説明

潤滑塗料組成物及び内燃機関用取付部品

【課題】作業性に優れているとともに、優れた耐焼付性を発揮できる潤滑塗料組成物及びその潤滑塗料組成物により形成された固体の塗膜を有する内燃機関用取付部品を提供すること。
【解決手段】 固体の塗膜41を形成する固体成分として、ポリカルボシラン骨格が金属元素によって架橋結合された有機ケイ素ポリマーと、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイト、雲母の少なくとも1種からなる固体潤滑剤とを含有するとともに、固体成分の溶剤として、有機溶剤を含有する潤滑塗料組成物を用いて、内燃機関用取付部品である温度センサ1のネジ部材25の表面に固体の塗膜41を形成する。この塗膜41により、高い耐焼付性を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば500〜800℃の高温環境下で用いられる部品等に対して使用される潤滑塗料組成物、及び該潤滑塗料組成物の塗布により形成された固体の塗膜を有する内燃機関用取付部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製部品のネジ部分等の必要箇所には、しばしば焼付防止を目的として、潤滑剤が塗布されている。
この金属製部品としては、被測定ガス中の特定ガス成分を検出するために内燃機関の排気管等に取り付けられるガスセンサの主体金具や、被測定ガス中の温度を検出するために排気管等に取り付けられる温度センサの締付けナット等が挙げられる。
【0003】
このような潤滑剤としては、潤滑基油等に固体潤滑剤を含んだペースト状潤滑剤などが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−180360号公報
【特許文献2】特開2007−169597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した従来技術の場合には、締付けナットのネジ部の表面にペースト状潤滑剤を塗布した後に締付けナットを締め付けると、ネジ締結面からペースト状潤滑剤が押し出されて、ネジ締結面にペースト状潤滑剤が十分に残留しないことがあった。また、オイルベースの潤滑剤の場合、高温になるにつれて流動性が増し、液ダレが発生する可能性があった。その結果、焼き付き防止の効果を十分に発揮できないことがあった。
【0006】
また、流動性のある潤滑剤の場合には、ネジ締結までの取り扱いの際に、潤滑剤が周囲に付着したり、離脱しないようにする必要があり、作業性が悪いという問題もあった。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、作業性に優れているとともに、優れた耐焼付性を発揮できる潤滑塗料組成物及びその潤滑塗料組成物により形成された固体の塗膜を有する内燃機関用取付部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)かかる問題を解決するためになされた本発明は、第1態様として、固体の塗膜形成用の潤滑塗料組成物であって、前記塗膜を形成する固体成分として、ポリカルボシラン骨格が金属元素によって架橋結合された有機ケイ素ポリマーと、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイト、雲母の少なくとも1種からなる固体潤滑剤とを含有するとともに、前記固体成分の溶剤として、有機溶剤を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の潤滑塗料組成物を用いて、焼き付きを防止する部品等に対して、固体の塗膜を形成することにより、例えば500℃以上の高温環境下(特に700〜800℃)においても、十分な焼き付き防止性能を発揮できる。
【0009】
つまり、固体の塗膜を形成する潤滑塗料組成物の固体成分のうち、上述した有機ケイ素ポリマーは、例えば500〜800℃の高温下において、十分な耐熱性を有している。即ち、熱によって、ポリマー自身が分解して揮発/蒸発しにくく、加熱減量を起こしにくい特性を有している。また、上述した各固体潤滑剤は、耐熱性を有しつつ、潤滑性能を発揮できる。
【0010】
すなわち、本発明の潤滑塗料組成物を用いて形成された固体の塗膜は、有機ケイ素ポリマー中に固体潤滑剤が分散されている構成であるので、高温下において、固体の塗膜の劣化や脱落等がなく、焼き付きを防止する箇所を確実に覆うことによって、好適に焼き付きを防止することができる。
【0011】
また、本発明の潤滑塗料組成物によって形成される塗膜は固体であるので、従来のペースト状潤滑剤の様に、例えばネジ部材を締め付けたときや高温時に外部に漏出しにくい。しかも、固体の塗膜は、作業中に周囲に付着することがなく、作業性に優れている。
【0012】
(2)本発明では、第2態様として、請求項1に記載の潤滑塗料組成物であって、前記固体潤滑剤は、前記有機ケイ素ポリマー100重量部に対して、10〜400重量部の範囲内で含有されていることを特徴とする。
【0013】
ここでは、好適な潤滑塗料組成物を例示している。有機ケイ素ポリマー100重量部に対して、固体潤滑剤が10重量部を下回ると、塗膜化した際に、ひび割れが生じ易く、また、形成された固体の塗膜において、その潤滑性能が低下する恐れがある。一方、有機ケイ素ポリマー100重量部に対して、固体潤滑剤が400重量部を上回ると、固体の塗膜において、有機ケイ素ポリマーの割合が低下するので、焼き付き防止を行う部品における結合力、例えばネジ部品のネジ形成部位における結合力(即ち塗膜をネジ形成位置に密着させる結合力)が低下する恐れがある。従って、高い焼き付き防止性能を発揮するには、この組成の範囲が好適である。なお、固体潤滑剤は、有機ケイ素ポリマー100重量部に対して、25〜300重量部の範囲内で含有されていることがより好適である。
【0014】
(3)本発明では、第3態様として、請求項1又は2に記載の潤滑塗料組成物は、ネジ部材のネジ形成部位の表面に塗布され、乾燥又は加熱によって固体の塗膜となる組成物であることを特徴とする。
【0015】
この潤滑塗料組成物を、ネジ部位のネジ形成部位の表面に塗布して、乾燥又は加熱することにより、ネジ形成部位の表面に容易に固体の塗膜を形成することができ、ネジ形成部位の焼き付きを防止することができる。
【0016】
(4)本発明は、第4態様として、内燃機関の排気管に装着される内燃機関用取付部品であって、ネジ形成部位が形成されたネジ部材を有しており、前記ネジ形成部位の表面に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑塗料組成物の固体成分からなる塗膜を備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明の内燃機関用取付部品は、ネジ部材のネジ形成部位の表面に、上述した潤滑塗料組成物の固体成分からなる固体の塗膜を備えている。
従って、この内燃機関用取付部品が、例えば500〜800℃の高温環境に晒されたとしても、内燃機関用取付部品のネジ部材と(ネジ部材が取り付けられる)内燃機関の排気管等との螺合部分における焼き付きを十分に防止することができる。
【0018】
(5)本発明では、第5態様として、請求項4に記載の内燃機関用取付部品であって、該内燃機関用取付部品は、温度によって電気特性が変化する感熱素子と、前記ネジ部材とを備える温度センサであることを特徴とする。
【0019】
ここでは、内燃機関用取付部品を例示している。この感熱素子とネジ部材とを備えた温度センサにおいても、ネジ部材と(ネジ部材が取り付けられる)内燃機関の排気管等との螺合部分における焼き付きを十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の温度センサを軸方向に沿って破断して示す断面図である。
【図2】実施例1の温度センサを排気管に取り付けた状態をその要部を破断して拡大して示す断面図である。
【図3】温度センサのネジ部材とその表面に形成される固体の塗膜を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
a)まず、本発明の潤滑塗料組成物の構成について説明する。
本発明の潤滑塗料組成物は、固体の塗膜(乾性塗膜:ドライフィルム)を形成する固体成分が有機溶剤に溶かされた液状の組成物であり、固体成分として、有機ケイ素ポリマーと固体潤滑剤とが含まれている。
【0022】
このうち、有機ケイ素ポリマーとは、ポリカルボシラン骨格(-(Si-C)n-)の主鎖が、Ti、Zn、Cr、Mo等の金属元素(より、詳細には有機金属化合物)によって架橋結合されたポリマーである。
【0023】
具体的には、有機ケイ素ポリマーとしては、例えば下記化学式(1)で示される様に、Tiの有機金属化合物によって架橋結合された有機ケイ素ポリマーや、下記化学式(2)で示される様に、Znの有機金属化合物によって架橋結合された有機ケイ素ポリマーが挙げられる。なお、以下では、下記化学式(1)で示される有機金属化合物をチラノ樹脂と称することもある。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
これらの有機ケイ素ポリマーは、空気雰囲気下にて1000℃で10時間以上熱処理しても加熱減量は僅かであるため、塗膜の重量減少による収縮、ヒビ割れは起こりにくく、形成された焼付後の塗膜は緻密質なものとなる。
【0027】
従って、前記有機ケイ素ポリマーは、高温下において、固体潤滑剤を分散して確実に保持することができる。詳しくは、この有機ケイ素ポリマーは、例えば500〜800℃の高温下においても劣化しにくく、即ち、ポリマー自身が分解して揮発/蒸発して加熱減量を起こすような劣化が発生しにくく、焼き付きを防止する対象物の表面(例えばネジ部材のネジ形成位置)を確実に覆うことができる。よって、この有機ケイ素ポリマーに分散保持された固体潤滑剤よって、高い焼き付き防止性能を発揮できる。
【0028】
また、他の固体成分である固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイト、雲母が挙げられ、この固体潤滑剤の1種又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0029】
この固体潤滑剤は、上述した様に、有機ケイ素ポリマーに分散保持された状態で、例えばネジ部材のネジ形成位置の表面全体に存在するので、高温下におけるネジ部材等の焼き付きを防止できる。
【0030】
更に、固体成分の溶剤としては、各種の有機溶剤を用いることができる。
例えば、芳香族系炭化水素やケトン系溶剤、エステル系溶剤などを使用することができる。具体的には、例えば、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸n−ブチル、酢酸エチルなどを用いることができる。
【0031】
なお、固体成分と有機溶剤との割合としては、(使用状況等を考慮して)所望の濃度及び粘度となる様に、固体成分100重量部に対して、有機溶剤は、55〜1900重量部を用いることができる。
【0032】
なお、前記固体成分や有機溶剤以外に、例えば湿潤分散剤、レベリング剤、沈降防止剤等を適宜加えてもよい。
b)次に、本発明の潤滑塗料組成物の製造方法の具体例について説明する。
【0033】
例えば、固定成分として、有機ケイ素ポリマー100重量部に対して、固体潤滑剤を10〜400重量部の範囲内で加え、更に、固体成分100重量部に対して、有機溶剤を55〜1900重量部の範囲内で加える。
【0034】
それらを、例えばディゾルバ攪拌機を用いて攪拌する。その後、例えば湿式媒体攪拌ミルを用いて分散させることにより、本発明の固体潤滑塗料組成物を得ることができる。
c)次に、本発明の潤滑塗料組成物の使用方法の具体例について説明する。
【0035】
まず、例えばネジ部材のネジ形成位置(雄ねじや雌ねじが形成されている部分)など、固体の塗膜を形成する対象の部材の脱脂を行う。
次に、塗膜の密着性を向上するために、例えば下地処理を行う。この下地処理としては、リン酸塩処理、シュウ酸塩処理、窒化処理などの化成処理、ショットブラスト等の物理的処理、メッキ等による表面改質処理が挙げられる。
【0036】
次に、下地処理後に、下地処理で使用した材料等の洗浄処理を行う。
次に、本発明の潤滑塗料組成物を、例えばネジ部材等の塗布対象の部材に適用して固体の塗膜を形成する。例えば、スプレー塗布(エアスプレー等)、浸漬処理、刷毛塗り、タンブリング等により、塗布対象の部材の表面に潤滑塗料組成物を塗布する。
【0037】
次に、塗布した塗膜を、常温で乾燥させて硬化させたり、加熱(焼成)して硬化させたりする。例えば、焼成条件としては、例えば250〜300℃で、焼成時間は10〜60分とすることが好ましい。例えば280℃で30分焼成することが好ましい。
【0038】
なお、形成される塗膜の膜厚は、5μm以上の範囲が好ましい。塗膜の厚みが5μmを下回る場合には、耐焼付性が低下する恐れがあるからである。塗膜の膜厚の上限値は、ネジ部材の螺合に支障がなければ特に制限はないが、塗膜化に伴うコスト等を考慮して400μm(好ましくは300μm)以下にすればよい。
【実施例1】
【0039】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
ここでは、本発明例(試料No.1〜18)の潤滑塗料組成物と(本発明の範囲外の)比較例を挙げて説明する。
【0040】
まず、上述した潤滑塗料組成物の製造方法によって、下記表1の試料No.1〜18の組成の潤滑塗料組成物を作製した。なお、表1では、固体成分の組成のみを示すが、有機溶媒としてはキシレンを採用し、固体成分100重量部に対して、900重量部使用した。
【0041】
そして、各試料の潤滑塗料組成物を、試験用の各ネジ部材(図3参照)のネジ形成部位(ネジ部の雄ネジ)の外周表面全体に塗布し、280℃で30分焼き付けて、厚さ10μmの固体の塗膜(図3の灰色部分)を形成した。なお、ネジ部材の雄ネジ部分以外はマスキングし、雄ネジ部分のみに塗膜を形成した。また、比較例では、固体の塗膜を形成せず、ペースト状潤滑剤であるネバーシーズを雄ネジ部分のみに塗布した。
【0042】
なお、試験用のネジ部材としては、SUS430からなり、呼び径がM12のネジ部材(雄ネジ部分)であって、ネジ部(雄ネジ部分の軸方向長さ)の長さ13.5mm、ネジピッチが1.25mmのネジ部材を用いた。
【0043】
そして、塗膜形成後、その外観を目視にて観察した。その結果を、下記表1に記す。
なお、表1の外観の観察において、◎は、ネジ部材を10本評価し、塗膜に全てひび割れが無いことを示し、○は、ネジ部材を10本評価し、塗膜に80%以上ひび割れが無いことを示し、×は、ネジ部材を10本評価し、塗膜にひび割れ無しが80%未満であることを示す。
【0044】
また、ネジ部材に螺合させるネジ孔(雌ねじ)を有するSUS430からなるボス(ナット)を用意し、このボスのネジ孔に、(塗膜を形成した)ネジ部材を螺合させた。なお、ボスのネジ孔の呼び径はM12、ネジピッチは1.25mmである。
【0045】
そして、ネジ部材を締付トルク50N・mで締め付けた後、ネジ部材及びボスを加熱した。具体的には、室温(25℃)から、昇温速度150℃/hで、高温(800℃)に加熱し、その後加熱を停止して放置し、室温に低下させた。
【0046】
その後、ネジ部材をボスから外し、焼付性の評価を行った。その結果を、下記表1に記す。
なお、表1の焼付性の評価において、◎は、ネジ部材を3本評価し、ネジ部の外周に全て損傷が無いこと(即ち全く焼き付きが無いこと)を示し、○は、ネジ部材を3本評価し、ネジ部の外周に1本だけ損傷があることを示し、×は、ネジ部材を3本評価し、全てに損傷があることを示す。
【0047】
【表1】

【0048】
この表1から明かな様に、(固体の塗膜を形成した)本発明の範囲の試料No.1〜18の場合は、塗布後の塗膜に割れが少なく外観が良く、耐焼付性も良好であったが、(固体の塗膜を形成しない)比較例の場合は、耐焼付性が悪く好ましくない。
【0049】
なお、チラノ樹脂に代えて、前記化学式(2)で示される有機ケイ素ポリマー、または、ポリカルボシラン骨格の主鎖を、CrまたはMoの有機金属化合物によって架橋結合したポリマーを使用した場合も同様な効果が得られる。
【実施例2】
【0050】
本実施例では、本発明例の潤滑塗料組成物を塗布して形成された固体の塗膜を有するネジ部材を用いた温度センサの例を挙げて説明する。
ここでは、自動車の内燃機関(エンジン)の排気管に取り付けられて、排気ガスの温度を測定する車載用の温度センサを例に挙げて説明する。
【0051】
a)まず、本実施例の温度センサの構成について説明する。
図1に示すように、本実施例の温度センサ1は、ハウジング3と、ハウジング3内に収納され、温度により変化する電気的特性を電気信号として出力可能な感温素子としてのサーミスタ5と、サーミスタ5からの電気信号をハウジング3外に取り出すための一対のリード線7等を備えている。
【0052】
より詳細には、ハウジング3は、先端側(同図下方)の第1ハウジング9と中間部11と基端側(同図上方)の第2ハウジング13とから構成されている。
第1ハウジング9は、先端が閉じられた円筒状をなし、その先端側には温度により変化する電気的特性を電気信号として一対の電極15に出力するサーミスタ5が配置されている。一対の電極15は、一対の芯線17の一端17aに接続されている。両芯線17は、シース19により被覆(絶縁保持)され、シース19の基端側は第1ハウジング9から突出している。
【0053】
第2ハウジング13は、第1ハウジング9より大径の円筒状をなしている。そして、第2ハウジング13の先端側と第1ハウジング9の基端側とが重ね合わせられて同軸に配置され、筒状部材21の後端にて結合されている。
【0054】
中間部11は、温度が検知される排気ガスの漏れを防止する筒状部材21と、温度センサ1を排気管23(図2参照)に固定するネジ部材25とからなる。なお、このネジ部材25は、締め付けナットに該当するものである。
【0055】
筒状部材21は、第1ハウジング9の基端側に固定され、筒状部材21の後端外周に第2ハウジング13の先端が固定されている。なお、筒状部材21は、径方向に突出する突出部21aを有しており、突出部21aの先端にはテーパ面21bが形成されている。
【0056】
一方、ネジ部材25は、筒状部材21の第2ハウジング13側の外周に、回動可能に配置されている。このネジ部材25は、ボス27(図2参照)に螺合する部材であり、軸中心に中心孔25aを有するとともに、外周面に雄ネジ29aが形成されたネジ部29と、ネジ部29の基端側に形成された六角ナット部31とを有している。
【0057】
また、第1ハウジング9の基端側から突出した一対の芯線17の他端17bは、第2ハウジング13内において、一対のリード線7の一端7aとかしめ端子33によりかしめられている。また、芯線17の他端17bとリード線7の一端7aには、かしめ端子33とともに絶縁チューブ35が被せられている。
【0058】
更に、第2ハウジング13の基端側には、耐熱ゴム製のグロメット31がかしめ固定されている。一対のリード線7はグロメット31を貫通して、第2ハウジング13の基端より突出している。
【0059】
b)次に、温度センサ1を排気管23に取り付ける取付構造について説明する。
図2に温度センサ1の取付構造を示すが、本実施例では、温度センサ1は、車両の排気管23の軸方向に対して垂直に取り付けられ、排気ガスの温度を広範囲にわたって検出するために用いられる。
【0060】
この温度センサ1の取付構造では、排気管23に開けられた貫通孔23aとボス27の中心孔27aとが連通するように、排気管23にボス27が溶接により接合されている。そして、排気管23の貫通孔23aから、温度センサ1の第1ハウジング9の先端側が排気管23の内部に突出している。
【0061】
ボス27は、ネジ部材25が螺合して固定される部材であり、中心孔27aの内周面に雌ネジ37aが形成されたネジ部37と、ネジ部材37よりも排気管23側に位置する接続部39とを備えている。この接続部39には、ネジ部37の最小径よりも小径の挿通孔39aが形成されており、挿通孔39aの内壁には、テーパ面39bが形成されている。
【0062】
なお、筒状部材21はSUS310からなり、ネジ部材25はSUS430からなり、ボス27はSNB16からなる。
そして、この温度センサ1の取付構造においては、ネジ部材25は、筒状部材21や第2ハウジング13に対して固定されておらず、回動可能であり、温度センサ1を排気管23に取り付ける場合には、ネジ部材25を用いて下記の様にして行う。
【0063】
まず、温度センサ1の先端側の第1ハウジング9を、ボス27の中心孔27a及び排気管23の貫通孔23aに通すとともに、(第1ハウジング9と一体の)筒状部材21及び第2ハウジング13の先端側をボス27の中心孔27aに入れ、筒状部材21をボス27の挿通孔39aのテーパ面39bの上端に着座させる。
【0064】
この状態で、ネジ部材25のネジ部29の雄ネジ29aとボス27のネジ部37の雌ネジ37aとを螺合させ、ネジ部材25をボス27にねじ込んで、所定の締付トルクで、ネジ部材25をボス27に固定する。
【0065】
このとき、筒状部材21の突出部21aの上面はネジ部材25の先端面に押圧されるので、温度センサ1自体がボス27(従って排気管23)に固定される。
特に本実施例では、図2及び図3に示す様に、ネジ部材25の雄ネジ29aの外周面の全体を覆う様に、上述した潤滑塗料組成物の固体成分からなる例えば厚さ10μmの固体の塗膜(両図の灰色部分)41が形成されている。
【0066】
この固体の塗膜41は、例えばネジ部材25の雄ネジ29a以外をマスキングし、例えばスプレーにより雄ネジ29aの表面に潤滑塗料組成物を塗布し、その後加熱して乾燥させることにより形成されている。
【0067】
また、この固体の塗膜41は、例えばチラノ樹脂とチラノ樹脂中に均一に分散された固体潤滑剤である二硫化モリブデンとからなる。なお、塗膜41の組成は、例えばチラノ樹脂100重量部に対して150重量部の割合(外配合)である。
【0068】
従って、この固体の塗膜41で覆われているネジ部材25をボス27にネジ込むことにより、固体の塗膜41は、グリース状潤滑剤の様に外部に漏出することなく、ネジ部材25の雄ネジ29aの外周面とボス27の雌ネジ37aの内周面との間に配置されることになる。
【0069】
この固体の塗膜41は、上述の様に例えば500〜800℃の高温に晒されても高い焼き付き防止機能を有するので、排気管23が高温になっても、ネジ部材25とボス27との焼き付きを防止でき、適切なトルク(締付トルク以下の所定のトルク)で、ネジ部材25をボス27から外すこと、即ち、温度センサ1を排気管23から外すことができる。
【0070】
なお、一旦形成された固体の塗膜41は、周囲に付着することがないので、作業性に優れているという利点もある。
以上、本発明の実施例等について説明したが、本発明は、前記実施例等に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0071】
例えば本発明は、温度センサ以外に、各種のセンサ(例えば酸素センサなど)に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1…温度センサ
5…感熱素子
23…排気管
25…ネジ部材
27…ボス
29、37…ネジ部
29a…雄ネジ
37a…雌ネジ
41…塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の塗膜形成用の潤滑塗料組成物であって、
前記塗膜を形成する固体成分として、ポリカルボシラン骨格が金属元素によって架橋結合された有機ケイ素ポリマーと、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、グラファイト、雲母の少なくとも1種からなる固体潤滑剤とを含有するとともに、前記固体成分の溶剤として、有機溶剤を含有することを特徴とする潤滑塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑塗料組成物であって、
前記固体潤滑剤は、前記有機ケイ素ポリマー100重量部に対して、10〜400重量部の範囲内で含有されていることを特徴とする潤滑塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の潤滑塗料組成物は、ネジ部材のネジ形成部位の表面に塗布され、乾燥又は加熱によって固体の塗膜となる組成物であることを特徴とする潤滑塗料組成物。
【請求項4】
内燃機関の排気管に装着される内燃機関用取付部品であって、
ネジ形成部位が形成されたネジ部材を有しており、前記ネジ形成部位の表面に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑塗料組成物の固体成分からなる塗膜を備えていることを特徴とする内燃機関用取付部品。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関用取付部品であって、
該内燃機関用取付部品は、温度によって電気特性が変化する感熱素子と、前記ネジ部材とを備える温度センサであることを特徴とする内燃機関用取付部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−76036(P2013−76036A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218135(P2011−218135)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【出願人】(591213173)住鉱潤滑剤株式会社 (42)
【Fターム(参考)】