説明

滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に判定する装置および方法

【課題】医療器具に対する滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に判定する装置と方法を提供する。
【解決手段】
医療器具に対する滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に判定する装置と方法を提供する。この方法は、既知数の生きている胞子を含む生物学的インジケータを、滅菌あるいは消毒処理を受けさせるステップを含む。胞子が死ぬと、胞子中のミネラルが放出される。水溶液を作るために水を死んだ胞子と接触する。水溶液中のミネラルの濃度と関連するパラメータが測定される。滅菌処理の効果は、このパラメータと、生物学的インジケータ内の胞子の初期数から測定される。水溶液の導電率を測定することによるパラメータの測定は、特に効果的で感度がよい。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は医療器具の滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に判定する装置および方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
病院、医院およびその他の医療施設では医療器具装置を使用前に消毒している。一般に蒸気、熱、エチレンオキシドおよび過酸化水素が殺菌剤として使われている。
【0003】
殺菌指示薬(sterility indicator)を滅菌あるいは消毒する器具一回分とともに消毒器に入れるのが標準的な消毒のやり方である。殺菌指示薬は各回の滅菌あるいは消毒処理が器具を有効に滅菌あるいは消毒したかどうかの尺度を示す。もし殺菌指示薬が示すように滅菌あるいは消毒処理が有効でなかったならば、その回の器具は消毒不十分として使用されない。
【0004】
生物学的インジケータ(biological indicators)は一般に信頼性のある滅菌インジケータとして認められている。生物学的インジケータは胞子(spores)あるいは他の微生物を接種したキャリアを含んでいる。胞子はしばしば生物学的インジケータにおける指標生物として使用される。その理由は胞子は普通他の微生物よりも滅菌あるいは消毒に対する耐性が強いからである。
【0005】
生物学的インジケータは滅菌あるいは消毒すべき器具とともに消毒器に入れる。消毒工程の終わりに生物学的インジケータを消毒器から取り除いてからキャリアを無菌の培地につける。培地とキャリアに適切な温度下で所定の時間にわたって細菌培養させる。細菌培養の終わりに、育成培地に微生物が成長したかどうかを調べる。育成培地に微生物の成長がなければ、消毒器中の器具は適正に滅菌あるいは消毒されたとみなされる。もし微生物の成長がみられたならば、滅菌あるいは消毒処理は有効ではなく、従って消毒器中の器具は使用されない。
【0006】
微生物の成長は、育成培地が混濁しているかあるいは育成培地での細胞成長の副産物によって起こされるpH変化によるpH指示薬の色の変化などの信号によって判定される。生物学的インジケータについては例えば、バーンハム等(Burnham et al.)(米国特許第5,552,320号)およびヘンドリックス等(Hendricks et al.)(米国特許第6,436,659号)に記載されており、これら特許はともに全体を参照して本明細書に組み込まれる。
【0007】
生物学的インジケータは滅菌あるいは消毒サイクルの効果を正確に示すものであるが、その結果を得るには少なくとも24時間〜48時間が必要である。滅菌あるいは消毒処理をした器具は、時には生物学的インジケータによる結果が分かるまで隔離しておく。医療器具は高価で、しかも医療施設での保存スペースは限られている。従って、検査結果が分かる前に医療器具を使用する病院もある。医療用具を隔離して保存しておくのは資産の効率的な利用ではない。滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に判定するテストが求められている。
【0008】
Foltz et al.(米国特許第6,355,448号)では胞子ではなく酵素の非活性化を測定して滅菌あるいは消毒処理の効果を決定する方法が記載されている。酵素テスト手順は生物学的インジケータから結果が得られるまでに数日かかるのとは異なり僅か数分を要するのみであると述べられている。
【0009】
一種類の酵素ではなく複数種の酵素の使用が、例えば、米国特許第5,486,459号でバーンハム等(Burnham et al.)が、および、米国特許第6,528,277号でヘンドリックス(Hendricks et al.)等が開示している。一種類よりも複数種類の酵素の滅菌あるいは消毒処理に対する反応が微生物のそれによく似ていると考えられていた。しかしながら、酵素は滅菌あるいは消毒処理に対して胞子やバクテリアとは違った反応をする。
【0010】
フェルトナー等(Feltner et al.)(米国特許出願2003/0064427)は、滅菌あるいは消毒処理時に放出されるジピコリン酸(DPA)の量を測定して滅菌あるいは消毒処理の効果を迅速に検出する方法を述べている。滅菌あるいは消毒処理で指標微生物として一般に使用されている胞子は約10〜15重量%のDPAを含んでいる。DPAは通常ジピコリン酸カルシウム(calcium dipicolinate)の形態の胞子の皮質と皮膜に存在する。フェルトナー等は胞子が非活性化されるときにDPAが胞子から放出されることを発見した。
【0011】
フェルトナー等は胞子を囲む溶液中DPAの濃度をほぼ545ナノメートル(nm)の波長での分光分析あるいは微分紫外分光分析により測定した。分析感度は、ランタニド塩(lanthanide salt)の添加、励起のための紫外線の使用およびDPA放出用に可視光線の使用により、高くすることができた。
【0012】
フェルトナーの分析方法は高価な器械の使用と複雑なデータ分析を必要とする。検出限度についてはなにも述べられていない。
【0013】
高価な器械の使用と複雑なデータ分析の必要のない滅菌あるいは消毒の効果を素早く判定する方法が求められている。
【0014】
〔発明の概要〕
一面において、本発明は滅菌あるいは消毒処理の効果を判定する方法に関する。この方法は初期の既知数の生きている胞子を含む生物学的インジケータを用意するが、その生きている胞子は、カルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムからなる群から選んだ少なくとも一つのミネラルを含んでいる。この測定方法は生物学的インジケータも滅菌あるいは消毒処理を受けさせ、生きている胞子の少なくとも一部を死なせてかなりの量の死んだ胞子を得ることを含む。
【0015】
この判定方法はさらに死んだ胞子を水に接触させて、カルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウムおよび死んだ胞子から放出されたナトリウムからなる群から選んだ少なくとも一つのミネラルを含む水溶液を得て、その水溶液中の少なくとも一つのミネラルの濃度に関係するパラメータを測定することを含む。この場合、死んだ胞子を水に接触させてからパラメータの測定を行う。この方法はまた前記パラメータと生物学的インジケータ中の生きている胞子の初期既知数から滅菌あるいは消毒処理の効果を判定することを含む。
【0016】
好都合なことに、パラメータの測定は、原子吸光分光分析、炎光発光分光分析、ICP発光分析、イオンクロマトグラフィ、EDTA滴定、錯体滴定、少なくとも一種類のイオンを含む蛍光染料指示薬の錯体の分光分析および導電率からなる群から選ばれた方法で行う。パラメータの測定には水溶液の導電率を測定するのが好ましい。
【0017】
本発明の一実施例では、滅菌あるいは消毒処理の効果の前記パラメータに基づく判定は、水溶液の導電率を導電率対死んだ胞子数の校正曲線と比較することにより死んだ胞子の数を定量すること、および死んだ胞子数と初期の生きている胞子数から効果を算出することを含む。好都合には、滅菌あるいは消毒薬は熱、蒸気、過酸化水素、過酢酸、エチレンオキシド、オゾン、二酸化塩素、紫外線および放射線からなる群から選ばれる。
【0018】
本発明の一実施例では、死んだ胞子を水に接触させるのは生物学的インジケータを滅菌あるいは消毒処理に加える前に行う。都合がよいことに、死んだ胞子を水に接触させることは壊れやすいアンプルを壊して、そのアンプルから水を放出することを含む。更に他の実施例では、死んだ胞子を水に接触させるのは生物学的インジケータを滅菌あるいは消毒処理に加えた後に行う。生きている胞子の初期既知数は少なくとも約1.0x106であるのが好ましい。都合がよいことに、生きている胞子の初期既知数は少なくとも約1.0x107である。この方法は滅菌あるいは消毒処理の効果の判定および確認後に胞子を育成培地で培養することおよび育成培地で指示薬に変化があるかどうかを判別することを含んでもよい。
【0019】
他の一面では、本発明は滅菌あるいは消毒処理の効果を判定するための生物学的インジケータに関する。この生物学的インジケータは既知数の生きている胞子と、その既知数の生きている胞子を収納しているバイアルと、蒸留水あるいは脱イオン水が入っている壊れやすいアンプルとを含む。アンプルが割れるとその中の水がバイアル中の胞子に注がれて接触する。
【0020】
バイアルには通気性の窓を設けてもよく、この通気性の窓から滅菌あるいは消毒剤がバイアル内に入ることができ、生きている胞子に接触する。生物学的インジケータは胞子を支持する多孔質の物体を有してもよい。更に他の実施例では、生物学的インジケータは育成培地を収納する第2アンプルを有してもよい。
【0021】
更に他の一面では、本発明は既知数の生きている胞子と、その胞子を収納しているバイアルと、水を含む溶液が入っているアンプルとを含む生物学的インジケータに関し、アンプルが割れるとその中の水がバイアル中の胞子に注がれて接触する。この生物学的インジケータはまたバイアルの外側からその内部に延びるプローブを有してもよく、これらプローブはアンプルが割れたあとバイアル内の水に接触する。
【0022】
好都合なことに、水を含む溶液は育成培地、脱イオン水および蒸留水からなる群から選ばれる。上記プローブは電極であるのが好ましい。本発明の一実施例では、生物学的インジケータはバイアルに通じる通気性の窓を有し、この通気性の窓から滅菌あるいは消毒剤がバイアル内に入ることができ、生きている胞子に接触する。生物学的インジケータは育成培地を収納する第2アンプルを有するのが好ましい。
【0023】
〔発明の詳細な説明〕
医療器具を滅菌処理で滅菌あるいは消毒する場合、その滅菌処理が有効だったかどうかを迅速に確認できることが重要である。本明細書で使われているように、滅菌処理(germicidal process)という用語は殺菌(sterilization)と消毒(disinfection)の両方を含む。
【0024】
本発明の実施例は滅菌処理の効果を迅速に判定する装置と方法を提供する。装置と方法の実施例の幾つかは殺菌装置内で実施でき、滅菌処理を行いながらその滅菌処理の効果をモニターする装置と方法を提供する。方法についての実施例のあるものは、従来の生物学的インジケータから測定結果を得るのにかかる24〜42時間に比べて、迅速に測定でき、例えばほぼ1分で測定できる。
【0025】
細菌性の胞子はカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムなどのミネラルを含んでいる。ミネラルの少なくとも一部を胞子が非活性化された時にその胞子から放出してもよい。一実施例では、滅菌処理中に死ぬ胞子の数は、生物学的インジケータ中の胞子の周囲の水溶液に胞子が死ぬと放出されるミネラルの少なくとも一つの濃度に関係するパラメータを測定することで検出できる。ミネラルはカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、ナトリウムあるいは他の適当なミネラルでよい。
【0026】
生物学的インジケータ中の死んだ胞子の数は胞子を取囲む水溶液中のミネラルの濃度に関係するパラメータから測定できる。滅菌処理の効果は死んだ胞子の数を最初に生物学的インジケータに導入した生きた胞子の数と比較することで判定できる。幾つかの実施例では、滅菌処理の効果をその滅菌処理中のいかなる時点においても判定できる。
【0027】
滅菌処理の効果を判定した後、生物学的インジケータ中の育成培地に微生物あるいは胞子を培養し、指示薬、例えばpH指示薬あるいは他の適当な指示薬により育成培地におけるパラメータの変化を調べて微生物あるいは胞子の成長があったかどうかを判別することで、滅菌処理の効果を確認できる。
【0028】
育成培地は、滅菌あるいは消毒処理の効果を確認した後に生物学的インジケータに入れてもよい。他の実施例では、滅菌あるいは消毒処理の効果を確認する前に育成培地を生物学的インジケータに入れておくことができる。
【0029】
一実施例では、育成培地を壊れやすいアンプルに収納して生物学的インジケータに入れておくことができ、アンプルを壊して育成培地を生物学的インジケータ中に放出できる。第2アンプルには水あるいは水溶液を入れておくことができる。その第2アンプルを壊して水あるいは水溶液を生物学的インジケータに放出できる。
【0030】
第2アンプルの水あるいは水溶液は死んだ胞子のミネラルを溶かすことができる。第2の壊れやすいアンプルを壊して放出した水あるいは水溶液に死んだ胞子からのミネラルを溶かして得られる水溶液中のミネラル濃度に関係するパラメータを求めることができる。滅菌あるいは消毒処理の効果は先述のパラメータと生物学的インジケータ中の生きた胞子の初期既知数とから判定できる。
【0031】
滅菌あるいは消毒処理の効果は、育成培地を入れてある壊れやすいアンプルを壊してその育成培地に微生物あるいは胞子を培養した時にその微生物あるいは胞子が成長したかどうかを調べて確認することができる。
【0032】
育成培地での微生物あるいは胞子の成長があるかどうかを判別することによって、水あるいは水溶液を入れた第2の壊れやすいアンプルを壊して得た水溶液中のミネラル濃度に関係するパラメータから得られる滅菌あるいは消毒処理の効果が確認できる。
【0033】
生物学的インジケータの水溶液中のミネラルの濃度に関係するパラメータは下記により詳細に述べるようにいろいろな方法で求めることができる。適当な方法としては、原子吸光分光分析、炎光発光分光分析、ICP発光分析、イオンクロマトグラフィ、EDTA滴定、錯体滴定、一種類のミネラルイオンを含む蛍光染料指示薬の錯体の分光分析および導電率などがあるが、これらに限定するものではない。他の方法も使用できる。
【0034】
生物学的インジケータの水溶液中のミネラル濃度に関係するパラメータを測定することは、フェルトナー等が述べているように、分光分析によるDPA濃度を測定する方法よりも利点がある。フェルトナー等の方法によるデータ分析は複雑である。その分析に使用する器械は高価である。さらに、分光分析器械が嵩張りまた化学物質に感応性が高いため、消毒器内でDPA分析を行うのは困難である。
【0035】
本発明の実施例の方法による生物学的インジケータの水溶液中に溶けているミネラルに関係するパラメータの測定に基づいたデータ分析は一般的に簡単明瞭である。溶けたミネラルを分析する方法の多くは安価な器械を使用する。その分析方法のあるものは消毒器内で実行できる。分析方法の多くは迅速に、数分以内に行える。多くの方法での検出限界は非常に低い。
【0036】
米国カリフォルニア州アーヴィンのアドバンスド・ステリライゼイション・プロダクツ社(Advanced Sterilization Products of Irvine, California) から販売されているSTERRAD(登録商標)法を用いて過酸化水素とプラズマとを組み合わせて殺菌を行うことを述べるが、本発明の実施例による装置および方法は様々な滅菌処理に適用できる。STERRAD(登録商標)法を用いた過酸化水素とプラズマとによる滅菌あるいは消毒のような滅菌処理の記述は単なる例示であって、発明を限定するものではない。本発明の実施例による装置と方法は、熱、蒸気、過酸化水素、過酢酸、エチレンオキシド、オゾン、二酸化塩素、紫外線、あるいは放射線、例えばプラズマ使用あるいは不使用のガンマ放射線、を含む様々な殺菌剤を使用しうるが、これらのものに限定されない。
【0037】
殺菌剤は物理的殺菌剤あるいは化学的殺菌剤でよい。物理的殺菌剤は物理的方法、例えば、熱、蒸気、紫外線あるいは放射線を用いて微生物を殺すことができる。化学的殺菌剤は微生物に対して毒性の化学物質、例えば、過酸化水素、過酢酸、エチレンオキシド、オゾン、あるいは塩素を微生物に加えて殺すことができる。プラズマは物理的あるいは化学的殺菌剤とも考えられる。プラズマは微生物を直接殺したり、あるいは化学物質、例えば、過酸化水素に反応したりして、微生物を殺す作用物を作ることもできる。殺菌剤が化学物質ならば、化学的殺菌剤は液体、蒸気あるいは気体でよい。
【0038】
STERRAD(登録商標)法は滅菌あるいは消毒方法を例示するものである。STERRAD(登録商標)法は、例えば、米国特許第4,756,882号、米国特許第6,325,972号および米国特許第6,365,102号に詳細に述べられており、これらの特許は全体を参照して本明細書に組み込まれる。
【0039】
STERRAD(登録商標)殺菌法は次の様に行われる。殺菌するものを殺菌室に入れて、殺菌室を閉めてから真空引きをする。過酸化水素の水溶液を殺菌室に注入して蒸発させて殺菌すべきものが蒸気で包まれるようにする。殺菌室を減圧した後、高周波エネルギーを加えて低温ガスプラズマを発生させて電界をつくる。過酸化水素の蒸気はプラズマ中で衝突したり反応したりして微生物を殺す反応種に解離する。活性化された成分は微生物とあるいは互いに反応した後、成分は高エネルギーを失い、再結合して酸素、水および他の非中毒性の副産物となる。プラズマは殺菌が完了し残留物が除去されるのに十分な時間維持される。滅菌処理の完了後、高周波エネルギーの印加を止め、そして真空状態を解除して、殺菌室にHEPAフィルタを通した空気(High Efficiency Particulate-Filtered Air (HEPA))を導入して殺菌室を大気圧に戻す。プラズマは、例えば、米国特許第6,447,719号に記載されているように低周波電源により発生してもよく、この米国特許は全体を参照して本明細書に組み込まれる。
【0040】
本発明の実施例に係わる装置および方法は総じて滅菌処理に使用される殺菌剤の形態によって変わることはない。従って装置および方法の実施例は広範囲の殺菌剤に広く適用できる。
【0041】
三種類の異なる微生物中のミネラル濃度を表1に示す。表1中のデータはApplied and Environmental Microbiology 50, 1414 (1985), G.B. Bender and R.E. Marquisの論文からのものである。
【表1】

【0042】
ジピコリン酸は微生物の乾燥重量の10%である。
【0043】
生物学的インジケータ中の胞子を囲む水溶液に溶解しているミネラルイオンはいろいろな方法で検出できる。溶解しているミネラルは、例えば、カルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムでよいが、他のミネラルもそれらを含んだ微生物で検出できる。
【0044】
検出限界は、溶解ミネラルイオンの分析方法のあるものについては下記に設定している。その検出限界は2005年現在でも有効だと考えられる。検出限界は、解析方法の改良や計器の開発とともに低くなると考えられる。検出限界は限定的なものではなく、溶解ミネラルイオンの適正な分析方法の予備スクリーニングのための指標として便宜上設定しただけのものである。
【0045】
一実施例では、生物学的インジケータの水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのうち少なくとも一つを原子吸光分光法あるいは炎光発光分光法により分析できる。原子吸光分光法による分析は、例えば、Official Methods of AOAC International (2000) 17th Ed. AOAC INTERNATIONAL, Gaithersburg, MD, Official Methods 965.09, 968.08, 085.35に述べられている。原子吸光分光法によるカルシウムを分析するEPA法は方法(Method)215.1である。マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよびマンガンを分析する対応EPA法はそれぞれ方法(Methods) 242.1, 258.1, 273.1 および
243.1である。EPA法において設定した検出限界は、カルシウムについては0.01ミリグラム/リットル、マンガンについては0.01ミリグラム/リットル、ナトリウムについては0.002ミリグラム/リットル、マグネシウムについては0.001ミリグラム/リットル、およびカリウムについては0.01ミリグラム/リットルである。検出限界は時とともに変化してよい。
【0046】
他の実施例では、水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、あるいはナトリウムのうちで少なくとも一つをICP(誘導結合プラズマ)分析を用いて分析できる。ICP分析によるカルシウム、マンガン、マグネシウム、あるいはナトリウムの分析はいろいろな検出方法を用いうる。本明細書で使う用語ICPはICP検出方法のすべてを含む。
【0047】
使用に適したICP方法が、例えば、NIOH Manual of Analytical Methods (NMAM, 第四版、2003年3月15日、Method7303)に記載されている。方法(Method)7303に述べられている実施例は誘導結合アルゴンプラズマ原子発光分析(ICP-AES)、EPA法200.7の方法である。
【0048】
ICP-AESはICP-OES、誘導結合アルゴンプラズマ発光分析法と呼ばれることもある。誘導結合アルゴンプラズマはICAPと略されることもある。ICP-AES、ICAP-AES、ICP-OES、およびICPA-OESは、同じ方法、誘導結合アルゴンプラズマ原子発光分析に対する異なる省略形である。
【0049】
アグネス・コスニエール等(Agnes Cosnier et al.)はICP Optical Emission Spectroscopy Application Note 40, Jobin Yvon Inc. of Edison, NJ. において、いろいろなイオンについて代表的な検出限界を設定している。Jobin Yvon Inc.はホリバグループ(Horiba Group)の一員である。
【0050】
コスニエール等によれば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ナトリウムおよびカリウムについてのEPA200.7(ICP-AES)による検出限界は、それぞれ30マイクログラム/リットル、30マイクログラム/リットル、1.4マイクログラム/リットル、29マイクログラム/リットル、および700マイクログラム/リットルである。
【0051】
他のICP検出方法を別の実施例で用いることができる。例えば、質量分析法をICP検出法として用いることができる。検出法として質量分析法を使うICPに対するEPA法はMethod200.8、誘導結合プラズマ質量分析法、すなわちICP-MSである。マンガンはICP-MSに対するMethod200.8で検体として挙げられている。水および排水標準検査法委員会(Standard Methods Committee for the Examination of Water and Wastewater)によれば、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウムも特に検体として挙げられていないがICP-MSで分析可能とされている。例えば、www.standardmethods.org.を参照されたい。
【0052】
Research & Productivity Council of Federation, NB, Canadaによれば、ICP-MSによるカルシウム、マグネシウム、マンガン、ナトリウムおよびカリウムの水溶液サンプルについての報告されている検出量は50マイクログラム/リットル、10マイクログラム/リットル、1マイクログラム/リットル、20マイクログラム/リットル、および40マイクログラム/リットルである。
【0053】
他のICP検出法も他の実施例で使用できる。
【0054】
また他の実施例では、水溶液中のカルシウム、マグネシウム、マンガン、ナトリウムあるいはカリウムを分離してイオンクロマトグラフィにより分析しうる。この分析に適するイオンクロマトグラフィ法は、例えば、米国イリノイ州60015−1899、ディアフィールド、ウオ−ケガン・ロード、2051のオールテック・アソシエイツ・インコーポレイテド(Alltech Associates, Inc., 2051 Waukegan Road, Deerfield, Illinois 60015-1899)によるアプリケーション・ノート(Application Notes)#A0009とA0012、あるいは米国カリフォルニア州94088−3603、サニーべイル、タイタンウエイ、1228のダイオネックス・コーポレイション(Dionex Corporation, 1228 Titan Way, Sunnyvale, California 94088-3603)によるアプリケーション・ノート(Application Notes)120に記載されている。
【0055】
更に他の実施例では、例えば、ASTM法D511-93Aに述べられているように、カルシウムをEDTA滴定により分析でき、またマグネシウムを錯化滴定法で分析できる。
【0056】
水および排水標準検査法委員会によれば、カルシウムをEDTA滴定により測定する場合サンプルのリン含有量が50ミリグラム/リットル以上のレベルだと、インジケータに障害が起こる。委員会ではそのようなサンプルでEDTA滴定法を用いるのを推奨しない。
【0057】
通常、胞子のリンの含有レベルは50ミリグラム/リットルほど高くはない。ある種の生物学的インジケータはリン酸塩系の緩衝剤を含んでも良い。リン酸塩系の緩衝剤を含んでいる生物学的インジケータは50ミリグラム/リットルを超すレベルのリン酸塩を含有してもよい。
【0058】
他の実施例では、カルシウムあるいはマグネシウムの濃度を、蛍光染料指示薬をプローブとして使用する分光分析により測定できる。カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、およびカリウムイオンなどのミネラルイオンは自然には蛍光を発しない。ミネラルイオンの濃度は、イオンの錯体を蛍光指示薬分子で形成することで測定できる。イオンの錯体の濃度と蛍光指示薬分子は、分光分析法、例えば、蛍光分光分析で測定できる。
【0059】
ツゥイエン(Tsien)とその同僚達は1980年代に様々な適切な蛍光指示薬を作った。Physiological Reviews, 79, 1089 (1999)におけるA. Takahashi, P. Camacho, J.D. LechleiterおよびB. Hermanによる論文では、ツゥイエン等の指示薬を始めとして蛍光染料指示薬についての検討および論文に対するリファレンスを提供している。
【0060】
Takahashi等は蛍光指示薬を紫外線励起(UV-excitable)指示薬あるいは可視光励起(visible-excitable)指示薬に分類している。紫外線励起指示薬のいくつかの例には、例えばquin 2、 indo 1、 fura 2、 indo 1FF、 fura 2FF、 fura PE2、 indo PE3、 bis-fura 2、 C18-fura 2、 FFT18、およびFIP 18が含まれる。蛍光染料指示薬の多くはカルシウムに対して親和性がある。Mag-indo 1、 mag-fura 2、およびmag-fura 5はカルシウムよりむしろマグネシウムに対して高い親和性を有する紫外線励起指示薬の例である。
【0061】
ある可視光励起指示薬には、例えばfluo 3、 calcium green、 Oregon green BAPTA、 calcium orange、calcium crimson、 fura red、 rhod 2、 calcium green C18、およびfura-indoline-C18が含まれる。
【0062】
蛍光指示薬を非レシオメテトリック(nonratiometic)指示薬あるいはレシオメテトリック(ratiometic)指示薬として分類してもよい。非レシオメトリック指示薬に対する励起および発光周波数は指示薬がイオンと錯体を作ろうと作るまいと変わらない。対照的にレシオメトリック(ratiometric)指示薬の励起あるいは発光スペクトルの波長は指示薬がCa+2あるいは他のイオンと錯体を作ると変動する。
【0063】
fura 2はカルシウムと結合すると励起スペクトルが変化するレシオメトリック指示薬の一例である。fura 2に対する最大励起波長はカルシウムが存在しなければ372ナノメータである。fura 2がカルシウムと結合すると最大励起波長は340ナノメータに変化する。
【0064】
fura 2に対する蛍光発光周波数は、イオンと錯体を作る作らないに関係なく510ナノメータである。fura 2がイオンと錯体を作ると、最大蛍光発光波長ではなく最大励起波長が変化する。
【0065】
あるレシオメトリック指示薬に対する最大発光波長よりもむしろ最大蛍光発光波長は、指示薬がイオンと結合すると変動する。例えば、レシオメトリック指示薬indo 1はイオンと結合しなければ(染料がなければ(as a free dye))最大発光周波数は472ナノメートルである。指示薬indo 1がカルシウムと錯体を作ると最大発光周波数は472ナノメートルから400ナノメートルに変化する。
【0066】
ミネラルイオンを分析するにはノンレシオメトリック指示薬よりもレシオメトリック指示薬を使った方が都合がよい。レシオメトリック指示薬についてのイオン結合塗料と非イオン結合塗料(ion-free dye)との蛍光強度の比は指示薬の濃度および光路長とは無関係である。励起光源に曝されてレシオメトリック指示薬が劣化しても、イオン結合塗料と非イオン結合塗料との蛍光強度の比は影響を受けない。レシオメトリック指示薬の使用によるカルシウムイオンあるいは他の適当なイオンの濃度の測定は蛍光染料の含有率(dye loading)、細胞の厚さ(cell thickness)、塗料の劣化、励起光源強度、塗料の光漂白(photobleaching of the dye)、検出器効率、および他の変数とは無関係である。
【0067】
一実施例では、生物学的インジケータにおける胞子を囲む水溶液中のカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、あるいはマンガンなどのミネラルイオンの濃度はそのミネラルイオンと蛍光染料指示薬との錯体の分光分析測定により検出できる。ある実施例では蛍光染料指示薬はレシオメトリック指示薬でよい。さらにある実施例では、錯体の分光分析測定には蛍光分光分析を用いてもよい。他の分光分析法も使用できる。
【0068】
他の実施例では、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、あるいはマンガンのミネラルイオンの濃度をイオンに感応する電極を用いて測定できる。イオン感応電極はイオン錯化剤を親油性の薄膜に混ぜ込んで用意できる。イオン感応電極の薄膜が、サンプル溶液と既知の濃度のイオンを含む基準溶液とを分離する。サンプル溶液中のイオン濃度はネルンスト式(Nernst equation)を用いてサンプル溶液と基準溶液との電圧差から検出できる。
【0069】
カルシウム選択(calcium-selective)電極は、例えば、シグマ−アルドリッヒ社の一部であるフルーカ・アンド・リーデル−ド・ハ−エン(Fluka and Riedel-de Haen, part of Sigma-Aldrich family of companies)からCalcium Ionophore Selectophore(登録商標)、トマス・エレクトロン・コーポレイション(Thomas Electron Corporation)からOrion ion-plus(登録商標) calcium electrodesとして、あるいはラジオメータ・アナリティカル・エスエイエス(Radiometer Analytical SAS)からISE25Caとして販売されている。他のカルシウム選択電極も使用に適している。
【0070】
他のイオンについても、同様にそれぞれのイオン特定電極が市販されている。
【0071】
Takahashi等の論文に述べられているように、カルシウム特定電極で測定できるカルシウム濃度範囲は蛍光染料指示薬で測定できるカルシウム濃度範囲よりも広い。カルシウム特定電極に対するpCaは、例えばindo 1蛍光染料に対するpCa 7.5〜pCa 5に比べてpCa 9〜pCa 1である。www.radiometer-analytical.comで入手できるラジオメータ・アナリティカル・エスエイエスのカタログによれば、Radiometer Analytical ISE25Ca電極の濃度測定範囲は10-6〜100MCaである。他のカルシウム特定電極は異なる濃度測定範囲を持っている。しかしながら、カルシウム選択電極の応答時間は蛍光染料指示薬の応答時間よりも遅いとTakahashi等の論文に述べられている。
【0072】
代表的な実施例では、溶解したミネラル、例えばカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、あるいはマンガンの濃度生物学的インジケータ内の胞子を取り囲む水溶液の導電率を検出することで測定できる。カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、あるいはマンガンなどのイオンは電気を伝導する。水溶液の導電率は溶解したミネラルの濃度が増すほど高くなる。
【0073】
ある実施例では、さまざまな濃度のイオンを含む水溶液を調製でき、それらの水溶液の導電率を測定でき、またイオン濃度対導電率の校正曲線を作成できる。水溶液中のイオン濃度は、水溶液の導電率を検出しそしてイオン濃度対導電率の校正曲線を使って水溶液の導電率をイオン濃度に関係付けることにより求められる。
【0074】
他の実施例では、死んだ胞子数対導電率の校正曲線を、後述する例1に示すように作成できる。生物学的インジケータ内の水溶液中の死んだ胞子数は、例えば、生物学的インジケータ内の胞子を取囲む水溶液の導電率を測定しそして校正曲線を用いて測定導電率を死んだ胞子数に関係付けることで割り出すことができる。
【0075】
水溶液の導電率は、例えば、導電率計で測定できる。他の形の導電率を測定する計器も使用できる。
【0076】
生物学的インジケータ
生物学的インジケータ内の水溶液の導電率を測定するのに適する装置を図1に示す。図1の装置あるいはキットは導電率を測定するのに使用できる装置の単なる一形態に過ぎない。導電率を測定するための他の形態の装置も使用できる。
【0077】
図1に示すように、導電率用生物学的インジケータ10は通気性窓30のあるバイアル20を有する。一実施例では、通気性窓30は殺菌剤、例えばDuPont社のスパンポリエチレン(spun polyethylene)の登録商標であるTYVEK(登録商標)を通過させる。他の通気性部材も使用できる。他の実施例では、通気性窓30はバイアル20の覆いのない開口でもよい。さらに他の実施例では、通気性窓30はピンホール、すなわち液体が生物学的インジケータ10から漏出しないほどに小さな開口でもよい。放射線あるいは紫外線を殺菌剤あるいは消毒剤として使用する時は、生物学的インジケータ10は通気性窓30を具備しない。ある実施例では、バイアル20はバイアル自体を完全に密閉するキャップを有する。
【0078】
プローブ40がバイアル20の外側からその内側に延長している。バイアル20は初期数の胞子50を含んでいる。プローブ40は通常、例えばプラチナあるいは銅などの導電性金属からなっている。プローブ40は、例えば針金、板、あるいは棒状でもよい。プローブ40の一部を、例えばプラスチックの保護皮膜で被覆してもよい。保護皮膜は殺菌剤のプローブ40との反応量を減少する。プローブ40は電極を有する。
【0079】
胞子50の初期数は当業者には周知の標準的な方法で知ることができる。胞子50はどのような胞子でもよい。表1の胞子は、B.メガテリウム(B. megaterium), B.サチリスニガー(B. subtilis niger) およびB.ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)である。胞子50は、例えばカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選んだ少なくとも一つのミネラルを含む。他の胞子は他のミネラルを含んでもよい。
【0080】
ある実施例では、胞子50は乾いた胞子でもよい。さらに他の実施例では、胞子50は多孔質の物質、例えば、多孔質のガラスの円板上に支持されている。
【0081】
導電率用生物学的インジケータ10は壊れやすいアンプル60を含んでいる。壊れやすいアンプル60は砕けやすい材料、例えば、ガラスで作ることができる。壊れやすいアンプル60には水溶液が入っている。壊れやすいアンプル60は潰れたときに水溶液がアンプル60から漏出できるようなものならば、どのような壊れやすい容器でもよい。水溶液は適当なもの、例えば、脱イオン水、蒸留水、あるいは胞子50用の育成培地などいずれでもよい。他の実施例では、水溶液はミネラルイオンと反応する化学薬品を含んでいてもよいし、あるいは検出すべきミネラルを含んでいない水溶液でもよい。ある実施例では、生物学的インジケータ10はさらに育成培地を入れてある第2の壊れやすいアンプル(図示せず)を具備している。
【0082】
通気性窓30は図1のバイアル20の上面に示されている。この窓はバイアル20のほかの場所に設けてもよい。
【0083】
ある実施例では、バイアル20は変形可能な材料、たとえばポリエチレンで作ってもよい。
【0084】
生物学的インジケータの別の実施例
図2は生物学的インジケータ10のべつの実施例を示す。図2の生物学的インジケータ10の実施例は図1の導電率用生物学的インジケータ10の実施例に類似している。図1に示す実施例と違って、図2の生物学的インジケータはプローブ40を使っていない。ミネラル濃度に関係するパラメータはいろいろな方法で測定できる。生物学的インジケータ10の壊れやすいアンプル60には水、例えば脱イオン水あるいは蒸留水が入っている。他の実施例では、水溶液はミネラルイオンと反応する化学薬品を含んでいてもよいし、あるいは検出すべきミネラルを含んでいない水溶液でもよい。図2に示す生物学的インジケータ10の実施例の壊れやすいアンプル60内の水は微生物の成長を助けない。
【0085】
図2の生物学的インジケータはさらに育成培地を収納し第2のアンプル(図示せず)を含んでもよい。
【0086】
図1の導電率用生物学的インジケータを使用して滅菌処理の完全性を調べる方法
図1に示す導電率用生物学的インジケータ10を殺菌装置に入れて、殺菌サイクルを行ってもよい。殺菌剤は殺菌サイクルの間、通気性窓30からバイアル20に入る。殺菌剤は胞子50に接触してバイアル20に入れられている胞子50の少なくとも一部を殺す。
【0087】
殺菌サイクルの終了後、壊れやすいアンプル60を壊してその中の水溶液を放出してもよい。壊れやすいアンプル60は適当な方法で壊すことができる。例えば、バイアル20を変形させてもよい。バイアル20が変形したならば、バイアル20の壁が壊れやすいアンプル60に接触して、アンプル60を壊す。
【0088】
壊れやすいアンプル60を壊すと、アンプル内の水溶液が放出される。水溶液がバイアル20内の胞子50と接触する。胞子50が壊れやすいアンプル60に入っていた水溶液に接触すると、胞子に含まれていたミネラルが溶けてミネラルを含んだ水溶液が作られる。ミネラルが溶解している水溶液がプローブ40に接触する。
【0089】
導電率計あるいは他の適当な導電率を測定する装置をプローブ40に接続してバイアル20内の水溶液の導電率を測定できる。表2および例1の図2に示すように、バイアル20内の水の導電率はバイアル20内の死んだ胞子の数が増加するにつれて上昇する。水溶液の上昇した導電率は溶解したミネラル、例えばカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、あるいはカリウムの濃度の増加に関係し、これらのミネラルは胞子が殺菌剤で死んだときに胞子から放出されるものである。
【0090】
バイアル20内の水の上昇した導電率が、導電率用生物学的インジケータ10内の水溶液の導電率から決定される死んだ胞子の数を導電率用生物学的インジケータ10内の初期に生きていた胞子の数と比較することによって滅菌処理の効果と相関付けられる。
【0091】
ワイヤ(図示せず)を自立型生物学的インジケータ10上でプローブ40に接続してバイアル20内の水溶液の導電率を、導電率計あるいは水溶液の導電率を測定する他の適当な装置に送信する。ある実施例では、滅菌処理中あるいは処理後に殺菌装置の外部で導電率の測定値が得られるように、ワイヤを殺菌装置の壁を通り抜けさせてもよい。図1の導電率用生物学的インジケータによる導電率測定値は滅菌処理装置の内部あるいは外部で得てもよい。
【0092】
図2の生物学的インジケータを使用して滅菌処理の完全性を調べる方法
図2の生物学的インジケータ10による滅菌処理の完全性を調べる方法は全般的に図1の導電率用生物学的インジケータでの方法に類似している。図2の生物学的インジケータ10を殺菌装置あるいは滅菌処理装置に入れて、殺菌サイクルを行ってもよい。殺菌剤は殺菌サイクルの間、通気性窓30からバイアル20に入る。殺菌剤は胞子50に接触してバイアル20に入れられている胞子50の少なくとも一部を殺す。胞子50が死ぬと、胞子50に含まれているミネラルが放出される。
【0093】
殺菌サイクルの終了後、壊れやすいアンプル60内の水をアンプル60を壊して放出してもよい。壊れやすいアンプル60は適当な方法で壊すことができる。例えば、バイアル20を変形させてもよい。バイアル20が変形したならば、バイアル20の壁が壊れやすいアンプル60に接触して、アンプル60を壊す。図2の生物学的インジケータ10の実施例の潰れやすいアンプル60は殺菌装置あるいは滅菌処理装置の内部あるいは装置の外部で壊してもよい。
【0094】
潰れやすいアンプル60を壊すと、アンプル内の水が放出される。水がバイアル20内の胞子50と接触する。胞子50が壊れやすいアンプル60に入っていた水に接触すると、胞子に含まれていたミネラルが溶けて、バイアル20内の胞子50が死んだときに放出されたミネラルを含んだ水溶液が作られる。水溶液中のミネラルは適当な方法で検出してよい。導電率による測定を、検出方法を例示するために述べる。
【0095】
プローブ(図示せず)をバイアル20内のミネラルを溶解した水溶液に挿入してもよい。バイアル20内の水溶液の導電率は適当な測定装置、例えば、導電率計で検出すればよい。図2の導電率用生物学的インジケータ10の導電率の検出は消毒装置あるいは殺菌装置の外部で行われる。それはプローブが装置の外部でバイアルに挿入されているからである。
【0096】
プローブを、例えば通気性窓30を介して挿入してもよい。あるいは、図2の導電率用生物学的インジケータ10のバイアル20内の水溶液にプローブを挿入するために、バイアル20の一部を少なくとも一時的に取り除いてもよい。
【0097】
滅菌処理の効果は、図1の導電率用生物学的インジケータ10について前述した方法に類似した方法で、図2の導電率用生物学的インジケータ10のバイアル20内の水溶液の導電率から判定しうる。
【0098】
導電率計のコストは非常に低い。フェルトナー等(Feltner et al.)の微分紫外線スペクトロメータ等の器械のコストは非常に高い。水溶液の導電率の測定は1分足らずと非常に迅速で、生物学的インジケータから殺菌効果の判定値を得るのに必要とする1日ないし2日よりはるかに速い。
【0099】
表2および例1の図2におけるデータに示すように、水溶液の導電率は死んだ胞子の数に非常に影響を受ける。導電率は死んだ胞子数が8.2x106の場合の1.15μS/cmから、死んだ胞子数が8.2x107の場合の3.36μS/cmに増加する。死んだ胞子数が8.2x106から8.2x107になる場合の2μS/cmの導電率の変化は容易に識別可能である。生物学的インジケータ内の水溶液の導電率は死んだ胞子の数が増えるに従って著しく変化する。
【0100】
例1で使用した脱イオン水は0.90μS/cmの導電率であった。例1で測定した全導電率は、死んだ胞子数が1.6x104のサンプルに対する0.90μS/cmから、死んだ胞子数が1.6x109のサンプルに対する50.10μS/cmにまで及んだ。死んだ胞子数が8.2x104あるいはそれ以下のサンプルの導電率は、脱イオン水の導電率と同じである。
【0101】
水の導電率を逆浸透などの方法で下げてもよい。導電率用生物学的インジケータにおいて使う水の導電率を下げると、導電率検出における「ノイズ」が減って導電率測定による生物学的インジケータ内の死んだ胞子数の検出感度が高まる。
【0102】
前述したように、生物学的インジケータ内の水溶液のミネラルイオン濃度に関係するパラメータは非常に多くの方法で求めることができる。生物学的インジケータ内の水溶液の導電率を検出する実施例は代表的な実施例である。水溶液中のイオン濃度に関係するパラメータを求めるために他の方法も用いてもよい。
【0103】
以下に述べる例は発明を例示するためだけのものであり発明の範囲を限定するものではない。
【0104】

例1
導電率対胞子数の検出
さまざまな数の生きている胞子B. stearothermophilusを含む水溶液の導電率を測定した。水溶液の導電率は生きている胞子の数とは関係なく0.89μS/cmであった。無菌の脱イオン水も導電率は0.89μS/cmであった。従って、生きている胞子は水溶液の導電率に何ら大きな影響を与えない。生きている胞子と脱イオン水による導電率は以下に示す表2の全ての例において0.90μS/cmであるとされている。
【0105】
いろいろな数の胞子B. stearothermophilusを多孔質ガラスの培養基(substrates)の上に置いた。培養基と胞子は、米国カリフォルニア州アービンのアドバンスド・ステリライゼイション・システムズ(Advanced Sterilization Systems, Irvine, California)から販売されている消毒器Sterrad(登録商標)100S内で過酸化水素/プラズマで処理した。多孔質ガラスの培養基上の胞子はすべて実験条件下で死んだ。脱イオン水をガラスの培養基に加え、水溶液の導電率を測定した。その結果を以下の表2に示す。図3はデータを導電率対死んだ胞子数をプロットしてグラフで示す。
【表2】

【0106】
8.2x106個の死んだ胞子を含む水性懸濁液の導電率は1.15μS/cmで、一方1.6x109個の死んだ胞子を含む水性懸濁液の導電率は50.10μS/cmであった。従って、8.2x106個の死んだ胞子を含む水性懸濁液は1.6x109個の死んだ胞子を含む水性懸濁液とは容易に区別できる。
【0107】
8.2x105個の死んだ胞子を含む水性懸濁液は、導電率が0.92μS/cmで、死んだ胞子数が8.2x104の懸濁液の導電率0.90μS/cmとは区別できない。
【0108】
表2におけるデータが示すように、滅菌処理後の導電率1.15μS/cmは滅菌処理中に少なくとも8.2x106個の胞子が死んだことを示す。ある実施例では、少なくともほぼ1.0x106個の胞子が生物学的インジケータにおいて使われている。滅菌処理後の水溶液における約1.15μS/cmの導電率は8.2x106個の胞子が死んだことを示す。
【0109】
生物学的インジケータに多数の生きている胞子を使用することによって、導電率用生物学的インジケータにおける水溶液の導電率が少なくとも1.15μS/cmの場合に有効な消毒が行われたことがなおいっそう保証される。ある実施例では、導電率用生物学的インジケータ内の生きている胞子の初期数は少なくとも1.0x107でもよい。多数の生きている胞子を使うことは、滅菌処理が有効であったという保証がさらに大きくなる。
【0110】
表2に示す導電率の値よりも低い導電率も、低い導電率の水を使って生物学的インジケータ内の死んだ胞子に加える水溶液を作れば、測定できる。低い導電率の水は、例えば、逆浸透を使えば用意できる。
【0111】
本発明の多様な変形および変更が、本発明の範囲および精神を逸脱することなく可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明は本明細書に開示した実施例に限定されるものではなく、また請求の範囲は先行技術が許す限り広く解釈すべきである。
【0112】
〔実施の態様〕
(1)滅菌あるいは消毒処理の効果を判定する方法において、
初期既知数の生きている胞子を含む生物学的インジケータを用意するステップであって、前記初期既知数の生きている胞子は、カルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのミネラルを含む、前記生物学的インジケータを用意するステップと、
前記生物学的インジケータに滅菌あるいは消毒処理を受けさせ、前記初期既知数の生きている胞子の少なくとも一部を殺して、ある量の死んだ胞子を得るステップと、
前記死んだ胞子を水に接触させて、前記死んだ胞子から放出されたカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのミネラルを含む水溶液を作るステップと、
前記水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのミネラル濃度に関係するパラメータを測定するステップであって、当該パラメータを測定するステップの前に前記死んだ胞子を水に接触させるステップを行う、前記パラメータを測定するステップと、
前記パラメータおよび前記生物学的インジケータ内の生きている胞子の前記初期既知数から前記滅菌あるいは消毒処理の効果を判定するステップと、
を含む、方法。
(2)実施の態様1に記載の方法において、
前記水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのイオンの濃度に関係する前記パラメータを、原子吸光、炎光発光、ICP、イオンクロマトグラフィ、EDTA滴定、錯化滴定、少なくとも一つのイオンを含む蛍光染料指示薬の錯体の分光分析、および導電率からなる群から選ばれた少なくとも一つの方法で測定する、方法。
(3)実施の態様1に記載の方法において、
前記水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのイオンの濃度に関係する前記パラメータを、前記水溶液の導電率を測定することにより測定する、方法。
(4)実施の態様3に記載の方法において、
前記パラメータから前記滅菌あるいは消毒処理の効果を判定するステップは、前記水溶液の導電率と、導電率対死んだ胞子数の校正曲線とを比較することにより、前記死んだ胞子数を定量するステップと、前記死んだ胞子数と生きている胞子の前記初期既知数とから前記効果を算出するステップと、を含む、方法。
(5)実施の態様1に記載の方法において、
滅菌剤あるいは消毒剤は熱、蒸気、過酸化水素、過酢酸、エチレンオキシド、オゾン、二酸化塩素、紫外線および放射線からなる群から選ばれる、方法。
(6)実施の態様1に記載の方法において、
前記死んだ胞子を水に接触させる前記ステップは、前記生物学的インジケータに前記滅菌あるいは消毒処理を受けさせる前記ステップの前に行う、方法。
(7)実施の態様1に記載の方法において、
前記死んだ胞子を水に接触させる前記ステップは、壊れやすいアンプルを壊して前記アンプルから水を放出するステップを含む、方法。
(8)実施の態様1に記載の方法において、
前記死んだ胞子を水に接触させる前記ステップは、前記生物学的インジケータに前記滅菌あるいは消毒処理を受けさせる前記ステップの後に行う、方法。
(9)実施の態様1に記載の方法において、
生きている胞子の前記初期既知数は少なくとも1.0x106である、方法。
(10)実施の態様1に記載の方法において、
生きている胞子の前記初期既知数は少なくとも1.0x107である、方法。
(11)実施の態様1に記載の方法において、
育成培地において指示薬に変化が起こるかどうかを調べて滅菌あるいは消毒の効果を判定して確認した後、前記育成培地で胞子を培養するステップをさらに含む、方法。
(12)滅菌あるいは消毒処理の効果を判定する生物学的インジケータにおいて、
既知数の生きている胞子と、
前記既知数の生きている胞子を収容しているバイアルと、
脱イオン水あるいは蒸留水を入れている壊れやすいアンプルと、
を具備し、
前記アンプルを壊して前記水を前記バイアル内の前記胞子に接触させる、生物学的インジケータ。
(13)実施の態様12に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記バイアルは前記バイアル内部へ通じる通気性窓を具備し、
前記通気性窓を通して滅菌剤あるいは消毒剤が前記バイアルの内部に侵入可能であって、前記滅菌剤あるいは前記消毒剤が前記既知数の生きている胞子に接触する、生物学的インジケータ。
(14)実施の態様12に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記胞子を支持する多孔質の培養基をさらに具備する、生物学的インジケータ。
(15)実施の態様12に記載の生物学的インジケータにおいて、
育成培地を収容する第2アンプルをさらに具備する、生物学的インジケータ。
(16)生物学的インジケータにおいて、
既知数の生きている胞子と、
前記既知数の生きている胞子を収容しているバイアルと、
水を含む溶液が入っている壊れやすいアンプルであって、前記アンプルを壊すと前記水が前記バイアル内の前記胞子に接触する、アンプルと、
前記バイアルの外部から前記バイアルの内部に延長しているプローブであって、前記プローブは前記アンプルが壊れた後に前記バイアル内で前記水に接触する、プローブと、
を具備する、生物学的インジケータ。
(17)実施の態様16に記載の生物学的インジケータにおいて、
水を含む前記溶液は、育成培地、脱イオン水、および蒸留水からなる群から選ばれる、生物学的インジケータ。
(18)実施の態様16に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記プローブは電極である、生物学的インジケータ。
(19)実施の態様16に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記バイアル内部に通じる通気性窓をさらに具備し、前記通気性窓を通して滅菌剤あるいは消毒剤が前記バイアルの内部に侵入可能であって、前記滅菌剤あるいは前記消毒剤が前記既知数の生きている胞子に接触する、生物学的インジケータ。
(20)実施の態様16に記載の生物学的インジケータにおいて、
育成培地を収容する第2アンプルをさらに具備する、生物学的インジケータ。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施例によるプローブを具備する導電率用生物学的インジケータの模式図。
【図2】本発明の実施例によるプローブを具備しない導電率用生物学的インジケータの模式図。
【図3】導電率μS/cm対死んだ胞子数をプロットして示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌あるいは消毒処理の効果を判定する方法において、
初期既知数の生きている胞子を含む生物学的インジケータを用意するステップであって、前記初期既知数の生きている胞子は、カルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのミネラルを含む、前記生物学的インジケータを用意するステップと、
前記生物学的インジケータに滅菌あるいは消毒処理を受けさせ、前記初期既知数の生きている胞子の少なくとも一部を殺して、ある量の死んだ胞子を得るステップと、
前記死んだ胞子を水に接触させて、前記死んだ胞子から放出されたカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのミネラルを含む水溶液を作るステップと、
前記水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのミネラル濃度に関係するパラメータを測定するステップであって、当該パラメータを測定するステップの前に前記死んだ胞子を水に接触させるステップを行う、前記パラメータを測定するステップと、
前記パラメータおよび前記生物学的インジケータ内の生きている胞子の前記初期既知数から前記滅菌あるいは消毒処理の効果を判定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのイオンの濃度に関係する前記パラメータを、原子吸光、炎光発光、ICP、イオンクロマトグラフィ、EDTA滴定、錯化滴定、少なくとも一つのイオンを含む蛍光染料指示薬の錯体の分光分析、および導電率からなる群から選ばれた少なくとも一つの方法で測定する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記水溶液中のカルシウム、マンガン、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つのイオンの濃度に関係する前記パラメータを、前記水溶液の導電率を測定することにより測定する、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記パラメータから前記滅菌あるいは消毒処理の効果を判定するステップは、前記水溶液の導電率と、導電率対死んだ胞子数の校正曲線とを比較することにより、前記死んだ胞子数を定量するステップと、前記死んだ胞子数と生きている胞子の前記初期既知数とから前記効果を算出するステップと、を含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
滅菌剤あるいは消毒剤は熱、蒸気、過酸化水素、過酢酸、エチレンオキシド、オゾン、二酸化塩素、紫外線および放射線からなる群から選ばれる、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記死んだ胞子を水に接触させる前記ステップは、前記生物学的インジケータに前記滅菌あるいは消毒処理を受けさせる前記ステップの前に行う、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記死んだ胞子を水に接触させる前記ステップは、壊れやすいアンプルを壊して前記アンプルから水を放出するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記死んだ胞子を水に接触させる前記ステップは、前記生物学的インジケータに前記滅菌あるいは消毒処理を受けさせる前記ステップの後に行う、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
生きている胞子の前記初期既知数は少なくとも1.0x106である、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
生きている胞子の前記初期既知数は少なくとも1.0x107である、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
育成培地において指示薬に変化が起こるかどうかを調べて滅菌あるいは消毒の効果を判定して確認した後、前記育成培地で胞子を培養するステップをさらに含む、方法。
【請求項12】
滅菌あるいは消毒処理の効果を判定する生物学的インジケータにおいて、
既知数の生きている胞子と、
前記既知数の生きている胞子を収容しているバイアルと、
脱イオン水あるいは蒸留水を入れている壊れやすいアンプルと、
を具備し、
前記アンプルを壊して前記水を前記バイアル内の前記胞子に接触させる、生物学的インジケータ。
【請求項13】
請求項12に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記バイアルは前記バイアル内部へ通じる通気性窓を具備し、 前記通気性窓を通して滅菌剤あるいは消毒剤が前記バイアルの内部に侵入可能であって、前記滅菌剤あるいは前記消毒剤が前記既知数の生きている胞子に接触する、生物学的インジケータ。
【請求項14】
請求項12に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記胞子を支持する多孔質の培養基をさらに具備する、生物学的インジケータ。
【請求項15】
請求項12に記載の生物学的インジケータにおいて、
育成培地を収容する第2アンプルをさらに具備する、生物学的インジケータ。
【請求項16】
生物学的インジケータにおいて、
既知数の生きている胞子と、
前記既知数の生きている胞子を収容しているバイアルと、
水を含む溶液が入っている壊れやすいアンプルであって、前記アンプルを壊すと前記水が前記バイアル内の前記胞子に接触する、アンプルと、
前記バイアルの外部から前記バイアルの内部に延長しているプローブであって、前記プローブは前記アンプルが壊れた後に前記バイアル内で前記水に接触する、プローブと、
を具備する、生物学的インジケータ。
【請求項17】
請求項16に記載の生物学的インジケータにおいて、
水を含む前記溶液は、育成培地、脱イオン水、および蒸留水からなる群から選ばれる、生物学的インジケータ。
【請求項18】
請求項16に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記プローブは電極である、生物学的インジケータ。
【請求項19】
請求項16に記載の生物学的インジケータにおいて、
前記バイアル内部に通じる通気性窓をさらに具備し、前記通気性窓を通して滅菌剤あるいは消毒剤が前記バイアルの内部に侵入可能であって、前記滅菌剤あるいは前記消毒剤が前記既知数の生きている胞子に接触する、生物学的インジケータ。
【請求項20】
請求項16に記載の生物学的インジケータにおいて、
育成培地を収容する第2アンプルをさらに具備する、生物学的インジケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−7421(P2007−7421A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−180074(P2006−180074)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】