説明

漏液検出機構

【課題】 少量の漏液でも漏液を検出することのできる漏液検出機構を提供することである。
【解決手段】 加工装置内で使用した液体の漏液を検出する漏液検出機構であって、漏液した液体が流入する流入口と、該流入口に接続されて漏液した液体を流下させる透明体で形成された筒状の漏液流下路と、該漏液流下路を挟んで配設された発光部と該発光部から出射された光を受光する受光部とを含む漏液検出手段と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工時に液体を供給しながら加工する切削装置、研削装置等の加工装置において、漏液を検出する漏液検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置では、切削液を供給しながら半導体ウエーハ等の被加工物の切削加工が実施され、研削装置では研削液を供給しながら半導体ウエーハ等の被加工物の研削が実施される。切削装置や研削装置等の加工装置では、漏液が発生してこの漏液が侵入してはならない部分に侵入すると、加工装置が故障を引き起こす場合がある。
【0003】
そこで、特開平11−142278号公報には、加工装置の漏液検出装置が開示されている。この公開公報によると、漏液検出回路の一対の端子間に漏液が侵入し、この漏液を介して端子間が短絡することにより漏液を感知する液体感知部材が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−142278号公報
【発明の概要】
【0005】
ところが、特許文献1に開示された漏液検出装置では、液体感知部材が断線してしまった場合には、断線に気付かず、漏液が発生しても漏液が検出できないという問題がある。また、端子間が短絡するのに十分な量の液体が漏液しないと漏液を検出できないという問題もある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な機構で少量の漏液でも漏液を検出することのできる漏液検出機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、加工装置内で使用した液体の漏液を検出する漏液検出機構であって、漏液した液体が流入する流入口と、該流入口に接続されて漏液した液体を流下させる透明体で形成された筒状の漏液流下路と、該漏液流下路を挟んで配設された発光部と該発光部から出射された光を受光する受光部とを含む漏液検出手段と、を具備したことを特徴とする漏液検出機構が提供される。
【0008】
好ましくは、前記漏液流下路は一方が前記流入口に接続されるとともに他方が閉じており、前記漏液検出機構は、該漏液流下路に貯留された漏液が前記漏液検出手段の高さに達した際に漏液を検出する。
【0009】
好ましくは、漏液検出機構は、漏液した液体を受け止めて流下させるように傾斜した底壁を有する漏液受け部を更に具備し、前記流入口は該漏液受け部の該底壁の最下部に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、構造が簡単で少量の漏液でも漏液を検出することのできる漏液検出機構が提供される。また、本発明の漏液検出機構は、漏液検出器が漏液の接触することなく漏液を検出できるため、有機溶剤等の液体の漏液も検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の漏液検出機構が適用される切削装置の斜視図である。
【図2】本発明の漏液検出機構を備えた切削装置のチャックテーブル移動機構部分の斜視図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】漏液検出器の説明図であり、図4(A)は漏液流下路内に液体がない場合を、図4(B)は漏液流下路内に液体が満たされている場合をそれぞれ示している。
【図5】本発明の漏液検出機構を備えた研削装置の側面図である。
【図6】スピンナ洗浄装置の斜視図である。
【図7】本発明の漏液検出機構を備えたスピンナ洗浄装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は半導体ウエーハをダイシングして個々のチップ(デバイス)に分割することのできる本発明の漏液検出機構を備えた切削装置2の外観を示している。
【0013】
切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示されるCRT等の表示手段6が設けられている。
【0014】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介してフレームFに支持された状態となり、図1に示したウエーハカセット8中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0015】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8から切削前のウエーハWを搬出するとともに、切削後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入手段10が配設されている。ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0016】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引されるとともに、複数の固定手段19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0017】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWの切削すべきストリートを検出するアライメント手段20が配設されている。
【0018】
アライメント手段20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像手段22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像手段22によって取得された画像は、表示手段6に表示される。
【0019】
アライメント手段20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対して切削加工を施す切削手段24が配設されている。切削手段24はアライメント手段20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0020】
切削手段24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像手段22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0021】
切削加工の終了したウエーハWは搬送手段25によりスピンナ洗浄装置27に搬送され、スピンナ洗浄装置27でスピン洗浄されるとともにスピン乾燥される。
【0022】
次に、図2及び図3を参照して、本発明の漏液検出機構30を切削装置2に適用した例について説明する。図2に示すように、切削装置2において、パルスモータ32の回転に伴って回転するボールねじ34がX軸方向に伸長して配設されており、ボールねじ34の回転に伴って、基台36が一対のガイドレール38にガイドされてX軸方向に移動される。
【0023】
基台36にはチャックテーブル18が回転可能に搭載されており、その周囲には切削水等の液体が下方に流れ落ちるのを防止するためのウォーターカバー40が配設されている。
【0024】
ウォーターカバー40のX軸方向の両端には、チャックテーブル18及びウォーターカバー40のX軸方向の移動に追従し、蛇腹ガイド46にガイドされて伸縮する蛇腹42が配設されている。この蛇腹42は、両端の固定プレート44が切削装置2の所定の位置に固定されており、X軸方向の一定範囲内において伸縮し、装置内への漏液を防止している。
【0025】
図3に最もよく示されるように、一対のガイドレール38は第1漏液受け部48の両側壁から構成されており、第1漏液受け部48の底壁48aは手前側及び左側が低くなる様に傾斜している。そして、底壁48aの最下部に図2に示されるように流入口50が形成されている。
【0026】
第1漏液受け部48には、第1漏液受け部48の底壁48aの傾斜とほぼ同様の角度で傾斜した底壁52aを有する第2漏液受け部52が連結されている。52bは第2漏液受け部52の側壁である。第2漏液受け部52の底壁52aは手前側及び左側が低くなる様に傾斜おり、底壁52aの最下部には図2に示されるように流入口54が形成されている。
【0027】
更に、第1漏液受け部48には、第2漏液受け部52と逆方向に第3漏液受け部56が連結されており、第3漏液受け部56の底壁56aは手前側及び右側が低くなる様に傾斜している。56bは第3漏液受け部56の側壁である。第3漏液受け部56の底壁56aの最下部には図2に示されるように流入口58が形成されている。
【0028】
第1漏液受け部48の流入口50には漏液流下路60が接続されており、この漏液流下路の下端は閉じられている。漏液流下路60には漏液検出器62が配設されている。同様に、第2漏液受け部52の流入口54には漏液流下路64が接続されており、漏液流下路64の下端は閉じられている。漏液流下路64には漏液検出器66が配設されている。更に、第3漏液受け部56の流入口58には漏液流下路68が接続されており、漏液流下路68の下端は閉じられている。漏液流下路68には漏液検出器70が配設されている。
【0029】
上述した実施形態では、漏液流下路60、漏液流下路64及び漏液流下路68の下端は閉じられているが、これらの漏液流下路60,64,68の下端を閉じずに排水ラインに連通させるようにしてもよい。この場合には、漏液流下路60,64,68の内径はφ1.5mm程度の細径にするのが好ましい。
【0030】
漏液検出器62,66,70は同一構成であり、図4を参照して漏液検出器62を代表して説明する。漏液検出器62が配設される漏液流下路60はポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透明樹脂パイプから形成されており、その屈折率は漏液流下路60内に流入する漏液78の屈折率と近い値になっている。
【0031】
漏液検出器62はコの字状の支持部材72を備えており、支持部材72には図4(A)に示すように、発光部74と受光部76が漏液流下路60を画成する透明樹脂パイプの壁部を挟んで配設されている。
【0032】
発光部74は、例えば発光素子に接続された光ファイバの端部から構成されており、受光部76も光ファイバの端部から構成され、この光ファイバの他端は受光素子に接続されている。
【0033】
図4(A)に示すように、漏液流下路60内に液体がない場合には、漏液流下路60を形成する透明樹脂製のパイプ60と空気との屈折率の差が大きいため、発光部74から出射された光はパイプ60の内壁面で全反射されてからパイプ60を透過して受光部76で受光される。
【0034】
一方、樹脂製パイプ60で形成される漏液流下路60内が漏液78で満たされると、樹脂製のパイプ60と液体との屈折率の差が小さいため、発光部74から出射された光は液体78内に入り、その光路が図4(A)に示した液体がない場合に比較して変化し、受光部76で受光されることがない。よって、受光部76で発光部74からの光を受光できなくなった時点で、漏液有りと検出する。
【0035】
図5を参照すると、本発明の漏液検出機構を具備した研削装置80の側面図が示されている。漏液検出機構83は研削装置80の下部領域82に配設される。図5に示した研削装置80においては、ウエーハ等の被加工物がチャックテーブル84に吸引保持され、研削ユニット86のスピンドル88の先端にホイールマウント84を介して研削ホイール92が装着されており、スピンドル88は上部に設けたモータ94により駆動されて回転する。
【0036】
コラム96の裏側上部にはパルスモータ98が配設されており、パルスモータ98に駆動されて回転するボールねじ100には、研削ユニット86に結合された移動ブロック102が螺合している。
【0037】
パルスモータ98によりボールねじ100が回転すると、移動ブロック102が上下方向に移動し、移動ブロック102が移動するのに伴い、移動ブロック102と連結された研削ユニット86が一対のガイドレール(図5には一本のみ図示)103にガイドされて上下方向に移動する。移動ブロック102の位置情報は、リニアスケール104によって計測され、当該位置情報はパルスモータ98の駆動制御に供される。
【0038】
被加工物の研削時には、モータ94に駆動されてスピンドル88が回転するとともに、パルスモータ98に駆動されて研削ユニット86が下降してチャックテーブル84に保持されたウエーハ等の被加工物を研削する。研削は研削液を供給しながら実施される。
【0039】
このような研削装置80においても、チャックテーブル84の下部に位置する下部領域82内に漏液検出機構83が配設されている。漏液検出機構83は漏液受け部106を備えており、漏液受け部106の底壁106aが手前側及び左側が低くなる様に傾斜している。
【0040】
底壁106aの最下部には漏液流入口が形成されており、この漏液流入口に漏液流下路108が接続されている。漏液流下路108の先端は閉じられており、漏液流下路108の上部には漏液検出器110が配設されている。
【0041】
漏液流下路108の下端を閉じずに、漏液流下路108を排水ラインに連通させるようにしてもよい。この場合には、漏液流下路108はφ1.5mm程度の細径にするのが好ましい。
【0042】
漏液検出器110は図4を参照して説明した漏液検出器62と同様構成を有しており、発光部から出射された光を受光部で受光できなくなった時点で漏液流下路108内に漏液有りと検出する。
【0043】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の漏液検出機構をスピンナ洗浄装置112に適用した例について説明する。スピンナ洗浄装置112のスピンナテーブル114はモータ124により回転駆動される。
【0044】
スピンナ洗浄装置112は、チャックテーブル114に保持されたウエーハ等の被加工物Wに対して洗浄水を噴射する洗浄ノズル116が回動可能に配設されているとともに、洗浄後の被加工物Wを乾燥する乾燥ノズル118が回動可能に配設されている。
【0045】
乾燥ノズル118はモータ126に連結されて、図7に示した退避位置と、チャックテーブル114に保持された被加工物Wの上方の作業位置との間で回動される。同様に、洗浄ノズル116も図示しないモータに連結されており、このモータにより図7に示したチャックテーブル114に保持された被加工物Wの上方の作業位置と退避位置との間で回動される。
【0046】
チャックテーブル114、洗浄ノズル116及び乾燥ノズル118は透明カバー122で覆われて洗浄室123を画成しており、洗浄室123はダクト120と、洗浄液を排出するドレイン130に連通している。ダクト120は吸引源128に接続されている。
【0047】
ダクト120には下端が閉じられた漏液流下路132が設けられており、漏液流下路132には漏液検出器134が配設されている。漏液検出器134の構成は図4を参照して説明した漏液検出器62と同様である。
【0048】
漏液流下路132と漏液検出器134から構成される漏液検出機構135をダクト120に連通して配設することにより、ドレイン130が詰まった場合、洗浄液がダクト120内に混入するが、この混入を漏液検出器134で検出して、ドレイン130の詰まりを検出することができるとともに、ドレイン130の詰まりを作業者に報じて、ダクト120内に洗浄液が混入するのを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0049】
2 切削装置
18 チャックテーブル
28 切削ブレード
30 漏液検出機構
48 第1漏液受け部
52 第2漏液受け部
56 第3漏液受け部
60,64,68 漏液流下路
62,66,70 漏液検出器
74 発光部
76 受光部
78 漏液
80 研削装置
83 漏液検出機構
108 漏液流下路
110 漏液検出器
112 スピンナ洗浄装置
120 ダクト
132 漏液流下路
134 漏液検出器
135 漏液検出機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置内で使用した液体の漏液を検出する漏液検出機構であって、
漏液した液体が流入する流入口と、
該流入口に接続されて漏液した液体を流下させる透明体で形成された筒状の漏液流下路と、
該漏液流下路を挟んで配設された発光部と該発光部から出射された光を受光する受光部とを含む漏液検出手段と、
を具備したことを特徴とする漏液検出機構。
【請求項2】
前記漏液流下路は一方が前記流入口に接続されるとともに他方が閉じており、
前記漏液検出機構は、該漏液流下路に貯留された漏液が前記漏液検出手段の高さに達した際に漏液を検出する請求項1記載の漏液検出機構。
【請求項3】
漏液した液体を受け止めて流下させるように傾斜した底壁を有する漏液受け部を更に具備し、
前記流入口は該漏液受け部の該底壁の最下部に形成されている請求項1又は2記載の漏液検出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225780(P2012−225780A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93861(P2011−93861)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】