説明

潤滑基油

本発明は、重質潤滑油基材として有用な重質炭化水素組成物、および室温へ冷却されかつ長期間貯蔵された後でさえ清澄のままである重質潤滑油基材から誘導される、重質潤滑油組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑基油に関する。より詳しくは、本発明は、環境条件で静置した後にも清澄のままである潤滑基油に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油中のワックスに付随する問題は、周知である。原油の蒸留においては、ワックスの比例部分は、潤滑油範囲で取出される留分に存在する。いくらかのワックスは、油中に溶解されたままであり、他の部分は、油留分が環境温度で熟成した際に、ヘーズを形成する。ヘーズの出現は、石油生成物の美観および経済性に悪影響を及ぼす。清澄である生成物は、ヘーズ状であるものより、高く評価される。清澄試験は、油中の遊離水および微粒子を決定するための定性試験であり、従って人的判断に従う。
【0003】
ヘーズは、それ自体を、油の乳状またはくもり状の外観として表し、しばしば油中に存在するワックスによって、またはワックスおよび小さな水滴の両方によって引起される。典型的には、最小量のワックスが、いくつかの油に、ヘーズ状の外観をもたらすであろう。ヘーズ前駆体は、流動点およびくもり点に付随するワックスというより、除去することがより困難なワックスタイプの分子である。
【0004】
仕上げ重質潤滑油基材などの石油生成物を調製するに際しては、基材は、脱ヘーズ工程に付されて、その外観が向上されるであろう。脱ヘーズは、典型的には、ヘーズをもたらすそれらの成分を除去するための、溶剤または接触脱ロウの何れかによって達成されるであろう。溶剤脱ロウは、物理的に、ワックスを、溶剤を用いて低温で固体として油から除去する。一方、接触脱ロウは、長鎖のノルマルまたは若干分枝された長鎖の炭化水素(ワックス)を、分解/切断によって、より短鎖の炭化水素に転化する触媒を用い、それによって流動点およびくもり点(そのいずれもは、低温で測定される)が、低減される。しかし、当該のヘーズ前駆体は、必ずしも、従来のワックス除去技術(溶剤または接触脱ロウ)に応答しないばかりか、所望の生成物の著しい収率減のみを伴って応答するであろう。
【0005】
特許文献1は、環境温度または環境温度以下でヘーズを形成する傾向が低減された基油原料に関する。油のヘーズ形成傾向は、NTUを測定することによって決定される。NTUは、水などの液体の濁度を測定するのに長く用いられてきた。特許文献1は、NTU値2未満を有する基油が、ヘーズを発現する傾向を低減することを教示するものの、基油は、環境条件で、長時間静置された後には、清澄のままではない。
【0006】
潤滑油の処方技術の発展にもかかわらず、十分なくもり点(例えば、5℃以下)および流動点を有し、かつそれが室温へ冷却された直後には、清澄である潤滑油基油が、貯蔵された際にヘーズを発現することがあるという経験が、示されている。この現象は、本明細書に、遅延発現ヘーズ形成として引用される。
【0007】
従って、室温へ冷却され、数ヶ月(例えば、6ヶ月以下)の間、貯蔵された後でさえ、清澄のままである潤滑油基油に対する必要性が存在する。本発明は、高い粘度、低い流動点およびくもり点、および20℃(68゜F)以下のヘーズ消滅温度を有し、室温で清澄のままであることを可能にする重質炭化水素組成物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,579,441号明細書
【特許文献2】米国特許第5,348,982号明細書
【特許文献3】米国特許第5,545,674号明細書
【特許文献4】米国特許第4,568,663号明細書
【特許文献5】米国特許第4,397,827号明細書
【特許文献6】米国特許第4,585,747号明細書
【特許文献7】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献8】欧州特許第0142317号明細書
【特許文献9】米国特許第5,098,684号明細書
【特許文献10】米国特許第5,227,353号明細書
【特許文献11】米国特許第5,573,657号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重質潤滑油基材として有用な重質炭化水素組成物、および室温へ冷却され、かつ長時間(例えば、少なくとも14日間)貯蔵された後でさえ清澄のままである重質潤滑油基材から誘導される、重質潤滑油組成物に関する。
【0010】
重質潤滑油基材組成物は、次によって特徴付けられる。即ち、組成物の全重量を基準として、イソパラフィン分子少なくとも50wt%超、好ましくは少なくとも80wt%超、最も好ましくは少なくとも90wt%超;分子の少なくとも75wt%は炭素数C25超、好ましくは少なくとも50wt%はC40超を有する分子分布;537℃(1,000゜F)超で沸騰する、全基油の少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも50wt%;動粘度(100℃)少なくとも8cSt、好ましくは少なくとも12cSt、より好ましくは少なくとも15cSt;およびヘーズ消滅温度20℃(68゜F)以下、好ましくは15℃(59゜F)以下である。ヘーズが視認されず、および石油生成物が清澄であると判断される温度は、本明細書では、ヘーズ消滅温度と呼ばれる。基材は、典型的には、使用時の温度および圧力条件で液体である。典型的には、必ずしも常ではないが、25℃(77゜F)および1大気圧(101kPa)の環境条件においてである。
【0011】
他の実施形態においては、本発明は、本発明の重質潤滑油基材、および少なくとも一種の潤滑油添加剤を含む重質潤滑油組成物に関する。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、次の詳細な説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ヘーズ消滅温度を測定するのに用いられる光学的相挙動装置の概略図である。
【図2】転化率、ヘーズ消滅温度、および濁度のプロットである。
【図3】本発明の重要なアスペクト(特徴)を例証するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の炭化水素または重質潤滑油基材組成物は、天然または合成脱ロウ油から誘導される。天然または合成脱ロウ油が製造されるワックス質原料は、くもり点(ASTM D−5773)約5〜−10℃を有し、約C(または約38℃(100°F))から約288〜388℃(550〜730°F)以下の範囲の初留点を有するであろう。これは、好ましくは、終点少なくとも566℃(1050°F)以下で連続的に沸騰する。好ましくは、基材は、ガスツーリキッド(GTL)重質ワックス異性化油から誘導される。これは、少なくとも二段の接触水素異性化、および引続く蒸留、次いで脱ヘーズによって、全範囲フィッシャー−トロプシュワックス(沸点177〜704℃(350°F〜1300°F)(およびそれ以上))から調製される。重質潤滑油基材組成物は、組成物の全重量を基準として、イソパラフィン分子少なくとも50wt%超、好ましくは少なくとも80wt%超、最も好ましくは少なくとも90wt%超;分子の少なくとも75wt%が炭素数C25超、好ましくは少なくとも50wt%がC40超を有する分子分布;537℃(1000°F)超で沸騰する、全基材の少なくとも10wt%、好ましくは少なくとも50wt%;動粘度(100℃)少なくとも8cSt、好ましくは少なくとも12cSt、より好ましくは少なくとも15cSt;並びにT約454〜538℃(850〜1000°F)、およびT95538℃(1000°F)超、好ましくは566℃(1050°F)超を有することができる。基材組成物は、パラフィン分子少なくとも95wt%を含有し、そのうち少なくとも90wt%は、イソパラフィンであり、典型的には、使用時の温度および圧力条件で液体である。典型的には、必ずしも常ではないが、24℃(75°F)および1気圧(101kPa)の環境条件においてである。重質潤滑油基材組成物は、ヘーズ消滅温度(HDT)20℃(68°F)以下、好ましくは15℃(59°F)以下を有するであろう。
【0015】
GTL基油は、(ガス状炭素含有化合物から)一種以上の合成、結合、転位、再配置、および/または劣化分解プロセスを経るGTLプロセスにより得られる、少なくとも一種の基材を含む。好ましくは、GTL基材は、フィッシャー−トロプシュ(FT)合成プロセスから誘導される。その際、HおよびCOの混合物を含む合成ガスは、水素異性化および/または脱ロウによって、より低沸点物質へ接触転化される。プロセスは、例えば、特許文献2および特許文献3に記載され、適切な触媒は、特許文献4に記載される。そのそれぞれは、本明細書に引用して含まれる。
【0016】
GTL基材が誘導される好ましいGTL物質は、FT合成プロセスで製造される高アルファ値のワックス質炭化水素である。高アルファ値とは、アルファ値少なくとも0.85、好ましくは少なくとも0.9、より好ましくは少なくとも0.92を意味する。本明細書で用いられるように、アルファ値は、シュルツ−フローリー動力学アルファ値をいう。GTL基材は、通常、硫黄、窒素、および金属1wppm未満を含む。
【0017】
脱ロウ工程は、溶剤脱ロウ、接触脱ロウ、または水素化脱ロウの一種以上を用いて達成されてもよい。
【0018】
溶剤脱ロウにおいては、異性化ワックス生成物は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEK/MIBKの混合物等などの冷却された溶剤と接触されて、より高流動点物質が、ワックス質固体として析出される。これは、次いで、溶剤含有潤滑油留分から分離される。溶剤は、次いで、ストリッピングされる。脱ロウ油は、分留され、必要ならば脱ヘーズへ付されてもよい。
【0019】
ワックス質原料またはフィッシャー−トロプシュワックスは、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応器で製造されるワックス質炭化水素留分を含み、反応条件で液体である。それは、24℃(75°F)および1気圧(101kPa)で固体であることから、ワックスと呼ばれる。それは、本発明の重質炭化水素組成物を製造するのに、538℃(1000°F)超で沸騰する十分なワックス質物質を含有しなければならない。ワックス質原料は、典型的には、一種以上の接触脱ロウ工程で脱ロウされ、その際原料は、脱ロウ条件下に、水素および脱ロウ触媒と接触される。イソ/ノルマルパラフィンの比率は、炭素原子20個以下を有する分子を含む組成物についてはGCによって、炭素原子20個以上を有する分子を含む組成物についてはGCおよび13C−NMRの組合せによって測定される。芳香族は、ASTM D−2622に記載される蛍光X線(XRF)によって決定される。硫黄は、ASTM D−2622に従って、XRFによって測定され、窒素は、ASTM D−4629に従って化学発光検出器を用いるシリンジ/入口酸化燃焼によって測定される。
【0020】
水素化脱ロウ工程で有用な触媒は、固体酸成分、水素添加成分、および結合剤を含む。水素化脱ロウに有用な適切な触媒成分について、例証であるが限定しない例には、例えば、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、ZSM−22(シータワンまたはTONとしても知られる)、並びにSAPOとして知られるシリカアルミノホスフェート(例えば、SAPO−11、31、および41)、SSZ−32、ゼオライトベータ、モルデナイト、および希土類イオン交換されたフェリエライトが含まれる。好ましくは、ZSM−48である。また、有用なものは、アルミナおよび非晶質シリカアルミナである。
【0021】
多くの他のゼオライト触媒の場合におけるように、固体酸成分を、結合剤としても知られる母材物質と組合せることが望ましいことがある。これは、本明細書の脱ロウプロセスで用いられる、温度および他の条件に耐性がある。これらの母材物質には、活性および不活性物質、および合成または天然由来ゼオライト、並びにクレー、シリカ、および/または金属酸化物(例えばアルミナ)などの無機物質が含まれる。後者(無機物質)は、天然由来であるか、またはゼラチン状沈殿物、ゾルまたはゲルの形態かのいずれであってもよく、シリカおよび金属酸化物の混合物が含まれる。固体酸成分と組合された(即ち、それと結合された)物質(活性がある)を用いることにより、本明細書の触媒の転化率および/または選択性が高められることがある。不活性物質は、適切には、希釈剤として機能して、所定プロセスの転化の量が制御され、そのために生成物が、反応速度を制御するための他の手段を用いることなく、経済的かつ秩序よく得られることができる。しばしば、結晶質シリケート物質が、天然由来クレー(例えば、ベントナイトおよびカオリン)に組込まれている。これらの物質(即ち、クレー、酸化物等)は、部分的に、触媒の結合剤として機能する。石油製油所においては、触媒は、しばしば、乱暴な取扱い(触媒を、粉末様物質に粉砕する傾向があり、これはプロセスにおいては問題を引起こす)に付されることから、良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。
【0022】
固体酸成分と複合化することができる天然由来クレーには、モンモリロナイトおよびカオリン系(擬ベントナイトを含む)が含まれる。カオリンは、一般に、Dixie、MacNamee、Georgia、およびFlorida clay、または他のもの(主な鉱物成分は、ハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトである)として知られる。これらのクレーは、当初に採掘された素材状態で用いられるか、または最初に、焼成、酸処理、または化学修飾に付されることができる。
【0023】
前記物質に加えて、固体酸成分は、多孔質母材物質と複合化することができる。シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、並びに三元組成物(シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、およびシリカ−マグネシア−ジルコニアなど)などである。母材は、共ゲルの形態であることができる。これらの成分の混合物もまた、用いられることができる。微粉化固体酸成分および無機酸化物ゲル母材の相対的な割合は、幅広く異なり、結晶質シリケートの含有量は、複合物の約1〜約90wt%、より通常には約2〜約80wt%の範囲である。
【0024】
水素添加成分は、少なくとも一種の第VIII族金属成分、好ましくは少なくとも一種の第VIII族貴金属成分を、PtおよびPdとして含むであろう。貴金属の濃度は、全触媒重量を基準として、金属約0.1〜5wt%、より典型的には約0.2〜1wt%の範囲であろう。本明細書に引用される第VIII族とは、Sargent−Welch元素周期律表(Sargent−Welch Scientific Companyによって、1968年に著作権を取得された)に見出される第VIII族をいう。
【0025】
ZSM−48(ZSM−48ゼオライトには、EU−2、EU−11、およびZBM−30が含まれ、これらは、構造的に等価である)の調製は周知であり、例えば、特許文献5、特許文献6および特許文献7、並びに特許文献8に開示される。その開示は、本明細書に引用して含まれる。本発明を実施する際に有用な他の水素化脱ロウ触媒には、主として異性化によって(分解または水素化分解によってではない)脱ロウする周知の触媒のいかなるものもが含まれる。10および12員環構造を含むゼオライトは、特に、触媒金属水素添加成分と組合される場合には、脱ロウ触媒として有用である。本発明の炭化水素または重質潤滑油組成物を製造するのに用いられる水素化脱ロウ反応条件には、温度、水素分圧、および空間速度が、それぞれ、232〜399℃(450〜750°F)、10〜2,000psig(69〜13790kPa)、および0.1〜20LHSVの幅広い範囲で含まれる。これらの条件は、より一般的には、260〜371℃(500〜700°F)、100〜1000psig(690〜6895kPa)、および0.5〜3.0LHSVの範囲であろう。圧力200〜700psig(1379〜4827kPa)が、より典型的である。
【0026】
フィッシャー−トロプシュ反応によって製造されるワックスまたはワックス質炭化水素は、本発明の処理触媒を用いて水素化脱ロウされて、流動点が低減された脱ロウ生成物が製造される。これは、(i)留出油燃料留分および(ii)潤滑油留分の少なくとも一種を含む。典型的には、水素化脱ロウにより、水素化脱ロウ生成物の流動点が、所望の規格へ低減されて、(a)ブレンドに用いられる一種以上の留出油燃料材、および(b)一種以上の潤滑油基材の一種以上が形成される。一種以上の潤滑油基材には、重質潤滑油基材が含まれるであろう。留出油燃料とは、約Cから約288以下〜388℃(550〜730°F)の範囲のどこかで沸騰する水素化脱ロウ炭化水素留分を意味し、これには、ナフサ、ディーゼル、およびジェット燃料が含まれる。本発明の文脈においては、重質留分は、重質潤滑油留分(水素化脱ロウされる場合に、重質潤滑油基材を含む)を含む。重質潤滑油基材は、初留点範囲約454〜538℃(850〜1000°F)を有し、終点538℃(1000°F)超、好ましくは566℃(1050°F)超を有する。本明細書に引用される初留点および終点の値は、名目であり、ガスクロマトグラフ蒸留(GCD)によって得られるTおよびT95カットポイントをいう。
【0027】
本発明に従って製造される留出油燃料および潤滑油基材は、典型的には、緩やかな条件で水素仕上げされ、脱ヘーズされる。水素仕上げは、非常に緩やかな、比較的低温の水素添加プロセスである。これは、触媒、水素、および緩やかな反応条件を用いて、ヘテロ原子化合物、芳香族、およびオレフィンの痕跡量が除去され、酸化安定性および色相が向上される。水素仕上げ反応条件には、温度150〜350℃(302〜662°F)、好ましくは150〜250℃(302〜482°F)、全圧400〜3000psig(2859〜20786kPa)、0.1〜5LHSV(時−1)の範囲の液空間速度、好ましくは0.5〜3時−1が含まれる。時間当たり水素処理ガス速度は、250〜10,000scf/B(44.5〜1780m/m)の範囲であろう。触媒は、担体成分、および第VIB族からの金属(Mo、W、Cr)、第VIII族の鉄族(Ni、Co)または貴金属(Pt、Pd)の少なくとも一種の触媒金属成分を含むであろう。本明細書に引用される第VIB族および第VIII族とは、Sargent−Welch元素周期律表(Sargent−Welch Scientific Companyによって、1968年に著作権を取得された)に見出される第VIB族および第VIII族をいう。1つまたは複数の金属は、触媒組成物について、貴金属に対する0.1wt%〜非貴金属に対する30wt%で存在してもよい。好ましい担体物質は、酸度が低く、これには、例えば非晶質または結晶質金属酸化物が含まれる。アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、および超大細孔結晶質物質(メソ細孔結晶質物質として知られる)などである。そのうち、MCM−41は、好ましい担体成分である。MCM−41の調製および使用は、知られており、例えば、特許文献9、特許文献10および特許文献11に開示される。
【0028】
潤滑油基材は、脱ヘーズに付されて、その色相、外観、および安定性が向上される。好ましくは、基材は、重質潤滑油基材である。脱ヘーズは、次の一般的な工程を含む。その全ては、全てのワックス質ヘーズ状潤滑油基材に関する全ての事例において、必ずしも必要とされない。即ち、任意に、潤滑油基材から、非ワックス質微粒子物質を、ろ過、吸着、遠心分離、膜分離、蒸留、またはいくつかの他の標準的分離技術によって除去する工程;任意に、希釈剤を潤滑油材へ添加する工程;(任意に希釈された)潤滑油材を、環境条件で、または好ましくは、ヘーズが形成されるのに十分な時間(インキュベーション時間)に亘って僅かに冷却して保持する工程;温度をろ過温度よりも低くして、ヘーズの形成を加速させ、次いで温度をろ過温度へ昇温する工程;ヘーズ原因ワックスを、インキュベーションされた(好ましくは冷却された)ヘーズ状油基材から、フィルター(ヘーズ原因ワックス微粒子に到達可能な細孔の高表面積によって特徴付けられる)を用いてろ過する工程;脱ヘーズ油をろ過液として回収する工程;希釈剤が用いられる場合に、希釈剤をろ過液から回収する工程;任意におよび好ましくは、ワックス飽和フィルターを再生する工程である。
【0029】
基材油中のヘーズ原因ワックスをろ過するのに用いられるワックスフィルター媒体は、ワックス粒子に到達可能な全物質表面積少なくとも約0.5m/g〜100m/g、および細孔0.2〜50ミクロン、好ましくは0.2〜10ミクロン、より好ましくは0.2〜5ミクロン、最も好ましくは0.2〜1ミクロンを有する。「細孔」とは、フィルター物質を構成する物質の繊維のストランド間の空間、例えば、マットフィルター物質の繊維間の空間を意味する。典型的なワックスヘーズ粒子は、サイズが、約5ミクロン未満〜より典型的には約0.2ミクロンである。このサイズの媒体を用いることは、本発明の組成物を、シリカ、アルミナ、フラー土、活性炭、ボーキサイト、およびゼオライトなどの吸着剤(表面積は、わずか約0.001ミクロンの細孔内に存在し、従ってワックス質ヘーズ粒子に到達可能でない)を用いる、現今の吸着脱ヘーズ方法の典型的な状態を用いることに起因する組成物と区別することに資することである。
【0030】
フィルター媒体は、二重の機能(吸着およびバリア(またはふるい)の両機能)を有するであろう。バリアろ過は、再生が必要とされる前に、長時間の時間通りろ過をもたらす。装置稼働率の他に、バリア機能は、高い生成物収率をもたらし、再生施設の需要および副成物を最小にする。加えて、バリアろ過は、媒体の種々の部分を通る流量を調整する傾向がある。媒体は、媒体の製造による不均一性、カートリッジ内に効率的に充填するためのひだ形成による不均一性、または使用中の変形による不均一性によって、透過性が異なることがある。このように作用するためには、フィルター媒体の細孔は、ワックス粒子を捕捉/捕獲するのに十分に小さいことが好都合である。そのため、粒子を捕捉することによるフィルターを横切る圧力降下は、媒体自体の圧力降下を超える。
【0031】
しかし、バリアろ過単独は、ワックス粒子および媒体細孔の両サイズの分布によって、固体ヘーズを完全に除去することが困難であるという欠点を有する。これは、小さな粒子サイズの理由で、および少しの漏出でさえも、ろ過液をヘーズ状のままにすることがあるという事実の理由で、特に、脱ヘーズにおいては重要である。吸着機能により、バリアメカニズムによって完全に捕獲することが困難な粒子を、除去することができる。
【0032】
繊維金属、繊維ガラス、およびアラミド繊維などの媒体は全て、閉塞による圧力降下少なくとも約2psiを示し、一方初期の閉塞されない圧力降下は、約2psi未満であった。従って、名目ヘーズワックス微粒子サイズより、せいぜい約10倍の名目細孔サイズを有する媒体が好ましい。
【0033】
ろ過/吸着媒体は、異なる化学的形態を有することができる。物質のシートまたはマットが用いられることができる。シートまたはマットは、好ましくは、厚さが典型的には0.5cm未満のランダム不織布繊維のシート、即ちフェルトである。十分に小さな細孔を糸間に有する織布シートもまた、シートが十分に高い全物質表面積、および十分に小さいサイズの繊維ストランド間の細孔を示す場合には、許容可能であろう。繊維物質はまた、いかなる内径およびいかなる長さをも有する管または円筒の形態であることができる。長さは、好ましくは、管または円筒の内径より長い。シートまたはマットが用いられる場合には、それらは、単独のシート、または積層シートとして用いられることができる。単独または多重シートは、円筒または管に巻かれることができるか、または中空の中央コアの周りにラセン状に巻かれることができ、各シートは、流体透過性スペーサーシートによって、いかなる他のシートまたはシート層とも分離され、それによって各シートまたはシート層の間の流体通路室(残留液および透過液の空間を作る)が形成される。これは、当技術に知られ、かつ直交流ろ過条件下で作動するラセン巻き膜の場合と同じである。ろ過媒体の管または円筒、またはラセン巻き膜構造のシートの場合においては、希釈されたワックス質原料は、管の中央に、またはラセン巻き要素のコアに供給されるであろう。残留液は、管の中央を通過し、一方透過液は、透過液空間に進み、管または円筒の中央またはラセン巻き要素の中央コアを通る原料/残留液の流れに、直角にまたは直交流で移動するであろう。円筒または管を通るか、またはラセン巻き要素の透過液空間を通る透過液のこの直交流(直交流とは、円筒または管を通るか、またはラセン巻き要素の残留液空間を通る原料/残留液の流れの方向に関して、透過液の流れの方向をいう)により、プロセスの運転が、圧力降下約20psiで可能にされる。ラセン巻き要素を用いることにより、平坦な繊維シートろ過を用いるより、高い希釈濃度の使用が、可能にされるであろう。希釈された原料の粘度3〜4mm/秒は、電力損、およびポンピングによる流体加熱の低減をもたらすのに用いられることができるであろう。より低いポンプ圧によるこの加熱の低減は、ヘーズ粒子の原料への溶解または融解を回避するという利点を有するであろう。溶解されたヘーズ粒子は、さもなければ、フィルターを通過し、油中に残存し、従って脱ヘーズプロセスの効率の低下がもたらされるであろう。更に、用いられるポンプ力を低減することにより、更に、ワックスヘーズ粒子が、せん断され、フィルターを通過する可能性が低減される。
【0034】
希釈されていない原料のろ過は、好ましくは、環境温度未満の数度下、即ち2〜15℃(36〜59°F)、好ましくは5〜10℃(41〜50°F)下で行われる。任意に、原料は、希釈されて、フィルターを横切る圧力降下が低減され、ろ過流量が向上される。希釈剤には、ナフサ、ジェット、ディーゼル、灯油、ガス油、ガソリンなどが含まれることができる。希釈された原料(希釈剤がヘーズを溶解する)については、ヘーズが安定である温度(HDT)、インキュベーション温度、およびろ過温度は全て、希釈されていない原料を用いる場合より低い。
【0035】
ろ過される基材は、実際には、ヘーズろ過工程においてはヘーズ状であろう。環境温度ヘーズに付随するワックスは、視認可能なヘーズが存在しない場合には、基材から効果的にろ過されない。ワックス形成を加速するために、基材の温度は低下される。脱ヘーズされるべき基材が、希釈剤と混合されない場合には、基材を、最も低い予想環境温度の下か、または脱ヘーズ油の所望されるヘーズ消滅温度(HDT)の下少なくとも約5℃へ冷却することが、十分であるべきである。好ましくは、冷却は、最も低い予想環境温度、または脱ヘーズ油のHDTの下10℃または15℃であることができる。脱ヘーズされるべき素材を、希釈剤と混合する場合には、希釈した素材は、最も低い予想環境温度、または脱ヘーズ油のHDT目標の下少なくとも約10℃へ冷却することができる。一般に、脱ヘーズされるべき油の凡そのくもり点温度への冷却が、十分である。
【0036】
これらの冷却の期間、即ちヘーズインキュベーション期間は、従って、選択される冷却温度、および脱ヘーズされるべき油材中に存在するヘーズ前駆体の量による。従って、時間は、視認可能なヘーズが形成されるのに十分なものである。これらの時間は、数分〜数時間、例えば2分〜3時間、好ましくは約5分〜2時間、より好ましくは約10分〜1時間の範囲であることができる。
【0037】
希釈剤が、ヘーズ油へ添加される場合には、希釈剤は、いかなる適切な分離技術(例えば、ストリッピング、蒸留、膜分離等)をも用いて、当該の脱ヘーズ油から除去される。
【0038】
本発明の組成物は、ヘーズ消滅温度20℃(68°F)以下によって特徴付けられる。ヘーズ消滅温度(以下、HDT)は、ヘーズが視認可能でなく、かつ石油生成物が清澄であると判断される温度である。HDTにおいては、試料中の本質的に全ての分子は、熱力学的平衡の液体である。熱力学的平衡は、試料を十分に冷却してヘーズを形成し、次いで試料を緩やかに加熱し、ヘーズが全く存在しない温度を検知することによって測定することができる。これは、少なくとも、外観およびヘーズ評価の一部として行われる、試料の光散乱の視覚的検知と同様に敏感な方法を用いて行われなければならない。好ましくは、HDTは、光学的相挙動装置を用いて測定される。油のHDTが、20℃以下、好ましくは15℃以下である場合には、油は、環境条件で、長時間(例えば、少なくとも14日間、好ましくは少なくとも21日間、より好ましくは少なくとも3ケ月間、最も好ましくは少なくとも6ケ月間)静置された後、清澄なままであろう。
【0039】
このヘーズに付随するワックス質分子は、典型的には、非常に低濃度(約10〜200wppm)で存在することが推測される。ただし、従来法で測定されるくもり点に付随するワックス質分子の濃度は、約1000ppm以上であると考えられ、一方油の流動点に付随するワックス質物質の量は、約1wt%(約10,000ppm)である。更に、ヘーズに付随するワックス質物質の量は、くもり点および流動点に付随する量より、実質的に低いだけでなく、ワックス質物質自体の性質も異なる。
【0040】
理論に束縛されることを望むものではないが、HDTは、試料中の非分枝鎖セグメントの量およびサイズに関連付けられると考えられる。無機および炭素質微粒子、および水を十分に含まない試料のヘーズは、長い非分枝鎖セグメントを有するパラフィン分子によってもたらされる。非分枝鎖セグメントは、炭素数35個超であってもよい。ワックス質ヘーズ沈殿物の温度依存性は、パラフィン質分子の非分枝鎖セグメントの長さ、およびパラフィン質分子自体の全量によって理解され得る。分子は、凡そ、その最も長い非分枝鎖セグメントの長さを有するノルマルパラフィンに類似して、挙動する。これらの分子の濃度が、流体のそれらを溶解する能力を超える場合には、分子は、溶液から沈澱し、ヘーズが形成される。
【0041】
本発明においては、環境温度ヘーズの効果的な軽減は、少なくとも14日、好ましくは21日以上、より好ましくは30日以上、更により好ましくは60日以上、清澄な外観を示す処理油によって、またはNTU値2未満、好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.0以下を、少なくとも14日間示すことによって、明示される。
【0042】
清澄とは、視認評価をいい、その際訓練された観察者は、油中に「ヘーズまたはフロック」の形成を認識することができる。「ヘーズ状」の評価は、試料中に均等に分散された粒子による透明性の欠如を示すであろう。しばしば、粒子は、分離した異なる物体として検知するにはあまりにも小さい。「フロック」は、油試料中に不均等に分散されたかなりより大きな粒子によるものであり、しばしば、試料の一区域(試料の底部など)に沈殿または凝集するであろう。試料が清澄であるか否かの決定は、特定の条件下の試料について、訓練された観測者によってなされる主観的判断である。本事例においては、用いられる条件は、1〜1.5インチの(瓶を通る)光路を有する4オンスのトール形瓶を部分的に満たすこと、および試料を、典型的な実験室条件下に、観察者から軸を約10〜20°ずらして、光を試料の背面に近づけて観察することが含まれる。光源は、一般に、標準的な実験室照明であり、典型的には蛍光灯である。長時間の清澄な安定性に対しては、試料は、環境温度で暗所貯蔵される。殆どの測定に対しては、「環境温度」は、68°F(20℃)で設定されたインキュベーション装置を用いることによって、一貫保持された。試料は、撹拌されることなく、貯蔵され、観察される。
【0043】
ヘーズが存在しない場合には、潤滑油は、一般に清澄である。従って、光は、油試料を、吸収または散乱なしに通過し、透過率約100%が得られるであろう。パラフィンの結晶化によって形成されるヘーズ小板は、より高い密度および異なる屈折率を有し、従って光を散乱する。従って、透過度は、散乱される光により減少するであろう。ヘーズ微結晶は、巨視的な結晶には成長しないことから、ヘーズの形成は、核化優勢プロセスである。従って、散乱強度、および透過強度の減少は、ヘーズ濃度、並びに潤滑油を通る通路長に比例するであろう。従って、所定のヘーズ性を有する通路長0.1mmが、強度を、初期強度の0.99へ減少する場合には、1mmの通路長は、0.99**10=0.904を示し、10mmの通路長は、強度を0.99**100=0.37へ減少するであろう。
【0044】
HDTを測定するのに用いられる光学的相挙動装置は、生成物の試料を、室温未満(試料のくもり点近傍またはそれ未満の目標温度)へ冷却しながら、光で照射することによって機能する。試料を透過された光は、測定されて、遅延発現ヘーズ形成を決定するのに用いられる。その後、試料は、予め選択された制御速度で、高温(典型的には、約60℃〜80℃の範囲)へ加熱され、試料を透過された光が、測定されて、試料のHDTを決定するのに用いられる。
【0045】
脱ロウされた清澄な潤滑油基材の遅延発現ヘーズ形成を決定するために、図1が参照される。基材の試料は、キュベットホルダー14内のキュベット10に入れられる。これは、試料をキュベット10内に手動で入れるか、またはストリーム(例えば、脱ロウまたは脱ヘーズプロセスからのスリップストリーム)をキュベット10に流すことによって達成することができる。試料が、キュベット内に入れられる場合には、それは、ヘーズ形成成分のいかなる核化も防止されるのに十分な条件下に保持されていることが重要である。従って、キュベット内に入れられる時点の試料は、約80℃〜120℃の範囲の高温に、約10〜30分間あるべきである。任意にしかし好ましくは、試料をキュベット10内に入れた後に、試料は、加熱装置20によって、約90℃へ約20分間かけて加熱されて、いかなるヘーズ形成成分も、確実に除核される。ヘーズ形成成分の除核は、いかなる好都合な手段(試料を通る光透過を測定することなど)によっても、決定されてもよい。試料の温度は、次いで、データ採取する冷却傾斜の前に、導管21を通る冷却流体の循環によって、約10分に亘って約40℃へ低減される。
【0046】
試料はまた、試料の均一性を確実にするのに十分な条件に付されてもよいか、好ましくは、それに付される。これらの条件には、キュベット10内での振盪または撹拌が含まれることができる。別に、試料は、別個の容器内で加熱および撹拌され、次いでキュベット10へ移すことができる。
【0047】
次に、試料は、室温未満に、試料の凡そのくもり点近傍またはそれ未満である目標温度へ冷却される。一般に、目標温度は、約−10℃であろう。冷却は、一般に約1〜0.1°/分、好ましくは0.5°/分の一定速度で行われる。
【0048】
試料が、目標温度へ冷却されつつある一方、光が、光ファイバーケーブル16によって試料に連続的に放射され、透過光が、光ファイバーケーブル17によって受光され、プログラマブル論理制御装置18によって処理される。
【0049】
他の機能の中で、制御装置18は、透過強度/時間(I raw (t))の生データを、強度/温度(I raw (T))へ転換するようにプログラムされる。強度は、次いで、ヘーズが存在しない場合、運転開始時の強度へ標準化される(I(T)=I raw (T)/I)。これと単位との間の差は、散乱強度およびヘーズ量の尺度である(H(T)=1−I(T))。試料の温度が低下されると、H(T)は、ゼロから閾値(Ht)へ増大するであろう。H(T)=Hである温度が、Tヘーズである。
【0050】
ヘーズが試料中に出現するかもしれない最大温度を決定するために、温度傾斜は、逆転され、試料は、好ましくは、固定された速度(任意に、冷却速度と同じ速度であってもよい)で加熱され、一方試料を通って透過される光が監視される。H(T)が基準線へ減少する点、またはH(T)が基準線へ最も早く達した部分の外挿は、ヘーズ消滅温度であると考えられる。ヘーズ消滅温度は、ヘーズに対する平衡消滅温度を表し、その温度を超えるとヘーズが決して形成しないであろう温度である。本発明の重質潤滑油基材組成物のヘーズ消滅温度は、20℃(68°F)以下、好ましくは15℃(59°F)以下である。
【0051】
完全処方された重質潤滑油または重質潤滑油組成物は、重質潤滑油基油へ、有効量の少なくとも一種の添加剤、またはより典型的には、一種超の添加剤を含有する添加剤パッケージを添加することによって調製される。基油は、少なくとも一種の基材を含む。これらの添加剤の例証であるが、限定しない例には、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、極圧剤、流動点降下剤、VI向上剤、摩擦調整剤、解乳化剤、酸化防止剤、消泡剤、腐食防止剤、およびシール膨潤抑制剤の一種以上が含まれる。
【0052】
次の限定しない実施例は、本発明を例証するのに示される。
【実施例】
【0053】
実施例1〜4
GTL基材を、ZSM−48脱ロウ触媒を用いて、脱ロウ条件下に脱ロウした。脱ロウ油を、温度約55℃(131゜F)へ加熱し、n−ヘプタン80%およびn−オクタン20%の溶剤33%で希釈した。希釈油を、温度約−3.9℃(25゜F)へ冷却し、この温度で約3時間保持した。油を、次いで、全表面積約0.5m/gおよび細孔サイズ0.45ミクロンを有するポリビニリデンジフルオライドフィルターを通して、流速0.05ガロン/分フィートでろ過した。ろ過油を、環境条件で6カ月間静置した。ろ過基材の特性を、表1に開示する。
【0054】
試料のHDTを、光学的相挙動装置を用いて測定した。全試料は、HDT約18℃をもたらした。試料は、6カ月間静置した後に、清澄のままであった。6カ月間後でさえ、試料は、清澄のままであった。くもり点を、ASTM D5773に従って測定した。
【0055】
NTU値を、Hach Co. Model 2100 P濁度計を用いて測定した。濁度計は、油試料を照射する光源、および試料中の粒子によって角度90゜で散乱された光の強度を測定する光電管からなる比濁計である。透過光検知器はまた、試料を通過する光を受光する。濁度計の信号出力(比濁分析濁度装置またはNTUの単位)は、二つの検知器の比である。機器は、US−EPA法180.1で特定されるUS−EPA設計基準を満足した。NTU値を、温度25℃で測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
比較例5〜7
次の比較例5〜7においては、GTL基材を、ZSM−48脱ロウ触媒を用いて、脱ロウ条件下に脱ロウした。油は、ろ過されなかった。
【0058】
試料のHDTを、光学的相挙動装置を用いて測定した。脱ロウ油の特性を、表2に示す。くもり点を、ASTM D5773に従って測定した。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例8〜9
次の実施例においては、13cSt石油ワックス異性化油を用いた。石油ワックス異性化油は、酸化を防止するために、BHT(3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシトルエン)15ppmを含んだ。実施例8の石油ワックス異性化油を、低温室内に、約4℃(39゜F)で終夜置いた。ワックス異性化油を、次いで、0.45ミクロンのポリビニリデンジフルオライドフィルターを用いて、温度約2℃(36゜F)および流速0.04ガロン/分・フィートでろ過した。実施例9の石油ワックス異性化油を、環境条件で貯蔵し、ろ過しなかった。試料のくもり点を、ASTM D5773に従って測定した。
【0061】
表3に示されるように、ろ過された基材は、HDT 10.1℃およびNTU(20℃)0.35を有し、一方ろ過されなかった基材は、HDT 23.8℃およびNTU(20℃)1.0を有した。NTUは、油がヘーズなしのままであろうか否かの良好な指標ではない。ろ過されなかった基材は、NTU1.0を有したものの、試料は、環境温度で長時間(即ち、約6カ月)静置した後、ヘーズを発現した。示されるであろうように、この試料のHDT値は、20℃超であった。外観は、実施例8のろ過された試料では測定されることができなかった。何故なら、残りのろ過された試料の量が不十分であったからである。ろ過された油は、そのHDTが20℃未満であったことから、ヘーズなしのままであろうと考えられる。
【0062】
【表3】

【0063】
比較例10および11
GTL基材を、特許文献1(Biscardiら)に従って、吸着物質を含む固定床吸着装置を用いてろ過した。用いられた吸着剤は、Na−13XゼオライトおよびAl−ZSMゼオライトであった。実施例10で用いられた条件は、次のようであった。即ち、ろ過温度28℃(82゜F)、希釈なし試料、粒子サイズ約0.7mm、滞留時間40分、および流量0.7gpm/フィートであった。実施例11で用いられた条件は、次のようであった。即ち、ろ過温度78℃(172゜F)、粒子サイズ約1.0mm、滞留時間210分、および流量0.14gpm/フィートであった。カラムの背圧は、一般的には、50psi未満であった。
【0064】
【表4】

【0065】
示されるであろうように、NTU値<2を有するにもかかわらず、試料は、環境温度で静置した後、ヘーズを発現した。両試料のHDT値は、>20℃であった。これらの例によって示されるように、NTUは、ヘーズが発現されか否かの適切な尺度ではなく、更に、Biscardiによって開示される吸着剤は、効果的にヘーズを除去して、少なくとも6カ月間清澄のままである試料を達成することができない。
【0066】
比較例12
GTL重質潤滑油基材の試料を、GTLワックスを種々の転化の過酷度で水素化脱ロウ触媒により処理することによって調製した。調製された試料は、全範囲950゜F〜1300゜F(以上)の沸点、および分留された沸点範囲950゜F〜1100゜Fであった。製造された全ての試料は、動粘度(100℃)10cSt超を有した。濁度を、Hach Co. Model 2100 P濁度計を用いて、20℃で測定した。試料のヘーズ消滅温度(HDT)を、光学的相挙動装置を用いて測定した。結果を、図2に示す。
【0067】
図2から示されるであろうに、転化の過酷度を増大して、より異性化された生成物がもたらされることにより、ヘーズの程度または強度を下げることが促進された。しかし、過酷度の増大は、所望される生成物の収率の低下をもたらした。蒸留範囲を、より低沸点の分子量留分へ限定することは、ヘーズの程度または強度を下げるのに十分であったが、これは、1000゜F範囲の潤滑油基材の多くを犠牲にした。
【0068】
比較例13
フィッシャー−トロプシュワックスから誘導され、動粘度(100℃)12cSt超を有する950゜Fフィッシャー−トロプシュ留分を、擬ベーマイトアルミナ押出し成形物と接触させた。これは、特許文献1に開示され、断面直径0.056インチを有する。950゜Fフィッシャー−トロプシュ留分は、ろ過前に、HDT58℃を有した。
【0069】
油3g/アルミナ1gの比率を用いた。油および吸収剤の間の接触時間は、1.5時間であった。これは、WHSV2時−1に相当する。油および吸収剤の混合物を、撹拌しなかった。実験を、大気圧および温度約47℃で運転した。1.5時間後、油を、減圧ろ過し、ろ過された油を、光学的相挙動装置(OPBU)で試験して、HDT(℃)が決定された。ろ過された油は、HDT50℃を有した。
【0070】
同じ実験を、油および吸着剤の混合物が接触時間1.5時間で連続的に撹拌されたことを除いて運転した。ろ過された油は、HDT50℃を有した。
【0071】
擬ベーマイトアルミナ押出し成形物(特許文献1に開示される)の使用は、HDT20℃未満をもたらさなかった。
【0072】
ここで、図5を引用すると、結果の図形プロットを、脱ロウされたGTL基材(プロット中の標識付けされた原料)、および脱ロウ/脱ヘーズされたGTL基材(プロット中の標識付け/ろ過された原料)について、光学的相挙動装置を用いて得た。用いられた基材は、清澄であり、VI 155、Kv(40℃)94.98cSt、およびKv(100℃)14.3cStを有した。脱ロウ/脱ヘーズされたGTL基材を、原料を33wt%パラフィンナフサへ希釈し、引続いて終夜7.2℃へ、次いで約3時間0℃へ冷却することによって得た。冷却された物質を、次いで、名目細孔サイズ1ミクロンの繊維状アラミド4層を通して、速度0.05ガロン/分・フィートで10分間ろ過した。最後に、ナフサを、蒸留によって除去した。
【0073】
重要なことには、図5に例証されるように、重質潤滑油基材は、いかなるヘーズをも、予め選ばれた温度以上で形成しないであろう基材を提供するように、製造されることができ、ヘーズ形成傾向が、測定されかつ制御されることができる。
【0074】
従って、先の説明で明らかなものの内でも、上記の目的が、効果的に達成されることが分かるであろう。ある種の変更は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明を実行する際になされてもよいことから、上記の説明に含まれ、かつ付随する図面に示される全ての事象は、例証としてかつ非限定的として解釈されるものである。
【0075】
また、以下の請求は、本明細書に記載される本発明に関する総称的かつ特定の特徴全て、および文言によってその行間で述べられているであろう本発明の範囲に関する記載全てを包含するものであることは、理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー−トロプシュ合成プロセス由来の、重質潤滑油基材として有用な重質炭化水素組成物であって、
少なくとも50wt%超のイソパラフィン分子、
分子の少なくとも75wt%が炭素数C25超を有する分子分布、
全基油の10wt%が、537℃(1,000゜F)超で沸騰すること、
動粘度(100℃)少なくとも8cSt、および
ヘーズ消滅温度20℃(68゜F)以下
によって特徴付けられることを特徴とする重質炭化水素組成物。
【請求項2】
分子の少なくとも50%がC25超の炭素数を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記全基油の50wt%は、537℃(1,000゜F)超で沸騰することを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
動粘度(100℃)少なくとも12cStを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記ヘーズ消滅温度は、15℃(68゜F)以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物および少なくとも一種の添加剤を含むことを特徴とする重質潤滑油組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−507519(P2013−507519A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534221(P2012−534221)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/051284
【国際公開番号】WO2011/046767
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】