説明

漂白触媒としてのマンガン−オキサレート類の使用

過酸素化合物を含む洗濯洗剤及び洗浄剤、特に硬質表面用の洗浄剤中でのマンガン−オキサレート類の使用が特許請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色した汚れ、特に硬質表面上の着色した汚れを漂白する際に特に無機系過酸素化合物の漂白作用を増強するためにマンガン−オキサレート類を使用すること、及びこのようなマンガン−オキサレート類を含む硬質表面用の洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
無機系過酸素化合物、特に過酸化水素、及び過酸化水素を放出しながら水中に溶解する固形の過酸素化合物、例えば過ホウ酸ナトリウム及び過炭酸ナトリウムパーハイドレートは、昔から、消毒目的及び漂白目的に酸化剤として使用されている。これらの物質の酸化作用は、希釈溶液中では温度に強く依存し、それゆえ、例えばアルカリ性漂白液中でHまたは過ホウ酸塩を使用した場合には、約80℃を超える温度になって始めて、汚染された繊維材料の十分に高速な漂白が達成される。より低い温度では、無機系過酸素化合物の酸化作用は、いわゆる漂白活性化剤の添加によって高めることができ、これには、数多くの提案、特にN−もしくはO−アシル化合物、例えばポリアシル化されたアルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン及びアシル化されたグリコールウリル、例えばテトラアセチルグリコールウリル、更にはカルボン酸無水物、特に無水フタル酸、カルボン酸エステル、特にノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはデカノイルオキシ安息香酸及びアシル化された糖誘導体、例えばペンタアセチルグルコースの部類の物質からの提案が文献公知となっている。それに加え、より最近の文献では、一連のニトリル誘導体、特にカチオン性ニトリルクワート(Nitrilquats)が同じ使用目的に関して特許請求されている。これらの物質を加えることによって、水性過酸化物液の漂白作用を、既に60℃辺りの温度において、95℃で過酸化物液を単独で使用した場合と実質的に同じ作用が生ずる程度に高めることができる。
【0003】
エネルギー節約型の洗濯及び漂白プロセスを得るとする努力の故に、近年では、60℃、特に45℃を大きく下回り冷水温度までの使用温度が重要性を増している。
【0004】
このような低温では、これまで知られている活性化剤化合物の作用は、一般的に、はっきりと分かるほどに弱まってしまう。それ故、このような温度範囲でもより有効なシステムを開発する努力が絶えず行われているが、納得のいく成果は今日まで報告できていない。いわゆる漂白触媒としての遷移金属塩及び−錯体の使用がそのための出発点の一つとなる。金属錯体は、それが洗浄プロセスの条件下に一般に良好な汚れの除去を保証する場合には、大概の場合において、錯体配位子の煩雑な合成及びそれに伴う高い製造コストが特徴となる。
【0005】
更に、洗濯及び洗浄条件において過酸塩との組み合わせである程度の漂白効果をもたらす一連の比較的簡単なマンガン化合物が開示されている。これには、欧州特許出願公開第0141470号明細書(特許文献1)に特許請求されるようなマンガン/EDTA錯体または米国特許第3,532,634号明細書(特許文献2)に特許請求されるような硫酸マンガン/ピコリン酸混合物や、あるいはカーボネートと(欧州特許出願公開第0082563号明細書(特許文献3))、脂肪酸(米国特許第4,626,373号明細書(特許文献4))、ホスホネートと(欧州特許出願公開第0072166号明細書(特許文献5))、ヒドロキシカルボン酸と(欧州特許出願公開第0237111号明細書(特許文献6))またはクエン酸もしくはその塩と(欧州特許出願公開第0157483号明細書(特許文献7))組み合わせたマンガン(II)または(III)塩などがある。しかし、上記の組み合わせ物のいずれも、硬質表面上に着いた頑固な茶渋に対しては有意な洗浄性能を持たない。更に、シュウ酸塩イオンが、トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナンの存在下にマンガン触媒エポキシド化に有利な効果を及ぼすことが知られている(T.H.Bennur et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 185(2002)71〜80(非特許文献1))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0141470号明細書
【特許文献2】米国特許第3,532,634号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0082563号明細書
【特許文献4】米国特許第4,626,373号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0072166号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0237111号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0157483号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第4443177号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.H.Bennur et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 185(2002)71〜80
【非特許文献2】A.Huizing et al.,Mat.Res.Bull.Vol.12, pp.605−6166,1977
【非特許文献3】B.Donkova et al.,Thermochimica Acta,Vol.421,pp.141−149,2004
【非特許文献4】“Seifen−Oele−Fette−Wachse,116 Jahrgang,No.20/1990”,pp.805〜808
【発明の概要】
【0008】
洗濯洗剤及び洗浄剤調合物中でのマンガン−オキサレート類の使用が、マンガン塩及びシュウ酸からなる物理的な混合物に対して利点を有することがここに見出された。これには、調合物における同等のまたはより良好な漂白性能、より低い吸湿性及びそれに伴う高められた貯蔵安定性での漂白触媒の体積の減少などがある。
【0009】
本発明の対象は、洗濯洗剤及び洗浄剤中での漂白触媒としてのマンガン−オキサレート類の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
マンガン−オキサレート類は、水中でマンガン塩とシュウ酸とを反応させることによってそれ自体既知の方法で製造できる。これの例は、中でも、A.Huizing et al.,Mat.Res.Bull.Vol.12,pp.605−6166,1977(非特許文献2)及びB.Donkova et al.,Thermochimica Acta,Vol.421,pp.141−149,2004(非特許文献3)にある。本発明の使用には、白色のマンガン(II)オキサレート二水和物も、ピンク色のマンガン(II)オキサレート三水和物が考えられる。これらは非常に低い水溶性しか持たないが、これらの化合物は、驚くべきことに、無機系過酸素化合物との組み合わせで良好な漂白性能を示す。それらの難溶性の故に、これらは、他のマンガン塩、例えば硫酸マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)または塩化マンガン(II)よりも、アルカリ性洗濯洗剤調合物及び洗浄剤調合物中でより良好な貯蔵安定性を有する。マンガン塩及びシュウ酸もしくはそれの塩からなる物理的な混合物と比べて、本発明のマンガンオキサレート類は、体積効率の良い漂白触媒であり、これは、特に、食洗機用洗浄剤タブレット中での使用において有利である。
【0011】
本発明の更なる対象は、マンガン−オキサレート類を含む洗濯洗剤及び洗浄剤である。
【0012】
これらの洗濯洗剤及び洗浄剤中には、過酸素化合物の他に、好ましくは0.025〜2.5重量%、特に0.05〜1.5重量%の漂白増強性マンガンオキサレート類が含まれる。格別な実施形態の一つでは、マンガンオキサレート類はシュウ酸と組み合わせることができ、それによってそれの水溶性が高まる。この場合、マンガンオキサレート:シュウ酸の比率は1:0〜1:5重量部に相当し得る。
【0013】
過酸素化合物としては、過酸化水素が、しかし第一には過ホウ酸アルカリ塩一もしくは四水和物及び/または過炭酸アルカリ塩が挙げられ、この際、ナトリウムが好ましいアルカリ金属である。過炭酸ナトリウムの使用は、特に、食器用の洗浄剤中において利点がある、というのも、これは、ガラスへの腐食挙動に対して特に有利に作用するからである。それ故、酸素に基づく漂白剤は、好ましくは、過炭酸アルカリ塩、特に過炭酸ナトリウムである。
【0014】
過酸素化合物の使用量は、一般的に、溶液中に10ppm〜10%の活性酸素、好ましくは50ppm〜5000ppmの活性酸素が存在するように選択される。
【0015】
既知の漂白剤安定化剤の少量の添加、例えばホスホネート、ボレートもしくはメタボレート及びメタシリケート並びにマグネシウム塩、例えば硫酸マグネシウムの少量添加は、目的にかなったものになり得る。
【0016】
本発明のマンガンオキサレート類に加えて、慣用の漂白活性化剤、すなわち、過加水分解条件下に、場合により置換された過安息香酸及び/または炭素原子数1〜10、特に2〜4のパーオキソカルボン酸を与える化合物を使用することができる。上記の炭素原子数のO−及び/またはN−アシル基及び/または場合により置換されたベンゾイル基を有する、冒頭に挙げた慣用の漂白活性化剤が適している。好ましいものは、ポリアシル化されたアルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化されたグリコールウリル、特にテトラアセチルグリコールウリル(TAGU)、アシル化されたトリアジン誘導体、特に1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化されたフェニルスルホネート、特にノナノイル−もしくはイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート、アシル化された多価アルコール、特にトリアセチン、エチレングリコールジアセテート及び2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、並びにアセチル化されたソルビトール及びマンニトール、及びアシル化された糖誘導体、特にペンタアセチルグルコース(PAG)、ペンタアセチルフルクトース、テトラアセチルキシロース及びオクタアセチルラクトース、並びにアセチル化され、場合によっては及びN−アルキル化されたグルカミン及びグルコノラクトンである。独国特許出願公開第4443177号明細書(特許文献8)から既知の慣用の漂白活性化剤の組み合わせも使用できる。本発明の使用の好ましい実施形態の一つでは、マンガン−オキサレート及び過酸化水素を発生する化合物と同時に、過加水分解条件下にパーオキソカルボン酸を解離するこのような化合物も使用される。本発明の剤の好ましい実施形態の一つでは、過加水分解条件下にパーオキソカルボン酸を解離するこのような化合物は1〜10重量%、特に2〜6重量%の量で存在する。
【0017】
本明細書において、漂白という用語は、硬質表面上に存在する汚れ、特に茶の漂白の他、食器洗浄液中に存在する、硬質表面から剥がれた汚れの漂白も意味する。
【0018】
更に、本発明は、場合によって更に別の洗浄剤成分、特に過酸素に基づく酸化剤を含む水溶液を使用して、硬質表面、特に食器を洗浄する方法、及びマンガン−オキサレート類を含む硬質表面用の洗浄剤、特に食器用の洗浄剤、及びこれらの中でも好ましくは機械洗浄プロセスに使用するための洗浄剤に関する。
【0019】
本発明の使用は、本質的に、着色した汚れで汚染された硬質表面上に、より強い酸化作用を持つ転化生成物を得るために、過酸化物系酸化剤とマンガン−オキサレート類とが互いに反応することができる条件を生じさせることにある。このような条件は、特に、反応体が水溶液中で互いにぶつかる時に存在する。これは、過酸素化合物とマンガン−オキサレートとを、場合によっては洗浄剤を含む溶液に別々に加えることよって生じ得る。しかし、特に有利には、本発明の方法は、マンガン−オキサレート類、場合により及び過酸素含有酸化剤とを含む、硬質表面用の洗浄剤の使用下に行われる。過酸素化合物は、過酸素不含の洗浄剤を使用する場合には、別個に、そのままでまたは好ましくは水性溶液もしくは懸濁液として溶液に加えることできる。
【0020】
顆粒物、粉末状固形物またはタブレット形固形物として、その他の成形体、均一な溶液または懸濁液として存在することができる本発明の洗浄剤は、上記のマンガン−オキサレートの他に、原則的に全ての既知のこのような剤に慣用の成分を含むことができる。本発明の剤は、特に、ビルダー物質、表面活性物質、過酸素化合物、水混和性有機溶剤、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調節剤、及び更なる助剤、例えば銀腐食防止剤、発泡調節剤、追加の過酸素活性化剤、並びに染料及びフレグランスを含むことができる。
【0021】
更に、本発明の硬質表面用洗浄剤は、研磨作用のある構成分、特に石英粉、木粉、プラスチック粉、チョーク及びマイクロガラス球並びにこれらの混合物を含む群からの構成分を含むことができる。研磨物質は、本発明の洗浄剤中に、好ましくは20重量%を超えない量、特に5〜15重量%の量で含まれる。
【0022】
更に別の本発明の対象は、それぞれ剤全体を基準にして、15〜65重量%、特に20〜60重量%の水溶性ビルダー成分、5〜25重量%、特に8〜17重量%の酸素に基づく漂白剤、及びそれぞれ0.05〜1.5重量%のマンガン−オキサレートを含む、食器の機械洗浄用の剤である。このような剤は、特に低アルカリ性であり、すなわちそれの1重量%溶液は、8〜11.5、好ましくは9〜11のpH値を有する。
【0023】
本発明の洗浄剤中の水溶性ビルダー成分としては、原則的に、食器の機械洗浄用の剤に通常使用される全てのビルダーが考えられ、例えばアルカリ性、中性もしくは酸性ナトリウムもしくはカリウム塩の形で存在することができるリン酸アルカリ塩などが挙げられる。これの例は、リン酸三ナトリウム、二リン酸四ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、すなわちいわゆるヘキサメタリン酸ナトリウム、並びに対応するカリウム塩、またはナトリウム塩とカリウム塩との混合物である。それらの量は、剤全体を基準にして約60重量%まで、特に5〜20重量%の範囲であることができる。更に別の可能な水溶性ビルダー成分は、ポリホスホネート及びホスホネートアルキルカルボキシレートの他に、例えば、特に硬水領域において共ビルダーとして作用する、ポリカルボキシレートのタイプの天然もしくは合成由来の有機ポリマーである。例えば、ポリアクリル酸、及び無水マレイン酸とアクリル酸からなるコポリマー、並びにこれらのポリマー酸のナトリウム塩が挙げられる。商業的な製品は、例えばBASF社のSokalanTMCP5、CP10及びPA30である。これには共ビルダーとして利用可能な天然由来のポリマー、例えば酸化デンプン及びポリアミノ酸、例えばポリグルタミン酸またはポリアスパラギン酸が挙げられる。更に別の可能なビルダー成分は、天然に生ずるヒドロキシカルボン酸、例えばモノ−、ジヒドロキシコハク酸、アルファ−ヒドロキシプロピオン酸及びグルコン酸である。好ましい有機ビルダー成分には、クエン酸の塩、特にクエン酸ナトリウムが挙げられる。クエン酸ナトリウムとしては、水不含のクエン酸三ナトリウム及び好ましくはクエン酸三ナトリウム二水和物が挙げられる。クエン酸三ナトリウム二水和物は、微結晶性もしくは粗結晶性の粉末として使用することができる。本発明の剤において最終的に調節されるpH値に依存して、上記の共ビルダー塩に相当する塩が存在してもよい。
【0024】
本発明の剤中に場合により含まれる酵素には、プロテアーゼ類、アミラーゼ類、プルラナーゼ類、クチナーゼ類及び/またはリパーゼ類、例えばBLAPTM、OptimaseTM、OpticleanTM、MaxacalTM、MaxapemTM、DurazymTM、PurafectTM OxP、EsperaseTM及び/またはSavinaseTMなどのプロテアーゼ類、TermamylTM、Amylase−LTTM、MaxamylTM、DuramylTMなどのアミラーゼ類、及び/またはLipolaseTM、LipomaxTM、LumafastTM及び/またはLipozymTMなどのリパーゼ類などが挙げられる。使用される酵素は、時期尚早の不活性化からこれらを保護するために、キャリア物質上に吸着させるか及び/またはコーティング物質中に埋め込むことができる。これらは、本発明の洗浄剤中に、好ましくは10重量%まで、特に0.05〜5重量%の量で含まれ、この際、特に好ましくは酸化分解に対して安定化された酵素が使用される。
【0025】
好ましくは、本発明の食洗機用洗浄剤は、慣用のアルカリキャリア、例えばケイ酸アルカリ塩、炭酸アルカリ塩及び/または炭酸水素アルカリ塩を含む。通常使用されるアルカリキャリアには、炭酸塩、炭酸水素塩、及びSiO/MO(M=アルカリ原子)のモル比が1:1〜2.5:1のケイ酸アルカリ塩が挙げられる。この際、ケイ酸アルカリ塩は、剤全体を基準にして、40重量%まで、特に3〜30重量%の量で含まれ得る。本発明の剤中に好ましく使用されるアルカリキャリア系は、炭酸塩及び炭酸水素塩からなる混合物、好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる混合物であり、これは50重量%まで、好ましくは5〜40重量%の量で含まれ得る。
【0026】
本発明の剤の更に別の実施形態では、20〜60重量%の水溶性有機ビルダー、特にクエン酸アルカリ塩、3〜20重量%の炭酸アルカリ塩、及び3〜40重量%の二ケイ酸アルカリ塩が含まれる。
【0027】
本発明の剤には、場合により、界面活性剤、特にアニオン界面活性剤、双性イオン性界面活性剤及び好ましくは弱発泡性のノニオン性界面活性剤を加えることができ、これは、脂肪含有の汚れのより良好な脱着に、湿潤剤として、及び場合により洗浄剤の製造の枠内において造粒助剤として役に立つ。それらの量は、20重量%まで、特に10重量%までであることができ、好ましくは0.5〜5重量%の範囲である。通常は、特に機械食器洗いプロセスに使用するための洗浄剤においては、非常に低発泡性の化合物が使用される。これには、好ましくは、分子中にそれぞれ8モルまでのエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位を有するC12〜C18アルキルポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールエーテルが挙げられる。しかし、他の既知の低発泡性ノニオン性界面活性剤、例えば分子中にそれぞれ8モルまでのエチレンオキシド単位及びブチレンオキシド単位を有するC12〜C18−アルキルポリエチレングリコール−ポリブチレングリコールエーテル、末端基キャップドアルキルポリアルキレングルコール混合エーテル、並びに約1〜4の重合度を有する発泡性ではあるが生態学的に魅力のあるC〜C14アルキルポリグルコシド、及び/または分子中に3〜8個のエチレンオキシド単位を有するC12〜C14−アルキルポリエチレングリコールも使用できる。また同様に、グルカミドのファミリーからの界面活性剤、例えばアルキル部分が、好ましくはC〜C14のC鎖長を有する脂肪アルコールに由来する、アルキル−N−メチル−グルカミドも好適である。上記の界面活性剤が混合物として使用される時、例えば、アルキルポリグリコシドと脂肪アルコールエトキシレートとの組み合わせまたはグルカミドとアルキルポリグリコシドとの組み合わせも有利な場合がある。アミンオキシド、ベタイン及びエトキシル化アルキルアミンの存在も可能である。
【0028】
銀腐食保護を達成するためには、本発明の食器用洗浄剤中に、銀腐食防止剤を使用することができる。好ましい銀腐食保護剤は、有機スルフィド、例えばシスチン及びシステイン、二価もしくは三価フェノール、場合によりアルキル−もしくはアリール置換されたトリアゾ−ル、例えばベンゾトリアゾール、イソシアヌル酸、チタン−、ジルコニウム−、ハフニウム−、コバルト−もしくはセリウム塩及び/または−錯体(これらの金属は、その金属に応じてII、III、IV、VまたはVIの酸化状態で存在する)である。
【0029】
濯ぎ工程中にガラスの腐食を防ぐためには、本発明の食器用洗浄剤中に、然るべき防止剤を使用することができる。ここで、特に有利なものは、結晶性層状ケイ酸塩及び/または亜鉛塩である。結晶性層状ケイ酸塩は、例えばClariant社からNa−SKSの商号で販売されており、例えばNa−SKS−1(NaSi2245.xHO、ケニアイト)、Na−SKS−2(NaSi1429.xHO、マガディアイト)、Na−SKS−3(NaSi17.xHO)またはNa−SKS−4(NaSi.xHO、マカタイト)などがある。これらの中でも、特に、Na−SKS−5(アルファ−NaSi)、Na−SKS−7(ベータ−NaSi、ナトロシライト)、Na−SKS−9(NaHSi.HO)、Na−SKS−10(NaHSi.3HO、カネマイト)、Na−SKS−11(t−NaSi)及びNa−SKS−13(NaHSi)、特にNa−SKS−6(デルタ−NaSi)が適している。結晶性層状ケイ酸塩に関しての概説は、例えば“Seifen−Oele−Fette−Wachse,116 Jahrgang,No.20/1990”の805〜808頁に記載の項(非特許文献4)にある。
【0030】
好ましい食洗機用洗剤または食洗機用リンス助剤は、本出願の枠内において、それぞれ該剤の総重量を基準にして、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、特に0.4〜10重量%の結晶性層状ケイ酸塩の重量割合を有する。
【0031】
更に別の好ましい実施形態では、本発明の食洗機用洗浄剤または食洗機用リンス剤は、有機亜鉛塩の群、好ましくは可溶性有機亜鉛塩の群、特に好ましくはモノマー性もしくはポリマー性有機酸の可溶性亜鉛塩の群、特に酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、安息香酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、アビエチン酸亜鉛、吉草酸亜鉛、亜鉛−p−トルエンスルホネートの群から選択される少なくとも一種の亜鉛塩を含む。
【0032】
この際、本出願の枠内において、どの亜鉛塩が使用されたかにかかわらず、すなわち特に有機または無機亜鉛塩、可溶性または非可溶性亜鉛塩、またはこれらの混合物が使用されたかにはかかわらず、食洗機用洗浄剤または食洗機用リンス剤の総重量を基準にして亜鉛塩の重量割合が0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜7重量%、特に0.4〜4重量%の食洗機用洗剤または食洗機用リンス剤が好ましいものと見なされる。
【0033】
洗浄剤が、例えばアニオン性界面活性剤の存在下において、使用時にあまりに強く発泡する場合には、これに、6重量%まで、好ましくは約0.5〜4重量%の発泡抑制化合物、好ましくはシリコーン油、シリコーン油と疎水化したシリカとの混合物、パラフィン、パラフィンとアルコールとの組み合わせ、疎水化したシリカ、二脂肪酸アミド、及びその他の更に別の既知の商業的に入手できる消泡剤の群からの化合物を更に加えることができる。本発明の剤中の更に別の任意選択の成分は例えば香油である。
【0034】
本発明の剤に−特にこれが液状またはペースト状の形で存在する場合−使用できる有機溶剤には、炭素原子数1〜4のアルコール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール及びtert.−ブタノール、炭素原子数2〜4のジオール、特にエチレングリコール及びプロピレングリコール、並びにそれらの混合物、及び上記の部類の化合物から誘導できるエーテルが挙げられる。このような水混和性溶剤は、本発明の洗浄剤中に、好ましくは20重量%を超えない量、特に1〜15重量%の量で存在する。
【0035】
残りの成分を混合することによっては自ずと生じない所望のpH値を調節するために、本発明の剤は、系及び環境と適合する酸、特にクエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸及び/またはアジピン酸、あるいは鉱酸、特に硫酸または硫酸水素アルカリ塩、あるいは塩基、特に水酸化アンモニウムまたはアルカリ水酸化物を含むことができる。このようなpH調節剤は、本発明の剤中に、好ましくは10重量%超えない量、特に0.5〜6重量%の量で含まれる。
【0036】
本発明の固形の剤の製造は何の困難性もなく、原則的に既知の方法で、例えば噴霧乾燥または造粒によって行うことができ、この際、過酸素化合物及び漂白触媒は、場合により後で別々に添加される。
【0037】
水性溶液または他の通常の溶剤を含む溶液の形の本発明の洗浄剤は、特に有利には、各成分を単に混合することによって製造され、この際、各成分はそのままでまたは溶液として自動ミキサー中に加えることができる。
【0038】
本発明の剤は、好ましくは、粉末状、顆粒状またはタブレット形態の調合物として存在し、これは、熱を負荷できる成分を混合、造粒、ロール圧縮及び/または噴霧乾燥し、そして比較的敏感な成分(これには特に酵素、漂白剤及び漂白触媒などがある)を混合することによってそれ自体既知の方法で製造することができる。
【0039】
タブレット形態の本発明の洗浄剤を製造するためには、好ましくは、全ての構成分をミキサー中で互いに混合し、そしてこの混合物を、慣用のタブレットプレス、例えばエキセンプレス機またはロータリープレス機を用いて、200×10Pa〜1500×10Paの範囲のプレス圧で圧縮する。
【0040】
そうして、通常150Nを超える曲げ強度を有する、耐破損性があるが、使用条件下において十分に速く溶解するタブレッドが問題なく得られる。好ましくは、このように製造されるタブレットは、35〜40mmの直径で、15〜40g、特に20〜30gの重量を有する。
【0041】
800〜1000g/lの範囲の高い嵩密度を有する、ダストを発生せず貯蔵安定性で自由流動性の粉末及び/または顆粒物の形態の本発明の剤の製造は、第一のプロセス工程において、ビルダー成分を液状混合成分の少なくとも一部と一緒に、生ずる予混合物の嵩密度の上昇を伴いながら混合し、その後−望ましい場合には中間乾燥後に−、漂白触媒を包含する該剤の他の成分を、こうして得られた予混合物と一緒にすることによって行うことができる。
【0042】
食器洗浄用の本発明の剤は、家庭用の食洗機にも、産業用の食洗機にも使用できる。添加は、手でまたは適当な計量添加装置を用いて行われる。洗浄液中の使用濃度は、一般的に約1〜8g/l、好ましくは2〜5g/lである。
【0043】
機械濯ぎプログラムは、一般的に、洗浄工程の後に続く清水を用いた幾つかの中間濯ぎ工程と、慣用のリンス剤を用いた濯ぎ工程によって、完結、終了する。乾燥後、本発明の剤を使用した場合には、完全に清潔で衛生的な面で申し分のない食器が得られる。
【実施例】
【0044】
マンガン(II)−オキサレート二水和物の製造
攪拌機、温度計及び還流冷却器を備えた10L四つ首丸底フラスコ中で、176.0g(1.95モル)のシュウ酸を4200mlの水中に仕込み、得られた溶液を、室温で、2100mlの水中の318.6g(1.30モル)の酢酸マンガン(II)四水和物からなる溶液と滴下混合し、添加終了後、15分間、後攪拌した。次いで、この反応混合物を還流下に加熱し、そして更に30分間、後攪拌した。
【0045】
室温に冷却した後、白色の沈殿物を吸引濾過し、それぞれ200mlの水で三回洗浄し、そして一晩、減圧乾燥棚中で室温で乾燥した。226.5gの白色の結晶性マンガン(II)−オキサレート二水和物が得られた。
例1〜5
44重量部のトリポリリン酸ナトリウム、30重量部の炭酸ナトリウム、10重量%の層状ケイ酸塩SKS−6、10重量部の過ホウ酸ナトリウム一水和物、それぞれ1.5重量部のプロテアーゼ顆粒物及びアミラーゼ顆粒物、3重量部のノニオン性界面活性剤、並びに2重量部の顆粒物の形態のN,N,N’N’−テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)を含む洗浄剤(V1)、及び本発明のマンガンオキサレートを含む以外はV1と同様に組成した本発明による洗浄剤(M1〜M3)を、それらの茶除去性に関して試験した。V2及びV3において、更に別の本発明外のマンガン塩、またはマンガン塩とシュウ酸からなる混合物を比較例として記載する。
【0046】
規格化された茶の付着物を生じさせるために、ティーカップを、70℃の温かい茶溶液中に25度浸けた。次いで、茶溶液の少量をそれぞれのティーカップに入れ、そしてカップを乾燥棚中で乾燥した。
【0047】
洗浄試験を、ミーレG688SC食洗機中で45℃で、水硬度21°dHの水を使用して、100gのIKW試験汚れの存在下に行った。次いで、付着物の除去を、0(=変わらず非常に強い付着)〜100%(=付着無し)の尺度で視覚評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
本発明の剤M1〜M3の表1に記載の評価は、比較品V1及び比較試験V2及びV3の値よりもかなり良い。
【0050】
本発明の使用によって、かなりより良好な漂白作用を達成できることが分かる。
【0051】
過ホウ酸ナトリウムを過炭酸ナトリウムに代えた場合には実質的に同じ結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漂白触媒としてのマンガン−オキサレート類の使用。
【請求項2】
マンガンオキサレート類が、マンガン(II)オキサレート二水和物またはマンガン(II)オキサレート三水和物であることを特徴とする、請求項1の使用。
【請求項3】
追加的に遊離のシュウ酸を使用することを特徴とする、請求項1の使用。
【請求項4】
マンガン−オキサレート類を含む、洗濯洗剤及び洗浄剤。
【請求項5】
過酸素化合物及び0.025〜2.5重量%のマンガン−オキサレート類を含むことを特徴とする、請求項3の洗濯洗剤及び洗浄剤。
【請求項6】
過酸素化合物及び0.05〜1.5重量%のマンガン−オキサレート類を含むことを特徴とする、請求項3の洗濯洗剤及び洗浄剤。
【請求項7】
硬質表面用の洗浄剤であることを特徴とする、請求項3の洗濯洗剤及び洗浄剤。
【請求項8】
食器用洗剤であることを特徴とする、請求項3の洗濯洗剤及び洗浄剤。
【請求項9】
10〜30%の過炭酸ナトリウム、2〜6%のTAED及び0.25〜0.75%のマンガンオキサレート類を含む、洗濯洗剤及び洗浄剤。



【公表番号】特表2012−500870(P2012−500870A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524244(P2011−524244)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006162
【国際公開番号】WO2010/022918
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】