説明

潤滑剤組成物

【課題】 銀の部材に損傷を与える硫黄含有化合物を実質的に含まない添加物組成物およびそのような添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物の出現が望まれる。
【解決手段】 主要量の基質オイル;および少量の(i)アリール部分が置換したアルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外のトリアゾール化合物;および(ii)式
【化1】


但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る添加物組成物を含んで成ることを特徴とする潤滑剤組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は2006年12月11日出願の米国特許出願第11/609,084号の一部継続出願である。この特許出願は引用によりその全文が本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
本発明は添加物および潤滑剤の組成物、並びにその使用法に関する。特に本発明は(i)トリアゾール化合物、および(ii)窒素含有化合物を含んで成る相乗的な組合せをもった添加物組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンは種々の用途に使用されており、ディーゼルエンジンに使用される潤滑剤組成物は公知である。種々のタイプのディーゼルエンジンの中には、数千馬力(例えば2000〜10,000馬力)を必要とする用途に使用される中程度の速度のディーゼルエンジンがある。この中には喫水の深い海洋航行船舶、島嶼および沿岸航路で運行される小型船、および鉄道用機関車、沖合の掘削用プラットフォーム、および産業用の施設および建造物を含む多様な用途に対する定置型または連続的な発電機の推進エンジンが含まれる。典型的には、これらのエンジンは約100〜約1,200rpmの速度で稼働される。このような需給環境の結果オイルの酸化が起こり、そのためエンジン中に存在する金属の腐蝕が起こる可能性がある。
【0004】
中程度の速度のディーゼルエンジンは、一般にこれらのエンジンがしばしば銀の部材、例えば銀の軸受けをもっているために、ディーゼルエンジンの中で独特な存在である。即ち中程度の速度のディーゼルエンジンに使用する目的をもった潤滑剤組成物は、酸化に対する安定性を与え、スラッジおよび炭素性の沈澱が生成しないように保護することの他に、エンジンの中の銀の軸受けがオイル中の添加物または長期間のエンジンの操作中に生じる分解生成物によって腐蝕されないようにするために、特殊な銀の保護剤を用いて調合しなければならない。このような試剤はしばしば銀の潤滑剤と呼ばれ、極圧、摩耗および腐蝕に対して保護を行う。
【0005】
典型的なエンジンの潤滑用組成物は極圧に対する耐圧剤および耐摩耗剤を含んで成っていると思われる。最も普通に使用される極圧および摩耗に対する保護剤は硫黄含有化合物、例えばジアルキルチオ燐酸亜鉛(ZDDP)である。しかし或る種の硫黄含有化合物は、銀の部材に損傷を与える傾向があるため、銀の部材をもつエンジンには使用できないことが知られている。このような一般に認められた傾向は例えば特許文献1に説明されている。従って酸化に対して保護を与え、或る場合には潜在的に損傷を与える性質をもったこのような活性硫黄含有化合物を実質的に含まないことができる添加物組成物を見出すことが望まれている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,428,850号明細書。
【本発明の開示】
【0007】
本発明の概要
本発明に従えば、(i)アリール部分が置換したトリアゾール化合物であるが、アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾールではないトリアゾール化合物;(ii)式
【0008】
【化1】

【0009】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る添加物組成物が提供される。
【0010】
一態様においては、主要量の基質オイル、および少量の(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【0011】
【化2】

【0012】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物が提供される。
【0013】
他の態様においては、(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【0014】
【化3】

【0015】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物が提供される。
【0016】
さらに、潤滑剤組成物の酸化防止性を改善する方法において、該方法は主要量の基質オイル、および少量の(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【0017】
【化4】

【0018】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ
、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物を機械に与えることを含んで成る方法が提供される。
【0019】
またさらに、主要量の基質オイル、および少量の(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【0020】
【化5】

【0021】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物を添加することを特徴とする機械を動作させる方法が提供される。
【0022】
これに加えて、機械の少なくとも一つの可動部材を潤滑する方法において、該方法は主要量の基質オイル、および少量の(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【0023】
【化6】

【0024】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物を少なくとも一つの可動部材と接触させることを特徴とする方法が提供される。
【0025】
本発明のさらに他の目的および利点は、下記の説明にその一部が記載されているか、および/または本発明を実施することによって知ることができる。本発明の目的および利点は、添付特許請求の範囲に特に指摘された要素およびその組み合わせによって実現されるであろう。
【0026】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明は両方とも例示および説明を行うためだけのものであり、特許請求の範囲に記載された本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
具体化例の説明
本発明は一般に主要量の基質オイル、および少量の(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【0028】
【化7】

【0029】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物に関する。
【0030】
本明細書において使用される「主要量」と言う言葉は、組成物の全重量に関し50重量%以上、例えば約80〜約98重量%の量を意味する。さらに本明細書において使用される「少量」という言葉は組成物の全重量に関し50重量%より少ない量を意味する。
【0031】
本明細書において使用される「芳香族」または「アリール」と言う言葉は、特記しない限り典型的な置換基をもったまたは置換基をもたないこの種の非脂肪族ヒドロカルビルまたは複素環式部分、例えば多不飽和性の、典型的には芳香族、ヒドロカルビル環式、または複素環式の置換基であり、単一の環、または互いに融合したまたは共有結合的に連結した多数の環(最高3個の環)をもち得る置換基を意味する。典型的なヒドロカルビル芳香族部分はフェニル、ナフチル、ビフェニレニル、フェナントレニル、フェナレニル等を含んでいる。このような部分は随時一つまたはそれ以上のヒドロカルビル置換基で置換されていることができる。また、他のアリール部分で置換されたアリール部分、例えばビフェニルも含まれる。複素環式のアリールまたは芳香族部分は、環の中に炭素原子を含み、さらに一つまたはそれ以上のへテロ原子、典型的には酸素、窒素、硫黄、および/または燐を含む不飽和の環式部分、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、ピラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラジニル、チアゾリル等を意味する。このような部分は随時一つまたはそれ以上の置換基、例えばヒドロキシ、随時置換基をもったアルキル、随時置換基をもった低級アルコキシ、アミノ、アミド、エステル部分およびカルボニル部分(例えばアルデヒドまたはケトン部分)で置換されている。
【0032】
本明細書において使用される「アルカリール」と言う言葉は、特記しない限り、典型的な置換基をもったまたは置換基をもたない上記のような非脂肪族ヒドロカルビルまたは複素環式部分を意味する。典型的なアリール部分にはフェニル、ナフチル、ベンジル等が含まれる。このような部分は随時一つまたはそれ以上の置換基、例えばヒドロキシ、随時置換基をもったアルキル、随時置換基をもった低級アルコキシ、アミノ、アミド、エステル部分およびカルボニル部分(例えばアルデヒドまたはケトン部分)で置換されている。
【0033】
本明細書において使用される「炭化水素」、「ヒドロカルビル」または「炭化水素をベースにした」という言葉は、記述された該部分が本発明の文脈の範囲内で主として炭化水素特性をもっていることを意味する。これらは純粋な炭化水素の特性をもった部分を含んでいる。即ちこれらは炭素および水素だけを含んでいる。またこれらはその部分の主要な炭化水素特性を変えない置換基または原子を含む部分を含んでいることができる。このような置換基はハロ−、アルコキシ−、ニトロ−等を含んで成ることができる。これらの部分はまたヘテロ原子を含んでいることができる。適当なヘテロ原子は当業界の専門家には明らかであり、例えば硫黄、窒素、酸素、および燐を含んでいる。従ってこれらの部分は、本発明の文脈の範囲内で主たる炭化水素特性を残しながら、炭素原子から構成された原子鎖または環の中に炭素以外の原子を含むことができる。
【0034】
本明細書において使用される「相乗的な」と言う言葉およびその文法的に変化した表現
は、組み合わせた場合、個々の要素の和より大きな全体的な効果を生じる要素の相互作用を意味する。
【0035】
本発明の組成物に使用するのに適したトリアゾール化合物は、アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換した任意のトリアゾールであることができる。或る具体化例においてはトリアゾール化合物は1,2,3−トリアゾール化合物である。他の具体化例においてはトリアゾール化合物は1,2,4−トリアゾール化合物である。
【0036】
例えばトリアゾール化合物は、単一の環または多数の環、例えば共有結合的に連結した環を含んで成る、置換基をもったまたはもたないアリール部分で置換されていることができる。共有結合的に連結した環を含んで成る置換基をもったアリール部分の本発明を限定しない例には、ビフェニル、1,1’−ビナフチル、p,p’−ビトリル、ビフェニレニル等が含まれる。他の例としてこのアリール部分は多数の融合環を含んで成っていることができる。多数の融合環を含んで成るアリール部分の本発明を限定しない例には、ナフチル、アントリル、ピレニル、フェナントレニル、フェナレニル等が含まれる。他の例としてはこのアリール部分はトリアゾールに連結した単一の環を含んで成っていることができる。トリアゾールに連結した単一の環を含んで成るアリール部分の本発明を限定しない例にはフェニル等が含まれる。他の例としては、このアリール部分はトリアゾールに融合した単一の環を含んで成っていることができる。このような化合物の本発明を限定しない例にはベンゾトリアゾールが含まれる。本発明に使用するのに適した市販のトリアゾール化合物の一例はベンゾトリアゾールであり、これは融点が95〜99℃、フラッシュ点が170℃の灰色の固体であり、20℃における水に対する溶解度は25g/Lである。組成物中の溶解度を増加させるために、トリアゾール化合物を他の添加物と組み合わせ、反応させ、混合することができる。
【0037】
一具体化例においては、トリアゾール化合物は下記式(I)
【0038】
【化8】

【0039】
によって表すことができる。ここでRは水素、および炭素数約1〜約24の少なくとも1種のアルキル部分から成る群から選ばれ、Rは水素、炭素数約1〜約24の少なくとも1種のアルキル部分、および置換基をもったヒドロカルビル部分から成る群から選ばれる。他の具体化例においては、式(I)によって表されるトリアゾール化合物のRおよびRは、それぞれ独立に約1〜約16個の炭素原子を含んで成っている。
【0040】
本発明の潤滑剤および添加物の組成物の中においてトリアゾール化合物は任意の効果的な量で存在することができ、この量は当業界の通常の専門家によって容易に決定することができる。さらにトリアゾール化合物は相乗的な効果をもつ量で存在することができる。一具体化例においては、本発明の潤滑剤組成物は該潤滑剤組成物の全量に関し約0.01〜約10重量%、例えば約0.05〜約0.5重量%のトリアゾールを含んで成っていることができる。他の具体化例においては、本発明の添加物組成物は該添加物組成物の全量
に関し約0.01〜約3重量%を含んで成っていることができる。
【0041】
本発明の組成物はまた窒素含有化合物を含んで成っていることができる。本発明の該組成物に使用できる窒素含有化合物の種類に関しては特定の制約はない。一般に本発明に使用するのに適した窒素含有化合物は下記式(II)
【0042】
【化9】

【0043】
で表すことができる。ここでRおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる。例えば窒素含有化合物のRおよびRは両方とも炭素数約6〜約30のアリール部分を含んで成っていることができる。アリール部分の本発明を限定しない例にはフェニルのアルクフェニル、ベンジル、ナフチルおよびアルカリールが含まれる。他の例としては、RおよびRはそれぞれ独立にアルカリール、例えばアルクフェニルまたはアルクナフチルを含んで成り、ここでアルキル部分は約4〜約30の、例えば約4〜約12の炭素原子を含んで成っている。さらに他の例では、RおよびRはそれぞれ独立に置換基をもちまたはもたないアリール部分を含んで成っている。このアリール部分に対する置換基の本発明を限定しない例は、炭素数約1〜約20を含んで成るアルキル部分、ヒドロキシ、カルボキシル、およびニトロ部分を含んで成るアルキル基を含むことができる。他の例としてはRおよびRはそれぞれ独立にアルキル置換ベンジル、フェニルまたはナフチルであることができる。
【0044】
本発明に適した窒素含有化合物の本発明を限定しない他の例には、フェニルアミン;ジフェニルアミン;トリフェニルアミン;種々のアルキル化されたフェニルアミン、ジフェニルアミンおよびトリフェニルアミン;N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−アルキルアミン;3−ヒドロキシフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;ジブチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;フェニル−α−ナフチルアミン;フェニル−β−ナフチルアミン;ジヘプチルジフェニルアミン;およびp−配位スチレン化ジフェニルアミンが含まれる。適当な窒素含有化合物の本発明を限定しない例およびその製造法は米国特許第6,218,576号明細書記載のものが含まれる。この特許は引用により本明細書に包含される。
【0045】
本発明に使用される窒素含有化合物は分子中にただ1個の窒素原子しか示さない上記式(I)とは別の構造を含んで成っていることができる。即ち窒素含有化合物は、少なくとも1個の窒素原子がそれに結合した少なくとも一つのアリール部分をもっている限り、例えば第2級窒素原子を有する種々のジアミン、並びに窒素原子の一つに結合したアリールの場合のような異なった構造を含んで成ることができる。
【0046】
本発明に使用される窒素含有化合物は、単独で使用した場合本発明の組成物中において酸化防止性を示すが、本明細書に記載されたトリアゾール化合物の存在下においては相乗的な性質も示すことができる。例えば単独のトリアゾール化合物および/または窒素含有化合物によって与えられる酸化に対する保護効果は、これらの材料が本発明の潤滑剤組成物中に存在した場合には著しく増強され、従って相乗効果を示す。この相乗効果は、トリ
アゾール化合物または窒素含有化合物のいずれかを単独で使用した場合に必要とされる場合に比べ、酸化を保護することができる所望のレベルを得るのに必要な添加物組成物の処理量の割合を低くすることができる。これに加えて、本発明に使用される窒素含有化合物は最終的な潤滑剤組成物に可溶でなければならない。
【0047】
本発明の組成物中における窒素含有化合物の量は特定の要求および用途に依存して変わることができる。一態様においては、窒素含有化合物は相乗効果を及ぼす量で存在していることができる。一具体化例においては、本発明の潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物の全量に関し約0.01〜約10重量%、例えば約0.3〜約3重量%の窒素含有化合物を含んで成っていることができる。他の具体化例においては、本発明の添加物組成物は、該添加物組成物の全量に関し約0.07〜約33重量%の窒素含有化合物を含んで成っていることができる。
【0048】
本明細書に記載された組成物は添加物、例えば分散剤、灰分含有洗剤、無灰分洗剤、オーバーベイスト洗剤、流動点低下剤、粘度指数変性剤、灰分含有摩擦変性剤、無灰分摩擦変性剤、窒素含有摩擦変性剤、窒素を含まない摩擦変性剤、エステル化された摩擦変性剤、極圧剤、防銹剤、酸化防止剤、腐蝕抑制剤、発泡防止剤、チタン化合物、チタン錯体、有機質可溶モリブデン化合物、有機質可溶モリブデン錯体、硼素含有化合物、硼素含有錯体、タングステン含有化合物、タングステン含有錯体、およびこれらの組み合わせを随時含んでいることができる。一態様においては、この組成物は用途の必要性および要求に従って少なくとも1種のチタン含有化合物を種々の濃度で含んでいることができる。他の態様においては、この組成物は用途の必要性および要求に従って少なくとも1種のモリブデン含有化合物を種々の濃度で含んでいることができる。
【0049】
一具体化例においては、本発明の潤滑剤組成物は遊離の活性硫黄を実質的に含んでいない、例えば全く含んでいないことができる。本明細書において使用される「活性硫黄」という言葉は、約100℃から約400℃の範囲の通常のエンジン作動温度において機械の部材と実質的に反応して金属硫化物を生じる硫黄含有化合物と定義される。活性硫黄は、400℃より低い温度では実質的に反応しない非活性硫黄とは区別されるが、後者は400℃より高い温度では十分反応して金属硫化物を生じ、これは極圧条件下においてエンジンの部材を保護する。即ちこの場合境界条件が存在する。これらの境界条件および極圧条件のために、典型的には例えば400℃よりも低い低温で動作するエンジンの種々の場所で400℃よりも十分高い温度が生じることは当業界の専門家には容易に理解されるであろう。このような境界区域および極圧区域は、例えば軸受けのような特定のエンジンの部材に負荷がかかった場合に生じることができる。これらの高い温度で反応してその場合にはエンジンの部材を保護するが、他方一般的な低いエンジン操作温度では実質的に反応しない非活性硫黄は使用することができる。
【0050】
従って、活性硫黄を含む化合物、例えばジアルキルジチオ燐酸亜鉛(ZDDP)は或る種の機械、例えば中程度のディーゼルエンジンまたは銀の部材を含む機械に対して測定し得る劣化効果を及ぼすことができるが、非活性硫黄化合物はこれらの機械においてエンジンの部材をなお保護し得ることを当業界の専門家は理解することができよう。少なくともこの理由により、このような機械に使用する目的の組成物には活性硫黄化合物を含ませないことが望ましい。当業界の専門家は、例えば潤滑剤に溶解した銀の量および/または銀の部材上の沈澱の量を測定することにより、機械の部材に対する硫黄含有化合物の効果を決定する方法を得ることができよう。本発明の目的に対し「実質的に含まない」と言う言葉は、測定し得る劣化効果を実質的にもたない濃度に対して定義される。
【0051】
或る具体化例においては、本発明の潤滑剤組成物は燐を含む化合物を実質的に含まない。例えば全く含んでいない。他の具体化例においては、本発明の組成物は硼素を含む化合
物を実質的に含んでいない。本発明の組成物から燐および/または硼素含有化合物を除去し、潤滑剤の汚染を示す標識としてこれらの元素を使用できるようにすることが望ましい。例えば鉄道用車輛のエンジンオイルは一般に燐および硼素を含まないように調合される。使用する際燐および硼素についてオイルを周期的にチェックする。それらが存在することはオイルが例えばZDDPで汚染されたか、または硼素の場合には硼素含有冷却剤で汚染されたことを指示することができる。この方法で、燐および/または硼素は潤滑剤の汚染を示す標識として作用する。実質的に含まないという言葉は、組成物が燐および/または硼素を痕跡量しか含まず、これらの元素の濃度が標識として使用できる燐および硼素の能力に全く影響を与えないことを意味する。
【0052】
本発明の組成物を調合する際に使用するのに適した基質オイルは合成油または天然油あるいはそれらの混合物から選ぶことができる。天然油には動物油および植物油(例えばひまし油、ラード)並びに他の鉱物性の潤滑油、例えば液状の石油、およびパラフィン、ナフテンまたは混合パラフィン−ナフテン型の溶媒処理を行ったまたは酸で処理した鉱物性の潤滑油が含まれる。石炭または頁岩から誘導されるオイルも適している。さらに気液法(gas−to−liquid process)から誘導されるオイルも適している。
【0053】
基質オイルは主要量で存在することができる。ここで「主要量」とは潤滑剤組成物の50重量%以上、例えば約80〜約98重量%を意味するものと理解すべきである。
【0054】
基質オイルは意図する目的に適した任意所望の粘度をもっていることができる。適当なエンジンオイルの動粘度の例は100℃において約2〜約150cStの範囲にあり、他の例は約5〜約15cStdである。従って例えば基質オイルは約SAE 15〜約SAE 250の粘度範囲をもち、他の例では約SAE 20W〜約SAE 50の粘度範囲をもつと見積もることができる。適当な自動車用オイルも15W−40、20W−50、75W−140、80W−90、85W−140、85W−90のような多くの等級のオイルを含んでいる。
【0055】
本発明を限定しない合成オイルは重合したおよび共重合したオレフィン(例えばポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体等);ポリ−α−オレフィン、例えばポリ(1−ヘキセン)、ポリ−(1−オクテン)、ポリ−(1−デセン)等、およびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ−ノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)ベンゼン等);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化されたポリフェニル等);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィド、およびその誘導体、類似体、および同族体等が含まれる。
【0056】
アルキレンオキシド重合体および共重合体並びにその誘導体で、末端のヒドロキシル部分がエステル化、エーテル化等により変性されているものは使用できる公知の合成オイルの他の種類を構成している。このようなオイルはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド、これらのポリオキシアルキレン重合体(例えば平均分子量が約1000のメチル−ポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量が約500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が約1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル等)、またはそのモノ−およびポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合C3〜8脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルの重合によりつくられるオイルによって例示される。
【0057】
使用できる他の種類の合成オイルには、ジカルボン酸(例えばフタル酸、琥珀酸、アルキル琥珀酸、アルケニル琥珀酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバチン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマ
ロン酸等)と種々のアルコール(例えばブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステルが含まれる。これらのエステルの特定の例にはアジピン酸ジブチル、セバチン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバチン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバチン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2−エチルヘキシルジエステル、1モルのセバチン酸と2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2−エチルヘキサン酸の反応により生じる複合エステル等が含まれる。
【0058】
また合成オイルとして有用なエステルにはC5〜12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール等とからつくられるものが含まれる。
【0059】
従って、上記の組成物をつくるのに使用できる基質オイルは、American Petroleum Institute(API) Base Oil Interchangeability Guidelinesに規定されたグループI〜Vの中の任意の基質オイルから選ぶことができる。このような基質オイルの群は次のとおりである:
グループIは90%より少ない飽和分、および/または0.03%より多い硫黄を含み、粘度指数は80以上で120より小さい。グループIIは90%以上の飽和分、および/または0.03%以下の硫黄を含み、粘度指数は80以上で120より小さい。グループIIIは90%以上の飽和分、および/または0.03%以下の硫黄を含み、粘度指数は120以上である。グループIVはポリ−α−オレフィン(PAO)である。グループVはグループI、II、IIIまたはIVに含まれないすべての他の基質ストックを含んでいる。
【0060】
上記グループを定義するのに使用される試験法は、飽和分に対してはASTM D2007;粘度指数に対してはASTM D2270;硫黄分に対してはASTM D2622、4294、4927および3120の一つである。
【0061】
グループIVのベースストック、即ちポリ−α−オレフィン(PAO)はα−オレフィンのハロゲン化されたオリゴマーを含み、オリゴマー化の最も重要な方法はフリーラジカル法、Ziegler触媒および陽イオン性のFriedel−Crafts触媒を用いる方法である。
【0062】
ポリ−α−オレフィンは典型的には100℃において2〜100cStの範囲、例えば100℃において4〜8cStの範囲の粘度をもっている。例えばこれらは炭素数が2〜約30の分岐したまたは直鎖のα−オレフィンノニルオリゴマーであり、本発明を限定しない例にはポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセンが含まれる。単独重合体、共重合体およびこれらの混合物も含まれる。
【0063】
上記のベースストックの残りのものに関しては、「グループIのベースストック」はまた、得られる混合物がグループIのベースストックに対して上記に規定されたものの範囲に入る限り、1種またはそれ以上の他のグループからのベースストックを混合し得るグループIのベースストックを含んでいる。
【0064】
例示的なベースストックはグループIのベースストック、およびグループIIのベースストックとグループIのブライトストック(bright stock)との混合物を含
んでいる。
【0065】
本発明に使用するのに適したベースストックは、これだけには限定されないが蒸溜、溶媒精製、水素法、オリゴマー化、エステル化、および再精製法を含む種々の異なった方法を用いてつくることができる。
【0066】
基質オイルはFischer−Tropsch法で合成された炭化水素から誘導されたオイルであることができる。Fischer−Tropsch法で合成された炭化水素はFischer−Tropsch触媒を用いてHおよびCOを含む合成ガスからつくることができる。基質オイルとして有用であるためには、典型的にはこのような炭化水素はさらに処理する必要がある。炭化水素は例えば米国特許第6,103,099 号または同第6,180,575号明細書記載の方法を用いて水素添加異性化を;米国特許第4,943,672号または同第6,096,940号明細書記載の方法を用いて水素添加分解および水素添加異性化を;米国特許第5,882,505号明細書記載の方法を用いて脱ワックス化を;米国特許第6,013,171号;同第6,080,301号;または同第6,165,949号明細書記載の方法を用いて水素添加異性化および脱ワックス化を行うことができる。
【0067】
天然産のまたは合成された(並びにこれらの2種またはそれ以上の混合物)上記のタイプの未精製の、精製した、および再精製したオイルを基質オイルの中に使用することができる。未精製のオイルは天然または合成した原料からそれ以上精製処理をすることなく直接得られるものである。例えば乾留操作から直接得られる頁岩油、一次蒸溜から直接得られる石油、またはエステル化法から直接得られさらに処理をしないで使用されるエステル油は未精製のオイルと考えられる。精製したオイルは未精製のオイルと同様であるが、さらに1回またはそれ以上の精製段階を経て1種またはそれ以上の性質を改善したものである。溶媒抽出、二次蒸溜、酸または塩基による抽出、濾過、浸出等の多くのこのような精製法は当業界の専門家には公知である。再精製オイルは、既に使用された精製オイルに適用して精製オイルを得るのに使用される方法と同様な方法により得られる。このような再精製オイルはまた再生または再処理されたオイルとして知られており、使用済みの添加物、汚染物、およびオイルの分解精製物を除去するための方法によりさらに処理されることが多い。
【0068】
種々の具体化例に従えば、潤滑剤組成物において酸化保護性を改善する方法が提供される。「酸化保護性を改善する」と言う言葉は、例えば機械の中に使用される組成物の赤外線によるカルボニルの吸収量を減少させるか、および/または動粘度を減少させる組成物を機械に与え、これらの組み合わせをもたない組成物に比べ、酸化保護性を強化することを意味するものと理解されたい。酸化保護性を改善する方法は、主要量の基質オイル、および少量の(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式(II)
【0069】
【化10】

【0070】
但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物を機械に供給する工程を含んで成ることができる。
【0071】
種々の具体化例に従えば、機械の少なくとも一つの可動部材を潤滑する方法において、該方法は機械の該少なくとも一つの可動部材を主要量の基質オイルおよび少量の上記相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物と接触させる工程を含んで成る方法が提供される。
【0072】
他の具体化例においては、主要量の基質オイルおよび少量の上記相乗作用をもった添加物組成物を含んで成る潤滑剤組成物を添加する工程を含んで成る機械を作動させる方法が記載されている。
【0073】
上記方法における機械は、ディーゼルエンジン、船舶用エンジン、ロータリーエンジン、タービンエンジン、機関車用エンジン、推進エンジン、航空機用ピストンエンジン、定置型動力発生用エンジン、連続式動力発生用エンジン、および銀の部材を具備したエンジンを含む火花燃焼型および圧縮−燃焼型内燃エンジンから選ぶことができる。さらに、この少なくとも一つの可動部材は歯車、ピストン、軸受け、棒、バネ、カムシャフト、クランクシャフト、ローター等から選ぶことができる。
【0074】
潤滑剤組成物は機械を潤滑するのに効果的な任意の組成物であることができる。一態様においては、この組成物は中程度の速度のディーゼルエンジン用オイル、乗用車用モーターオイル、および強力ディーゼルエンジン用オイルから成る群から選ばれる。一具体化例においては、該組成物は中程度の速度のディーゼルエンジン用オイルである。
【0075】
実施例
下記の実施例により本発明およびその有利な性質を例示する。これらの実施例並びに本明細書の他の場所において、特記しない限りすべての割合は重量による。これらの実施例は例示だけの目的で提示されたものであり、本明細書に記載された発明の範囲を限定するものではない。
【0076】
活性硫黄、硼素および燐を含む化合物を実質的に含まない潤滑剤組成物を、酸化を防止する能力について試験した。下記実施例は、トリアゾール化合物および窒素含有化合物、例えばアリールアミンをエンジンオイルのような潤滑剤組成物の中に調合した場合に得られる相乗作用を示す。またこれらの実施例は、酸化防止剤を単独でまたは組み合わせて使用した場合に比べ、この相乗作用が特有なものであることを示している。
【実施例1】
【0077】
この実施例において基本潤滑剤組成物は次の通りである。
【0078】
【表1】

【0079】
下記表2に示されているように、配合物2〜8は上記基本組成物の他に少なくとも1種の成分を含んで成っている。トリアゾール化合物はAfton Chemical Corporation製のベンゾトリアゾールであり、この場合25重量%のベンゾトリアゾールが第一級t−アルキルアミン(Primene JM−T、Rohm and Haas、米国、フィラデルフィア州製)および溶媒の中性の鉱油に溶解されており、そのためそれは表1の基本組成物に可溶であると思われる。アリールアミン化合物はジアルキルジフェニルアミンであった。組成物の酸化安定性に対する第一級t−アルキルアミンの寄与を除去するために、また第一級t−アルキルアミンをトリアゾール化合物(5)、アリールアミン化合物(6)、およびこれらの組み合わせ(8)と一緒に試験した。
【0080】
【表2】

【0081】
これらの8種の潤滑剤組成物の酸化安定性をエチル酸化試験(Ethyl Oxydation Test)によって測定した。懸濁した鉄、銅、および鉛の片、並びに表2の潤滑剤組成物の一つを含む試験管の中に300°Fにおいて酸素を通気した。大部分の揮発分は空気凝縮器により保持されたが、潤滑剤組成物を採取し、24時間毎に分析した。オイルの酸化生成物の動粘度およびカルボニルの赤外吸収の増加を測定する公知の方法により、使用済みの潤滑剤組成物の酸化の抑制度を評価した。
【0082】
カルボニルの吸収が大きいほど、特定の潤滑剤組成物が機械に賦与する酸化保護性が小さい。また動粘度が大きいほど、特定の潤滑剤組成物の酸化に対する安定性は小さい。この結果を下記表3および4に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
表3および4に示されているように、トリアゾール化合物(2)、第1級t−アルキルアミン(3)、または窒素含有化合物(4)を含んで成る基本配合物は、小規模の酸化保護性を若干示した。窒素含有化合物(4)は3種の潤滑剤組成物の中で最も良い性能を示し、48時間の試験時間においてカルボニルの吸収が33%減少し、72時間で11%、96時間で7%減少した。トリアゾール化合物(2)または第1級t−アルキルアミン(3)に対する粘度の増加は基本配合物と同程度であった。窒素含有化合物(4)は48時間および72時間において粘度の増加は低かったが、96時間において大きな粘度の増加を示した。潤滑剤組成物(6)はカルボニルの吸収および粘度の増加の両方において窒素含有化合物単独(4)の場合と同等であった。潤滑剤組成物(5)は酸化に対して実質的に効果がなく、カルボニルの吸収は基本配合物と等しく、粘度の増加は基本配合物よりも大きかった。即ちトリアゾール化合物(2)および第1級t−アルキルアミン(3)だけの場合またはこれらを組み合わせた場合、カルボニルの吸収または粘度の増加によって示されるように、活性硫黄を含まない基本配合物の酸化保護性には殆ど効果がなかった。第
1級t−アルキルアミンがあってもなくても、窒素含有化合物だけ(4)のものは若干の酸化保護作用を与えた。
【0086】
トリアゾール化合物を窒素含有化合物と組み合わせると(7)、カルボニルの吸収および粘度の増加の効果によって示されるように著しい相乗効果が示される。表4において96時間の試験期間を通じて得られる負のカルボニル吸収値は検出できる酸化が起こっていないことを示している。表3に示されているように、96時間を通じて僅かな動粘度の低下により酸化が少量であることが証明される。窒素含有化合物、トリアゾール化合物、および第1級t−アルキルアミンの3種を組み合わせた組成物(8)では、カルボニルの吸収および僅かに大きな粘度の低下により酸化生成物は少量であることが見られ、第1級t−アルキルアミンは僅かな初期酸化傾向(pro−oxidation tendency)をもっていることを示している。従って相乗効果は窒素含有化合物とトリアゾール化合物との組み合わせ(7)に起因すると考えることができる。第1級t−アルキルアミンは酸化に関して観測される効果について何の役割も演じていない。
【実施例2】
【0087】
表1の基本組成物を再び使用したが、下記表5に示すようにトリアゾール化合物および窒素含有化合物を種々の量で使用した。
【0088】
【表5】

【0089】
これらの組成物の酸化安定性もエチル酸化試験で測定した。オイルの酸化生成物の動粘度およびカルボニルの赤外吸収の増加を測定する方法により、これらの潤滑剤組成物の酸化の抑制度を評価した。結果を下記表6および表7に示す。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
表2のトリアゾール化合物はベンゾチアゾールに対する伝統的なかなり高い濃度0.375重量%で試験した。表5に示されているように、トリアゾール単独の場合、および窒素含有化合物と一緒の場合、少量のトリアゾール化合物が上記のように結果に影響を与えるかどうかを決定するために、ベンゾチアゾールの濃度0.10および0.05重量%においても試験を行った。表6および表7に示されているように、基本配合物の中でトリアゾール化合物を単独で使用した場合、低濃度、例えば0.10重量%(10)および0.05重量%(11)においてなお基本配合物と同等な粘度の増加が生じた。すべての3種のトリアゾールの濃度に対しカルボニルの赤外吸収は同等であり、基本配合物よりも僅かに約20%少ないだけであった。
【0093】
窒素含有化合物とともにトリアゾール化合物を二つの低い濃度、0.10重量%(13)および0.05重量%(14)で使用した場合、カルボニルの赤外吸収は48時間および72時間の試験において90%を越える減少を示し、96時間では50%低かった。トリアゾール化合物の両方の低濃度において、72時間において8%を越える粘度の低下は若干の酸化が起こりつつあったことを示した。96時間の試験時間においてさえも、最低のトリアゾール濃度、0.05重量%(14)の場合、粘度の増加は僅かに6.6%であり、これは基本配合物よりも88%減少し、基本配合物中に窒素含有化合物が単独に存在する場合(4)に比べ84%減少した。従ってトリアゾール化合物が0.05重量%の場合でも窒素含有化合物とともに用いた時にはカルボニルの吸収および粘度の変化により測定して著しい酸化保護性が得られた。
【0094】
本明細書および添付特許請求の範囲においては、単数の形の冠詞「a」、「an」および「the」で修飾された事項は、特記されていない限り、また明白に一つの参照事項に限定されない限り、複数の参照事項を含むものとする。即ち、例えば「一つの(an)酸化防止剤」は2種またはそれ以上の酸化防止剤を含むものとする。本明細書において使用されているように、「含む(include)」およびその文法的な変形は制限を設けないことを意図するものであり、従って一つのリスト中で或る項目を引用下場合、そこに挙げられた項目と代替し得るあるいは付け加え得る他の同様な項目を排除するものではない。
【0095】
本明細書および添付特許請求の範囲の目的に対しては、本明細書および添付特許請求の範囲に使用された量、百分率または割合を表すすべての数値、並びに他の数値は、特記しない限りすべての場合において「約」と言う言葉で修飾されていると理解されたい.従っ
て、反対のことが示されない限り、本明細書および添付特許請求の範囲に記載された数値的なパラメータは、本発明によって得られるべき探索された所望の性質に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、また特許請求の範囲に対し同等の原理を適用することを限定するつもりはないが、各数値的なパラメータは報告された有意の桁数を考慮し、通常の丸めの技術を用いて解釈されなければならない。
【0096】
以上特定の具体化例を説明したが、本発明の出願人または当業界の専門家は予見されないまたは予見できない代替物、修正物、変形物、改善、および実質的な同等物を考えることができる。従って、添付特許請求の範囲は、出願された状態で或いは修正し得るものとして、このような代替物、修正物、変形物、改善、および実質的な同等物のすべてを包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アリール部分が置換したトリアゾール化合物であるが、アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾールではないトリアゾール化合物;および
(ii)式(II)
【化1】

但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物
を含んで成ることを特徴とする相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項2】
およびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30のアリール部分であることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項3】
アリール部分はフェニル、ベンジル、ナフチルおよびアルカリールから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項4】
アルカリールはアルクフェニルおよびアルクナフチルから成る群から選ばれ、ここでアルキル部分は約4〜約30個の炭素原子を含んで成ることを特徴とする請求項3記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項5】
アルカリールのアルキル部分は約4〜約12個の炭素原子を含んで成ることを特徴とする請求項4記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項6】
トリアゾール化合物は多数の環を含んで成る置換基をもったまたはもたないアリール部分で置換されていることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項7】
トリアゾール化合物は単一の環を含んで成る置換基をもったまたはもたないアリール部分で置換されていることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項8】
トリアゾール化合物は式(I)
【化2】

但し式中Rは水素、および炭素数約1〜約24の少なくとも1種のアルキル部分から成る群から選ばれ、Rは水素、炭素数約1〜約24の少なくとも1種のアルキル部分、および置換基をもったヒドロカルビル部分から成る群から選ばれる、
によって表されることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項9】
トリアゾール化合物はベンゾトリアゾールであることを特徴とする請求項1記載の相乗
作用をもった添加物組成物。
【請求項10】
トリアゾール化合物は添加物組成物の全重量に関して約0.01〜約3重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項11】
窒素含有化合物は添加物組成物の全重量に関して約0.07〜約33重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項12】
分散剤、灰分含有洗剤、無灰分洗剤、オーバーベイスト洗剤、流動点低下剤、粘度指数変性剤、灰分含有摩擦変性剤、無灰分摩擦変性剤、窒素含有摩擦変性剤、窒素を含まない摩擦変性剤、エステル化された摩擦変性剤、極圧剤、防銹剤、補助的な酸化防止剤、腐蝕抑制剤、発泡防止剤、チタン化合物、チタン錯体、有機質可溶モリブデン化合物、有機質可溶モリブデン錯体、硼素含有化合物、硼素含有錯体、タングステン含有化合物、およびタングステン含有錯体から成る群から選ばれる少なくとも1種の添加物をさらに含んで成ることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のモリブデン化合物をさらに含んで成ることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項14】
少なくとも1種のチタン化合物をさらに含んで成ることを特徴とする請求項1記載の相乗作用をもった添加物組成物。
【請求項15】
主要量の基質オイル;および少量の
(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物;および
(ii)式(II)
【化3】

但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物
を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物を含んで成ることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項16】
該潤滑剤組成物は硼素または燐を含む化合物を実質的に含まないことを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項17】
該潤滑剤組成物はジアルキルジチオ燐酸亜鉛を実質的に含まないことを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項18】
トリアゾール化合物は組成物の全重量に関して約0.05〜約0.5重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項19】
窒素含有化合物は組成物の全重量に関して約0.01〜約10重量%の範囲の量で存在することを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項20】
窒素含有化合物は組成物の全重量に関して約0.3〜約3重量%の範囲の量で存在する
ことを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項21】
トリアゾール化合物は組成物の全重量に関して約0.05重量%の量で存在し、窒素含有化合物は組成物の全重量に関して約0.3重量%の量で存在することを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項22】
分散剤、灰分含有洗剤、無灰分洗剤、オーバーベイスト洗剤、流動点低下剤、粘度指数変性剤、灰分含有摩擦変性剤、無灰分摩擦変性剤、窒素含有摩擦変性剤、窒素を含まない摩擦変性剤、エステル化された摩擦変性剤、極圧剤、防銹剤、補助的な酸化防止剤、腐蝕抑制剤、発泡防止剤、チタン化合物、チタン錯体、有機質可溶モリブデン化合物、有機質可溶モリブデン錯体、硼素含有化合物、硼素含有錯体、タングステン含有化合物、およびタングステン含有錯体から成る群から選ばれる少なくとも1種の添加物をさらに含んで成ることを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項23】
潤滑剤組成物は中程度の速度のディーゼルエンジン用オイル、乗用車用モーターオイル、および強力ディーゼルエンジン用オイルから成る群から選ばれることを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項24】
少なくとも1種のモリブデン化合物をさらに含んで成ることを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項25】
少なくとも1種のチタン化合物をさらに含んで成ることを特徴とする請求項15記載の潤滑剤組成物。
【請求項26】
主要量の基質オイル;および少量の
(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物;および
(ii)式(II)
【化4】

但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物
を含んで成ることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項27】
潤滑剤組成物の酸化防止性を改善する方法において、該方法は主要量の基質オイル;および少量の
(i)アリール部分が置換したアルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、トリアゾール化合物、および
(ii)式(II)
【化5】

但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ
、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物
を含んで成る潤滑剤組成物を機械に与えることを特徴とする方法。
【請求項28】
機械は火花燃焼型および圧縮−燃焼型内燃エンジンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項27記載の方法。
【請求項29】
エンジンはディーゼルエンジン、船舶用エンジン、ロータリーエンジン、タービンエンジン、機関車エンジン、推進エンジン、航空機用ピストンエンジン、定置型動力発生用エンジン、連続式動力発生用エンジン、および銀の部材を具備したエンジンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
主要量の基質オイル;および少量の
(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物;および
(ii)式(II)
【化6】

但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物
を含んで成る潤滑剤組成物を機械に与えることを特徴とする機械を動作させる方法。
【請求項31】
機械は火花燃焼および圧縮−燃焼型内燃エンジンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
エンジンはディーゼルエンジン、船舶用エンジン、ロータリーエンジン、タービンエンジン、機関車エンジン、推進エンジン、航空機用ピストンエンジン、定置型動力発生用エンジン、連続式動力発生用エンジン、および銀の部材を具備したエンジンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
機械の少なくとも一つの可動部材を潤滑する方法において、該方法は
主要量の基質オイル;、および少量の
(i)アルキルビス−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール以外の、アリール部分が置換したトリアゾール化合物、および(ii)式
【化7】

但し式中RおよびRはそれぞれ独立に炭素数約6〜約30の少なくとも1種のアリール部分、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、アミノ、アミド、フォスフォロ、およびスルフォノから成る群から選ばれる、
によって表される窒素含有化合物を含んで成る相乗作用をもった添加物組成物
を含んで成る潤滑剤組成物を少なくとも一つの可動部材と接触させることを特徴とする方法。
【請求項34】
機械は火花燃焼型および圧縮−燃焼型内燃エンジンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
少なくとも一つの可動部材は歯車、ピストン、軸受け、棒、バネ、カムシャフト、クランクシャフトおよびローターから成る群から選ばれることを特徴とする請求項34記載の方法。

【公開番号】特開2008−144164(P2008−144164A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300168(P2007−300168)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】