説明

溶液/ゲル転移と次いでゲル/溶液転移とを連続的に実施可能な生体材料

本発明は、所与の反応速度論によって、溶液/ゲル転移と、次いでゲル/溶液転移とを連続的に実施し得る生体材料に関する。前記生体材料は、ポリマーを形成し得る少なくとも1種のモノマーと、前記ポリマーを分解し得る少なくとも1種の酵素と、任意選択で、前記モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素とを含む。本発明はさらに、前記生体材料を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化の分野において、制御された溶液/ゲルの転移と、次いでゲル/溶液の転移とを連続的に実施することが可能である生体材料、およびそのような生体材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルは、その特異性により、多数の分野、特に食品、化粧品、および医薬品において用いられている。ゲルは、少なくとも2つの成分から成り、そのうちの明らかに主成分である成分は液体溶媒に相当し、他方の成分は前記溶媒内に分散された固体に分類できる成分である。液体状態における溶液または分散物に基づいて、ゲルの形成は固体粒子の部分的な凝集に起因する。この変化は溶液/ゲル転移と呼ばれる。
【0003】
「物理」ゲルを得るための組成は、従来技術においてよく知られている。物理ゲルは、低エネルギーの結合(ファン・デル・ワールス結合、水素結合、極性結合など)によって互いに結合されたモノマーから構成された高分子集合体である。この集合体の安定性は、特定の範囲の物理化学的条件(pH、モノマー濃度、温度、溶媒の量、イオン力など)に関連している。この範囲の外においては、ゲルは再び溶液になる。そのため、溶液/ゲル転移は、物理ゲルにおいては可逆的である。したがって、物理ゲルの構造は、物理化学的環境に対して非常に敏感であり、溶媒の特性のごくわずかな変化によってこの構造が完全に破壊され、それにより、ゲル−溶液転移を生じ得る。反対に、溶媒の特性のわずかな変化によって、ゲルを生じるポリマーの会合が行なわれ得る。
【0004】
従来技術においては、「化学」ゲルに分類されるゲルも知られている。化学ゲルもまた高分子集合体であり、その高分子集合体が含んでいるモノマーは高エネルギー結合(共有結合)によって関連付けられている。そのため、この集合体は非常に安定している。しかしながら、結局のところ、これらの化学ゲルは高い安定性を有するが、ゲル/溶液転移を行うことができる唯一の方法としては、ポリマーの共有結合を破壊するしかない。このため、この種類のゲル/溶液転移は不可逆的であると称される。
【0005】
化学ゲル群は酵素によって触媒されたゲルに相当する。このゲル化様式は、主として、主要な生物学的過程において観察される。血液凝固、瘢痕形成、表皮形成および細胞外基質の会合は、可溶性タンパク質からゲル状態への転移が不可欠である生物学的過程であり、それらは酵素群、すなわち、ゲル化過程において不可欠であるトランスグルタミナーゼ(TGase)を共用する。この群のタンパク質は広く存在し、原核生物および真核生物において等しく見られ得る。ヒトでは、異なる8つのトランスグルタミナーゼが見られる。これらの酵素は、タンパク質のグルタミニル側鎖上にアミン基を含める性質を有する。この活性は、タンパク質の間に共有結合を形成することを可能にする。トランスグルタミナーゼは、このように生物学的にゲル化された網状構造の形成に関与するタンパク質の重合を触媒する。トランスグルタミナーゼは、食品産業において、特にすり身の製造または多数の食肉派生品(ハム、再構成食品など)を硬化させるために、多数のタンパク質からゲルを得ることを可能にする。これらの重合可能なタンパク質の例としては、ゼラチン、フィブリン、グリアジン、ミオシン、グロブリン(7Sおよび11S)、アクチン、ミオグロビン、乳漿タンパク、特にカゼインおよびラクトグロブリン、大豆タンパクおよび小麦タンパク、特にグルテニン、並びに卵白および卵黄、特に卵アルブミンが挙げられる。
【0006】
最も一般的に使用されるタンパク質ゲルの1つは、ゼラチンゲルである。ゼラチンは、遍在する構造を有するタンパク質であるコラーゲンから得られる。コラーゲンは、モノマ
ーまたは三重らせん体構造に会合したトリマーの形態にある可溶状態で見られ得る。これらの三重らせん体は細線維として会合し、細線維は線維として会合し得る。コラーゲン三重らせん体は体温では不安定である。ゼラチンはコラーゲンの変性によって得られる。そのため、コラーゲンを含む組織に、コラーゲン三重らせん体を変性させる酸処理またはアルカリ処理を行なう。従って、線維を形成する可能性は完全に失われる。酸処理はA型ゼラチンの形成をもたらし、アルカリ処理はB型ゼラチンを生成する。従って、ゼラチン溶液は分離されたコラーゲン鎖(コラーゲンモノマー)から成る。ゼラチンは多くの用途を有するので、物理ゲルが存在できない条件下(高温、極端なpH、または特定のイオン力)において、ゼラチンゲルを生成することが必要な場合がある。ゲルに必要な網状構造を形成するために、次に、ゼラチン鎖は、共有結合、特にトランスグルタミナーゼの作用によって絡み合わせられる。このように得られたゲルは化学ゲルである。
【0007】
現在、それらの改善された安定性により、多数の分野で化学ゲルの使用が必要とされている。しかしながら、化学ゲルの「不可逆性」により、化粧品、食品または医薬品工業などにおけるそれら化学ゲルの潜在的な用途は制限される。従って、様々なゲルの機械的性質をより良好に制御することは、ゲルの可能性を増大させるために不可欠な課題となる。
【0008】
生体生物の分析は、非常に動的な系の存在を示す。生体組織において、細胞は、タンパク質に富む細胞外基質(ECM)と呼ばれる構造と相互作用する。この構造は、主として上皮細胞下、および結合組織の周囲に位置している。細胞は、弾性に影響するコラーゲンまたは接着機構に影響するフィブロネクチンのような細胞外基質の様々な成分を合成することができる。同時に、細胞は、細胞外基質の分解に作用するプロテアーゼも生成する。従って、細胞は細胞外基質の形成および分解に対して同時効果を有する。従って、細胞外基質の構造は、不可逆な静的構造でなく、細胞によって合成されるタンパク質の形成作用と分解作用とのバランスから生じる動的釣り合いに対応する。
【0009】
同様に、凝集機構に応答して形成されるクロットも動的な系を構成する。したがって、酵素因子のカスケードの合成は、可溶性タンパク質の網状構造の形成に起因する不溶性クロットの形成をもたらす。このクロットは後で瘢痕形成反応の間に除去される。
【0010】
これらの動的釣り合いにおいて、タンパク質網状構造は会合して不溶性となりゲルを形成する。これは溶液/ゲル転移と同等と見なすことができる。同時に、タンパク質網状構造はまたプロテアーゼの作用によって破壊される。この場合、この種の転移はゲル/溶液転移に類似している。従って、時には、初期にはクロットが形成され、次いでクロットは分解され、よく理解されていない機構による他の反応に移行する、凝集においてのような連続的転移を見ることが可能である。
【0011】
これらの生物学的過程における溶液/ゲル転移は、最も多くの場合において、上記に記載したトランスグルタミナーゼ群に関連している。一方、反対の転移、すなわち、ゲル/溶液の転移は、タンパク分解酵素の拮抗的活性に関連している。
【0012】
最も研究された群のうちの1つは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の群である。MMPは、細胞外基質中のほとんどのタンパク質を分解する亜鉛依存性エンドペプチダーゼの群を形成する。しかしながら、多数の異なるプロテアーゼ群が存在する。プロテアーゼ群の例としては、セリンプロテアーゼ、例えばトリプシン、マトリプターゼ、システインおよびアスパラギン酸プロテアーゼ、例えばカテプシンBおよびLならびにカテプシンDおよびC、さらにADAMファミリーが挙げられる。
【0013】
トランスグルタミナーゼまたはメタロプロテアーゼのような、この種の反応を組み合わせる多数の酵素が、生化学者および酵素学者によって特徴付けられている。従って、これ
らの酵素の説明、特にそれらに関連した様々な定数の記述はよく管理されている。さらに、それらの挙動は、溶液中でかつ単独の場合にはよく知られているが、これは、ゲル環境で、かつ拮抗的な活性が存在している事例ではない。
【0014】
本発明者らおよび他のチームによって行なわれたモデル化の研究により、インビボにおいて存在するこの動的釣り合いに関与するパラメータを理解することが可能になった。本発明者らが行なった最近のモデル化および実験の研究により、この動的釣り合いの新しいモデルを開発することが可能となった。その新しいモデルは動的釣り合いに関与するパラメータをより高い精度で統合する。
【0015】
驚いたことに、本発明者らによって実施されたモデル化は、そのような動的釣り合いを「インビトロ」で得ることが可能であることを示した。従って、本発明者らは、所与の条件下、および特に以下の所与の反応速度論における溶液/ゲルおよびゲル/溶液の転移を連続的に実施することができるタンパク質ゲルを得ることが可能となった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、溶液/ゲルの転移と、次いでゲル/溶液の転移とを連続的に実施することが可能である生体材料、およびそのような生体材料を調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明の第1の目的は、好ましくは低エネルギー結合によってポリマーを形成し得る少なくとも1種のモノマーまたは前記モノマーとそれらのポリマーとの混合物と、前記ポリマーを分解し得る第1の種類の酵素とを含む生体材料に関連する。前記生体材料はゲル形態または溶液形態のいずれかを呈し、かつ第1の溶液/ゲル転移と、次いで第1の種類の酵素の作用下において第2のゲル/溶液転移とを連続的に実施することが可能である。
【0018】
従って、そのような生体材料は、化粧品、食品または医薬品工業において従来未知の特性を有する製品を開発することを可能にする。
よって、化粧品の分野においては、本発明による生体材料を用いて、必要な施用時間の間はゲルのテクスチャを示すことが可能であり、その後、溶液状態に戻って使用者による迅速かつ容易な除去を可能にする美容マスクのような、新規な化粧品を製造することができる。
【0019】
よって、食品および農業の分野においては、本発明による生体材料を用いて、フィリングがコーティング工程の間にはゲル状であり、その後、一旦コーティング工程が終了すると、程度の差はあるが粘稠な溶液状態に戻るフィリング入りビスケットまたは菓子のような未知の感触を有する新規な製品を製造することができる。
【0020】
医薬品または化粧品の分野では、本発明による生体材料を用いて、活性成分を含有し、所与の反応速度論で溶液状態に戻ることにより前記活性成分の塩析を行なうことが可能であるゲルを得ることもできる。特定の温度、pHおよびイオン濃度条件(カルシウム、マグネシウムまたは他のもの)、または特定の補助因子の存在下において重合されるタンパク質(i)を分解し得る酵素を使用して、この塩析を特定環境(腸、胃など)に対して適応させることができる。
【0021】
従って、本発明は、化粧品組成物、医薬組成物または食品組成物に関する。これらの組成物は、化粧品または薬学的組成物に対する活性薬剤、または食品組成物に対する調合剤
のような他の薬剤を含み得る。
【0022】
生体材料に含まれるモノマーは、有利には、タンパク質または糖類である。それらのタンパク質または糖類は天然物であってもよいし、合成物であってもよい。
第1の種類の酵素は、生体材料中において、不活性化されていない形態で存在する。ポリマーを分解し得る第1の種類の酵素は、生体材料中において活性な形態であってもよいし、あるいは特定の器官(胃、腸、口腔など)内または特定環境下のように、特定の条件下で、ゲル/溶液転移を得られるように、所与のpH、またはイオン種もしくは特定の補因子の存在のような特定の条件下で活性化され得る形態であってもよい。
【0023】
本発明の生体材料の第1の特定の実施形態によれば、生体材料は、モノマーの重合および形成されたポリマーの第1の種類の酵素による分解を可能にするのに適した溶媒も含む。使用する溶媒は、好ましくは、所望のpHを有する水または他の緩衝液(リン酸塩緩衝液またはトリス緩衝液)などの水性溶媒である。
【0024】
本発明の生体材料の第2の特定の実施形態によれば、ゲル形態の前記生体材料は、当業者に既知の手法を用いて凍結乾燥される。その結果、生体材料はいかなる溶媒も含有しない。その後、前記生体材料は適切な溶媒と接触させられると、第2のゲル/溶液転移のみが生じる。従って、この実施形態は、製造後に、ゲルの有効寿命を、所与の環境または特定の器官(胃、腸、口腔など)にゲルが存在することと関連付けることを可能にする。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、生体材料は、前記モノマーの間に共有結合を形成し得る少なくとも1種の第2の種類の酵素をさらに含む。その結果、前記生体材料は、第2の種類の酵素の作用下において第1の溶液/ゲル転移と、それに後続して第1の種類の酵素の作用下において第2ゲル/溶液転移とを連続的に実施することができる。
【0026】
2種類の酵素は、不活性化されていない形態で生体材料中に同時に存在すると有利である。
また、酵素が生体材料中に均一に分布していることも有利である。
【0027】
本発明の生体材料の第3の特定の実施形態によれば、生体材料はタンパク質モノマーを含む。ほとんどすべてのタンパク質はその高分子電解質特性のために物理ゲルを形成することができる。重合して物理ゲルを形成することが可能であり、本発明による方法に使用可能であるタンパク質の例としては、ゼラチンのようなコラーゲンおよびその誘導体、フィブリン、グリアジン、ミオシン、グロブリン(7Sおよび11S)、アクチン、ミオグロビン、乳漿タンパク、特にカゼインおよびラクトグロブリン、大豆および小麦タンパク、特にグルテニン、卵白および卵黄、特に卵アルブミンが挙げられる。使用される重合可能なタンパク質は、好ましくは、フィブリンおよびコラーゲン並びにその誘導体、例えばA型およびB型のゼラチンなどの中から選択される。タンパク質モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の存在下においては、自然には重合しないタンパク質を用いることが可能である。
【0028】
モノマーまたは前記モノマーとそのポリマーとの混合物の形態にある重合可能なタンパク質の生体材料中における濃度は、用いられるタンパク質の性質に依存する。重合可能なタンパク質の濃度は、好ましくは、生体材料の全重量に対して重量比で0.1〜30%、好ましくは0.2〜20%、より好ましくは0.5〜15%、特に好ましい方法では1〜10%である。
【0029】
タンパク質ポリマーを分解し得る多数の酵素(プロテアーゼ)が、当業者には知られている。そのような酵素の例としては、MMP群のメタロプロテイナーゼのようなメタロプ
ロテイナーゼ、またはサーモリシンのような同様のメタロプロテイナーゼ、トリプシンおよびマトリプターゼのようなセリンプロテアーゼ、カテプシンB, LおよびカテプシンD,Gのようなシステインプロテアーゼおよびアスパラギン酸プロテアーゼ、およびADAMファミリーが挙げられる。タンパク質ポリマーを分解し得る酵素は、好ましくはメタロプロテイナーゼであり、好ましくはサーモリシン、特に細菌性サーモリシンであり、および特に好ましい方法では、バチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコから単離されたサーモリシンである。
【0030】
タンパク質ポリマーを分解し得る酵素の濃度は、使用されるタンパク質モノマーおよびそのモノマーの濃度に依存する。この酵素濃度は、以下の実施例に記載する方法に従って、所与のタンパク質モノマーの種類によって、かつ所与の濃度において容易に計算することができる。したがって、バチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコのサーモリシンの場合で、5%のA型ゼラチンを含有するゲルについては、サーモリシン濃度は、10−4U/ml以上、好ましくは10−3U/ml以上である。
【0031】
タンパク質の間に共有結合を形成することが可能な多数のタンパク質も、当業者には知られている。そのようなタンパク質の例としては、リシルオキシダーゼ群、並びに、第XIII因子のサブユニットA、哺乳動物トランスグルタミナーゼ1〜7または細菌性トランスグルタミナーゼなどのトランスグルタミナーゼ群が挙げられる。タンパク質の間に共有結合を生成し得る酵素は、トランスグルタミナーゼであり、好ましくは細菌性トランスグルタミナーゼであり、特に好ましい方法においては、ストレプトバーティシリウム属細菌から単離されたトランスグルタミナーゼである。
【0032】
タンパク質の間に共有結合を形成し得る酵素およびタンパク質ポリマーを分解し得る酵素の濃度は、一方では、タンパク質ポリマーを分解し得る酵素の濃度に対するタンパク質の間に共有結合を形成し得る酵素の濃度の比率に依存し、他方では、使用される重合可能なタンパク質および同タンパク質の濃度に依存する。これらの酵素濃度は、実施例に記載する方法によって容易に計算することができる。
【0033】
用いられる酵素濃度比および酵素濃度は、所望のゲル化時間(溶液/ゲル転移)および有効ゲル寿命にも依存する。
有利には、タンパク質ポリマーを分解し得る酵素の濃度に対するタンパク質の間に共有結合を形成し得る酵素の濃度の比率は、1以上であり、好ましくは10以上であり、特に好ましい方法では、20以上である。
【0034】
タンパク質の間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、0.001U/ml超であり、好ましくは0.01U/ml超であり、特に好ましい方法においては、0.1U/ml超であるとまた有利である。
【0035】
さらに有利には、5%のA型ゼラチンを含有し、ストレプトバーティシリウム属細菌のトランスグルタミナーゼおよびバチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコのサーモリシンが存在する溶液の場合には、サーモリシン濃度(U/ml)に対するトランスグルタミナーゼ濃度(U/ml)の比率は、75より大きく、好ましくは80以上である。加えて、トランスグルタミナーゼ濃度は、0.01U/ml以上、好ましくは0.1U/ml以上、特に好ましい方法では、0.4U/ml以上である。
【0036】
本発明の第4の特定の実施形態によれば、本発明による生体材料は糖類モノマーを含む。本発明による生体材料によって使用可能な糖類の例としては、カラギーナン、アルギナート、ペクチン、キトサン、セルロース、キチン、グリコーゲン、またはデンプンなどが挙げられる。
【0037】
モノマーまたは前記モノマーとそのポリマーとの混合物の形態にある重合可能な糖類の生体材料中における濃度は、使用される糖類の性質に依存する。重合可能な糖類の濃度は、生体材料の全重量に対して、重量比で、好ましくは0.1〜30%、好ましくは0.2〜20%、より好ましくは0.5〜15%、特に好ましい方法においては1〜10%である。
【0038】
多糖類を分解し得る多数の酵素が、当業者には知られている。そのような酵素の例としては、カラギーナン、ペクチンリアーゼ、ペクチンに対するポリガラクツロナーゼおよびペクチンエステラーゼ、アルギナートに対するアルギナートリアーゼ、セルロースに対するセルラーゼまたはグリコーゲンに対するホスホリラーゼなどが挙げられる。
【0039】
多糖類を分解し得る酵素の濃度は、使用されるモノマーおよびそのモノマーの濃度に依存する。この酵素濃度は、実施例に記載する方法に従って、所与のモノマーの種類により所与の濃度において容易に計算することができる。
【0040】
糖類の間に共有結合を形成し得る多数の酵素もまた、当業者には知られている。そのような酵素の例としては、アルギナートに対するアルギナートエピメラーゼ、セルロースに対する合成酵素、またはグリコーゲンに対するグリコーゲン合成酵素の各群が挙げられる。
【0041】
糖類間に共有結合を形成し得る酵素および多糖類を分解し得る酵素の濃度は、一方では、多糖類を分解し得る酵素の濃度に対する糖類間に共有結合を形成し得る酵素の濃度比に依存し、他方では、使用される重合可能な糖類とその濃度に依存する。これらの酵素濃度は、実施例に記載する方法によって容易に計算することができる。
【0042】
上記のように、用いる酵素濃度の比率および酵素濃度はまた、所望のゲル化時間(溶液/ゲル転移)およびゲルの有効寿命にも依存する。
(糖類の間に共有結合を形成し得る酵素の濃度)/(多糖類を分解し得る酵素の濃度)の比率は、有利には、1以上であり、好ましくは10以上であり、特に好ましい方法においては20以上である。
【0043】
さらに有利には、糖類の間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、0.001U/ml超であり、好ましくは0.01U/ml超であり、特に好ましい方法においては0.1U/ml超である。
【0044】
本発明の第5の特定の実施形態によれば、本発明による生体材料は糖類モノマーおよびタンパク質モノマーを含む。そのような化合物は、特定のレオロジー特性を有するゲル、および可能性として所望のテクスチャを有するゲルを得ることを可能にする。
【0045】
生体材料はまた、化粧品、製薬または食品産業において現在使用されている1つ以上の追加成分も含んでもよい。
本発明の第2の目的は、本発明による生体材料を調製する方法に関する。前記生体材料は、ゲル形態または溶液の形態を呈し、溶液/ゲル転移と後続する第2のゲル/溶液転移とを連続的に実施することができる。前記方法は、適切な溶媒中に、
(i)好ましくは低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得る少なくとも1つのモノマーを混合することと、
(ii)前記ポリマーを分解し得る第1の種類の酵素を混合することと
を含むことを特徴とする。
【0046】
所望のゲル化時間および有効ゲル寿命を有する生体材料を得るための、好ましくは低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得るモノマーの濃度、および前記ポリマーを分解し得る酵素の濃度は、実施例に記載する方法によって決定される。
【0047】
一例として、低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得るモノマーとして5%のA型ゼラチンと、バチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコから単離されたサーモリシンとを含み、68分のゲル化時間および254分の有効ゲル寿命を有する生体材料は、27℃において0.0085U/mlのサーモリシンを使用することによって得ることができる。
【0048】
好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、
(iii)モノマーの間に共有結合を形成し得る第2の種類の酵素を混合すること
をさらに含む。
【0049】
所望のゲル化時間および有効ゲル寿命を有する生体材料を得るための、任意で低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得るモノマーの濃度、前記ポリマーを分解し得る酵素の濃度、および前記モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、実施例に記載する方法によって決定される。
【0050】
前記方法は、双方の種類の酵素が活性である温度で実行される。前記方法は、0〜100℃、好ましくは5〜75℃、例えば10〜50℃または15〜45℃、特に好ましい方法においては20〜40℃の温度において有利に実施される。
【0051】
ポリマーを形成し得るモノマーの量は、有利には、生体材料の全重量に対して、重量比で0.1〜30%、好ましくは0.2〜20%、好ましくは0.5〜15%、特に好ましい方法においては1〜10%である。
【0052】
また有利には、ポリマーを分解し得る酵素の濃度に対するモノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度の比率は、1以上であり、好ましくは10以上であり、特に好ましい方法においては20以上である。
【0053】
モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、好ましくは0.001U/ml超であり、好ましくは0.01U/ml超であり、特に好ましい方法においては、0.1U/ml超である。
【0054】
ポリマーを形成し得るモノマーの濃度、前記ポリマーを分解し得る酵素の濃度、および場合により前記モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、以下の方程式(I)、(II)、(III)および(IV)の結果が、所望のゲル化時間および有効ゲル寿命を得ることを可能にするように有利に選択される。
【0055】
【数1】

上記方程式は、それぞれ、時間(dt)による、(I)結合されたモノマー(以下、「結合モノマー」と称する)の数の漸進的変化(dg)、(II)溶液中のモノマーの数の漸進的変化(ds)、および(III)分解されたモノマー(以下、「分解モノマー」と称する)の数の漸進的変化(df)、並びに(IV)質量保存方程式を表している。
【0056】
前記式中において、
− gは結合形態にあるモノマーの量に相当し、
− tは時間に相当し、
− Vは、単位時間あたりに前記酵素により結合モノマーがその遊離形態に変化した量として表された、ポリマーを分解し得る酵素の速度に相当し、
− Kは、ポリマーを分解し得る酵素のミハエリス定数を表し、
− sは、遊離形態にあるモノマーの量を表し、
− Vは、単位時間あたりに前記酵素によって結合された遊離形態にある結合モノマーの量として表された、モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の速度に相当し、
− Kは、モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素のミハエリス定数を表し、
− Vは、低エネルギーの結合により重合し得るモノマーの場合における、単位時間あたりの遊離形態にあるモノマーの低エネルギー結合による結合の速度を表し、
− V’は、単位時間あたりの、遊離形態にあるモノマーを分解し得る酵素により生成されるもはや重合不可である分解モノマーの量として表された、前記酵素の速度に相当し、
− gは、時間tにおける結合形態にあるモノマーの量に相当し、
− sは、時間tにおける遊離形態にあるモノマーの量に相当し、
− fは、時間tにおけるもはやポリマーを形成し得ない分解モノマーの量に相当し、
− Sはモノマーの初期量に相当する。
【0057】
本発明者らは、異なる種類の酵素を使用して、所与の溶液/ゲルおよびゲル/溶液転移の反応速度論を有する生体材料を得ることが可能であることを証明することができた。
これらの様々な酵素に対する定数は、当業者にはよく知られている。この例は、http://www.brenda.uni-koeln.de/ にあるデータベースである。前記データベースはそのような酵素の定数を記載している。いずれの場合においても、当業者であれば、http://www.brenda.uni-koeln.de/ およびプライス(PRICE )およびスティーヴン(STEVEN)、「Fundam
entals of Enzymology: The Cell and Molecular Biology of Catalytic Proteins」、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press )に記載のような周知の方法によって、所与の酵素に対するこれらの様々な定数を容易に決定することができる。
【0058】
従って、これらの方程式において、VおよびVは以下の式によって計算される。
=kCAT_P[P]およびV=kCAT−T[T]
前記式中、[P]および[T]は、それぞれ、ポリマーを分解し得る酵素の濃度およびモノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度を表し、kCAT_PおよびkCAT−Tは、それぞれ、これらの酵素に対する触媒定数を表わす。
【0059】
いずれの場合においても、当業者であれば、実施例に記載する方法に従って、過度の実験を行なうことなく、所望の溶液/ゲル転移およびゲル/溶液転移の反応速度論を有する生体材料を得るのに必要である様々なモノマーおよび酵素の濃度を容易に決定することができる。
【0060】
一例として、低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得るモノマーとして5%のA型ゼラチンと、バチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコから単離されたサーモリシンと、ストレプトバーティシリウム属細菌から単離されたトランスグルタミナーゼとを含み、19分間のゲル化時間および743分間の有効ゲル寿命を有する生体材料は、40℃において、1U/mlのトランスグルタミナーゼおよび0.0125U/mlのサーモリシンを使用して得ることができる。
【0061】
さらなる例として、低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得るモノマーとして5%のA型ゼラチンと、バチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコから単離されたサーモリシンと、ストレプトバーティシリウム属細菌から単離されたトランスグルタミナーゼとを含み、2分間のゲル化時間および5000分を超える有効ゲル寿命を有する生体材料は、27℃において、1U/mlのトランスグルタミナーゼおよび0.0125U/mlのサーモリシンを使用して得ることができる。
【0062】
本発明による方法は、ゲル形態の生体材料を凍結乾燥する工程を含むと有利である。
本発明のさらなる特徴は、以下の実施例から明らかになるであろう。それらの実施例は、いかなる点においても本発明を全く制限しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
実施例1:化学ゲル:
1−1:理論モデルの開発:
細胞外基質に対応する動的釣り合いに関する研究は、そのような動的な系の単純化した数学的モデルであって2つの拮抗する酵素反応が行なわれるモデルを構築することを可能にした。一方の反応は、可溶性モノマー(s)の間に共有結合を形成して結合モノマーの網状構造(g)を生じ得る酵素によって触媒される。他方の反応は、結合モノマーの網状構造(g)を可溶性モノマー(s)に加水分解する酵素(P)によって触媒される。特定の場合においては、最後に、同様に酵素(P)によって触媒される第3の反応は、可溶性モノマーを、網状構造に含まれるには小さすぎるか、または共有結合(T)によって可溶性モノマー(s)を結合させる酵素の基質としてはもはや使用することができない分解モノマー(f)に加水分解することから成る。サイクルから漏出するモノマーを生じるこの最後の反応もモデルに加えられる。モデルは、以下の反応スキームによって簡略に表わすことができる。
【0064】
スキームI:
【0065】
【化1】

この反応機構は、酵素反応を単純なミハエリアン反応(reactions michaeliennes )と同等とみなした以下の3つの微分方程式と、第4の質量保存方程式とによって容易に記述することができる。
【0066】
結合モノマー(g)の鎖の数の時間による漸進的変化を記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0067】
【数2】

溶液中におけるモノマー(s)の数の時間による漸進的変化を記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0068】
【数3】

分解モノマー(f)の数の時間による漸進的変化を記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0069】
【数4】

最後に、質量保存方程式は以下のとおりである。
【0070】
+s+f=S
これらの微分方程式において、VおよびVは、それぞれ酵素Pおよび酵素Tに対する最大速度を表わす。また、KおよびKは、酵素Pおよび酵素Tに対するミハエリス定数をそれぞれ表わす。
【0071】
従って、これらの方程式において、VおよびVは以下の方程式
=kCAT−P[P]およびV=kCAT−T[T]
によって計算される。
【0072】
この方程式をインビトロの系へ置き換える際、[P]、[T]、V、V、KおよびKの様々な値は、定数である。
基質濃度は、各々の初期の酵素について計算され、次に、様々な微分方程式により反応の間に決定される。
【0073】
1−2:トランスグルタミナーゼおよびサーモリシンの存在下におけるゼラチンゲル形成のモデル化
この理論モデルは、タンパク質物理ゲルの形成、より詳細には、共有結合によってゼラチンモノマーを結合させる細菌性トランスグルタミナーゼおよびプロテアーゼ:サーモリシンの存在下、40℃における、ゼラチンのタンパク質物理ゲルの形成に適用された。
【0074】
使用するゼラチン濃度は5%、すなわち50g・l−1である。ゼラチンのペプチド配列に基づいて、側鎖の濃度(すなわち0.45mol・l−1)を決定することは容易に可能である。
【0075】
使用する酵素:
プロテアーゼおよびトランスグルタミナーゼに対する様々な定数は文献において公知であるか、または当業者によく知られた方法によって容易に決定することができる(シーゲル(SEGEL) 、「Wiley Classics Library、Enzyme Kinetics 」、1993年)。
【0076】
1.プロテアーゼ:
1.1−供給源:
使用するプロテアーゼは、サーモリシン、すなわちシグマ(SIGMA )(REF:P-1512)によって上市されている細菌性メタロプロテアーゼである。この酵素は、好熱性菌株であるバチルス・サーモプロテオリティカス・ロッコから得られるタイプXのプロテアーゼである。この酵素は特にイソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)およびアラニン(Ala)残基を認識する。この酵素は、室温で高度に安定しており、316アミノ酸で34kDaのモル質量を有する。
【0077】
2.2−活性:
サーモリシンの(解離の)ミハエリス定数は、様々なタンパク質およびペプチド基質に対して文献において公知である(マツバラ(MATSUBARA )ら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、第21巻、第242〜247頁、1965年)。これらのデータに基づいて、1mMに相当するKの平均値を推定することが可能である。また、様々な基質に対するサーモリシンのkcat値も文献に記載されている(リーニュ(LIGNE )ら、Biochim. Biophys. Acta. 、第1337巻、第143〜148頁、1997年)。さらに、これらのデータに基づいて、1000分−1に相当するKcatの平均値を決定することが可能である。サーモリシンの特性は知られているので、ゼラチンの配列の分析により、検討中の系において、サーモリシンに対する初期の基質濃度は、従って0.15×0.45=0.6
8mol・l−1=68mM、すなわち68Kであると決定することができる。この濃度は飽和基質濃度に近く、従って、基質はサーモリシンの反応を制限しない。
【0078】
また、この酵素の様々な酵素としての制約条件を、基質としてN−(3[2−フリル]アクリロイル)−グリシン−ロイシン−アミド( シグマ(SIGMA))を用いて、フリル−アクロイル−グリシンおよびロイシン−アミドの形成について測定した。加水分解中における基質の消失は、345nmで測定される光学濃度の低下をもたらす。
【0079】
2.トランスグルタミナーゼ:
2.1−供給源:
使用するトランスグルタミナーゼは、ACTIVA WM(登録商標)という名称で味の素株式会社によって製造されている。この細菌酵素はストレプトバーティシリウム属細菌の培地中に産生される。この酵素は、38,000Daの分子量を有する、331アミノ酸のポリペプチド鎖である。64位のシステイン残基が活性部位に相当する。
【0080】
2.2−活性:
この酵素はリジン残基を認識し、リジン残基の側鎖と他の残基の側鎖との間の共有結合の形成を触媒する。この酵素の活性は、50〜55℃(40℃で100U・g−1)の温度、および広範なpH領域(4.5〜9で活性であり、6〜7が最適値)において最適である。
【0081】
この酵素の活性は、Na−CBZ−Gln−Gly(シグマ)およびヒドロキシルアミンからの、40℃で1分間に1マイクロモルのヒドロキサム酸の形成を触媒するのに必要な酵素の量から測定される。この酵素の活性を決定することを可能にする方法は以下のとおりである。
【0082】
【表1】

次に、活性は以下の方程式:
活性(U/ml/分)=[100×(DO 525/238)]/酵素体積(ml)
によって計算される。
【0083】
この基質上における様々な反応により、基質としてゼラチンを使用して、8mMの解離定数Kおよび100分−1のkcatを決定することが可能となった。ゼラチンは、わずか4%のリジンを含んでおり、従って、トランスグルタミナーゼに対する初期の基質濃度は17mMである。
【0084】
モデル化:
予め決定された様々な値に基づいて、微分方程式に近似するオイラー法(ブロンソン(BRONSON )、「Equations Differentielles 」、マグローヒル(McGraw-Hill )編、1994年)を適用することにより、結合した画分の時間による挙動を監視することが可能である。この第1モデルにおいて、トランスグルタミナーゼとプロテアーゼとの間における活性比は、(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度において)10である。加えて、g=0およびs=68mMである。文献のデータは、トランスグルタミナーゼの作用によって、理論上の結合の18%が有効に生成された場合に、ゼラチンゲルが得られることを示している(フックスバウアー(FUCHSBAUER)ら、Biomaterials, 、第17巻、第1481〜1488頁、1999年)。
【0085】
様々なモデルは、Vに関するV’の変化はほとんど重要でなく、結合したタンパク質の出現の反応速度論は、ほとんど100%の値に達する相当な初期増加と、それに続く、小さな断片が出現する速度に依存した非常に遅い減少とを示す。図1には、0.1のV’/V比率で、結合した画分の時間による漸進的変化をモデル化した例が示されている。
【0086】
1−3:単一のトランスグルタミナーゼの存在下におけるゼラチンゲルの形成:
この理論モデルを検証するために、本発明者らは、まず、様々な量のトランスグルタミナーゼのみが存在する状態におけるゼラチンゲルの形成を監視する最初の一連の実験を行なった。
【0087】
使用した重合可能なタンパク質:
使用したA型ゼラチン(G2500)は、酸法(シグマ)を用いて豚皮から抽出される。溶液中におけるゼラチン濃度は%(重量/体積)として表わす。したがって、1%のゼラチンを含有する溶液は、100mlの溶液中に1gのゼラチンを含む溶液に相当する。用いるゼラチン濃度を、各実験において2〜10%の間で変化させた。また、ゲル化温度は40℃であった。
【0088】
使用したトランスグルタミナーゼは上述したトランスグルタミナーゼである(1−2を参照)。これらの実験において用いたトランスグルタミナーゼ濃度は、0.1U/ml〜1U/mlであった。
【0089】
溶液/ゲル転移およびゲル/溶液転移の監視:
ゲルの形成は、AR1000型レオメータ(ティー・エイ・インスツルメント(TA INSTRUMENT))またはRS150型レオメータ(サーモレオ(THERMORHEO))を使用して監視する。これらのレオメータは、2°の角度を有する60mmのコーン/プレートジオメトリーを備える。AR1000では鋼鉄コーンが使用され、RS150においてはチタンコーンが使用される。
【0090】
これらのレオメータは、試料に所与のパルスωを有する振動せん断力(cisaillement oscillatoire )を印加することからなる振動解析または動的解析を行うことを可能にする。この運動の間、せん断応力および勾配は、時間とともに、同一のパルスで、しかし互いに対して特定の位相差を有して、正弦波的に進展する。レオメータは、ゲル化工程を監視するための多数のパラメータを測定することを可能にする。せん断弾性係数(G(ω)0)は、試料の粘性成分および弾性成分を表わし、下記式
(ω)=G’(ω)+iG”(ω)
に従う複素数である。
【0091】
G’は貯蔵弾性係数と呼ばれ、G”は損失弾性係数と呼ばれる。これらの2つの係数はパスカル(Pa)で表わされる。ニュートン流体においては、貯蔵弾性係数は0であり、
損失弾性係数のみが残る。このため、損失弾性係数は粘性係数とも称される場合がある。一方、弾性固体においては、貯蔵弾性係数のみが存在する。そのため、その貯蔵弾性係数は弾性係数と称される場合がある。以下の式に従って、せん断弾性係数を損失係数および貯蔵係数に関係づけることが可能である。
【0092】
G’=Gcosδ、およびG”=Gsinδ
前記式中、δは、応力とせん断変形との間の位相差を表わす。これらの式に基づいて、以下の比を導き出すことができる。
【0093】
Tanδ=G”/G’
よって、Tanδは、試料のゲル化過程の特徴付けを可能にする関連値になる。試料が液体である場合、G”>G’かつTanδ>1である。反対に、G”<G’かつTanδ<1であるとき.試料はゲルになる。Tanδ=1の値に達するのに要する時間は「ゲル化時間」を表わす。下記の様々な実験において、様々な溶液に対する係数比G”/G’が時間に従って表わされ、G”/G’=1の値は「ゲル化点」に対応する。
【0094】
結果:
図2には、レオメータを用いて監視した、異なる濃度(0.1、0.15、0.2、0.5および1U/ml)のトランスグルタミナーゼ存在下における40℃の5%ゼラチン含有溶液の粘弾性の漸進的変化が示されている。すべての試験条件下において、試料は実験の開始時には実際に液体であり(G”/G’<1)、その後、ゲルが形成され(G”/G’>1)、時間とともに漸進的に変化する。実験はまた、ゲル化点の後、任意の所与の酵素濃度について、係数G”は1Paあたりで水平になることも示している。よって、G’係数の値は酵素濃度に依存する。従って、ゲル化点の後に観察されるG”/G’比の変化は、G’の変化を示す。
【0095】
図3は、トランスグルタミナーゼ濃度による、40℃の5%ゼラチン含有溶液のゲル化速度(ゲル化時間の逆数)を示す。結果は、トランスグルタミナーゼを有する段階のみを含み、かつG”/G’=1であるゲル化点までのみを含むゲル化曲線は、理論モデルに従うことを示している。
【0096】
図4は、ゲル化点の後の、40℃における酵素濃度に依存する酵素反応の速度を示す。結果は、ゲル化点を越えると、ゲル化曲線はもはや理論モデルに従わないことを示している。曲線はもはや線形回帰によって推定することはできず、むしろ式y=15x1.85(図中の点線の曲線)を有する指数法則(Rは0.98)の挙動パターンに従い得ることが理解できる。ゲル化点の後では、酵素反応はゲル中における酵素の拡散によって制限される。拡散の影響は、この速度方程式において係数1.85によって具象化される。この係数はトランスグルタミナーゼ濃度に影響する。
【0097】
図5は、溶液中1ユニット(黒四角)および0.4ユニット(黒菱形)の酵素の拡散を考慮した、ゲル中における活性トランスグルタミナーゼの量の経時的な漸進的変化を示す。従って、これらの実験により、ゲルの形成後、トランスグルタミナーゼの拡散係数の値は、徐々に漸進的に変化して1.85の値に達することを示すことができた。拡散係数のこの漸進的変化は、この曲線および時間に従って容易に決定することができる。
【0098】
従って、ゲル化中の酵素の作用は2つの連続した系に従うように見える。液体状態からほぼゲル化点までの第1の系は、拡散によって制限されず、従来の酵素学の規則が当てはまる。そのとき、反応速度は酵素濃度の線形関数である。ゲル化点の後の第2の系は、酵素の拡散の速度をもはや無視できず、反応の見かけの速度が制限される、非従来的な環境である。
【0099】
2%および10%の異なるトランスグルタミナーゼ濃度を有するゼラチンゲル上で行なった実験により、ゲル化中に同様の挙動を確認することができた。これらの条件においては、上記のように容易に決定できる特定の拡散係数が各種類のゲルについて有効である。
【0100】
1−4:トランスグルタミナーゼおよびサーモリシンの存在下におけるゼラチンゲル形成の新規なモデル化:
前記(1−2を参照)と同一のパラメータを使用して、10のV/V比および0.05のV’/V比を用いてゼラチンゲルをモデル化する。しかしながら、酵素の反応速度に対する、5%ゼラチン含有ゲルによる拡散の制限の効果は、先に記載した微分方程式に取り入れられている(1−2を参照)。したがって、トランスグルタミナーゼ濃度には、下記式:
=kCAT−T[T1.85
に従う、ゲル化点が過ぎると直ちに反応平衡を示す式において1.85の指数が与えられる。
【0101】
先に行なわれた研究は、非常に低い酵素濃度、特に1nM未満の酵素濃度を有する状態においてのみ拡散がゲルの加水分解を制御する(ファーダ(FADDA) ら、Biophys. J. 、第85巻(5)、2808〜2817頁、2003年)が、より高濃度においては制御しないことが示されている(ベリー(BERRY )ら、Biochim. Biophys. Acta. 、第1524巻、110〜117頁、2000年;ジロウディア(GIRAUDIER)ら、Biomacromolecules 、第5巻(5)、1662〜1666頁、2004年)。従って、方程式中のサーモリシン濃度には係数は適用されなかった。
【0102】
図6は、拡散の制限を有し、10のV/V比(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度)で、結合した画分の時間による漸進的変化をモデル化した結果を表わす。このモデル化の過程から、上記タンパク質環境が、80分後に最初にゲル化点を通過する溶液/ゲル転移と、続いて330分後に2回目のゲル化点通過を行なうゲル/溶液転移とを連続的に行なうことが明らかになる。本発明者らによって確立されたモデルによれば、得られるタンパク質環境は、溶液/ゲル転移、次いでゲル/溶液転移を連続的に行う能力を有するとともに、ゲル状態を250分間の期間にわたって保持するといった新規な特性を有する。
【0103】
更に、拡散効果は有るか全く無いかのいずれかであって、具体的にはゲル化する転移の前には制限はなく、この転移の後には完全な制限を有するものと考えられる。先に実施した実験(1−3を参照)は、ゲル中で共有結合が網状に展開されるにつれて、拡散に対する制限が増大することを示すことを可能にした。この緩やかな効果は、モデルにおいて、下記式:
=kCAT−T[Tα
(式中、αは、時間に従って1.1から1.85まで双曲線状に変化する(図5参照))を用いることにより考慮される。
【0104】
図7は、緩やかな拡散の制限および様々なV/V比(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度)を有する、結合した画分の時間による漸進的変化をモデル化した結果を示す。この場合の結果もまた、示した様々なV/V比について、溶液/ゲル転移およびゲル/溶液転移を示す。10のV/V比については、該タンパク質環境は15分でゲル化点に達し、次いで、ゲルは165分後にゲル/溶液転移を行なう。先述のモデルに関連して、拡散に対する緩やかな制限は、先のモデルでは250分であった代わりに、150分間にわたってゲルを得ることを可能にする。
【0105】
1−5:トランスグルタミナーゼおよびサーモリシンの同時存在下におけるゼラチンゲルの形成:
先に記載した理論モデル(1−4を参照)を検証するために、ゼラチンおよびトランスグルタミナーゼを使用して、先に用いたのと同一の条件下において(1−3を参照)、様々な実験を行なった。加えて、プロテアーゼ、すなわちサーモリシンも初期の溶液に添加する。ゲルの形成は、40℃において、用いたトランスグルタミナーゼ濃度およびサーモリシン濃度に従って、経時的に監視した。得られた結果を、理論モデルの予測と比較して、下記の表Iに示す。
【0106】
【表2】

上記結果は、開発した理論モデルに従って、2つの拮抗する酵素活性の存在下において、共有結合によって重合し得るモノマーの溶液(この場合、種々のトランスグルタミナーゼ濃度およびサーモリシン濃度を有する状態下における5%ゼラチン含有溶液)から、溶液/ゲル転移、次いでゲル/溶液転移を連続的に得ることが実験的に可能であることを示している。
【0107】
そのようなゲルが、トランスグルタミナーゼ活性のみに依存する時間の後のすべてのシミュレーションにおいて得られる場合、上記の様々な実験は最初の溶液/ゲルの転移に対する閾値を構成するV/V比が存在することを示している。トランスグルタミナーゼおよびサーモリシンの存在下における5%のゼラチン含有溶液の場合には、この最初の溶液/ゲルの転移を得るための臨界V/V比は、75〜80に含まれる。
【0108】
上記の様々な実験は、各トランスグルタミナーゼ濃度およびサーモリシン濃度に応じたゲル化時間および有効なゲル寿命も確認する。
図7は、異なる濃度のトランスグルタミナーゼおよびサーモリシンの存在下における5%ゼラチン溶液の40℃での実験による粘弾性の漸進的変化を示す。
【0109】
よって、開発された理論モデルに従って、溶液/ゲル転移およびゲル/溶液転移を連続
的に実施することができる生体材料を得ることが可能である。これについては、使用するモノマーおよび酵素に従って、この最初の溶液/ゲルの転移を得るための、結合モノマーを分解する酵素に対するモノマーを結合させる酵素の臨界比を実験的に決定すれば十分である。次に、理論モデルにより、一方では所望のゲル化時間を有し、他方では所望の有効なゲル寿命を有するゲルを得るために、最低でも様々な酵素濃度について適応させることが可能となる。
【0110】
1%のアルギナートまたはオリゴアルギナートを5%ゼラチン含有溶液に添加した追加実験を行なった。この場合においても、溶液/ゲル転移、およびそれに続くゲル/溶液転移が得られた。
【0111】
1−6:トランスグルタミナーゼおよび様々なプロテアーゼの同時存在下におけるゼラチンゲルの形成:
様々なプロテアーゼを用いて、開発したモデルを確認した。
【0112】
トリプシン(EC 3−4−21−4)は、リジンおよびアルギニンの上流のペプチド結合を加水分解するセリンプロテアーゼである。使用したトリプシンは、雌ウシ膵臓由来のものであり、シグマ(Sigma、T−1426)によって上市されている。この酵素の活性は、p−トシルアルギニンメチルエステル(シグマ、T4626)の加水分解を触媒するのに必要な酵素量によって測定される。
【0113】
コラゲナーゼ(EC 3.4.24.3)は、特にコラーゲンを含む鎖に見られるPro−X−Gly−Pro配列中のX−Glyペプチド結合を特異的に加水分解する。使用したコラゲナーゼは、IA型クロストリジウム・ヒストリチカム由来であり、シグマ(C−989l)によって上市されている。この酵素の活性は、N−(3−[2−フリル]アクリロイル)−Leu−Gly−Pro−AlaまたはFALGPA(シグマ、F−5135)の加水分解を触媒するのに必要な酵素の量によって測定される。
【0114】
これらの酵素活性は、発色団基を有する合成ペプチドの加水分解について測定されるので、サーモリシンの活性は、比較しやすくするために、N−(3−(2−フリルアクリロイル)−Gly−Leu−アミド(シグマ、N−7383)の加水分解において測定した。これは、いくつかのプロテアーゼとともに表中に報告される活性である。
【0115】
ゲルについては、ゼラチン濃度は7%であり、ゲル化温度は40℃であった。使用したトランスグルタミナーゼは、先に記載したトランスグルタミナーゼである。ゲルは、1−5におけるように経時的に監視した。得られた結果を下記の表IIに示す。
【0116】
【表3】

従って、上記結果は、モデルを他のプロテアーゼに対して一般化することができることを示している。
【0117】
実施例2:物理ゲル:
2−1:理論モデルの開発:
このモデルは、物理ゲルを形成する場合であって、かつ単一の酵素活性の存在下においてのみ観察される動的釣り合いを示す。従って、ゲル化は、溶液中のモノマー(s)間における低エネルギー結合(ファン・デル・ワールス、水素結合、疎水結合など;H)の形成のみの結果として生じる。例えば、タンパク質の場合には、タンパク質の高分子電解質特性は、ほとんどすべてのタンパク質が物理ゲルを形成することができることを意味している。ゲルの結合モノマー(g)の鎖に相当するポリマーの分解は、それらのポリマーを加水分解して可溶性モノマー(s)とする酵素(P)によって触媒される。最後に、特定の場合には、酵素(P)によって触媒される第3の反応も存在する。第3の反応は、可溶性モノマーを分解モノマー(f)に加水分解することから成る。分解モノマー(f)は、小さすぎるので網状構造の一部にはなり得ないか、またはもはや他の可溶性モノマーとの結合を形成し得ない。サイクルから漏出するモノマーを生じるこの最後の反応もモデルに加えられる。モデルは、以下の反応スキームによって簡略に表わすことができる。
【0118】
スキームII:
【0119】
【化2】

この第2の場合において、反応機構は、酵素反応を単純なミハエリアン反応と同等と見なす以下の3つの微分方程式と、第4の質量保存方程式とによって容易に記述することができる。
【0120】
結合モノマー(g)の鎖の数の時間による漸進的変化を記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0121】
【数5】

溶液中のモノマー(s)の数の時間による漸進的変化を記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0122】
【数6】

分解モノマー(f)の数の時間による漸進的変化を記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0123】
【数7】

最後に、質量保存方程式は不変である。
【0124】
+s+f=S
これらの微分方程式において、Vは、モノマーを分解する酵素の最大速度を表わし、Kはその酵素のミハエリス定数を表す。
【0125】
これらの微分方程式において、Vは以下の方程式:
=kcat_p[P
によって計算される。
【0126】
さらに、低エネルギー結合の形成速度を表わすVは、使用されるモノマーに依存する。
この方程式のインビトロの系への置き換えにおいて、[P]、[T]、V、VおよびKの様々な値は定数である。
【0127】
基質濃度を開始時に計算し、次に、反応の間においては、基質濃度は様々な微分方程式によって決定される。
2−2:サーモリシン存在下における27℃での物理ゼラチンゲル形成のモデル化:
この理論モデルは、物理タンパク質ゲルの形成、より詳細には、サーモリシン存在下における27℃でのゼラチンの物理タンパク質ゲルの形成に適用された。この温度において、ゼラチンは、モノマーが部分的に三重らせん体へと会合することによりゲルを形成する。温度を低下させることにより、水素結合によって安定した三重らせん体が出現する。
【0128】
ゼラチン:
1−説明:
ゼラチンはコラーゲンから得られる。コラーゲンは、大きな前駆物質すなわちプロα鎖の形で合成される。プロコラーゲンの形成は、水素結合により3本のプロα鎖が集合することと、特定のプロリンおよびリジン残基がヒドロキシル化されてそれぞれヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリジンを形成することとを伴う。最後に、細胞外の環境にプロコラーゲンが分泌された後、プロコラーゲンは、プロペプチドが切断されて成熟型となりコラーゲンを形成する。その後、形成されたコラーゲンは、他のコラーゲン分子と会合してコラーゲン細線維を形成し、該コラーゲン細線維は集合してコラーゲン線維を形成する。
【0129】
3本のプロα鎖の会合によって形成される三重らせん体の安定性は、得られる生物によって異なる。従って、変性温度(Tm)は、ある種の哺乳動物における41.5℃から北極水域に住むある種の魚類における6℃までに及ぶ。Tmの変動は、分子内のヒドロキシプロリンのレベルと関連がある(ペルシコフ(PERSIKOV)ら、Biochemistry、第39巻、第14960〜14967頁、2000年)。
【0130】
ゼラチンは、コラーゲンを含む組織の酸処理またはアルカリ処理によって得られる。前記処理は、コラーゲンの三重らせん体の変性を生じる(ペズロン(PEZRON)、physical Networks.、Londres Elsevier Applied Science、1990年)。本研究では、使用するゼラチンは酸処理によって得られるA型ゼラチンである。
【0131】
半希釈ゼラチン溶液がコラーゲン鎖の変性温度未満に冷却されると、ゲルが形成される。このとき、鎖が会合して、未変性コラーゲンの三重らせんに類似した三重らせん部分を形成する。この構造遷移は、存在する水分子を捕捉する三次元網状構造の形成を可能にする。従って、形成されたゲルは、三重らせん体が水素結合(弱い結合)によって安定化されただけの物理ゲルである。これらの結合は、温度を増大させることにより不安定になってゲルの溶解をもたらしうる。従って、このゲル化現象は可逆的である。
【0132】
従来の研究から、このゲルの弾性は試料中のらせん体の濃度のみに依存することが示されている(ジョリー‐デュアメル(JOLY-DUHAMEL)ら、Langmuir、第18巻、第7158〜7166頁、2002年;ジョリー‐デュアメル(JOL Y-DUHAMEL)ら、Langmuir、第
18巻、第7208〜7217頁、2002年)。
【0133】
2−濃度:
使用するゼラチン濃度は、実施例1で説明したゼラチン濃度と同一である。
3−らせん体の形成速度:
三重らせん体の形成速度(V)は、偏光分析によって時間または温度に伴うまり構造/らせん構造の変化を監視することによって決定した。実際、三重らせん体の形成に起因するわずかなねじれは、試料を通過する偏光を若干回転させる。この研究は、パーキン・エルマー(PERKIN ELMER)341偏光計またはJASCO1100偏光計を使用して実施された。測定値は436nmで得られた。
【0134】
A型ゼラチン(A型またはAP1型)の形成速度論の偏光分析による研究から、各ゼラチンに対して、27℃におけるらせん体の割合(%)の時間による漸進的変化を測定することが可能となる。図9は、0.5℃/分の割合で40℃から27℃まで冷却した場合の、使用した2種のA型ゼラチン(A型およびAP1型)の5%含有溶液中のらせん体の割合の時間による漸進的変化を示す。
【0135】
らせん体出現の反応速度論の結果は、双方の試料においてほぼ同一である。ゲル化時間では、らせん体の割合(%)は2種のゼラチンにおいて同一(40分において6.4%)である。
【0136】
らせん体の形成速度は、図9から容易に計算することができる。図10はまた、トランスグルタミナーゼが存在しない物理ゲル(黒四角)、およびトランスグルタミナーゼの存在下で得られた化学ゲル(白丸)における、らせん体の割合(%)の時間および温度による漸進的変化を示す。らせん体の出現速度を様々な時間間隔に対して決定し、本モデルにおいて使用した。したがって、図10かつ物理ゲルについては、Vは、10分間に45×10−5M・分−1、10分間に21×10−5M・分−1、20分間に9×10−5M・分−1、次いで次の90分間に4.5×10−5M・分−1、および最後に2.5×10−5M・分−1である。
【0137】
同様の実験を2〜10%のゼラチンを含有するゲルを使用して行なった。
酵素:
使用したプロテアーゼは、実施例1において使用したサーモリシンである。従って、上記と同一のパラメータが用いられる。しかしながら、この温度における2つの酵素の感度の違い:
・TLに対して(Vi40℃=1.66Vi27℃
・TGに対して(Vi40℃=2.68Vi27℃
を考慮する。
【0138】
モデル化:
予め決定された様々な値に基づいて、上記のように、微分方程式を解くためにオイラー近似法を適用することにより、結合した画分の挙動を時間に従って監視することが可能である。異なるサーモリシン濃度を用いて、いくつかのモデル化実験を行なった。
【0139】
図11は、27℃での種々の濃度のサーモリシン存在下における結合鎖の割合(%)の漸進的変化をモデル化するいくつかの例を示す(ゲル化閾値はらせん体6.4%である)
。得られた結果から、転移は、Vの特定の値に対して可能であり、すべての場合において、加水分解による小さな断片の漏出は網状構造の分解を生じ、従って形成されたゲルの可溶化をもたらすことが示される。
【0140】
2−3:サーモリシンの存在下における物理ゼラチンゲルの形成:
この理論モデルを検証するために、上記に記載した方法(2−2を参照)と同一の方法によって、種々の濃度のサーモリシンを加えて様々な実験を行なった。得られた結果を、理論モデルの予測と比較して、下記の表IIIに示す。
【0141】
【表4】

この場合の結果もまた、開発された理論モデルに従って、溶液/ゲル転移およびその後に続くゲル/溶液転移を実験的に得ることが可能であり、このことは、低エネルギー結合の形成によって重合し得るモノマーの溶液から、結合したポリマー鎖を分解し得る酵素の存在下において(この場合、様々な濃度のサーモリシン存在下の27℃の5%ゼラチン含有溶液で)可能であることを示している。
【0142】
試験したすべてのサーモリシン濃度(0.001〜0.1U/ml)において、ゲルが形成されると、該ゲルは最終的には融解することが観察される。これは開発した理論モデルに合致している。
【0143】
サーモリシンが存在する27℃の5%ゼラチン含有溶液の場合には、最初の溶液/ゲルの転移を得るための臨界サーモリシン濃度は、0.01ユニットである。
次に、ゲル化時間も使用するサーモリシン濃度に依存する。
【0144】
図12は、27℃における異なるサーモリシン濃度を有する5%ゼラチン含有溶液の粘弾性の実験上の漸進的変化を示す。
よって開発した理論モデルに従って、溶液/ゲル転移およびゲル/溶液転移を連続的に実施することができる生体材料を得ることが可能である。この目的のためには、低エネルギーの相互作用によって結合したモノマーの鎖を分解し得る酵素の臨界濃度を測定するこ
とで十分である。次に、理論モデルによって、一方では所望のゲル化時間、および他方では所望の有効なゲル寿命を有するゲルを得るために酵素濃度を適応させすることが可能となる。
【0145】
実施例3:混合ゲル:
3−1. 理論モデルの開発:
この統合モデルは、2つの拮抗する酵素活性の存在下における混合ゲル(物理ゲルおよび化学ゲル)の形成によって得られる動的釣り合いに対応する。該モデルは、以下の(スキームIおよびIIからのデータを統合する)反応スキームによって簡略に表わすことができる。
【0146】
スキームIII:
【0147】
【化3】

この第3の場合において、反応機構は、酵素反応を単純なミハエリアン反応と同等とみなす以下の3つの微分方程式と、第4の質量保存方程式とによって容易に記述することができる。
【0148】
結合モノマー(g)の鎖の数の時間による漸進的変化について記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0149】
【数8】

溶液中のモノマー(s)の数の時間による漸進的変化について記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0150】
【数9】

分解モノマー(f)の数の時間による漸進的変化について記述する微分方程式は、以下のとおりである。
【0151】
【数10】

最後に、質量保存方程式は以下のとおり:
+s+f=S
である。
【0152】
これらの微分方程式では、Vは、低エネルギーの結合の形成速度を表し、使用されるモノマーに依存する。VおよびVは、酵素Pおよび酵素Tの最大速度をそれぞれ表す。また、KおよびKは、酵素Pおよび酵素Tのミハエリス定数をそれぞれ表す。
【0153】
この方程式のインビトロ系への置き換えにおいて、[P]、[T]、V、V、KおよびKの様々な値は、定数である。
3−2:トランスグルタミナーゼおよびサーモリシン存在下における、27℃での混合ゼラチンゲル形成のモデル化:
この理論モデルは、混合タンパク質ゲルの形成、より詳細にはトランスグルタミナーゼおよびサーモリシン存在下における27℃でのゼラチンの、混合タンパク質ゲルの形成に適用された。
【0154】
ゼラチン:
実施例1および2と同一のゼラチン濃度を用いる。らせん体形成の速度は実施例2に記述したものと同一である。
【0155】
酵素:
使用するプロテアーゼは、実施例1および2において使用したサーモリシンである。
トランスグルタミナーゼは、実施例1で使用したトランスグルタミナーゼと同一のものである。トランスグルタミナーゼの活性に対する拡散の影響を考慮するために、実施例1で説明したように、拡散係数を取り入れた。
【0156】
したがって、これらの2つの酵素に使用されたパラメータは前述したパラメータと同一である。
モデル化:
予め決定した様々な値に基づいて、上記のような微分方程式の近似のためのオイラー法を適用することにより、結合した画分の時間による挙動を監視することが可能である。いくつかのモデル化実験を、異なるトランスグルタミナーゼ濃度およびサーモリシン濃度を用いて行なった。実施例1に記載したように、トランスグルタミナーゼに対しては拡散係数を適用した。
【0157】
図13は、異なるV/V比率(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度)に対する結合モノマーの画分の時間による漸進的変化を示す。
上記結果は、一方では、ゲル化が先の実施例の場合よりも速く生じることを示唆しており、他方では、本実施例においては、結合モノマーの画分およびゲルの安定性が物理ゲルまたは化学ゲルの場合より重要であることを示唆している。
【0158】
3−3:サーモリシンの存在下における混合ゼラチンゲルの形成:
先に記載した理論モデルを検証するために、5%のゼラチンを含有する40℃の試料について、トランスグルタミナーゼ/サーモリシン比が80でトランスグルタミナーゼ濃度が1U/mlである2つの酵素トランスグルタミナーゼおよびサーモリシン存在下において実験を行った。溶液を毎分0.5℃の割合で40℃から27℃まで冷却した。ゼラチン溶液の漸進的変化は、上述したように、レオロジーおよび偏光分析によって同時に監視した。得られた結果を、理論モデルの予測と比較して、下記の表IVに示す。
【0159】
【表5】

上記結果は、開発した理論モデルに従って、低エネルギー結合および共有結合によって重合し得るモノマー溶液から、2つの拮抗する酵素活性存在下において(この場合、27℃の5%ゼラチン含有溶液で異なる濃度のトランスグルタミナーゼおよびサーモリシン存在下において)、溶液/ゲル転移と、それに次いでゲル/溶液転移とを連続的に得ることが実験的に可能であることを示している。
【0160】
開発された理論モデルに従い、ゲル生成時間は非常に迅速である。さらに、得られた「混合」ゲルの安定性および有効寿命は、物理ゲルおよび化学ゲルの双方と比較して非常に高い。
【0161】
図14は、トランスグルタミナーゼおよびサーモリシン存在下、27℃における5%ゼラチン含有溶液の粘弾性およびらせん体の割合(%)の同時進行の漸進的変化を示す。前
記5%ゼラチン含有溶液はトランスグルタミナーゼ/サーモリシン比は80、トランスグルタミナーゼ濃度は1U/mlである。
【0162】
2つの先の理論モデルに基づいて開発した理論モデルに従って、溶液/ゲル転移およびゲル/溶液転移を連続的に行なうことができる生体材料を得ることが可能である。これについては、使用するモノマーおよび酵素に従って最初の溶液/ゲルの転移を得るために、実施例1におけるように、モノマーを結合させる酵素/結合モノマーを分解する酵素の臨界比を実験的に決定することで十分である。その後、理論モデルにより、一方では所望のゲル化時間、他方では所望の有効なゲル寿命を有するゲルを得るために、様々な酵素濃度を適応することが可能となる。
【0163】
3−4:様々なプロテアーゼの存在下におけるゼラチンの物理ゲルの形成:
3−3で得られた結果を確認するために、7%ゼラチン含有試料について、40℃、1.5U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度としてトランスグルタミナーゼおよび様々なプロテアーゼの存在下において、実験を行った。溶液を、毎分0.5℃の割合で、40℃から27℃まで冷却した。上述したように、ゼラチン溶液の漸進的変化をレオロジーおよび偏光分析によって同時に監視した。得られた結果を、下記の表Vに示す。
【0164】
【表6】

これらの結果もまた、開発したモデルを他の酵素に対して一般化することができることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】0.1のV’/V比率における、結合した画分の時間による漸進的変化をモデル化した例を示す図。
【図2】レオメータを用いて監視した、異なる濃度(0.1、0.15、0.2、0.5および1U/ml)のトランスグルタミナーゼ存在下における40℃の5%ゼラチン含有溶液の粘弾性の漸進的変化を示す図。
【図3】トランスグルタミナーゼ濃度による、40℃の5%ゼラチン含有溶液のゲル化速度(ゲル化時間の逆数)を示す図。
【図4】ゲル化点の後の、40℃における酵素濃度に依存する酵素反応の速度を示す図。
【図5】溶液中に1ユニット(黒四角)および0.4ユニット(黒菱形)の酵素の拡散を考慮した、ゲル中における活性トランスグルタミナーゼの量の経時的な漸進的変化を示す図。
【図6】拡散の制限を有し、10のV/V比(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度)で、結合した画分の時間による漸進的変化をモデル化した結果を示す図。
【図7】緩やかな拡散の制限および様々なV/V比(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度)を有する、結合した画分の時間による漸進的変化をモデル化した結果を示す図。
【図8】異なる濃度のトランスグルタミナーゼおよびサーモリシンの存在下における5%ゼラチン溶液の40℃での実験による粘弾性の漸進的変化を示す図。
【図9】0.5℃/分の割合で40℃から27℃まで冷却した場合の、使用した2種のA型ゼラチン(A型およびAP1型)の5%含有溶液中のらせん体の割合の時間による漸進的変化を示す図。
【図10】トランスグルタミナーゼが存在しない物理ゲル(黒四角)、およびトランスグルタミナーゼの存在下で得られた化学ゲル(白丸)における、らせん体の割合(%)の時間および温度による漸進的変化を示す図。
【図11】27℃での種々の濃度のサーモリシン存在下における結合鎖の割合(%)の漸進的変化をモデル化するいくつかの例を示す図(ゲル化閾値はらせん体6.4%)。
【図12】27℃における異なるサーモリシン濃度を有する5%ゼラチン含有溶液の粘弾性の実験上の漸進的変化を示す図。
【図13】異なるV/V比率(1U/mlのトランスグルタミナーゼ濃度)に対する結合モノマーの画分の時間による漸進的変化を示す図。
【図14】トランスグルタミナーゼおよびサーモリシン存在下、27℃における5%ゼラチン含有溶液の粘弾性およびらせん体の割合(%)の同時進行の漸進的変化を示す図。前記5%ゼラチン含有溶液はトランスグルタミナーゼ/サーモリシン比は80、トランスグルタミナーゼ濃度は1U/mlである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは低エネルギーの結合によってポリマーを形成し得る少なくとも1種のモノマーおよび前記モノマーとそのポリマーとの混合物のうちのいずれかと、前記ポリマーを分解し得る第1の種類の酵素とを含む種類の生体材料であって、前記生体材料は、ゲル形態および溶液形態のいずれかを呈し、かつ第1の溶液/ゲル転移と、次いで、第1の種類の酵素の作用下において、第2のゲル/溶液転移とを連続的に行なうことが可能である、生体材料。
【請求項2】
前記生体材料は、前記モノマーの間に共有結合を形成し得る少なくとも1種の第2の種類の酵素をさらに含み、かつ前記生体材料は、第2の種類の酵素の作用下において第1の溶液/ゲル転移と、それに次いで第1の種類の酵素の作用下において第2のゲル/溶液転移とを連続的に行なうことができることを特徴とする、請求項1に記載の生体材料。
【請求項3】
双方の種類の酵素が、不活性化されていない状態で同時に存在することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項4】
前記モノマーはタンパク質および糖類のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項5】
ポリマーを形成し得るタンパク質は、フィブリン、グリアジン、ミオシン、グロブリン(7Sおよび11S)、アクチン、ミオグロビン、コラーゲンおよびその誘導体、乳漿タンパク、大豆および小麦タンパク、並びに卵白および卵黄タンパクのうちから選択される、請求項3に記載の生体材料。
【請求項6】
重合可能な種類のタンパク質およびそのポリマーを分解し得る第1の種類の酵素は、メタロプロテイナーゼ群、セリンプロテアーゼ群、システインおよびアスパラギン酸プロテアーゼ群、並びにADAM群の酵素のうちから選択されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の生体材料
【請求項7】
重合可能な種類のタンパク質およびそのポリマーを分解し得る酵素はメタロプロテイナーゼであり、好ましくは細菌性サーモリシンであることを特徴とする、請求項6に記載の生体材料。
【請求項8】
タンパク質モノマーの間に共有結合を形成し得る第2の種類の酵素は、リシルオキシダーゼ群およびトランスグルタミナーゼ群のうちから選択されることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項9】
ポリマーを形成し得る糖類は、カラギーナン、アルギナート、ペクチン、キトサン、セルロース、キチン、グリコーゲンおよびデンプンのうちから選択されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項10】
第1の種類の酵素の濃度に対する第2の種類の酵素の濃度の比率は、1以上、好ましくは10以上であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項11】
適切な溶媒、好ましくは水性溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項12】
前記生体材料は、凍結乾燥されたゲル形態にあることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の生体材料。
【請求項13】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の生体材料を調製する方法であって、該方法は、適切な溶媒中に、
(i)好ましくは低エネルギーの結合によりポリマーを形成し得る少なくとも1種のモノマーを混合することと、
(ii)前記ポリマーを分解し得る第1の種類の酵素を混合することと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記方法は、適切な溶媒中に、
(iii)前記モノマーの間に共有結合を形成し得る第2の種類の酵素を混合することをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
適切な溶媒は水溶媒であることを特徴とする、請求項13または14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーを形成し得るモノマーの量は、生体材料の全重量に対して0.1〜30重量%であることを特徴とする、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ポリマーを分解し得る酵素の濃度に対するモノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度の比率は、1以上、好ましくは10以上であることを特徴とする、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、0.001U/ml超、好ましくは0.01U/ml超であることを特徴とする、請求項13乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ゲル形態の生体材料を凍結乾燥する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項13乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーを形成し得るモノマーの濃度、前記ポリマーを分解し得る酵素の濃度、および任意選択で前記モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、所望のゲル化時間および有効ゲル寿命を有する生体材料が得られるように選択されることを特徴とする、請求項13乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ポリマーを形成し得るモノマーの濃度、前記ポリマーを分解し得る酵素の濃度、および場合により、前記モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の濃度は、下記方程式(I)、(II)、(III)、および(IV)の結果が所望のゲル化時間および有効ゲル寿命を得ることを可能にするように選択され、
【数1】

上記方程式は、それぞれ、時間(dt)による、結合したモノマーの数の漸進的変化(dg)(I)、溶液中のモノマーの数の漸進的変化(ds)(II)、および分解されたモノマーの数の漸進的変化(df)(III)、並びに質量保存方程式(IV)を記述しており、
前記式中、
− gは結合した形態にあるモノマーの量に相当し、
− tは時間に相当し、
− Vは、単位時間あたりに前記酵素により遊離形態に変化した結合モノマーの量として表された、ポリマーを分解し得る酵素の速度に相当し、
− Kは、ポリマーを分解し得る酵素のミハエリス定数を表し、
− sは、遊離した形態にあるモノマーの量を表し、
− Vは、単位時間あたりに前記酵素によって結合された遊離形態にある結合モノマーの量として表された、モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素の速度に相当し、
− Kは、モノマーの間に共有結合を形成し得る酵素のミハエリス定数を表し、
− Vは、低エネルギーの結合により重合し得るモノマーの場合における、単位時間あたりの低エネルギー結合による遊離形態にあるモノマーの結合の速度を表し、
− V’は、単位時間あたりに前記酵素により生成されたもはや重合不可である分解モノマーの量として表された、遊離形態にあるモノマーを分解し得る酵素の速度に相当し、
− gは、時間tにおける、結合形態にあるモノマーの量に相当し、
− sは、時間tにおける、遊離形態にあるモノマーの量に相当し、
− fは、時間tにおける、もはやポリマーを形成し得ない分解モノマーの量に相当し、
− Sはモノマーの初期量に相当する
ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−521393(P2008−521393A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542049(P2007−542049)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002939
【国際公開番号】WO2006/056700
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507173263)ユニベルシテ ドゥ セルジー−ポントワーズ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE CERGY−PONTOISE
【Fターム(参考)】