説明

溶融加工可能なポリウレタンおよびそれらの製造方法

【課題】気候条件に関わらず、如何なる表面の堆積も形成せず、および同時に非常に良好な離型性および非粘着性を示す熱可塑性ポリウレタンエラストマーを提供すること。
【解決手段】A)有機ジイソシアネート、B)直鎖状ヒドロキシル末端ポリオール、およびC)ジオール鎖延長剤および必要に応じてジアミン鎖延長剤から、D)必要に応じて触媒の存在下、E)必要に応じて補助物質および添加剤の添加を伴って、製造され、総重量に基づいて、0.02〜2重量%のF)a)アルキレンジアミンと直鎖状脂肪酸との反応生成物、およびb)アルキレンジアミンと12−ヒドロキシステアリン酸との反応生成物、および/またはc)アルキレンジアミンと12−ヒドロキシステアリン酸と直鎖状脂肪酸との反応生成物の混合物を含有する、溶融加工可能なポリウレタン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のワックスを含有する溶融加工可能なポリウレタン、それらの製造方法、およびフィルム、被覆剤および射出成形品を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、優れた機械的特性を示し、低コストで溶融加工することができることから、工業的に重要である。それらの機械的特性は、異なる化学成分を使用することにより、広範囲にわたって変動し得る。TPUの要説、それらの特性および用途は、Kunststoffe 68(1978年)、819〜825頁(非特許文献1)およびKautschuk、Gummi、Kunststoffe 35(1982年)、568〜584頁(非特許文献2)中に見出すことができる。
【0003】
TPUは、直鎖状ポリオール(通常、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール)、有機ジイソシアネートおよび短鎖ジオール(鎖延長剤)から構築される。形成反応を促進するため、触媒も添加することができる。構成成分のモル比は、広範囲にわたって変動し得る。これにより、生成物の特性を調整することができる。ポリオールと鎖延長剤とのモル比に応じて、広範囲のショア硬度を有する生成物が得られ得る。溶融加工可能なポリウレタンエラストマーは、段階的に(プレポリマー方法)または全ての成分の一段階の同時反応(ワンショット方法)のいずれかで構築することができる。プレポリマー方法において、イソシアネート含有プレポリマーは、ポリオールおよびジイソシアネートから形成され、これは第二工程において鎖延長剤と反応する。TPUは、連続的にまたは回分的に製造することができる。最も知られた工業的製造方法は、ベルト方法および押出機方法である。
【0004】
触媒に加えて、補助物質および添加剤もTPU成分に添加することができる。ワックスは、例えば、TPUの工業的製造の間およびそれらの加工の間の両方において重要な仕事を行う。ワックスは、摩擦を低減する内部および外部滑剤として作用し、かくしてTPUの流動特性を改善する。さらに、離型剤として、TPUが包囲材料(例えば、型)に粘着するのを防止すべきであり、および他の添加剤(例えば、顔料および抗ブロック剤)のための分散剤として作用すべきである。
【0005】
先行技術において、脂肪酸アミド(例えば、ステアルアミドおよびオレアミド)またはポリエチレンワックスがそうであるように、脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸エステルおよびモンタン酸エステル)およびそれらの金属石鹸は、有用なワックスの例である。熱可塑性プラスチック中に使用されるワックスの概説は、H.Zweifel(編):Plastics Additives Handbook、第5版、Hanser Verlag、ミュンヘン、2001年、443頁以降(非特許文献3)中に見出すことができる。
【0006】
今日までに、良好な非粘着作用を有するアミドワックス(特にエチレンビスステアルアミド)は、TPUにおいて実質的に使用されている。さらに、低揮発性と共に良好な滑剤特性を示すモンタン酸エステルワックスが使用されている(例えば、欧州特許公開EP−A 308 683(特許文献1);欧州特許公開EP−A 670 339(特許文献2);特開平5−163431号公報(特許文献3)参照)。しかしながら、TPU中に使用する場合のアミドワックスの欠点は、それらの移動傾向である。一定時間後、これは、特に薄壁用途(例えば、フィルム)において、視覚的障害に至るワークピース上のプレートアウトを導き、および表面依存性特性の所望されない変化を生じさせる。モンタン酸エステルワックスの使用は、あまりに低いヘーズ限界によって制限される。さらに、比較的高い濃度でさえも、それらの非粘着作用は十分ではない。
【0007】
エステルとアミドとの組合せを使用することにより(独国特許公開DE−A 19 607 870(特許文献4))、およびモンタン酸誘導体と脂肪酸誘導体との特別なワックス混合物を使用することにより(独国特許公開DE−A 19 649 290(特許文献5))、改善を達成することができる。これらのワックスを含有するTPUは、表面の堆積を形成する傾向が顕著に低いけれども、これらのワックスも特定の気候条件下に移動する。これは許容することができない。
【特許文献1】欧州特許公開EP−A 308 683
【特許文献2】欧州特許公開EP−A 670 339
【特許文献3】特開平5−163431号公報
【特許文献4】独国特許公開DE−A 19 607 870
【特許文献5】独国特許公開DE−A 19 649 290
【非特許文献1】Kunststoffe 68(1978年)、819〜825頁
【非特許文献2】Kautschuk、Gummi、Kunststoffe 35(1982年)、568〜584頁
【非特許文献3】H.Zweifel(編):Plastics Additives Handbook、第5版、Hanser Verlag、ミュンヘン、2001年、443頁以降
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、気候条件に関わらず、如何なる表面の堆積も形成せず、および同時に非常に良好な離型性および非粘着性を示すTPUを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、以下でより詳細に説明する特別な添加剤を本発明のTPUに組み込むことによって、達成することができた。
【0010】
本発明は、溶融加工可能なポリウレタンであって、以下の成分:
A)一以上の有機ジイソシアネート、
B)500〜5000の重量平均分子量を有する一以上の直鎖状ヒドロキシル末端ポリオール、および
C)60〜490の分子量を有する、一以上のジオール鎖延長剤および必要に応じてジアミン鎖延長剤、
D)必要に応じて触媒、
E)必要に応じて補助物質および添加剤、および
F)生成物の総重量に基づいて、0.02〜2重量%の
a)アルキレンジアミン(好ましくはエチレンジアミン)と一以上の直鎖状脂肪酸(好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸または工業的ステアリン酸)との反応生成物、および
b)アルキレンジアミン(好ましくはエチレンジアミン)と12−ヒドロキシステアリン酸との反応生成物、および/または、
c)アルキレンジアミン(好ましくはエチレンジアミン)と12−ヒドロキシステアリン酸と一以上の直鎖状脂肪酸(好ましくはステアリン酸および/またはパルミチン酸または工業的ステアリン酸)との反応生成物
の混合物から製造される、溶融加工可能なポリウレタンに関する。
【0011】
これらの成分は、A)中のNCO基と、B)およびC)中のイソシアネート反応性基とのモル比が、0.9:1〜1.2:1になるような量で使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
混合物F)としては、アルキレンジアミンと、a)およびb)および/またはc)との、混合物Fの総重量に基づいて1〜95重量%(好ましくは1〜85重量%、最も好ましくは5〜75重量%)対1〜95重量%(好ましくは1〜85重量%、最も好ましくは5〜75重量%)対0〜50重量%(好ましくは0〜40重量%)の好ましい比率での、反応生成物が挙げられる。該反応生成物の合計は、100重量%である。
【0013】
工業的ステアリン酸は、20〜50重量%のパルミチン酸および50〜80重量%のステアリン酸を含有する。
【0014】
適当な有機ジイソシアネートA)としては、例えば、脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、ヘテロ環式および芳香族ジイソシアネート、例えば、Justus Liebigs Annalen der Chemie、562、75〜136頁に記載されたものが挙げられる。
適当なジイソシアネートの具体例としては、脂肪族ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート;脂環族ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートならびに対応する異性体混合物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートならびに対応する異性体混合物;芳香族ジイソシアネート、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートとの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物、ウレタン変性液体4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルエタン−(1,2)および1,5−ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が96重量%超のジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物が好ましく、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートが最も好ましい。これらのジイソシアネートは、個々に、または互いの混合物の形態で使用することができる。それらは、15重量%(ジイソシアネートの総量に基づく)までのポリイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートまたはポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートと一緒に使用することもできる。
【0015】
500〜5000の分子量を有する直鎖状ヒドロキシル末端ポリオールは、成分B)として使用される。これらの製造方法の結果として、これらは、しばしば少量の非直鎖状化合物を含有する。したがって、これらは、しばしば「実質的に直鎖状ポリオール」と呼ばれる。ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカーボネートジオールまたはそれらの混合物が好ましい。
【0016】
適当なポリエーテルジオールは、アルキレン基中に2〜4個の炭素原子を有する一以上のアルキレンオキシドと、2つの結合した活性水素原子を含有するスターター分子とを反応させることによって製造することができる。適当なアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシドである。エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物が好ましい。アルキレンオキシドは、個々に、あるいは相次いでまたは混合物として、使用することができる。適当なスターター分子は、例えば、水;アミノアルコール、例えば、N−アルキルジエタノールアミン、例えば、N−メチルジエタノールアミン;およびジオール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールである。スターター分子の混合物も必要に応じて使用することができる。また、適当なポリエーテルジオールとしては、テトラヒドロフランのヒドロキシル基含有重合生成物が挙げられる。三官能性ポリエーテルも、二官能性ポリエーテルに基づいて0〜30重量%の割合で、しかしながら、溶融加工可能な生成物を生じさせるのに十分な量に過ぎない量で、用いることができる。実質的に直鎖状ポリエーテルジオールは、500〜5000の分子量を有する。それらは、個々に、および互いの混合物の形態で用いることができる。
【0017】
適当なポリエステルジオールは、例えば、2〜12個(好ましくは4〜6個)の炭素原子を有するジカルボン酸と、多価アルコールから製造することができる。適当なジカルボン酸は、例えば:脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、および芳香族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸である。ジカルボン酸は、個々に、または混合物として、例えば、コハク酸とグルタル酸とアジピン酸との混合物の形態で、用いることができる。ポリエステルジオールを製造するため、ジカルボン酸の代わりに、対応するジカルボン酸誘導体、例えば、アルコール基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸塩化物を使用することが有利であり得る。多価アルコールの例は、2〜10個(好ましくは2〜6個)の炭素原子を有するグリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよびジプロピレングリコールである。所望の特性に応じて、多価アルコールは、単独または必要に応じて互いの混合物で使用することができる。上記ジオールとの炭酸のエステルも適当であり、特に4〜6個の炭素原子を有するもの、例えば、1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオール、ヒドロキシカルボン酸(例えば、ヒドロキシカプロン酸)の縮合生成物、およびラクトン(例えば、置換されていてもよいカプロラクトン)の重合生成物である。好ましいポリエステルジオールは、エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンである。ポリエステルジオールは、500〜5000の分子量を有し、および個々に、または互いの混合物の形態で使用することができる。
【0018】
60〜490の分子量を有するジオールは、鎖延長剤C)として使用され、好ましくは2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えば、エタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびより好ましくは1,4−ブタンジオールである。しかしながら、テレフタル酸と2〜4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、例えば、テレフタル酸ビスエチレングリコールまたはテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ハイドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば、1,4−ジ(−ヒドロキシエチル)ハイドロキノンおよびエトキシル化ビスフェノールも適当である。また、鎖延長剤C)も比較的少ない割合のジアミンを含有し得る。これらとしては、(シクロ)脂肪族ジアミン、例えば、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−1,3−プロピレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、および芳香族ジアミン、例えば、2,4−トルエンジアミンおよび2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミンおよび3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミンおよび第1級モノ、ジ−、トリ−またはテトラアルキル置換4,4’−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。上記鎖延長剤の混合物も使用することができる。さらに、比較的少量のトリオールを添加することができる。
【0019】
さらに、従来の単官能性化合物も、例えば、連鎖停止剤または離型剤として、少量で使用することができる。アルコール(例えば、オクタノールおよびステアリルアルコール)またはアミン(例えば、ブチルアミンおよびステアリルアミン)が例示される。
【0020】
本発明のTPUを製造するため、構成成分を、必要に応じて触媒、補助物質および添加剤の存在下、NCO基と、NCO反応性基(特に低分子量ジオール/トリオールおよびポリオールのOH基)の合計との当量比が0.9:1.0〜1.2:1.0、好ましくは0.95:1.0〜1.10:1.0となるような量で、反応させることができる。
【0021】
本発明のTPUは、特に好ましいワックス成分F)として、エチレンジアミンと、a)工業的ステアリン酸(20〜50重量%のパルミチン酸および50〜80重量%のステアリン酸を含有する)およびb)12−ヒドロキシステアリン酸との、約0.05:0.95〜約0.95:0.05(好ましくは約0.25:0.75〜約0.75:0.25)のモル比a:bでの反応生成物の混合物を、TPUの総重量に基づいて0.02〜2重量%(好ましくは0.05〜1.2重量%)含有する。
【0022】
反応は、従来のアミド化方法(例えば、Houben und Weyl、Methoden der organischen Chemie、第4版、Thieme Publ、1952年、8、647〜671頁参照)にしたがって行うことができる。この場合、酸a)およびb)は、等モル量のエチレンジアミンと一緒に反応させることができ、または個別に反応させ、次いで、得られたアミドを混合することができる。製造方法に応じて、以下の反応生成物を種々の割合で含有する混合物が形成される:
C16−EDA−C16 エチレンビスパルミトアミド
C16−EDA−C18 エチレンパルミチルステアルアミド
C16−EDA−C18OH エチレンパルミチルヒドロキシステアルアミド
C18−EDA−C18 エチレンビスステアルアミド
C18−EDA−C18OH エチレンステアリルヒドロキシステアルアミド
C18OH−EDA−C18OH エチレンビスヒドロキシステアルアミド
【0023】
TPUの製造に適当な触媒D)としては、当業者に既知の任意の従来の第3級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ−[2.2.2]−オクタン、有機金属化合物、例えば、チタン酸エステル、鉄化合物、スズ化合物〔例えば、スズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレートまたは脂肪族カルボン酸のスズジアルキル塩(例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートおよび同様の触媒)〕が挙げられる。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物および/またはスズ化合物である。
【0024】
TPU成分に加えて、ワックスおよび触媒、他の補助物質および添加剤E)も添加してもよい。その例としては、以下のものが挙げられる:滑剤、例えば、脂肪酸エステル、それらの金属石鹸、脂肪酸アミドおよびシリコーン化合物;抗ブロック剤;阻害剤;加水分解、光、熱および脱色に対する安定剤;難燃剤;染料;顔料;無機または有機充填剤;および補強剤。補強剤は、好ましくは繊維強化材料、例えば、先行技術にしたがって製造される無機繊維であり、およびサイズ剤と共に提供され得る。上記補助物質および添加剤のさらなる詳細は、例えば、J.H.Saunders、K.C.Frisch:「High Polymers」、第XVI巻、ポリウレタン、パート1および2、Interscience Publishers、それぞれ1962年および1964年;R.Gauchter、H.Mueller(編):Taschenbuch der Kunststoff−Additive、第3版、Hanser Verlag、ミュンヘン1989年;および独国特許公開DE−A 29 01 774に見出すことができる。
【0025】
TPUに組み込まれ得る他の添加剤は、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリカーボネートおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー、特にABSである。他のエラストマー、例えば、ゴム、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマーおよび他のTPUも使用することができる。市販の可塑剤、例えば、ホスフェイト、フタレート、アジペート、セバケートおよびアルキルスルホネートも、組み込みに適当である。
【0026】
また、本発明は、本発明のTPUの製造方法を提供する。本発明のTPUは、いわゆる押出機(例えば、多軸押出機)方法において、連続的に製造することができる。TPU成分A)、B)およびC)の計量供給は、同時に、すなわち、ワンショット方法で、または連続的に、すなわち、プレポリマー方法によって、行うことができる。プレポリマーは、回分的に充填するか、または押出機の区域中で、または分離した上流のプレポリマーユニット中で、連続的に製造することができる。
【0027】
ワックスF)は、押出機中のTPU反応物中に、好ましくは第1の押出機ハウジング中に、連続的に計量供給することができる。計量供給は、室温にて固体の集合状態で、または70〜120℃にて液体形態で行う。しかしながら、予め製造され、そして押出機中に再度計量供給されたTPU中に、ワックスを計量供給し、およびそれらを混ぜ合わせることもできる。別の変形において、ワックスは、反応前に、好ましくは70〜120℃の温度にて、ポリオール成分中に均質的に混合することができ、およびポリオール成分と一緒に他の成分中に計量供給することができる。
【0028】
かくして得られたTPU生成物は、良好な機械的特性および弾性特性を有する。さらに、これらは優れた加工特性を有する。
【0029】
本発明のTPUの優れた非粘着性は、射出成形品を形成するために加工した場合、離型の容易さとして明らかになる。低い移動傾向は、広範囲に変動する保存条件下、長期の保存期間後でさえも、プレートアウトがないことを意味する。
【0030】
卓越した均質性のフィルムおよびシートを、本発明のTPUからの溶融物から製造することができる。それらの低い粘着傾向のため、これらのフィルムおよびシートは、非常に良好な非粘着性を有する。移動が起こらないため、視覚的印象および表面特性は、長期の保存期間後でさえも、悪化しない。
また、本発明のTPUは、被覆剤として使用することもできる。
【実施例】
【0031】
本発明を、以下の実施例を用いてより詳細に説明する。
〔実施例1〜6〕
(TPU処方物)
ポリ(1,4−ブタンジオールアジペート)(分子量約2200):100重量部
ブタンジオール: 11重量部
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI液体、50℃): 42重量部
チタンアセチルアセトネート: 7.5ppm
【0032】
(TPU製造)
TPUを、欧州特許公開EP−A 571 830およびEP−A 571 828に記載された既知のプレポリマー方法によって、管状混合機/押出機(ZSK 53押出機、Werner/Pfleiderer)中での連続TPU反応で製造した。13個のハウジングのハウジング温度は、100℃〜220℃であった。スクリューの速度を、290rpmに調整した。全体の計量供給速度は、75kg/hであった。TPUを、溶融ストランドとして押し出し、水中で冷却し、そして顆粒化した。
ワックスまたは混合物を、表1および2にしたがって、上記連続TPU製造物(ZSKハウジング1)中に添加した。
【0033】
〔実施例7〕
(TPU製造)
ワックス混合物を溶解した温度180℃のポリ(1,4−ブタンジオールアジペート)(分子量約2200)100重量部、および60℃の温4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)42重量部を、攪拌しながら反応容器中に充填し、およびポリオールに基づいて90モル%超の変換率まで反応させた。
次いで、11重量部の1,4−ブタンジオールを、徹底的に混合することによって組み込み、および約15秒後、反応混合物を、被覆金属シート上に注ぎ、および120℃で30分間アニールした。該キャストシートを切断し、および顆粒化した。
【0034】
〔フィルムの製造:実施例8〜10〕
TPU顆粒を、単軸押出機(30/25D Plasticorder PL 2000−6単軸押出機、Brabender)中で溶融し(計量供給速度3kg/h;185〜205℃)、ブローフィルムダイを通じて押し出し、管状フィルムを形成させた。
【0035】
〔射出成型シート1〜7の製造〕
TPU顆粒を、射出成形機(D60射出成形機、32スクリュー、Mannesmann AG)中で溶融し(溶融温度約225℃)、シートに成形した(型温40℃;シートサイズ:125×45×2mm)。
かくして製造されたTPU成形品の最も重要な特性を、表1および2に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
・ワックス1=Loxamid(登録商標) 3324(エチレンビスステアルアミド)
・ワックス2=Abril(登録商標) Paradigm Wax 77(ステアルアミドエチルステアレート)
・ワックス3=エチレンビスパルミトアミド7%、エチレンパルミチルステアルアミド25%、エチレンパルミチルヒドロキシステアルアミド13%、エチレンビスステアルアミド24%、エチレンステアリルヒドロキシステアルアミド24%、およびエチレンビスヒドロキシステアルアミド7%を含有するワックス混合物;本発明
・ワックス4=エチレンビスステアルアミドとLicowachs OP(モンタン酸ブチル、Caで部分鹸化)との1:1混合物
【0038】
【表2】

【0039】
結果は、ワックス混合物3(本発明)を使用する場合のみ、室温、60℃および80℃での保存後に、見出される表面の堆積が実質的になかったことを明らかに示す。本発明のTPUの良好な特性は、射出成形品およびフィルムの両方で観察することができる。
【0040】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。
【0041】
本発明の好ましい実施態様には、以下のものが含まれる。
〔1〕溶融加工可能なポリウレタンであって、
A)一以上の有機ジイソシアネート、
B)500〜5000の重量平均分子量を有する一以上の直鎖状ヒドロキシル末端ポリオール、および
C)60〜490の分子量を有する、一以上のジオール鎖延長剤および必要に応じてジアミン鎖延長剤から、
D)必要に応じて触媒の存在下、
E)必要に応じて補助物質および添加剤の添加を伴って、
該A)中のNCO基と、該B)および該C)中のイソシアネート反応性基とのモル比が0.9:1〜1.2:1になるような量で製造され、
溶融加工可能なポリウレタンの総重量に基づいて、0.02〜2重量%の
F)a)アルキレンジアミンと一以上の直鎖状脂肪酸との反応生成物、および
b)アルキレンジアミンと12−ヒドロキシステアリン酸との反応生成物、および/または
c)アルキレンジアミンと12−ヒドロキシステアリン酸と一以上の直鎖状脂肪酸との反応生成物
の混合物を含有する、溶融加工可能なポリウレタン。
〔2〕成分A)は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートまたは4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネートまたはそれらの混合物であり、
成分B)は、直鎖状ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールまたはそれらの混合物であり、および
成分C)は、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ハイドロキノン、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)ビスフェノールAまたはそれらの混合物である、上記〔1〕に記載の溶融加工可能なポリウレタン。
〔3〕混合物F)を、成分A)、B)、C)および必要に応じてD)およびE)と一緒に押出機中に計量供給する、上記〔1〕に記載の溶融加工可能なポリウレタンの連続製造方法。
〔4〕混合物F)を、ポリオールB)中に予め混合し、そして、この混合生成物を、成分A)、C)および必要に応じてD)およびE)と一緒に押出機中に計量供給する、上記〔3〕に記載の方法。
〔5〕上記〔1〕に記載のポリウレタンを含んでなる、被覆剤。
〔6〕上記〔1〕に記載のポリウレタンを含んでなる、フィルム。
〔7〕上記〔1〕に記載のポリウレタンを含んでなる、射出成形品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融加工可能なポリウレタンであって、
A)一以上の有機ジイソシアネート、
B)500〜5000の重量平均分子量を有する一以上の直鎖状ヒドロキシル末端ポリオール、および
C)60〜490の分子量を有する、一以上のジオール鎖延長剤および必要に応じてジアミン鎖延長剤から、
D)必要に応じて触媒の存在下、
E)必要に応じて補助物質および添加剤の添加を伴って、
該A)中のNCO基と、該B)および該C)中のイソシアネート反応性基とのモル比が0.9:1〜1.2:1になるような量で製造され、
溶融加工可能なポリウレタンの総重量に基づいて、0.02〜2重量%の
F)a)アルキレンジアミンと一以上の直鎖状脂肪酸との反応生成物、および
b)アルキレンジアミンと12−ヒドロキシステアリン酸との反応生成物、および/または
c)アルキレンジアミンと12−ヒドロキシステアリン酸と一以上の直鎖状脂肪酸との反応生成物
の混合物を含有する、溶融加工可能なポリウレタン。
【請求項2】
混合物F)を、成分A)、B)、C)および必要に応じてD)およびE)と一緒に押出機中に計量供給する、請求項1に記載の溶融加工可能なポリウレタンの連続製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポリウレタンを含んでなる、被覆剤。
【請求項4】
請求項1に記載のポリウレタンを含んでなる、フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載のポリウレタンを含んでなる、射出成形品。

【公開番号】特開2007−231274(P2007−231274A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46988(P2007−46988)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】