説明

滅菌装置、滅菌方法、プログラム

【課題】ユーザに滅菌剤を触れさせないようにするために、滅菌装置から、滅菌剤が残ったカートリッジを取り出すことが出来ないようにすると共に、滅菌剤の廃棄コストを低減させること。
【解決手段】過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置であって、カートリッジが滅菌装置に取り付けられている場合に、カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックし、滅菌処理を行うことにより、カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄し、カートリッジの中の過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、カートリッジを取り出すことができるように、ロックによるロックを解除することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌装置、滅菌方法、プログラムに関する。特に、滅菌装置から、滅菌剤が残ったカートリッジを取り出すことが出来ないようにすると共に、滅菌剤の廃棄コストを低減させる滅菌装置、滅菌方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
注射器や手術道具などの医療器具は、使用後に滅菌しなければ病原菌が付着していることがあり、人体に悪影響を及ぼすおそれがあるため再使用することができない。そのため、医療器具等の滅菌が必要な対象物を滅菌処理する滅菌装置がある。
【0003】
この滅菌装置の1つに、滅菌剤として過酸化水素を用いて対象物を滅菌する滅菌装置と滅菌方法とが提案されている(たとえば特許文献1)。
【特許文献1】特表平08−505787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、滅菌処理を複数回行える量の滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素水溶液)が入ったカートリッジから、1回分の滅菌処理を行う量の滅菌剤を吸い取り、被滅菌対象物に対して滅菌処理を行う滅菌装置において、1回目の滅菌処理と、2回目の滅菌処理とを行う間に、カートリッジに残った滅菌剤をユーザが取り出したりすると、残っている滅菌剤が滅菌装置の外に出てしまい、ユーザが滅菌剤を扱うことが出来てしまう。そのため、その滅菌剤の取り扱いの知識が無いユーザが滅菌剤を滅菌装置から取り出してしまうおそれがある。
【0005】
また、カートリッジの中に、1回分の滅菌処理を行う量の滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素水溶液)は残っていないが、少量の滅菌剤が残っている場合、カートリッジの中に残っている滅菌剤を廃棄しなければならない。そのため、例えば、滅菌剤が過酸化水素水溶液である場合、過酸化水素は劇物に指定されている薬品であるため、その廃棄業者に廃棄を依頼しなければならず、その廃棄コストがかかってしまう。
【0006】
また、カートリッジ中の滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素水溶液)は、カートリッジの製造後、時間の経過と共に自然に分解されてしまい、ある程度の期間を経過した滅菌剤を用いた場合、十分な滅菌効果を得られないことがある。
【0007】
また、カートリッジ中の滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素水溶液)の使用を開始すると、過酸化水素を分解する成分が混入する等してしまい、カートリッジの使用を開始してから、ある程度の期間を経過した滅菌剤を用いた場合、十分な滅菌効果を得られないことがある。
【0008】
本発明の目的は、ユーザに滅菌剤を触れさせないようにするために、滅菌装置から、滅菌剤が残ったカートリッジを取り出すことが出来ないようにすると共に、滅菌剤の廃棄コストを低減させることができる仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置であって、前記カートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌手段と、前記カートリッジが前記滅菌装置に取り付けられている場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックするロック手段と、前記滅菌手段による滅菌処理を行うことにより、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段と、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、前記カートリッジを取り出すことができるように、前記ロック手段によるロックを解除する解除手段と、を備えることを特徴とする滅菌装置。
【0010】
また、本発明は、過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置における滅菌方法であって、前記滅菌装置の滅菌手段が、前記カートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌工程と、前記滅菌装置のロック手段が、前記カートリッジが前記滅菌装置に取り付けられている場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックするロック工程と、前記滅菌装置の廃棄手段が、前記滅菌工程による滅菌処理を行うことにより、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄工程と、前記滅菌装置の解除手段が、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、前記カートリッジを取り出すことができるように、前記ロック工程によるロックを解除する解除工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置で読み取り実行可能なプログラムあって、前記滅菌装置を、前記カートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌手段と、前記カートリッジが前記滅菌装置に取り付けられている場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックするロック手段と、前記滅菌手段による滅菌処理を行うことにより、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段と、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、前記カートリッジを取り出すことができるように、前記ロック手段によるロックを解除する解除手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明により、ユーザに滅菌剤を触れさせないようにするために、滅菌装置から、滅菌剤が残ったカートリッジを取り出すことが出来ないようにすると共に、滅菌剤の廃棄コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る滅菌装置の外観を正面から見た図である。
【図2】本発明に係る滅菌装置のハードウエアの構成の一例を示す図である。
【図3】滅菌装置100の表示部102に表示される画面の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る滅菌装置による滅菌処理の各工程の一例を示す図である。
【図5】図4のS111に示す滅菌処理の詳細処理の一例を示す図である。
【図6】図5のS501に示す滅菌前工程の詳細処理の一例を示す図である。
【図7】図5のS502に示す滅菌工程の詳細処理の一例を示す図である。
【図8】図5のS503に示す換気工程の詳細処理の一例を示す図である。
【図9】図4のS114に示す滅菌排出処理の詳細処理の一例を示す図である。
【図10】本発明に係る滅菌装置100の濃縮炉208、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227のハードウエア構成に係るブロック構成図の一例を示す図である。
【図11】滅菌装置100の表示部102に表示されるカートリッジ取付要求画面1101の一例を示す図である。
【図12】本発明に係る滅菌装置100に用いられる滅菌剤が入ったカートリッジ205を横側から見た図である。
【図13】注射針がカートリッジに刺された場合の断面1の断面図と、注射針がカートリッジに刺されていない場合の断面1の断面図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を用いて、本発明の滅菌装置、及び滅菌方法について、説明する。
<図1の説明>
まず、図1を用いて、本発明に係る滅菌装置の外観について説明する。
図1は、本発明に係る滅菌装置の外観を正面から見た図である。
【0015】
100は、本発明に係る滅菌措置であり、101は、カートリッジ取付用扉であり、102は、表示部であり、103は、印刷部103であり、104は、滅菌室の扉である。
【0016】
カートリッジ取付用扉101は、滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素溶液の液体)が充填された容器であるカートリッジを取り付けるための扉である。カートリッジ取付用扉101を開くと、カートリッジの取り付け場所があり、ユーザは、そこにカートリッジを取り付けることができるようになる。
表示部102は、液晶ディスプレイなどのタッチパネルの表示画面である。
【0017】
印刷部103は、滅菌処理の履歴や印刷結果を印刷用紙に印刷するプリンタであり、適宜、滅菌処理の履歴や印刷結果を印刷用紙に印刷する。
【0018】
滅菌室の扉104は、例えば医療用器具などの被滅菌対象物(被滅菌物)を滅菌するために、該被滅菌物を滅菌室に入れるための扉である。滅菌室の扉104を開くと、滅菌室があり、そこに該被滅菌物を入れて、滅菌室の扉104を閉じることで、滅菌室内に被滅菌対象物を入れることができる。
【0019】
滅菌室は、所定の容量の筐体である。滅菌室内の圧力は大気圧から真空圧までの圧力を維持することが可能である。また、滅菌室内の温度は、滅菌処理中において、所定の範囲の温度に維持されている。
<図2の説明>
次に、図2を用いて、本発明に係る滅菌装置100のハードウエアの構成の一例について説明する。
図2は、本発明に係る滅菌装置100のハードウエアの構成の一例を示す図である。
【0020】
本発明に係る滅菌装置100は、演算処理部(MPU等)201と、表示部102と、印刷部103と、ロック動作制御部202と、抽出針動作制御部203と、滅菌室の扉104と、液センサ204と、カートリッジ205と、RF−IDリーダ/ライタ206と、液送ロータリーポンプ207と、濃縮炉208と、気送加圧ポンプ209と、吸気用HEPAフィルタ210と、弁(V1)211と、弁(V3)212と、弁(V4)213と、計量管214と、弁(V2)215と、気化炉216と、弁(V5)217と、弁(V9)227と、弁(V7)226と、滅菌室(真空チャンバーとも言う)219と、気送真空ポンプ220と、排気用HEPAフィルタ221と、滅菌剤分解装置222とから構成されている。
【0021】
図2に示すように、液センサ204、カートリッジ205、RF−IDリーダ/ライタ206、液送ロータリーポンプ207、濃縮炉208、気送加圧ポンプ209、吸気用HEPAフィルタ210、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213と、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227、弁(V7)226、滅菌室(真空チャンバーとも言う)219、気送真空ポンプ220、排気用HEPAフィルタ221、滅菌剤分解装置222のそれぞれが繋がっている線は、導管を示している。この導管は、酸化し難い素材であるステンレスから構成されている。
【0022】
演算処理部(MPU等)201は、演算処理を行い、滅菌装置100を構成する各ハードウエアを制御する。
【0023】
表示部102、印刷部103、滅菌室の扉104は、既に図1を用いて説明しているため、ここでは説明を省略する。
【0024】
ロック動作制御部202は、カートリッジ取付用扉101の施錠、開錠の動作を行う部であり、カートリッジ取付用扉101を施錠することにより、カートリッジ取付用扉101を開かないようにし、また、カートリッジ取付用扉101を開錠することにより、カートリッジ取付用扉101を開けることができるようにする。
【0025】
カートリッジ205は、滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素溶液の液体)が充填され、密閉された容器である。また、カートリッジ205の下側にはRF−IDの記憶媒体を備えており、その記憶媒体には、該カートリッジを識別する情報としてのシリアル番号と、該カートリッジの製造年月日、該カートリッジが初めて滅菌装置で使用された日時(初回使用日時)、該カートリッジ内に充填されている滅菌剤の残量が記憶されている。
【0026】
抽出針動作制御部203は、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺すために、当該抽出針を動作する部である。
【0027】
すなわち、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺す場合は、抽出針(注射針)をカートリッジに向けて、該カートリッジの上部から降ろすように動作することで、抽出針(注射針)をカートリッジの上部から刺すことができる。また、抽出針(注射針)をカートリッジから抜く場合は、該カートリッジの上部に抽出針(注射針)を上げるように動作することで、抽出針(注射針)をカートリッジから抜くことができる(図13を参照)。
【0028】
液センサ204は、カートリッジ205内の液体の滅菌剤が、抽出針(注射針)から液送ロータリーポンプ207に導通している管(導管)を通っているかを検出する装置である。具体的には、該管に赤外線を照射して得られるスペクトルから滅菌剤が該管を通っているかを検出することができる。
【0029】
RF−IDリーダ/ライタ206は、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF−IDから、シリアル番号、製造年月、初回使用日時、滅菌剤の残量を読み取ることができる装置である。また、RF−IDリーダ/ライタ206から、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF−IDに、初回使用日時、滅菌剤の残量を書き込むことができる装置である。また、RF−IDリーダ/ライタ206は、カートリッジ取付用扉101の裏にあるカートリッジの取り付け場所の下部に設置されており、カートリッジ205の下側に備え付けられているRF−IDを読み取ること、及び初回使用日時、滅菌剤の残量等のデータをRF−IDに書き込むことが可能である。
【0030】
液送ロータリーポンプ207は、濃縮炉208と導管により導通しており、また、液センサ204と導管により導通している。液送ロータリーポンプ207は、カートリッジ205内の液体の滅菌剤をポンプにより吸引して、導管を通して滅菌剤を濃縮炉208に送る装置である。また、液送ロータリーポンプ207は、液センサ204と連携して、カートリッジ205から、滅菌剤の所定量を吸引することができる。
【0031】
濃縮炉208は、液送ロータリーポンプ207と、気送加圧ポンプ209と、計量管214と、排気用HEPAフィルタ221と、それぞれ導管により導通している。濃縮炉208は、後述する図10でも説明するが、液送ロータリーポンプ207から導管を通じて送り込まれた滅菌剤を、ヒーターを用いて加熱し、滅菌剤に含まれる水分などを蒸発(気化)させ滅菌剤を濃縮する。また、気化した水は、気送加圧ポンプ209から導管を通して送り込まれる空気により、排気用HEPAフィルタ221に導通している導管に押し出され、濃縮炉208内から排気される。また、計量管214と濃縮炉208との間の導管の間には弁(1)211が設けられている。
【0032】
気送加圧ポンプ209は、それぞれ、濃縮炉208と、吸気用HEPAフィルタ210と、導管により導通している。気送加圧ポンプ209は、滅菌装置100の外気(空気)を、吸気用HEPAフィルタ210を介して、吸気用HEPAフィルタ210との導管により導通して濃縮炉208に送る装置である。
【0033】
吸気用HEPAフィルタ210は、それぞれ、気送加圧ポンプ209と、滅菌室219と、気化炉216と、導管により導通している。吸気用HEPAフィルタ210は、滅菌装置100の外の外気(空気)中のちりやほこり、雑菌などを、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタでフィルタリングして空気を清浄する。そして、その清浄された空気は、気送加圧ポンプ209により導管を通して濃縮炉208に送られる。また、清浄された空気は、気化炉216との導管により導通して気化炉216に送り込まれたり、滅菌室219との導管により導通して滅菌室219に送り込まれる。すなわち、吸気用HEPAフィルタ210は、滅菌装置100の外の外気(空気)と導通している。そのため、気送加圧ポンプ209と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管と、滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管と、気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管は、吸気用HEPAフィルタ210を介して、外気(空気)と導通している。
【0034】
また、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216との間の導管には、弁(V9)227が設けられている。また、吸気用HEPAフィルタ210と滅菌室219との間の導管には、弁(V7)226が設けられている。
【0035】
弁(V1)211は、濃縮炉208と計量管214との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで濃縮炉208と計量管214との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで濃縮炉208と計量管214との間の導管による導通を不可能にする弁である。
【0036】
弁(V3)212は、計量管214と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を不可能にする弁である。また、この弁は、計量管214の近くに設けられており、少なくとも後述する弁(V4)よりも計量管214側の位置に設けられている。
【0037】
弁(V4)213は、計量管214と滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで計量管214と滅菌室219との間の導管による導通を不可能にする弁である。また、この弁は、滅菌室219の近くに設けられており、少なくとも後述する弁(V3)よりも滅菌室219側の位置に設けられている。
【0038】
本実施例では、弁(V4)213、弁(V3)214の開け閉めにより、計量管と滅菌室との間の導管の導通を可能にするか、不可能にするかを行っているが、弁(V4)213、弁(V3)214のどちらか一方の弁の開け閉めにより、計量管と滅菌室との間の導管の導通を可能にするか、不可能にするかを行うようにしてもよい。
【0039】
計量管214は、濃縮炉208と、気化炉216と、滅菌室219のそれぞれとの間の導管により導通している。
【0040】
計量管214は、弁(V1)211を開くことにより、濃縮炉208から滅菌剤が流入し、弁(V3)212、及び弁(V4)213を開くことにより、カートリッジ205内から吸入した不要な空気、及び/又は濃縮炉208内から流入した不要な空気を、計量管214により取り除く装置である。計量管214の詳細については、図10を用いて、後で説明する。
【0041】
弁(V2)215は、計量管214と、気化炉216との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで計量管214と気化炉216との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで計量管214と気化炉216との間の導管による導通を不可能にする弁である。
【0042】
気化炉216は、計量管214と、吸気用HEPAフィルタ210と、滅菌室219とのそれぞれとの間の導管により導通している。気化炉216は、本発明の気化室の適用例である。
気化炉216は、気送真空ポンプ220により減圧されることで、滅菌剤を気化させる装置である。
【0043】
弁(V5)217は、気化炉216と、滅菌室219との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで気化炉216と滅菌室219との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで気化炉216と滅菌室219との間の導管による導通を不可能にする弁である。
【0044】
弁(V9)227は、気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで気化炉216と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を不可能にする弁である。すなわち、弁(V9)227は、気化炉216と外気(大気)との導通を開閉できる弁である。
【0045】
弁(V7)226は、滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管に設けられた弁であって、弁を開けることで滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を可能にし、弁を閉めることで滅菌室219と吸気用HEPAフィルタ210との間の導管による導通を不可能にする弁である。すなわち、弁(V7)226は、滅菌室219と外気(大気)との導通を開閉できる弁である。
【0046】
滅菌室(真空チャンバーとも言う)219は、図1でも説明したが、例えば医療用器具などの被滅菌対象物を滅菌する所定の容量の筐体である。滅菌室内の圧力は大気圧から真空圧までの圧力を維持することが可能である。また、滅菌室内の温度は、滅菌処理中において、所定の範囲の温度に維持されている。また、滅菌室219内には、圧力センサーが備えられており、圧力センサーにより滅菌室219内の圧力(気圧)を測定することができる。滅菌装置100は、この圧力センサーにより測定された滅菌室219内の気圧を用いて、滅菌室219内等の圧力(気圧)が所定の気圧になっているかを判定する。
【0047】
気送真空ポンプ220は、滅菌室219内、気化炉216内、計量管214内、計量管214と気化炉216との間の導管内、気化炉216と滅菌室219との間の導管内、計量管214と滅菌室219との間の導管内の空間の気体を吸引して、それぞれの空間内を減圧し真空状態(大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態)にする装置である。
【0048】
気送真空ポンプ220は、滅菌室219との間で導管により導通されており、排気用HEPAフィルタ221との間で導管により導通されている。
【0049】
排気用HEPAフィルタ221は、気送真空ポンプ220との間で導管により導通されている。また、排気用HEPAフィルタ221は、滅菌剤分解装置222との間で導管により導通されている。また、排気用HEPAフィルタ221は、濃縮炉208との間で導管により導通されている。
【0050】
排気用HEPAフィルタ221は、気送真空ポンプ220により、滅菌室219内等から吸引された気体を、気送真空ポンプ220との間の導管から送られた気体内のちりやほこり、雑菌などを、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタでフィルタリングして、吸引された気体を清浄する。そして、清浄された気体は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り、滅菌剤分解装置222に送られ、滅菌剤分解装置222により該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解し、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0051】
また、排気用HEPAフィルタ221は、濃縮炉208と排気用HEPAフィルタ221との間の導管により濃縮炉208から排気される気体を清浄する。この気体は、濃縮炉208で、滅菌剤が過熱されて、気化された水であるが、微量の滅菌剤を含むため、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管を通り、滅菌剤分解装置222に送られる。そして、滅菌剤分解装置222により該気体に含まれる滅菌剤の分子を分解し、分解後の分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0052】
滅菌剤分解装置222は、排気用HEPAフィルタ221との間の導管により導通されている。滅菌剤分解装置222は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管から送られてくる気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解して生成される分子を滅菌装置100の外に放出する。
【0053】
滅菌剤分解装置222は、例えば、滅菌剤が過酸化水素、又は過酸化水素溶液である場合、気化された過酸化水素を、二酸化マンガンを触媒として用いて、水と酸素に分解することができる装置である。
<図4の説明>
次に、図4を用いて、本発明に係る滅菌装置による滅菌処理の各工程の一例について説明する。
【0054】
図4に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
図4は、本発明に係る滅菌装置による滅菌処理の各工程の一例を示す図である。
【0055】
滅菌装置100は、電源が入れられると、まず、RF−IDリーダ/ライタ206が、カートリッジ205の下側に設けられたRF−ID(記憶媒体)から、データを読み取る(読取手段)(ステップS101)。
【0056】
ステップS101で、RF−ID(記憶媒体)から読み取られるデータとしては、該カートリッジを識別する情報としてのシリアル番号と、該カートリッジの製造年月日(カートリッジの製造日を含む。)と、該カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時(初回使用日時)と、該カートリッジ内に充填されている滅菌剤の残量とがある。すなわち、カートリッジ205に設けられたRF−ID(記憶媒体)には、予め、シリアル番号、製造年月日、初回使用日時、滅菌剤の残量が記憶されている。
【0057】
次に、滅菌装置100は、ステップS101でRF−IDからデータが読み取れたと判定された場合は(ステップS102:YES)、滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所にカートリッジが設置されていると判断し、カートリッジ取付用扉101を施錠する(ロック手段)(ステップS103)。すなわち、カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックする。
【0058】
たとえば、カートリッジに挿入される注射針を抜かないようにすることで、カートリッジを取り出すことが出来ないようにしても良い(図13を参照)。
【0059】
そして、滅菌装置100は、カートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量があるか否かを判定する。具体的には、RF−IDから取得した滅菌剤の残量が、滅菌1回分の所定の量よりも多いか否かを判定する。すなわち、滅菌剤の残量が、滅菌1回分の所定の量よりも多いと判定された場合は、カートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量がある(十分な滅菌処理を実行できる)と判断し(ステップS104:YES)、ステップS105の処理を行う。一方、滅菌剤の残量が、滅菌1回分の所定の量(例えば、8ミリリットル)よりも少ないと判定され場合は、カートリッジ内に滅菌1回分の滅菌剤の所定の量がない(十分な滅菌処理を実行できない)と判断し(ステップS104:NO)、ステップS112の処理を行う。
【0060】
滅菌装置100は、ステップS105において、RF−IDから取得したカートリッジの製造年月日から、所定の期間(例えば、13か月)を経過しているかを判断する。すなわち、カートリッジの製造年月日(製造日を含む)から所定時間(所定の期間)経過しているかの条件を満たすかを判定する。
【0061】
そして、製造年月日から所定の期間を経過していると判定された場合は(ステップS105:YES)、十分な滅菌処理を実行できないと判定し、ステップS112の処理を行う。一方、製造年月日から所定の期間を経過していないと判定された場合は(ステップS105:NO)、十分な滅菌処理を実行できると判定し、ステップS106の処理を行う。
【0062】
滅菌装置100は、ステップS106において、RF−IDから取得した初回使用日時から、所定の期間(例えば、2週間)を経過しているかを判断する。
【0063】
そして、RF−IDから取得した初回使用日時から、所定の期間(例えば、2週間)を経過していると判定された場合は(ステップS106:YES)、十分な滅菌処理を実行できないと判定し、ステップS112の処理を行う。一方、所定の期間(例えば、2週間)を経過していないと判定された場合は(ステップS106:NO)、十分な滅菌処理を実行できると判定し、ステップS107の処理を行う。
【0064】
滅菌装置100は、ステップS107において、滅菌開始画面(図3の301)を表示部102に表示する。
図3は、滅菌装置100の表示部102に表示される画面の一例を示す図である。
【0065】
滅菌開始画面301には、「滅菌開始ボタン」が表示されている。ステップS107で表示される滅菌開始画面301内の「滅菌開始ボタン」302は、ユーザにより押下可能に(アクティブに)なっている。
【0066】
そして、滅菌装置100は、ユーザにより、「滅菌開始ボタン」302が押下されると(ステップS108:YES)、滅菌モード選択画面(図3の303)を表示部102に表示する。
【0067】
滅菌モード選択画面303には、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305とが表示されている。
【0068】
滅菌装置100は、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305のどちらか一方の選択をユーザから受け付け(ステップS110)、ユーザにより選択されたボタンのモードに従った滅菌処理(ステップS111)を行う。滅菌処理(ステップS111)の詳細は、図5を用いて、後で説明する。
【0069】
このように、ユーザの指示により、滅菌処理するモードを1台の滅菌装置で切り替えて使用することが可能となる。すなわち、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304がユーザにより押下された場合は、滅菌剤を濃縮して、滅菌処理を行い、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下された場合は、滅菌剤を濃縮しないで、滅菌処理を行う。
【0070】
そして、滅菌装置100は、滅菌処理(ステップS111)が終了すると、ステップS100に処理を戻す。
【0071】
また、滅菌装置100は、ステップS112において、滅菌開始画面(図3の301)を表示部102に表示する。ただし、ステップS112で表示される滅菌開始画面(図3の301)内の「滅菌開始ボタン」302は、ユーザにより押下出来ないように表示されている(「滅菌開始ボタン」302がアクティブではない)。そのため、ユーザによる、滅菌処理の開始指示を受け付けないようにすること可能となる。
【0072】
そして、滅菌装置100は、ステップS101でRF−IDから取得したシリアル番号から、カートリッジの取り付け場所に設置してあるカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する(ステップS113)。具体的には、滅菌装置100内のメモリ(記憶部)には、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジを識別するシリアル番号が記憶されており、ステップS101でRF−IDから取得したシリアル番号が、該メモリ(記憶部)に記憶されているシリアル番号に一致するか否かを判定することにより、現在、滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであるか否かを判定する。
【0073】
現在、滅菌装置100に取り付けられているカートリッジが、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジであると判定された場合は(ステップS113:YES)、ステップS115の処理を行う。一方、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジではないと判定された場合は(ステップS113:NO)、カートリッジ内に残っている液体の滅菌剤の残量の全てを吸い取り、その全ての滅菌剤を分解処理して、滅菌装置100の外に放出する、滅菌剤の排出処理(廃棄処理)(ステップS114)を行い、その後、ステップS115の処理を行う。ステップS114の滅菌剤の排出処理の詳細は、図9を用いて、後で説明する。
ステップS114は、カートリッジの中の過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段の適用例である。
【0074】
ステップS114の処理を行うと、滅菌装置100内のメモリ(記憶部)に、既に滅菌剤の排出処理済みのカートリッジを識別するシリアル番号として、ステップS101で読み取ったシリアル番号を記憶する(ステップ115)。
滅菌装置100は、ステップ115において、カートリッジ取付用扉101を開錠する。
ステップS115は、ロック手段によるロックを解除する解除手段の適用例である。
【0075】
例えば、カートリッジに挿入されている注射針をカートリッジから抜くことで、ロックを解除することができる(図13を参照)。
【0076】
また、滅菌装置100は、ステップS102において、ステップS101でRF−IDからデータが読み取れなかったと判定された場合は(ステップS102:NO)、滅菌装置100内のカートリッジの取り付け場所にカートリッジが設置されていないと判断し、図11に示すカートリッジ取付要求画面1101を表示する(ステップS116)。
【0077】
図11は、滅菌装置100の表示部102に表示されるカートリッジ取付要求画面1101の一例を示す図である。
カートリッジ取付要求画面1101には、「OK」ボタン1102が表示されている。
【0078】
そして、滅菌装置100は、カートリッジ取付要求画面1101の「OK」ボタン1102がユーザにより押下されたかを判定し(ステップS117)、「OK」ボタン1102が押下された場合は(YES)、カートリッジ取付用扉101を開錠し(ステップS118)、処理をステップS101に戻す。一方、「OK」ボタン1102が押下されていない場合は(NO)、カートリッジ取付要求画面1101を表示し続ける。
【0079】
カートリッジ取付用扉101の開錠、及び施錠の処理は、ロック動作制御部202による動作により行われる。
<図5の説明>
次に、図5を用いて、図4のS111に示す滅菌処理の詳細処理の一例について説明する。
図5は、図4のS111に示す滅菌処理の詳細処理の一例を示す図である。
【0080】
図5に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0081】
まず、滅菌装置100は、ステップS501において、気送真空ポンプ220を動作し、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の気圧が所定の気圧(45パスカル)まで減圧する滅菌前工程の処理を行う。滅菌前工程の処理の詳細な処理は、図6を用いて後で説明する。
【0082】
そして、滅菌装置100は、ステップS502において、滅菌室219に、滅菌剤を入れて、被滅菌対象物を滅菌する滅菌工程の処理を行う。滅菌工程の処理の詳細な処理は、図7を用いて後で説明する。
【0083】
次に、滅菌装置100は、ステップS503において、滅菌室219内、及び気化炉216内に含まれている滅菌剤を取り除くための換気工程の処理を行う。換気工程の処理の詳細な処理は、図8を用いて後で説明する。
<図6の説明>
次に、図6を用いて、図5のS501に示す滅菌前工程の詳細処理の一例について説明する。
図6は、図5のS501に示す滅菌前工程の詳細処理の一例を示す図である。
【0084】
図6に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0085】
まず、滅菌装置100は、気送真空ポンプ220を動作し、滅菌室219の気体を吸引する処理を開始する(ステップS601)。
【0086】
そして、滅菌装置100は、ステップS602において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(45パスカル)まで減圧されているかを判定する。具体的には、滅菌室219内に備えられた圧力センサーにより測定されている滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(45パスカル)まで減圧されているかを判定する。
【0087】
ステップS602において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(45パスカル)まで減圧されていないと判定された場合は(NO)、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、滅菌室219内の圧力(気圧)を減圧する。
【0088】
一方、ステップS602において、滅菌室219内の圧力(気圧)が、所定の気圧(45パスカル)まで減圧されていると判定された場合は(YES)、気送真空ポンプ220を引き続き動作させ、滅菌室219の気体を吸引し、ステップS502の処理を開始する。
<図7の説明>
次に、図7を用いて、図5のS502に示す滅菌工程の詳細処理の一例について説明する。
図7は、図5のS502に示す滅菌工程の詳細処理の一例を示す図である。
【0089】
図7に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0090】
まず、滅菌装置100は、弁(V5)217を開けて、滅菌室219と気化炉216との間の導管を導通させる(ステップS701)。これにより、現在、気送真空ポンプ220により滅菌室219の気体を吸引し減圧しているため、滅菌室219内、及び気化炉216内の減圧を開始する(ステップS702)。
【0091】
そして、滅菌装置100は、ステップS110で、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305のどちらが押下されたのかを判定する(ステップS703)。「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304が押下されたと判定された場合は(YES)、ステップS704の処理を行い、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定された場合は(NO)、ステップS728の処理を行う。
【0092】
ここでは、まず、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304が押下された場合(滅菌剤を濃縮して滅菌処理する場合)について、説明する。
【0093】
滅菌装置100は、ステップS704において、液送ロータリーポンプ207を動作し、カートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(2ミリリットル)吸い取る。そして、吸い取られた所定量の滅菌剤を、濃縮炉208に入れる。ここで吸い取る所定量の滅菌剤は、滅菌室219内の空間を滅菌剤で飽和状態にさせることができる量である。
【0094】
そして、滅菌装置100は、ステップS705において、カートリッジの取り付け場所に取り付けられているカートリッジ205のRF−IDに、カートリッジ205内に残っている滅菌剤の残量を書き込む。具体的には、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS704でカートリッジ205から吸い取った所定量(2ミリリットル)を引いた値をRF−IDに記憶する。
【0095】
また、滅菌装置100は、ステップS101でRF−IDから読み取られた初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)に、日時を示す情報が含まれていない場合は、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定する。このようにカートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定された場合のみ、現在の日時情報もRF−IDに書き込む。
【0096】
次に、滅菌装置100は、滅菌装置100に電源が入っているときは、常に、濃縮炉208に備え付けられたヒータを加熱するため、ステップS704で濃縮炉208に入れられた滅菌剤は、そのヒータの熱により、加熱され、濃縮炉208内の滅菌剤に含まれる水分を蒸発させる(ステップS706)。
【0097】
すなわち、滅菌剤が過酸化水素水(過酸化水素水溶液とも言う)である場合、濃縮炉208に備え付けられたヒータを、ここでは、具体的には、80度で温める。これにより、主に水分を蒸発(気化)させることができ、滅菌剤を濃縮させることが可能となる。
【0098】
次に、滅菌装置100は、ステップS707において、ステップS704で濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間(6分)が経過したかを判定する。そして、濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間が経過したと判定されると(YES)、ステップS708の処理を行う。一方、濃縮炉208に滅菌剤を入れてから所定の時間が経過していない場合は(NO)、引き続き、濃縮炉208に滅菌剤を入れたままにしておき、引き続き滅菌剤を濃縮する。
【0099】
次に、滅菌装置100は、ステップS708において、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、所定の気圧(500パスカル)まで減圧されたかを判定する。
【0100】
そして、滅菌装置100は、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、所定の気圧まで減圧された場合は(YES)、ステップS709において、弁(V3)212と、弁(V4)213とを所定時間開ける(弁(V3)212と、弁(V4)213とを所定時間(3秒)開けて弁(V3)212と、弁(V4)213を閉じる)ことで、計量管214内を減圧する。一方、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、所定の気圧まで減圧されていない場合は(NO)、引き続き滅菌剤の濃縮を行う。
【0101】
そして、次に、滅菌装置100は、ステップS710において、ステップS709で、弁(V3)212と弁(V4)213とを所定時間開けて弁(V3)212と弁(V4)213を閉じた後に、弁(V1)を所定時間(3秒)開けると、濃縮炉208(外部)の気圧よりも計量管214内の気圧の方が低いので濃縮炉208に入っている滅菌剤が計量管214に吸い込まれて入る(ステップS710)。ここでは、弁(V1)を所定時間開けて閉じることで、濃縮炉208に入っている滅菌剤が計量管214に吸い込まれて入る。ここでは、滅菌剤だけではなく、濃縮炉208内の空気も一緒に計量管214内に吸い込まれてくる。
そして、この後も、引き続き、気送真空ポンプ220により、滅菌室219内が減圧されている。
【0102】
そのため、滅菌室219内の気圧は、計量管内の気圧よりも低くなる。具体的には、滅菌室219内の気圧は、400Paであり、計量管内の気圧は大気圧(101325Pa)位の値である。計量管内の気圧は大気圧近くまで上がる理由は、滅菌剤だけではなく、濃縮炉208内の空気も一緒に計量管214内に吸い込まれてくるためである。
【0103】
次に、滅菌装置100は、ステップS711において、弁(V3)212と、弁(V4)213とを所定時間(3秒)開けて、計量管内の空気(液体の滅菌剤は含まない)を滅菌室219に吸い出される。すなわち、ここでは、弁(V3)212と弁(V4)213とを開けて該所定時間が経過すると、弁(V3)212と弁(V4)213とを閉じる。
【0104】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が所定の気圧(80Pa)まで減圧されているかを判定し、減圧されていると判定された場合に(ステップS712)、弁(V5)217を閉める(ステップS713)。
【0105】
そして、滅菌装置100は、弁(V2)215を開ける(ステップS714)。これにより、計量管214内の滅菌剤は、気化炉216に吸い込まれ、気化炉216内で気化する。
ここで、滅菌剤は、分子クラスターとして気化炉内で気化する。
【0106】
滅菌室219内は、気化炉216よりも大きい容積であり、気化炉216内では、滅菌剤は、分子クラスターとして気化される。
【0107】
すなわち、滅菌剤が分子クラスターを形成するための条件(滅菌剤の量とその温度、気化炉内の気圧とその温度など)の1つとして、気化炉の容積があり、ここでの気化炉216内の容積は、現在の気化炉内の状態に合わせて、滅菌剤が分子クラスターを形成するために適した容積となっている。
【0108】
つまり、気化炉216の容積が、滅菌室219の容積より小さく、滅菌剤が分子クラスターを形成するのに適した容積となっているため、気化炉216内での滅菌剤の分子間の距離は、滅菌室219内における滅菌剤の分子間の距離が近く、気化炉216内で、滅菌剤は、分子クラスターを形成しやすい環境となっている。
【0109】
このときも引き続き、気送真空ポンプ220は、滅菌室219内の気体を吸引し、滅菌室219内を減圧している。計量管214内の滅菌剤が吸い込まれた気化炉216内は、気圧が上昇する。
すなわち、気化炉216内の気圧は、滅菌室219内の気圧よりも高くなる。
【0110】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内の気圧が、所定の気圧(50Pa)まで減圧され、かつ、ステップS714で弁(V2)215を開けてから所定時間が経過したかを判定し(ステップS715)、滅菌室219内の気圧が、所定の気圧(50Pa)まで減圧され、かつ、ステップS714で弁(V2)215を開けてから所定時間が経過した場合は(YES)、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を停止して(ステップS716)、弁(V5)217を開ける(ステップS717)。これにより、滅菌室219内に気化した滅菌剤が拡散し、被滅菌対象物を滅菌することができる。
これは、気化炉216内の気圧よりも、滅菌室219内の気圧(50Pa)の方が、低いため拡散する。
【0111】
ここで拡散する滅菌剤は、気化炉216内にある滅菌剤の分子クラスターが更に細分化され、より滅菌剤を滅菌室内に拡散させることができ、滅菌作用を高めることが可能となる。すなわち、これにより、例えば、細長いチューブ(被滅菌対象物)の奥の内腔なども効果的に滅菌することが出来るようになる。
また、被滅菌対象物などの細かい内腔などを効果的に滅菌することが出来るようになる。
【0112】
ここで拡散する滅菌剤は、気化炉216内にある滅菌剤の分子クラスターが更に細分化され、より滅菌剤を滅菌室内に拡散させることができ、滅菌作用を高めることが可能となる。すなわち、これにより、例えば、細長いチューブ(被滅菌対象物)の奥の内腔なども効果的に滅菌することが出来るようになる。
【0113】
そして、ステップS717で、弁(V5)217を開けてから、所定時間が経過したかを判定し、弁(V5)217を開けてから、所定時間(330秒)が経過したと判定されると(ステップS718:YES)、弁(V9)227を開ける(ステップS719)。
【0114】
これにより、滅菌装置100の外の気圧よりも気化炉216内、及び滅菌室219内の気圧の方が低いため、吸気用HEPAフィルタで清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、気化炉216内に吸い込まれる。そして、気化炉216内に送り込まれた空気により、気化炉216内に気体として充満している滅菌剤、及び、気化炉216の内部の表面に付着した滅菌剤が、滅菌室219内に送り込まれ、滅菌室219内にある被滅菌対象物に対する滅菌作用が高まる。すなわち、例えば、これにより、被滅菌対象の細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分についての滅菌作用が高まる。
【0115】
そして、滅菌装置100は、ステップS719で、弁(V9)227を開けてから所定の時間(15秒)が経過すると、弁(V7)226を開けて、更に、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。これは、滅菌装置100の外の気圧よりも滅菌室219内、気化炉216内の気圧の方が低いため、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。
これにより、被滅菌対象の細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分についての滅菌作用が高まる。
【0116】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内、及び気化炉216内が大気圧まで上昇したかを判定し、大気圧まで上昇したと判定した場合に(ステップS721:YES)、弁(V2)215を閉める。
【0117】
次に、滅菌装置100は、弁(V7)226を閉め(ステップS723)、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を再開する(ステップS724)。これにより、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、気化炉216内に吸い込まれる。そして、気化炉216内に送り込まれた空気により、気化炉216内に気体として充満している滅菌剤、及び、気化炉216の内部の表面に付着した滅菌剤が、更に、滅菌室219内に送り込まれる。
【0118】
これにより、被滅菌対象の細いチューブなどの奥などの滅菌し難い部分についての滅菌作用が高まると共に、気化炉216内の滅菌剤を効果的に減少させることが可能となる。
【0119】
そして、滅菌装置100は、ステップS724で、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を再開してから、所定時間(15秒)後に、弁(V9)227を閉める(ステップS725)。
【0120】
このときも引き続き、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を行っており、ステップS725により、滅菌室219内、及び気化炉216内が密閉され、滅菌室219内、及び気化炉216内を減圧することとなる(ステップS726)。
【0121】
次に滅菌装置100は、所定回数(例えば、4回)、ステップS702からステップS726の処理を実行したかを判定し(ステップS727)、実行したと判定された場合は(YES)、ステップS503の処理を行う。一方、ステップS702からステップS726の処理を、所定回数実行していないと判定された場合は、ステップS702以降の処理を再度行う。このように、所定回数、ステップS702からステップS726の処理を実行することで、被滅菌対象物に対する滅菌作用の効果が高まり、被滅菌対象物を十分に滅菌することが可能となる。
【0122】
次に、ステップS703で、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定された場合(滅菌剤を濃縮しないで滅菌処理する場合)について、説明する。
【0123】
滅菌装置100は、ステップS703で、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305が押下されたと判定された場合(NO)、滅菌室219内と気化炉216内の気圧が所定の気圧(1000Pa)にまで減圧されたかを判定する(ステップS728)。
【0124】
そして、滅菌装置100は、滅菌室219内と気化炉216内の気圧が所定の気圧(100Pa)にまで減圧されたと判定された場合に(ステップS728:YES)、液送ロータリーポンプ207を動作し、カートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(2ミリリットル)吸い取る。そして、吸い取られた所定量の滅菌剤を、濃縮炉208に入れる(ステップS729)。
【0125】
ここで吸い取る所定量の滅菌剤は、滅菌室219内の空間を滅菌剤で飽和状態にさせることができる量である。
【0126】
次に、滅菌装置100は、ステップS730において、カートリッジの取り付け場所に取り付けられているカートリッジ205のRF−IDに、カートリッジ205内に残っている滅菌剤の残量を書き込む。具体的には、ステップS101で読み取ったカートリッジ205内の滅菌剤の残量から、ステップS729でカートリッジ205から吸い取った所定量(2ミリリットル)を引いた値をRF−IDに記憶する。
【0127】
また、滅菌装置100は、ステップS730において、ステップS101でRF−IDから読み取られた初回使用日時(カートリッジが滅菌装置で初めて使用された日時)に、日時を示す情報が含まれていない場合は、今回、カートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定する。このようにカートリッジが滅菌装置で初めて使用されたと判定された場合のみ、現在の日時情報もRF−IDに書き込む。
【0128】
そして、滅菌装置100は、ステップS730の処理を行うと、既に説明したステップS709以降の処理を行う。
【0129】
ステップS728では、滅菌室219内が1000Paになったら、ステップS729で滅菌剤を吸い始め、ステップS729で滅菌剤を吸い終わる頃には500Paを下回るため、効率的にS709へ移行することができる。
【0130】
このように、滅菌室219内、及び気化炉216内の気圧が、計量管214内の減圧を開始する所定の気圧(1000パスカル)まで減圧された後に、吸い取られた所定量の滅菌剤を濃縮炉208に入れ、直ぐにステップS709で計量管214内を減圧することができ、その後、ステップS710で濃縮炉208内の滅菌剤を計量管に入れるので、濃縮炉208から、計量管214に直ぐに滅菌剤を入れることが可能となる。すなわち、滅菌剤が濃縮炉208で濃縮されることなく、計量管214に入れることが可能となる。
<図8の説明>
次に、図8を用いて、図5のS503に示す換気工程の詳細処理の一例について説明する。
図8は、図5のS503に示す換気工程の詳細処理の一例を示す図である。
【0131】
図8に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
まず、滅菌装置100は、弁V(7)226を開ける(ステップS801)。
【0132】
そして、滅菌装置100は、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を引き続き行う(ステップS802)。
【0133】
ステップS802で、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を開始してから、所定時間を経過すると、弁V(7)226を閉めて(ステップS804)、気送真空ポンプ220による滅菌室219内の吸引(真空引き)を行う。これにより、滅菌室219内が減圧される。
【0134】
次に、滅菌装置100は、滅菌室219内が所定の気圧(50Pa)まで減圧されると(ステップS806:YES)、弁V(7)226を開ける(ステップS807)。これにより、吸気用HEPAフィルタ210で清浄された、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。これは、滅菌装置100の外の気圧よりも滅菌室219内の気圧の方が低いため、滅菌装置100の外の外気(空気)が、滅菌室219内に吸い込まれる。
【0135】
そして、滅菌装置100は、滅菌室219内の気圧が、大気圧まで上昇したかを判定し、滅菌室219内の気圧が、大気圧まで上昇したと判定された場合(ステップS808:YES)、ステップS804からステップS808の処理を所定回数(例えば、4回)行ったかを判定し(ステップS809)、ステップS804からステップS808の処理を所定回数(例えば、4回)行った場合は(YES)、弁V(7)226を閉めて(ステップS810)、換気工程を終了する。
【0136】
一方、ステップS804からステップS808の処理を所定回数(例えば、4回)行っていない場合は(NO)、再度、ステップS804の処理から行う。
【0137】
これにより、滅菌室219内の表面に付着している滅菌剤、及び、滅菌室219内に気体として残っている滅菌剤を気送真空ポンプ220により吸引される。ここで吸引された気体(滅菌剤を含む)は、排気用HEPAフィルタ221を通り、滅菌剤分解装置222で滅菌剤は分解され、分解後の分子が外部に放出される。
<図9の説明>
次に、図9を用いて、図4のS114に示す滅菌排出処理の詳細処理の一例について説明する。
図9は、図4のS114に示す滅菌排出処理の詳細処理の一例を示す図である。
【0138】
図9に示す各工程(処理)は、滅菌装置100の演算処理部201により滅菌装置内の各装置の動作を制御することにより行われる。
【0139】
まず、滅菌装置100は、上述した滅菌処理を実行する(ステップS901)。ステップS901で実行される滅菌処理の詳細工程(処理)は、既に説明した図5の処理である。
すなわち、カートリッジ205内の滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素水溶液)を、廃棄するための処理として、再度、滅菌処理(図5)を行う。
【0140】
図5で説明したステップS501、ステップS502、ステップS503の各工程(処理)についての詳細工程(処理)については、既に説明しているため、ここでは、ステップS901で行う滅菌処理の詳細工程(処理)のうち、ステップS111で行う滅菌処理とは、異なる処理(工程)について説明し、同一の処理については、説明を省略する。

【0141】
ステップS502における滅菌工程の詳細処理(工程)である図7のステップS703において、ステップS111で行う滅菌処理では、「滅菌剤を濃縮して滅菌するモード」ボタン304と、「滅菌剤を濃縮しないで滅菌するモード」ボタン305のどちらが押下されたのかを判定するが、ステップS901で行う滅菌処理では、予め、どちらか一方のモードがユーザにより設定されており、その設定されたモードによる処理が行われることとなる。
【0142】
このように、ステップS114における滅菌排出処理を行うことにより、カートリッジ205内の滅菌剤(過酸化水素、又は過酸化水素水溶液)を気化し、気化された滅菌剤は、滅菌剤分解装置222により、分解され、水と酸素を生成し、外部へ排出される。
【0143】
すなわち、滅菌剤分解装置222は、滅菌剤分解装置222と排気用HEPAフィルタ221との間の導管から送られてくる気体に含まれる滅菌剤の分子を分解して、分解して生成される分子(水と酸素)を滅菌装置100の外に放出する。
【0144】
次に、滅菌装置100は、ステップS901の処理を行うと、カートリッジ205内に滅菌剤が残っているか否かを判定する(ステップS902)。そして、カートリッジ205内に滅菌剤が残っている場合は(YES)、再度、ステップS901による滅菌処理を行い、カートリッジ205内に滅菌剤が残っていない場合は(NO)、滅菌剤排出処理(ステップS114)を終了して、ステップS115の処理を行う。
【0145】
ステップS902における判定処理は、具体的には、ステップS705、又はステップS730でRF−IDに書き込まれた、カートリッジ205内の滅菌剤の残量から、カートリッジ205内に滅菌剤が残っているか否かを判定する。すなわち、ステップS705、又はステップS730でRF−IDに書き込まれた、カートリッジ205内の滅菌剤の残量が0(ゼロ)を示す場合に、カートリッジ205内に滅菌剤が残っていないと判定し、ステップS705、又はステップS730でRF−IDに書き込まれた、カートリッジ205内の滅菌剤の残量が正の値を示す場合に、カートリッジ205内に滅菌剤が残っていると判定する。
<図10の説明>
【0146】
次に、図10を用いて、本発明に係る滅菌装置100の濃縮炉208、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227のハードウエア構成に係るブロック構成について説明する。
【0147】
図10は、本発明に係る滅菌装置100の濃縮炉208、弁(V1)211、弁(V3)212、弁(V4)213、計量管214、弁(V2)215、気化炉216、弁(V5)217、弁(V9)227のハードウエア構成に係るブロック構成図の一例を示す図である。
【0148】
図10に示す各ハードウエアは、図2に示す各ハードウエアと同一のハードウエアについては、同一の符号を付している。
【0149】
ステップS704、ステップS729で、液送ロータリーポンプ207を動作し、カートリッジ205内の滅菌剤を、所定量(2ミリリットル)吸い取り、吸い取られた所定量の滅菌剤を、濃縮炉208に入れられる。
【0150】
ステップS706では、濃縮炉208は、図10に示すように、濃縮炉208の下部にヒータが設けられており、このヒータの熱により、滅菌剤が加熱される。滅菌剤が過酸化水素水溶液の場合、このヒータの熱により、水が気化される。そして、気化した水は、気送加圧ポンプ209から導管を通して送り込まれる空気により、排気用HEPAフィルタ221に導通している導管に押し出され、濃縮炉208内から排気される。これにより、滅菌剤(過酸化水素水溶液)が濃縮される。
図7で説明した通り、ステップS710で、濃縮炉208内の滅菌剤は、計量管214内に入る。
この計量管214は、図10に示すように、直管部1001と枝管部1002とから構成されている。
直管部1001は、直線の管状の部分である。直管部1001の管は、重力方向に配置されている。
また、枝管部1002は、直管部1001の中間部又は上部から、枝状に延びた管状の部分である。
直管部1001は、直管部の軸心と、枝管部1002の軸心とが垂直になる様に据え付けられる。
【0151】
このような構成にしているため、濃縮炉208から入ってきた滅菌剤は、計量管214内の直管部1001に溜まるように構成されている。直管部1001に滅菌剤が溜まる部分を滅菌剤溜まり部1003と言う。
【0152】
すなわち、滅菌剤溜まり部1003は、濃縮炉208から入ってくる滅菌剤が入るために十分な空間を有する。
【0153】
そのため、濃縮炉208から入ってきた滅菌剤は、滅菌剤溜まり部1003に溜まり、滅菌剤と共に濃縮炉208から入ってきた空気は、滅菌剤溜まり部1003に溜まっている滅菌剤の空間以外の空間に、充満することとなる。すなわち、その滅菌剤の空間以外の空間は、枝管部1002内の空間でもり、枝管部1002内の空間と通じた空間であるため、ステップS711で弁(V3)212と弁(V4)213とを開けることで、滅菌室219内にその空気が吸い取られる。
【0154】
そして、ステップS714で弁(V2)を開けることで、滅菌剤溜まり部1003に溜まっていた滅菌剤が、気化炉216に吸い込まれて、気化する。図10に示すように、気化炉216の上部から液体の滅菌剤が気化炉216に入ることで、滅菌剤が気化しやすい。
【0155】
また、吸気用HEPAフィルタ210と気化炉216との間の導管は、図10に示すように、気化炉216の上部に備え付けられている。そのため、ステップS719で弁(V9)を開けると、空気(外気)が気化炉216の上部から、気化炉216の下部にある滅菌室219に抜けるため、気化炉216の内部に付着している滅菌剤、及び気化炉216内の気化した滅菌剤を広範囲に取り除きやすくなり、その取り除いた滅菌剤をより多く滅菌室219に流すことが可能となる。

<図12の説明>
次に、図12を用いて、滅菌装置100に用いられる滅菌剤が入ったカートリッジ205について説明する。
図12は、本発明に係る滅菌装置100に用いられる滅菌剤が入ったカートリッジ205を横側から見た図である。
図12に示すカートリッジは、1つのボトルに滅菌処理を複数回行える量の滅菌剤が入ったカートリッジである。
図12に示すように、カートリッジは、容器とその蓋とから構成されている。
【0156】
容器の外観は、コップの形状をしている。また、容器の材質(材料)は、滅菌剤である過酸化水素に対して耐性のあるポリプロピレン(プラスチック)である。
蓋は、容器の外周の淵と接着している。また、この蓋の材質は、滅菌剤である過酸化水素に対して耐性のあるポリプロピレン(プラスチック)である。
カートリッジの上側から見て、カートリッジの中心点でのカートリッジの断面を断面1とする。
<図13の説明>
【0157】
次に、図13を用いて、注射針がカートリッジに刺された場合の断面1の断面図と、注射針がカートリッジに刺されていない場合の断面1の断面図の一例について説明する。
【0158】
図13は、注射針がカートリッジに刺された場合の断面1の断面図(左側の図)と、注射針がカートリッジに刺されていない場合の断面1の断面図(右側の図)の一例を示す図である。
【0159】
カートリッジの蓋には、中心点に、カートリッジ内の滅菌剤を吸引するための抽出針(注射針)を挿入する(刺す)ための穴があり、この穴は、抽出針(注射針)をカートリッジの上側からカートリッジ内部に入れるための挿入口である。
【0160】
抽出針動作制御部による動作により、注射針をカートリッジ内に刺すと、図13の左側に示すような図となる。そして、カートリッジ内の滅菌剤を抽出する(吸い取る)ことが可能となる。また、注射針により、カートリッジが固定され、カートリッジを取り出すことが出来ないようになる。
【0161】
また、抽出針動作制御部による動作により、注射針をカートリッジ内から抜かれると、図13の右側に示すような図となる。この場合、注射針は、カートリッジに刺さっていないため、カートリッジを取り出すことが可能となる。
【0162】
以上、本実施例によれば、ユーザに滅菌剤を触れさせないようにするために、滅菌装置から、滅菌剤が残ったカートリッジを取り出すことが出来ないようにすると共に、滅菌剤の廃棄コストを低減させることが可能となる。さらに、本実施例によれば、滅菌剤を廃棄するために滅菌剤を気化する装置、及び、廃棄される気化された滅菌剤を滅菌分解装置に導通させるための導管を新たに設ける必要がなく、滅菌装置の製作に係るコストを減らすことが可能となる。
また、本発明は、滅菌装置で読み取り実行可能なプログラムであって、前記滅菌装置を、上述した各処理(工程)の手段として機能させるプログラムを提供することで、本発明に係る各効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0163】
100 滅菌装置
101 カートリッジ取付用扉
102 表示部
103 印刷部
104 滅菌室の扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置であって、
前記カートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌手段と、
前記カートリッジが前記滅菌装置に取り付けられている場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックするロック手段と、
前記滅菌手段による滅菌処理を行うことにより、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段と、
前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、前記カートリッジを取り出すことができるように、前記ロック手段によるロックを解除する解除手段と、
を備えることを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】
前記カートリッジは、カートリッジの中の過酸化水素水溶液の廃棄に係るデータを記憶した記憶媒体を備えたカートリッジであって、
前記カートリッジが備えた記憶媒体から前記データを読み取る読取手段を更に備え、
前記ロック手段は、前記読取手段により前記データを読み取れた場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックし、
前記読取手段により読み取られた前記データが、所定の条件を満たすかを判定する判定手段を更に備え、
前記廃棄手段は、前記判定手段により、前記読取手段により読み取られた前記データが、前記所定の条件を満たすと判定された場合は、前記廃棄手段により、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄することを特徴とする請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記データは、前記カートリッジ内に残っている前記過酸化水素水溶液の量を含み、
前記判定手段は、前記読取手段により読み取られた、前記カートリッジ内に残っている前記過酸化水素水溶液の量が、前記所定の条件として、1回の滅菌処理で用いられる前記過酸化水素水溶液の量が前記カートリッジ内に残っているかの条件を満たすかを判定することを特徴とする請求項2に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記データは、前記カートリッジの製造日を含み、
前記判定手段は、前記読取手段により読み取られた前記製造日が、前記所定の条件として、前記カートリッジの製造日から所定時間経過しているかの条件を満たすかを判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記データは、前記カートリッジの初回使用日を含み、
前記判定手段は、前記読取手段により読み取られた前記初回使用日が、前記所定の条件として、前記カートリッジの初回使用日から所定時間経過しているかの条件を満たすかを判定することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記廃棄手段は、前記滅菌手段による滅菌処理を行い、前記カートリッジの中の全ての過酸化水素溶液を、触媒を用いて分解することにより廃棄することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の滅菌装置。
【請求項7】
過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置における滅菌方法であって、
前記滅菌装置の滅菌手段が、前記カートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌工程と、
前記滅菌装置のロック手段が、前記カートリッジが前記滅菌装置に取り付けられている場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックするロック工程と、
前記滅菌装置の廃棄手段が、前記滅菌工程による滅菌処理を行うことにより、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄工程と、
前記滅菌装置の解除手段が、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、前記カートリッジを取り出すことができるように、前記ロック工程によるロックを解除する解除工程と、
を備えることを特徴とする滅菌方法。
【請求項8】
過酸化水素水溶液が入っているカートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌装置で読み取り実行可能なプログラムあって、
前記滅菌装置を、
前記カートリッジの中から、前記過酸化水素水溶液を取り出して対象物を滅菌する滅菌手段と、
前記カートリッジが前記滅菌装置に取り付けられている場合に、前記カートリッジを取り出すことが出来ないようにロックするロック手段と、
前記滅菌手段による滅菌処理を行うことにより、前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液を廃棄する廃棄手段と、
前記カートリッジの中の前記過酸化水素水溶液の廃棄処理を行った後に、前記カートリッジを取り出すことができるように、前記ロック手段によるロックを解除する解除手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−94394(P2013−94394A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239564(P2011−239564)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(390002761)キヤノンマーケティングジャパン株式会社 (656)
【出願人】(392022064)キヤノンライフケアソリューションズ株式会社 (25)
【出願人】(390010582)株式会社エルクエスト (33)
【Fターム(参考)】