説明

漢方石鹸

【課題】 肌の健康維持、乾燥防止、肌トラブルの改善を目的とした漢方石鹸として冬虫 夏草、鹿角霊芝草、高麗人参、雲南田七、黄山貢菊、熱変性岩を配合したものがあるが、これらの成分は本来皮膚科領域で医療用として用いられる漢方薬に配合される生薬ではなく、肌に対しての効果が高いものとは言い難い。
【解決手段】 医療用漢方薬に用いられている118種類の生薬のうち、皮膚科領域で頻用される四物湯、温清飲、当帰飲子、茵ちん蒿湯、茵ちん五苓散等の主成分である生薬の当帰、地黄、茵ちん蒿の3生薬を石鹸に配合させることにより、より効果の高い漢方石鹸を創ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の健康維持、肌トラブル改善、乾燥防止に用いる生薬入り漢方石鹸に関するものである。
【背景技術】
【0002】

従来石鹸は様々な材料を用いて洗浄以外の効果を持たせた技術が公知となっており、生薬が入った石鹸としては冬虫夏草、鹿角霊芝草、高麗人参、雲南田七、黄山貢菊、熱変性岩を配合した物がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

本来飲用の漢方薬は何種類かの生薬を組み合わせることにより薬効を発揮する薬であるが、例えば麻黄の場合、桂枝と配合すると発汗作用を持ち石膏と配合すると止汗作用を持つ。つまり麻黄に対して他に組み合わせる生薬が違えば効果が全く変わってしまうのである。組み合わせる生薬を適正に選択しないと狙った効果が発揮されなかったり、時には有害になってしまう事がある。故に肌の健康維持、肌トラブル改善、乾燥防止に有用な生薬入り漢方石鹸を創るためには、相性の良い最適な生薬を選択し適切に組み合わせることが重要である。
【0005】
現在、医療用漢方薬を創るのに用いられている生薬は118種類ある。従来の漢方石鹸に含まれる生薬は、冬虫夏草、鹿角霊芝草、高麗人参、雲南田七、黄山貢菊であるがこの5つの生薬のうち医療用漢方薬の材料となっているものは、しいて類似品を挙げれば高麗人参(医療用では御種人参)と黄山貢菊(医療用では菊花)の2種類のみである。人参は、人参湯、補中益気湯、六君子湯など胃腸病を治す漢方薬を創るのに頻用される生薬であり、菊花は唯一、釣藤散という頭痛、高血圧等を治す漢方薬に配合されている生薬で、従来の漢方石鹸に含まれる生薬はいずれも本来皮膚科領域で用いられる漢方薬には配合されていない。
【0006】

肌の健康維持、肌トラブル改善、乾燥防止に有用な漢方石鹸を創るのであれば、本来皮膚科領域で頻用される医療用漢方薬の主成分となっている生薬を配合した方が、より効果の高い漢方石鹸を創ることができる可能性は極めて高い。
【0007】

本発明は、上記事情に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、医療用漢方薬のうち皮膚科領域で頻用される四物湯、温清飲、当帰飲子、茵ちん蒿湯、茵ちん五苓散等の主成分である生薬の当帰、地黄、茵ちん蒿を配合することにした。
【0009】

なお、当帰はセリ科の植物の根で、血行促進作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、発毛作用があるとされ(生薬ハンドブック;協和企画)皮膚科領域で頻用される漢方薬である四物湯、温清飲、当帰飲子の主成分である。
【0010】

地黄は、ゴマノハブサ科の植物の根で、血行促進作用、免疫調整作用、抗炎症作用、 SOD様作用活性作用等があるとされ(生薬ハンドブック;協和企画)皮膚科領域で頻用される漢方薬である四物湯、温清飲、当帰飲子の主成分である。
【0011】

茵ちん蒿は、キク科のカワラヨモギの花穂で、血行促進作用、抗炎症作用、抗菌作用等があるとされ(生薬ハンドブック;協和企画)皮膚科領域で頻用される漢方薬である茵ちん蒿湯、茵ちん五苓散の主成分である。
【0012】
当帰、地黄、茵ちん蒿にはそれぞれに、血行促進による乾燥肌改善作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗菌作用等があり、この3種類は配合するのに相性が良いためニキビやその他の化膿性炎症や肌荒れの改善、乾燥による肌の老化防止、肌荒れによる抜け毛の防止作用などの効果が期待される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明にあっては、当帰、地黄、茵ちん蒿の3つの生薬を含むこととしたため、手洗いや入浴時にこれらを肌に浸透させることができ、肌の健康維持、乾燥防止、肌トラブルの改善等が実現できる。
【0014】
請求項2記載の発明にあっては、当帰を1〜5重量%、地黄を1〜5重量%、茵ちん蒿を1〜5重量%含むことにした。これらの生薬を配合するのに5重量%が限界だからである。これらを最適な配合にして、効果を十分に発揮できる漢方石鹸を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施例の漢方石鹸は顔、体、手足の洗浄に用いる石鹸であって、全体が茶褐色を帯び、総量90gの中に配合生薬として当帰、地黄、茵ちん蒿が含まれている。
【0016】

本実施例の漢方石鹸を製造する際には、石鹸素地に当帰、地黄、茵ちん蒿の抽出液を加えて撹拌した後固形化させることにより形成する。
【0017】
なお前記石鹸の素地については、原料油脂(ヤシ油、パーム油)に苛性ソーダを加えて脂肪酸とグリセリンに分離させる。脂肪酸は苛性ソーダと化合して脂肪酸ナトリウムとなる。これを撹拌しながら食塩水を加え数時間放置し、上層に浮かんできた石鹸分を取りチップ状に乾燥させたものである。
【0018】
このように製造された漢方石鹸にあっては、当帰、地黄、茵ちん蒿の抽出成分が石鹸の使用時において湯水に溶け込み肌に浸透し、肌の健康維持、乾燥防止、肌トラブルの改善等の作用を発揮する。
【実施例1】
【0019】
本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として当帰4,5g(5重量%)地黄4,5g (5重量%)茵ちん蒿 4,5g(5重量%)が含まれたものを、あらなみ皮膚科アレルギー科クリニックにおいてアトピー性皮膚炎患者20名(乳児5名、幼児5名、学童5名、成人5名)に2週間使用してもらったところ、成人1名が不変だったのを
除き他の19名(95%)に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められた。
【実施例2】
【0020】

本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として当帰2,7g(3重量%)地黄2,7g(3重量%)茵ちん蒿 2,7g(3重量%)が含まれたものを実施例1の石鹸を2週間使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、乳児5名、幼児5名、学童4名、成人3名(85%)に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められたが、他の4名は不変であった。
【実施例3】
【0021】

本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として当帰0,9g(1重量%)地黄 0,9g(1重量%)茵ちん蒿 0,9g(1重量%)が含まれたものを実施例1及び実施例2の石鹸を2週間ずつ使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、乳児5名、幼児4名、学童3名、成人2名(70%)に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められたが、他の6名は不変であった。
【実施例4】
【0022】
実施例4から9は当帰、地黄、茵ちん蒿3種類のうち、いずれかを除いて配合した石鹸についての実施例である。本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として茵ちん蒿を除いた当帰4,5g(5重量%)、地黄 4,5g(5重量%)が含まれたものを実施例1,2,3の石鹸を使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、乳児1名、幼児1名(10%)に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められたが他18名は不変であった。
【実施例5】
【0023】

本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として地黄を除いた当帰4,5g(5重量%)茵ちん蒿4,5g(5重量%)が含まれたものを実施例1,2,3,4の石鹸を使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ乳児2名,幼児1名(15%)に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められたが、他17名は不変であった。
【実施例6】
【0024】

本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として当帰を除いた地黄4,5g(5重量%)茵ちん蒿4,5g(5重量%)が含まれたものを実施例1,2,3,4,5の石鹸を使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、乳児2名、幼児1名(15%) に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められたが、他17名は不変であった。
【実施例7】
【0025】

本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として当帰4,5g(5重量%)が含まれたものを実施例1,2,3,4,5,6の石鹸を使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、20名とも改善傾向は見られず不変であった。
【実施例8】
【0026】
本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として地黄4,5g(5重量%)が含まれたものを実施例1,2,3,4,5,6,7の石鹸を使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、20名とも改善傾向は見られず不変であった。
【実施例9】
【0027】

本実施例の石鹸総量90gの中に配合生薬として茵ちん蒿4,5g(5重量%)が含まれたものを実施例1,2,3,4,5,6,7,8の石鹸を使用した患者20名にさらに2週間使用してもらったところ、乳児2名(10%)に痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められたが他の18名は不変であった。
【産業上の利用可能性】
【0028】

本実施例の漢方石鹸では、従来飲用することで医療用として皮膚科領域で頻用されている漢方薬の主成分である当帰、地黄、茵ちん蒿を肌に浸透させることにより、肌の健康維持、乾燥防止、肌トラブルの改善を実施できる。
【0029】

また、あらなみ皮膚科アレルギー科クリニックにおいて、アトピー性皮膚炎の患者20名に当帰、地黄、茵ちん蒿を3種、2種、1種と様々な組み合わせで配合した石鹸を使用してもらったところ、当帰、地黄、茵ちん蒿3種類配合した石鹸では濃度が高いほど痒みの軽減及び皮膚炎の改善が認められた割合が高かった。また当帰と地黄、当帰と茵ちん蒿、地黄と茵ちん蒿の2種類配合石鹸及び当帰、地黄、茵ちん蒿をそれぞれ1種類ずつ配合した石鹸より当帰、地黄、茵ちん蒿3種類を配合した石鹸の方が明らかに有効であった。当帰、地黄、茵ちん蒿を配合した石鹸は肌の健康維持、乾燥防止、肌トラブルの改善におおいに役立つと考えられる。また20名全ての患者において、実施例1の石鹸が最も好印象であった。漢方薬は薬効のある生薬を何種類か配合することによる相乗効果により高い効果を発揮するものであるが、当帰、地黄、茵ちん蒿の3種類の生薬が配合されることにより高い効果を発揮したと考えられる。
【0030】

なお今回はアトピー性皮膚炎の患者に使用したが、本来肌の健康維持、乾燥防止、肌トラブルの改善に用いるための石鹸であるので、医薬品としての使用を目的としていない。

【0031】

以上本実施例を説明してきたが、当帰、地黄、茵ちん蒿を石鹸以外の洗浄剤や化粧品に配合させることは当然考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当帰、地黄、茵ちん蒿を含むことを特徴とする石鹸
【請求項2】
前記、当帰を1〜5重量%、地黄を1〜5重量%、茵ちん蒿を1〜5重量%含 むことを特徴とする請求項1記載の石鹸

【公開番号】特開2011−144129(P2011−144129A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5695(P2010−5695)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(306035007)
【Fターム(参考)】