説明

漂白活性化剤、及びそれを含む漂白剤組成物

【課題】 ペルオキシ化合物の漂白性能を向上させることができる有機過酸前駆体である漂白活性化剤、特に、低温においても有機過酸に高い水溶性を付与し、かつ漂白性能を向上させることができる漂白活性化剤、及び該漂白活性化剤を含む漂白剤組成物を提供する。
【解決手段】 下記構造式(I)で表されることを特徴とする漂白活性化剤である。また、該漂白活性化剤とペルオキシ化合物とを含有する漂白剤組成物である。
【化16】


ただし、前記構造式(I)において、Xは、SOM基、及びCOM基(ただし、Mは、水素原子、又は塩を形成可能なカチオンを表す)のいずれかを表し、nは、0〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白活性化剤及び漂白剤組成物に関し、詳しくは、カビ取り、衣服についたしみ、食器、陶器、ガラス、プラスチック、義歯等の硬表面についた汚れの洗浄漂白・殺菌、洗濯槽洗浄、パルプ漂白、染色排水処理、及び洗濯中における染料移動の防止などを行うために広く用いられているペルオキシ化合物の漂白性能を向上させることができる漂白活性化剤及び該漂白活性化剤を含有する漂白剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、過酸化水素、水溶液中で過酸化水素を遊離する無機の過塩、それ自体が過酸結合を有する無機の過塩、及び有機過酸(以下、これらの化合物を「ペルオキシ化合物」と略称する。)、並びに漂白浴中で過酸化水素と反応して有機過酸を発生する有機過酸前駆体は、漂白剤の有効成分として広く使用されている。
【0003】
ところが、前記過酸化水素、前記水溶液中で過酸化水素を遊離する無機の過塩、及び前記それ自体が過酸結合を有する無機の過塩は、低温条件下では比較的漂白効果が低いため、低温において、これらの化合物による十分な漂白効果を得るために種々の提案がなされている。
例えば、漂白活性化剤を用いて前記化合物の漂白力を向上させる方法として、グルコースペンタアセテート(GPAC)等のO−アセチル化物、テトラアセチルエチレンジアミン等のN−アシル化物、及び無水マレイン酸等の酸無水物等の漂白剤活性化剤を用いる方法が挙げられる。
【0004】
また、前記有機過酸前駆体は、漂白液中で過酸化水素と反応して有機過酸を生成することにより漂白効果を発揮するものであるが、該有機過酸前駆体を漂白活性化剤としてより有効に用いるために、種々の分子構造が提案されている。該分子構造としては、例えば、脂肪族カルボン酸とフェノール類からなるエステルや安息香酸フェニル、ニトロ置換安息香酸フェニルなどである(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
しかしながら、前記有機過酸前駆体から生じる有機過酸は、水溶性が低いか、或いは水溶性は高いが漂白力が弱いものが多いため、例えば、カビのように濃度の高い汚垢を漂白するために必要な漂白力及び水溶性をともに満足できるものではなかった。
【0006】
そこで、水溶性を向上させた有機過酸前駆体として、カチオン基を含む置換安息香酸を有するエステルが提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
しかしながら、前記カチオン基を含む置換安息香酸を有するエステルは、4級アミンによる環境汚染の懸念があり、実用上の問題がある。
【0007】
また、脱離基に電荷を有するタイプのエステルとしては、カチオン基を含む脱離基を有するエステル、アニオン基を含む脱離基を有するエステルなどが提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。
しかしながら、前記脱離基に電荷を有するタイプのエステルは、有機過酸前駆体としての溶解性は向上するものの、その過加水分解反応によって生ずる有機過酸の水溶性が低く、漂白時に析出が生じて漂白効率を低下させてしまうという問題がある。
【0008】
よって、有機過酸に高い水溶性を付与し、かつ漂白性能を向上させることができる漂白活性化剤、及び該漂白活性化剤を含む漂白剤組成物は未だ提供されておらず、さらなる改良が望まれているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】英国特許第864798号公報
【特許文献2】特開平5−31845号公報
【特許文献3】特開平2−147698号公報
【特許文献4】特開平1−190654号公報
【特許文献5】特開平7−216396号公報
【特許文献6】特開昭59−22999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ペルオキシ化合物の漂白性能を向上させることができる有機過酸前駆体である漂白活性化剤、特に、低温においても有機過酸に高い水溶性を付与し、かつ漂白性能を向上させることができる漂白活性化剤、及び該漂白活性化剤を含む漂白剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、漂白活性化剤としてスルホ安息香酸無水物を用いることにより、生成する有機過酸中にスルホン基が導入されて水溶性が付与されるとともに、漂白性能が向上し、更に、有機過酸の生成効率が自在に制御可能となり、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記構造式(I)で表されることを特徴とする漂白活性化剤である。
【化2】

ただし、前記構造式(I)において、Xは、SOM基、及びCOM基(ただし、Mは、水素原子、又は塩を形成可能なカチオンを表す)のいずれかを表し、nは、0〜3の整数を表す。
<2> 2−スルホ安息香酸環状無水物、2−スルホ安息香酸環状無水物−4−スルホン酸、2−スルホ安息香酸環状無水物−5−スルホン酸、2−スルホ安息香酸環状無水物−4−カルボン酸、2−スルホ安息香酸環状無水物−5−カルボン酸から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の漂白活性化剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の漂白活性化剤と、ペルオキシ化合物とを含有することを特徴とする漂白剤組成物である。
<4> 漂白活性化剤とペルオキシ化合物との配合割合のモル比が、(漂白活性化剤):(ペルオキシ化合物)=1:1〜1:100である前記<3>に記載の漂白剤組成物である。
<5> 界面活性剤、キレート剤、ビルダー、酵素、及び香料から選択される少なくとも1種を含有する前記<3>から<4>のいずれかに記載の漂白剤組成物である。
<6> 前記<3>から<5>のいずれかに記載の漂白剤組成物を用いて漂白を行うことを特徴とする漂白方法である。
<7> 前記<3>から<5>のいずれかに記載の漂白剤組成物を用いて漂白されたことを特徴とする被漂白物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ペルオキシ化合物の漂白性能を向上させることができる有機過酸前駆体である漂白活性化剤、特に、低温においても有機過酸に高い水溶性を付与し、かつ漂白性能を向上させることができる漂白活性化剤、及び該漂白活性化剤を含む漂白剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(漂白活性化剤)
本発明の漂白活性化剤は、下記構造式(I)で表される。
【化3】

【0015】
前記構造式(I)において、Xは、SOM基、及びCOM基(ただし、Mは、水素原子、又は塩を形成可能なカチオンを表す)のいずれかを表し、ベンゼン環の3〜6位の水素が任意のn個のXで置換される。これらの中でも、4位及び5位の水素原子がn個のXで置換されるものが好ましい。nは、0〜3の整数を表し、0又は1であることが好ましい。
前記Mにおいて、前記塩を形成可能なカチオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、トリエチルアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられ、前記Mとしては、水素原子、カリウム、及びナトリウムが好ましく、水素原子及びナトリウムがより好ましい。
【0016】
前記構造式(I)で表される化合物としては、例えば、下記構造式(1)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物、下記構造式(2)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−5−スルホン酸、下記構造式(3)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−5−スルホン酸カリウム塩、下記構造式(4)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−5−スルホン酸ナトリウム塩、下記構造式(5)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−4−スルホン酸、下記構造式(6)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−4−スルホン酸ナトリウム塩、下記構造式(7)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−4−スルホン酸カリウム塩、下記構造式(8)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−4−カルボン酸ナトリウム塩、下記構造式(9)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−4−カルボン酸、下記構造式(10)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−5−カルボン酸、下記構造式(11)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−5−カルボン酸ナトリウム塩、及び下記構造式(12)で表される2−スルホ安息香酸環状無水物−5−カルボン酸カリウム塩などが挙げられる。
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
【化14】

【0028】
【化15】

【0029】
前記構造式(I)で表される漂白活性化剤の製法としては、特に制限は無く、公知の方法で製造することができ、例えば、Azerbaidzhanskii Khimicheskii Zhurnal,(1),41,2002に記載の方法等が挙げられる。
また、前記構造式(I)で表される漂白活性化剤としては、市販品(例えば、東京化成工業(株)製、S0124(2−Sulfobenzoic Anhydride)等)を使用してもよい。
【0030】
(漂白剤組成物)
本発明の漂白剤組成物は、前記漂白活性化剤と、ペルオキシ化合物とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤、キレート剤、ビルダー、酵素、及び香料などのその他の成分を含有する。
【0031】
<漂白活性化剤>
前記漂白活性化剤としては、上述した前記構造式(I)で表される化合物が用いられ、その配合量としては、漂白剤組成物全量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
前記漂白活性化剤の配合量が、漂白剤組成物全量に対し0.1質量%未満であると、十分な漂白性能が得られない場合があり、20質量%を超えると、添加量にみあう効果が得られない場合がある。
【0032】
<ペルオキシ化合物>
前記ペルオキシ化合物としては、過酸化水素、水溶液中で水素を遊離する無機の過塩、及びそれ自体が過酸結合を有する無機の過塩などの過酸化物が挙げられ、前記無機の過塩としては、例えば、アルカリ金属の過炭酸塩、過硼酸塩、過燐酸塩、過珪酸塩、過硫酸塩などが挙げられる。
これらの中でも、過酸化水素、過硼酸ナトリウム、及び過炭酸ナトリウムが好ましい。
【0033】
前記ペルオキシ化合物の配合量としては、漂白剤組成物全量に対し、0.5〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0034】
本発明の漂白剤組成物においては、前記漂白活性化剤と前記ペルオキシ化合物との配合割合のモル比が、(漂白活性化剤):(ペルオキシ化合物)=1:1〜1:100であることが好ましく、1:1〜1:10であることがより好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明の漂白剤組成物には、前記漂白活性化剤及び前記ペルオキシ化合物以外に、界面活性剤、キレート剤、ビルダー、酵素(アルカラーゼ、及びリパーゼ等)、香料、蛍光剤、繊維損傷防止剤、シリコーン等の抑泡剤、過酸化物の安定化剤、及び金属イオン(Ca、Mg、Si、Al、及びZn等)などを併用することができる。
また、前記漂白剤組成物が液状の場合、該漂白剤組成物のpHが1〜11となるようにpH緩衝剤等を含有させることが好ましく、前記漂白剤組成物が液状・粉末状の場合、漂白浴中のpHが7〜10となるように、pH緩衝剤等を含有させることが好ましい。
【0036】
−界面活性剤−
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルポリエトキシエーテル硫酸、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、α−スルホカルボン酸及びそれらのエステル等の水溶性塩、石鹸等のアニオン界面活性剤;ポリオキシアルキルエーテル、ポリオキシアルキルフェニルエーテル等のエトキシ化ノニオン、シュガーエステル、グルコシドエステル、メチルグルコシドエステル、エチルグルコシドエステル、アルキルポリグルコキシド等の糖系活性剤、アルキルジエタノールアミド、脂肪酸N−アルキルグルカミド等のアミド系活性剤等のノニオン界面活性剤;アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホキシベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアラニネート等のアミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体、アルキルアミンオキシド等の両性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤などが挙げられる。
前記界面活性剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜調整できるが、前記漂白剤組成物全量に対し0〜40質量%が好ましい。
【0037】
−キレート剤−
前記キレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、アルミン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、及びアクリル酸・マレイン酸共重合体塩などが挙げられる。
【0038】
−ビルダー−
前記ビルダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、ゼオライト等のアルミノ珪酸塩、層状珪酸塩、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、硼酸塩、燐酸塩、ポリ燐酸塩、及びトリポリ燐酸塩などの無機ビルダー;ニトリロトリ酢酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びポリアクリル酸等のポリカルボン酸塩などの有機ビルダーが挙げられる。
前記ビルダーの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜調整できるが、前記漂白剤組成物全量に対し0〜40質量%が好ましい。
【0039】
本発明の漂白剤組成物は、冷水からぬるま湯程度、具体的には5〜40℃の温度条件下で優れた漂白効果を示す。また、中性からアルカリ性の領域、具体的にはpH7〜10の領域で優れた漂白効果を示す。
【0040】
本発明の漂白剤組成物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液体状、固形状、粉末状、泡沫状、ペースト状などが挙げられる。また、粉末状の場合、1回の使用量を水溶性の包装物等で包装してなる形態としてもよく、液体状の場合、シート状物や固形物に含浸させてなる形態としてもよい。
【0041】
<漂白方法>
前記漂白剤組成物を用いた漂白方法としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択され、例えば、前記漂白剤組成物を被漂白物に直接又は希釈して適用する方法、前記漂白剤組成物を水に溶解した漂白浴液中に被漂白物を浸漬する方法、及び水中に前記漂白剤組成物を含浸させた被含浸物とともに被漂白物を浸漬する方法などが挙げられる。
【0042】
<被漂白物>
本発明の漂白剤組成物の被漂白物としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択され、例えば、浴室をはじめとする住居内のカビ、台所ストレーナーや三角コーナーのぬめり、排水口、便器、衣類、ふきん、じゅうたん、食器、陶器、ガラス、プラスチック、及び義歯等に付着した染み・有機物汚れ・黄ばみ物質等、歯牙のステイン、洗濯浴中に衣類から溶出した染料(移染防止)、染料廃液、パルプ、紙、織物、並びに糸等が挙げられる。
特に、前記染みとしてはカレー、ワイン、果汁、トマトケチャップ、ソース、醤油、血液、草汁、紅茶、及びコーヒー等による染みが挙げられる。
【0043】
本発明の漂白活性化剤を用いれば、浴室をはじめとする住居内のカビ、台所ストレーナーや三角コーナーのぬめり、食器の茶渋、衣類などに付いた各種のしみや有機物汚れに対して、室温かつ中性からアルカリ領域でペルオキシ化合物の漂白を活性化し、有効な漂白を行うことができる。
従って、本発明の漂白活性化剤を含む漂白剤組成物は、カビ取り剤、ストレーナー・三角コーナー洗浄剤、台所用漂白剤、パイプ詰まり除去剤、トイレ洗浄剤、自動食器洗浄機用洗剤、義歯洗浄剤などの硬表面の洗浄漂白剤、洗濯槽洗浄剤、パルプ漂白剤、染色排水処理剤、各種衣料用漂白剤、洗濯中における染料移動防止剤、衣類・硬表面などの殺菌剤などとして幅広く使用することが出来る。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
下記表1に示す漂白活性化剤の濃度が100mM、及びペルオキシ化合物として過酸化水素の濃度が100mMとなるように水溶液を調製し、該水溶液をpH調整剤として炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを用いてpH11とした。前記水溶液を30℃の温度条件下で2分間放置し、過酸を生成させた後、スパチュラ半量(約50μg)のカタラーゼを添加して2分間攪拌して反応させて、残留過酸化水素を完全に分解した。
得られた溶液から2.5mLを計り取り、33%酢酸水溶液5mL、及び10%ヨウ化カリウム水溶液5nLをそれぞれ添加し、0.01Nチオ硫酸Na水溶液で滴定しながら、有機過酸濃度が2mmol、pHが9.5となるように調製して漂白剤組成物を得た。
前記漂白剤組成物について、下記の方法で色素漂白試験を行った。
【0046】
色素としてアリザリンレッドSを0.2mMになるように前記漂白剤組成物中に添加し、特定波長(510nm)の100秒後の吸収を吸光度計で測定し、色素分解率を以下の式に基づいて求めた。結果を表1に示す。
色素分解率(%)=100×(1−B/A)
前記式中、AはアリザリンレッドSの0.2mM水溶液の吸光度、Bは試験開始から100秒後の吸光度を示す。
【0047】
【表1】

比較例1は、過酸化水素100mM溶液(pH9.5)を使用。
【0048】
(実施例5〜8、比較例3〜4)
下記表2に示す組成に基づき、常法により漂白剤組成物を調製した。
得られた漂白剤組成物を水道水で100倍に希釈し、pH調整剤として炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを用いてpH10に調整したもの各100mLを漂白試験溶液とした。
前記漂白試験溶液中に、各種染みで汚染した試験布5gを浸漬し、室温(約25℃)にて10時間静置した。
なお、前記試験布は、平織り木綿布(#100)を、紅茶、カレー、ホウレン草抽出液、及び赤ワインの中に室温下で30分間浸漬し、次いで軽く水道水ですすいだ後、室温にて自然乾燥させることにより作製した。
前記漂白液中から取り出した前記試験布を水洗いし、乾燥させた。前記試験布の浸漬前後、及び、汚染前のLab値を、CHROMAMETER(CR−300、MINOLTA社製)を用いて測定し、以下の式を用いて漂白率を計算した。結果を表2にあわせて示す。
漂白率(%):(A−B)/(A−C)×100
前記式中、A、B、及びCは、それぞれ以下の値を表す。
A:漂白試験溶液浸漬前の試験布のLab値(L+a+b1/2
B:漂白試験溶液浸漬後の試験布のLab値(L+a+b1/2
C:染み汚染前の試験布のLab値(L+a+b1/2
【0049】
【表2】

【0050】
(実施例9〜12、比較例5〜6)
下記表3に示す漂白活性化剤の濃度が100mM、及びペルオキシ化合物として過酸化水素の濃度が1000mMとなるように水溶液を調製し、該水溶液をpH調整剤として炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを用いてpH9.5として漂白剤組成物を得た。
被験プレートとして、黒カビ(Cladosporium cladosporioides)を培養して被着させた素焼きタイル(INAX製:SPKC−1060)を水平に置き、前記各漂白剤組成物0.5gを前記被験プレートに滴下した。2分間放置し、水洗、風乾した後、色彩色差計(MINOLTA製;CR−200)を用いて明度(L値)を測定し、下記式に基づき漂白率を求めた。結果を表3にあわせて示す。
漂白率(%)=100×{(L−L)/(Ls−L)}
前記式中、Ls、L、及びLはそれぞれ以下の値を表す。
Ls:カビを被着する前の素焼きタイルのL値、
:漂白前のモデルカビプレートのL値
:漂白後のL値
【0051】
【表3】

比較例5は、過酸化水素1000mM溶液(pH9.5)を使用。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によると、カビ取り、ストレーナー・三角コーナー洗浄、台所用漂白、パイプ詰まり除去、トイレ洗浄、自動食器洗浄機による食器洗浄、義歯洗浄などの硬表面の洗浄漂白、洗濯槽洗浄、パルプ漂白、染色排水処理、各種衣料用漂白、洗濯中における染料移動防止、衣類・硬表面等の殺菌などを行うために幅広く使用されているペルオキシ化合物の漂白性能を向上させることができる漂白活性化剤、及び該漂白活性化剤を含む漂白剤組成物が得られる。また、本発明の漂白剤組成物を使用することにより、前記各種漂白、洗浄、及び殺菌の高い効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)で表されることを特徴とする漂白活性化剤。
【化1】

ただし、前記構造式(I)において、Xは、SOM基、及びCOM基(ただし、Mは、水素原子、又は塩を形成可能なカチオンを表す)のいずれかを表し、nは、0〜3の整数を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の漂白活性化剤と、ペルオキシ化合物とを含有することを特徴とする漂白剤組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の漂白剤組成物を用いて漂白を行うことを特徴とする漂白方法。
【請求項4】
請求項2に記載の漂白剤組成物を用いて漂白されたことを特徴とする被漂白物。

【公開番号】特開2006−161249(P2006−161249A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358914(P2004−358914)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】