説明

滅菌装置及び滅菌装置を制御する方法

本発明は、対象物(7)が置かれる滅菌チャンバ(8)、流体を所定の流速に加速するための少なくとも1つの加速デバイス(2)、流体から粒子を分離するための少なくとも1つの濾過デバイス(3)を含んでなる、滅菌装置(10)及びガス状又は液体流体による対象物(7)の滅菌方法に関し、滅菌装置は、更に、複数の開口部を備える少なくとも1つのオリフィスデバイス(4)、及び圧力差(Δp)に基づいて流体の流速を測定するための制御装置を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物が滅菌装置の滅菌チャンバに置かれた、ガス状又は液体流体による少なくとも1つの対象物の滅菌を制御する滅菌装置、及び対象物が滅菌装置の滅菌チャンバに置かれた、加熱流体による対象物の滅菌を制御する方法に関する。
【0002】
一般的な滅菌装置では、例えば医療用注射器又はアンプルのような対象物が細菌又はウイルスによる汚染を取り除く、主として2つの異なる滅菌技術が有名であり得る。第一に、完全滅菌された対象物を得るために、滅菌する対象物を例えばγ線で照射する照射線滅菌法がある。この方法は、滅菌する対象物が高温に抵抗性がないとき、好ましく適用される。第二の方法は、流体が十分高温まで加熱され、次いで滅菌する対象物が置かれるチャンバに吹き込まれる加熱滅菌である。多少の修正が加えられた方法では、流体はガス状、好ましくは空気であり得て、これは滅菌流体に実質的に湿気が残っていないとき、乾熱滅菌と呼ばれる。
【0003】
後者の方法の場合、滅菌の質は、対象物が流体に曝される時間、及び滅菌する対象物と接触するようになる流体質量流の量によって決まる。それにより流体温度だけでなく流体の流速も滅菌結果に強い影響を及ぼす重要な因子である。従って、滅菌装置では十分な高精度で流体の流速を測定することが重要である。
【背景技術】
【0004】
先行技術には一般的に、流動流体の流速を計測する2つの異なる基本原理がある。例えば、特許文献1は、ガス状流体の流速を環境温度によって決まるその抵抗を変える測温体を用いることによって計測する装置、いわゆる熱線風速計を示す。それにより、測温体は所定の温度まで加熱され、そして流体がセンサの周りを流れるとき、センサ自体は冷却される。冷却効果は流速が生じ得るセンサの抵抗値の変動をもたらす。しかしながらこの方法は、センサ素子が高温で流体に曝されるとき、その精度について難点を有する。高温度範囲では、ガス状流体密度は正確な計測を行えないほど低めである。
【0005】
特許文献2は、チャンバ内部に半穿刺の管壁を含む乾熱滅菌システムを開示している。更に、それらが加熱器上に流れる空気がないことを感知する場合、加熱器をシャットダウンすることができる安全空気流スイッチを備える。安全空気流スイッチは、滅菌チャンバの外側に配置されている空気取り入れ口及び空気吹き出し口の空気流を計測する差圧スイッチである。
【0006】
更に、流体の流速を計測するために風向風速計、いわゆるインペラ風速計を使用する公知の滅菌装置がある。そのような風速計は、後期に対象物を滅菌するのに用いられる流体の流れの中に配列される。しかしながら、そのような機械式風速計は、長期間滅菌に用いられる高温に耐え又は抵抗することができず、従って滅菌装置全体の故障を避けるために交換する必要がある。
【0007】
更に、上述の風速計では、流速の定時の計測だけを行うことができる。通常、滅菌装置は流体流れに対して相対的に大きな断面積を有する。流れは小さめの領域においてだけで計測されることから、計測領域だけで正しい値が測定されたとしても、他の断面では不適切な流速は検知されないままであり得るという危険性が残る。
【0008】
更なる問題は、公知の風速計は、1.2kg/m3の密度を有する流体に対して較正されるという事実で捉える必要がある。しかしながら、滅菌工程中で、流体は、流体密度が計測精度において不適格な偏差をもたらす0. 6kg/m3に降下する、約300℃の温度に到達できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE2100769
【特許文献2】US2007/0237670A1
【0010】
上述の困難さを考慮して、本発明は、流速の計測が改善した精度で行うことができる制御装置及び対象物の滅菌を制御する方法を提供するという目的に合うものである。
【0011】
この目的は、独立クレームに記載の装置及び方法によって解決される。更なる本発明の実施態様及び実施例は元に戻って参照される従属クレームの対象である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の態様によれば、ガス状又は液体流体による少なくとも1つの対象物の滅菌用の滅菌装置は、対象物が置かれる滅菌チャンバ、流体を所定の流速に加速するための少なくとも1つの加速デバイス、及び流体から粒子を分離するための少なくとも1つの濾過デバイスを含む。
【0013】
滅菌装置は更に、複数の開口部を有し、そして滅菌チャンバ内部の流体の流路に好ましく配置又は配列されている少なくとも1つのオリフィスデバイスを含む。更に、滅菌装置はオリフィスデバイスを交差しての圧力差に基づいて流体の流速を測定するための制御装置を含む。
【0014】
更なる態様では、装置は圧力差が第1の及び第2の圧力から生じて測定されることを特徴とし、ここで第1の圧力はオリフィスデバイスの流体流れの上流で計測され、そしてここで第2の圧力はオリフィスデバイスの流体流れの下流で計測される。
【0015】
そのような装置は、オリフィスデバイスの上流側での第1の圧力がオリフィスデバイスの全断面にわたってほとんど一定であるという利点を提供する。同じことは、オリフィスデバイスの下流側で計測した第2の圧力に当てはまる。従って、単回の定時の計測で、オリフィスデバイスの全断面にわたってそしてそれ故に流体流れの全断面にわたって第1の及び第2の圧力を測定することが可能である。オリフィスデバイス及びオリフィスデバイスの上流及び下流に配置されたそれぞれの圧力センサの装置を使用することにより、少なくとも1つの対象物に向けられた流体のフラックスを高精度で測定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
別の実施態様によれば、第1の及び第2の圧力センサはそれぞれオリフィスデバイスの下流及び上流に配列され、ここで第1の圧力センサは濾過デバイスの下流に配列され、そしてここで第2の圧力センサは滅菌する少なくとも1つの対象物の上流に配列される。
【0017】
少なくとも第2の圧力センサ、好ましくは両方の圧力センサは滅菌チャンバの内部に配列される。
【0018】
第1の及び/又は第2の圧力センサは、中心に、しかしまたオリフィスデバイスの側面縁端近くにも配置することができる。
【0019】
別の実施態様によれば、装置は流体を所定の滅菌温度に加熱するための少なくとも1つの加熱デバイスを含む。装置は更に、流体を加熱デバイスから加速デバイスに案内するための案内チャンネルを含む。加速デバイスの下流には、フィルタ及びオリフィスデバイスが逐次方式で配列される。それ故に、濾過デバイスは加速デバイスの下流に配置され、そしてオリフィスデバイスは濾過デバイスの下流に、しかし少なくとも1つの対象物の上流に配置される。従って、加熱及び加速流体は濾過デバイスを通して、そしてその後滅菌チャンバに配列された少なくも1つの対象物へオリフィスデバイスを通して案内される。
【0020】
従って、流体の温度を測定するために、装置は更に、少なくとも流体温度測定デバイスを含んでよい。流体温度測定デバイスは、加熱流体の温度及び/又は大気の温度を測定し又は計測するために、流体流れ中に、好ましくは滅菌チャンバの内部に及び/又は滅菌チャンバの外部に配列された温度計又は温度センサを含んでよい。
【0021】
別の実施態様によれば、流速の計測値を流速の所定の最小値及び/又は流速の所定の最大値と比較するために、装置は更に比較デバイスを含み、ここで、計測値が流速の所定の最大値を超えるとき、又は計測値が流速の所定の最小値を下回るとき、比較デバイスは流速の故障信号を発生させるように適合される。更に、流体温度の計測値を流体温度の所定の最小値及び/又は流体温度の所定の最大値と比較するように比較デバイスは適合され、ここで、流体温度の計測値が流体温度の所定の最大値を超えるとき、又は計測値が流体温度の所定の最小値を下回るとき、比較デバイスが流体温度の故障信号を発生するように更に適合される。
【0022】
更に、及び別の実施態様によれば、装置は更に、流体流速の所定の最小値が0.5m/sで、及び/又は流体流速の所定の最大値が1.2m/sであり、及び/又は流体温度の所定の最小値が凡そ200℃であり、及び/又は流体温度の所定の最大値が凡そ500℃であることを特徴とする。
【0023】
その上、装置は、流体の計測圧力差に基づいてそして計測温度に基づいて、滅菌流体の流速値を計算するための計算デバイスを更に含んでよい。
【0024】
別の実施態様によれば、装置は更に、計算デバイスは、流体の計測流速、少なくとも1つの対象物が滅菌チャンバ中で流体に曝されている所定の時間に基づいて、及び/又は流体の温度に基づいて、流体が対象物の十分な滅菌に適切であるかを決定するのに適合されることを特徴とし、そしてここで計算デバイス及び/又は制御装置は、流体が少なくとも1つの対象物を十分に滅菌するのに適切でないことを決定するのに応じて、流速を増加及び/又は減少させるために第1の信号を発生させ、及び/又は流体温度を増加又は減少させるために第2の信号を発生させるように適合される。
【0025】
特に、制御装置は、流体の状態が少なくとも1つの製品を十分に滅菌するのに適切でないという、測定に応じた加速デバイスへ第1の信号を発生させ及び/又は伝達するように適合される。第1の信号を受け取った時点で、制御装置はそれに応じて加速デバイスを操作することにより流速を増加及び/又は減少させるように適合される。同様に、制御装置は、流体温度を増加及び/又は減少させるために、それぞれ加熱デバイスへ第2の信号を発生させ及び/又は伝達するように適合される。
【0026】
装置は更に、滅菌する少なくとも1つの対象物を流体流れ中に位置決めし及び/又は動かすための位置決めデバイスを含む。好ましくは、位置決めデバイスによって、少なくとも1つ又は複数の対象物は、それらが流体流れに曝される区域へ位置しそして動くことができる。
【0027】
別の実施態様によれば、位置決めデバイスは、流体流れを通って滅菌する予定の複数の対象物の連続的又は段階的移動を行うのに好適な耐温度性ベルトコンベアを含む。
【0028】
別の好ましい実施態様では、流体は、少なくとも1つの対象物の滅菌後に流体がフィードバックチャンネルを通して案内され、そして加熱デバイスへフィードバックされる、閉回路に閉じ込められる。
【0029】
尚別の実施態様では、装置は更に停止デバイスを含み、これは加速デバイス及び/又は加熱デバイスを停止し及び/又は絞るための流速の故障信号及び/又は流体温度の故障信号を処理するように適合される。このように、装置の過熱は実質的に防止することができる。
【0030】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1つの対象物が滅菌装置の滅菌チャンバに位置し、その内部で対象物は流体への曝露により滅菌される、加熱したガス状又は液体流体による少なくとも1つの対象物の滅菌を制御する方法に関するものであって、ここで本方法は、流体を加速デバイスによって所定の流速に加速し、流体から濾過デバイスによって粒子を分離し、そして流体の流路に配置されたオリフィスデバイスの複数の開口部を通して流体を案内し、そして複数の開口部を含むオリフィスデバイスを公差しての圧力差に基づいて流体の流速を決定する工程を含む。
【0031】
更なる実施態様によれば、圧力差は、オリフィスデバイスの上流で計測される第1の圧力、及びオリフィスデバイスの下流で計測される第2の圧力を比較することによって測定される。第1の及び第2の圧力を比較することにより、圧力差は例えば計測した第1の及び第2の圧力を差し引くことにより得ることができ、ここでオリフィスデバイスをわたって流れの方向における圧力差は測定する流速の直接表示である。
【0032】
加えて、方法は、加熱デバイスによって所定の滅菌温度まで流体を加熱する工程によって特徴付けられ得る。
【0033】
その上、制御方法は流体の温度を測定することを含んでよい。
【0034】
別の好ましい実施態様によれば、流速ωは
【数1】

として計算され、
ここでRiは空気の気体定数であり、Δpは測定圧力差であり、τは計測流体温度であり、Pairは外気圧であり、そしてΦはオリフィスデバイスの固有値である。
【0035】
これに加えて、方法は、流速の計測値を流速の所定の最小値及び流速の所定の最大値と比較すること、そして計測値が流速の所定の最大値を超えるとき、又は計測値が流速の所定の最小値を下回るとき、流速の故障信号を発生させること、及び/又は流体温度の計測値を流体温度の所定の最小値及び流体温度の所定の最大値と比較すること、そして流体温度の計測値が流体温度の所定の最大値を超えるとき、又は計測値が流体温度の所定の最小値を下回るとき、流体温度の故障信号を発生させることを含んでよい。
【0036】
更に、方法は、流体の計測圧力差及び計測温度に基づいて、流体の流速値を計算することを含んでよい。
【0037】
加えて、方法は、対象物が滅菌チャンバに位置した状態の所定時間を指定する入力信号を計算デバイスによって受け取ること、入力信号及び計算した流速に基づいて流体の状態が所定の時間中に対象物の十分な滅菌に適切であるかを、計算デバイスによって測定することを含んでよい。流体の状態が十分な滅菌に適切でないことが決定された場合、それぞれ第1の信号は流速を増加及び/又は減少させるために発生しそして加速デバイスに伝達され、及び/又は第2の信号は流体温度を増加又は減少させるために発生しそして加熱デバイスに伝達され得る。
【0038】
その上、方法は、対象物の滅菌後フィードバックチャンネルを通してそれを案内することで加熱デバイスへの流体のフィードバックによって特徴付けられ得る。これに加えて、流速の故障信号及び/又は流体温度の故障信号は比較デバイスから受け取られてよく、そして停止デバイスが少なくとも1つの故障信号を受け取るとき、加速デバイスを停止し及び/又は絞るための停止デバイスによって更に処理されてよい。
【0039】
更に、方法は少なくとも1つの対象物を滅菌するために乾熱滅菌を実施し得る。
【0040】
当業者には当然のことながら、種々の変更及び変化が、その精神及び範囲から逸脱することなく本発明に対してなし得る。更に、留意すべきこととして、添付クレームで使用されるいずれの参照符号も本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0041】
本発明は、より詳しくは下記のその好ましい実施態様の説明から理解し得るものであり、これは実施例によってのみそして添付図面を参照して与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】滅菌装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1では、制御装置を備えた本発明に記載の滅菌装置10の概略構造が説明されている。滅菌装置10は対象物7の滅菌に対して流体を使用し、ここで流体はガス状又は液体状態であり得る。表示対象物は、特にアンプル、カルトゥーシュ(cartouche)、バイアル、耐熱性注射器、針、多回用量容器及び/又はカープール(carpoule)のような、医療デバイスの同義語として使用される。従って、滅菌装置は、流体が熱を対象物に移動させるのに使用される乾熱滅菌型装置に関する。
【0044】
下記では滅菌装置の構成が、滅菌装置10を通して流体の経路をフォローアップすることによって記載される。加熱デバイス1では、流体はそれが対象物7の十分な滅菌に好適で又は適切な流体温度に到達するまで加熱される。加熱デバイス1は、例えば電気ヒータ又は燃焼ヒータを含むことができる。十分な滅菌のためには、流体温度は200℃と500℃の間隔、好ましくは260℃と320℃の間隔内にする必要がある。
【0045】
滅菌装置10は更に流体を加速するための加速デバイス2を含み、それにより流体は案内チャンネル11を通して加熱デバイス1から加速デバイス2まで吸い込まれる。好ましくは、加速デバイス2はファン、ブロワ又はタービンを含む。加速デバイス2から、流体は円錐形インレット12a及びフィルタシート12bを含むフィルタチャンバ12へ移動される。円錐形インレット12aを通過するとき、流体流れは、ほとんど一定の層流及び均一流が作り出されるように、加速デバイス2の小断面から円錐形インレット12aの大断面まで横方向に広がる。フィルタシート12bでは、フィルタ3は、不純物又は汚れとして流体中に存在する可能性があり、そしてそれ故に対象物7の滅菌の質を低下させる可能性のある、流体から粒子を濾過するために置かれている。
【0046】
フィルタ3から出た後、流体はフィルタ3の下流側に置かれたオリフィスデバイス4を通過する。オリフィスデバイス4は、流体がそこを通過することができるように、流体流れの方向に向けられた複数の開口部4aを備える。通常は平面構造を含むオリフィスデバイスは、流体の流れの方向に直角に向けられている。それ故、平面構造の表面法線は実質的に流れの方向と平行に整列している。本オリフィスデバイス4は、耐熱性ステンレススチールで作られた穿孔金属板として構築されてよく、従って流体流れの断面を収縮させる。それは従って、オリフィスデバイス4の上流に存在する第1の圧力p1から、オリフィスデバイス4の下流側に置かれた第2の圧力p2まで流体の圧力損失を誘導する。少なくとも2つの別々の圧力センサ14a、14bを用いたこれらの2つの圧力p1及びp2の計測により、圧力差Δpを計算デバイス5によって測定することができる。流体の流速を容易に計算することができるように、この圧力差Δpは流体流れ中の流体流速に比例する。第1の及び第2の圧力は、流体流れ中に配置されているそれぞれの圧力センサ14a、14bによって計測される。
【0047】
オリフィスデバイス4の下流で、滅菌チャンバ8は滅菌する対象物7を受け取るために滅菌装置10中に備える。滅菌チャンバ8中では、滅菌状態になるように少なくとも1つの単一対象物7が曝され、又は複数の対象物7が加熱流体に曝される。それにより、対象物7は位置決めデバイス6に置かれ、これは台又はホルダとして具体化することができる。他の実施態様では、対象物7は位置決めデバイス6を具体化するコンベアベルトに次々に置かれる。
【0048】
あるいは、オリフィスデバイス4は滅菌チャンバ8の上流側に備えることなく、滅菌チャンバ8に統合し得る。当該実施例では、滅菌チャンバ8はフィルタチャンバ12に隣接している。言い換えれば、流体がフィルタチャンバ12から出ると、それは直ちに滅菌チャンバ8に入ることになる。
【0049】
滅菌チャンバ8を通って流れるとき、流体は対象物7と接触するようになり、そして高い流体温度に因り対象物は滅菌される。次いで流体は滅菌チャンバ8から出て、フィードバックチャンネル9を通して加熱デバイス1に案内される。図1に示される実施態様では、滅菌に使用される流体は、流れが加速デバイス2によって持続される閉回路に保持されそして留められる。
【0050】
他の実施態様では、滅菌装置は開放型システムとして形成することができ、ここで、流体は周囲から加熱デバイス2へ吸い込まれ、そして閉鎖型システムに関して上記と同じ経路を通った後で、それは再び周囲に吹き込まれる。
【0051】
下記において滅菌方法はより詳細に記載される。コンベアベルト6は、対象物7を所定の速度で滅菌チャンバ8を通して移動させ、このことは対象物が所定の時間だけ滅菌チャンバ8に残っていることを意味する。この時間中対象物7は流体によって十分に滅菌されていることを保証する必要がある。従って、流体の流速は0.5m/sと1.2m/s間の間隔、好ましくは凡そ0.8m/sの値になるはずである。この速度範囲では有利に測定デバイス5の信号はほとんど一定で、わずかに非常に小さな変化又は変動を含む。
【0052】
従って、滅菌方法では、下記の因子:対象物が加熱流体に曝される時間、流体温度及び流体の速度が滅菌結果に対して重要な影響を有する。その上、対象物が加熱流体に曝される時間は循環のコンベアベルト速度の関数である。ある程度固定値である時間から外れて、流体の温度及び速度は十分な滅菌結果をもたらすように制御する必要がある。
【0053】
上述のように、流速は圧力センサ14a、14bによって計測された圧力差に基づいて算出され、測定又は計算デバイス5によって決定される。流体温度もフローストリーム中に備えたそれぞれのセンサによって計測される。実際の流速は次いで計算デバイス5によって下記の式を用いて算出される:
【数2】

ここで、プレースホルダーは:
i : 空気の気体定数、
Δp : 測定圧力差
τ : 測定流体温度
air: 外気圧、及び
Φ : オリフィスデバイスの特性値を示す。
【0054】
特性値Φは、滅菌装置の幾何形状及び形状、並びにオリフィスデバイス4に備わるサイズ及び形態に依存する。滅菌装置が種々の異なる流体温度で操作することができるように、この計算方法は更に流体温度の偏差を考慮に入れる。言い換えると、流体温度の変化の場合でも流速及び/又は温度を制御すること、及び/又は流速の変化のとき、温度又は流速を修正することが可能である。
【0055】
また、本発明の構造では、対象物7が加熱流体に曝され及び/又は滅菌チャンバ8中に残っている時間を、例えばコンベアベルト速度を修正することにより変えることが可能になる。しかしながらこれは流体温度の変化を必要とする。例えばコンベアベルト速度が増大するときは、流体温度は要求する滅菌の質を維持するために増大させる必要がある。一方で、経済的な理由で、例えばコンベアベルト速度を減少させることにより該時間が延長するときは、流体温度を低下することができ、その一方で同じ滅菌の質を達成することができる。
【0056】
本発明は従って、流体温度を考慮に入れながら流速を高い精度で算出することができるという利点を提供する。
【0057】
滅菌装置が正しく及び/又は所定の調整流体によって操作されていることを保証するために、比較デバイスを、流速の計測値を流速の所定の最小値と及び/又は流速の所定の最大値と比較するために備える。言い換えると、比較デバイスは、流速が例えば0.5m/sと1.2m/s間の一定間隔内にあるかないかを比較する。計測値が流速の所定の最大値を超える場合及び/又は流速の所定の最小値を下回る場合、比較デバイスは流速の故障信号を発生する。
【0058】
あるいは又はそれに加えて、比較デバイスは、流体温度の計測値を流体温度の所定の最小値と及び/又は流体温度の所定の最大値と比較する、即ち比較デバイスは、流体温度が上述の所定の間隔内、即ち200℃と500℃間にあるかをチェックする。流体温度の計測値が流体温度の所定の最大値を超える場合及び/又は流体温度の所定の最小値を下回る場合、比較デバイスは流体温度の故障信号を発生する可能性がある。
【0059】
本発明の実施態様では、これらの故障信号は、警報ランプを用いることにより及び/又は警報音を発生させることにより、滅菌装置の使用者に例えばディスプレイ上で表示される。それにより、温度の故障信号及び流速の故障信号は、どの故障が起こるかによって個別に又は同時に表示される。
【0060】
更なる好ましい実施態様では、故障信号は、比較デバイスによって発生し表示され、そして次いで比較デバイスからの流速の故障信号及び/又は流体温度の故障信号を受け取り及び/又は処理するのに適切な、停止デバイスによって受け取られる。受診信号に基づいて、停止デバイスは加速デバイス2及び/又は加熱デバイス1を停止し及び/又は絞るための信号を発生する。従って、制御装置は、少なくとも1つのパラメータがその許容作動範囲を逸脱するとき、緊急遮断機能を備える。
【0061】
これに加えて、計算デバイスは、対象物7がその間滅菌チャンバ8に置かれた所定の時間を指定するデータを含む入力信号を受け取る。この時間は、入力端子を経て使用者による入力を通してでも決定することができ、又は固定パラメータであってよい。計算デバイスは、一定入力時間及び算出流速を基にして、流体の状態が所定の時間中に対象物7の十分な滅菌に対して適切であるかを決定する。言い換えると、計算デバイスは、所望の滅菌結果を達成することができるように、実質の温度を有する実質の質量流が対象物7を滅菌するのに適切であるかについて自立的に決めることが可能である。計算デバイスが流体の状態は十分な滅菌に適切ではないことを決める場合、制御装置は、滅菌流体の質量流が所要の滅菌結果を達成するのに十分となるように、流速を増加及び/又は減少させるために加速デバイス2に伝達される第1の信号を発生する。
【0062】
代わりに又は加えて、制御装置は、流体温度を増加及び/又は減少させるために加熱デバイス1に伝達される第2の信号を発生する。このように、制御装置は、例えば加熱デバイス1の加熱出力を増加及び/又は減少させることによって、流体温度の偏差を自動的に補正することができる。流速の偏差は、例えば加速デバイス2のファン回転速度を増加及び/又は減少させることによって、制御装置で補正することができる。これに関連した表現状態は、正しい滅菌が行われるように、組み合わせるべき流体温度及び流速の対応ペアとして理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−対象物(7)が置かれる滅菌チャンバ(8)、
−ガス状又は液体流体を所定の流速に加速するための少なくとも1つの加速デバイス(2)、
−流体から粒子を分離するための少なくとも1つの濾過デバイス(3)、
−流体の流路に配置されている複数の開口部(4a)を有する少なくとも1つのオリフィスデバイス(4)を含んでなる、ガス状又は液体流体による対象物(7)の滅菌のための滅菌装置(10)であって、
オリフィスデバイス(4)を交差しての圧力差(Δp)に基づいて、流体の流速を測定するための制御装置によって特徴付けられる、上記滅菌装置(10)。
【請求項2】
圧力差(Δp)が、オリフィスデバイス(4)の上流側の第1の流体圧力(p1)とオリフィスデバイス(4)の下流側の第2の流体圧力(p2)の差であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
更に、流体を所定の滅菌温度に加熱するための加熱デバイス(1)を含んでなり、そして流体を加熱デバイス(1)から加速デバイス(2)に案内するための案内チャンネルを含んでなる、請求項1又は2に記載の装置であって、濾過デバイス(3)が加速デバイス(2)の下流に配置され、そしてオリフィスデバイス(4)が濾過デバイス(3)の下流であるが滅菌チャンバ(8)に位置する対象物(7)の上流に配置される、上記装置。
【請求項4】
流体の温度を測定するために、少なくとも1つの流体温度測定デバイスを更に含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
更に、
−計測値が流速の所定の最大値を超えるとき、及び/又は計測値が流速の所定の最小値を下回るとき、比較デバイスが流速の故障信号を発生するように適合される、流速の計測値を流速の所定の最小値と、及び/又は流速の所定の最大値と比較するための、
及び/又は
−流体温度の計測値が流体温度の所定の最大値を超えるとき、及び/又は計測値が流体温度の所定の最小値を下回るとき、比較デバイスが流体温度の故障信号を発生するように適合される、流体温度の計測値を流体温度の所定の最小値と、及び/又は流体温度の所定の最大値と比較するための、
比較デバイスを含んでなる、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の装置。
【請求項6】
−流体流速の所定の最小値が0.5m/sで、及び/又は流体流速の所定の最大値が1.2m/sであり、及び/又は
−流体温度の所定の最小値が凡そ200℃で、及び/又は流体温度の所定最大値が凡そ500℃である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
更に、流体の計測圧力差(Δp)及び計測温度に基づいて、滅菌流体の流速値を計算するための計算デバイス(5)を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
計算デバイス(5)は、
−流体の所定の流速、
−少なくとも1つの対象物(7)が滅菌チャンバ中に置かれる所定の時間、及び
−流体の温度
に基づいて、流体が対象物(7)の十分な滅菌に適切であるかを、決定するように適合され、
そして計算デバイス(5)及び/又は制御装置は、流体が少なくとも1つの対象物(7)を十分に滅菌するのに適切でないことを決定するのに応じて、流速を増加及び/又は減少させるために第1の信号を発生させ、及び/又は流体温度を増加及び/又は減少させるために第2の信号を発生させるように適合されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
更に、滅菌しようとする少なくとも1つの対象物(7)を流体流れ中に置き及び/又は動かすための位置決めデバイス(6)を含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
位置決めデバイス(6)が、流体流れを通して複数の対象物(7)を段階的に又は連続的に動かすのに適切な耐温度性ベルトコンベアであることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
対象物(7)の滅菌後に、流体がフィードバックチャンネル(9)を通して案内されそして加熱デバイス(1)へフィードバックされる、流体のための閉回路を更に含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
加速デバイス(2)及び/又は加熱デバイス(1)を停止させ及び/又は絞るため流速の故障信号及び/又は流体温度の故障信号を処理するように適合されている停止デバイスを更に含んでなる、請求項5〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの対象物(7)が滅菌装置(10)の滅菌チャンバ(8)に置かれ、そしてここで対象物(7)が加熱したガス状又は液体流体に曝され、
−流体を加速デバイス(2)によって所定の流速に加速する工程;
−流体から濾過デバイス(3)によって粒子を分離する工程;
を含んでなる、流体による少なくとも1つの対象物(7)の滅菌を制御する方法であって、
−流体の流路に配置されたオリフィスデバイス(4)の複数の開口部を通して流体を案内すること;及び
−オリフィスデバイス(4)を交差して圧力差(Δp)に基づいて流体の流速を決定すること;
を特徴とする、上記方法。
【請求項14】
オリフィスデバイス(4)の上流で計測される第1の流体圧力(p1)をオリフィスデバイス(4)の下流で計測される第2の流体圧力(p2)と比較することにより圧力差(Δp)を測定することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
流速ωが
【数1】

として計算され、
ここで、Riは空気の気体定数であり、Δpは測定圧力差であり、τは計測された流体温度であり、Pairは外気圧であり、そしてΦはオリフィスデバイスの固有値である、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−507160(P2013−507160A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532619(P2012−532619)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065098
【国際公開番号】WO2011/042541
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】