説明

潤滑剤組成物、減速機および電動パワーステアリング装置

【課題】ポリアミド樹脂からなる歯車等の機械部品の耐久寿命を現状よりも大幅に延長できる潤滑剤組成物と、それを用いた減速機、および電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】潤滑剤組成物は、合成炭化水素油、ウレア系増ちょう剤、およびステアリン酸亜鉛を含み、さらにトリメリット酸エステル、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、およびヒンダードフェノールからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有する。減速機18は、少なくとも一方をポリアミド樹脂で形成した小歯車19と大歯車20との噛み合い部分に、前記潤滑剤組成物を充填した。電動パワーステアリング装置1は、操舵補助用の電動モータ17の出力を、前記減速機18を介して減速して操舵機構9に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば小歯車と大歯車とを備えた減速機や、あるいは転がり軸受、ボールねじ等に好適に用いることができる潤滑剤組成物と、前記潤滑剤組成物を充填した減速機と、前記減速機を備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の電動パワーステアリング装置には減速機が用いられる。例えばコラム型EPSでは、電動モータの回転を、前記減速機においてウォーム等の小歯車からウォームホイール等の大歯車に伝えて減速するとともに出力を増幅した後、ステアリングシャフトに付与してステアリング操作をトルクアシストしている。
前記減速機の、小歯車と大歯車との噛み合い部分を少なくとも含む領域には、潤滑のためにグリース等の潤滑剤組成物が充填される。
【0003】
潤滑剤組成物としては、例えば合成炭化水素油等の基油に、ウレア系増ちょう剤等の増ちょう剤と、低摩擦添加剤等の添加剤とを加えたものが一般的である。
このうち低摩擦添加剤としては、ステアリン酸リチウムやステアリン酸カルシウム等の金属石けん類が挙げられる。中でも特に低摩擦添加剤としての機能、すなわち潤滑剤組成物の摩擦係数を低減する機能に優れたステアリン酸リチウムが広く用いられる(例えば特許文献1、2等参照)。
【0004】
前記ステアリン酸リチウムを含む潤滑剤組成物によれば、減速機における減速の効率を向上したり、前記減速機を組み込んだ電動パワーステアリング装置のトルクを低減して、前記電動パワーステアリング装置を組み込んだ自動車の操舵感を向上したりできる。
しかしステアリン酸リチウムを含む従来の潤滑剤組成物は、機械分野において機械部品の構成材料として多用されているポリアミド樹脂に対して、特に自動車のエンジン周り等の高温環境下で攻撃性を発現して前記ポリアミド樹脂を劣化させ、前記ポリアミド樹脂からなる機械部品(例えば歯車等)の耐久寿命を大きく低下させるといった問題を生じる。
【0005】
ステアリン酸リチウムと同等程度の良好な低摩擦添加剤として機能しうる金属石けん類として、ステアリン酸亜鉛が知られている(例えば特許文献3ないし5等参照)。
発明者の検討によると、前記ステアリン酸亜鉛は、ポリアミド樹脂に対する潤滑剤組成物の攻撃性を緩和する働きを有している。
また基油のうち合成炭化水素油は、分子中に極性基を有しないためポリアミド樹脂を劣化させにくい特性を有している。
【0006】
そのため、前記合成炭化水素油とステアリン酸亜鉛とを併用して潤滑剤組成物を構成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−83797号公報
【特許文献2】特開2004−314916号公報
【特許文献3】特開平9−104889号公報
【特許文献4】特開平10−88167号公報
【特許文献5】特開2007−100107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、単に合成炭化水素油とステアリン酸亜鉛とを組み合わせただけでは、ポリアミド樹脂からなる歯車等の機械部品の耐久寿命を大幅に延長することはできない。
なお、ポリアミド樹脂の耐久寿命を大幅に延長しうる潤滑剤組成物が求められるのは前記減速機に限ったことではなく、例えば保持器をポリアミド樹脂で形成する場合のある転がり軸受やボールねじ等においても同様である。
【0009】
本発明の目的は、ポリアミド樹脂からなる歯車等の機械部品の耐久寿命を現状よりも大幅に延長できる潤滑剤組成物と、それを用いた減速機、および電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者の検討によると、ポリアミド樹脂からなる歯車等の機械部品の劣化の主たる原因はポリアミド樹脂の脆化にあり、かかる脆化を抑制できればその耐久寿命を現状よりも延長することができる。
樹脂の脆化を抑制する手段としては、前記樹脂中に、当該樹脂の可塑剤や安定化剤として機能しうる化合物を含有させるのが一般的である。
【0011】
しかしポリアミド樹脂からなる歯車等の機械部品においては、前記ポリアミド樹脂中にこれら低分子量の化合物を含有させるのは困難である。前記低分子量の化合物を含有させることによって機械的強度や耐久性が大幅に低下して、機械部品としての用途に適さなくなってしまうためである。
歯車等の機械部品を形成するポリアミド樹脂の脆化は、前記機械部品の、潤滑剤組成物と接触する表面から始まり、徐々に内奥部へ進行する。
【0012】
かかる知見に基づいて発明者は、ポリアミド樹脂の可塑剤や安定化剤として機能する化合物を、前記ポリアミド樹脂それ自体ではなく、前記ポリアミド樹脂からなる機械部品と接触する潤滑剤組成物中に含有させることを検討した。
その結果、前記構成によれば、機械部品の機械的強度や耐久性を低下させることなしに、ポリアミド樹脂の脆化を機械部品の表面において阻止して、前記機械部品の耐久寿命を大幅に延長できる可能性があることを見出した。
【0013】
そこで発明者は、ポリアミド樹脂の可塑剤や安定化剤として機能しうる種々の化合物の中から、潤滑剤組成物に含有させた状態で前記効果を良好に発揮しうる化合物についてさらに検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、合成炭化水素油、ウレア系増ちょう剤、およびステアリン酸亜鉛を含み、さらにトリメリット酸エステル、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、およびヒンダードフェノールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする潤滑剤組成物である。
【0014】
前記本発明の潤滑剤組成物は、さらに硫黄系酸化防止剤をも含有しているのが好ましい。前記硫黄系酸化防止剤は、過酸化物を分解して酸化を防止する機能を有しており、ポリアミド樹脂の劣化を抑制する働きをする。したがって前記各化合物による脆化防止の機能と相まって、ポリアミド樹脂からなる機械部品の耐久寿命をさらに延長できる。
のみならず、前記硫黄系酸化防止剤は、特に高温環境下でのステアリン酸亜鉛の酸化劣化を防止する働きもする。また耐摩耗剤としても機能する。そのため特に高温環境下で使用した際に、前記ステアリン酸亜鉛による、低摩擦添加剤としての機能を長期間に亘って維持することもできる。すなわち潤滑剤組成物の耐熱性を向上できる。
【0015】
本発明の減速機(18)は、軽量化のために少なくとも一方がポリアミド樹脂からなる小歯車(19)と大歯車(20)とを備え、前記両歯車の噛み合い部分を含む領域に、前記本発明の潤滑剤組成物を充填したものであるため、前記ポリアミド樹脂からなる歯車の耐久寿命を現状よりも大幅に延長することができる。
さらに本発明の電動パワーステアリング装置(1)は、操舵補助用の電動モータ17の出力を、前記減速機を介して減速して操舵機構(9)に伝えるものであるため、前記ポリアミド樹脂からなる歯車の劣化を長期間に亘って抑制しながら、電動パワーステアリング装置のトルクを低減して、前記電動パワーステアリング装置を組み込んだ自動車の操舵感を向上できる。
【0016】
なおカッコ内の数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表す。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリアミド樹脂からなる歯車等の機械部品の耐久寿命を現状よりも大幅に延長できる潤滑剤組成物と、それを用いた減速機、および電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の概略図である。
【図2】実施例、比較例で調製した潤滑剤組成物における、ポリアミド樹脂に対する劣化防止効果を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈潤滑剤組成物〉
本発明の潤滑剤組成物は、合成炭化水素油、ウレア系増ちょう剤、およびステアリン酸亜鉛を含み、さらにトリメリット酸エステル、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、およびヒンダードフェノールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とするものである。
【0020】
合成炭化水素油としては、炭素数6ないし18の直鎖状α−オレフィンを数分子だけ限定的に重合させ、残った不飽和二重結合を水素添加処理して得られるポリαオレフィン等が挙げられる。
前記ポリαオレフィン等の合成炭化水素油は、40℃での動粘度が18mm/s以上、特に30mm/s以上であるのが好ましく、64mm/s以下、特に48mm/s以下であるのが好ましい。これにより、できるだけ低摩擦で回転トルクの上昇を広い温度範囲で抑制できる上、十分な油膜厚さを有するため潤滑性に優れた潤滑剤組成物を形成できる。
【0021】
潤滑剤組成物の総量中の、合成炭化水素油の含有割合は、前記潤滑剤組成物を形成する他の成分の含有割合を除いた残量とされる。すなわち所定量の他の成分に合成炭化水素油を加えた総量が100質量%となるように、合成炭化水素油の含有割合が設定される。
ウレア系増ちょう剤としては、ジウレア系、トリウレア系、テトラウレア系等の種々のウレア系増ちょう剤が使用でき、特にジウレア系増ちょう剤が好ましい。ジウレア系増ちょう剤は、式(1):
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中Rはジイソシアネート残基を示し、R、Rは同一または異なるアミン残基を示す。〕
で表される構造を有し、下記反応式に示すようにジイソシアネート化合物(2)とジアミン化合物(3)(4)とを反応させて合成される。
【0024】
【化2】

【0025】
〔式中のR、R、Rは先に示したとおり。〕
前記反応は、潤滑剤組成物のもとになる合成炭化水素油中で行うのが好ましく、これにより均一性の高い潤滑剤組成物が得られる。具体的には、ジイソシアネート化合物(2)とアミン化合物(3)(4)とを別々に合成炭化水素油中に溶解してジイソシアネート溶液とアミン溶液を調製する。次いで、前記溶液のうちいずれか一方をかく拌しながら徐々に他方を加えてジイソシアネート化合物(2)とアミン化合物(3)(4)とを反応させると、式(1)で表されるジウレア系増ちょう剤が合成される。
【0026】
ジウレア系増ちょう剤の好適な例としては4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと、アルキル部分の炭素数が8ないし18であるアルキルフェニルアミン(p−ドデシルアミン等)と、シクロヘキシルアミンとの反応生成物や、前記4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと、ステアリルアミン(オクタデシルアミン)と、オレイルアミンとの反応生成物、あるいは前記4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと、ステアリルアミンと、オクチルアミンとの反応生成物等の1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
ウレア系増ちょう剤の含有割合は、潤滑剤組成物の使用条件等によって適宜変更できるが、例えば電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する減速機の潤滑用の場合は、潤滑剤組成物の総量中の7質量%以上、特に8質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に9質量%以下であるのが好ましい。前記用途におけるウレア系増ちょう剤の含有割合が前記範囲未満ではグリースから合成炭化水素油が分離するいわゆる離油が発生しやすくなるおそれがあり、前記範囲を超える場合には電動パワーステアリング装置等のトルクが増大するおそれがある。
【0028】
ステアリン酸亜鉛は粉体の状態で潤滑剤組成物に添加して低摩擦添加剤として機能させたり、あるいは前記低摩擦添加剤として機能させるとともに、好ましくは増ちょう剤としても機能させたりするためのものであり、後者の場合には潤滑剤組成物のもとになる合成炭化水素油中でステアリン酸亜鉛を完全溶解させてグリース化すればよい。
具体的には、前記合成炭化水素油に所定量のステアリン酸亜鉛を配合し、かく拌しながら加熱して前記ステアリン酸亜鉛を完全溶解させた後、かく拌を続けながら室温まで冷却して、前記ステアリン酸亜鉛を増ちょう剤として含むグリース(以下「ステアリン酸亜鉛グリース」と略記する場合がある)を調整する。
【0029】
次いで、前記ステアリン酸亜鉛グリースと、例えば先の反応で合成されたジウレア系増ちょう剤を含むグリース(以下「ジウレア系グリース」と略記する場合がある)とを所定の割合で配合してかく拌し、さらにホモジナイザー、3段ロール等を用いて混練すると、ウレア系増ちょう剤、およびステアリン酸亜鉛をともに増ちょう剤として含有する潤滑剤組成物が得られる。
【0030】
その他の添加剤は、前記ジウレア系グリースやステアリン酸亜鉛グリースの調製後、もしくは両グリースを混合した後に添加するのが望ましいが、前記ジウレア系増ちょう剤の合成反応や、ステアリン酸亜鉛によるグリース化等を阻害しない成分は、あらかじめ合成炭化水素油中に配合しておくこともできる。
ステアリン酸亜鉛の含有割合は、やはり潤滑剤組成物の使用条件等によって適宜変更できる。例えば電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する減速機の潤滑用の場合は、潤滑剤組成物の総量中の3質量%以上、特に5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に8質量%以下であるのが好ましい。
【0031】
前記用途におけるステアリン酸亜鉛の含有割合が前記範囲未満では、前記ステアリン酸亜鉛による、潤滑剤組成物の、ポリアミド樹脂等に対する攻撃性を緩和する働きや、低摩擦添加剤として潤滑剤組成物を低摩擦にする機能、あるいは増ちょう剤として、十分な油膜厚さを有する油膜を形成する機能等が不十分になるおそれがある。また、前記範囲を超える場合には電動パワーステアリング装置等のトルクが増大するおそれがある。
【0032】
前記潤滑剤組成物にさらに含有させるトリメリット酸エステルとしては、例えばトリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリn−オクチル、トリメリット酸トリス(2−エチル−ヘキシル)等の1種または2種以上が挙げられる。
特に、可塑剤としてポリアミド樹脂の脆化を防止する機能の点で、式(5):
【0033】
【化3】

【0034】
で表されるトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)〔別名:1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−エチル−ヘキシル)〕が好ましい。
芳香族スルホンアミドとしては、例えばp−トルエンスルホンアミド、N−n−ブチルベンゼンスルホンアミド、o/p−トルエンスルホンアミド、p−エチルベンゼンスルホンアミド等の1種または2種以上が挙げられる。
【0035】
特に、可塑剤としてポリアミド樹脂の脆化を防止する機能の点で、式(6):
【0036】
【化4】

【0037】
で表されるN−n−ブチルベンゼンスルホンアミドが好ましい。
フタル酸エステルとしては、例えばフタル酸ベンジル2−エチルヘキシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ベンジルイソノニル、フタル酸ビス(2−エチル−ヘキシル)、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジアミル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニルの分岐鎖異性体混合物、フタル酸ジイソプロピル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジノニルの異性体混合物、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジウンデシルの分岐鎖異性体混合物、エチルフタリルエチルグリコラート、フタル酸ビス(2−ブトキシエチル)、フタル酸ジヘプチル等の1種または2種以上が挙げられる。
【0038】
特に、可塑剤としてポリアミド樹脂の脆化を防止する機能の点で、式(7):
【0039】
【化5】

【0040】
で表されるフタル酸ベンジルブチルが好ましい。
前記3種の化合物は、いずれもポリアミド樹脂の可塑剤として機能しうるものであり、かかる化合物を、機械部品を形成するポリアミド樹脂中ではなく、前記機械部品と接触する潤滑剤組成物中に含有させることにより、前記機械部品の機械的強度や耐久性を低下させることなしに、ポリアミド樹脂の脆化を機械部品の表面において阻止して、前記機械部品の耐久寿命を大幅に延長することができる。
【0041】
一方、ヒンダードフェノールは、ポリアミド樹脂の酸化劣化を防止する安定化剤として機能する。
ヒンダードフェノールとしては、式(8):
【0042】
【化6】

【0043】
で表される基本骨格を有する通常型のヒンダードフェノール、および式(9):
【0044】
【化7】

【0045】
で表されるリン系ヒンダードフェノールのいずれを用いてもよい。
ポリアミド樹脂は、下記の劣化反応によって酸化劣化する。
【0046】
【化8】

【0047】
前記通常型のヒンダードフェノールは、前記劣化反応の途中で発生するラジカルに下記のように作用してフェノキシラジカルを生成することで、ポリアミド樹脂の酸化劣化を防止する機能をする。
【0048】
【化9】

【0049】
またリン系ヒンダードフェノールは、先の劣化反応によって生成したカルボン酸(ROOH)を、下記の反応によってアルコール(ROH)化して安定化する機能をする。
【0050】
【化10】

【0051】
いずれの場合もヒンダードフェノールを、機械部品を形成するポリアミド樹脂中ではなく、前記機械部品と接触する潤滑剤組成物中に含有させることにより、前記機械部品の機械的強度や耐久性を低下させることなしに、ポリアミド樹脂の脆化を機械部品の表面において阻止して、前記機械部品の耐久寿命を大幅に延長することができる。
通常型のヒンダードフェノールとしては、例えば式(10):
【0052】
【化11】

【0053】
で表されるジエチル[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート等が挙げられる。
またリン系ヒンダードフェノールとしては、例えば式(11):
【0054】
【化12】

【0055】
で表されるトリス{2−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェイン−6−イル)オキシ]エチル}アミン、式(12):
【0056】
【化13】

【0057】
で表されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
ヒンダードフェノールはそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
またトリメリット酸エステル、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、およびヒンダードフェノールは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
これら化合物の含有割合は、やはり潤滑剤組成物の使用条件等によって適宜変更できる。例えば電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する減速機の潤滑用の場合は、潤滑剤組成物の総量中の0.5質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下、特に1.5質量%以下であるのが好ましい。
前記含有割合は、いずれか1種の化合物を単独で使用する場合は、その化合物の含有割合であり、2種以上の化合物を併用する場合は、前記2種以上の化合物の合計の含有割合である。
【0059】
含有割合が前記範囲未満では、前記化合物を含有させることによる、ポリアミド樹脂の脆化を機械部品の表面において阻止して、前記機械部品の耐久寿命を延長する効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、過剰の化合物が、潤滑剤組成物の低摩擦特性や低温特性を阻害するおそれがある。
本発明の潤滑剤組成物には、さらに硫黄系酸化防止剤を含有させても良い。
【0060】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば式(13):
【0061】
【化14】

【0062】
で表されるベンゾチアゾールを基本骨格として有し、酸化防止剤として機能するベンゾチアゾール化合物、式(14):
【0063】
【化15】

【0064】
で表されるジチオカルバミン酸残基を基本骨格として有し、酸化防止剤として機能するジチオカルバミン化合物、および式(15):
【0065】
【化16】

【0066】
で表されるベンズイミダゾールを基本骨格として有し、酸化防止剤として機能するベンズイミダゾール化合物の1種または2種以上が挙げられる。
前記ベンゾチアゾール化合物の具体的化合物としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾールまたはその亜鉛塩、ジベンゾジチアジルジスルフィド等の1種または2種以上が挙げられ、特に2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0067】
このうち2−メルカプトベンゾチアゾールの含有割合は、潤滑剤組成物の総量中の0.25質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、2質量%以下であるのが好ましい。またジベンゾジチアジルジスルフィドの含有割合は、潤滑剤組成物の総量中の1質量%以上、特に2質量%以上であるのが好ましく、4質量%以下であるのが好ましい。
含有割合がそれぞれ前記範囲未満では、ベンゾチアゾール化合物による、ステアリン酸亜鉛の酸化劣化を防止すると共にポリアミド樹脂の劣化を抑制する機能や、耐摩耗剤としての機能等が不十分になるおそれがある。また前記範囲を超える場合には潤滑剤組成物の摩擦係数が大きくなったり、電動パワーステアリング装置等のトルクが増大したりするおそれがある。
【0068】
ジチオカルバミン化合物の具体的化合物としてはジブチルジチオカーバメート、メチレンビスジブチルジチオカーバメート等の1種または2種以上が挙げられる。ジチオカルバミン化合物の含有割合は、潤滑剤組成物の総量中の0.5質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下であるのが好ましい。
含有割合が前記範囲未満では、ジチオカルバミン化合物による、ステアリン酸亜鉛の酸化劣化を防止すると共にポリアミド樹脂の劣化を抑制する機能や、耐摩耗剤としての機能等が不十分になるおそれがある。また前記範囲を超える場合には、潤滑剤組成物の摩擦係数が大きくなったり、電動パワーステアリング装置等のトルクが増大したりするおそれがある。
【0069】
ベンズイミダゾール化合物の具体的化合物としては2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4−メルカプトメチルベンズイミダゾール、5−メルカプトメチルベンズイミダゾール、およびこれらの亜鉛塩等の1種または2種以上が挙げられ、特に2−メルカプトベンズイミダゾールが好ましい。
前記ベンズイミダゾール化合物の含有割合は、潤滑剤組成物の総量中の0.5質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下であるのが好ましい。
【0070】
含有割合が前記範囲未満では、メルカプトベンズイミダゾール化合物による、ステアリン酸亜鉛の酸化劣化を防止すると共にポリアミド樹脂の劣化を抑制する機能や、耐摩耗剤としての機能等が不十分になるおそれがある。また前記範囲を超える場合には、潤滑剤組成物の摩擦係数が大きくなったり、電動パワーステアリング装置等のトルクが増大したりするおそれがある。
【0071】
なお硫黄系酸化防止剤として2種以上の化合物を併用する場合は、それぞれの化合物の好適な範囲を考慮して、合計の含有割合の好適な範囲を求めればよい。
本発明の潤滑剤組成物は、前記以外の他の添加剤を含有してもよい。前記他の添加剤としては、例えば防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、油性剤等が挙げられる。
このうち防錆剤としてはベンゾトリアゾール化合物、カルシウムスルホネート系防錆剤等の1種または2種以上が挙げられ、特にベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
【0072】
ベンゾトリアゾール化合物は、ポリアミド樹脂の劣化を促進したり、ステアリン酸亜鉛の酸化劣化を促進したりしないため、機械部品の耐久寿命や潤滑剤組成物の耐熱性に影響を及ぼすことなしに、減速機等の金属部分を良好に錆止めできる。
ベンゾトリアゾール化合物としては、式(16):
【0073】
【化17】

【0074】
で表されるベンゾトリアゾールまたはその誘導体を基本骨格として有し、防錆剤として機能するベンゾトリアゾール化合物が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール化合物の具体的化合物としては、前記式(16)で表されるベンゾトリアゾールや、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−4−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−5−ベンゾトリアゾール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0075】
ベンゾトリアゾール化合物の含有割合は、潤滑剤組成物の総量中の0.01質量%以上、特に0.05質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以下、特に0.1質量%以下であるのが好ましい。含有割合が前記範囲未満では、前記ベンゾトリアゾール系化合物による、防錆剤としての機能が十分に得られないおそれがあり、前記範囲を超える場合には潤滑剤組成物の摩擦係数が大きくなるおそれがある。
【0076】
潤滑剤組成物のちょう度は、その用途に応じた任意の範囲に設定できる。例えば電動パワーステアリング装置に組み込んで使用する減速機の潤滑用の場合は、ちょう度が、NLGI(National Lubricating Grease Institute)番号で表してNo.2ないしNo.1であるのが好ましい。
前記範囲より硬い潤滑剤組成物は、電動パワーステアリング装置等のトルクを増大させるおそれがあり、前記範囲より軟らかい潤滑剤組成物は前記電動パワーステアリング装置等からの漏れを生じたり、離油を生じたりするおそれがある。
【0077】
〈減速機および電動パワーステアリング装置〉
図1は、本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の概略図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と一体回転可能に連結されたステアリングシャフト3と、前記ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間シャフト5と、前記中間シャフト5に自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7と、前記ピニオンシャフト7に設けられたピニオン歯7aに噛み合うラック歯8aを有して、自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8とを備えている。
【0078】
ピニオンシャフト7およびラックバー8により、ラックアンドピニオン機構からなる操舵機構9が構成されている。
ラックバー8は、車体に固定されるラックハウジング10内に、図示しない複数の軸受を介して直線往復動自在に支持されている。ラックバー8の両端部はラックハウジング10の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド11が結合されている。
【0079】
各タイロッド11は、図示しないナックルアームを介して対応する操向輪12に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、前記回転が、ピニオン歯7aおよびラック歯8aによって自動車の左右方向に沿うラックバー8の直線運動に変換されて操向輪12の転舵が達成される。
【0080】
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸3aと、ピニオンシャフト7に連なる出力軸3bとに分割されており、前記両軸3a、3bはトーションバー13を介して同一の軸線上で相対回転可能に互いに連結されている。
またトーションバー13には、両軸3a、3b間の相対回転変位量から操舵トルクを検出するためのトルクセンサ14が設けられており、前記トルクセンサ14のトルク検出結果がECU(Electric Control Unit:電子制御ユニット)15に与えられる。
【0081】
ECU15では、トルク検出結果や、図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路16を介して操舵補助用の電動モータ17を駆動制御する。そして電動モータ17の出力回転が、減速機18を介して減速されてピニオンシャフト7に伝達され、ラックバー8の直線運動に変換されて操舵が補助される。
減速機18は、電動モータ17により回転駆動される入力軸としての小歯車19と、前記小歯車19に噛み合うと共にステアリングシャフト3の出力軸3bに一体回転可能に連結される大歯車20とを備えており、前記小歯車19と大歯車20との噛み合い部分に、本発明の潤滑剤組成物が充填されている。
【0082】
前記潤滑剤組成物は、先に説明したように、特に自動車のエンジン周り等の高温環境下でポリアミド樹脂の脆化を前記ポリアミド樹脂からなる機械部品の表面で阻止しうるものであるため、例えば減速機18の小歯車19と大歯車20のうちの少なくとも一方、特に大歯車20の歯部をポリアミド樹脂で形成することにより、前記歯部の耐久寿命を大幅に延長することができる。
【0083】
また低摩擦であるため、減速機18における減速の効率を向上し、電動パワーステアリング装置1のトルクを低減して、前記電動パワーステアリング装置1を組み込んだ自動車の操舵感を向上できる。しかも耐熱性にも優れるため、前記高温環境下で使用した際に前記各特性が短期間で低下したり失われたりせず、長期間に亘って良好な特性を維持できる。
【0084】
本発明の潤滑剤組成物と組み合わせた際に効果がある、大歯車20の歯部等の機械部品を形成する樹脂としては、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66等のポリアミド樹脂が挙げられる。
また、前記ポリアミド樹脂と同様に一般的な熱可塑性樹脂には同様の効果が期待される。かかる熱可塑性樹脂としては、例えばポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0085】
なお本発明は、以上で説明した実施の形態には限定されない。例えば本発明の潤滑剤組成物によって潤滑できる減速機としては、先に説明したウォームとウォームホイールとからなる減速機の他、はすば歯車、平歯車等の、他の歯車機構を含む減速機等が挙げられる。
また本発明の潤滑剤組成物は、互いに噛み合う2以上の歯車からなる歯車機構を備えた、減速機以外の種々の駆動伝達機構の潤滑に使用したり、先に説明したように転がり軸受、ボールねじ等の種々の部材の潤滑に用いたりすることもできる。
【0086】
また本発明の減速機の構成を、電動パワーステアリング装置以外の装置のための減速機にも適用できる等、本発明の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の変更を施すことができる。
【実施例】
【0087】
以下の実施例、比較例における潤滑剤組成物の調製、および試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
(ジウレア系グリースの調製)
合成炭化水素油としてのポリαオレフィン〔40℃での動粘度が48mm2/s、100℃ での動粘度が7.9mm2/sであるPAO−8〕にジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを配合し、かく拌しながら70〜80℃まで加熱した。一方、前記ポリαオレフィンにオクチルアミンおよびステアリルアミンを配合し、かく拌しながら70〜80℃まで加熱した。次に、前記温度を維持しつつ後の混合物を先の混合物に加え、かく拌を続けながら、まず100〜110℃で30分間反応させ、次いで160〜170℃まで昇温したのち放冷してジウレア系グリースを調製した。
【0088】
ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートとオクチルアミンとステアリルアミンの配合比は、モル比で1:1:1であった。また調製されたジウレア系グリースにおけるジウレア系増ちょう剤とポリαオレフィンの質量比は、ジウレア系増ちょう剤:ポリαオレフィン=15:85であった。
(ステアリン酸亜鉛グリースの調製)
前記ポリαオレフィン60質量部にステアリン酸亜鉛40質量部を配合し、かく拌しながら140℃まで加熱して前記ステアリン酸亜鉛を完全溶解させた後、かく拌を続けながら室温まで冷却してステアリン酸亜鉛グリースを調製した。調製されたステアリン酸亜鉛グリースにおける両成分の質量比は、ステアリン酸亜鉛:ポリαオレフィン=40:60であった。
【0089】
(潤滑剤組成物の調製)
前記ジウレア系グリース60g、およびステアリン酸亜鉛グリース12.5gと、下記の各成分とを配合し、さらにポリαオレフィンを追加して全量を100gに調整した。そして前記混合物をかく拌し、さらに3段ロールを用いて混練して潤滑剤組成物を調製した。
(a) トリメリット酸エステル
式(5):
【0090】
【化18】

【0091】
で表されるトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル):1g
(b) 硫黄系酸化防止剤
2−メルカプトベンゾチアゾール:0.5g
2−メルカプトベンズイミダゾール:1g
(c) 防錆剤
ベンゾトリアゾール化合物:1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−4−ベンゾトリアゾールと1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−5−ベンゾトリアゾールの混合物:0.1g
〈実施例2〉
前記トリメリット酸エステルに代えて、芳香族スルホンアミドとしての、式(6):
【0092】
【化19】

【0093】
で表されるN−n−ブチルベンゼンスルホンアミド1gを配合したこと以外は実施例1と同様にして潤滑剤組成物を調製した。
〈実施例3〉
前記トリメリット酸エステルに代えて、フタル酸エステルとしての、式(7):
【0094】
【化20】

【0095】
で表されるフタル酸ベンジルブチル1gを配合したこと以外は実施例1と同様にして潤滑剤組成物を調製した。
〈実施例4〉
前記トリメリット酸エステルに代えて、ヒンダードフェノールとしての、式(10):
【0096】
【化21】

【0097】
で表されるジエチル[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]ホスフォネート1gを配合したこと以外は実施例1と同様にして潤滑剤組成物を調製した。
〈実施例5〉
前記トリメリット酸エステルに代えて、ヒンダードフェノールとしての、式(11):
【0098】
【化22】

【0099】
で表されるトリス{2−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェイン−6−イル)オキシ]エチル}アミン1gを配合したこと以外は実施例1と同様にして潤滑剤組成物を調製した。
〈実施例6〉
前記トリメリット酸エステルに代えて、ヒンダードフェノールとしての、式(12):
【0100】
【化23】

【0101】
で表されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト1gを配合したこと以外は実施例1と同様にして潤滑剤組成物を調製した。
〈比較例1〉
前記トリメリット酸エステルを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして潤滑剤組成物を調製した。
【0102】
〈ポリアミド樹脂に対する劣化防止効果〉
ナイロン66を射出成形して、日本工業規格JIS K7162:1994(ISO527−2:1993)「プラスチック−引張特性の試験方法 第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」に規定された1A型の試験片を作製した。
次いで前記試験片の表面に実施例、比較例の潤滑剤組成物を厚さ1〜2mmとなるように塗布し、140℃の恒温槽中に入れて1440時間静置した後、潤滑剤組成物をふき取って、JIS K7161:1994(ISO527−1:1993)「プラスチック−引張特性の試験方法 第1部:通則」に規定された引張試験を行った際の引張破壊ひずみεBを測定した。そして式(a):
【0103】
【数1】

【0104】
〔式中εB0は、潤滑剤組成物に浸漬する前の試験片における引張破壊ひずみである。〕
で求められる伸び保持率(%)を求め、比較例1における伸び保持率を1としたときの伸び保持率の比を求めて、ポリアミド樹脂に対する劣化防止効果を評価した。結果を図2に示す。
図より、合成炭化水素油、ウレア系増ちょう剤、およびステアリン酸亜鉛を含む潤滑剤組成物に、トリメリット酸エステル、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、およびヒンダードフェノールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有させることにより、ポリアミド樹脂の脆化を機械部品の表面において阻止することができ、前記機械部品の耐久寿命を延長できることが判った。
【符号の説明】
【0105】
1:電動パワーステアリング装置、2:操舵部材、3:ステアリングシャフト、3a:入力軸、3b:出力軸、4:自在継手、5:中間シャフト、6:自在継手、7:ピニオンシャフト、7a:ピニオン歯、8:ラックバー、8a:ラック歯、9:操舵機構、10:ラックハウジング、11:タイロッド、12:操向輪、13:トーションバー、14:トルクセンサ、16:駆動回路、17:電動モータ、18:減速機、19:小歯車、20:大歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成炭化水素油、ウレア系増ちょう剤、およびステアリン酸亜鉛を含む潤滑剤組成物であって、トリメリット酸エステル、芳香族スルホンアミド、フタル酸エステル、およびヒンダードフェノールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
硫黄系酸化防止剤をも含有する請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
少なくとも一方がポリアミド樹脂からなる小歯車と大歯車とを備え、前記両歯車の噛み合い部分を含む領域に、前記請求項1または2に記載の潤滑剤組成物を充填したことを特徴とする減速機。
【請求項4】
操舵補助用の電動モータの出力を、前記請求項3に記載の減速機を介して、操舵機構に伝えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102191(P2012−102191A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249918(P2010−249918)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【Fターム(参考)】