説明

漏水検知システム並びに漏水検知方法および漏水検知用移動飛行体

【課題】移動飛行体を使用した建築物の漏水を検知するシステム並びに検知方法および漏水検知に使用する移動飛行体の提供を図る。
【解決手段】建築物の漏水を検知するシステムであって、検知ガスボンベと注入ノズルと切替電磁弁とで構成される検知ガス送入装置と、移動飛行体に搭載されるとともに、ガス検知器と移動飛行体操縦受信器とで構成される検知装置と、それらを遠隔操作する監視・操縦装置と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内部に発生する漏水箇所を検知する漏水検知システム並びに漏水検知方法および漏水検知用移動飛行体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の施工上の不具合箇所の発生に伴って、建築物の内部に発生する漏水箇所を検知して補修する漏水検知システムやそれを利用した漏水補修方法として、例えば特開2004―85508号公報(特許文献1)「漏水箇所検出用及び同システムを利用した漏水箇所検出方法」に記載された技術や、本出願人による特開昭58―101970号公報(特許文献2)「屋根壁体等の漏水発見修繕工法とその装置」に記載の技術などが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記提案のいずれも、その漏水箇所を発見する手段において、人手による足場の組み立てや作業ゴンドラの設置、高所作業車の手配など作業準備の手間や作業人員を必要とするものであり、また、高所作業における作業上の危険性が常に伴うものであった。
また、従来においては、作業者が入り込めないような狭いスペースにおける漏水検知作業の要請に対し、何ら手立てがないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2004―85508号公報
【特許文献2】特開昭58―101970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を鑑み、移動飛行体を使用した建築物の漏水を検知するシステム並びに検知方法および漏水検知に使用する移動飛行体の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、建築物の漏水を検知するシステムであって、屋内に配備される検知ガス送入装置と、屋外に配置される検知装置と、それらを遠隔操作する監視・操縦装置と、からなり、検知ガス送入装置は、検知ガスボンベと、注入ノズルと、切替電磁弁と、で構成され、検知装置は、移動飛行体(ラジコンヘリコプター)に搭載されるとともに、ガス検知器と、移動飛行体操縦受信器と、で構成され、監視・操縦装置は、移動飛行体操縦送信器と、で構成されている。
【0007】
請求項2記載の本発明は、漏水検知システムにおいて、検知ガス送入装置に電磁弁切替受信器を備えるとともに、監視・操縦装置に電磁弁切替送信器を備える構造を採る。
【0008】
請求項3記載の本発明は、前記漏水検知システムにおいて、検知装置にビデオカメラ並びにビデオ映像送信器を備えるとともに、監視・操縦装置にモニター並びにビデオ映像受信器を備える構造を採る。
【0009】
請求項4記載の本発明は、漏水検知システムにおいて、検知装置にガス検知表示器を備える構造を採る。
【0010】
請求項5記載の本発明は、建築物の漏水を検知する方法であって、検知ガスボンベに繋がれ且つ中間位置に切替電磁弁を有する注入ノズルを建築構造体内所定漏水箇所に差込んで固定し、該切替電磁弁を切替操作して検知ガスを建築構造体内に注入し、検知すべく、ガス検知器が搭載された移動飛行体を遠隔操縦して該ガス検知器で建築構造体内に注入された検知ガスを屋外において検知することにより、漏水箇所を特定する方法を採る。
【0011】
請求項6記載の本発明は、漏水検知方法において、切替電磁弁に電磁弁切替受信器を備え、電磁弁切替送信器からの指令により、該切替電磁弁の切替操作を遠隔操作する方法を採る。
【0012】
請求項7記載の本発明は、漏水検知方法において、移動飛行体にビデオカメラ並びにビデオ映像送信器を備え、該ビデオ映像送信器から送信された映像をビデオ映像受信器を介してモニターに映し出す方法を採る。
【0013】
請求項8記載の本発明は、遠隔操作のための操縦受信器を備えた漏水を検知するために用いられる移動飛行体であって、建物構造体内に注入された検知ガスを検知するためのガス検知器が搭載されている構造を採る。
【0014】
請求項9記載の本発明は、漏水検知用の移動飛行体において、該移動飛行体の建物構造体への接触を防止するためのガイドフレームが備えられている構造を採る。
【0015】
請求項10記載の本発明は、漏水検知用の移動飛行体において、ビデオカメラ並びにビデオ映像送信器が搭載されている構造を採る。
【0016】
請求項11記載の本発明は、漏水検知用の移動飛行体において、ガス検知器により検知ガスを検知した際に外部へ認知させるためのガス検知表示器が搭載されている構造を採る。
【0017】
請求項12記載の本発明は、漏水検知用の移動飛行体において、漏水箇所にマークを付するためのマーキング噴射装置が搭載されている構造を採る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、遠隔操作による移動飛行体(ラジコンヘリコプター)を使用することによって、作業員が高所作業することなく、地上の監視・操縦装置でガス漏れの確認と漏水クラック(亀裂)ならびにジャンカ(隙間)の状態を確認ならびに撮影することができるため、漏水箇所を発見する手段において足場の組み立てやゴンドラの設置、高所作業車の使用などを必要とすることなく、地上で安全に操作することができる優れた効果が得られるものである。
【0019】
また、本発明によれば、従来の漏水箇所を発見する手段において、建築物の屋上や外壁に足場の組み立てや作業用ゴンドラの設置、高所作業車の手配に比べ、装備の手配費用のコスト削減が図れる優れた効果が得られるものである。
【0020】
さらに、本発明によれば、水漏れ検知作業と後工程で行われる補修剤充填作業が、従来であれ大幅な人件費の削減ができる優れた効果が得られるものである。
【0021】
そしてまた、本発明によれば、高層ビルやマンションなどの屋上や外壁の漏水箇所の視覚的確認作業において、ビデオ撮影ならびにモニター確認、画像保存ならびにプリント出力ができるため、漏水箇所の現状確認、修理見積りに関しての客観的な情報開示ならびに資料提供がなされる優れた効果が得られるものである。
【0022】
またさらに、本発明によれば、検知ガス充填作業と検知ガス検知作業を移動飛行体操縦者が一人で行うため、検知測定が正確に行われ、且つ繰り返し確認作業が瞬時に行えるため、水漏れ水路が正確に把握できる優れた効果が得られるものである。
【0023】
そしてまた、本発明による漏水検知方法と同時に行われる補修剤充填作業は、本出願人による「屋根壁体等の漏水発見修繕工法とその装置」(特許文献2参照)をもって既に提案されており、過去25年以上にわたって確実に漏水防止工事実績を残しているもので、本出願における漏水検知システム並びに漏水検知方法および漏水検知用移動飛行体は、補修剤充填作業の確実性と水漏れ検知作業の効率化をもってユーザーへの確実なる信頼性と現場漏水状況の客観的な報告データを速やかに提供できる優れた効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明における実施形態の主要装置を示した全体模式図である。(実施例1)
【図2】図2は、本発明における実施形態の検知ガスの充填・検知状態を示す詳細拡大図である。(実施例2)
【図3】図3は、本発明における実施形態の全体作業状態を示す説明図である。(実施例3)
【図4】図4は、本発明における実施形態における移動飛行体の一部を示す説明図である。(実施例4)
【図5】図5は、本発明における実施形態における移動飛行体の電気配線図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、建築物の漏水を検知するシステムであって、検知ガスボンベと注入ノズルと切替電磁弁とで構成される検知ガス送入装置と、移動飛行体(ラジコンヘリコプター)に搭載されるとともに、ガス検知器と移動飛行体操縦受信器とで構成される検知装置と、それらを遠隔操作する監視・操縦装置と、からなることを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる実施形態を、図面に基づき説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、図1は、本発明における実施形態の主要装置を示した全体模式図である。
図(a)は検知ガス送入装置の全体模式図を示し、図(b)は監視・操縦装置の全体模式図を示し、図(c)は、移動飛行体を利用した検知装置の全体模式図を示す。
【0027】
漏水検知システム10は、屋内に配備される検知ガス送入装置20と、野外に配置される移動飛行体50に搭載される検知装置30と、それらを遠隔操作する監視・操縦装置40とで構成される。
【0028】
検知ガス送入装置20は、検知ガスボンベ21と、注入ノズル22と、切替電磁弁23と、電磁弁切替受信器24と、から構成される。全ての動作が、遠隔操作による監視・操縦装置40の発信器で行うことができるため、検知ガス充填作業および検知作業が、効率よく且つ、的確に行える構造を有する。
【0029】
検知装置30は、移動飛行体50に取り付けられ、野外の建築構造体Tの外壁面を検知する装置で、ガス検知器31と、ガス検知表示器32と、遠隔操作によるビデオカメラ33と、ビデオ映像送信器34などが搭載される構造を有する。
【0030】
ガス検知器31は、移動飛行体50の前方に搭載され、図5に示されるように、ワイヤーによるクランク機構によって回動されて操舵される構造を有する。
【0031】
ガス検知表示器32は、移動飛行体50に搭載され、移動飛行体50が上昇して作業を行う際、ガス検知器31が反応した際に、ランプの点滅において、下方から目視で確認できる構造を有する。
【0032】
監視・操縦装置40は、一人で遠隔操作することができるラジコン送受信器で、ビデオ映像送受信器41と、操縦送信器42と、モニター43と、電磁弁切替送信器44と、から構成される。屋内と野外とに人員を配し、無線機で操作の確認ならびに検知作業を行うもので、人員コストや作業時間の多くを必要としていた従来の方法の欠点を解消することができる構造を有する。
【実施例2】
【0033】
図2は、本発明における実施形態の全体作業状態を示す説明図である。
建築構造体T内に注入された検知ガスGを検知すべく、ガス検知器31が搭載された移動飛行体50を遠隔操縦して該ガス検知器31で建築構造体T内に注入された検知ガスGを屋外において検知することにより、漏水箇所を特定する方法を採るもので、移動飛行体(ラジコンヘリコプター)50による検知・撮影方法は、検知・撮影する機材を建物構造体Tに取り付けすることなく、容易に短時間で検知・撮影することができるもので、作業コスト、人件費、作業時間などすべての作業において効率よく検知・撮影することができるものである。
【実施例3】
【0034】
図3は、本発明における実施形態の検知ガスの充填・検知状態を示す詳細拡大図である。コンクリートKからなる建物構造体Tの壁体内側面に生じたクラックC(亀裂)やジャンカ(隙間)等の漏水箇所を目視で発見し、検知ガスボンベ21に繋がれ且つ中間位置に切替電磁弁23を有する注入ノズル22を建築構造体T内所定漏水箇所に差込んで固定し、該切替電磁弁23を切替操作して検知ガスGを建築構造体T内に注入するものである。
【実施例4】
【0035】
図4は、本発明における実施形態における移動飛行体の一部を示す説明図であり、図(a)は上面図、図(b)は側面図を示している
移動飛行体50は、検知装置30を搭載するラジコンヘリコプターであって、建物構造体Tの外壁面を自由自在に移動して検知・撮影することができるもので、ガス検知器31と、移動飛行体操縦受信器35と、ガイドフレーム51と、マーキング噴射装置52と、で構成されている。
【0036】
ガイドフレーム51は、移動飛行体50が建物構造体Tに接触するのを防止するため漏水検知用移動飛行体50に取り付けられるもので、先端部には、衝撃回避を備える弾性ガイド体が取り付けられる構造を有する。
【0037】
マーキング噴射装置52は、建物構造体Tの漏水箇所にマークを付するために、塗料噴射装置をもって取り付けられ、ガス検知器31とともに、移動飛行体50の前方に搭載され、ワイヤーによるクランク機構によって回動されて、操舵される構造を有する。
【実施例5】
【0038】
図5は、本発明における実施形態における移動飛行体の電気配線図である。
漏水検知システム10の全ての操作は、遠隔操縦による監視・操縦装置40を操縦する一人の人によって行われるもので、従来の方法に比べて高い効率性、安全性、確実性が得れるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 漏水検知システム
20 検知ガス送入装置
21 検知ガスボンベ
22 注入ノズル
23 切替電磁弁
24 電磁弁切替受信器
30 検知装置
31 ガス検知器
32 ガス検知表示器
33 ビデオカメラ
34 ビデオ映像送信器
35 移動飛行体操縦受信器
40 監視・操縦装置
41 ビデオ映像送受信器
42 移動飛行体操縦送信器
43 モニター
44 電磁弁切替送信器
50 移動飛行体(ラジコンヘリコプター)
51 ガイドフレーム
52 マーキング噴射装置
T 建物構造体
C 漏水クラック
G 検知ガス
H 圧送ホース
K コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の漏水を検知するシステムであって、
屋内に配備される検知ガス送入装置と、屋外に配置される検知装置と、それらを遠隔操作する監視・操縦装置と、からなり、
前記検知ガス送入装置は、検知ガスボンベと、注入ノズルと、切替電磁弁と、で構成され、
前記検知装置は、移動飛行体に搭載されるとともに、ガス検知器と、移動飛行体操縦受信器と、で構成され、
前記監視・操縦装置は、移動飛行体操縦送信器と、で構成されていることを特徴とする漏水検知システム。
【請求項2】
前記漏水検知システムにおいて、
前記検知ガス送入装置に電磁弁切替受信器を備えるとともに、前記監視・操縦装置に電磁弁切替送信器を備えることを特徴とする請求項1に記載の漏水検知システム。
【請求項3】
前記漏水検知システムにおいて、
前記検知装置にビデオカメラ並びにビデオ映像送信器を備えるとともに、前記監視・操縦装置にモニター並びにビデオ映像受信器を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の漏水検知システム。
【請求項4】
前記漏水検知システムにおいて、
前記検知装置にガス検知表示器を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の漏水検知システム。
【請求項5】
建築物の漏水を検知する方法であって、
検知ガスボンベに繋がれ且つ中間位置に切替電磁弁を有する注入ノズルを建築構造体内所定漏水箇所に差込み固定し、該切替電磁弁を切替操作して検知ガスを建築構造体内に注入し、検知すべく、ガス検知器が搭載された移動飛行体を遠隔操縦して該ガス検知器で建築構造体内に注入された検知ガスを屋外において検知することにより、漏水箇所を特定することを特徴とする漏水検知方法。
【請求項6】
前記漏水検知方法において、
前記切替電磁弁に電磁弁切替受信器を備え、電磁弁切替送信器からの指令により、該切替電磁弁の切替操作を遠隔操作することを特徴とする請求項5に記載の漏水検知方法。
【請求項7】
前記漏水検知方法において、
前記移動飛行体にビデオカメラ並びにビデオ映像送信器を備え、該ビデオ映像送信器から送信された映像をビデオ映像受信器を介してモニターに映し出すことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の漏水検知方法。
【請求項8】
遠隔操作のための操縦受信器を備えた漏水を検知するために用いられる移動飛行体であって、
建物構造体内に注入された検知ガスを検知するためのガス検知器が搭載されていることを特徴とする漏水検知用移動飛行体。
【請求項9】
前記漏水検知用移動飛行体において、
該移動飛行体の建物構造体への接触を防止するためのガイドフレームが備えられていることを特徴とする請求項8に記載の漏水検知用移動飛行体。
【請求項10】
前記漏水検知用移動飛行体において、
ビデオカメラ並びにビデオ映像送信器が搭載されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の漏水検知用移動飛行体。
【請求項11】
前記漏水検知用移動飛行体において、
前記ガス検知器により検知ガスを検知した際に外部へ認知させるためのガス検知表示器が搭載されていることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の漏水検知用移動飛行体。
【請求項12】
前記漏水検知用移動飛行体において、
漏水箇所にマークを付するためのマーキング噴射装置が搭載されていることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれかに記載の漏水検知用移動飛行体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate