滴吐出装置およびそれを備えた画像形成装置
【課題】ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできる滴吐出装置を提供する。
【解決手段】駆動電圧生成部と圧力発生素子間の導通、非導通を切り替えるスイッチ11、スイッチ制御部12を備え、スイッチ制御部12は、液滴データに基づいてスイッチ11の導通または非導通を決定し、ノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群101,102,103に分類し、各ノズル群101,102,103毎に、それぞれ対応するスイッチ11の導通、非導通を切り替えるタイミングを制御する。
【解決手段】駆動電圧生成部と圧力発生素子間の導通、非導通を切り替えるスイッチ11、スイッチ制御部12を備え、スイッチ制御部12は、液滴データに基づいてスイッチ11の導通または非導通を決定し、ノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群101,102,103に分類し、各ノズル群101,102,103毎に、それぞれ対応するスイッチ11の導通、非導通を切り替えるタイミングを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット方式の画像形成装置などに用いられる滴吐出装置に係り、特に液滴を吐出するノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェット方式の画像形成装置では、高速/高解像度印刷に対応するため、インクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと略称する)1個当りに集積するノズル数が増加する傾向にあり、これに伴い記録ヘッドの長尺化が進んでいる。記録ヘッドが長尺化すると、ノズル配列の中央部と端部での機械的剛性の差異が顕著になり、ノズル位置に依ってインク滴吐出特性が異なるという問題が発生し、画質が劣化する場合がある。
【0003】
ノズル位置に依存するインク滴吐出特性を補正する方法として、列状に配置されたノズルを、複数のノズル群に分類して、各ノズル群毎に異なる駆動波形を供給する方法が既に知られている(特開2005−88436号公報)。
また、ノズル位置に依存する吐出特性差異を相殺するように、予め印刷画像に補正を加えておく方法が既に知られている(特開2003−48314号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今までの複数のノズル群毎に異なる駆動波形を供給する方法では、駆動波形の生成回路をノズル群毎に準備する必要があるため、制御装置が大型化し、高コストになるという問題があった。また、印刷画像に補正を加える方法では、1画素未満の位置補正ができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできる滴吐出装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の第1の手段は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
液滴データに基づいて前記スイッチの導通または非導通を決定し、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎に、それぞれ対応する前記スイッチの導通、非導通を切り替えるタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡(例えば1画素)を形成する周期(例えば印刷周期)内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記複数のノズル群毎に、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、
当該滴吐出装置は、液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡(例えば1画素)の階調を表現する滴吐出装置であって、
前記スイッチ制御部は、
前記ノズル群の分類と、複数ビットで構成される吐出データ(例えば印刷データ)に基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第4の手段は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部と、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出データ(例えば印刷データ)に拡張ビットを付加するデータ変換部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部による変換後のデータに基づいて、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第5の手段は前記第4の手段において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡(例えば1画素)を形成する周期(例えば印刷周期)内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部の変換後の吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、
当該滴吐出装置は液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡(例えば1画素)の階調を表現する滴吐出装置であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第7の手段は前記第2、第3、第5、第6の手段において、
前記ノズル群のうち、n番目のノズル群の平均吐出速度Vn_aveと、[n+1]番目のノズル群の平均吐出速度V[n+1]_ave と、駆動電圧パルスの繰り返し周期Tplsと、ノズルと液滴被着体(例えば記録媒体)間のギャップdの間に、
Tpls= | d/Vn_ave − d/V[n+1]_ave |
の関係が成り立つように、前記ノズル群の分類を決定することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第8の手段は前記第1ないし第7のいずれかの手段において、
前記ノズル列を、少なくとも、ノズル列の一方の端部と、ノズル列の他方の端部と、前記ノズル列の一方の端部と他方の端部の間にある中央部の3つのノズル群に分類して、
前記ノズル列の一方の端部と他方の端部のノズル群の吐出タイミングを、前記ノズル列の中央部のノズル群の吐出タイミングよりも遅くなるように制御することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第9の手段は前記第8の手段において、
前記ノズル列の一方の端部のノズル群と他方の端部のノズル群の吐出タイミングが同じであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第10の手段は、
インク滴を吐出する滴吐出装置と、
その滴吐出装置のノズルと対向するように搬送される記録媒体を備え、
前記滴吐出装置と前記記録媒体を相対移動させて、前記記録媒体上に前記インクによる滴画像を形成する画像形成装置において、
前記滴吐出装置が前記第1ないし第9のいずれかの手段の滴吐出装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は前述したような構成になっており、ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできる滴吐出装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ノズル位置とインク滴の吐出速度との相関例を示す図である。
【図2】本発明の実施例において、1画素を2値で表現し、ノズル列を3つのノズル群に分類する場合の駆動波形例を示す図である。
【図3】本発明の実施例において、ノズル列を3つのノズル群に分類した場合の、ノズル位置と平均吐出速度の相関例を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るライン型インクジェット方式の画像形成装置において、ヘッドモジュールの配置例を示す図である。
【図5】そのヘッドモジュールの拡大底面図である。
【図6】そのヘッドモジュールの拡大断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るインクジェット方式の画像形成装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施例に係るヘッドモジュールを含む滴吐出装置と上位装置の概略接続について説明するための図である。
【図9】本発明の実施例に係る滴吐出装置と上位装置の接続、および滴吐出装置の内部構成を説明するための概略構成図である。
【図10】本発明の実施例に係る駆動波形生成部の概略構成図である。
【図11】その駆動波形生成部内のパターン記憶メモリとタイミング記憶メモリの記憶内容を説明するための図である。
【図12】その駆動波形生成部の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の実施例に係るデータ変換部の概略構成図である。
【図14】そのデータ変換部の動作を説明するための図である。
【図15】本発明の実施例に係るヘッドモジュールの構成を説明するための図である。
【図16】そのヘッドモジュールの選択論理群のうち1つの選択論理の動作を説明するための図である。
【図17】本発明の実施例に係るピエゾ素子に供給される駆動波形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
インクジェット方式の画像形成装置では、記録ヘッドの長手方向に沿って多数本のノズルが一列あるいは複数列にわたって配置されている。図1は、この記録ヘッドにおけるノズル位置とインク滴の吐出速度との相関例を示す図である。
この図に示すように、インク滴の吐出速度は、ノズル配列の端部で速く、ノズル配列の中央部で遅くなる傾向がある。インクジェット記録装置のように記録ヘッドと記録媒体が相対移動している系では、滴吐出速度の差が、インク滴の着弾位置差として現れ、画質を劣化させる。
【0019】
ここで、ノズル配列の中央部のインク滴速度をVjc[m/s]、ノズル配列の端部のインク滴速度をVje[m/s]、記録ヘッドと記録媒体間のギャップをd[m]、記録ヘッドと記録媒体の相対速度をVr[m/s]、ノズル配列の中央部のインク滴とノズル配列の端部のインク滴の着弾位置ずれをΔD[m]とおき、インク滴速度が時間によらず一定であると考えると、
ΔD[m]={ノズル配列の中央部のインク滴が着弾するまでの時間[s]−ノズル配列の端部のインク滴が着弾するまでの時間[s]}×Vr[m/s]=(d/Vjc−d/Vje)×Vr ・・・・・・式(1)
で表される。このとき、ノズル配列の中央部の滴吐出タイミングとノズル配列の端部の滴吐出タイミングにΔT[s]の差を設けると、前記式(1)は
ΔD[m]=(d/Vjc−d/Vje−ΔT)×Vr ・・・・・・式(2)
で表され、適切な滴吐出タイミングの差ΔT[s]を設定することにより、着弾位置ずれΔD[m]をゼロにできることが分かる。
【0020】
ノズル位置に依存するインク滴吐出速度の差をゼロにするためには、全ノズル毎に独立に吐出タイミングを制御する必要があるが、全ノズル毎の吐出タイミング制御をしなくとも、ノズル列を複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出タイミングを制御することで、着弾位置ずれを軽減することができる。
【0021】
すなわち、ノズル配列の端部の吐出開始タイミングを遅らせ、ノズル配列の中央部の吐出開始タイミングを早めることにより、記録媒体への着弾位置(着弾時刻)のばらつきを軽減できる。
【0022】
図2に、1画素を2値(インク滴を吐出する/吐出しない)で表現し、ノズル列を3つのノズル群(左端部/中央部/右端部)に分類する場合の駆動波形例を示す。
【0023】
駆動波形は、ノズル列の「中央部駆動用の部分」と「端部駆動用の部分」を時分割で含み、インク滴吐出速度が遅くなるノズル配列の中央部分には前半波形を選択供給し、吐出速度が速くなるノズル配列の端部には後半波形を選択供給するようにする。なお、ノズル配列の左端部とノズル配列の右端部は滴吐出速度が同じなので、共通の駆動波形を使用することができる。
【0024】
このように各ノズル群の駆動波形を時分割で含むようにすることで、ノズル列で共通の駆動波形生成回路を使用でき、装置が大型化、高コスト化することを抑えつつ、ノズル位置に依る着弾位置ずれを軽減することができる。
【0025】
また、各ノズル群の駆動波形は、1画素間隔相当の印刷周期内に時分割で配置するため、その補正精度は1画素未満となる。ここで、吐出タイミングの補正量はΔT[s]で固定であるが、この補正量に合わせてノズル列を分類することにより、適切な補正を実施することができる。
【0026】
例えば、ノズル配列の端部の平均吐出速度Vje_ave[m/s]と、ノズル配列の中央部の平均吐出速度Vjc_ave[m/s]と、記録ヘッドと記録媒体間のギャップd[m]と、吐出タイミング補正量ΔT[s]の間に、
ΔT=(d/Vjc_ave−d/Vje_ave) ・・・・・・式(3)
の関係が成り立つ場合に、前記式(2)の着弾位置ずれΔD[m]がゼロになり、適切な補正を実施することができる。
【0027】
図3に、ノズル列を3つのノズル群に分類した場合の、ノズル位置と平均吐出速度の関係例を示す。この図から、Vje_aveとVjc_ave の値は、ノズル列の分類の仕方に依存することが分かる。すなわち、ノズル列の分類の仕方により、式(3)を満足するようなVje_aveとVjc_aveの値を設定することができる場合がある。
【0028】
図2、図3の例では、ノズル列を3つのノズル群に分類したが、分類数を増やすことで、補正精度をさらに向上することができる。
【0029】
ここまで述べた方法を応用することにより、装置を大型化、高コスト化することなく、1画素未満の精度で、ノズル列の中央部と端部のインク滴吐出速度差に起因する着弾位置ずれを補正し、インクジェット方式の画像形成装置の画質を向上することができる。
【0030】
図4は、ライン型インクジェット方式の画像形成装置におけるヘッドモジュールの配置例を説明するための図ある。
【0031】
本実施例に係る画像形成装置では、1色分の印刷に10個のヘッドモジュールを使用し、フルカラー画像を印刷するために40個のヘッドモジュールを搭載している。ヘッドモジュール50〜59はブラックインク滴を吐出し、ヘッドモジュール60〜118はシアンインク滴を吐出し、ヘッドモジュール70〜79はマゼンダインク滴を吐出し、ヘッドモジュール80〜89はイエローインク滴を吐出する。
【0032】
これらヘッドモジュール50〜59、ヘッドモジュール60〜118、ヘッドモジュール70〜79、ヘッドモジュール80〜89は図4に示すように配置され、互いに連結されて記録ヘッド10を構成している。
各ヘッドモジュールは、インク滴吐出面と記録媒体9が対向するように設置されている。各色10個のヘッドモジュールを千鳥状に配列することで、記録媒体9の全幅に印刷可能なだけの印刷領域を確保している。記録媒体9は矢印で示すように千鳥状に配列されたヘッドモジュール群と直交する方向に搬送され、搬送速度に同期して、インク滴の吐出が行われる。
【0033】
図5は、ヘッドモジュールのノズル配列を説明するためのヘッドモジュールの拡大底面図である。
本実施例ではヘッドモジュール1はそれの長手方向に沿って320個のノズルNを有し、ノズルNは一列に並んでいる。左端のノズルNからN1、N2、N3、・・・・・・N318、N319、N320とおくと、右端のノズルNがN320になる。図6に示すように各ノズルN毎にインクを加圧する圧力室と、圧力発生素子であるピエゾ素子を備えており、ピエゾ素子に印加する電圧によりインク滴の吐出が制御される。
【0034】
図6は、ヘッドモジュールの拡大断面図である。
ヘッドモジュール1は、流路基板41と、高剛性プレート42と、ピエゾ素子43とから主に構成されている。
前記流路基板41は、前述のように多数のノズルNを1列に形成したノズルプレート44と、前記ノズルNと連通する連通流路45を有するチャンバープレート46と、圧力室47とリストリクタ48を兼ねた開口穴49を有するリストリクタプレート16と、前記圧力室47とリストリクタ48を封止する薄板のダイアフラムプレート17の積層体から構成されている。前記ダイアフラムプレート17は、振動板18を有している。
【0035】
前記高剛性プレート42は、前記流路基板41を保持するとともに、外部からのインクを導入して貯留する共通インク室19が形成され、共通インク室19の流路基板41側はインク供給のため開口している。共通インク室19の隣に開口溝20が形成され、そこに前記ピエゾ素子43が挿入されて、前記ダイアフラムプレート17(振動板18)に固着されている。
【0036】
このヘッドモジュール1は、前記ピエゾ素子43に後述するような駆動波形を印加することにより、前記振動板18を介して、前記圧力室47の容積を膨張・収縮させて、前記圧力室47からインク滴を吐出し、記録媒体9(図4参照)上に着弾して、所望の画像を形成する。
【0037】
図7は、本発明の実施例に係るインクジェット方式の画像形成装置Xの概略構成図である。
同図に示すように画像形成装置Xは、記録媒体供給部111と記録媒体回収部112の間に配置されている。記録媒体供給部111から高速で繰り出された連続した長尺状の記録媒体9は画像形成装置Xで所望のカラー画像が形成され、その後記録媒体回収部112で巻き取り回収される。
【0038】
画像形成装置X内の記録媒体搬送装置は、記録媒体供給部111から供給された記録媒体9の幅方向の位置決めを行なう規制ガイド113、駆動ローラと従動ローラで構成されたインフィード部114、記録媒体9の張力に応じて上下動して位置信号を出力するダンサローラ115、記録媒体9の蛇行を制御するEPC(Edge Position Control)116、蛇行量のフィードバックに使用する蛇行量検出器117、記録媒体9を設定された速度で搬送するために一定速度で回転する駆動ローラと従動ローラで構成されたアウトフィード部120、記録媒体9を装置外に排出する駆動ローラと従動ローラからなるプラー121などを有している。
【0039】
この記録媒体搬送装置は、前記ダンサローラ115の位置検出を行い、前記インフィード部114の回転を制御して搬送中の記録媒体9の張力を一定に保つ張力制御型の搬送装置である。
【0040】
また画像形成装置X内には、図4に示す記録ヘッド10と、記録媒体9を介して記録ヘッド10と対向するように設けられたプラテン118と、乾燥手段119が設けられている。乾燥手段119は、記録ヘッド10により印刷されたインクが他の部分に付着することを防止するためにインクの乾燥・定着を行なう。
【0041】
図8は、ヘッドモジュールを含む滴吐出装置と上位装置(コントローラ)の概略接続について説明するための図である。
滴吐出装置は1個のヘッドモジュールを含み、ピエゾ素子43(図6参照)に印加する電圧を制御する。本実施例では総数40個の滴吐出装置を備えている。各滴吐出装置は、上位装置であるコントローラ4にそれぞれ接続されている。
【0042】
滴吐出装置群5,6,7,8は、それぞれ10個の滴吐出装置で構成される。滴吐出装置群5は前記ヘッドモジュール50〜59(図4参照)を含みブラックインク滴の吐出制御に使用し、滴吐出装置群6は前記ヘッドモジュール60〜68(図4参照)を含みシアンインク滴の吐出制御に使用し、滴吐出装置群7は前記ヘッドモジュール70〜79(図4参照)を含みマゼンダインク滴の吐出制御に使用し、滴吐出装置群8は前記ヘッドモジュール80〜89(図4参照)を含みイエローインク滴の吐出制御に使用する。
【0043】
コントローラ4は、記録媒体9の搬送制御を実施しており(搬送制御手段は図7参照)、記録媒体9の速度(位置)制御と滴吐出装置制御の同期用の信号を生成し、それぞれの滴吐出装置群5,6,7,8へ送信する。
【0044】
コントローラ4は、各種画像を印刷用のC、M、Y、K画像(Cyan、Magenta、Yellow、Black)に変換し、ガンマ変換等の画像処理を実施した後、それぞれの滴吐出装置に対して印刷データを送信する。また、各ピエゾ素子43(図6参照)に印加する電圧を生成するためのピエゾ駆動波形データを、それぞれの滴吐出装置群5,117,8に対して送信する。
【0045】
図9は、滴吐出装置と上位装置(コントローラ)の接続、および滴吐出装置の内部構成を説明するための概略構成図である。
滴吐出装置100はヘッドモジュール1とデータ変換部2と駆動波形生成部3で構成され、データ変換部2と駆動波形生成部3がヘッドモジュール1とコントローラ4に接続されている。
【0046】
データ変換部2は、コントローラ4が出力する1画素あたり2bitの印刷データを、1画素あたり3bitの吐出データに変換し、ヘッドモジュール1へ送信する。このときに追加する1bitに、ノズル配列の位置情報が含まれている。
【0047】
コントローラ4は、3本の信号線(prt_data[1:0]とprt_clk)を使用して印刷データを送信する。データ変換部2は、4本の信号線(jet_data[2:0]とjet_clk)を使用して吐出データを送信し、送信終了後にjet_lach信号をアサートする。ヘッドモジュール1がjet_lachのアサートを検出すると、直前までに転送されたデータを有効にする。印刷データ送信シーケンスなどデータ変換部2の動作については、図13、図14を用いて後述する。
【0048】
駆動波形生成部3は、ピエゾ素子43に印加する電圧(駆動波形Vcom)を生成する。through_data[7:0]とthrough_lachは1画素を形成する印刷周期内で、ピエゾ素子に駆動波形Vcomを印加するか、しないか、を切り替えるために使用する。駆動波形生成部3の動作については、図10、図11、図12を用いて説明する。
【0049】
コントローラ4は、記録媒体9の搬送速度と滴吐出装置の制御タイミングの同期をとるための同期信号(line)を生成する。データ変換部2と駆動波形生成部3は、同期信号lineのアサート契機で動作を開始する。コントローラ4と滴吐出装置100の間には汎用バスを設け、データ変換部2で使用する設定データと、駆動波形生成部3で使用するピエゾ駆動波形データを送信する。
【0050】
ヘッドモジュール1は320個のノズルNと、各ノズルNに対応する320個のピエゾ素子43と、各ピエゾ素子43に対応するバス幅3bitの吐出データ記憶レジスタを有し、このレジスタに設定された3bit吐出データとthrough_data[7:0]の値から、それぞれのピエゾ素子43に電圧(駆動波形Vcom)を印加するか、しないか、を決定する。
【0051】
吐出データは印刷周期内で変化しないが、320個のピエゾ素子43それぞれに独立に設定可能であり、一方、through_data[7:0]は印刷周期内で変化可能であるが、320個のノズルNで共通に設定するデータである。ヘッドモジュール1の詳細は図15、図16、図17を用いて後述する。
【0052】
図10は、駆動波形生成部3の概略構成図である。
同図に示すように駆動波形生成部3は、バスIF38、波形記憶メモリ34、パターン記憶メモリ35、タイミング記憶メモリ36、印刷周期カウンタ37、駆動波形制御部33、D/A変換器32ならびに増幅器31を備えており、図に示すような接続関係になっている。
【0053】
バスIF38は、コントローラ4から送信されるデータを判別し、データを適切な記憶領域に格納する。波形記憶メモリ34には、駆動波形Vcomを生成するためのデータを記憶する。パターン記憶メモリ35は印刷周期内で使用する数種類のthrough_data[7:0]の値を記憶する。タイミング記憶メモリ36は、パターン記憶メモリ35に記憶したデータを切り替えるタイミングを記憶する。印刷周期カウンタ37はline信号のアサートタイミングでクリアされ、line信号アサートからの経過時間を計測する。
【0054】
駆動波形制御部33は、印刷周期カウンタの値で動作タイミングを判別し、波形記憶メモリ34からのデータリードとパターン記憶メモリ35からのデータリードを制御する。
また、駆動波形制御部33は、波形記憶メモリ34から順次データをリードし、D/A変換器32へ出力する。D/A変換器32は入力されたデータに従がってアナログ電圧を出力する。増幅器31は、D/A変換器32のアナログ電圧出力を、ピエゾ素子43の駆動に必要な電圧レベルまで増幅し、駆動波形Vcomを生成する。また、増幅器31は320個のピエゾ素子43を駆動するのに十分な電流供給能力を有している。
【0055】
図11(a),(b)は、駆動波形生成部3のパターン記憶メモリ35と、タイミング記憶メモリ36の記憶内容を説明するための図である。
本実施例の場合、パターン記憶メモリ35はアドレス3bit、データ8bitで構成されている。8bitのデータはthrough_data[7:0]の値として使用する。同期信号(line)アサート直後は、アドレス0に記憶されたデータ(0001_0001)がthrough_data[7:0]として出力される。タイミング記憶メモリ36に設定したタイミングでリードアドレスがインクリメントされ、through_data[7:0]の値も更新される。through_data[7:0]の各bitは、3bitの吐出データが表現する8状態に対応しており(後述の図16参照)、パターン記憶メモリ35の内容は、データ変換部2(図9参照)で追加するbitの値に合わせる必要がある。
【0056】
本実施例の場合、タイミング記憶メモリ36は、アドレス3bit、データ16bitで構成されている。タイミング記憶メモリ36に記憶した値は、印刷周期カウンタ37の出力値と比較するために使用する。タイミング記憶メモリ36に記憶してあるいずれかの値と、印刷周期カウンタ37の出力値が等しくなった場合に、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントする。
【0057】
図12は、駆動波形生成部3の動作を説明するための図である。
同期信号lineがアサートすると、駆動波形生成部3の動作が開始する。lineがアサートすると、パターン記憶メモリ35のアドレス0に記憶されたデータ(0001_0001)をthrough_data[7:0]として出力する。また、印刷周期カウンタ37の出力値がゼロにクリアされ、ゼロからカウントアップ動作を再開する。
【0058】
印刷周期カウンタ37のカウントアップ動作が進み、その出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス0に記憶してある“時刻A相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”1”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “1110_0000” になる。また、時刻A以降から波形記憶メモリ34のリードが開始し、駆動波形Vcomの生成が開始する。
【0059】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス1に記憶してある”時刻B相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”2”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “1100_1110” になる。
【0060】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス2に記憶してある”時刻C相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”3”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “1000_1100” になる。
【0061】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス3に記憶してある”時刻D相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”4”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “0000_1000” になる。
【0062】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス4に記憶してある”時刻E相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”5”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “0001_0001” になる。
【0063】
本実施例で使用する駆動波形Vcomは、5つに時分割した部分で構成し、最初の部分は”微駆動波形”であり、残り4つの部分は”1滴吐出波形”である。“微駆動波形”はインクを固まりにくくするために設けており、ピエゾ素子に印加した場合にもインク滴の吐出はない。
【0064】
一方、“1滴吐出波形”をピエゾ素子に印加すると、ある量のインク滴が吐出される。本実施例では1画素を4階調(ブラックインクの例では、白色、薄灰色、濃灰色、黒色の4色)で表現するにあたり、1滴吐出の回数で階調を表現している。具体的には、”黒”を表現する場合は3滴吐出し、 “濃灰色”を表現する場合は2滴吐出し、 “薄灰色”を表現する場合は1滴吐出し、 “白色”を表現する場合は吐出しない(微駆動のみ)。
【0065】
ここで、タイミング記憶メモリ36に設定した”時刻A相当の値”、”時刻B相当の値”、”時刻C相当の値”、”時刻D相当の値”、”時刻E相当の値”は、駆動波形Vcomを5つに時分割した部分の、それぞれの部分の開始時刻に対応している。すなわち、”時刻A”は微駆動の開始タイミングであり、”時刻B”と”時刻C”と”時刻D“と”時刻E”は1滴吐出の開始タイミングである。
【0066】
今、ノズル配列の端部とノズル配列の中央部の滴吐出速度差を補正するために、ノズル配列の中央部に位置するピエゾ素子に電圧印加する場合には”時刻B”、 “時刻C”、 “時刻D”から開始する”1滴吐出波形”を使用し、ノズル配列の端部に位置するピエゾ素子に電圧印加する場合には”時刻C”、“時刻D”、“時刻E”から開始する”1滴吐出波形”を使用するように制御を実行したいが、この制御は、駆動波形生成部3のthrough_data[7:0]の制御と、データ変換部2の1画素あたり2bitの印刷データを、1画素あたり3bitの吐出データ に変換する制御を組み合わせることにより実現できる。
【0067】
図13は、データ変換部2の概略構成図である。
データ変換部2は、バスIF27、レジスタA25、レジスタB26、データ数カウンタ24、追加bit生成部22、追加bit連結部21ならびに画像ラッチ契機生成部23を備えており、図に示すような接続関係になっている。
【0068】
バスIF27は、コントローラ4から送信されるデータを判別し、データを適切なレジスタに格納する。レジスタA25には、ノズル配列の左端部とノズル配列の中央部の境界にあたるノズルの番号を設定し、レジスタB26には、ノズル配列の中央部とノズル配列の右端部の境界にあたるノズル番号を設定する。
【0069】
例えば、ヘッド左端から数えて1番目から32番目までの32個のノズルをノズル配列の左端部に分類し、33番目から288番目までの256個のノズルをノズル配列の中央部に分類し、289番目から320番目のノズルをノズル配列の右端部に分類する場合には、レジスタA25には “32” を設定し、レジスタB26には“288”を設定する。このレジスタ設定は、ノズル配列の中央部とノズル配列の端部の滴吐開始タイミング補正時間を考慮して設定すると効果的である。
【0070】
データ数カウンタ24は、同期信号lineがアサートするとゼロにクリアされ、prt_clkの立ち下がりエッジをカウントする。データ数カウンタ24の出力値により、prt_data[1:0]で送信中のデータが、ノズル配列のどの部分に使われるデータかを判別することができる。
【0071】
追加bit生成部22は、データ数カウンタ24の出力値と、レジスタA25の値と、レジスタB26の値を使用して、コントローラ4から送られてくるprt_data[1:0]に追加するadd_bitを生成する。 add_bitはノズル配列のどの部分で使われるかの位置情報である。
【0072】
追加bit連結部21は、prt_data[1:0]とadd_bit を連結し、3bitのjet_data[2:0] を生成する。
画像ラッチ契機生成部23は、データ数カウンタ24の出力値がゼロにクリアされたことを検出してjet_lach信号をアサートする。
jet_clk信号は、prt_clk信号は同じ信号であり、名称のみが異なる。
【0073】
図14は、データ変換部2の動作を説明するための図である。
同期信号lineがアサートすると、データ数カウンタ24の出力値がゼロにクリアされる。データ数カウンタ24の出力値がゼロになった後、画像ラッチ契機生成部23がjet_lach信号をアサートする。
【0074】
コントローラ4は、同期信号lineをアサートした後に印刷データの送信を開始する。1クロックで2bitのデータ(prt_data[1:0])を送信可能であり、1クロックで1ノズル分のデータを送信する。ヘッド左端ノズル用のデータから順番に送信を開始し、320クロックを費やして、320個のノズル用のデータを送信する。コントローラ4はヘッド左端ノズル用のデータから順番に送ってくるので、データ転送クロック(prt_clk)をカウントすることにより、現在送信中の印刷データ(prt_data[1:0])がノズル配列のどの部分で使われるデータかを判別することができる。
【0075】
add_bitは、データ数カウント値がレジスタA25の値よりも小さい場合にLowレベル(ゼロ)であり、データ数カウント値がレジスタA25の値以上で、かつ、レジスタB26の値より小さい場合にHighレベル(1)であり、データ数カウント値がレジスタB26の値より大きい場合にLowレベル(0)である。ここでは、レジスタA25の値が”32”、レジスタB26の値が”288”の場合について説明している。
吐出データ(jet_data[2:0])は、コントローラ4が出力する2bit印刷データ(prt_data[1:0])に、最上位bitとしてadd_bitを連結したデータである。
【0076】
ヘッドモジュール1は、データ変換部2から転送される320個のノズル用吐出データ(jet_data[2:0])を、シフトレジスタに順番に記憶していき、jet_lach信号がアサートするタイミングで、シフトレジスタの内容を実際に制御で使用する記憶領域に一括転送する。すなわち、本実施例では、Nライン目の印刷周期で送信した吐出データ(jet_data[2:0])は、[N+1]ライン目の吐出動作で使用されることになる。
【0077】
図15は、ヘッドモジュール1の構成を説明するための図である。
ヘッドモジュール1は320個のピエゾ素子を内蔵しており、本実施例では、これらのピエゾ素子を、ノズル配列の左端部のピエゾ素子群101、ノズル配列の中央部のピエゾ素子群102、ノズル配列の右端部のピエゾ素子群103の3つの部分に分類する。この分類を設定するのは、データ変換部2から出力する吐出データ(jet_data[2:0])である。
【0078】
駆動波形生成部3が出力する駆動波形Vcomは、320個のアナログスイッチ群11を介して、それぞれのピエゾ素子に供給される。アナログスイッチ群11のオン/オフは、それぞれ320個のスイッチに対応するアナログスイッチ制御レジスタ群12のデジタル出力(“0”あるいは“1”)で決定される。アナログスイッチ制御レジスタ群12の各レジスタの出力が”0”の場合にアナログスイッチが”オフ”し、“1”の場合にはアナログスイッチが”オン”する。
【0079】
アナログスイッチ制御レジスタ群12の入力には、それぞれのレジスタに対応する選択論理群13の出力が接続される。through_lach信号がアサートすると、選択論理群13の出力が、アナログスイッチ制御レジスタ群12に記憶され、その出力値が更新される。本実施例では、図12で説明したように、through_lach信号が印刷周期内に5回アサートすることにより、5つの部分で構成される駆動波形Vcomが時分割でピエゾ素子に印加される。
【0080】
選択論理群13の入力には、それぞれの論理に対応する吐出データ記憶レジスタ群14の出力と、それぞれの論理で共通に使用するthrough_data[7:0]信号が接続される。この2系統の入力から、選択論理群13の出力値が決定する。選択論理の動作は図16を用いて後述する。
【0081】
吐出データ記憶レジスタ群14の入力には、それぞれのレジスタに対応するシフトレジスタ群15の出力が接続される。 et_lach信号がアサートすると、シフトレジスタ群15の出力が、吐出データ記憶レジスタ群14に記憶され、その出力値が更新される。吐出データ記憶レジスタ群14のreg1[2:0]〜reg32[2:0]には端部用の吐出データが記憶され、reg33[2:0]〜reg288[2:0]には中央部用の吐出データが記憶され、reg289[2:0]〜reg320[2:0]には端部用の吐出データが記憶される。
【0082】
シフトレジスタ群15の入力には、吐出データ(jet_data[2:0])とjet_clk信号が接続され、jet_clk信号の立ち上りエッジ契機で、吐出データ(jet_data[2:0])の取り込みと、データシフトが実行される。
【0083】
図16は、ヘッドモジュール1の選択論理群13のうち1つの選択論理の動作を説明するための図である。
選択論理は、3bit入力信号(吐出データ記憶レジスタの出力)に応じて、through_data[7:0]信号のうち、1bitを選択して出力する。
【0084】
吐出データ記憶レジスタ出力が“000”である場合には、アナログスイッチ制御レジスタ群12の対応するレジスタに対して、through_data[0]の値を出力する。すなわち、ピエゾ素子へ駆動波形(Vcom)を供給する/供給しないの切り替えは、through_data[0]の値で制御される。ここで、through_data[0]の値は、パターン記憶メモリ35とタイミング記憶メモリ36の内容に従がって、印刷周期内で時間変化させることが可能であるので、駆動波形(Vcom)の適切な部分(ここでは微駆動波形部分)をピエゾ素子に選択的に供給することができる。
【0085】
同様に、吐出データ記憶レジスタ出力が“001”、“010”、“011”、“100”、“101”、“110”、“111”の場合にも、アナログスイッチ制御レジスタ群12の対応するレジスタに対して、through_data [1] または [2] または [3] または [4] または [5] または [6] または [7] の値を出力するので、パターン記憶メモリ35とタイミング記憶メモリ36の内容に従がって、駆動波形の適切な部分をピエゾ素子に選択的に供給することができる。
【0086】
図17は、ピエゾ素子に供給される駆動波形を説明するための図である。
同期信号(line)がアサート後、jet_lach信号がアサートし、Nライン目の印刷周期で使用する吐出データが決定する。図17の”駆動波形(1)”は、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶したデータが“000”のレジスタに対応するピエゾ素子に供給される駆動電圧波形である。
【0087】
同様に、”駆動波形(2)”、”駆動波形(3)”、”駆動波形(4)”、”駆動波形(5)”、”駆動波形(6)”、”駆動波形(7)”、”駆動波形(8)”は、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶したデータが“001”、“010”、“011”、“100”、“101”、“110”、“111”のレジスタに対応するピエゾ素子に供給される駆動電圧波形である。
【0088】
“駆動波形(1)”と“駆動波形(2)”と“駆動波形(3)”と“駆動波形(4)”は、ノズル配列の端部に配置されたピエゾ素子に供給し、 “駆動波形(5)”と“駆動波形(6)”と“駆動波形(7)”と“駆動波形(8)”は、ノズル配列の中央部に配置されたピエゾ素子に供給する。
【0089】
jet_lach信号アサートの後に、時刻Aのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、駆動波形(Vcom)の生成が開始すると同時に、through_data[7:0]の値 “0001_0001” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[4] と through_data[0] の値が “1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“100”または“000”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0090】
次に、時刻Bのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値 “1110_0000” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[7]とthrough_data[6]とthrough_data[5]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“111”または“110”または“101”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0091】
次に、時刻Cのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値 “1100_1110” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[7]とthrough_data[6]とthrough_data[3]とthrough_data[2]とthrough_data[1]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“111”または“110”または“011”または“010”または“001”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0092】
次に、時刻Dのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値 “1000_1100” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[7]とthrough_data[3]とthrough_data[2]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“111”または“011”または“010”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0093】
次に、時刻Eのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値“0000_1000” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、 through_data[3]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“011”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0094】
以上述べた制御により、ノズル配列の端部の吐出開始タイミングを遅らせ、ノズル配列の中央部の吐出開始タイミングを早めることが可能となり、記録媒体へのインク滴の着弾位置ばらつきを軽減することができる。
【0095】
本実施例では、ノズル列を3つのノズル群に分類し、2種類の吐出開始タイミング(“時刻B”と”時刻C”)を使用したが、印刷周期内の駆動波形Vcomを構成する”1滴吐出波形”の繰り返し数を増やし、連続する3個の”1滴吐出波形”を1組として使用することにより、吐出開始タイミングの調整分解能を向上することができる。
【0096】
本実施例では、図5に示すようにヘッドモジュール1に1列のノズル列を設けたが、複数列(例えば2,3列)のノズル列であっても構わない。
【0097】
本実施例では滴吐出装置を画像形成装置に使用した場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば産業用途などに使われるディスペンサー、インクジェット方式の三次元造形装置など他の用途にも適用可能である。
【0098】
本発明の請求項別の効果をまとめれば、下記の通りである。
請求項1に記載の発明は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
液滴データに基づいて前記スイッチの導通または非導通を決定し、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎に、それぞれ対応する前記スイッチの導通、非導通を切り替えるタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできるという効果がある。
【0099】
請求項2に記載の発明は、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記複数のノズル群毎に、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0100】
請求項3に記載の発明は、
当該滴吐出装置は、液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であって、
前記スイッチ制御部は、
前記ノズル群の分類と、複数ビットで構成される吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、複数回の滴吐出によって1つの着弾跡(1画素)の階調を表現する画像形成装置の場合に、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0101】
請求項4に記載の発明は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部と、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出データに拡張ビットを付加するデータ変換部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部による変換後のデータに基づいて、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、吐出データ(印刷データ)の処理により、ノズル群の分類を設定できるという効果がある。
【0102】
請求項5に記載の発明は、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部の変換後の吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、吐出データ(印刷データ)の処理によりノズル群の分類を設定し、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0103】
請求項6に記載の発明は、
当該滴吐出装置は液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、複数回の滴吐出によって1つの液滴後(1画素)の階調を表現する画像形成装置の場合に、吐出データ(印刷データ)の処理によりノズル群の分類を設定し、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0104】
請求項7に記載の発明は、
前記ノズル群のうち、n番目のノズル群の平均吐出速度Vn_aveと、[n+1]番目のノズル群の平均吐出速度V[n+1]_ave と、駆動電圧パルスの繰り返し周期Tplsと、ノズルと液滴被着体間のギャップdの間に、
Tpls= | d/Vn_ave − d/V[n+1]_ave |
の関係が成り立つように、前記ノズル群の分類を決定することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正する際に、補正効果が高くなるようにノズル群の分類を決定することができるという効果がある。
【0105】
請求項8に記載の発明は、
前記ノズル列を、少なくとも、ノズル列の一方の端部と、ノズル列の他方の端部と、前記ノズル列の一方の端部と他方の端部の間にある中央部の3つのノズル群に分類して、
前記ノズル列の一方の端部と他方の端部のノズル群の吐出タイミングを、前記ノズル列の中央部のノズル群の吐出タイミングよりも遅くなるように制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、ノズル列の中央部とノズル列の端部の機械的剛性などの差異による滴吐出速度の差を補正できるという効果がある。
【0106】
請求項9に記載の発明は、
前記ノズル列の一方の端部のノズル群と他方の端部のノズル群の吐出タイミングが同じであることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、共通の駆動波形を使用することができ、構成ならびに制御の簡略化が図れるという効果がある。
【0107】
請求項10に記載の発明は、
インク滴を吐出する滴吐出装置と、
その滴吐出装置のノズルと対向するように搬送される記録媒体を備え、
前記滴吐出装置と前記記録媒体を相対移動させて、前記記録媒体上に前記インクによる滴画像を形成する画像形成装置において、
前記滴吐出装置が請求項1ないし9のいずれか1項に記載の滴吐出装置であることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、高精密な画像を形成することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0108】
1・・・ヘッドモジュール、2・・・データ変換部、3・・・駆動波形生成部、4・・・コントローラ、5〜8・・・滴吐出装置、9・・・記録媒体、10・・・記録ヘッド、11・・・アナログスイッチ群、12・・・アナログスイッチ制御レジスタ群、13・・・選択論理群、14・・・吐出データ記憶レジスタ群、15・・・シフトレジスタ群、18・・・振動板、21・・・追加bit連結部、22・・・追加bit生成部、23・・・画像ラッチ契機生成部、24・・・データ数カウンタ、25・・・レジスタA、26・・・レジスタB、27・・・バスIF、31・・・増幅器、32・・・D/A変換器、33・・・駆動波形制御部、34・・・波形記憶メモリ、35・・・パターン記憶メモリ、36・・・タイミング記憶メモリ、37・・・印刷周期カウンタ、38・・・バスIF、41・・・流路基板、43・・・ピエゾ素子、44・・・ノズルプレート、47・・・圧力室、100・・・滴吐出装置、101・・・ノズル配列の左端部のピエゾ素子群、102・・・ノズル配列の中央部のピエゾ素子群、103・・・ノズル配列の右端部のピエゾ素子群、N・・・ノズル、X・・・画像形成装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2005−88436号公報
【特許文献2】特開2003−48314号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット方式の画像形成装置などに用いられる滴吐出装置に係り、特に液滴を吐出するノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェット方式の画像形成装置では、高速/高解像度印刷に対応するため、インクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと略称する)1個当りに集積するノズル数が増加する傾向にあり、これに伴い記録ヘッドの長尺化が進んでいる。記録ヘッドが長尺化すると、ノズル配列の中央部と端部での機械的剛性の差異が顕著になり、ノズル位置に依ってインク滴吐出特性が異なるという問題が発生し、画質が劣化する場合がある。
【0003】
ノズル位置に依存するインク滴吐出特性を補正する方法として、列状に配置されたノズルを、複数のノズル群に分類して、各ノズル群毎に異なる駆動波形を供給する方法が既に知られている(特開2005−88436号公報)。
また、ノズル位置に依存する吐出特性差異を相殺するように、予め印刷画像に補正を加えておく方法が既に知られている(特開2003−48314号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今までの複数のノズル群毎に異なる駆動波形を供給する方法では、駆動波形の生成回路をノズル群毎に準備する必要があるため、制御装置が大型化し、高コストになるという問題があった。また、印刷画像に補正を加える方法では、1画素未満の位置補正ができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできる滴吐出装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明の第1の手段は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
液滴データに基づいて前記スイッチの導通または非導通を決定し、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎に、それぞれ対応する前記スイッチの導通、非導通を切り替えるタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡(例えば1画素)を形成する周期(例えば印刷周期)内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記複数のノズル群毎に、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、
当該滴吐出装置は、液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡(例えば1画素)の階調を表現する滴吐出装置であって、
前記スイッチ制御部は、
前記ノズル群の分類と、複数ビットで構成される吐出データ(例えば印刷データ)に基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第4の手段は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部と、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出データ(例えば印刷データ)に拡張ビットを付加するデータ変換部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部による変換後のデータに基づいて、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第5の手段は前記第4の手段において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡(例えば1画素)を形成する周期(例えば印刷周期)内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部の変換後の吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、
当該滴吐出装置は液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡(例えば1画素)の階調を表現する滴吐出装置であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第7の手段は前記第2、第3、第5、第6の手段において、
前記ノズル群のうち、n番目のノズル群の平均吐出速度Vn_aveと、[n+1]番目のノズル群の平均吐出速度V[n+1]_ave と、駆動電圧パルスの繰り返し周期Tplsと、ノズルと液滴被着体(例えば記録媒体)間のギャップdの間に、
Tpls= | d/Vn_ave − d/V[n+1]_ave |
の関係が成り立つように、前記ノズル群の分類を決定することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第8の手段は前記第1ないし第7のいずれかの手段において、
前記ノズル列を、少なくとも、ノズル列の一方の端部と、ノズル列の他方の端部と、前記ノズル列の一方の端部と他方の端部の間にある中央部の3つのノズル群に分類して、
前記ノズル列の一方の端部と他方の端部のノズル群の吐出タイミングを、前記ノズル列の中央部のノズル群の吐出タイミングよりも遅くなるように制御することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第9の手段は前記第8の手段において、
前記ノズル列の一方の端部のノズル群と他方の端部のノズル群の吐出タイミングが同じであることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第10の手段は、
インク滴を吐出する滴吐出装置と、
その滴吐出装置のノズルと対向するように搬送される記録媒体を備え、
前記滴吐出装置と前記記録媒体を相対移動させて、前記記録媒体上に前記インクによる滴画像を形成する画像形成装置において、
前記滴吐出装置が前記第1ないし第9のいずれかの手段の滴吐出装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は前述したような構成になっており、ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできる滴吐出装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ノズル位置とインク滴の吐出速度との相関例を示す図である。
【図2】本発明の実施例において、1画素を2値で表現し、ノズル列を3つのノズル群に分類する場合の駆動波形例を示す図である。
【図3】本発明の実施例において、ノズル列を3つのノズル群に分類した場合の、ノズル位置と平均吐出速度の相関例を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るライン型インクジェット方式の画像形成装置において、ヘッドモジュールの配置例を示す図である。
【図5】そのヘッドモジュールの拡大底面図である。
【図6】そのヘッドモジュールの拡大断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るインクジェット方式の画像形成装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施例に係るヘッドモジュールを含む滴吐出装置と上位装置の概略接続について説明するための図である。
【図9】本発明の実施例に係る滴吐出装置と上位装置の接続、および滴吐出装置の内部構成を説明するための概略構成図である。
【図10】本発明の実施例に係る駆動波形生成部の概略構成図である。
【図11】その駆動波形生成部内のパターン記憶メモリとタイミング記憶メモリの記憶内容を説明するための図である。
【図12】その駆動波形生成部の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の実施例に係るデータ変換部の概略構成図である。
【図14】そのデータ変換部の動作を説明するための図である。
【図15】本発明の実施例に係るヘッドモジュールの構成を説明するための図である。
【図16】そのヘッドモジュールの選択論理群のうち1つの選択論理の動作を説明するための図である。
【図17】本発明の実施例に係るピエゾ素子に供給される駆動波形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
インクジェット方式の画像形成装置では、記録ヘッドの長手方向に沿って多数本のノズルが一列あるいは複数列にわたって配置されている。図1は、この記録ヘッドにおけるノズル位置とインク滴の吐出速度との相関例を示す図である。
この図に示すように、インク滴の吐出速度は、ノズル配列の端部で速く、ノズル配列の中央部で遅くなる傾向がある。インクジェット記録装置のように記録ヘッドと記録媒体が相対移動している系では、滴吐出速度の差が、インク滴の着弾位置差として現れ、画質を劣化させる。
【0019】
ここで、ノズル配列の中央部のインク滴速度をVjc[m/s]、ノズル配列の端部のインク滴速度をVje[m/s]、記録ヘッドと記録媒体間のギャップをd[m]、記録ヘッドと記録媒体の相対速度をVr[m/s]、ノズル配列の中央部のインク滴とノズル配列の端部のインク滴の着弾位置ずれをΔD[m]とおき、インク滴速度が時間によらず一定であると考えると、
ΔD[m]={ノズル配列の中央部のインク滴が着弾するまでの時間[s]−ノズル配列の端部のインク滴が着弾するまでの時間[s]}×Vr[m/s]=(d/Vjc−d/Vje)×Vr ・・・・・・式(1)
で表される。このとき、ノズル配列の中央部の滴吐出タイミングとノズル配列の端部の滴吐出タイミングにΔT[s]の差を設けると、前記式(1)は
ΔD[m]=(d/Vjc−d/Vje−ΔT)×Vr ・・・・・・式(2)
で表され、適切な滴吐出タイミングの差ΔT[s]を設定することにより、着弾位置ずれΔD[m]をゼロにできることが分かる。
【0020】
ノズル位置に依存するインク滴吐出速度の差をゼロにするためには、全ノズル毎に独立に吐出タイミングを制御する必要があるが、全ノズル毎の吐出タイミング制御をしなくとも、ノズル列を複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出タイミングを制御することで、着弾位置ずれを軽減することができる。
【0021】
すなわち、ノズル配列の端部の吐出開始タイミングを遅らせ、ノズル配列の中央部の吐出開始タイミングを早めることにより、記録媒体への着弾位置(着弾時刻)のばらつきを軽減できる。
【0022】
図2に、1画素を2値(インク滴を吐出する/吐出しない)で表現し、ノズル列を3つのノズル群(左端部/中央部/右端部)に分類する場合の駆動波形例を示す。
【0023】
駆動波形は、ノズル列の「中央部駆動用の部分」と「端部駆動用の部分」を時分割で含み、インク滴吐出速度が遅くなるノズル配列の中央部分には前半波形を選択供給し、吐出速度が速くなるノズル配列の端部には後半波形を選択供給するようにする。なお、ノズル配列の左端部とノズル配列の右端部は滴吐出速度が同じなので、共通の駆動波形を使用することができる。
【0024】
このように各ノズル群の駆動波形を時分割で含むようにすることで、ノズル列で共通の駆動波形生成回路を使用でき、装置が大型化、高コスト化することを抑えつつ、ノズル位置に依る着弾位置ずれを軽減することができる。
【0025】
また、各ノズル群の駆動波形は、1画素間隔相当の印刷周期内に時分割で配置するため、その補正精度は1画素未満となる。ここで、吐出タイミングの補正量はΔT[s]で固定であるが、この補正量に合わせてノズル列を分類することにより、適切な補正を実施することができる。
【0026】
例えば、ノズル配列の端部の平均吐出速度Vje_ave[m/s]と、ノズル配列の中央部の平均吐出速度Vjc_ave[m/s]と、記録ヘッドと記録媒体間のギャップd[m]と、吐出タイミング補正量ΔT[s]の間に、
ΔT=(d/Vjc_ave−d/Vje_ave) ・・・・・・式(3)
の関係が成り立つ場合に、前記式(2)の着弾位置ずれΔD[m]がゼロになり、適切な補正を実施することができる。
【0027】
図3に、ノズル列を3つのノズル群に分類した場合の、ノズル位置と平均吐出速度の関係例を示す。この図から、Vje_aveとVjc_ave の値は、ノズル列の分類の仕方に依存することが分かる。すなわち、ノズル列の分類の仕方により、式(3)を満足するようなVje_aveとVjc_aveの値を設定することができる場合がある。
【0028】
図2、図3の例では、ノズル列を3つのノズル群に分類したが、分類数を増やすことで、補正精度をさらに向上することができる。
【0029】
ここまで述べた方法を応用することにより、装置を大型化、高コスト化することなく、1画素未満の精度で、ノズル列の中央部と端部のインク滴吐出速度差に起因する着弾位置ずれを補正し、インクジェット方式の画像形成装置の画質を向上することができる。
【0030】
図4は、ライン型インクジェット方式の画像形成装置におけるヘッドモジュールの配置例を説明するための図ある。
【0031】
本実施例に係る画像形成装置では、1色分の印刷に10個のヘッドモジュールを使用し、フルカラー画像を印刷するために40個のヘッドモジュールを搭載している。ヘッドモジュール50〜59はブラックインク滴を吐出し、ヘッドモジュール60〜118はシアンインク滴を吐出し、ヘッドモジュール70〜79はマゼンダインク滴を吐出し、ヘッドモジュール80〜89はイエローインク滴を吐出する。
【0032】
これらヘッドモジュール50〜59、ヘッドモジュール60〜118、ヘッドモジュール70〜79、ヘッドモジュール80〜89は図4に示すように配置され、互いに連結されて記録ヘッド10を構成している。
各ヘッドモジュールは、インク滴吐出面と記録媒体9が対向するように設置されている。各色10個のヘッドモジュールを千鳥状に配列することで、記録媒体9の全幅に印刷可能なだけの印刷領域を確保している。記録媒体9は矢印で示すように千鳥状に配列されたヘッドモジュール群と直交する方向に搬送され、搬送速度に同期して、インク滴の吐出が行われる。
【0033】
図5は、ヘッドモジュールのノズル配列を説明するためのヘッドモジュールの拡大底面図である。
本実施例ではヘッドモジュール1はそれの長手方向に沿って320個のノズルNを有し、ノズルNは一列に並んでいる。左端のノズルNからN1、N2、N3、・・・・・・N318、N319、N320とおくと、右端のノズルNがN320になる。図6に示すように各ノズルN毎にインクを加圧する圧力室と、圧力発生素子であるピエゾ素子を備えており、ピエゾ素子に印加する電圧によりインク滴の吐出が制御される。
【0034】
図6は、ヘッドモジュールの拡大断面図である。
ヘッドモジュール1は、流路基板41と、高剛性プレート42と、ピエゾ素子43とから主に構成されている。
前記流路基板41は、前述のように多数のノズルNを1列に形成したノズルプレート44と、前記ノズルNと連通する連通流路45を有するチャンバープレート46と、圧力室47とリストリクタ48を兼ねた開口穴49を有するリストリクタプレート16と、前記圧力室47とリストリクタ48を封止する薄板のダイアフラムプレート17の積層体から構成されている。前記ダイアフラムプレート17は、振動板18を有している。
【0035】
前記高剛性プレート42は、前記流路基板41を保持するとともに、外部からのインクを導入して貯留する共通インク室19が形成され、共通インク室19の流路基板41側はインク供給のため開口している。共通インク室19の隣に開口溝20が形成され、そこに前記ピエゾ素子43が挿入されて、前記ダイアフラムプレート17(振動板18)に固着されている。
【0036】
このヘッドモジュール1は、前記ピエゾ素子43に後述するような駆動波形を印加することにより、前記振動板18を介して、前記圧力室47の容積を膨張・収縮させて、前記圧力室47からインク滴を吐出し、記録媒体9(図4参照)上に着弾して、所望の画像を形成する。
【0037】
図7は、本発明の実施例に係るインクジェット方式の画像形成装置Xの概略構成図である。
同図に示すように画像形成装置Xは、記録媒体供給部111と記録媒体回収部112の間に配置されている。記録媒体供給部111から高速で繰り出された連続した長尺状の記録媒体9は画像形成装置Xで所望のカラー画像が形成され、その後記録媒体回収部112で巻き取り回収される。
【0038】
画像形成装置X内の記録媒体搬送装置は、記録媒体供給部111から供給された記録媒体9の幅方向の位置決めを行なう規制ガイド113、駆動ローラと従動ローラで構成されたインフィード部114、記録媒体9の張力に応じて上下動して位置信号を出力するダンサローラ115、記録媒体9の蛇行を制御するEPC(Edge Position Control)116、蛇行量のフィードバックに使用する蛇行量検出器117、記録媒体9を設定された速度で搬送するために一定速度で回転する駆動ローラと従動ローラで構成されたアウトフィード部120、記録媒体9を装置外に排出する駆動ローラと従動ローラからなるプラー121などを有している。
【0039】
この記録媒体搬送装置は、前記ダンサローラ115の位置検出を行い、前記インフィード部114の回転を制御して搬送中の記録媒体9の張力を一定に保つ張力制御型の搬送装置である。
【0040】
また画像形成装置X内には、図4に示す記録ヘッド10と、記録媒体9を介して記録ヘッド10と対向するように設けられたプラテン118と、乾燥手段119が設けられている。乾燥手段119は、記録ヘッド10により印刷されたインクが他の部分に付着することを防止するためにインクの乾燥・定着を行なう。
【0041】
図8は、ヘッドモジュールを含む滴吐出装置と上位装置(コントローラ)の概略接続について説明するための図である。
滴吐出装置は1個のヘッドモジュールを含み、ピエゾ素子43(図6参照)に印加する電圧を制御する。本実施例では総数40個の滴吐出装置を備えている。各滴吐出装置は、上位装置であるコントローラ4にそれぞれ接続されている。
【0042】
滴吐出装置群5,6,7,8は、それぞれ10個の滴吐出装置で構成される。滴吐出装置群5は前記ヘッドモジュール50〜59(図4参照)を含みブラックインク滴の吐出制御に使用し、滴吐出装置群6は前記ヘッドモジュール60〜68(図4参照)を含みシアンインク滴の吐出制御に使用し、滴吐出装置群7は前記ヘッドモジュール70〜79(図4参照)を含みマゼンダインク滴の吐出制御に使用し、滴吐出装置群8は前記ヘッドモジュール80〜89(図4参照)を含みイエローインク滴の吐出制御に使用する。
【0043】
コントローラ4は、記録媒体9の搬送制御を実施しており(搬送制御手段は図7参照)、記録媒体9の速度(位置)制御と滴吐出装置制御の同期用の信号を生成し、それぞれの滴吐出装置群5,6,7,8へ送信する。
【0044】
コントローラ4は、各種画像を印刷用のC、M、Y、K画像(Cyan、Magenta、Yellow、Black)に変換し、ガンマ変換等の画像処理を実施した後、それぞれの滴吐出装置に対して印刷データを送信する。また、各ピエゾ素子43(図6参照)に印加する電圧を生成するためのピエゾ駆動波形データを、それぞれの滴吐出装置群5,117,8に対して送信する。
【0045】
図9は、滴吐出装置と上位装置(コントローラ)の接続、および滴吐出装置の内部構成を説明するための概略構成図である。
滴吐出装置100はヘッドモジュール1とデータ変換部2と駆動波形生成部3で構成され、データ変換部2と駆動波形生成部3がヘッドモジュール1とコントローラ4に接続されている。
【0046】
データ変換部2は、コントローラ4が出力する1画素あたり2bitの印刷データを、1画素あたり3bitの吐出データに変換し、ヘッドモジュール1へ送信する。このときに追加する1bitに、ノズル配列の位置情報が含まれている。
【0047】
コントローラ4は、3本の信号線(prt_data[1:0]とprt_clk)を使用して印刷データを送信する。データ変換部2は、4本の信号線(jet_data[2:0]とjet_clk)を使用して吐出データを送信し、送信終了後にjet_lach信号をアサートする。ヘッドモジュール1がjet_lachのアサートを検出すると、直前までに転送されたデータを有効にする。印刷データ送信シーケンスなどデータ変換部2の動作については、図13、図14を用いて後述する。
【0048】
駆動波形生成部3は、ピエゾ素子43に印加する電圧(駆動波形Vcom)を生成する。through_data[7:0]とthrough_lachは1画素を形成する印刷周期内で、ピエゾ素子に駆動波形Vcomを印加するか、しないか、を切り替えるために使用する。駆動波形生成部3の動作については、図10、図11、図12を用いて説明する。
【0049】
コントローラ4は、記録媒体9の搬送速度と滴吐出装置の制御タイミングの同期をとるための同期信号(line)を生成する。データ変換部2と駆動波形生成部3は、同期信号lineのアサート契機で動作を開始する。コントローラ4と滴吐出装置100の間には汎用バスを設け、データ変換部2で使用する設定データと、駆動波形生成部3で使用するピエゾ駆動波形データを送信する。
【0050】
ヘッドモジュール1は320個のノズルNと、各ノズルNに対応する320個のピエゾ素子43と、各ピエゾ素子43に対応するバス幅3bitの吐出データ記憶レジスタを有し、このレジスタに設定された3bit吐出データとthrough_data[7:0]の値から、それぞれのピエゾ素子43に電圧(駆動波形Vcom)を印加するか、しないか、を決定する。
【0051】
吐出データは印刷周期内で変化しないが、320個のピエゾ素子43それぞれに独立に設定可能であり、一方、through_data[7:0]は印刷周期内で変化可能であるが、320個のノズルNで共通に設定するデータである。ヘッドモジュール1の詳細は図15、図16、図17を用いて後述する。
【0052】
図10は、駆動波形生成部3の概略構成図である。
同図に示すように駆動波形生成部3は、バスIF38、波形記憶メモリ34、パターン記憶メモリ35、タイミング記憶メモリ36、印刷周期カウンタ37、駆動波形制御部33、D/A変換器32ならびに増幅器31を備えており、図に示すような接続関係になっている。
【0053】
バスIF38は、コントローラ4から送信されるデータを判別し、データを適切な記憶領域に格納する。波形記憶メモリ34には、駆動波形Vcomを生成するためのデータを記憶する。パターン記憶メモリ35は印刷周期内で使用する数種類のthrough_data[7:0]の値を記憶する。タイミング記憶メモリ36は、パターン記憶メモリ35に記憶したデータを切り替えるタイミングを記憶する。印刷周期カウンタ37はline信号のアサートタイミングでクリアされ、line信号アサートからの経過時間を計測する。
【0054】
駆動波形制御部33は、印刷周期カウンタの値で動作タイミングを判別し、波形記憶メモリ34からのデータリードとパターン記憶メモリ35からのデータリードを制御する。
また、駆動波形制御部33は、波形記憶メモリ34から順次データをリードし、D/A変換器32へ出力する。D/A変換器32は入力されたデータに従がってアナログ電圧を出力する。増幅器31は、D/A変換器32のアナログ電圧出力を、ピエゾ素子43の駆動に必要な電圧レベルまで増幅し、駆動波形Vcomを生成する。また、増幅器31は320個のピエゾ素子43を駆動するのに十分な電流供給能力を有している。
【0055】
図11(a),(b)は、駆動波形生成部3のパターン記憶メモリ35と、タイミング記憶メモリ36の記憶内容を説明するための図である。
本実施例の場合、パターン記憶メモリ35はアドレス3bit、データ8bitで構成されている。8bitのデータはthrough_data[7:0]の値として使用する。同期信号(line)アサート直後は、アドレス0に記憶されたデータ(0001_0001)がthrough_data[7:0]として出力される。タイミング記憶メモリ36に設定したタイミングでリードアドレスがインクリメントされ、through_data[7:0]の値も更新される。through_data[7:0]の各bitは、3bitの吐出データが表現する8状態に対応しており(後述の図16参照)、パターン記憶メモリ35の内容は、データ変換部2(図9参照)で追加するbitの値に合わせる必要がある。
【0056】
本実施例の場合、タイミング記憶メモリ36は、アドレス3bit、データ16bitで構成されている。タイミング記憶メモリ36に記憶した値は、印刷周期カウンタ37の出力値と比較するために使用する。タイミング記憶メモリ36に記憶してあるいずれかの値と、印刷周期カウンタ37の出力値が等しくなった場合に、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントする。
【0057】
図12は、駆動波形生成部3の動作を説明するための図である。
同期信号lineがアサートすると、駆動波形生成部3の動作が開始する。lineがアサートすると、パターン記憶メモリ35のアドレス0に記憶されたデータ(0001_0001)をthrough_data[7:0]として出力する。また、印刷周期カウンタ37の出力値がゼロにクリアされ、ゼロからカウントアップ動作を再開する。
【0058】
印刷周期カウンタ37のカウントアップ動作が進み、その出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス0に記憶してある“時刻A相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”1”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “1110_0000” になる。また、時刻A以降から波形記憶メモリ34のリードが開始し、駆動波形Vcomの生成が開始する。
【0059】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス1に記憶してある”時刻B相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”2”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “1100_1110” になる。
【0060】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス2に記憶してある”時刻C相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”3”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “1000_1100” になる。
【0061】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス3に記憶してある”時刻D相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”4”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “0000_1000” になる。
【0062】
印刷周期カウンタ37の出力値がタイミング記憶メモリ36のアドレス4に記憶してある”時刻E相当の値”と等しくなると、through_lachをアサートし、through_lachネゲート後に、パターン記憶メモリ35のリードアドレスをインクリメントして”5”にする。この結果through_data[7:0]の出力が “0001_0001” になる。
【0063】
本実施例で使用する駆動波形Vcomは、5つに時分割した部分で構成し、最初の部分は”微駆動波形”であり、残り4つの部分は”1滴吐出波形”である。“微駆動波形”はインクを固まりにくくするために設けており、ピエゾ素子に印加した場合にもインク滴の吐出はない。
【0064】
一方、“1滴吐出波形”をピエゾ素子に印加すると、ある量のインク滴が吐出される。本実施例では1画素を4階調(ブラックインクの例では、白色、薄灰色、濃灰色、黒色の4色)で表現するにあたり、1滴吐出の回数で階調を表現している。具体的には、”黒”を表現する場合は3滴吐出し、 “濃灰色”を表現する場合は2滴吐出し、 “薄灰色”を表現する場合は1滴吐出し、 “白色”を表現する場合は吐出しない(微駆動のみ)。
【0065】
ここで、タイミング記憶メモリ36に設定した”時刻A相当の値”、”時刻B相当の値”、”時刻C相当の値”、”時刻D相当の値”、”時刻E相当の値”は、駆動波形Vcomを5つに時分割した部分の、それぞれの部分の開始時刻に対応している。すなわち、”時刻A”は微駆動の開始タイミングであり、”時刻B”と”時刻C”と”時刻D“と”時刻E”は1滴吐出の開始タイミングである。
【0066】
今、ノズル配列の端部とノズル配列の中央部の滴吐出速度差を補正するために、ノズル配列の中央部に位置するピエゾ素子に電圧印加する場合には”時刻B”、 “時刻C”、 “時刻D”から開始する”1滴吐出波形”を使用し、ノズル配列の端部に位置するピエゾ素子に電圧印加する場合には”時刻C”、“時刻D”、“時刻E”から開始する”1滴吐出波形”を使用するように制御を実行したいが、この制御は、駆動波形生成部3のthrough_data[7:0]の制御と、データ変換部2の1画素あたり2bitの印刷データを、1画素あたり3bitの吐出データ に変換する制御を組み合わせることにより実現できる。
【0067】
図13は、データ変換部2の概略構成図である。
データ変換部2は、バスIF27、レジスタA25、レジスタB26、データ数カウンタ24、追加bit生成部22、追加bit連結部21ならびに画像ラッチ契機生成部23を備えており、図に示すような接続関係になっている。
【0068】
バスIF27は、コントローラ4から送信されるデータを判別し、データを適切なレジスタに格納する。レジスタA25には、ノズル配列の左端部とノズル配列の中央部の境界にあたるノズルの番号を設定し、レジスタB26には、ノズル配列の中央部とノズル配列の右端部の境界にあたるノズル番号を設定する。
【0069】
例えば、ヘッド左端から数えて1番目から32番目までの32個のノズルをノズル配列の左端部に分類し、33番目から288番目までの256個のノズルをノズル配列の中央部に分類し、289番目から320番目のノズルをノズル配列の右端部に分類する場合には、レジスタA25には “32” を設定し、レジスタB26には“288”を設定する。このレジスタ設定は、ノズル配列の中央部とノズル配列の端部の滴吐開始タイミング補正時間を考慮して設定すると効果的である。
【0070】
データ数カウンタ24は、同期信号lineがアサートするとゼロにクリアされ、prt_clkの立ち下がりエッジをカウントする。データ数カウンタ24の出力値により、prt_data[1:0]で送信中のデータが、ノズル配列のどの部分に使われるデータかを判別することができる。
【0071】
追加bit生成部22は、データ数カウンタ24の出力値と、レジスタA25の値と、レジスタB26の値を使用して、コントローラ4から送られてくるprt_data[1:0]に追加するadd_bitを生成する。 add_bitはノズル配列のどの部分で使われるかの位置情報である。
【0072】
追加bit連結部21は、prt_data[1:0]とadd_bit を連結し、3bitのjet_data[2:0] を生成する。
画像ラッチ契機生成部23は、データ数カウンタ24の出力値がゼロにクリアされたことを検出してjet_lach信号をアサートする。
jet_clk信号は、prt_clk信号は同じ信号であり、名称のみが異なる。
【0073】
図14は、データ変換部2の動作を説明するための図である。
同期信号lineがアサートすると、データ数カウンタ24の出力値がゼロにクリアされる。データ数カウンタ24の出力値がゼロになった後、画像ラッチ契機生成部23がjet_lach信号をアサートする。
【0074】
コントローラ4は、同期信号lineをアサートした後に印刷データの送信を開始する。1クロックで2bitのデータ(prt_data[1:0])を送信可能であり、1クロックで1ノズル分のデータを送信する。ヘッド左端ノズル用のデータから順番に送信を開始し、320クロックを費やして、320個のノズル用のデータを送信する。コントローラ4はヘッド左端ノズル用のデータから順番に送ってくるので、データ転送クロック(prt_clk)をカウントすることにより、現在送信中の印刷データ(prt_data[1:0])がノズル配列のどの部分で使われるデータかを判別することができる。
【0075】
add_bitは、データ数カウント値がレジスタA25の値よりも小さい場合にLowレベル(ゼロ)であり、データ数カウント値がレジスタA25の値以上で、かつ、レジスタB26の値より小さい場合にHighレベル(1)であり、データ数カウント値がレジスタB26の値より大きい場合にLowレベル(0)である。ここでは、レジスタA25の値が”32”、レジスタB26の値が”288”の場合について説明している。
吐出データ(jet_data[2:0])は、コントローラ4が出力する2bit印刷データ(prt_data[1:0])に、最上位bitとしてadd_bitを連結したデータである。
【0076】
ヘッドモジュール1は、データ変換部2から転送される320個のノズル用吐出データ(jet_data[2:0])を、シフトレジスタに順番に記憶していき、jet_lach信号がアサートするタイミングで、シフトレジスタの内容を実際に制御で使用する記憶領域に一括転送する。すなわち、本実施例では、Nライン目の印刷周期で送信した吐出データ(jet_data[2:0])は、[N+1]ライン目の吐出動作で使用されることになる。
【0077】
図15は、ヘッドモジュール1の構成を説明するための図である。
ヘッドモジュール1は320個のピエゾ素子を内蔵しており、本実施例では、これらのピエゾ素子を、ノズル配列の左端部のピエゾ素子群101、ノズル配列の中央部のピエゾ素子群102、ノズル配列の右端部のピエゾ素子群103の3つの部分に分類する。この分類を設定するのは、データ変換部2から出力する吐出データ(jet_data[2:0])である。
【0078】
駆動波形生成部3が出力する駆動波形Vcomは、320個のアナログスイッチ群11を介して、それぞれのピエゾ素子に供給される。アナログスイッチ群11のオン/オフは、それぞれ320個のスイッチに対応するアナログスイッチ制御レジスタ群12のデジタル出力(“0”あるいは“1”)で決定される。アナログスイッチ制御レジスタ群12の各レジスタの出力が”0”の場合にアナログスイッチが”オフ”し、“1”の場合にはアナログスイッチが”オン”する。
【0079】
アナログスイッチ制御レジスタ群12の入力には、それぞれのレジスタに対応する選択論理群13の出力が接続される。through_lach信号がアサートすると、選択論理群13の出力が、アナログスイッチ制御レジスタ群12に記憶され、その出力値が更新される。本実施例では、図12で説明したように、through_lach信号が印刷周期内に5回アサートすることにより、5つの部分で構成される駆動波形Vcomが時分割でピエゾ素子に印加される。
【0080】
選択論理群13の入力には、それぞれの論理に対応する吐出データ記憶レジスタ群14の出力と、それぞれの論理で共通に使用するthrough_data[7:0]信号が接続される。この2系統の入力から、選択論理群13の出力値が決定する。選択論理の動作は図16を用いて後述する。
【0081】
吐出データ記憶レジスタ群14の入力には、それぞれのレジスタに対応するシフトレジスタ群15の出力が接続される。 et_lach信号がアサートすると、シフトレジスタ群15の出力が、吐出データ記憶レジスタ群14に記憶され、その出力値が更新される。吐出データ記憶レジスタ群14のreg1[2:0]〜reg32[2:0]には端部用の吐出データが記憶され、reg33[2:0]〜reg288[2:0]には中央部用の吐出データが記憶され、reg289[2:0]〜reg320[2:0]には端部用の吐出データが記憶される。
【0082】
シフトレジスタ群15の入力には、吐出データ(jet_data[2:0])とjet_clk信号が接続され、jet_clk信号の立ち上りエッジ契機で、吐出データ(jet_data[2:0])の取り込みと、データシフトが実行される。
【0083】
図16は、ヘッドモジュール1の選択論理群13のうち1つの選択論理の動作を説明するための図である。
選択論理は、3bit入力信号(吐出データ記憶レジスタの出力)に応じて、through_data[7:0]信号のうち、1bitを選択して出力する。
【0084】
吐出データ記憶レジスタ出力が“000”である場合には、アナログスイッチ制御レジスタ群12の対応するレジスタに対して、through_data[0]の値を出力する。すなわち、ピエゾ素子へ駆動波形(Vcom)を供給する/供給しないの切り替えは、through_data[0]の値で制御される。ここで、through_data[0]の値は、パターン記憶メモリ35とタイミング記憶メモリ36の内容に従がって、印刷周期内で時間変化させることが可能であるので、駆動波形(Vcom)の適切な部分(ここでは微駆動波形部分)をピエゾ素子に選択的に供給することができる。
【0085】
同様に、吐出データ記憶レジスタ出力が“001”、“010”、“011”、“100”、“101”、“110”、“111”の場合にも、アナログスイッチ制御レジスタ群12の対応するレジスタに対して、through_data [1] または [2] または [3] または [4] または [5] または [6] または [7] の値を出力するので、パターン記憶メモリ35とタイミング記憶メモリ36の内容に従がって、駆動波形の適切な部分をピエゾ素子に選択的に供給することができる。
【0086】
図17は、ピエゾ素子に供給される駆動波形を説明するための図である。
同期信号(line)がアサート後、jet_lach信号がアサートし、Nライン目の印刷周期で使用する吐出データが決定する。図17の”駆動波形(1)”は、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶したデータが“000”のレジスタに対応するピエゾ素子に供給される駆動電圧波形である。
【0087】
同様に、”駆動波形(2)”、”駆動波形(3)”、”駆動波形(4)”、”駆動波形(5)”、”駆動波形(6)”、”駆動波形(7)”、”駆動波形(8)”は、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶したデータが“001”、“010”、“011”、“100”、“101”、“110”、“111”のレジスタに対応するピエゾ素子に供給される駆動電圧波形である。
【0088】
“駆動波形(1)”と“駆動波形(2)”と“駆動波形(3)”と“駆動波形(4)”は、ノズル配列の端部に配置されたピエゾ素子に供給し、 “駆動波形(5)”と“駆動波形(6)”と“駆動波形(7)”と“駆動波形(8)”は、ノズル配列の中央部に配置されたピエゾ素子に供給する。
【0089】
jet_lach信号アサートの後に、時刻Aのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、駆動波形(Vcom)の生成が開始すると同時に、through_data[7:0]の値 “0001_0001” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[4] と through_data[0] の値が “1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“100”または“000”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0090】
次に、時刻Bのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値 “1110_0000” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[7]とthrough_data[6]とthrough_data[5]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“111”または“110”または“101”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0091】
次に、時刻Cのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値 “1100_1110” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[7]とthrough_data[6]とthrough_data[3]とthrough_data[2]とthrough_data[1]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“111”または“110”または“011”または“010”または“001”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0092】
次に、時刻Dのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値 “1000_1100” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、through_data[7]とthrough_data[3]とthrough_data[2]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“111”または“011”または“010”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0093】
次に、時刻Eのタイミングでthrough_lach信号がアサートし、through_data[7:0]の値“0000_1000” に従がって、アナログスイッチ群11のオン/オフが切り替わる。ここで、 through_data[3]の値が“1”なので、吐出データ記憶レジスタ群14のうち、記憶されたデータが“011”の場合に、対応するアナログスイッチがオンし、それぞれのピエゾ素子に駆動波形(Vcom)が供給される。
【0094】
以上述べた制御により、ノズル配列の端部の吐出開始タイミングを遅らせ、ノズル配列の中央部の吐出開始タイミングを早めることが可能となり、記録媒体へのインク滴の着弾位置ばらつきを軽減することができる。
【0095】
本実施例では、ノズル列を3つのノズル群に分類し、2種類の吐出開始タイミング(“時刻B”と”時刻C”)を使用したが、印刷周期内の駆動波形Vcomを構成する”1滴吐出波形”の繰り返し数を増やし、連続する3個の”1滴吐出波形”を1組として使用することにより、吐出開始タイミングの調整分解能を向上することができる。
【0096】
本実施例では、図5に示すようにヘッドモジュール1に1列のノズル列を設けたが、複数列(例えば2,3列)のノズル列であっても構わない。
【0097】
本実施例では滴吐出装置を画像形成装置に使用した場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば産業用途などに使われるディスペンサー、インクジェット方式の三次元造形装置など他の用途にも適用可能である。
【0098】
本発明の請求項別の効果をまとめれば、下記の通りである。
請求項1に記載の発明は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
液滴データに基づいて前記スイッチの導通または非導通を決定し、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎に、それぞれ対応する前記スイッチの導通、非導通を切り替えるタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、ノズルの位置に依存する滴吐出特性の補正が簡略にできるという効果がある。
【0099】
請求項2に記載の発明は、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記複数のノズル群毎に、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0100】
請求項3に記載の発明は、
当該滴吐出装置は、液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であって、
前記スイッチ制御部は、
前記ノズル群の分類と、複数ビットで構成される吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、複数回の滴吐出によって1つの着弾跡(1画素)の階調を表現する画像形成装置の場合に、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0101】
請求項4に記載の発明は、
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部と、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出データに拡張ビットを付加するデータ変換部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部による変換後のデータに基づいて、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、吐出データ(印刷データ)の処理により、ノズル群の分類を設定できるという効果がある。
【0102】
請求項5に記載の発明は、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部の変換後の吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、吐出データ(印刷データ)の処理によりノズル群の分類を設定し、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0103】
請求項6に記載の発明は、
当該滴吐出装置は液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、複数回の滴吐出によって1つの液滴後(1画素)の階調を表現する画像形成装置の場合に、吐出データ(印刷データ)の処理によりノズル群の分類を設定し、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正できるという効果がある。
【0104】
請求項7に記載の発明は、
前記ノズル群のうち、n番目のノズル群の平均吐出速度Vn_aveと、[n+1]番目のノズル群の平均吐出速度V[n+1]_ave と、駆動電圧パルスの繰り返し周期Tplsと、ノズルと液滴被着体間のギャップdの間に、
Tpls= | d/Vn_ave − d/V[n+1]_ave |
の関係が成り立つように、前記ノズル群の分類を決定することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、同一ノズル列に共通の駆動波形を供給しつつ、同一ノズル列内の複数のノズル群毎に吐出タイミングを補正する際に、補正効果が高くなるようにノズル群の分類を決定することができるという効果がある。
【0105】
請求項8に記載の発明は、
前記ノズル列を、少なくとも、ノズル列の一方の端部と、ノズル列の他方の端部と、前記ノズル列の一方の端部と他方の端部の間にある中央部の3つのノズル群に分類して、
前記ノズル列の一方の端部と他方の端部のノズル群の吐出タイミングを、前記ノズル列の中央部のノズル群の吐出タイミングよりも遅くなるように制御することを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、ノズル列の中央部とノズル列の端部の機械的剛性などの差異による滴吐出速度の差を補正できるという効果がある。
【0106】
請求項9に記載の発明は、
前記ノズル列の一方の端部のノズル群と他方の端部のノズル群の吐出タイミングが同じであることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、共通の駆動波形を使用することができ、構成ならびに制御の簡略化が図れるという効果がある。
【0107】
請求項10に記載の発明は、
インク滴を吐出する滴吐出装置と、
その滴吐出装置のノズルと対向するように搬送される記録媒体を備え、
前記滴吐出装置と前記記録媒体を相対移動させて、前記記録媒体上に前記インクによる滴画像を形成する画像形成装置において、
前記滴吐出装置が請求項1ないし9のいずれか1項に記載の滴吐出装置であることを特徴とするものである。
このような構成にすることにより、高精密な画像を形成することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0108】
1・・・ヘッドモジュール、2・・・データ変換部、3・・・駆動波形生成部、4・・・コントローラ、5〜8・・・滴吐出装置、9・・・記録媒体、10・・・記録ヘッド、11・・・アナログスイッチ群、12・・・アナログスイッチ制御レジスタ群、13・・・選択論理群、14・・・吐出データ記憶レジスタ群、15・・・シフトレジスタ群、18・・・振動板、21・・・追加bit連結部、22・・・追加bit生成部、23・・・画像ラッチ契機生成部、24・・・データ数カウンタ、25・・・レジスタA、26・・・レジスタB、27・・・バスIF、31・・・増幅器、32・・・D/A変換器、33・・・駆動波形制御部、34・・・波形記憶メモリ、35・・・パターン記憶メモリ、36・・・タイミング記憶メモリ、37・・・印刷周期カウンタ、38・・・バスIF、41・・・流路基板、43・・・ピエゾ素子、44・・・ノズルプレート、47・・・圧力室、100・・・滴吐出装置、101・・・ノズル配列の左端部のピエゾ素子群、102・・・ノズル配列の中央部のピエゾ素子群、103・・・ノズル配列の右端部のピエゾ素子群、N・・・ノズル、X・・・画像形成装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2005−88436号公報
【特許文献2】特開2003−48314号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
液滴データに基づいて前記スイッチの導通または非導通を決定し、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎に、それぞれ対応する前記スイッチの導通、非導通を切り替えるタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の滴吐出装置において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記複数のノズル群毎に、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の滴吐出装置において、
当該滴吐出装置は、液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であって、
前記スイッチ制御部は、
前記ノズル群の分類と、複数ビットで構成される吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項4】
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部と、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出データに拡張ビットを付加するデータ変換部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部による変換後のデータに基づいて、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の滴吐出装置において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部の変換後の吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5記載の滴吐出装置において、
当該滴吐出装置は液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であることを特徴とする滴吐出装置。
【請求項7】
請求項2、3、5、6のいずれか1項に記載の滴吐出装置において、
前記ノズル群のうち、n番目のノズル群の平均吐出速度Vn_aveと、[n+1]番目のノズル群の平均吐出速度V[n+1]_ave と、駆動電圧パルスの繰り返し周期Tplsと、ノズルと液滴被着体間のギャップdの間に、
Tpls= | d/Vn_ave − d/V[n+1]_ave |
の関係が成り立つように、前記ノズル群の分類を決定することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の滴吐出装置において、
前記ノズル列を、少なくとも、ノズル列の一方の端部と、ノズル列の他方の端部と、前記ノズル列の一方の端部と他方の端部の間にある中央部の3つのノズル群に分類して、
前記ノズル列の一方の端部と他方の端部のノズル群の吐出タイミングを、前記ノズル列の中央部のノズル群の吐出タイミングよりも遅くなるように制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の滴吐出装置において、
前記ノズル列の一方の端部のノズル群と他方の端部のノズル群の吐出タイミングが同じであることを特徴とする滴吐出装置。
【請求項10】
インク滴を吐出する滴吐出装置と、
その滴吐出装置のノズルと対向するように搬送される記録媒体を備え、
前記滴吐出装置と前記記録媒体を相対移動させて、前記記録媒体上に前記インクによる滴画像を形成する画像形成装置において、
前記滴吐出装置が請求項1ないし9のいずれか1項に記載の滴吐出装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部を備え、
前記スイッチ制御部は、
液滴データに基づいて前記スイッチの導通または非導通を決定し、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎に、それぞれ対応する前記スイッチの導通、非導通を切り替えるタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の滴吐出装置において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記複数のノズル群毎に、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の滴吐出装置において、
当該滴吐出装置は、液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であって、
前記スイッチ制御部は、
前記ノズル群の分類と、複数ビットで構成される吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項4】
列状に並んだ多数の液滴吐出ノズルと、
各ノズルに連通してインクを蓄える多数の圧力室と、
各圧力室内を加圧する多数の圧力発生素子と、
前記圧力発生素子で共通に使用する印加電圧を生成する駆動電圧生成部と、
前記駆動電圧生成部と前記各圧力発生素子間の導通、非導通を切り替える多数のスイッチと、
前記スイッチの導通、非導通を制御するスイッチ制御部と、
列状に並んだ多数のノズルからなるノズル列を、そのノズル列の端部からの距離に応じた複数のノズル群に分類し、各ノズル群毎の吐出データに拡張ビットを付加するデータ変換部を備え、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部による変換後のデータに基づいて、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の滴吐出装置において、
前記駆動電圧生成部は、1つの着弾跡を形成する周期内において、1滴を吐出可能な駆動電圧パルスを複数回繰り返し生成し、
前記スイッチ制御部は、前記データ変換部の変換後の吐出データに基づいて、複数回繰り返し生成している駆動電圧パルスのうち、対応する駆動電圧パルスの生成タイミングに同期して、前記スイッチの切り替えタイミングを制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5記載の滴吐出装置において、
当該滴吐出装置は液滴の複数回の吐出によって1つの着弾跡の階調を表現する滴吐出装置であることを特徴とする滴吐出装置。
【請求項7】
請求項2、3、5、6のいずれか1項に記載の滴吐出装置において、
前記ノズル群のうち、n番目のノズル群の平均吐出速度Vn_aveと、[n+1]番目のノズル群の平均吐出速度V[n+1]_ave と、駆動電圧パルスの繰り返し周期Tplsと、ノズルと液滴被着体間のギャップdの間に、
Tpls= | d/Vn_ave − d/V[n+1]_ave |
の関係が成り立つように、前記ノズル群の分類を決定することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の滴吐出装置において、
前記ノズル列を、少なくとも、ノズル列の一方の端部と、ノズル列の他方の端部と、前記ノズル列の一方の端部と他方の端部の間にある中央部の3つのノズル群に分類して、
前記ノズル列の一方の端部と他方の端部のノズル群の吐出タイミングを、前記ノズル列の中央部のノズル群の吐出タイミングよりも遅くなるように制御することを特徴とする滴吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の滴吐出装置において、
前記ノズル列の一方の端部のノズル群と他方の端部のノズル群の吐出タイミングが同じであることを特徴とする滴吐出装置。
【請求項10】
インク滴を吐出する滴吐出装置と、
その滴吐出装置のノズルと対向するように搬送される記録媒体を備え、
前記滴吐出装置と前記記録媒体を相対移動させて、前記記録媒体上に前記インクによる滴画像を形成する画像形成装置において、
前記滴吐出装置が請求項1ないし9のいずれか1項に記載の滴吐出装置であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−886(P2013−886A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130575(P2011−130575)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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