説明

溶融めっき装置

【課題】堆積したボトムドロスの除去作業の効率を落とすことなく、しかも高速で被めっき帯を搬送してもボトムドロスの巻き上がりを抑制可能とする。
【解決手段】連続して搬送される被めっき帯10を、浴槽1に収容した溶融金属2の浴内に連続して浸漬させ、シンクロール3によって搬送方向を上方に転換し、サポートロール4で矯正した後に浴外へ引き出す溶融めっき装置である。上面視で上記シンクロール3と重ならない位置において、上記シンクロール3と上記サポートロール4との間に位置する被めっき帯10と対向配置する整流板20を設け、その整流板20によって、上記被めっき帯10にサポートロール4が接触することで変更された随伴流R3の流れを、上記シンクロール3の下部側若しくは、当該シンクロール3と浴槽1底面1cとの間に誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯などの被めっき帯を、溶融金属の浴に連続して浸漬し、サポートロールで矯正した後に浴外に搬送する溶融めっき装置に関する。特に、浴槽の底部に溜まったボトムドロスの巻き上げを抑制して被めっき帯へのボトムドロス付着を防止可能な溶融めっき装置を提供する技術である。
【背景技術】
【0002】
溶融めっき操業においては、溶融金属を収容した浴槽の底面に堆積したボトムドロスが、浴中を被めっき帯が通過する際に生じる随伴流により巻き上げられ、巻き上げられたドロスが被めっき帯に付着することで、めっき製品の表面品質を劣化させるという問題がある。
この問題に対応した従来技術としては、例えば特許文献1や特許文献2等に記載された技術がある。これらの技術は、シンクロールの下側に、当該シンクロールと浴槽底面との間を遮蔽するように配置した遮蔽板を設けることで、浴槽の底面に堆積したボトムドロスの巻き上がりを抑制しようとするものである。ここで、上記遮蔽板の形状は色々あるが、シンクロールに下側から対向する部分を有し、その対向部分は、例えばシンクロールの下部に沿ったU字状の曲面若しくは浴槽底面に平行な平面形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−47956号公報
【特許文献2】特開2002−339051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような遮蔽板を設けた場合、その遮蔽板の下方に堆積したボトムドロスの除去が難しくなる。
また、遮蔽板の水平面またはU字状の部分、特にU字状の部分内にドロスが堆積し、その遮蔽板に堆積したドロスが、随伴流によって巻き上がる恐れがある。すなわち、遮蔽板上にドロスが溜まることで、ドロス付着を防ぐ効果が損なわれてしまうという欠点がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、浴槽底面に堆積したボトムドロスの除去作業の効率を落とすことなく、しかも高速で被めっき帯を搬送してもボトムドロスの巻き上がりを抑制可能な溶融めっき装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らが確認したところ、浴中での被めっき帯の移動に伴う随伴流は、図2中矢印Rで示すように、外側から被めっき帯に当接するサポートロールによって、浴槽における出口側の壁面に向かう流れとなる。この流れは、上記壁面に沿って下側に移動し、さらに底面に沿った流れになるものと推定される。そして、この底面に沿った流れによって、浴槽の底面に堆積したボトムドロスが攪乱される恐れがある。この流れは、被めっき帯の搬送速度が速くなるほど強くなる。すなわち、従来例のような遮蔽板を設置しても、被めっき帯の搬送速度が速い場合には、壁面及び底面に沿って流れる上述の随伴流でボトムドロスの攪乱が発生するおそれがあるものと考えられる。
【0006】
そのようなことも考慮しつつ上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、連続して搬送される被めっき帯を、浴槽に収容した溶融金属の浴内に連続して浸漬させ、続いて浴中に配置したシンクロールによって搬送方向を上方に転換し、さらにサポートロールで矯正した後に浴外へ引き出す溶融めっき装置であって、
上面視で上記シンクロールと重ならない位置において、上記シンクロールと上記サポートロールとの間に位置する被めっき帯と対向させて整流板を配置し、その整流板によって、上記被めっき帯にサポートロールが接触することで変更された随伴流の流れを、上記シンクロールの下部側、若しくは当該シンクロールと浴槽底面との間に誘導することを特徴とするものである。
【0007】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記整流板は、上記シンクロールによって搬送方向を上方に転換された被めっき帯部分と、その被めっき帯部分と対向する浴槽の壁面との間に配置すると共に上側から下側に向けて延在するように配置し、
且つ、その整流板の下端部は、その接線が、上記搬送方向を上方に搬送された被めっき帯部分と対向する浴槽の壁面と向かい合う他方の壁面に交わるように設定したことを特徴とするものである。
【0008】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した構成に対し、上記整流板の少なくとも下端部側は、下側に凸の曲率を持ちつつ下端部に向かうにつれて浴槽底面に近づく形状となっていることを特徴とするものである。
上記下端部側とは、例えば、整流板に随伴流が衝突する位置よりも下端側で、全長の例えば1/4以下を指す。
なお、「下側に凸の曲率を持ちつつ下端部に向かうにつれて浴槽底面に近づく形状」とは、側面視下側に凸の曲面となるが、ドロスが溜まるような凹部が形成されていないことを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、整流板をシンクロールと上下で重ならない位置に配置することで、整流板による浴槽の底面に堆積したボトムドロスの除去効率の低下を抑えることが出来る。特にシンクロール近傍の下方に位置するボトムドロスの除去効率の低下を抑えることが出来る。
また、上記整流板によって、被めっき帯がサポートロールに接触することで変更された随伴流の流れを、出口側の壁面及び底面に沿った流れとなることを阻止できる。
そればかりか、上記整流板によって、上記随伴流を、シンクロール下部側、若しくはシンクロールと浴槽底面との間に誘導することで、その随伴流は、シンクロールと、その下側の浴槽底面に堆積したボトムドロスとを遮断する流れの層を構成することが可能となる。このことからもボトムドロスのシンクロール側への巻き上がりを抑制可能となる。
【0010】
さらに請求項2に係る発明によれば、上記整流板を上側から下側に延在する構成とすることで、上面視における整流板の占有空間を小さく出来る。これによって、より確実に整流板による浴槽の底面に堆積したボトムドロスの除去効率の低下を抑えることが出来る。
また、上記整流板を上側から下側に延在する構成とすることで、整流板へのドロスの堆積を防止することが可能となる。なお、上記随伴流は、整流板に沿って移動するので、整流板上のドロスが溜まり難い。
【0011】
また、整流板の下端の接線を他の壁面に交わるように設定することで、確実に、随伴流が浴槽底面に向かう事なく、シンクロールと浴槽底面との間の流れとすることが可能となる。
さらに請求項3に係る発明によれば、請求項2の効果を奏しつつ、上面視における整流板の占有空間をより小さく出来る。すなわち、整流板下端部側を、側面視で下に凸の曲線状とすることで、整流板全体の鉛直方向に対する傾きを抑えつつ、整流板で誘導される随伴流の水平方向に対する傾きを小さく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る溶融めっき装置を説明する側面からみた模式図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る溶融めっき装置の別例を説明する側面からみた模式図である。
【図3】整流板を設定しない場合における浴流速の分布例を示す図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る整流板を設けた場合における浴流速の分布例を示す図である。
【図5】ドロス付着量の実験結果を説明する図であって、(a)はライン速度180mpmの場合を、(b)はライン速度250mpmの場合を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の溶融めっき装置を示す模式的側面図である。
(構成)
本実施形態の溶融めっき装置は、図1に示すように、浴槽1内に溶融金属2が収容されている。その溶融金属2の浴中には、シンクロール3、サポートロール4、及び整流板20を示す。
ここで、図1中、符号5は、被めっき帯10を浴中に案内するためのスナウト5である。
【0014】
また、符号6はインゴットボックスを示している。インゴットボックス6の下側の空間7には、溶融めっき装置の使用によってドロスが堆積して固化する。そして、その固化したドロス部分も浴槽1における、他の壁面1bを形成する壁部の一部とみなすことが出来る。すなわち、インゴットボックス6の下側に入り込んだドロスは除去が困難であるため、除去しないことで、浴槽1の入側の壁面1bを構成するようになる。なお、インゴットボックス6の下側に空間を設ける必要はない。
上記シンクロール3は、連続して溶融金属2に浸漬する被めっき帯10の搬送方向を上方に転換する。
ここで、被めっき帯10は、例えばアルミ材や鋼材などからなる金属帯や、フィルムなどの非金属帯などであって、めっき処理が必要な帯状体である。
【0015】
また、対をなすサポートロール4は、搬送されてくる被めっき帯10を厚さ方向から挟み込むことで、シンクロール3通過等に起因して発生した、被めっき帯10の反り等を矯正する。
また、本実施形態の整流板20は、図1に示すように、浴中における被めっき帯10の出側に、上下に延在するようにして配置されている。すなわち、整流板20は、上面視で上記シンクロール3と重ならない位置において、上記シンクロール3と上記サポートロール4との間に位置する被めっき帯10と対向するように配置されている。すなわち、整流板20は、上記被めっき帯10にサポートロール4が接触することで変更された随伴流R3の流れが衝突可能な位置に配置されて、その整流板20に衝突した随伴流R3を、上記シンクロール3の下部側(R4)若しくは、当該シンクロール3と浴槽1底面1cとの間(R5)に誘導可能な形状となっている。例えば、整流板20は、上端部よりも下端部の方が被めっき帯10に近くなるように、全体として鉛直方向に対し傾斜している。
【0016】
本実施形態では上記誘導が可能となるように、上記整流板20は、上記シンクロール3によって搬送方向を上方に転換された被めっき帯10部分と、その被めっき帯10部分と対向する浴槽1の壁面1aとの間において上側から下側に向けて延在するように配置されている。更に、その整流板20の下端部の接線Sが、上記出口側の壁面と向かい合う他方の壁面1b入口側の壁面)に交わるように設定している。
【0017】
このとき、本実施形態では、上記整流板20の下端部側20aを、下側に凸の曲率を持ちつつ下端部に向かうにつれて浴槽1底面1cに近づく形状とすることで、その整流板20の下端部の接線Sが、上記出口側の壁面と向かい合う他方の壁面(入口側の壁面)に交わるように設定している。
また、上記整流板20の上端部を、浴面よりも高い位置に設定している。
なお、上記整流板20は、浴槽1自体に固定しても良いし、不図示の昇降装置によって昇降可能にしても良い。
【0018】
(動作、作用その他)
上工程から搬送されてきた被めっき帯10は、スナウト5内に案内されつつ浴槽1内の溶融金属2の浴内に浸漬する。続いて浸漬した被めっき帯10は、シンクロール3の下部側に巻き付くことで搬送方向が上方に転換して上方に送られる。その上方に移動する被めっき帯10は、サポートロール4で形状を矯正された後に、浴外へ引き出される。
【0019】
上述のように、被めっき帯10が浴中を移動すると、その被めっき帯10の移動に伴って随伴するする随伴流R1が発生する。この随伴流R1は、被めっき帯10に沿った流れを形成するが、被めっき帯10とサポートロール4との接触部下部において、随伴流R1の圧力が上昇する。このため、随伴流R1は、当該接触部から出口側の壁面に向けて吐き出されるような流れR3に変更される。この吐き出されるような流れ以降の随伴流の流れを、仮に吐き出し流R3と呼ぶ。
上記吐き出し流R3は、上記整流板20に向けて流れ当該整流板20に衝突した後には、当該整流板20に沿って移動する。すなわち、吐き出し流R3が、出口側の壁面1aに衝突し、当該出口側の壁面1aに沿って底面1c側に流れることを防止する。
【0020】
そして、整流板20に沿って下側に流れる吐き出し流R3は、側面視における整流板20の面形状に沿って移動し、その整流板20の下端部から当該下端部の略接線S方向に向けて流れるように誘導される。その整流板20の下端部以降の吐き出し流R3(随伴流R1)を、仮に誘導流R5と呼ぶ。
ここで、上記整流板20の下端部側20aの形状は、側面視円弧状の曲面形状となっているので、上記流れR4は、その円弧に沿った方向に流れようとするため、上記整流板20の下端部の接線S方向よりも若干上方に誘導されつつ、他方の壁面1bに向けて流れる。
【0021】
この誘導流R5は、本実施形態では、シンクロール3の下部側に向かう流れとなるが、シンクロール3下部に位置する被めっき帯10の移動方向に沿った随伴流R1の影響で、シンクロール3の下部の下側を当該シンクロール3の下部に沿って移動して他方の壁面1b(入口側の壁面)に向かう流れとなる。
これによって、誘導流R5は、シンクロール3及びシンクロール3に沿って流れる随伴流R1を、底面1cに堆積しているボトムドロス11から遮断する流れとなる。また、随伴流自体が浴槽1の底面1cに向かうことも防止できる。この結果、浴槽1の底面1cに溜まったボトムドロス11の巻き上げを抑制することが可能となる。
【0022】
(本実施形態の効果)
流動制御用の整流板20を導入するだけで、鋼帯などの被めっき帯10の通過に伴い発生する随伴流R1と浴底部の流動を分離できる。この結果、被めっき帯10へのドロス付着が抑制され、結果としてドロス欠陥の少ない被めっき帯10を製造可能となる。
ここで、被めっき帯10の搬送速度が速くなるほど、被めっき帯10に沿った随伴流R1の圧力が上昇することで上記整流板20が無い従来技術ではトムドロス11を巻き込み易くなるが、本実施形態では、被めっき帯10の搬送速度が速くなるほど、上記誘導流R5の圧力も上昇することで、ボトムドロス11の巻き上げを抑制することが可能である。
【0023】
また、上記整流板20を、上下に延在するように配置しているので、上面視における浴中の占有面積が小さい。このため、整流板20は、例えばホースを浴槽1の底面1cに堆積したボトムドロス11の位置まで差し込んで当該ボトムドロス11を吸引して除去する際の邪魔になりにくい。
また、上記整流板20以外は、浴自体への新たな付帯設備を必要としない。このため、低コストでドロスの付着防止設備を設けることができる。また、ドロスの堆積量にかかわらずにドロスの巻き上げを防ぐことが可能であるため、連続稼動時間に制約が生ないという効果もある。なお、対象とする設備における最大の搬送速度上限までドロスの巻き上げを防止可能であることをラボ実験で確認済みである。すなわち、上述のように製造速度の低下を防ぐという効果もある。
【0024】
(変形例その他について)
上記整流板20に衝突した吐き出し流R3は、整流板20に沿って上方にも流れる。しかし本実施形態では、整流板20の上端部は浴面よりも上方に位置するため、整流板20に沿って上方に移動する吐き出し流R6が整流板20の裏面側つまり出口側の壁面1a側に流れることが防止される。そして、上記吐き出し流R3は、浴面に沿って被めっき帯10側に流れることとなる。
ここで、上記実施形態では、整流板20の上端部を浴面の上方まで延ばすことで、整流板20の裏側に吐き出し流R3が回り込むことを防止している。整流板20の上端部を出口側の壁面に固定する事で、整流板20の裏側に吐き出し流R3が回り込む事を防止しても良い。整流板20の裏面を出口側の壁面に支持させる支持体を壁面に固定しても良い(図2参照)。
【0025】
また、上記実施形態では、整流板20の下端部側20aを下側に凸の曲率を有する形状としているが、これに限定しない。図2に示すように、整流板20を鉛直方向に対し傾斜した平板から形成しても良い。但し、誘導流R5が底面1cに向かわないようにするためには、整流板20の上端部と下端部とを結んだ鉛直方向に対する傾斜角を、上記実施形態よりも大きくとる必要がある。
また、整流板20の上端部が浴中に位置し、且つ出口側の壁面との間に隙間が存在する配置構成を採用する場合には、整流板20に沿って上側に移動する上記吐き出し流R3が、整流板20の上端部から裏側に回り込み難いような形状とすればよい。また、多少裏側に回り込んでもその流れの圧力が小さければ特に問題はない。
【0026】
上記整流板20の上端部から裏側に回り込み難いような形状とは、上記整流板20に対し、吐き出し流R3が衝突する位置よりも上側位置に上側に凸の曲面などを形成して、上側に向かう吐き出し流R3の圧力を削減させたり、整流板20の上端部が被めっき帯10側に向くような側面視円弧状として、整流板20の上端部から誘導される吐き出し流R3も積極的に上側に移動する被めっき帯10側に向かうようにしても良い。
なお、上記整流板20の下方の浴槽1底面1c部分にも、インゴットボックス6の下側と同様に、除去し難いドロスが堆積して固化する可能性はあるが、問題は無い。
【実施例】
【0027】
ここで、ラボ実験について説明する。
ラボ実験ではまず、従来の浴内の流れのシミュレーションを行った。上記整流板20を設けない比較例の浴内の流速シミュレーション結果が図3であり、浴の出側に上記整流板20を設置した際の流速シミュレーション結果が図4である。
図4では、誘導流R5がシンクロール3と底面1cとの間を流れて、底側の流速が低い。一方、図3では、随伴流が壁面1a及び底面1cに沿って流れることで、当該底面1c側の流速が高くなっている。すなわち、これらの図3及び図4で示す解析によれば、比較例(図3)では、ボトムドロス11の巻き上げの原因である浴底部の流速が従来の浴では0.6m/sであったのが、整流板20を設置した実施例(図4)では、浴底部での流れをほぼ押さえ込めていることが確認出来た。
【0028】
この結果を踏まえてボトムドロス11の巻き上げ量を定量的に評価するため、水モデル試験を行なった。水モデル試験とは実機の溶融めっき装置を縮小し、亜鉛などの溶融金属2の代わりに水で浴槽1内を満たして、実機条件を模擬する試験のことである。本試験では実機をl/4に縮小した浴底部にボトムドロス11を模したエチレンビーズを敷き詰め、鋼板を模したベルトを連続的に回転させ、回転に伴って発生する随伴流R1が巻き上げるドロスの量を採取することにより定量評価を行なった。
採取を行なった箇所は、サポートロール4付近とシンクロール3上部および、被めっき帯10の出口側の3箇所である。採取を行なった時間は鋼板の搬送を開始し、巻き上げられるビーズの量が定常状態に達した10分後に行なった。
【0029】
実験は、上記比較例の溶融めっき装置と、これの出側に整流板20を設置した実施例とでそれぞれ実施した。模擬した搬送速度は、平均速度である180mpm(1分当りのめっき速度)と、一般的な高速度である250mpmの2つの搬送速度とした。
この結果を示したのが図5である。図5から分かるように、出口側に上記整流板20を設置すると、整流板20を設置しない比較例に比べてドロス巻き上げ量が1/6以下に抑えられていることがわかる。ここで注目すべき点は、この効果がめっき高速度の250mpmまで保たれている点である。
【符号の説明】
【0030】
1 浴槽
1a 出側の壁面(一方の壁面)
1b 入側の壁面(他方の壁面)
1c 底面
2 溶融金属
3 シンクロール
4 サポートロール
10 被めっき帯
11 ボトムドロス
20 整流板
20a 下端部側
R1 随伴流
R3 吐き出し流(随伴流)
R5 誘導流(随伴流)
S 接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して搬送される被めっき帯を、浴槽に収容した溶融金属の浴内に連続して浸漬させ、続いて浴中に配置したシンクロールによって搬送方向を上方に転換し、さらにサポートロールで矯正した後に浴外へ引き出す溶融めっき装置であって、
上面視で上記シンクロールと重ならない位置において、上記シンクロールと上記サポートロールとの間に位置する被めっき帯と対向させて整流板を配置し、その整流板によって、上記被めっき帯にサポートロールが接触することで変更された随伴流の流れを、上記シンクロールの下部側、若しくは当該シンクロールと浴槽底面との間に誘導することを特徴とする溶融めっき装置。
【請求項2】
上記整流板は、上記シンクロールによって搬送方向を上方に転換された被めっき帯部分と、その被めっき帯部分と対向する浴槽の壁面との間に配置すると共に上側から下側に向けて延在するように配置し、
且つ、その整流板の下端部は、その接線が、上記搬送方向を上方に搬送された被めっき帯部分と対向する浴槽の壁面と向かい合う他方の壁面に交わるように設定したことを特徴とする請求項1に記載した溶融めっき装置。
【請求項3】
上記整流板の少なくとも下端部側は、下側に凸の曲率を持ちつつ下端部に向かうにつれて浴槽底面に近づく形状となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した溶融めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44048(P2013−44048A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184984(P2011−184984)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】