説明

滅菌パンクレアチン粉末の製法

本発明は、1種以上の生物汚染物質、例えばウィルス及び/又は細菌の濃度を減少させたパンクレアチンの製法を開示するが、この方法はパンクレアチンを少なくとも85℃の温度で9質量%より少ない全溶剤含量で加熱することから成る。更に、このような方法により得られるパンクレアチンを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その中の一種以上の生物、特にウイルスの汚染物質の濃度をパンクレアチンを加熱することによって減少させたパンクレアチンの製造方法及びその使用に関する。
【0002】
パンクレアチンは、哺乳類の膵臓腺に由来する物質であり、種々の消化酵素、例えばリパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼから成る。パンクレアチンは、嚢胞性線維症、慢性膵炎、膵臓切除術後、胃腸バイパス手術後(例えばビルロート法II胃腸吻合術)及び腫瘍による管閉鎖症(例えば膵臓又は総胆管の)を伴うことが多い膵臓外分泌不全を治療するために使用されている。薬理学的製品中のパンクレアチンの適用用に、種々の消化酵素の固有の高い活性レベルを実質的に維持することが有利である。しかし、これらの酵素は例えば貯蔵に際して分解される恐れがあり、特に温度上昇に敏感である。従ってパンクレアチンには一般的な取り扱い、製造及び貯蔵工程の間細心の制御状態が要求される。
【0003】
更に、パンクレアチンは動物由来のものであるので、1種以上の生物汚染物質、例えばウイルス汚染物質のような望ましくないその他の成分が含まれる恐れがある。パンクレアチンを含む製剤の100年を超える商品化の歴史の間に、患者が実際に何らかのウイルスに汚染されたパンクレアチンによって感染したという症例は何も報告されていない。しかし生物組織及び/又は体液からの製剤を製造する会社に対して、当該汚染物質がヒトの病原体であるか否かに拘わらず、あらゆる種類の汚染物質を可能な限り低いレベルに下げることによってそれらの製剤の安全性レベルを高めるよう規制団体からかけられる圧力はますます強くなってきている。従って、薬理学的製品中にパンクレアチンを適用するために、その中の生物汚染物質の濃度を最小にして一般に許容される検出基準まで下げることが望ましい。
【0004】
従ってパンクレアチンの製造、取り扱い及び貯蔵方法用に、当業者は種々の消化酵素の高い活性レベルを維持しながら、同時にその中の1種以上の生物汚染物質の濃度を最小限にするような方法を提供するという難題に直面している。
【0005】
現在のパンクレアチンの製造方法が、全ての生物汚染物質、特に特定のウイルスを現在許容されている検出限度下まで有効に不活性化することができるとは思われない。
【0006】
酵素組成物内のウイルス及び細菌の濃度を減少させるために種々の方法が公知である。このような方法には、熱処理、濾過、化学不活性剤又は感作剤の添加、輻射処理及び拡大加熱が含まれる。これらの方法を下記に詳説する。
【0007】
熱処理は、生成物を例えば60℃に70時間加熱することを意味し、これは鋭敏な生成物を損なう恐れがある。慣用の熱不活性化が生成物の酵素の活性を相当程度損なってしまう場合もある。
【0008】
濾過には、物理的に汚染物質を除去するために生成物を濾過することが含まれる。しかしあいにく、この方法は高分子量を有する生成物をも除去する可能性がある。更に小さなウイルス及び同じ大きさの汚染物質及び病原体が濾過器によって除去されない場合もある。
【0009】
化学的感作の方法には、ウイルスのDNA/RNAと結合し、UV線又はその他の輻射線によって活性化される有害薬剤の添加が関与している。輻射線はウイルスのDNA/RNAと結合し、DNA/RNAのバックボーンの化学結合を破壊し及び/又は架橋するか又は合成してウィルスがもはや複製することができないようにする反応性中間生成物及び/又はフリーラジカルを生成する。この方法は結合してない感作剤を生成物から洗い流す必要がある。それは感作剤が、突然変異誘発性又は発癌性でないとしても、有毒であり、患者に投与することができないからである。
【0010】
US特許第3956483(Lewis)には、好適な澱粉分解、蛋白質分解及び脂肪分解活性を有するパンクレアチンを製造し、その活性を維持しながら有害な細菌を除去する方法が記載されている。この方法は、パンクレアチンを120°F〜180°F(約49〜82℃)の十分高い温度に加熱することから成る。しかしLewisは、ウイルスの濃度を現在の許容検出レベル下に減少させるために好適である方法を提供していない。
【0011】
US6749851(Mann)には、第1工程で(a)温度を下げ、(b)溶剤を除去し、又は(c)組成物に安定剤を添加することによって安定化し、次いで組成物を第2工程で照射することによる、消化酵素から成る組成物の処理が提案されている。
【0012】
Braeunigerその他(Braeunigerその他、Int.J.Hyg.Environ.Health203、71−75、2000)は、ウシパルボウイルスの不活性化用に熱の使用を提案している。不活性化することのできるウシパルボウイルスは暴露及び湿気に左右されることが実証されている。通常、より高い含水率によって、より長い照射時間と組み合わせたより低い含水率と同じ不活性化が、より短い熱暴露で可能になる。しかしながらBraeunigerその他は、例えば動物のパンクレアチンの部分を形成するリパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼのような酵素に対して熱が有する効果に関して何も明らかにしてない。従って、生物汚染物質の濃度を十分に減少させて、高い活性レベルの酵素を有するパンクレアチンを得る方法が必要である。
【0013】
さて、その中の1種以上の生物汚染物質の濃度を減少させてありかつ酵素活性が許容レベルで維持されているパンクレアチン製造において、特別な条件を使用することができることを見出した。特には、本明細書に記載し請求した方法がパンクレアチン中のウイルス汚染物質の濃度を減少させるために有用であることを見出した。更に本明細書に記載の方法が、生物製剤からのウイルスの除去に関する種々の規制要件(例えば"Note For Guidance on Virus Validation Studies: The Design, Contribution and Interpretation of Studies Validating the Inactivation and Removal of Viruses"、the Committee For Proprietary Medicinal Products発行)(以下では"CPMP/BWP/268/95"と称する)を満たし、他方では同時に酵素活性(例えばリパーゼ、プロテアーゼ及びアミラーゼ)を許容レベルに保つことが判明した。
【0014】
本明細書に記載の方法及び得られるパンクレアチン並びに本明細書に記載の方法により得たパンクレアチンから成る医薬組成物のもう一つの利点は、実験室規模、パイロット規模及び製造規模で適用可能であることである。
【0015】
従って本明細書に開示した態様の一つは、1種以上の溶剤を含有するパンクレアチンの分散形を少なくとも85℃の温度で加熱し、この加熱工程の間のどの時点でも9質量%より少ないパンクレアチンの分散形中の全溶剤含量を得ることによって、1種以上の生物汚染物質、特にウイルス汚染物質の濃度を減少させたパンクレアチンの製法である。このような方法により、酵素活性が許容可能なレベルに保たれかつ1種以上の生物汚染物質、特にウイルス汚染物質の濃度が減少したパンクレアチンが得られる。
【0016】
もう一つの態様で、(a)1種以上の溶剤を含有するパンクレアチンの分散形を少なくとも85℃の温度に予備加熱し、(b)パンクレアチンの分散形の加熱を少なくとも85℃の温度で48時間までの間続け、工程(b)の間のどの時点でも9質量%より少ないパンクレアチンの分散形中の全溶剤含量を得る工程から成るパンクレアチンの製法を記載する。
【0017】
本明細書に記載のもう一つの態様は、前記段落の方法により得られるパンクレアチンに関する。
【0018】
本明細書に開示したもう一つの態様は、開示方法に従ってパンクレアチンから成る医薬組成物を製造する方法であり、その際このような医薬組成物は経口投与及び即時及び/又は調整放出に好適な剤形であり、このような剤形は錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤、顆粒、粉末、懸濁液、乳剤、分散液、カプセル、サシュ並びにその他の剤形から選択してよい。
【0019】
もう一つの態様は、(1)薬理学的に有効量のパンクレアチン(その際、このパンクレアチンは1種以上の溶剤を含有する分散パンクレアチンの形で少なくとも85℃の温度に加熱してあり、パンクレアチン中に存在する溶剤の全量は加熱工程のどの時点でも9質量%より少なく、加熱後にパンクレアチン中に存在するウイルス汚染物質の力価レベルは加熱前にパンクレアチン中に存在するウイルス汚染物質の力価レベルより少なくとも1000倍少ない)及び(2)1種以上の製薬的に認容性の賦形剤から成る医薬組成物である。
【0020】
もう一つの態様は、カプセル又はサシェの形の医薬組成物に関するが、その際カプセル又はサシェは開示方法を施したパンクレアチンを含む。
【0021】
もう一つの態様は、前記方法により得た安全かつ有効量のパンクレアチンを投与することによるパンクレアチン外分泌不全の治療方法に関する。
【0022】
その他の目的、特徴及び利点を下記態様の詳細な説明に記載し、一部分この記載から明らかであるか又は請求の範囲に記載されている本発明の実施により理解されるであろう。これらの目的及び利点は、詳細な説明及び請求項で特に指摘した方法及び組成物により実現及び得ることができる。
【0023】
図面の簡単な説明
図1:溶剤含量1%でパンクレアチンを80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃の温度で加熱実験後のリパーゼ活性。リパーゼ活性は2、4、6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。
【0024】
図2:溶剤含量3%でパンクレアチンを90℃及び95℃の温度で加熱後のリパーゼ活性。リパーゼ活性は2、4、8、15、24及び48時間後に測定した。
【0025】
図3:溶剤含量3%、6%、9%及び12%でパンクレアチンを80℃の温度で加熱後のリパーゼ活性。リパーゼ活性は0.5、1.0及び3.0時間後に測定した。
【0026】
図4:溶剤含量1%で80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃の温度でブタパルボウイルスをスパイクしたブタパンクレアチン(以下で"PPV−スパイクしたパンクレアチン"と称する)の対数力価減少。ウイルス濃度は6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。
【0027】
図5:溶剤含量1%及び3%で12時間90℃及び95℃の温度でPPV−スパイクしたパンクレアチンの対数力価減少。ウイルス濃度は3、6及び12時間後に測定した。
【0028】
他に記載のない限り、本明細書で使用した技術及び科学用語は全て当業界の一般的専門家により通常理解されるものと同じものを意味する。
【0029】
本明細書で使用したように、用語"滅菌"とは、本明細書に記載の方法を施すパンクレアチン、特に分散パンクレアチン中に存在する少なくとも1種の生物汚染物質の濃度の減少を意味する。更に特には、用語"滅菌"とは、本明細書に記載の方法を施すパンクレアチン、特に分散パンクレアチン中に存在する少なくとも1種のウイルス汚染物質の濃度の減少を意味する。
【0030】
本明細書で使用したように、用語"パンクレアチン"とは、全ての哺乳類膵臓腺由来のパンクレアチン、例えばウシ及びブタパンクレアチンを意味する。例えばUS特許第4623624号に記載の方法又は類似方法により製造したパンクレアチンを本開示の目的のために使用することができる。パンクレアチン中の生物汚染物質を減少させる有利な結果を得るために、本明細書に記載の方法条件と相溶性である分散形のパンクレアチンの使用が有利である。分散形のパンクレアチンは、例えば粉末、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤及び顆粒から成る。有利な結果は、パンクレアチン粉末、例えばパンクレアチンを製造する方法から直接得られるパンクレアチン粉末である。本明細書で使用されるようなパンクレアチンは、本明細書に記載したような工程条件と相溶性であり、例えば下記の製薬的に認容性の賦形剤から選択してよい、1種以上の製薬的に認容性の賦形剤を含んでいてもよい。
【0031】
本明細書で使用したように、用語"生物汚染物質"とは、パンクレアチンと直接又は間接的に接触する際にパンクレアチン又はその受容者に対して有害な影響を有しうる汚染物質を意味する。更に用語"活性生物汚染物質"とは、単独又はその他の要因、例えば第2の生物汚染物質と組み合わせて、パンクレアチンの製造でか又はパンクレアチンの受容者に対して有害作用を生じるうる生物汚染物質を意味する。このような生物汚染物質には、これに限定するものではないが、ウイルス汚染物質及び/又は微生物が含まれる。微生物には、これに限定するものではないが、細菌、かび及び/又は酵母が含まれる。生物汚染物質はヒトの病原菌でありうる。
【0032】
本明細書で使用したように、用語"ウイルス"又は"ウイルス汚染物質"とは、特にノンエンベロープウイルスを意味する。更に詳細には、用語"ウイルス"又は"ウイルス汚染物質"にはいわゆる高耐性ウイルス、例えばパルボウイルス科、特にブタパルボウイルス科、サーコウイルス科、特にブタサーコウイルス科及びカリシウイルス科、特にブタカリシウイルス科が含まれる。ブタパルボウイルス(PPV)は全種類の高耐性ウイルス、特に高耐性ブタウイルスの一般に容認されたモデル又は指標として使用することができる。更に本発明では用語"ウイルス"又は"ウイルス汚染物質"には、ピコルナウイルス科、特にブタピコルナウイルス科、レオウイルス科、特にブタレオウイルス科、アストロウイルス科、特にブタアストロウイルス科、アデノウイルス科、特にブタアデノウイルス科及びヘペウイルス科、特にブタヘペウイルス科も含まれる。
【0033】
本明細書で使用したように、用語単数又は複数の"溶剤"とは、結合又は錯体液体又は自由に利用可能な液体としてパンクレアチン中に存在する量又は割合の液体を意味する。自由に利用可能な液体とは、パンクレアチンと結合又は錯結合してない加熱させるパンクレアチン中に存在する液体を意味する。このパンクレアチン中に存在する液体は通常、水及び酵素親和性有機溶剤、水とこの酵素親和性有機溶剤の混合物から成る。好適な酵素親和性有機溶剤は、例えば揮発性有機溶剤、例えばアセトン、クロロホルム、ジクロロメタン又は直鎖又は枝分れC1−4−アルカノール、特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、t−ブタノール又はこれら溶剤の混合物である。2−プロパノールが酵素親和性有機溶剤として有利である。例えば水対酵素親和性有機溶剤の比は50:1から3:1、更に有利には30:1から10:1である。
【0034】
例えば85℃から100℃の温度範囲を使用する場合には常に、範囲限度を含めて、前記範囲以内の温度並びに前記範囲以内の異なる温度と成る温度プロフィールを意味する。本明細書に開示した方法の中の温度範囲は、開示温度範囲内の全時間期間である限り、連続的にか又は不連続的に適用させることができる。
【0035】
本明細書に記載の方法は、1種以上の溶剤を含有する分散形のパンクレアチンを少なくとも85℃の温度に加熱し、前記加熱工程の間のどの時間でも9質量%より少ない分散形のパンクレアチン中の全溶剤含量を得ることから成る。態様の一つでは、分散形のパンクレアチンを48時間までの時間加熱することができる。
【0036】
このような方法の態様の一つでは、パンクレアチンの溶剤含量は、例えば8%より少なく、更に例えば6%より少なく、通常は5%より少なく、大抵は3.5%以下、有利には0.1〜3.5%、更に有利には0.1〜3%、もっと更に有利には0.1〜1.6質量%である。他の態様では、溶剤含量は7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%又は0.5%より少ない。
【0037】
態様の一つでは、本明細書に記載の方法は、9質量%又はそれより少ない、典型的には2〜3.5質量%の最初の溶剤含量を有する分散パンクレアチン、特にパンクレアチン粉末を使用する。次いでパンクレアチンを85℃から100℃、例えば90℃であってよい所望の工程温度に加熱する。最初の予備加熱段階の間、パンクレアチン中の溶剤含量は典型的には時間及び温度の関数として減少する。この最初の予備加熱段階の期間はバッチサイズ及び最初のバッチ温度の関数であり、従って約15分から10時間の長さまでの間であると解される。予備加熱段階後、分散形のパンクレアチンを少なくとも85℃、通常は85〜100℃以内の温度、例えば90℃で、開示した工程時間、即ち48時間までの時間、例えば24時間加熱し続ける。本明細書に開示したパラメーター以内で(典型的には大気圧下で)方法を使用すると、予備加熱段階終了時に到達する溶剤含量は典型的には、0.1〜1.6質量%である。予備加熱段階終了時に到達する0.1〜1.6質量%の溶剤含量は、有利な工程パラメータの全範囲で比較的一定であると認められる。前記したような工程終了後、加熱したパンクレアチンを再び普通の周囲条件(例えば室温及び普通の湿気条件)に曝してよい。本明細書に記載した方法により得たパンクレアチン中のウイルス汚染物質の減少は、これらの普通の周囲の条件下で維持されるであろう。それは本明細書に記載したようなウイルス汚染物質はどれも工程条件下で非可逆的に脱活性化されたであろうからである。
【0038】
もう一つの態様では、分散パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に予備加熱し、次いで少なくとも85℃の温度で1〜36時間、更に有利には8〜30時間、更に有利には10〜24時間加熱する。このような方法のもう一つの態様では、分散パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に予備加熱し、次いで少なくとも85℃の温度で1〜36時間、例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間又は36時間加熱し、このような方法のもう一つの態様では、分散パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に予備加熱し、次いで少なくとも85℃の温度で10〜30時間加熱する。
【0039】
もう一つの態様では、パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に、例えば85〜100℃の温度に予備加熱し、次いで85〜100℃の温度で、特に85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃の温度又はこれら所定の整数温度値の間の範囲の温度で加熱する。このような方法のもう一つの態様では、パンクレアチンを少なくとも85℃の温度、例えば85〜95℃に予備加熱し、次いで次いで85〜95℃の温度で、特に85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃の温度又はこれら所定の整数温度値の間の範囲の温度で加熱する。もう一つの態様では、パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に、例えば90〜100℃の温度に予備加熱し、次いで90〜100℃の温度で、特に90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃の温度又はこれら所定の整数温度値の間の範囲の温度で加熱する。この態様の更に有利なもう一つの態様では、パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に、例えば90〜95℃の温度に予備加熱し、次いで90〜95℃の温度で、特に90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃の温度又はこれら所定の整数温度値の間の範囲の温度で加熱する。
【0040】
このような方法のもう一つの態様では、パンクレアチンの得られる溶剤含量は、0.1〜3.5質量%であり、このパンクレアチンを少なくとも85℃の温度に、例えば85〜100℃の温度に予備加熱し、次いで8〜30時間85〜100℃の温度で加熱する。
【0041】
このような方法のもう一つの態様では、パンクレアチンの得られる溶剤含量は、0.1〜3.0質量%であり、パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に、例えば85〜95℃の温度に予備加熱し、次いで10〜30時間85〜95℃の温度で加熱する。
【0042】
このような方法のもう一つの態様では、パンクレアチンの得られる溶剤含量は、0.1〜1.6質量%であり、パンクレアチンを少なくとも85℃の温度に、例えば85〜95℃の温度に予備加熱し、次いで10〜30時間85〜95℃の温度で加熱する。
【0043】
この様な方法の各々単独及び組み合わせた態様を用いて、パンクレアチン中の1種以上の生物汚染物質濃度、特に1種以上のウイルス汚染物質の濃度を、パンクレアチンの活性に実質的な影響を与えることなく、減少させる。態様の一つでは、パンクレアチン中の高耐性ウイルスの濃度、更に有利にはブタパルボウイルスの濃度を減少させる。
【0044】
本明細書に記載の方法により得られるパンクレアチンも開示する。本明細書に記載した方法用に前記した条項は全てこの様な方法により得られるパンクレアチンにも適用可能である。
【0045】
もう一つの態様は、本明細書に記載の方法によるパンクレアチンから成る医薬組成物の製法に関するが、このような医薬組成物は経口投与に好適な剤形である。経口剤形は、即時及び/又は調整放出用であってよく、このような剤形は錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤、顆粒、粉末、懸濁液、乳剤、分散液、カプセル、サシュ並びにその他の剤形であってよい。
【0046】
医薬組成物の製造用のこのような方法の態様の一つでは、パンクレアチン及び/又はその剤形を更に耐胃酸コーティング剤でコーティングする。
【0047】
医薬組成物の製造用のこのような方法のもう一つの態様では、場合により耐胃酸コーティングしたパンクレアチン又はその剤形を更にサシェ及び/又はカプセル中に充填する。
【0048】
本発明書に、(1)薬理学的に有効量のパンクレアチン(その際、このパンクレアチンは1種以上の溶剤を含有する分散パンクレアチンの形で少なくとも85℃の温度に加熱してあり、パンクレアチン中に存在する溶剤の全量は加熱工程のどの時点でも9質量%より少なく、加熱後にパンクレアチン中に存在するウイルス汚染物質の力価レベルは加熱前にパンクレアチン中に存在するウイルス汚染物質の力価レベルより少なくとも1000倍少ない)及び(2)1種以上の製薬的に認容性の賦形剤から成る医薬組成物を記載する。
【0049】
このような医薬組成物の態様の一つでは、パンクレアチンは経口投与に好適な剤形中に存在する。経口剤形は、即時及び/又は調整放出用であってよく、このような剤形は錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤、顆粒、粉末、懸濁液、乳剤、分散液、カプセル、サシュ並びにその他の剤形であってよい。
【0050】
このような医薬組成物のもう一つの態様では、パンクレアチン及び/又は製薬的に認容性の賦形剤を更に耐胃酸コーティング剤でコーティングする。
【0051】
カプセル又はサシェの形の医薬組成物も開示するが、カプセル又はサシェはこの中に記載のパンクレアチンを含む。
【0052】
このような医薬組成物の態様の一つでは、組成物は更に製薬的に認容性の賦形剤を含む。
【0053】
このような医薬組成物のもう一つの態様では、組成物は経口投与に好適な剤形である。経口剤形は、即時及び/又は調整放出用であってよく、このような剤形は錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤、顆粒、粉末、懸濁液、乳剤、分散液、カプセル、サシュ並びにその他の公知剤形であってよい。
【0054】
このような医薬組成物のもう一つの態様では、パンクレアチン及び/又は製薬的に認容性の賦形剤及び/又はその剤形を更に耐胃酸コーティング剤でコーティングする。
【0055】
本明細書に記載の医薬組成物は、製薬的に認容性の賦形剤を含有してよい。前記組成物中に使用するための製薬的に認容性の賦形剤の例は、糖、例えば乳糖、蔗糖、マンニット及びソルビット;澱粉、例えばコーンスターチ、タピオカ澱粉及び馬鈴薯澱粉;セルロース及び誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロース;燐酸カルシウム、例えば燐酸二カルシウム、燐酸三カルシウム;硫酸ナトリウム;硫酸カルシウム;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ステアリン酸;アルカリ土類金属ステアレート、例えばステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム;ステアリン酸;植物油、例えば落花生油、綿実油、胡麻油、オリーブ油及びコーン油;非イオン、陽イオン及び陰イオン界面活性剤;エチレングリコールポリマー;βシクロデキストリン;脂肪族アルコール;及び加水分解シリアルソリッド並びに他の非毒性相溶性増量剤、結合剤、崩壊剤、薬剤、例えば滑石;緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、潤滑剤、風味剤及び医薬処方物で使用するために認容性のその他の賦形剤が挙げられる。
【0056】
通常本発明による医薬組成物は、0.1〜100%、例えば0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%、有利には25〜90%、例えば25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%、更に有利には50〜90%、例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90質量%のパンクレアチン及び、あるとしたら残りの割合の製薬的に認容性の添加剤、賦形剤及び/又は基剤、から成ってよい。
【0057】
態様の一つでは、医薬組成物は(a)50〜90質量%の本明細書に記載の方法により得たパンクレアチン及び(b)10〜50質量%の製薬的に認容性の賦形剤、例えばエチレングリコールポリマー、特にエチレングリコール2000、3000、4000、6000、8000及び/又は10000から成り、成分(a)及び(b)の合計は100質量%である。
【0058】
もう一つの態様では、医薬組成物は(a)55〜85質量%の本明細書に記載の方法により得たパンクレアチン及び(b)5〜35質量%のエチレングリコールポリマー、(c)1.0〜20質量%のプロパン−2−オール及び(d)場合により0〜10質量%のパラフィンから成り、各成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計は100質量%である。パンクレアチンを含むその他の組成物は例えばEP0583726及びEP0826375に開示されている。
【0059】
本明細書に記載の方法は、パンクレアチンに許容できないレベルの障害を生じない少なくとも85℃のどの温度でも実施することができる。本明細書に記載の方法に従って、障害の"許容可能なレベル"は、使用される本明細書に記載の特別な方法の特定の特徴、例えば使用される詳細なパンクレアチンの性質及び特徴及び/又は加熱されるパンクレアチンの予定用途によって変わり、当業者によって経験に基づき決定することができる。従って障害の"許容できないレベル"は、加熱されるパンクレアチンの安全で有効な使用を妨げるであろう障害の程度である。パンクレアチン試料に与える障害の詳細なレベルは、当業者に公知の方法及び技術のいずれかを使用して決めることができる。
【0060】
医薬組成物中で使用する場合に、元の酵素活性の50%以上、有利には70%以上、更に有利には80%以上又は極めて有利には90%以上の加熱後の酵素活性が望ましい。
【0061】
酵素活性減少レベルを最小限にするための条件を確立するために、実験を行った。このような数シリーズの実験で、リーディング酵素としてリパーゼの元来の酵素活性及び残存酵素活性を下記に詳説する特定の実験条件で加熱の前及びその後に測定した。
【0062】
同じ実験シリーズで、その中の生物汚染物質の濃度の減少を測定した。このような実験で、リーディングウイルスとして高耐性ブタパルボウイルスのウイルス力価を下記に詳説する一定の実験条件で加熱の前及びその後に測定した。各実験用にブタパルボウイルススパイクしたブタパンクレアチン試料を使用した。
【0063】
PPVスパイクした試料の標準偏差を含むウイルス力価を、終点滴定し及び次いでドイツの"Bundesanzeiger"No.84、5月4日、1994に記載されているようなSpearman−Kaerber式による50%組織培養感染量(=TCID50)を計算することによって測定した。従って連続one−to−three希釈のアリコートを細胞培養培地を用いて作り、各希釈のアリコートを8倍複製を用いて相応する標的細胞を含む96−ウェル微量滴定プレートに加えた。6〜7日間の培養期間後に、標的細胞をウイルス誘発CPEに関して顕微鏡検査した。ウイルス力価を前記したようにして算出し、96%信頼限界でml当たりのlog10TCID50として表す。ウイルスを不活性化又は除去するための治療能力は対数減少率(LRF)として記載した。このLRFは、ECガイドラインIII/8115/89−EN(現在はCPMP/BWP/268/95)付録IIに従って保持対照試料と加熱処理した試料との間のウイルス力価の差異として計算した。
【0064】
医薬組成物中に使用する場合には、その中の活性生物汚染物質の濃度の減少、特にウィルス汚染物質の濃度の減少が少なくとも3.0、有利には3.5、更に有利には4.0及び極めて有利には4.5又はそれ以上の対数力価減少であることが望ましい。生物製品のウイルス安全に関する当局の勧め(例えばCPMP/BWP/268/95参照)に従って、4.0対数力価減少をもたらしうる方法工程がウイルス不活性化に関して有効であり、従って安全と見なされる。
【0065】
その結果対数力価減少は、基準10(=log10)に対する対数単位でのウイルス濃度の減少を示し、即ち3の対数力価減少はウイルス濃度の1000−9999倍減少であり、4の対数力価減少はウイルス濃度の10000−99999倍減少である。パンクレアチン滅菌法は、本方法の適用によりパンクレアチン中の高耐性ウイルスの十分な減少がもたらされる場合に極めて有効であると言える。
【0066】
最も有効な対数力価減少の条件を確立するために、実験を行った。技術的限界のために現在では4.5〜5.0対数力価のパンクレアチン試料中の生物汚染物質濃度の減少を測定することができるにすぎない(検出限界)。
【0067】
最初のシリーズでは、特定期間及び異なるが一定の温度で加熱後のリパーゼ活性を測定する実験を行った。最初の実験で、1%の溶剤含量で80℃で0、2、4、6、12、15、18、21、24及び30時間加熱後のリパーゼ活性を測定した。2番目の実験で、1%の溶剤含量で85℃で0、6、12、15、18、21、24及び30時間加熱後のリパーゼ活性を測定した。3番目の実験で、1%の溶剤含量で90℃で0、6、12、15、18、21、24及び30時間加熱後のリパーゼ活性を測定した。4番目の実験で、1%の溶剤含量で95℃で0、6、12、15、18、21、24及び30時間加熱後のリパーゼ活性を測定した。5番目の実験で、1%の溶剤含量で100℃で0、6、12、15、18、21及び24時間加熱後のリパーゼ活性を測定した。この第1シリーズの実験結果を第1表に記載し及び図1に図示する。
【0068】
【表1】

第1表;80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃でのパンクレアチンの加熱(溶剤含量1%);第1表に記載のデータは2回の培養からの平均値である;n/a=データーなし;Temp.=温度
【0069】
1%の一定溶剤含量に関する第1表及び図1から明らかなように、リパーゼ活性は所定温度で培養時間が増加するにつれて減少する。更にリパーゼ活性は、所定の培養時間で高い温度でより著しく減少する。医薬組成物中に使用する場合に、30時間以下の時間95℃以下の温度で行った加熱によって、溶剤含量1%で許容可能な残存酵素活性を有するパンクレアチンが得られるということになる。医薬組成物中に使用する場合に、更に、24時間以下の時間100℃以下の温度で行った加熱によって、溶剤含量1%で許容可能な残存酵素活性を有するパンクレアチンが得られるということになる。
【0070】
第2のシリーズでは、3%の溶剤含量でリパーゼ活性を加熱後に測定する二つの実験を行った。最初の実験で、3%の溶剤含量で90℃及び95℃で0、2、4、6、8、15、24及び48時間加熱後のリパーゼ活性を測定した。この第2のシリーズの実験結果を第2表に記載し、図2に図示する。
【0071】
【表2】

第2表;90℃及び95℃でのパンクレアチンの加熱(溶剤含量3%)。
【0072】
3%の一定溶剤含量に関する第2表及び図2から明らかなように、リパーゼ活性は所定温度で培養時間が増加するにつれて減少する。更にリパーゼ活性は、所定の培養時間で高い温度でより著しく減少する。医薬組成物中に使用する場合に、48時間以下の時間90℃以下の温度で行った加熱によって、溶剤含量3%で許容可能な残存酵素活性を有するパンクレアチンが得られるということになる。医薬組成物中に使用する場合に、更に、24時間以下の時間95℃以下の温度で行った乾燥加熱試験によって、溶剤含量3%で許容可能な残存酵素活性を有するパンクレアチンが得られるということになる。
【0073】
第3シリーズの実験で、リパーゼ活性を各々3%、6%、9%及び12%の異なるが一定の溶剤含量で80℃で0.5、1.0及び3.0時間加熱後に測定した。これらの実験結果を第3表に記載し、図3に図示する。
【0074】
【表3】

第3表:80℃で各々3%、6%、9%及び12%の溶剤含量を有するパンクレアチンの熱処理。
【0075】
一定温度であるが、各々3%、6%、9%及び12%の溶剤含量に関する第3表及び図3から明らかなように、リパーゼ活性は80℃で培養時間が増加するにつれて減少する。更にリパーゼ活性は、所定の培養時間で高い溶剤含量でより著しく減少する。医薬組成物中に使用する場合に、3時間以下の時間80℃の温度で行った加熱によって、6%の溶剤含量で許容可能な残存酵素活性を有するパンクレアチンが得られるということになる。医薬組成物中に使用する場合に、更に、1時間以下の時間80℃の温度で行った乾燥加熱試験によって、溶剤含量9%で許容可能な残存酵素活性を有するパンクレアチンが得られるということになる。
【0076】
一連の実験から、酵素が加熱時間延長に敏感であり、高い溶剤含量に敏感であることが実証される。それらの高い元来の活性は、加熱が調整した条件下で、即ち短い期間及び/又は低い温度で及び/又は低い溶剤含量で行われる場合に維持される。態様の一つでは、高い元来の酵素活性は、酵素を低い温度及び低い溶剤含量で短い時間加熱処理する場合に維持される。
【0077】
ブタパルボウイルスの減少を評価するために、6、12、15、18、21、24及び30時間、80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃で加熱後のlog10TCID50を1%の一定溶剤含量で測定した。これらの実試験結果を第4表に記載する。第4表及び下記表で、"より少ない"(≦)として示した滴定量は検出限界を表す。
【0078】
【表4】

第4表;溶剤含量1%で80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃でのPPV−スパイクしたパンクレアチンの加熱;n/a=データーなし;Temp.=温度;h=時間;LTR=Log Titer Reduction
【0079】
パンクレアチン粉末バッチ2から4を、前記第4表及び下記例13に記載したように調製し、85℃で処理した。ブタパルボウイルスの減少を評価するために、6、12、15、18、21、24及び30時間、85℃で加熱後のlog10TCID50を1%の一定溶剤含量で測定した。これらの付加的な実験結果を第4a表に記載する。
【0080】
【表5】

第4a表;溶剤含量1%で85℃でのPPV−スパイクしたパンクレアチンの3種の異なるバッチの加熱。"±"として記載の値は95%信頼区間を表す。""は感染したウイルスが何も検出されなかったことを表す;Temp.=温度;h=時間;LTR=Log Titer Reduction。
【0081】
第5表は、実験開始と比較した対数力価減少を表す。図4は、1%の溶剤含量で80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃で加熱した後のPPV−スパイクしたパンクレアチンの対数力価減少を表す。
【0082】
【表6】

第5表;溶剤含量1%で80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃でのPPV−スパイクしたパンクレアチンの加熱後の対数力価減少;n/a=データなし;Temp.=温度。
【0083】
1%の一定の溶剤含量に関する第4表及び第5表並びに図4から明らかなように、対数力価減少は所定温度で培養時間が増加するにつれて増加する。更に対数力価減少は温度が上昇するにつれてより著しく減少する。医薬組成物中に使用する場合に、30時間以内の期間80℃の温度で行った加熱によって、溶剤含量1%でその中の生物汚染物質の濃度の許容可能な減少を有するパンクレアチンが得られるということになる。12時間及び90℃で行った実験により、1%の溶剤含量でその中の活性生物汚染物質の濃度の減少を有するパンクレアチンが得られる。15時間及び90℃の温度で行った実験によって、1%の溶剤含量でその中の生物汚染物質の濃度の更に大きな減少を有するパンクレアチンが得られる。
【0084】
第4a表から、生物製品のウイルス安全性に対する当局の勧め(例えばCPMP/BWP/268/95参照)が第4a表に記載したようなパラメータを適用する場合に満たされることが明らかである、即ち4.0対数力価減少は工程温度85℃で到達しうる(例えばバッチ2、30時間後のLTR参照)。80℃で処理したその他のバッチを用いる同様の実験から、生物製品のウィルス安全性に対する当局の勧めは満たされないことが実証された、即ち4.0対数力価減少は工程温度85℃で到達することができなかった。
【0085】
もう一つの実験シリーズで、12時間までの間一定温度でかつ各々1%及び3%の異なるが一定の溶剤含量で加熱後のlog10TCID50を測定した。これらの実験結果は第6表に記載する。
【0086】
【表7】

第6表:各々1%及び3%の溶剤含量で90℃及び95℃でPPV−スパイクしたパンクレアチンの加熱。
【0087】
第7表は、最初の量に対するブタパルボウイルスの対数力価減少(第5表に表した結果に関する)を表す。図5は、各々1%及び3%の溶剤含量で90℃及び95℃で加熱後のPPV−スパイクしたパンクレアチンの対数力価減少を図示する。第6及び7表に記載したような結果を生じる実験は、第5表に記載したような結果を生じる試験と比して僅かに異なる条件下で実施した。
【0088】
【表8】

第7表:各々1%及び3%の溶剤含量で90℃及び95℃でPPV−スパイクしたパンクレアチンの加熱の対数力価減少。
【0089】
各々1%及び3%の一定の溶剤含量に関する第6表及び第7表並びに図5から、対数力価減少は所定温度で培養時間が増加するにつれて増加することが明らかである。更に対数力価減少は、1%に対して3%溶剤含量でより著しく増加する。医薬組成物中に使用するために、95℃の温度で少なくとも6時間行った加熱によって、3%の溶剤含量でその中の生物汚染物質の濃度の許容可能な減少を有するパンクレアチンが得られるであろうということになる。医薬組成物中に使用するために、90℃の温度で12時間行った加熱によって、各々1%又は3%の溶剤含量でその中の生物汚染物質の濃度の許容可能な減少を有するパンクレアチンが得られるということになる。
【0090】
この実験シリーズにより、ブタパルボウイルスの濃度を前記条件下で加熱することによって有効に減少することができることが実証される。前記実験から、減少は高い温度及び/又は長い時間及び/又はより高い溶剤含量でより効果的であると結論することができる。態様の一つで、ブタパルボウイルスの濃度はウイルスを好適な温度及び溶剤含量で十分な時間加熱する場合に効果的に減少することができる。
【0091】
ブタパルボウイルスの濃度の減少に関して得られた結果は、酵素に関して実証されたことと対称的である。従って、当業者は、パンクレアチンを滅菌する方法を異なる消化酵素の高いレベルの活性が維持され、同時にその中の1種以上の生物汚染物質、特にウイルスの濃度を許容可能なレベルに減少させるように設計するという難題に直面している。
【0092】
前記実験から、パンクレアチン中のブタパルボウイルスの濃度が試験条件下で減少し、一方リパーゼ活性レベルが医薬組成物中に使用するために許容可能に残存することが明らかである。これらの試験条件は下記のようにまとめることができる:9質量%より少ない溶剤含量で少なくとも85℃の温度で48時間までの時間加熱すること。
【0093】
溶剤含量及び加熱の調節方法は、加熱されるパンクレアチンに有害でない任意の圧力で行ってよい。通常開示した方法は大気圧、減圧又は高めた圧力で行う。好適な圧力は当業者によって経験的に定めることができる。態様の一つでは、方法は大気圧又は減圧で行う。もう一つの態様では方法は大気圧で行う。もう一つの態様によれば、本明細書に記載の方法は滅菌する間真空中で行う。
【0094】
同様に、本明細書に記載の方法によれば、加熱は処理されるパンクレアチンに有害でない任意の雰囲気下で行ってよい。典型的には本明細書に記載の方法は標準雰囲気中で行う。態様の一つによれば、開示した方法は低酸素雰囲気又は不活性雰囲気中で行う。不活性雰囲気を使用する場合には、この雰囲気は有利には窒素又は希ガス、例えばヘリウム又はアルゴン、更に有利には高分子量の希ガス及び最も有利にはアルゴンから成る。本明細書に記載の1種以上の特徴の組合せを使用して、生物汚染物質に対する方法の適切な有効性を維持しながら、本明細書に記載の方法に対する不利な影響を更に最小限にすることができることは高く評価されるであろう。
【0095】
パンクレアチンの溶剤含量は、製剤に対して許容不可能な程度の損傷を生じることなく、1種以上の消化酵素の製剤から溶剤を減少させるために当業者に公知の任意の方法と技術によって減少させることができる。このような方法には、これに限定するものではないが、蒸発、濃縮、遠心分離、ガラス化、溶質の添加、凍結乾燥(アスコルビン酸塩を前もって添加してか又はそれなしに)及び噴霧乾燥が含まれる。
【0096】
パンクレアチンの溶剤含量を減少させるための有利な方法は濃縮であり、これは当業者に公知の任意の方法及び技術により行うことができる。濃縮は、製剤の調整した加熱及び次の不所望な溶剤の蒸発によってか又は減圧による蒸発によって行ってよい。これら二つの方法の穏和な条件下での組合せ、減圧下での低い温度での蒸発を所望の溶剤含量を達成するために使用することもできる。使用する方法と無関係に、生成する製剤は所望の溶剤含量を有する。
【0097】
本明細書に記載の方法は、任意の規模で、1〜1000gの量を有する製剤の実験室規模、1〜50kgの量を有する製剤のパイロット規模及少なくとも100kg、有利には200kg〜1500kgの量を有する製剤の製造規模で行うことができる。
【0098】
実施例
次に実施例に付き本発明を詳説するが、本発明はこれに限定するものではない。その他の好適な変形及び変更は、当業者が通常経験するものであり、請求の範囲に記載されている発明の精神及び範囲内である。
【0099】
酵素活性の測定
リパーゼ活性の測定は、Ph.Eur.(Pancreas Powder、European Pharmacopoeia 5.0、2179−2182;01/2005:0350)中の膵臓粉末の専門論文に準拠するSolvay試験法により行った。
【0100】
溶剤含量の測定
本明細書に記載の水に関する溶剤含量は、FDAにより容認された修正カールフィッシャー法(Meyer and Boyd、Analytical Chem.、31:215−219、1959;May、その他、J.Biol. Standardization、10:249−259、1982;Centers for Biologics Evaluation and Research、FDA、Docket No.89D−0140、83−93;1990)により測定したレベルに関する。その他の溶剤の含量の定量は、どの溶剤を使用するかに応じて当業者に公知の方法により測定することができる。更に、これも本発明の開示に含まれるが、本明細書に開示した方法の間又はその後のパンクレアチン中の溶剤含量を測定するために好適なその他の方法は、例えば、熱重量分析(赤外線乾燥及びマイクロ波乾燥を含む)、分光法(赤外線スペクトロスコピー、マイクロ波スペクトロスコピー及び核磁気共鳴スペクトロスコピーを含む)、伝導度分析法、デカメートル法又は熱伝導である。通常、パンクレアチン中の溶剤含量を測定するための有利な方法は熱重量分析(例えば"乾燥時損失"の測定)である。それはこの方法が例えば水及び酵素親和性有機溶剤、例えばイソプロパノールを含むパンクレアチン中に存在しうる全ての液体をカバーしうるからである。熱重量分析は特にパンクレアチン中の9質量%−3.5質量%の溶剤含量を測定するために好適である。パンクレアチン中でこれより低い溶剤含量を測定すべきである場合には、例えば3.5%より低い溶剤含量、更に例えば3%より少ない、もっと更には1.6質量%より少ない溶剤含量を測定すべきである場合には、パンクレアチンの溶剤含量中に存在する水の割合はパンクレアチン中に存在する酵素親和性有機溶剤の割合より重い。従って、3.5%より低い溶剤含量、更に例えば3%より少ない、もっと更には1.6質量%より少ない溶剤含量はより鋭敏なKarl Fischer法又はその修正法を使用して測定するのが有利であろう。工業用のバッチの大きさ及び連続測定用には、特に3.5%より低い溶剤含量、更に例えば3%より少ない、もっと更には1.6質量%より少ない溶剤含量を測定すべきである場合、例えば予備加熱の加熱工程の定常状態では、溶剤含量の赤外線分光測定が有利である。当業者に公知である近赤外線スペクトロスコピー測定法(NIR)が有利である。赤外線スペクトロスコピー法は典型的にはカールフィッシャー水滴定法又はその修正法であってよい、レファレンス法に対して標準化する必要があろう。前記で概説したような理由でパンクレアチン中の全溶剤含量を測定する最も有利な方法は、熱重量分析法(即ちパンクレアチン中の乾燥に際しての損失の測定、特に比較的高い溶剤含量を有するパンクレアチン用)とカールフィッシャー法又はその修正法(即ちパンクレアチン中の残存水含量の測定、特に比較的低い溶剤含量を有するパンクレアチン用)の組合せである。
【0101】
ブタパルボウイルス減少の測定
処理した試料内のウイルス滴定はウイルス終点滴定により測定し、Bundesanzeiger No.84、May4 1994に記載されているようにTCID50をSpearman−Kaerber式により算出した。ディテクターPk−13−細胞(ブタ腎臓)との不相溶性を回避するために、試験物質を各場合に滴定前に3対数力価(例えば1:20000)で希釈した。ウイルスを不活性化又は除去する処理能力は、対数減少率によって記載した。ある程度試験物質自体の特性に由来するであろう培養期間中の感染性の必須減少と無関係に、ウイルス力価の減少を評価することができるように、保持試料を採取した。試料の対数力価減少(LTR)を保持試料と終点試料間ののウイルス力価の差(log10 TCID50/ml)としてECガイドラインIII/8115/89−EN、付録II(現在のCPMP/BWP/268/95)により計算した。
【0102】
加熱
実験室規模用に、加熱は乾燥炉(例えばMemmert社、ULE400)又は水浴(例えばBuechiB−480)付き回転蒸発器(例えばBuechi社、R−144)で行った。パイロット規模では、真空乾燥機(会社:Hosokawa、Vrieco−Nauta(R)、容量120L)を使用した。製造規模では真空乾燥機(会社:Hosokawa、Vrieco−Nauta(R)、容量4000L)を使用した。
【0103】
標準化したパンクレアチン粉末の製造
湿ったパンクレアチン(最初の溶剤含量40〜50%)50kg〜1000kgを真空乾燥機中で連続的に攪拌しながら乾燥させた。温度を60℃から95℃に段階的に上昇させた。次いで乾燥を少なくとも70℃で<3.5%の溶剤含量に達するまで行った。各々6%、9%又は12質量%の溶剤含量のパンクレアチン粉末試料を得るために、試料を公知方法で乾燥工程の間に適切な早い時点で採取した。
(a)標準化したパンクレアチン粉末の実験室規模での製造用の更なる工程には下記が含まれる:下記実験の開始要求条件(下記例1から11)に応じて、所望温度で各々1質量%又は3質量%の溶剤含量に達するまで加熱すること。
【0104】
各々6質量%、9質量%又は12質量%の溶剤含量を有する標準化パンクレアチン粉末のもう一つの製造用に、適切な量の溶剤、例えば水、プロパン−2−オール又はその混合物を溶剤含量3.5質量%を有するパンクレアチン粉末に加え、得られた湿ったパンクレアチン試料を必要により均質化して、所望の溶剤含量を有する試料が得られる。
(b)パイロット規模及び製造規模で標準化パンクレアチン粉末の製造用のその他の工程には下記が含まれる:下記実験の開始要求条件(下記例1から11)に応じて、所望温度で1質量%の溶剤含量及び80℃〜100℃の生成物温度に達するまで加熱すること。
【0105】
ブタパルボウイルス試験用のパンクレアチンの更なる処理:
科学及び薬理学界で一般に容認された原理に従って、原理の証明を確立するためにパンクレアチンを添加ブタパルボウイルスでスパイクした。スパイクはガイドラインCPMP/BWP/268/95に従って行った。
【0106】
パンクレアチンに製造工程の標準乾燥(前記参照)を実施後、パンクレアチン粉末を冷却し、水に再懸濁させた(パンクレアチン粉末内にスパイクしたウイルスの均質な分布が得られるように40%懸濁液を生成)。次いでパンクレアチンを比9:1(パンクレアチン懸濁液:ウイルス懸濁液)で細胞培養培地で高濃縮ブタパルボウイルス懸濁液を用いてスパイクした。次いで生成した懸濁液を凍結乾燥させ、次いで下記実験(下記例12から20)の開始要求条件に応じて、各々1質量%及び3質量%の溶剤含量に達するまで80℃〜100℃の温度で加熱した。
【0107】
例1
溶剤含量1%を有する標準化パンクレアチン48kgを次いで80℃に30時間加熱した。リパーゼ活性を0、2、4、6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第1表及び図1に記載する。
【0108】
例2
溶剤含量1%を有する標準化パンクレアチン48kgを次いで85℃に30時間加熱した。リパーゼ活性を0、6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第1表及び図1に記載する。
【0109】
例3
溶剤含量1%を有する標準化パンクレアチン48kgを次いで90℃に30時間加熱した。リパーゼ活性を0、6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第1表及び図1に記載する。
【0110】
例4
溶剤含量1%を有する標準化パンクレアチン48kgを次いで95℃に30時間加熱した。リパーゼ活性を0、6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第1表及び図1に記載する。
【0111】
例5
溶剤含量1%を有する標準化パンクレアチン48kgを次いで100℃に30時間加熱した。リパーゼ活性を0、6、12、15、18、21及び24時間後に測定した。この実験結果は第1表及び図1に記載する。
【0112】
例6
溶剤含量3%を有する標準化パンクレアチン1.5gを次いで90℃に48時間加熱した。リパーゼ活性を0、2、4、8、6、15、24及び48時間後に測定した。この実験結果は第2表及び図2に記載する。
【0113】
例7
溶剤含量3%を有する標準化パンクレアチン1.5gを次いで95℃に48時間加熱した。リパーゼ活性を0、2、4、8、6、15、24及び48時間後に測定した。この実験結果は第2表及び図2に記載する。
【0114】
例8
溶剤含量3%を有する標準化パンクレアチン1.5gを次いで80℃に3.0時間加熱した。リパーゼ活性を0.5、1.0及び3.0時間後に測定した。この実験結果は第3表及び図3に記載する。
【0115】
例9
溶剤含量6%を有する標準化パンクレアチン1.5gを次いで80℃に3.0時間加熱した。リパーゼ活性を0.5、1.0及び3.0時間後に測定した。この実験結果は第3表及び図3に記載する。
【0116】
例10
溶剤含量9%を有する標準化パンクレアチン1.5gを次いで80℃に3.0時間加熱した。リパーゼ活性を0.5、1.0及び3.0時間後に測定した。この実験結果は第3表及び図3に記載する。
【0117】
例11
溶剤含量12%を有する標準化パンクレアチン1.5gを次いで80℃に3.0時間加熱した。リパーゼ活性を0.5、1.0及び3.0時間後に測定した。この実験結果は第3表及び図3に記載する。
【0118】
例12
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで80℃に30時間加熱した。ウイルス濃度を6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第4及び5表並びに図4に記載する。
【0119】
例13
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで85℃に30時間加熱した。ウイルス濃度を6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第4、4a及び5表並びに図4に記載する。
【0120】
例14
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで90℃に30時間加熱した。ウイルス濃度を6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第4及び5表並びに図4に記載する。
【0121】
例15
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで95℃に30時間加熱した。ウイルス濃度を6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第4及び5表並びに図4に記載する。
【0122】
例16
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで100℃に30時間加熱した。ウイルス濃度を6、12、15、18、21、24及び30時間後に測定した。この実験結果は第4及び5表並びに図4に記載する。
【0123】
例17
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで90℃に12時間加熱した。ウイルス濃度を3、6及び12時間後に測定した。この実験結果は第6及び7表並びに図5に記載する。
【0124】
例18
溶剤含量3%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで90℃に12時間加熱した。ウイルス濃度を3、6及び12時間後に測定した。この実験結果は第6及び7表並びに図5に記載する。
【0125】
例19
溶剤含量1%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで95℃に12時間加熱した。ウイルス濃度を3、6及び12時間後に測定した。この実験結果は第6及び7表並びに図5に記載する。
【0126】
例20
溶剤含量3%を有するブタパルボウイルス−スパイクしたパンクレアチン1.5gを次いで95℃に12時間加熱した。ウイルス濃度を3、6及び12時間後に測定した。この実験結果は第6及び7表並びに図5に記載する。
【0127】
例21−パンクレアチンから成る医薬組成物:
本明細書に記載の方法により得たパンクレアチンから成る組成物は、下記のようにして得られる:例2の方法により得たパンクレアチン10kgをエチレングリコール4000 2.5kg及びプロパン−2−オール1.5kgと混合して混合物にし、次いで公知方法で押出成形機で押出成形した。パンクレアチンマイクロペレットはEP0583726に記載したようにして製造し、更にカプセル又はサシェに詰めることができる。
【0128】
例22
例21により得たパンクレアチンマイクロペレットコアに耐胃酸コーティングを施すことができる。例えばパンクレアチンマイクロペレットコアを耐胃酸被膜形成剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(=HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(=HPMCP)、セルロースアセテートフタレート(=CAP)又はポリビニルアセテートフタレート(=PVAP)でコーティングすることができる。被膜形成剤として公知のコポリマー、例えばメタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマー又はメタクリル酸/エチルアクリレートコポリマーを使用することもできる。被膜形成剤をパンクレアチンマイクロペレットコアに、種々のフィルムコーティング機、例えばコーターを使用して通用の形、例えば有機溶液又は有機又は水性分散液として、場合により慣用の可塑剤を添加して、塗布することができる。得られる耐酸性フィルムコーティングしたパンクレアチンマイクロペレットは、例えば0.6g/ml〜0.85g/mlの範囲の高い嵩密度を特徴とし、それによってカプセル当たりの充填量、従って各カプセルの活性成分含量を増加させることができる。耐胃酸フィルムコーティングパンクレアチンマイクロペレットの製法に関する更なる実験に基づく詳細は、EP0583726に記載されている。
【0129】
本明細書に引用した刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参照は、各参照が個々及び詳細に参照までに含まれると指示され、詳述されている場合には、参照までに本明細書に組み込まれる。
【0130】
個々の数値の使用は、値の前に"約"又は"おおよそ"という言葉を付けたように、近似値として記載してある。同じく本出願で明細書に記載した種々の範囲の数値は、他に記載のない限り、記載範囲内の最小及び最高値の両方の前に"約"又は"おおよそ"という言葉を付けたように、近似値として記載してある。このように、記載範囲の上下の変動は範囲内の値と実質的に同じ結果を得るために使用することができる。本明細書に使用したように、用語"約"及び"おおよそ"は数値に関する場合に、特別な主題が極めて密接に関係する業界又は問題の範囲又は要素に関係する業界の平均的専門家にとって平明かつ通常の意味を有するものである。厳密な数境界から拡大する量は多数の要因に左右される。例えば考慮される要因には、所定量の変更が特許請求主題の実行に対して有しうる要素及び/又は効果の臨界、並びに当業者に公知であるその他の考慮すべき事柄が含まれる。本明細書で使用したように、異なる数値の有効数値の相違量の使用は、用語"約"又は"おおよそ"が特別な数値を拡大するために役立ちうる程度を制限するものではない。従って、一般問題として、"約"又は"おおよそ"は数値を拡大する。同じく、範囲の開示は、最小値と最大値の間の値+用語"約"又は"おおよそ"の使用によって与えられる拡大範囲を含む連続的範囲を意味する。従って本明細書中の値の範囲の記載は、他に記載のない限り、範囲内の各別々の値に関する略記として役立ち、各別々の値が明細書に組み込まれることを意図する。
【0131】
句"発明"又は"本発明"の使用は、どんな場合でも請求事項を制限することを意味するものではなく、句"発明"又は"本発明"の特別な使用に関連する記載又は意見をどの請求項にも適用するものであると結論してはならない。句"発明"又は"本発明"の使用は、単に言語学的又は文法的な便宜上使用したにすぎず、どの請求事項に対しても何らかの制限を課するものではない。
【0132】
特許請求した発明の変更態様は、特許請求した発明を実施するために発明者に公知の最良の方法を含めて、本明細書に記載してある。これらの中で、開示した態様の変形例は、当業者にとって前記開示を読むと明らかになるであろう。発明者は当業者がこのような変形例を適宜使用すると期待し、特許請求した発明が本明細書に詳説したものとは別な風に実施されると意図する。従って、特許請求した発明には、適用可能な法律によって許可されているようにこの文書に添付した請求事項中に挙げた主題の変更態様及び同等例全てが含まれる。更に、その全ての可能な変形方法中の前記要素の組合せは、本明細書で他に指示してないか又は文脈によって明らかに相反していない限り、いずれも特許請求した発明に含まれる。
【0133】
明確に詳述してはあるが、本明細書に開示したデータのどれかによって生じるか又はそれから誘導される範囲、比及び比の範囲はどれも本開示のもう一つの態様を表し、開示の一部として含まれる。これは、限定されている上及び/又は下の限界を含むか又は含まない形成されうる範囲を含む。従って、特別な範囲、比又は比の範囲に極めて密接に関与する業界の一般的専門家は、このような値が本明細書に表したデータから明らかに導きだせると解するであろう。
【0134】
本開示の文脈中(特に下記請求事項の文脈中)で用語"a"及び"an"及び"the"及び類似指示語の使用は、本明細書で他に指示してないか又は文脈によって明らかに相反していない限り、単数及び複数の両方をカバーするものと解する。本明細書に記載の方法は全て、本明細書で他に指示してないか又は文脈によって明らかに相反していない限り、どの好適な順序で実施してもよい。全ての例又は例示的用語(例えば、有利な、有利には)は、単に開示内容を更に明解にするためのものであり、特許請求の範囲に制限を設けるものではない。明細書中の言葉は、非請求要素を特許請求された発明の実施に絶対的であると示していると解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】溶剤含量1%でパンクレアチンを80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃の温度で加熱後のリパーゼ活性。
【図2】溶剤含量3%でパンクレアチンを90℃及び95℃の温度で加熱後のリパーゼ活性。
【図3】溶剤含量3%、6%、9%及び12%でパンクレアチンを80℃の温度で加熱後のリパーゼ活性。
【図4】溶剤含量1%で80℃、85℃、90℃、95℃及び100℃の温度でブタパルボウイルスをスパイクしたブタパンクレアチン(以下で"PPV−スパイクパンクレアチン"と称する)の対数力価減少。
【図5】溶剤含量1%及び3%で12時間90℃及び95℃の温度でPPV−スパイクパンクレアチンの対数力価減少。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の溶剤を含有するパンクレアチンの分散形を少なくとも85℃の温度で加熱し、この加熱工程の間の任意の時点で9質量%より少ないパンクレアチンの分散形中の全溶剤含分を得ることを含む、パンクレアチンの製法。
請求項1に記載の方法において、
(a)1種以上の溶剤を含有するパンクレアチンの分散形を少なくとも85℃の温度に予備加熱する工程と、
(b)パンクレアチンの分散形の加熱を少なくとも85℃の温度で48時間までの間続け、方法工程(b)の間の任意の時点で9質量%より少ないパンクレアチンの分散形中の全溶剤含分を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
得られた溶剤含量が3.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項3】
得られた溶剤含量が0.1〜3.5質量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程(b)のパンクレアチンの加熱が1時間から36時間の間である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
方法工程(b)のパンクレアチンの加熱が8時間から30時間の間である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
温度が85℃〜100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
方法工程(a)の温度及び方法工程(b)の温度が両方とも85℃〜100℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
温度が85℃〜95℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
方法工程(a)の温度及び方法工程(b)の温度が両方とも85℃〜95℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
加熱を連続的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
加熱を不連続的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
方法工程(b)の加熱を連続的に行う、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
方法工程(b)の加熱を不連続的に行う、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
加熱後の分散したパンクレアチン中に存在する任意のウイルス汚染物質の力価レベルが加熱前の分散したパンクレアチン中に存在する前記のウイルス汚染物質の力価レベルより少なくとも1000倍少ない、有利には10000倍より少ない、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
加熱の間のパンクレアチンの分散形中の得られた溶剤含量を、熱重量分析法及び/又はカールフィッシャー水滴定法により行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
パンクレアチンの分散形を粉末、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤及び顆粒から選択する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
パンクレアチンの分散形が粉末である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
加熱後のパンクレアチンリパーゼ活性が加熱前のリパーゼ活性の少なくとも50%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法により得られる、パンクレアチン。
【請求項20】
薬理学的に有効量の請求項19に記載のパンクレアチン及び1種以上の製薬的に認容性の賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項21】
パンクレアチンが、経口投与及び即時及び調整放出に好適な剤形であり、この剤形を錠剤、マイクロタブレット、ペレット、マイクロペレット、ミクロスフィア、粒剤、顆粒、粉末、懸濁液、乳剤、分散液、カプセル及びサシュから選択する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
パンクレアチンが耐胃酸コーティングでコーティングしてある剤形中に存在する、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
カプセル又はサシェの形である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
組成物が、経口投与及び即時及び調整放出に好適である剤形で存在する、請求項21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
(a)請求項19に記載のパンクレアチン50〜90質量%及び(b)製薬的に認容性の賦形剤10〜50質量%を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−502876(P2009−502876A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523364(P2008−523364)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064717
【国際公開番号】WO2007/014896
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(391027619)ゾルファイ ファーマスーティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (46)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Pharmaceuticals GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20, D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】