遠心槽35についても液切遠心槽23と同様の構成であるものとし、これらの構成の説明は以下では省略する。
【0031】
洗浄槽は、第1洗浄槽24と第1洗浄液タンク25と第1水切遠心槽26とにより構成され含浸タンク22で含浸処理を行ったワーク10を洗浄・液切りする第1循環部と、第2洗浄槽27と第2洗浄液タンク28と第2水切遠心槽29とにより構成され第1循環部で洗浄したワーク10を更に洗浄・液切りする第2循環部と、回転洗浄槽31と第3洗浄液タンク32と第3水切遠心槽33とにより構成され第2循環部で洗浄したワーク10を仕上げに洗浄・液切りする回転洗浄部とにより構成されている。第1洗浄槽24は、第1洗浄液タンク25から供給される洗浄液を収容可能であり、洗浄液の流動によりワーク10の外部に付着した不要な含浸剤を洗い流すタンクとして構成されている。第1洗浄液タンク25は、比較的含浸剤の濃度の高い洗浄液(ここでは含浸剤を含む水)を収容するタンクであり、第1洗浄槽24との洗浄液のやりとりが可能な配管が配設されると共に、第1水切遠心槽26で生じた洗浄水を流入する配管が配設されている。このように、第1洗浄槽24と第1洗浄液タンク25と第1水切遠心槽26とは、第1循環部において洗浄液を循環する循環経路として構成されている。また、第1洗浄槽24には、含浸剤の濃度が高まった洗浄液を排水貯槽36へ移送する配管や後段の第2洗浄槽27からの比較的含浸剤の濃度の低い洗浄液を流入する配管なども配設されている。第2循環部は、第1循環部よりも含浸剤の濃度が低い洗浄液を循環する以外は第1循環部と同様の構成となっている。第2洗浄槽27には、第2洗浄液タンク28との洗浄液のやりとりが可能な配管が配設されると共に、第2水切遠心槽29で生じた洗浄水を流入する配管が配設されている。また、第2洗浄槽27には、再生水貯槽38と接続する配管が配設されており、溶液回収装置40により分離回収された純度の高い洗浄液(水)を流入可能となっている。また、第2洗浄槽27には、含浸剤の濃度が比較的高まった洗浄液を第1洗浄槽24へ移送する配管なども配設されている。回転洗浄部では、洗浄後の洗浄液における含浸剤の濃度が極めて低いことから、回転洗浄槽31と第3洗浄液タンク32とで洗浄液のやりとりを行い、第3水切遠心槽33で生成した洗浄液については廃液処理を行うものとした。
【0032】
固化槽は、含浸剤の固化温度以上の温度範囲で保持可能なヒータを有する湯浸槽34と、湯浸槽34で固化処理を行ったワーク10を遠心して湯切りを行う湯切遠心槽35とにより構成されている。含浸処理・含浸成分回収システム20では、温水によりワーク10を加熱して含浸剤を固化するものとした。そして、湯切遠心槽35で湯切りを行うことにより、含浸剤16が空隙内で固化した含浸処理後のワーク14とすることができ、ワーク10の含浸剤による液漏れ防止や補強などを行うことができる。なお、ここでは、ワーク10の内部に含浸した含浸剤を湯浸槽34により加熱・固化するものとしたが、含浸剤の固化温度以上となる温風を生成可能な温風槽に含浸処理後のワーク10を載置し、ワーク10の内部に含浸した含浸剤を加熱・固化するものとしてもよい。
【0033】
溶液回収装置40は、含浸剤と水とを含む溶液を収容しこの各成分を分離する分離部41と、分離部41に接続され分離部41の内部に収容された溶液へ空気を供給する空気供給管45と、分離部41の内部空間を減圧する真空ポンプ63と、分離部41の内部に収容された溶液の温度を調整する攪拌部43及び熱交換部44と、分離部41で気化した水分を冷却して回収する主水回収部51及び副水回収部61と、を備えている。また、溶液回収装置40には、含浸処理装置30から排出された洗浄後の含浸剤を含む溶液(洗浄液)を収容する排水貯槽36と、溶液回収装置40により洗浄液から分離回収した純度の高い含浸剤を収容する再生含浸液貯槽37と、溶液回収装置40により洗浄液から分離回収した純度の高い水を収容する再生水貯槽38とが併設されている。
【0034】
分離部41は、開閉可能な蓋を備え減圧状態に耐えうる密閉型の断熱耐圧容器として構成されている。この分離部41の上部には、排水貯槽36からの溶液を導入する供給管39と、主水回収部51へ気化した水蒸気を移送する接続管48と、分離部41に収容された溶液を攪拌する攪拌部42とが配設されている。また、分離部41の中央から下方の外周などには、収容した溶液と熱交換しこの溶液の温度を調整する熱交換部43が設けられている。また、分離部41の下部には、分離部41の内部空間に収容された溶液へ空気を導入する空気供給管45と、分離部41の内部空間に収容された溶液を外部へ排出する含浸液回収管47とが配設されている。供給管39は、減圧状態に耐えうる耐圧管であり、その一端が排水貯槽36の下方に配設されており、溶液を供給する際に開放される電磁バルブである供給バルブ39aが配設されている。攪拌部42は、分離部41の上下方向に配設されその下端にスクリューが固定され溶液を攪拌する攪拌軸42aと、分離部41の上部に固定され攪拌軸42aを回転駆動する攪拌モータ42bとを備えている。この攪拌軸42aには、分離部41の内部空間を減圧状態に保つ図示しない封止部が設けられている。この攪拌部42では、攪拌軸42aを回転駆動すると分離部41に収容された溶液を分離部41の壁面側へ流動させるよう構成されている。熱交換部43は、分離部41の外周(壁面)に形成され冷媒を収容可能なジャケット部43aと、ジャケット部42の内部を循環する冷媒の温度を検出する温度センサ43bと、この冷媒の温度をヒータの熱及び冷却水により調整する熱交換器43cと、冷媒を循環させる循環ポンプ43dとを備えている。この熱交換部43及び攪拌部42により、分離部41に収容された溶液の温度を含浸剤の固化が促進される所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう溶液の温度を調整するのである。また、ここでは、温度センサ43bの検出値に基づいて、水を気化している溶液の温度が所定の判定温度に達したときに含浸剤と水との分離回収を終了したものとして分離処理を終了する設定となっている。この判定温度は、例えば、運転真空度においての気液平衡関係や溶液の温度上昇などを含む物性の関係を実験により求め、この関係を用いて、含浸剤に含まれる水の許容含有量(例えば1重量%や5重量%、10重量%など)に応じて定めることができる。なお、気液平衡関係には、例えば、所定圧において溶液から気化した気相中での含浸剤と溶媒との混合状態(混合比率など)の関係や、この溶液中の含浸剤と溶媒との濃度と温度との関係などを含むものとする。なお、分離部41に収容され所定圧で分離中の溶液に含まれる含浸剤の濃度が高まると、この溶液の温度が上昇するという相関関係があることが実験により確認されている。したがって、溶液の温度を用いて分離中の溶液に含まれる含浸剤の濃度を把握可能である。空気供給管45は、分離部41の下方側に開口部が形成されており、その他端側に空気を所定圧で供給する空気供給ポンプ46が配設されている。このため、分離部41の下方にある開口部から上方へ向かって安定的に空気が導入されるから、溶液中に酸素をより均一に供給することができる。この空気供給管45には、空気を供給する際に開放される電磁バルブである空気バルブ45aが配設されている。含浸液回収管47は、分離部41の下部から下方に配設されており、その下方の先端には移動可能な含浸液移送タンク49が配置されている。分離回収された含浸剤は、この含浸液移送タンク49を介して再生含浸液貯槽37へ移送される。この含浸液回収管47には、分離部41に収容されている溶液を排出する際に開放される電磁バルブである含浸液回収バルブ47aが配設されている。接続管48は、減圧状態に耐えうる耐圧管であり、その一端が主水回収部51の上方に接続されており、分離部41で気化した水蒸気を主水回収部51へ移送可能な筒状体として構成されている。この接続管48には、その外周全体に断熱材が形成されており、内部を流通する蒸気の温度をできるだけ保持するようになっている。また、接続管48は、屈曲する部分などが滑らかな曲面により形成され、更に水平方向に形成されている部位が水平面に対して主水回収部51側よりも分離部41側が下方になるよう傾斜して形成されている。このように、接続管48は、1以上の水平方向に形成されている部位を有しているが、管内部に存在する水などが分離部41側へ流れやすく形成されている。
【0035】
主水回収部51は、円筒形のコンデンサとして構成されており、冷却機70に接続されている冷却配管71,72を介して冷却水(例えば5℃〜10℃など)が循環可能な配管が内部に設けられている。この主水回収部51の下方には凝縮した水が回収される貯水部52と、貯水部52の下方に設けられ回収した水を移送する水回収管53と、水回収管53に接続された水移送タンク54と、貯水部52の上方に配設され副水回収部61で凝縮した水を貯水部52へ導入する副回収管58とを備えている。主水回収部51の上部には、回収経路の圧力を測定可能な圧力センサ51aが配設されており、分離部41や接続管48などの内部空間の圧力を把握可能となっている。また、貯水部52の上部には回収された水の液面を検出する位置センサ52aが配設されている。水回収管53は、貯水部52の下部から下方に配設されており、その下方の先端には一時的に回収した水を収容する水移送タンク54が配置されている。この水移送タンク54には、その下部に、電磁バルブである移送バルブ57aが設けられ他端側が再生水貯槽38に接続された水移送管57の一端側が配設されている。この水回収管53には、貯水部52に収容されている溶液を排出する際に開放される電磁バルブである水回収バルブ53aが配設されている。この水回収管53には、加圧管55及び加圧バルブ55aを介して圧縮ポンプ56が接続される一方、減圧管64及び減圧バルブ64aを介して真空ポンプ63が接続されている。このように、圧縮ポンプ56及び真空ポンプ63により、水回収管53及び水移送タンク54の内部を加圧又は減圧可能となっている。そして、水移送タンク54を減圧及び加圧することにより、貯水部52に分離回収された水は、水移送タンク54及び水移送管57を介して再生水貯槽38へ移送される。副回収管58は、減圧状態に耐えうる耐圧管であり、その一端が副水回収部61の下端側に接続されている。この副回収管58は、屈曲する部分などが滑らかな曲面により形成され、更に水平方向に形成されている部位が水平面に対して副水回収部61側よりも貯水部52側が下方になるよう傾斜して形成されている。このように、副回収管58は、管内部に存在する水が貯水部52側へ流れやすく形成されている。
【0036】
副水回収部61は、円筒形のコンデンサとして構成されており、冷却機74に接続されている冷却配管75,76を介して冷却水が循環可能な配管が内部に設けられている。この副水回収部61は、主水回収部51よりも低温の冷却水(例えば0℃〜5℃など)が循環しており、水蒸気などが後段へ排出されるのを防止するものである。この副水回収部61の上部には、他端側が真空ポンプ63に接続された真空接続管62が配設されている。この真空接続管62には、電磁バルブである真空バルブ62aが接続されている。真空ポンプ63は、分離部41の内部空間を例えば数Torrまで減圧可能な減圧容量を有することが好ましい。このように、溶液回収装置40では、真空ポンプ63の駆動によって、真空接続管62、副水回収部61、副回収管58、貯水部52、主水回収部51及び接続管48を介して分離部41、供給管39までを減圧とすると共に、分離部41に収容された溶液から溶媒としての水を気化して貯水部52に回収することが可能となっている。なお、各配管の接続部や各バルブ類は、減圧に耐えうる接続がなされている。また、この溶液回収装置40では、溶液や分離した水などを移送するポンプなどの駆動機器は供給管39、接続管48及び真空接続管62には配設されておらず、真空ポンプ63などの圧力差により、回収した水などを移送するように構成されている。このように、減圧下で溶液が流通する部分には駆動機器を配設しないようにすることにより、その駆動機器内で含浸剤が固化して生じる不具合の発生を防止することができる。
【0037】
また、接続管48及び分離部41には、洗浄用水配管80が接続されており、内部を洗浄可能となっている。ここでは、接続管48の主水回収部51への接続部に洗浄バルブ80aを介して洗浄用水配管80が接続され、攪拌軸42aの分離部41への接続部へ洗浄バルブ81aを介して攪拌部洗浄管81が接続され、分離部41の内部空間の洗浄用に洗浄バルブ82aを介して分離部洗浄管82が接続され、接続管48の下段の水平部の洗浄用に洗浄バルブ83aを介して接続部第1洗浄管83が接続されている。ここでは、接続管48は分離部41側へ水が流れるように傾斜して配設されているから、接続管48の内部を洗浄した洗浄用水は、管内部に付着した含浸剤を溶解しながら分離部41の内部空間へ流れ込むようになっている。このため、接続管48、攪拌部42及び分離部41を洗浄した洗浄用水についても排水貯槽36から供給された洗浄液と同様に分離回収することができる。
【0038】
次に、含浸処理・含浸成分回収システム20における、ワーク10への含浸処理及び、含浸処理で排出された洗浄液(溶液)に含まれる成分の回収方法について図を用いて説明する。図3は、含浸処理の一例を表すフローチャートであり、図4は、溶液成分の回収処理の一例を表すフローチャートである。この含浸処理では、成形したワーク10に形成された空隙へ含浸剤を含浸させる含浸工程と、含浸剤を含浸したワーク10を洗浄液(含浸液を溶解する溶媒)で洗浄する洗浄工程と、ワーク10に含浸した含浸剤を固化させる固化工程と、洗浄工程で含浸剤の濃度が高まった洗浄液を溶液回収装置40側へ移送する移送工程と、を含むものとしてもよい。含浸剤としては、例えば、エポキシ樹脂系のモノマーやアクリル樹脂系のモノマーを用いることができる。このうち、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーを主成分として用いるのが好ましく、水溶性のメタクリル酸系のモノマーやアクリル酸系のモノマーを用いることができ、水溶性のメタクリル酸系のモノマーを用いるのがより好ましい。このとき、洗浄液としては水を用いることができる。水溶性のメタクリル酸系のモノマーとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル及びポリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられ、このうち、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチルが鋳巣12への充填効果が比較的高くより好ましい。この含浸剤には、硬化開始剤を混合してもよいし、水溶性のモノマーに非水溶性のモノマーを添加してもよい。ここでは、非酸素共存下で且つ30℃以上で固化反応が進行するメタクリル酸2−ヒドロキシルエチルを含浸剤として用い、洗浄剤として溶媒の水を用いる場合について主として説明する。
【0039】
含浸処理を開始するとまず、図1、図3に示すように、含浸タンク22へ貯液槽21から含浸剤を導入すると共に1以上のワーク10をこの含浸タンク22へ浸漬させる浸漬処理を行い(ステップS100)、図示しない蓋により含浸タンク22を密閉し図示しない真空ポンプを駆動して含浸タンク22の内部を減圧する真空処理を行う(ステップS110)。すると、ワーク10に形成されている鋳巣12(空隙)が脱気され、鋳巣12の内部に含浸剤が入り込む。次に、図示しない加圧ポンプを駆動させ含浸タンク22の内部を加圧する加圧処理を行い(ステップS120)、鋳巣12の内部への含浸剤の充填をより図る。続いて、含浸タンク22から液切遠心槽23へワーク10を移動させ、液切処理を行う(ステップS130)。このような処理を行い含浸工程を終了する。
【0040】
次に、液切処理を行ったワーク10を第1洗浄槽24へ移動し、第1洗浄液タンク25から含浸剤の濃度の比較的高い洗浄液(例えば10〜40重量%など)を第1洗浄槽24へ供給してワーク10の第1洗浄処理を行い(ステップS140)、ワーク10を第1水切遠心槽26へ移動して水切処理を行う(ステップS150)。このとき、第1循環部の洗浄液は、第1洗浄槽24、第1洗浄液タンク25を循環し、第1水切遠心槽26で排出された洗浄液は第1洗浄液タンク25へ戻される。この第1循環部の洗浄液は、ワーク10の洗浄のたびに含浸剤の濃度が高まることになる。次に、ワーク10を第1水切遠心槽26から第2洗浄槽27へ移動し、第2洗浄液タンク28から含浸剤の濃度の比較的低い洗浄液(例えば1〜20重量%など)を第2洗浄槽27へ供給してワーク10の第2洗浄処理を行い(ステップS160)、ワーク10を第2水切遠心槽29へ移動して水切処理を行う(ステップS170)。このとき、第2循環部の洗浄液は、第2洗浄槽27及び第2洗浄液タンク28を循環し、第2水切遠心槽29で排出された洗浄液は第2洗浄液タンク28へ戻される。この第2循環部の洗浄液は、第1循環部に比して含浸液の濃度が低いものではあるが、ワーク10の洗浄のたびに含浸剤の濃度が高まることになる。続いて、水切処理を行ったワーク10を回転洗浄槽31へ移動し、第3洗浄液タンク32から洗浄液を回転洗浄槽31へ供給してワーク10の回転洗浄処理を行い(ステップS180)、ワーク10を第3水切遠心槽33へ移動して水切処理を行う(ステップS190)。このような処理を行い洗浄工程を終了する。
【0041】
次に、洗浄工程を経たワーク10に含まれる含浸剤の固化処理を行う(ステップS200)。ここでは、第3水切遠心槽33からワーク10を湯浸槽34へ移動し、含浸剤が固化する温度(例えば80℃〜100℃など)で固化が終了する時間湯浸処理を行い、湯切遠心槽35へワーク10を移動して湯切処理を行い、適宜乾燥処理などを行い、含浸処理後のワーク14を得ることができる。なお、この固化処理は、湯浸処理に代えてワーク10へ固化温度以上の温風を当てて含浸剤を固化する温風処理により行うものとしてもよい。こうすれば、湯切処理や乾燥処理などを省略することができる。固化処理は、含浸剤に適した方法を適宜選択すればよい。
【0042】
また、固化処理のあと、例えば第1洗浄液タンク25に収容されている洗浄液の含浸剤の濃度が所定の回収濃度(例えば20重量%や30重量%など)に至った場合に、第1洗浄液タンク25に収容されている第1洗浄液を排水貯槽36へ移送する洗浄液移送処理を行い(ステップS210)、このルーチンを終了する。このとき、第2洗浄液タンク28に収容されている第2洗浄液も含浸剤の濃度が高まっているから、この第2洗浄液を第2洗浄槽27から第1洗浄槽24へ移送する。また、後述する再生水貯槽38に収容されている純度の高い回収水を第2洗浄槽27へ移送する。このように、第2循環部と第1循環部とにより繰り返し洗浄処理を行うと共に、各洗浄液に含まれる含浸剤の濃度をより高めるのである。こうすれば、溶液回収装置40により溶媒と含浸剤との分離回収を行いやすい。
【0043】
次に、含浸処理装置30から排出された溶液成分の回収処理について説明する。この処理は、図2に示す溶液回収装置40を用いて実行する。まず、溶液成分の回収処理では、冷却機70,74を起動し、主水回収部51及び副水回収部61の冷却処理を行い(ステップS300)、分離部41の内部空間の真空処理を行う(ステップS310)。分離部41の真空処理は、供給バルブ39a、含浸液回収バルブ47a及び水回収バルブ53aを閉鎖し、真空バルブ62aを開放し、真空接続管62,副水回収部61,副回収管58,貯水部52,主水回収部51及び接続管48を介して真空ポンプ63により行うものとする。次に、排水貯槽36に収容されている、含浸剤を含む溶液(洗浄液)を分離部41へ導入する注液処理を行う(ステップS320)。ここでは、分離部41の内部空間が減圧下にあることから、供給バルブ39aを開放することによって自然に供給管39を介して溶液が分離部41の内部へ導入される。次に、空気供給ポンプ46を駆動し、空気供給管45を介して溶液内へ空気を供給する酸素供給処理を行う(ステップS330)。この処理は、例えばメタクリル酸2−ヒドロキシルエチルを含浸剤とした場合など、酸素の非共存下において固化反応が進行する含浸剤に対して特に有効である。そして、分離部41に所定容量の溶液が注液されると供給バルブ39aを閉鎖する。次に、攪拌部42の攪拌モータ42bを駆動すると共に熱交換部43の熱交換器43c及び循環ポンプ43dを起動することにより分離部41に収容された溶液の温度を調整する温度調整処理を行う(ステップS340)。ここでは、溶液の温度は、含浸剤の固化が進行する固化温度よりも低い温度且つ水が凍結しない範囲の温度に制御するものとする。この温度範囲は、例えば5℃以上30℃以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは25℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
【0044】
続いて、分離部41の内部空間を所定の減圧状態として水を溶液から気化させて回収する回収処理を行う(ステップS350)。ここでは、例えば、含浸剤と水とを含む溶液を、水の気化は進行するが含浸剤の気化の進行が抑制される所定の減圧範囲内で減圧し水を気化させるものとするのがより好ましい。この減圧範囲は、圧力センサ51aの測定値と貯水部52で回収した回収水に含まれる含浸剤の量との関係から経験的に求めることができる。なお、ここでの溶液に含まれる含浸剤は嫌気状態で固化が進行することから、水の気化を促すために減圧しすぎ液中の酸素量が減りすぎないよう、含浸剤の固化をより抑制可能且つ水の気化を促進可能である回収処理での減圧範囲を経験的に求めることがより好ましい。更に、溶液に含まれる含浸剤は所定の固化温度以上で固化が進行することから、含浸剤の固化温度との関係から回収処理での減圧範囲を経験的に求めるものとしてもよい。この減圧範囲は、例えば、溶媒の沸点温度が10℃以上30℃以下の範囲、より好ましくは10℃以上25℃以下の範囲となるように設定するものとしてもよい。こうすれば、30℃以下では、溶媒の気化を促進しやすいし、10℃以上では、後段での気化した溶媒の凝縮を行いやすい。例えば、この減圧範囲は、0.5kPa以上10kPa以下の範囲が好ましく、1kPa以上5kPa以下の範囲がより好ましい。このように分離部41の内部空間を減圧すると、室温近傍で溶液が沸騰するから、溶液に含まれる含浸剤の固化反応の進行を抑制しつつ、溶媒である水の気化を促すことができる。この回収処理を行うと、分離部41に収容された溶液の含浸剤の濃度が高まると共に、気化した水が貯水部52へ回収される。
【0045】
続いて、貯水部52に回収された回収水量Lが所定の閾値Lref以上であるか否かを位置センサ52a(図2参照)の検出値に基づいて判定し(ステップS360)、回収水量Lが所定の閾値Lref以上であるときには、貯水部52に収容されている回収水を水移送タンク54へ移送する回収水移送処理を行う(ステップS370)。この処理は、水回収バルブ53a、加圧バルブ55a及び移送バルブ57aを閉鎖し、減圧バルブ64aを開放して水回収管53及び水移送タンク54の内部を減圧したあと、減圧バルブ64aを閉鎖して水回収バルブ53aを開放することにより行うことができる。水移送タンク54が減圧されていると、水回収バルブ53aの開放に伴い、貯水部52に収容されている回収水が自然に水移送タンク54側へ吸い出される。また、水移送タンク54が許容量まで収容されると、水回収バルブ53a、移送バルブ57a及び減圧バルブ64aを閉鎖し、加圧バルブ55aを開放して水移送タンク54の内部を加圧し、移送バルブ57aを開放することにより、水移送タンク54に収容されている回収水を水移送管57を介して再生水貯槽38へ移送することができる。
【0046】
ステップS370のあと、または、ステップS360で回収水量Lが所定の閾値Lref以上でないときには、分離部41の温度Tが所定の閾値Tref以上であるか否かを温度センサ43bの検出値に基づいて判定する(ステップS380)。ここでは、水を気化している溶液の温度Tが所定の判定温度Trefに達したときに含浸剤と水との分離回収を終了したものとして分離処理を終了するものとしている。この判定温度Trefは、例えば、水を気化しているときの温度と溶液中の水の含有量との関係を経験的に求め、この関係を用いて、含浸剤に含まれる水の許容含有量(例えば1重量%や5重量%、10重量%など)に応じて定めることができる。分離部温度Tが所定の閾値Tref以上でないと判定されたときには、溶液の分離回収がまだ十分でないものとみなし、ステップS350以降の処理を繰り返す。一方、分離部温度Tが所定の閾値Tref以上であると判定されたときには、分離部41に収容された溶液は許容含有量未満の溶媒が含まれている高純度の含浸剤となっているものとみなし、回収した含浸剤を移送する回収含浸剤移送処理を行う(ステップS390)。この処理は、分離部41の内部空間を常圧とし、含浸液回収バルブ47aを開放して自重により分離部41内の溶液を含浸液回収管47を介して含浸液移送タンク49へ移送する。そして、含浸液移送タンク49に収容された溶液(高純度の含浸剤)を再生含浸液貯槽37へ導入するのである。
【0047】
このように、溶液に含まれる溶媒と含浸剤とを分離回収すると、適宜、装置内の水洗処理を行い(ステップS400)、このルーチンを終了する。この水洗処理では、洗浄用水配管80を介して洗浄用水を分離部41内部、攪拌部42、接続管48へ供給し、装置内に付着した含浸剤を洗い流し、ワーク10を洗浄した溶液を分離部41へ収容するのである。この水洗処理により分離部41に収容された溶液は、次回に導入される新たな溶液と共に分離回収処理するものとしてもよい。
【0048】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の分離部41が本発明の分離部に相当し、空気供給管45及び空気供給ポンプ46が酸素供給部に相当し、空気供給管45が供給管に相当し、空気供給ポンプ46が調圧部に相当し、真空接続管62,副水回収部61,副回収管58,貯水部52,主水回収部51,接続管48及び真空ポンプ63が減圧部に相当し、攪拌部42及び熱交換部43が溶液温度調整部に相当し、主水回収部51及び副水回収部61が回収部に相当する。なお、本実施形態では、含浸処理・含浸成分回収システム20の動作を説明することにより本発明の溶液成分の回収方法の一例も明らかにしている。
【0049】
以上説明した含浸処理・含浸成分回収システム20によれば、酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する含浸剤と含浸剤を溶解する溶媒とを含む溶液を分離部41へ収容し、分離部41に収容された溶液へ空気(酸素)を供給すると共に、分離部41の内部空間を減圧し、攪拌部42により溶液を攪拌しながら熱交換部43により溶液の温度を所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう調整して溶媒を気化させ、気化した溶媒を主水回収部51及び副水回収部61により冷却して回収する。このように、酸素を供給しながら所定の分離温度範囲で減圧して含浸剤と溶媒とを分離することにより、含浸剤の固化を防止する。したがって、回収した成分の再利用をより図ることができる。また、分離部41の下方側に開口部が形成されている空気供給管45と、空気供給管45へ空気を所定圧で供給する空気供給ポンプ46とを有するため、より一定の供給量で溶液へ酸素を供給可能であり、より含浸剤分の固化を抑制することができ、ひいては含浸剤の再利用を一層図ることができる。更に、接続管48や副回収管58は、滑らかな曲面により形成されており、水平方向に形成されている部位が水平面に対して傾斜して形成されているため、管内で凝縮した液体が流れやすく、管内での閉塞などをより抑制することができる。また、接続管48は、水平方向の部位が水平面に対して主水回収部51側よりも分離部41側が下方になるよう傾斜して形成されているため、接続管48内の液体が分離部41側へ流れやすく、例えば分離部で再度分離処理を行い、再利用することができる。更にまた、熱交換部43のジャケット部43aが分離部41の壁面に配設されており、攪拌部42が分離部41に収容された溶液を分離部41の壁面側へ流動させて含浸剤と溶媒との分離を行うため、温度分布をより均一とすると共に溶液成分の均一性をより保つことが可能であり、より含浸剤の固化を防止し、含浸剤の再利用を一層図ることができる。そして、気化している溶液の温度Tが所定の判定温度Trefに達したときに含浸剤と溶媒との分離を終了するため、溶液の温度を用いて比較的容易に分離処理の終了を判断することができ、ひいては、回収した成分の再利用をより容易に行うことができる。
【0050】
また、含浸処理・含浸成分回収システム20では、ワークへ含浸する処理を実行したあと、廃液としての溶液に含まれる各成分を溶液回収装置40で回収して含浸処理装置30で再利用することができる。更に、主水回収部51及び副水回収部61で回収された溶媒を、含浸剤の濃度の低い第2循環部で利用し、第2循環部で利用した洗浄液を更に含浸剤の濃度の高い第1循環部で利用し、含浸剤の濃度が高められたものを溶液回収装置40で分離回収するため、含浸処理での洗浄と、溶媒の回収とをより効率よく行うことができる。更にまた、溶液回収装置40は、分離部41で回収した含浸剤を含浸槽へ供給するため、含浸剤をより効率よく再利用することができる。また、一般に、含浸剤を微量含む溶媒は、浄化処理を行った上で廃棄することがあるが、含浸剤を含んでいてもそのまま利用可能である洗浄用の溶媒として回収した溶媒を利用することによって、より効率よく溶媒の再利用を図ることができる。また、回収した溶媒に対する浄化処理を抑制することができる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、第1成分を含浸剤とし、第2成分を溶媒としたが、第1成分を所定の固化温度以上で固化が進行する成分とし、第2成分を、第1成分を溶解する成分とするものであれば特にこれに限定されない。例えば、有機溶媒に溶解可能なモノマーを第1成分とし、このモノマーを溶解する有機溶媒を第2成分としてもよい。この有機溶媒に溶解可能なモノマーとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキルメタクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは必要に応じ、2種以上を組み合わせてもよい。また、モノマーを溶解する有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、有機溶媒に溶解可能なモノマーとの相溶性がよく、有機溶媒の沸点が前記有機溶媒に溶解可能なモノマーの沸点と大きな差異を有する溶媒が好ましい。例えば、メチレンクロライド等の塩素系炭化水素、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。
【0053】
上述した実施形態では、溶液回収装置40で回収した含浸剤及び溶媒を含浸処理装置30で再利用するものとしたが、特にこれに限定されず、溶液回収装置40で回収した含浸剤及び溶媒を他で利用するものとしてもよい。また、上述した実施形態では、含浸処理装置30と溶液回収装置40とを備えた含浸処理・含浸成分回収システム20として説明したが、溶液回収装置40のみとしてもよい。更に、溶液を分離温度範囲内で減圧し第2成分を気化させる、複数の成分を含む溶液を分離して回収する溶液成分の回収方法としてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、第1成分として酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行するものを用いるものとして説明したが、酸素の非存在下では固化が進行しない第1成分を第1成分と第2成分とを分離回収するものとしてもよい。こうすれば、酸素の供給を省略して、第1成分と第2成分とを分離回収することができる。
【0055】
上述した実施形態では、空気供給管45と空気供給ポンプ46とを備え、分離部41に収容された溶液へ空気(酸素)を一定量で供給するものとしたが、酸素を溶液へ供給可能であるものとすればよく、例えば、空気供給ポンプ46を省略してもよい。こうしても、分離部41の内部空間が減圧となることにより空気供給管45を介して空気が分離部41の内部空間へ供給される。このように、空気供給ポンプ46を省略すると空気の供給を一定にしにくくなるが、構成を簡略化することはできる。
【0056】
上述した実施形態では、接続管48や副回収管58は、水平に形成されている部分が傾斜しているものとしたが、特にこれに限定されず、水平に形成されている部分が傾斜していないものとしてもよい。また、上述した実施形態では、接続管48や副回収管58は、滑らかな曲面により形成されているものとしたが、特にこれに限定されず、滑らかな曲面で形成されていないものとしてもよい。こうしても、回収した成分の再利用をより図ることはできる。
【0057】
上述した実施形態では、熱交換部43のジャケット部43aが分離部41の壁面に配設されており、攪拌部42が分離部41に収容された溶液を分離部41の壁面側へ流動させて含浸剤と溶媒との分離を行うものとしたが、溶液を攪拌する攪拌部と分離部に収容された溶液と接触して熱交換する熱交換部とを有し、所定の分離温度範囲となるよう溶液の温度を調整するものとすれば、特にこれに限定されず、いかなる方法を用いてもよい。
【0058】
上述した実施形態では、気化している溶液の温度Tが所定の判定温度Trefに達したときに含浸剤と溶媒との分離を終了するものとしたが、第1成分に含まれる第2成分の濃度を把握可能なパラメータを用いるものとすれば、特にこれに限定されずに第1成分と第2成分との分離の終了を判断することができる。また、ジャケット部43aの温度を計測してこれを分離部41に収容されている溶液の温度とみなすものとしてもよいし、分離部41に収容されている溶液の温度を直接測定するものとしてもよい。なお、各判定処理は、操作者が行ってもよいし、コンピュータが行うものとしてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、含浸処理・含浸成分回収システム20において、液切遠心槽23、第1水切遠心槽26、第2水切遠心槽29、第3水切遠心槽33及び湯切遠心槽35など、遠心により液を分離するものとしたが、例えば振動など液を分離可能なものであれば、特にこれに限定されない。また、含浸処理・含浸成分回収システム20において、洗浄槽は、第1循環部、第2循環部及び回転洗浄部の3つを備えるものとしたが、1以上であれば特に限定されない。なお、2以上の洗浄槽を備えるものとするのが、余分な含浸剤を洗浄する観点からは好ましい。
【0060】
上述した実施形態では、含浸処理において、貯液槽21から含浸液を導入すると共にワーク10を含浸タンク22へ浸漬させるものとしたが、含浸タンク22内に予め含浸剤を貯蔵しワーク10を液に浸漬しない高さに設置して減圧後、昇降装置などを用いてワーク10を浸漬させる方法を採用してもよい。また、上述した実施形態では、含浸処理において、加圧ポンプを駆動し含浸タンク22の内部を加圧する加圧処理を行いワーク10へ含浸剤を含浸するものとしたが、加圧ポンプを用いることなく雰囲気を大気圧に戻すことによって1気圧分の加圧を行うものとしてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、分離部41ではワーク10の鋳巣12へ含浸させ硬化させる含浸剤としてのアクリル樹脂系の水溶性のモノマーを第1成分とし、この含浸剤を溶解する溶媒としての水を第2成分とし、これらの分離を行うものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、ワーク10へ含浸させる含浸剤ではないアクリル樹脂系の水溶性のモノマーを主成分として含むものを第1成分とし、この含浸剤を溶解する溶媒としての水を第2成分としてこれらの分離を行うものとしてもよいし、アクリル樹脂系の水溶性ではないワーク10へ含浸させる含浸剤のモノマーを主成分として含むものを第1成分とし、この含浸剤を溶解する水又はそれ以外の溶媒を第2成分としてこれらの分離を行うものとしてもよい。
【実施例】
【0062】
以下には、含浸処理・含浸成分回収システム20を用いて具体的に含浸剤と溶媒とを分離回収した例を実施例として説明する。
【0063】
含浸剤としてメタクリル酸2−ヒドロキシルエチルとし、溶媒を水とした溶液を用いた。この溶液における含浸剤の濃度は、36重量%であった。この溶液を図2の分離部41に収容し、ジャケット部43aの温度を28℃、分離部41内部の圧力を1.33kPaの減圧下、空気供給管45からの空気供給量を0.5L/分、主水回収部51の冷却温度を6〜8℃として分離部41の内温が28℃となるまで分離処理を行った。その結果、含浸剤の回収量が28.7kg、含浸剤の純度が95.5重量%、含浸剤の含水率が1.8重量%であった。また、回収水の回収量が48.4kg、有機物含有量が0.8%、CODMnが7900mg/Lであった。また、この回収処理を3回繰り返したが、回収した含浸剤の粘度は、7.8〜8.1mPa・sで一定しており、回収処理の繰り返しによっても含浸剤は変質していないものと推察された。このように、溶液回収装置40を用いると、回収した成分の再利用をより図ることができることが明らかとなった。なお、分離部41に収容された分離中の溶液に含まれる含浸剤の濃度が高まると、分離部41での溶液の温度が上昇するという相関関係があることが実験により確かめられた。このため、溶液の温度を把握することによって所望の濃度の含浸剤を分離回収することができることがわかった。
【符号の説明】
【0064】
10,14 ワーク、12 鋳巣、16 含浸剤、20 含浸処理・含浸成分回収システム、21 貯液槽、22 含浸タンク、23 液切遠心槽、24 第1洗浄槽、25 第1洗浄液タンク、26 第1水切遠心槽、27 第2洗浄槽、28 第2洗浄液タンク、29 第2水切遠心槽、30 含浸処理装置、31 回転洗浄槽、32 第3洗浄液タンク、33 第3水切遠心槽、34 湯浸槽、35 湯切遠心槽、36 排水貯槽、37 再生含浸液貯槽、38 再生水貯槽、38a 貯槽バルブ、39 供給管、39a 供給バルブ、40 溶液回収装置、41 分離部、42 攪拌部、42a 攪拌軸、42b 攪拌モータ、43 熱交換部、43a ジャケット部、43b 温度センサ、43c 熱交換器、43d 循環ポンプ、45 空気供給管、45a 空気バルブ、46 空気供給ポンプ、47 含浸液回収管、47a 含浸液回収バルブ、48 接続管、49 含浸液移送タンク、51 主水回収部、51a 圧力センサ、52 貯水部、52a 位置センサ、53 水回収管、53a 水回収バルブ、54 水移送タンク、55 加圧管、55a 加圧バルブ、56 圧縮ポンプ、57 水移送管、57a 移送バルブ、58 副回収管、61 副水回収部、62 真空接続管、62a 真空バルブ、63 真空ポンプ、64 減圧管、64a 減圧バルブ、70,74 冷却機、71、72,75,76 冷却配管、80 洗浄用水配管、80a,81a,82a,83a 洗浄バルブ、81 攪拌部洗浄管、82 分離部洗浄管、83 接続部第1洗浄管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分を含む溶液を分離して回収する溶液成分の回収方法であって、
所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分と該第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を減圧し前記所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲で前記第2成分を気化させる分離工程と、
前記分離工程で気化した第2成分を冷却して回収する回収工程と、
を含む溶液成分の回収方法。
【請求項2】
前記第1成分は、酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する成分であり、
前記分離工程では、前記溶液へ酸素を供給しながら減圧して前記第2成分を気化させる、請求項1に記載の溶液成分の回収方法。
【請求項3】
前記分離工程では、前記第2成分を気化している溶液の温度が所定の判定温度に達したときに前記第1成分と前記第2成分との分離を終了したものとして終了する工程である、請求項1又は2に記載の溶液成分の回収方法。
【請求項4】
前記分離工程では、前記第1成分と前記第2成分とを含む溶液を、該第2成分の気化は進行するが該第1成分の気化の進行が抑制される所定の減圧範囲内で減圧し該第2成分を気化させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶液成分の回収方法。
【請求項5】
前記第1成分は、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーを含み、
前記第2成分は、水である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液成分の回収方法。
【請求項6】
前記第1成分は、成形したワークに形成されている空隙へ充填される含浸成分であり、
前記第2成分は、前記含浸成分を溶解する溶媒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶液成分の回収方法。
【請求項7】
複数の成分を含む溶液を分離して回収する溶液成分の回収装置であって、
酸素の非存在下及び所定の固化温度以上で固化が進行する第1成分と該第1成分を溶解する第2成分とを含む溶液を収容する内部空間が形成されている分離部と、
前記分離部に接続され酸素を該分離部に収容された溶液へ供給する酸素供給部と、
前記分離部の内部空間を減圧する減圧部と、
前記分離部に収容された溶液を攪拌する攪拌部と前記分離部に収容された溶液と接触して熱交換する熱交換部とを有し、前記所定の固化温度を下回る所定の分離温度範囲となるよう前記溶液の温度を調整する溶液温度調整部と、
流体が流通可能な接続管を介して前記分離部に接続され前記分離部に収容された溶液から気化した前記第2成分を冷却して回収する回収部と、
を備えた溶液成分の回収装置。
【請求項8】
前記酸素供給部は、前記分離部の下方側に開口部が形成されている供給管と、該供給管へ酸素を所定圧で供給する調圧部とを有している、請求項7に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項9】
前記回収部は、水平方向の部位が水平面に対して傾斜して形成されている前記接続管により接続されている、請求項7又は8に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項10】
前記回収部は、滑らかな曲面により形成されている前記接続管により接続されている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項11】
前記溶液温度調整部は、前記熱交換部が前記分離部の壁面近傍に配設されており、前記攪拌部が前記収容された溶液を前記分離部の壁面側へ流動させて前記第1成分と前記第2成分との分離を行う、請求項7〜10のいずれか1項に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項12】
前記溶液温度調整部は、前記第2成分を気化している溶液の温度が所定の判定温度に達したときに前記第1成分と前記第2成分との分離を終了したものとして分離処理を終了する、請求項7〜11のいずれか1項に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項13】
前記第1成分は、アクリル樹脂系の水溶性のモノマーを含み、
前記第2成分は、水である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項14】
前記第1成分は、成形したワークに形成されている空隙へ充填される含浸成分であり、
前記第2成分は、前記含浸成分を溶解する溶媒である、請求項7〜13のいずれか1項に記載の溶液成分の回収装置。
【請求項15】
成形したワークに形成された空隙へ前記第1成分である含浸成分を含浸させる含浸槽と、
前記含浸槽で含浸したワークを前記第2成分である溶媒で洗浄する洗浄槽と、
前記洗浄槽での洗浄後の前記含浸成分と前記溶媒とを含む溶液を前記分離部に収容する請求項14に記載の溶液成分の回収装置と、
を備えた含浸処理・含浸成分回収システム。
【請求項16】
前記溶液成分の回収装置は、前記分離部で回収した前記第1成分としての含浸成分を前記含浸槽へ供給する、請求項15に記載の含浸処理・含浸成分回収システム。
【請求項17】
前記溶液成分の回収装置は、前記回収部で回収した前記第2成分としての溶媒を前記洗浄槽へ供給する、請求項15又は16に記載の含浸処理・含浸成分回収システム。
【請求項18】
前記洗浄槽は、前記ワークを洗浄することにより所定の濃度範囲の前記第1成分を含む溶液を排出する第1洗浄槽と、前記第1洗浄槽の後段に配設され前記第1洗浄槽で洗浄されたワークを更に洗浄することにより前記第1洗浄槽よりも低濃度の前記第1成分を含む溶液を排出し該排出した溶液を前記第1洗浄槽へ供給する第2洗浄槽とを含み、
前記溶液成分の回収装置は、前記第1洗浄槽から排出された溶液を前記分離部へ収容して前記第1成分と前記第2成分とを分離し、前記回収部で回収された前記第2成分を前記第2洗浄槽へ供給する、請求項15又は16に記載の含浸処理・含浸成分回収システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279871(P2010−279871A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133710(P2009−133710)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(504045905)株式会社スタイ (1)
【出願人】(390006264)関西化学機械製作株式会社 (20)
【Fターム(参考)】