説明

溶解性または硬度が改善された硬質カプセル

【課題】ヒプロメロースを基剤とする硬質カプセルに関して、水への溶解性および硬度を改善してなる硬質カプセルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム成分として、ヒプロメロースに加えて、単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を用いる。ヒプロメロースに加えて、単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を含有するカプセル調製液を用いて、浸漬法により硬質カプセルを調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒプロメロースを基剤とする硬質カプセルおよびその製造方法に関する。特に本発明は、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルについて、水への溶解性または/および硬度を改善してなる硬質カプセルおよびその製造方法に関する。さらに、本発明は当該硬質カプセルを用いた硬質カプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質カプセルの基剤としてゼラチンが汎用されている。ゼラチンカプセルは、製剤化のしやすさと医薬成分や食品成分の矯味および/または矯臭作用による服用のし易さから、従来から広く使用されているカプセル基剤である。
【0003】
しかし、当該ゼラチンから形成されるフィルム(皮膜)は、それに含まれる水分が少なくなると極端にその機械的強度が低下するといった欠点を有している。具体的には、ゼラチンカプセルは、フィルム中に通常13〜15%程度の水分を保有しているが、これが10%以下になるとフィルムの柔軟性が低下して極めて脆くなる。このため、内容物充填作業でのカプセルの機械的取り扱いに際して、ひび、割れまたは欠けなど、カプセルフィルム(皮膜)に損傷を生じることがある。また、ゼラチンは、動物性タンパクであり、狂牛病感染の恐れがあるという問題があり、この点からもゼラチンカプセルに替わる硬質カプセルが求められている。
【0004】
かかるゼラチンカプセルの代替品として、例えば水溶性セルロースエーテル類を基剤とする硬質カプセルがある(特許文献1)。かかる硬質カプセルは、通常のゼラチンカプセルに比べて、水分量が低くても割れにくく、また経時変化により不溶化することが少ないといった優れた特徴を有している。
【0005】
しかし、ゼラチンカプセルに比べて、水への溶解性が低く、内容物の溶出が遅延するという問題がある(特許文献2〜4)。かかる問題を解消する方法として、特許文献2では、水溶性セルロースエーテル類に加えて糖アルコール、特に単糖アルコールを配合する方法が提案されている。この方法によると、硬質カプセルの溶出性が著しく改善され、しかも成型性にも優れた硬質カプセルが提供できる。しかしながら、当該文献の試験例3によると、糖アルコールに代えて白糖を使用すると成型性が著しく低下するという問題があることが指摘されている。また、特許文献3では、2%水溶液中、20℃で2.4〜5.4センチストークの粘度を有するヒプロメロースを、カラギーナンおよびカルシウムイオンまたはカリウムイオンと併用する方法が提案されている。しかしこの場合、フィルムが脆弱になることが指摘されている(特許文献4)。かかる問題を有しない方法として、特許文献4では、フィルム成分として、セルロースエーテルに加えて、ジェランガムと金属イオン封鎖剤を使用する方法が提案されている。また、特許文献5には、水溶性セルロースを基剤とする硬質カプセルの機械的フィルム強度を向上させる方法として、フィルム成分として、水溶性セルロースに加えて、スクロース脂肪酸エステル、ピロリン酸カリウム、氷酢酸、ι−カラギーナンおよび寒天を使用する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−279325号公報
【特許文献2】WO2006/082842
【特許文献3】EP0714656
【特許文献4】特表2001−506692号公報
【特許文献5】特開2006−231022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述するように、水溶性セルロースエーテル類をフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルは、ゼラチンカプセルに替わる硬質カプセルとして有用であるものの、依然として水への溶解性、フィルム脆弱性および成型性といった点で、改善の余地が残されている。
【0008】
そこで本発明は、水溶性セルロースエーテル類、特にヒプロメロースを基剤とする硬質カプセルについて、成型性に加えて、水への溶解性または/およびフィルム脆弱性(カプセル硬度)を改善することを目的とする。具体的には、本発明は成型性に優れ、且つ水への溶解性または/およびカプセル硬度が改善されてなる、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討をしていたところ、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルは、その水への溶解性と硬度が、使用するヒプロメロースの粘度と深く関係しており、当該粘度を調節することで硬質カプセルの水への溶解性と硬度をコントロールすることができることを見出した。具体的には、フィルム成分に使用するヒプロメロースの2重量%水溶液の粘度(mPa・s)に、ヒプロメロース総量100重量部に対するその割合(重量部)を乗じたものの総和を「ヒプロメロース粘度値」とした場合に、当該値が300〜960の範囲で小さくなるほど、硬質カプセルの水への溶解性が向上し、逆に値が大きくなるほど、硬質カプセルの硬度が向上することを見出した(実験例1)。すなわち「ヒプロメロース粘度値」が300〜960の範囲で大きくなるほど、硬質カプセルの硬度は強くなるものの水への溶解性が低下し、逆に「ヒプロメロース粘度値」が300〜960の範囲で小さくなるほど、硬質カプセルの水溶解性が向上するものの硬度が低下する。
【0010】
そこで本発明者らは、水への溶解性が高く、しかも硬度が強い硬質カプセルの開発を目指してさらに検討を重ねていたところ、フィルム成分としてヒプロメロースに加えて単糖類または二糖類を用いることで、硬質カプセルの硬度に影響を与えることなく、水への溶解性を向上させることができることを見出し、「ヒプロメロース粘度値」が300〜960の範囲で大きくなるほど硬質カプセルの水溶解性が低下することを補い、水溶解性に優れた硬質カプセルが調製できることを確認した。硬質カプセルの水への溶解性を向上させることで、硬質カプセルに充填した内容物を早期にカプセル外に溶出させることが可能になる。
【0011】
また、ヒプロメロースに単糖類または二糖類を併用することで、カプセル調製液の粘度上昇が抑制できることを見出し、単糖類または二糖類を用いてカプセル調製液の粘度をコントロールすることで、カプセル製造における作業性を向上できることを確認した。
【0012】
また、フィルム成分としてヒプロメロースに加えてデンプンを用いることで、硬質カプセルの水溶解性に影響を与えることなく、硬度を増強させることができることを見出し、「ヒプロメロース粘度値」が300〜960の範囲で小さくなるほど硬質カプセルの硬度が低下することを補い、硬度に優れた硬質カプセルが調製できることを確認した。
【0013】
本発明は係る知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
【0014】
(I)硬質カプセル
(I-1)フィルム成分として、ヒプロメロース、ならびに単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を含有する硬質カプセル。
(I-2)フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が400〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルであって、さらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖を含有することを特徴とする(I-1)記載の硬質カプセル。
(I-3)フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜600となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルであって、さらにデンプンを含有することを特徴とする(I-1)記載の硬質カプセル。
(I-4)フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルであって、さらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖ならびにデンプンを含有することを特徴とする(I-1)記載の硬質カプセル。
(I-5)上記単糖類がフルクトース、上記二糖類がスクロース及びマルトースである(I-1)、(I-2)または(I-4)のいずれかに記載の硬質カプセル。
(I-6)糖を、硬質カプセルに含まれるヒプロメロース100重量部に対して40重量部未満の割合で含有する(I-1)、(I-2)、(I-4)または(I-5)のいずれかに記載の硬質カプセル。
(I-7)上記デンプンがトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである、(I-1)、(I-3)または(I-4)のいずれかに記載の硬質カプセル。
(I-8)デンプンを、硬質カプセルに含まれるヒプロメロース100重量部に対して25重量部未満の割合で含有する(I-1)、(I-3)、(I-4)または(I-7)のいずれかに記載の硬質カプセル。
(I-9)フィルム成分として、さらにゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有することを特徴とする、(I-1)乃至(I-8)のいずれかに記載する硬質カプセル。
【0015】
(II)硬質カプセル剤
(II-1)(I-1)乃至(I-9)のいずれかに記載する硬質カプセル中に、医薬品および食品からなる群から選択されるいずれかが充填されてなる、硬質カプセル剤。
【0016】
(III)硬質カプセルの製造方法
(III-1)ヒプロメロース、ならびに単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬し、当該ピンの外表面に形成された皮膜を乾燥する工程を有する、(I-1)記載の硬質カプセルの製造方法。
(III-2)上記カプセル調製液が、ヒプロメロースをヒプロメロース粘度値が400〜770となる割合で含有し、さらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖を含有するものである、(III-1)に記載する製造方法。
(III-3)上記カプセル調製液が、ヒプロメロースをヒプロメロース粘度値が300〜600となる割合で含有し、さらにデンプンを含有するものである、(III-1)に記載する製造方法。
(III-4)上記カプセル調製液が、ヒプロメロースをヒプロメロース粘度値が300〜770となる割合で含有し、さらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖ならびにデンプンを含有するものである、(III-1)に記載する製造方法。
(III-5)上記単糖類がフルクトース、上記二糖類がスクロース及びマルトースである、(III-1)、(III-2)または(III-4)のいずれかに記載する製造方法。
(III-6)上記カプセル調製液が、糖を、カプセル調製液に含まれるヒプロメロース100重量部に対して40重量部未満の割合で含有するものである、(III-1)、(III-2)、(III-4)または(III-5)のいずれかに記載する製造方法。
(III-7)上記デンプンが、トウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである、(III-1)、(III-3)または(III-4)のいずれかに記載する製造方法。
(III-8)上記カプセル調製液が、デンプンを、カプセル調製液に含まれるヒプロメロース100重量部に対して25重量部未満の割合で含有するものである、(III-1)、(III-3)、(III-4)または(III-7)のいずれかに記載する製造方法。
(III-9)上記カプセル調製液が、さらにゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有するものである、(III-1)乃至(III-8)のいずれかに記載する製造方法。
【0017】
(IV)硬質カプセルの水溶解性を向上する方法
(IV-1)フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が400〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルの水溶解性を向上させる方法であって、フィルム成分としてさらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖を配合することを特徴とする方法。
(IV-2)上記単糖類がフルクトース、上記二糖類がスクロース及びマルトースである(IV-1)に記載の方法。
(IV-3)糖を、硬質カプセルに含まれるヒプロメロース100重量部に対して40重量部未満の割合で配合する(IV-1)または(IV-2)に記載する方法。
【0018】
(V)硬質カプセルの硬度向上方法
(V-1)フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜600となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルの硬度を向上させる方法であって、フィルム成分としてさらにデンプンを配合することを特徴とする方法。
(V-2)上記デンプンがトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである、(V-1)に記載する方法。
(V-3)デンプンを、硬質カプセルに含まれるヒプロメロース100重量部に対して25重量部未満の割合で配合する(V-1)または(V-2)に記載する方法。
【0019】
(VI)硬質カプセルの硬度及び水溶解性を向上する方法
(VI-1)フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルの水溶解性と硬度を向上させる方法であって、フィルム成分としてさらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つとデンプンを配合することを特徴とする方法。
(VI-2)上記単糖類がフルクトース、上記二糖類がスクロース及びマルトースである(VI-1)に記載の方法。
(VI-3)糖を、硬質カプセルに含まれるヒプロメロース100重量部に対して40重量部未満の割合で配合する(VI-1)または(VI-2)に記載する方法。
(VI-4)上記デンプンがトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである、(VI-1)乃至(VI-3)のいずれかに記載する方法。
(VI-5)デンプンを、硬質カプセルに含まれるヒプロメロース100重量部に対して25重量部未満の割合で配合する(VI-1)乃至(VI-4)のいずれかに記載する方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬質カプセルは、浸漬法によるカプセル成型性に加えて、硬度または/および水溶解性に優れている。このため、本発明の硬質カプセルは、製造、流通および使用時において割れや欠けといった問題が生じにくく、また服用後に速やかに内容物を溶出することができる。また本発明の硬質カプセルは、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とするため、ゼラチンに比べて水分含量が少なくても割れにくく、また経時変化により不溶化することが少ない。
【0021】
本発明のカプセル硬度の向上方法は、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルにおいて、使用するヒプロメロースの粘度に起因して、高い水溶解性を備えながらも硬度が低いという問題を解消し、高い硬度を備えた硬質カプセルを調製するために有効に使用することができる。
【0022】
また本発明の硬質カプセルの水溶解性向上方法は、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルにおいて、使用するヒプロメロースの粘度に起因して、高い硬度を備えながらも水溶解性が低いという問題を解消し、高い水溶解性を備えた硬質カプセルを調製するために有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実験例1(c)における圧縮試験で得られた応力−ひずみ曲線を示す図である。応力の最大値が「最大応力」に相当し、最大応力に達するまでの最大傾斜が「弾性率」に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.硬質カプセルおよびその製造方法
本発明の硬質カプセルは、フィルム成分としてヒプロメロースに加えて、単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0025】
ここでヒプロメロースは下式で示されるように、メチルセルロースにヒドロキシプロピル基(置換基)を導入したセルロースエーテルである:
【0026】
【化1】

【0027】
本発明が対象とするヒプロメロースには、日本薬局方で定められている下記のヒプロメロース:
【0028】
【表1】

【0029】
ならびに、日本国で食品添加剤としての使用が認められている下記分子量を有するヒプロメロースが含まれる。
【0030】
<分子量>
非置換構造単位:162.14
置換構造単位:約180(置換度1.19)、約210(置換度2.37)
重合体:約13,000(n=約70)〜約200,000(n=約1000)。
【0031】
商業的に入手可能なヒプロメロースは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常1.5〜4の範囲にある。なお、当該比(Mw/Mn)を算出する場合の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)はいずれもゲルクロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)で求めることができる。ゲルクロマトグラフィーの原理および手法は、限定されないが、例えば「USP30 The United States Pharmacopeia / NF25 The National Formulary」の「Chromatography」の章の「Size-Exclusion Chromatography」の項の記載を参照することができる。
【0032】
また本発明が対象とするヒプロメロースには、その2重量%水溶液の粘度が3〜15mPa・sの範囲にあるものが含まれる。ここで、ヒプロメロース2重量%水溶液の粘度は、液温20℃の条件で、B型回転粘度計(BL型、ローター番号2)を用いて、回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定した粘度を意味する。本発明において、「ヒプロメロース2重量%水溶液の粘度」とは、すべて上記条件で測定した粘度を意味するものとする。
【0033】
本発明においてヒプロメロースは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用することができるが、いずれも「ヒプロメロース粘度値」が300〜960の範囲、好ましくは300〜770の範囲になるように用いられる。
【0034】
ここで「ヒプロメロース粘度値」とは、カプセルフィルムの製造に使用するヒプロメロースの2重量%水溶液の粘度(mPa・s)に、ヒプロメロース総量100重量部に対するその割合(重量部)を乗じたものの総和を意味する。具体的には、カプセルフィルムの製造に2重量%水溶液の粘度が6mPa・sのヒプロメロースを単独で使用する場合は、「ヒプロメロース粘度値」は、「6mPa・s×100重量部」で600となる。また、カプセルフィルムの製造に2重量%水溶液の粘度が4mPa・sのヒプロメロースを30重量部、および6mPa・sのヒプロメロースを70重量部組み合わせて使用する場合は、「ヒプロメロース粘度値」は、「4mPa・s×30重量部+6mPa・s×70重量部」で540となる。
【0035】
本発明の硬質カプセル(カプセルフィルム)中に含まれる上記ヒプロメロースの割合は、特に制限されないが、水分を除いたカプセルフィルムの重量を100重量%とした場合、通常70〜99.9重量%、好ましくは70.5〜99.8重量%、より好ましくは71〜99.7重量%の割合を挙げることができる。
【0036】
本発明で使用される単糖類としては、フルクトース、プシコース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フコース、フクロース、ラムノース、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、エリトルロース、エリトロール、トレオース、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒドを挙げることができるが、好ましくはフルクトースである。また本発明で使用される二糖類としては、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースを挙げることができるが、好ましくはスクロース、マルトースである。これらの糖は1種単独で使用してもよいし、または2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。但し、砂糖や白糖は、硬質カプセルの成型性に悪影響を与える危険性があるため、使用しないことが望ましい。
【0037】
これらの糖類は、硬質カプセルの製造に使用されるヒプロメロースの「ヒプロメロース粘度値」が400〜770である場合に、好適に用いることができ、斯くして硬質カプセルの水溶解性を向上させることができる。好ましくは450〜770、より好ましくは540〜770、特に好ましくは580〜770である。糖類の配合割合としては、硬質カプセルの製造に使用されるヒプロメロース100重量部に対して40重量部未満であればよく、好ましくは0.5〜35重量部、より好ましくは0.5〜25重量部を挙げることができる。
【0038】
本発明で使用されるデンプンとしては、食用デンプンであれば特に制限されず、例えばトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、豆デンプン、馬鈴薯デンプン(じゃがいもデンプン)、甘藷デンプン、タピオカデンプンを挙げることができるが、好ましくはトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである。これらのデンプンは1種単独で使用してもよいし、または2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0039】
これらのデンプンは、硬質カプセルの製造に使用されるヒプロメロースの「ヒプロメロース粘度値」が300〜600である場合に、好適に用いることができ、斯くして硬質カプセルの硬度を向上させることができる。好ましくは300〜580、より好ましくは300〜560、特に好ましくは300〜540である。
【0040】
デンプンの配合割合としては、硬質カプセルの製造に使用されるヒプロメロース100重量部に対して25重量部未満であればよく、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜17.5重量部を挙げることができる。
【0041】
また本発明の硬質カプセル(カプセルフィルム)には、上記成分に加えて、ゲル化剤を配合することもできる。ここで用いられるゲル化剤としては、カラギーナン、タマリンド種子多糖、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ゼラチン、ファーセレラン、寒天、およびジェランガムなどを例示することができる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0042】
上記ゲル化剤のなかでもカラギーナンは、ゲル強度が高く、しかも特定イオンとの共存下で少量の使用で優れたゲル化性を示すことから最適なゲル化剤である。なお、カラギーナンには、一般にカッパ−カラギーナン、イオタ−カラギーナンおよびラムダ−カラギーナンの3種が知られている。本発明では、ゲル化能を有するカッパおよびイオタ−カラギーナンを好適に使用することができる。好ましくはカッパ−カラギーナンである。またペクチンはエステル化度の違いでLMペクチンとHMペクチンとに分類でき、ジェランガムもアシル化の有無によってアシル化ジェランガム(ネイティブジェランガム)と脱アシル化ジェランガムに分類することができるが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。
【0043】
本発明の硬質カプセル(カプセルフィルム)には、使用するゲル化剤の種類に応じてゲル化補助剤を使用することもできる。ゲル化剤としてカラギーナンを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、カッパ−カラギーナンについては水中でカリウムイオン、アンモニウムイオンおよびカルシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カルシウムを挙げることができる。またイオタ−カラギーナンについては水中でカルシウムイオンを与えることのできる、例えば塩化カルシウムを挙げることができる。またゲル化剤としてジェランガムを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの1種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムを挙げることができる。加えて有機酸やその水溶性塩としてクエン酸またはクエン酸ナトリウムを使用することもできる。
【0044】
好ましいゲル化剤とゲル化補助剤の組み合わせとして、カラギーナン、特にカッパ−カラギーナンと塩化カリウムの組み合わせを好適に挙げることができる。
【0045】
なお、本発明の硬質カプセル(カプセルフィルム)が上記ゲル化剤を含む場合、その含有量としては、水分を除いたカプセルフィルムの重量を100重量%とした場合、0.05〜2.5重量%、好ましくは0.1〜2.3重量%、より好ましくは0.15〜2重量、さらに好ましくは0.2〜1.8重量%を挙げることができる。さらに塩化カリウムなどのゲル化補助剤を含む場合、その含有量として2.5重量%以下の範囲、好ましくは0.1〜2.3重量%、より好ましくは0.15〜2重量%、さらに好ましくは0.2〜1.8重量%を挙げることができる。なお、硬質カプセルの製造に使用されるヒプロメロース100重量部に対するゲル化剤の割合としては0.05〜2.5重量部、好ましくは0.1〜2.25重量部、ヒプロメロース100重量部に対するゲル化補助剤の割合としては2.5重量部以下、好ましくは0.1〜2.25重量部を挙げることができる。
【0046】
本発明の硬質カプセル(カプセルフィルム)には、上記成分(ヒプロメロース、糖類、デンプン、必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)に加えて、必要に応じて、可塑剤、金属封鎖剤、不透明化剤、着色料または香料などを配合することもできる。
【0047】
ここで可塑剤としては、医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、アジピン酸ジオクチル,アジピン酸ポリエステル,エポキシ化ダイズ油,エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル,カオリン,クエン酸トリエチル,グリセリン,グリセリン脂肪酸エステル,ゴマ油,ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物,D-ソルビトール,中鎖脂肪酸トリグリセリド,トウモロコシデンプン由来糖アルコール液,トリアセチン,濃グリセリン,ヒマシ油,フィトステロール,フタル酸ジエチル,フタル酸ジオクチル,フタル酸ジブチル,ブチルフタリルブチルグリコレート,プロピレングリコール,ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール,ポリソルベート80,マクロゴール1500,マクロゴール400,マクロゴール4000,マクロゴール600,マクロゴール6000,ミリスチン酸イソプロピル,綿実油・ダイズ油混合物,モノステアリン酸グリセリン,リノール酸イソプロピルなどを挙げることができる。なお、可塑剤を用いる場合、本発明で用いる硬質カプセル(カプセルフィルム)中の含有量として、水分を除いたカプセルフィルムの重量を100重量%とした場合、通常15重量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13重量%以下、より好ましくは11重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下の範囲である。
【0048】
金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リン酸、酒石酸、またはこれらの塩、メタホスフェート、ジヒドロキシエチルグリシン、レシチン、β−シクロデキストリン、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0049】
また不透明化剤および香料としては、医薬品または食品に使用できるものであれば特に制限されない。
【0050】
本発明の硬質カプセルは、定法の浸漬法を利用して製造することができる、具体的には前述する成分を含有する水溶液(ここでは、以下「カプセル調製液」という)を浸漬液とし、これにカプセル成型用ピンを浸漬し、次いで引き上げてカプセル成型用ピンの外表面に形成されたカプセル調製液からなる皮膜を冷却してゲル化させる工程を経て製造することができる。
【0051】
カプセル調製液中に含まれる上記各成分の濃度は、前述するカプセルフィルム中の各成分の割合に従って適宜調整することができる。具体的には、ヒプロメロースについては、5〜35重量%、好ましくは10〜33重量%、より好ましくは15〜30重量%を挙げることができる。また糖類については、8重量%未満、好ましくは0.1〜7重量%、より好ましくは0.1〜5重量%を、デンプンについては、5重量%未満、好ましくは0.1〜4重量%、より好ましくは0.1〜3.5重量%を挙げることができる。またゲル化剤を用いる場合、そのカプセル調製液中の濃度として0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.45重量%、より好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。また、ゲル化補助剤を用いる場合は、そのカプセル調製液中の濃度として0.5重量%以下、好ましくは0.02〜0.45重量%、より好ましくは0.03〜0.4重量%を挙げることができる。
【0052】
カプセル調製液中に含まれる水の量は、制限されないが、カプセル成型用ピンの浸漬時に採用される温度(浸漬液の温度)条件下(30〜80℃、好ましくは40〜60℃)で、カプセル調製液の粘度が100〜20000mPa・s、好ましくは300〜10000mPa・sとなるような割合を挙げることができる。通常、水含有量として60〜90重量%、好ましくは70〜85重量%を挙げることができる。
【0053】
カプセル調製液(浸漬液)の調製方法は、特に制限されない。例えば約70〜80℃程度に加熱した精製水に、糖類やデンプン、必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤を溶解した後、ヒプロメロースを分散させて、これを所望の浸漬液の温度(通常35〜60℃、より好ましくは40〜60℃)まで冷却してヒプロメロースを溶解させて均一なカプセル調製液(浸漬液)を調製する方法;ならびに糖類やデンプンに加えて、ヒプロメロースを約70〜80℃程度の熱水に分散し(この時点で糖類やデンプンは溶解する)、これをいったん冷却してヒプロメロースを溶解させた後に、必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤を添加し溶解し、再び加温して30〜50℃程度に調製して均一なカプセル調製液(浸漬液)を調製して、所望の浸漬液の温度に調整する方法などを制限なく使用することができる。
【0054】
本発明の硬質カプセルは、かかるカプセル調製液(浸漬液)にカプセル成型用ピンを浸漬した後、これを引き上げ、カプセル成型用ピンに付着した溶液をゲル化させ、その後、ゲル化した皮膜を20〜80℃で乾燥することによって製造される。具体的には、本発明で用いる硬質カプセルは下記の工程を経て製造することができる。
(1)ヒプロメロース、糖類または/およびデンプン(また必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)を含有するカプセル調製液(浸漬液)に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)、
(2)カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する工程(ゲル化工程)、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を乾燥する工程(乾燥工程)、
(4)乾燥したカプセルフィルム(皮膜)をカプセル成型用ピンから脱離する工程(脱離工程)。
【0055】
なお、必要に応じて上記(4)の工程後に下記の加熱工程を行なってもよい。
(5)上記のゲル化工程(2)後の、乾燥工程(3)の前後若しくは同時に、または脱離工程(4)後に、ゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を50〜150℃で加熱処理する工程(加熱工程)。
【0056】
なお、カプセル調製液(浸漬液)としてカラギーナンなどのゲル化剤を配合しない溶液を用いる場合は、ヒプロメロースそれ自体が60℃以上の温度でゲル化することを利用して、上記ゲル化工程(2)を60℃以上に加温したカプセル成型用ピンを用いて行なうことができる(熱ゲル法)。具体的には、浸漬工程(1)において、35〜50℃、好ましくは35〜45℃の一定温度に調整したカプセル調製液(浸漬液)に、その液温に応じて60〜150℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜90℃に加温したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル基剤溶液をゲル化する。
【0057】
一方、カプセル調製液(浸漬液)としてカラギーナンなどのゲル化剤を配合した溶液を用いる場合は、当該溶液が50℃以下の温度でゲル化することを利用して、カプセル製造機周辺の温度を通常35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは室温下に設定して、上記ゲル化工程(2)をカプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を放冷することによって行うことができる(冷ゲル法)。具体的には、浸漬工程(1)において、35〜60℃、好ましくは40〜60℃の一定温度に調整したカプセル調製液(浸漬液)に、その液温に応じて10〜30℃、好ましくは13〜28℃、より好ましくは15〜25℃に調整したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル調製溶液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する。
【0058】
乾燥工程(3)は室温で行うことができる。通常、室温の空気を送風することによって行なわれる。脱離工程(4)は、カプセル成型用ピン表面に形成された乾燥カプセルフィルムをカプセル成型用ピンから抜き出すことによって行われる。
【0059】
任意工程である加熱工程(5)は、ゲル化工程(2)後、すなわちカプセル調製液がゲル化(固化)した後に行なうことができる。加熱処理の時期は、ゲル化工程(2)後であればどの段階でもよく、乾燥工程(3)の前若しくは後、または加熱と乾燥を同時に行ってもよい。さらに脱離工程(4)後であってもよい。好ましくはゲル化工程(2)後、ゲル化カプセルフィルムを室温下での乾燥工程に供し、乾燥後または半乾きの段階で、加熱処理を行う。加熱温度は50〜150℃の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜80℃の範囲である。加熱処理は、通常50〜150℃の空気を送風することによって行うことができる。
【0060】
斯くして調製されるカプセルフィルムは、所定の長さに切断調整された後、ボディ部とキャップ部を一対に嵌合した状態または嵌合しない状態で、硬質カプセルとして提供することができる。
【0061】
II.硬質カプセル剤およびその調製方法
斯くして調製される硬質カプセルのボディ部とキャップ部は、前述する内容物をボディ部に充填したのち、該ボディ部にキャップ部を被覆して両者を嵌合させることによりボディ部とキャップ部を接合させることによって硬質カプセル剤として提供することができる。
【0062】
なお本発明の硬質カプセル剤には、上記で調製された硬質カプセルのボディ部とキャップ部の嵌合部に、バンドシールを付したものも含まれる。かかる硬質カプセル剤は、上記ボディ部とキャップ部を接合させた後、キャップ部の端縁部を中心として、それを跨ぐように一定幅でボディ部の表面とキャップ部の表面に、その円周方向に、バンドシール調製液を1回〜複数回、好ましくは1〜2回塗布して嵌合部を封緘することによって、調製することができる。
【0063】
硬質カプセルのボディ部とキャップ部の両者を嵌合させる際に、ボディ部の外周とキャップ部の内周とが重なっている嵌合巾はカプセルの軸線方向の距離で、3号カプセルについては約4.5〜6.5mm、4号カプセルについては約4〜6mmが一般的に好ましい。また、封緘(シール)巾は、3号カプセルで約1.5〜3mm、4号カプセルで約1.5〜2.8mmが一般的に好ましい。
【0064】
本発明の硬質カプセル剤のバンドシール形成には、前述する硬質カプセルの調製に使用するカプセル調製液と同様の組成からなるバンドシール調製液を用いることができる。
【0065】
硬質カプセルに充填する内容物は、ヒトまたは動物の経口医薬品または食品を制限なく挙げることができる。なお、内容物の形状は特に問わない。例えば、液状物、ゲル状物、粉末状、顆粒状、錠剤状、ペレット状、またこれらの混合形状(ハイブリッド状)であってもよい。
【0066】
硬質カプセルに充填する内容物としては、経口医薬品の場合は、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬。血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張剤、末梢血管拡張薬、抗高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病治療薬、骨粗鬆症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤などから選ばれる1種または2種以上の薬物成分を挙げることができる。なお、これらの薬効成分は、特に制限されず公知のものを広く挙げることができるが、具体的には、WO2006/070578号パンプレットの段落[0055]〜 [0060]に記載されている各成分を例示として挙げることができる。
【0067】
また、食品の場合は、例えばドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、α−リポ酸、ローヤルゼリー、イソフラボン、アガリクス、アセロラ、アロエ、アロエベラ、ウコン、エルカルニチン、オリゴ糖、カカオ、カテキン、カプサイシン、カモミール、寒天、トコフェロール、リノレン酸、キシリトール、キトサン、GABA、クエン酸、クロレラ、グルコサミン、高麗人参、コエンザイムQ10、黒糖、コラーゲン、コンドロイチン、サルノコシカケ、スクワレン、ステビア、セラミド、タウリン、サポニン、レシチン、デキストリン、どくだみ、ナイアシン、納豆菌、にがり、乳酸菌、ノコギリヤシ、ハチミツ、はとむぎ、梅肉エキス、パントテン酸、ヒアルロン酸、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ケルセチン、プロテイン、プロポリス、モロヘイヤ、葉酸、リコピン、リノール酸、ルチン、霊芝などの機能性成分などを挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0068】
かかる内容物の硬質カプセル内への充填は、それ自体公知のカプセル充填機、例えば全自動カプセル充填機(型式名:LIQFILsuper80/150、クオリカプス社製)、カプセル充填・シール機(型式名:LIQFILsuperFS、クオリカプス社製)等を用いて実施することができる。また硬質カプセルの封緘は、それ自体公知のカプセル充填シール機、例えば前記カプセル充填・シール機またはカプセルシール機(型式名:HICAPSEAL 40/100、クオリカプス社製)等を使用して実施することができる。
【0069】
カプセル封緘時、バンドシール調製液は、一般に室温あるいは加温下で使用することができる。硬質カプセルの液漏れ防止という観点から、好ましくは約23〜45℃、さらに好ましくは約23〜35℃、最も好ましくは約25〜35℃の温度範囲内にあるシール調製液を用いることが望ましい。なお、シール調製液の温度調節は、パネルヒーター、温水ヒーター等のそれ自体公知の方法で実施することができるが、例えば循環式温水ヒーターあるいは前記一体型カプセル充填シール機のシールパンユニットを循環式温水ヒーター型に改造したもの等で調節するのが、温度幅が微妙に調節できるので好ましい。
【0070】
斯くして得られる本発明の硬質カプセル剤は、高い硬度と高い水溶解性を備えている。
【0071】
III.硬質カプセルの水溶解性を向上する方法
本発明は、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルにおいて、その水溶解性を向上する方法を提供する。当該方法は、特にヒプロメロースを、「ヒプロメロース粘度値」が400〜770となる割合で含む硬質カプセルにおいて、水溶解性を向上する方法である。
【0072】
当該方法は、フィルム成分(基剤)としてヒプロメロースに加えて、糖類、特に単糖類および二糖類からなる群から選択される少なくとも一種の糖類を用いることによって実施することができる。ここで用いる糖類の種類およびその配合割合は、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。単糖類として好ましくはフルクトースであり、二糖類として好ましくはスクロースおよびマルトースである。
【0073】
当該硬質カプセルには、Iで説明するように、ヒプロメロースおよび糖類に加えてゲル化剤を配合することもでき、さらに必要に応じてゲル化補助剤を配合することもできる。それらの種類および配合割合も、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。なお、併用するゲル化剤としてはカラギーナン、特にカッパ−カラギーナン、またこれと併用するゲル化補助剤としては塩化カリウムを好適に挙げることができる。
【0074】
また、硬質カプセルには、上記成分(ヒプロメロース、糖類、および必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)に加えて、さらに必要に応じて、可塑剤、金属封鎖剤、不透明化剤、着色料または香料などを配合することもできる。
【0075】
なお、ここではフィルム成分(基剤)としてヒプロメロースに単糖類または二糖類を併用することで、生成する硬質カプセルの水への溶解性が向上することを説明したが、さらに単糖類または二糖類には、ヒプロメロースと併用することで、カプセル調製に使用するカプセル調製液の不都合な粘度上昇を抑制するという作用を有している。糖類のかかる性質によれば、フィルム成分(基剤)としてヒプロメロースを含有するカプセル調製液について、その粘度を糖類を用いてコントロールすることができ、斯くして、カプセル製造における作業性を向上することが可能になる。
【0076】
IV.硬質カプセルの硬度を向上する方法
本発明は、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルにおいて、硬度を向上する方法を提供する。当該方法は、特にヒプロメロースを、「ヒプロメロース粘度値」が300〜600となる割合で含む硬質カプセルにおいて、カプセル硬度を向上する方法である。
【0077】
当該方法は、フィルム成分(基剤)としてヒプロメロースに加えて、デンプンを用いることによって実施することができる。
【0078】
ここで用いるデンプンの種類およびその配合割合は、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。好ましくはトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである。
【0079】
当該硬質カプセルには、Iで説明するように、ヒプロメロースおよびデンプンに加えてゲル化剤を配合することもでき、さらに必要に応じてゲル化補助剤を配合することもできる。それらの種類および配合割合も、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。なお、併用するゲル化剤としてはカラギーナン、特にカッパ−カラギーナン、またこれと併用するゲル化補助剤としては塩化カリウムを好適に挙げることができる。
【0080】
また、硬質カプセルには、上記成分(ヒプロメロース、デンプン、および必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)に加えて、さらに必要に応じて、可塑剤、金属封鎖剤、不透明化剤、着色料または香料などを配合することもできる。
【0081】
V.硬質カプセルの水溶解性と硬度を向上する方法
本発明は、ヒプロメロースをフィルム成分(基剤)とする硬質カプセルにおいて、水溶解性と硬度の両方を向上する方法を提供する。当該方法は、特にヒプロメロースを、「ヒプロメロース粘度値」が300〜960、好ましくは300〜870、より好ましくは300〜770となる割合で含む硬質カプセルにおいて、水溶解性と硬度の両方を向上する方法である。
【0082】
当該方法は、フィルム成分(基剤)としてヒプロメロースに加えて、糖類、特に単糖類および二糖類からなる群から選択される少なくとも1種の糖類とデンプンを用いることによって実施することができる。
【0083】
ここで用いる糖類およびデンプンの種類およびその配合割合は、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。単糖類として好ましくはフルクトースであり、二糖類として好ましくはスクロースおよびマルトースである。デンプンとして好ましくはトウモロコシデンプン、ワキシーコーンスターチ、じゃがいもデンプンおよびタピオカデンプンである。
【0084】
当該硬質カプセルには、Iで説明するように、ヒプロメロース、糖類およびデンプンに加えて、ゲル化剤を配合することもでき、さらに必要に応じてゲル化補助剤を配合することもできる。それらの種類および配合割合も、上記Iで説明したものを同様に挙げることができる。なお、併用するゲル化剤としてはカラギーナン、特にカッパ−カラギーナン、またこれと併用するゲル化補助剤としては塩化カリウムを好適に挙げることができる。
【0085】
また、硬質カプセルには、上記成分(ヒプロメロース、糖類、デンプン、および必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)に加えて、さらに必要に応じて、可塑剤、金属封鎖剤、不透明化剤、着色料または香料などを配合することもできる。
【実施例】
【0086】
以下、実験例および実施例を示して本発明を説明するが、本発明はかかる実施例などによって制限されるものではない。なお、特に言及しない限り、下記でいう「%」は重量%を意味する。
【0087】
実験例1 ヒプロメロース粘度値と水への溶解性およびカプセル硬度との関係
硬質カプセルのフィルム成分として、粘度が異なる5種類のヒプロメロース(2%水溶液の粘度が3、4、4.5、6、15mPa・s)を用いて、ヒプロメロース粘度値が300〜1050になるように、表2記載の処方に従って、硬質カプセルを調製し、ヒプロメロース粘度値と水への溶解性およびカプセル硬度との関係を調べた。
【0088】
なお、ヒプロメロース2%水溶液の粘度は、ヒプロメロースを水に溶解して2重量%水溶液を調製した後、液温を20℃とし、B型回転粘度計(BL型、ローター番号2)で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定した。また、ヒプロメロース粘度値は、使用するヒプロメロースの2%水溶液の粘度(mPa・s)に、そのヒプロメロース総量100重量部中の割合(重量部)を乗じたものの総和として求めた。
【0089】
(1)硬質カプセルの調製
表2記載の処方に従って、5種類のヒプロメロース(2%水溶液の粘度が3、4、4.5、6、15mPa・s)、ゲル化剤としてカッパカラギーナン、ゲル化補助剤として塩化カリウムと塩化カルシウムを用いて、カプセル調製液を調製した。
【0090】
カプセル調製液の調製は、まず、約80℃の精製水にゲル化補助剤を加えて溶解し、さらにこれにカッパカラギーナンを加え、これらを攪拌しながら溶解した。次にこの溶解液にヒプロメロースを攪拌しながら投入し、温水中で分散させた後、溶液温度を約50℃まで冷却することにより溶解させた。なお、カプセル調製液中のヒプロメロースの濃度は、10〜30% (w/w)となるように調整した。次いで、このカプセル調製液を浸漬液として、温度を50〜55℃に保持しながら、浸漬法に従ってカプセル成型ピンを用いてサイズ2号の硬質カプセル(キャップ、ボディ)を調製した。
【0091】
(2)硬質カプセルの評価
得られた硬質カプセルについて、(a)カプセル成型性(カプセル調製液の液ダレの有無、カプセル皮膜の乾燥時の亀裂の有無など)、(b)水への溶解性、および(c)カプセル硬度を下記の方法に従って評価した。
【0092】
(a)カプセル成型性
カプセル成型性は、下記の観点から評価した。
【0093】
(a-1)カプセル調製液の液ダレの有無
上記で調製したカプセル調製液(50〜55℃)について、カプセル成型ピンを浸漬し引き上げたときの液ダレの有無を観察した。この結果、カプセル調製時に液ダレなく、カプセル成型ピンの表面に均質に皮膜が形成できる場合を「液ダレなし:○」、液ダレが生じ、カプセル成型ピンの表面に均質に皮膜が形成できない場合を「液ダレあり:×」と評価した。
【0094】
(a-2)カプセル皮膜の亀裂の有無
各カプセル調製液(浸漬液)にカプセル成型ピンを浸漬し引き上げ、カプセル成型ピンの表面に付着したカプセル調製液を23℃で乾燥固化させ、乾燥皮膜を取り外す際、または、それを取り外した後に専用の裁断機で所定の長さに裁断する際に、乾燥皮膜にひび割れや欠けが生じるか否かを観察した。この結果、乾燥固化後、硬質カプセルとして使用可能な乾燥皮膜(キャップとボディ)が得られる場合を「成型可:○」、得られない場合を「成型不可:×」と評価した。なお、(a-1)で液ダレが確認されたものについては、成型性は評価しなかった(表欄中、斜線)。
【0095】
(b)水への溶解性
上記方法で液ダレなく成型できた硬質カプセル(液ダレなし:○、成型可:○)について、水への溶解性を評価した。具体的には、作成した硬質カプセルに、20重量%アセトアミノフェン含有粉末(20%アセトアミノフェン、70%乳糖、10%デンプングリコール酸ナトリウム含有)を200mg充填し、これを被験試料とした。この被験試料について、日本薬局方の溶出試験第2法に準じて下記の条件にて溶出試験を実施した。
【0096】
<試験条件>
試験液:精製水、
試験液量:900mL、
試験液温度:37℃、
パドル回転数:50rpm、
シンカー:使用。
【0097】
経時的に試験液をサンプリングし、試験液中のアセトアミノフェン含量を定量することによって、アセトアミノフェンの溶出率(%)を求めた。溶出試験開始後10分におけるアセトアミノフェンの溶出率(%)から、硬質カプセルの溶解性を下記の基準に従って評価した。
【0098】
<溶解性の評価>
◎:溶出率が80%以上
○:溶出率が60〜80%未満
◇:溶出率が40〜60%未満
△:溶出率が30〜40%未満
×:溶出率が30%未満。
【0099】
(c)カプセル硬度
上記方法で液ダレなく成型できた硬質カプセル(液ダレなし:○、成型可:○)について、カプセル硬度を評価した。具体的には、作成した硬質カプセルを23℃、相対湿度43%に3日間保存し、これを被験試料とし、各被験試料について、23℃、相対湿度40%の環境下で。下記条件で圧縮試験を行い、最大応力(N)と弾性率(N/mm2)を測定した。
【0100】
<圧縮試験条件>
試験装置:オートグラフAGS-J(島津製作所製)
圧縮速度:10mm/min、
圧縮距離:1mm。
【0101】
図1に、この圧縮試験で得られた応力−ひずみ曲線を示す。かくして得られる応力(N)の最大値が「最大応力」に相当し、また最大応力に達するまでの最大傾斜が「弾性率」に相当する。硬度は、得られた最大応力に弾性率を乗じ、これを1000で除して算出した。斯くして得られる硬度から、硬質カプセルの硬度を下記の基準に従って評価した。
【0102】
<硬度の評価>
◎:硬度が27以上
○:硬度が22〜27未満
◇:硬度が18〜22未満
△:硬度が15〜18未満
×:硬度が15未満。
【0103】
結果を表2に併せて示す。表中のゲル化剤(カッパカラギーナン)およびゲル化補助剤(塩化カリウム、塩化カルシウム)の値は、ヒプロメロース100重量部に対する割合(重量部)を意味し、ヒプロメロース粘度値は、用いた各ヒプロメロース2%水溶液の粘度に全ヒプロメロース100重量部に対する割合(重量部)を乗じたものの総和を意味する。
【0104】
【表2】

【0105】
この結果に示すように、ヒプロメロース粘度値が1050以上では、液ダレが生じるため、カプセルが成型できないが、それ未満、特に960以下であれば、液ダレもなく、また乾燥後も亀裂が生じず、カプセル成型性に問題がないことが確認された。
また、上記の結果から、ヒプロメロース粘度値が小さくなるにつれて溶出率(%)、すなわち水への溶解性(内容物の溶出性)が上昇する傾向があることが判明した。カプセル硬度については、逆に、ヒプロメロース粘度値が大きくなるにつれて硬度が上昇する傾向があることが判明した。
【0106】
水への溶解性とカプセル硬度とのバランスから、カプセル調製に使用するヒプロメロースを、ヒプロメロース粘度値が400〜600となるように選択することが好ましく、ヒプロメロース粘度値がかかる範囲になるようにヒプロメロースを選択することで、溶出試験開始後10分におけるアセトアミノフェンの溶出率が30%以上と良好で、しかもカプセル硬度が15以上と良好なバランスのよい硬質カプセルが調製できることが確認できた。ヒプロメロース粘度値としては好ましくは450〜580である。
【0107】
実験例2 糖配合による溶解性向上
ヒプロメロースとして、粘度が異なる5種類のヒプロメロース(2%水溶液の粘度が3、4、4.5、6、15mPa・s)を用いて、ヒプロメロース粘度値が300〜770になるように混合したものを用いた。
【0108】
表3記載の処方に基づいて、実験例1(1)に記載する方法に従って、上記ヒプロメロース、ゲル化剤(カッパカラギーナン)、およびゲル化補助剤(塩化カリウム)に加えて、糖(フルクトース、スクロース、マルトース)を用いて、硬質カプセル(被験試料18〜32)を調製した。なお、糖は、ゲル化補助剤とゲル化剤を溶解した後に配合して溶解し、この溶解液にヒプロメロースを投入した。
【0109】
実験例1(2)に記載する方法に従って、各硬質カプセルについて成型性を評価した後、問題なく成型できた硬質カプセル(被験試料18〜29)について、アセトアミノフェンの溶出率(%)とカプセル硬度を測定し、糖配合による影響を調べた。
【0110】
結果を表3に併せて示す。表中のゲル化剤(カラギーナン)およびゲル化補助剤(塩化カリウム)、および糖(フルクトース、スクロース、マルトース)の値は、ヒプロメロース100重量部に対する割合(重量部)を意味する。なお、溶解性と硬度の評価は、いずれも実験例1(2)に記載する基準に従って行った。
【0111】
【表3】

【0112】
この結果に示すように、ヒプロメロース100重量部に対して糖を40重量部以上配合すると、乾燥皮膜に亀裂が生じカプセルが成型できないが、それ未満、特に35重量部以下であれば、液ダレもなく、また乾燥後も亀裂が生じず、カプセル成型性に問題がないことが確認された。
【0113】
実験例1と実験例2において、お互いにヒプロメロース粘度値が同一の被験試料間で糖配合による影響をみたところ(ヒプロメロース粘度値300:被験試料1と被験試料18〜20、ヒプロメロース粘度値540:被験試料8と被験試料21〜23、ヒプロメロース粘度値580:被験試料10と被験試料24〜26、ヒプロメロース粘度値770:被験試料14と被験試料27〜29)、ヒプロメロース粘度値が300より大きい場合に糖を配合することにより、硬質カプセルの水への溶解性が向上することが確認され、その効果はヒプロメロース粘度値が300より大きくなるほど高まることが判明した(ヒプロメロース粘度値540〜580:◇→◎、ヒプロメロース粘度値770:×→○)。それに対して、カプセル硬度は、糖の配合によって殆ど変化せず、影響を受けないことが確認された。
【0114】
実験例1において、ヒプロメロース粘度値が大きくなるにつれて溶出率(%)(溶解性)が低下する傾向があることを示したが、糖を併用することでその低下が抑えられ、むしろ向上させることができることが確認された。
【0115】
実験例1と2の結果から、糖をヒプロメロース総量100重量部に対して40重量部未満の割合で使用する場合、水への溶解性とカプセル硬度とのバランスから、カプセル調製に使用するヒプロメロースを、ヒプロメロース粘度値が400〜770となるように選択することが好ましく、ヒプロメロース粘度値がかかる範囲になるようにヒプロメロースを選択することで、溶出試験開始後10分におけるアセトアミノフェンの溶出率が70%以上と良好で、しかもカプセル硬度が15以上と良好なバランスのよい硬質カプセルが調製できることが確認できた。ヒプロメロース粘度値としては好ましくは450〜770であり、より好ましくは540〜770、特に好ましくは580〜770である。
【0116】
実験例3 デンプン配合によるカプセルの硬度向上
ヒプロメロースとして、粘度が異なる5種類のヒプロメロース(2%水溶液の粘度が3、4、4.5、6、15mPa・s)を用いて、ヒプロメロース粘度値が300〜770になるように混合したものを用いた。
【0117】
表4記載の処方に基づいて、実験例1(1)に記載する方法に従って、上記ヒプロメロース、ゲル化剤(カッパカラギーナン)、およびゲル化補助剤(塩化カリウム)に加えて、デンプン(ワキシーコーンスターチ、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン)を用いて、硬質カプセル(被験試料33〜47)を調製した。なお、デンプンは、ヒプロメロース投入後すぐに配合し、その後、分散操作に移った。実験例1(2)に記載する方法に従って、各硬質カプセルについて成型性を評価した後、問題なく成型できた硬質カプセル(被験試料33〜44)について、溶出率(%)とカプセル硬度を測定し、デンプン配合による影響を調べた。
【0118】
結果を表4に併せて示す。表中のゲル化剤(カッパカラギーナン)およびゲル化補助剤(塩化カリウム)、および各種デンプンの値は、ヒプロメロース総量100重量部に対する割合(重量部)を意味する。なお、溶解性と硬度の評価は、いずれも実験例1(2)に記載する基準に従って行った。
【0119】
【表4】

【0120】
この結果に示すように、ヒプロメロース100重量部に対してデンプンを25重量部以上配合すると、液ダレが生じカプセルが成型できないが、それ未満、特に17.5重量部以下であれば、液ダレもなく、また乾燥後も亀裂が生じず、カプセル成型性に問題がないことが確認された。
【0121】
実験例1と実験例3において、お互いにヒプロメロース粘度値が同一の被験試料間でデンプン配合による影響をみたところ(ヒプロメロース粘度値300:被験試料1と被験試料33〜35、ヒプロメロース粘度値540:被験試料8と被験試料36〜38、ヒプロメロース粘度値580:被験試料10と被験試料39〜41、ヒプロメロース粘度値770:被験試料14と被験試料42〜44)、デンプンを配合することにより、硬質カプセルの硬度が顕著に向上することが確認された(ヒプロメロース粘度値300:×→○、ヒプロメロース粘度値540:◇→◎、ヒプロメロース粘度値580:○→◎)。それに対して、カプセルの溶出率(%)(溶解性)は、デンプンの配合によって殆ど変化せず、影響を受けないことが確認された。
【0122】
実験例1において、ヒプロメロース粘度値が小さくなるにつれて硬度が低下する傾向があることを示したが、デンプンを併用することでその低下が抑えられ、むしろ向上させることができることが確認された。
【0123】
実験例1と3の結果から、デンプンをヒプロメロース総量100重量部に対して25重量部未満の割合で使用する場合、溶出率(%)(水への溶解性)とカプセル硬度とのバランスから、カプセル調製に使用するヒプロメロースを、ヒプロメロース粘度値が300〜600となるように選択することが好ましく、ヒプロメロース粘度値がかかる範囲になるようにヒプロメロースを選択することで、溶出試験開始後10分におけるアセトアミノフェンの溶出率が30%以上と良好で、しかもカプセル硬度が23以上と良好な、バランスのよい硬質カプセルが調製できることが確認できた。ヒプロメロース粘度値としては好ましくは300〜580であり、より好ましくは300〜560若しくは540である。
【0124】
実験例4 糖とデンプン配合による硬質カプセルの溶解性と硬度の向上
ヒプロメロースとして、粘度が異なる5種類のヒプロメロース(2%水溶液の粘度が3、4、4.5、6、15mPa・s)を用いて、ヒプロメロース粘度値が300〜770になるように混合したものを用いた。
【0125】
表5記載の処方に基づいて、実験例1(1)に記載する方法に従って、上記ヒプロメロース、ゲル化剤(カッパカラギーナン)、およびゲル化補助剤(塩化カリウム)に加えて、糖(フルクトース、スクロース、マルトース)およびデンプン(トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン)を用いて、硬質カプセル(被験試料48〜62)を調製した。なお、糖は、ゲル化補助剤とカッパカラギーナンの溶解後に配合し、溶解させた。さらに、その後にヒプロメロースおよびデンプンを投入した。実験例1(2)に記載する方法に従って、各硬質カプセルについて成型性を評価した後、問題なく成型できた硬質カプセル(被験試料48〜59)について、溶出率(%)とカプセル硬度を測定し、糖とデンプンの両方を配合することによる影響を調べた。
【0126】
結果を表5に併せて示す。表中のゲル化剤(カッパカラギーナン)およびゲル化補助剤(塩化カリウム)、各種糖、および各種デンプンの値は、ヒプロメロース100重量部に対する割合(重量部)を意味する。なお、溶解性と硬度の評価は、いずれも実験例1(2)に記載する基準に従って行った。
【0127】
【表5】

【0128】
この結果に示すように、ヒプロメロース100重量部に対してデンプンを25重量部以上配合すると、液ダレが生じカプセルが成型できないが、それ未満、特に20重量部以下であれば、液ダレもなく、また乾燥後も亀裂が生じず、カプセル成型性に問題がないことが確認された。
【0129】
実験例1と実験例4において、お互いにヒプロメロース粘度値が同一の被験試料間でデンプン配合による影響をみたところ(ヒプロメロース粘度値300:被験試料1と被験試料48〜50、ヒプロメロース粘度値400:被験試料3〜5と被験試料51〜53、ヒプロメロース粘度値540:被験試料8と被験試料54〜56、ヒプロメロース粘度値770:被験試料14と被験試料57〜59)、糖とデンプンを配合することにより、硬質カプセルの溶出率(%)(水への溶解性)と硬度が向上することが確認された。
【0130】
実験例1において、ヒプロメロース粘度値が大きくなるにつれて溶出率(%)(内容物の溶出性)が低下し、またヒプロメロース粘度値が小さくなるにつれて硬度が低下する傾向があることを示したが、糖とデンプンを併用することで、ヒプロメロース粘度値が高い場合に生じる溶出率の低下を抑えむしろ向上させることができること、また糖とデンプンを併用することで、ヒプロメロース粘度値が低い場合に生じる硬度の低下を抑え、むしろ向上させることができることが確認された。
【0131】
実験例1と4の結果から、糖およびデンプンをヒプロメロース総量100重量部に対してそれぞれ40重量部未満および25重量部未満の割合で使用する場合、ヒプロメロース粘度値を300〜770となる範囲で選択することで、溶出率が70%以上と水溶解性に優れ、内容物を速やかに溶出することができ、しかもカプセル硬度が25以上と、両者のバランスに優れた硬質カプセルが調製できることが確認できた。
【0132】
実験例5 糖配合によるカプセル調製液の粘度低下
表6記載の処方に基づいて、実験例1(1)に記載する方法に従って、上記ヒプロメロース、ゲル化剤(カッパカラギーナン)、およびゲル化補助剤(塩化カリウム)に加えて、ヒプロメロース100重量部に対して糖(フルクトース)を0〜45重量部の割合で配合して、カプセル調製液(被験試料63〜66)を調製した。得られたカプセル調製液の液温を52℃とし、その粘度をB型回転粘度計(BL型、ローター番号2)で回転数12rpm、測定時間1分の条件で測定した。結果を表6に示す。表中のゲル化剤(カッパカラギーナン)、およびゲル化補助剤(塩化カリウム)の値は、ヒプロメロース100重量部に対する割合(重量部)を意味する。
【0133】
【表6】

【0134】
表に示すように、糖(フルクトース)の配合量の増加に応じてカプセル調製液の粘度が低下した。このことから、ヒプロメロースに糖を併用することでカプセル調製液の粘度を調節することができ、これによりカプセル調製液についてカプセル成型の作業性に悪影響を与える不都合な粘度上昇を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム成分として、ヒプロメロース、ならびに単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を含有する硬質カプセル。
【請求項2】
フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が400〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルであって、さらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖を含有することを特徴とする請求項1記載の硬質カプセル。
【請求項3】
フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜600となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルであって、さらにデンプンを含有することを特徴とする請求項1記載の硬質カプセル。
【請求項4】
フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルであって、さらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖ならびにデンプンを含有することを特徴とする請求項1記載の硬質カプセル。
【請求項5】
フィルム成分として、さらにゲル化剤、および必要に応じてゲル化補助剤を含有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載する硬質カプセル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載する硬質カプセル中に、医薬品および食品からなる群から選択されるいずれかが充填されてなる、硬質カプセル剤。
【請求項7】
ヒプロメロース、ならびに単糖類、二糖類およびデンプンからなる群から選択されるいずれか少なくとも1種を含有するカプセル調製液に、カプセル成型用ピンを浸漬し、当該ピンの外表面に形成された皮膜を乾燥する工程を有する、請求項1記載の硬質カプセルの製造方法。
【請求項8】
フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が400〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルの水溶解性を向上させる方法であって、フィルム成分としてさらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つの糖を配合することを特徴とする方法。
【請求項9】
フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜600となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルの硬度を向上させる方法であって、フィルム成分としてさらにデンプンを配合することを特徴とする方法。
【請求項10】
フィルム成分として、ヒプロメロース粘度値が300〜770となる割合でヒプロメロースを含有する硬質カプセルの水溶解性と硬度を向上させる方法であって、フィルム成分としてさらに単糖類および二糖類からなる群から選択されるいずれか少なくとも1つとデンプンを配合することを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−270039(P2010−270039A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121920(P2009−121920)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000228110)クオリカプス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】