説明

潤滑層構造を有する二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤及びその調製方法

本発明は、医薬品の分野、特に二層浸透ポンプ制御放出錠剤調剤及びその調製方法に関する。前記二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤は、従来の錠剤コア、放出制御層、及び薬剤放出孔を含み、ここで1つもしくは複数の潤滑層構造は剤コアと放出制御層との間に設けられている。潤滑層は、二層錠剤コアの質量に基づいて0.5乃至6%の量で存在する。潤滑層は迅速に水和して優れた流動性及び潤滑効果を有する液体ゲルとなり、このため錠剤コアと放出制御層との間に潤滑効果を有する1つもしくは複数の潤滑層が形成され、二層錠剤の薬剤含有層と放出制御層との間の剪断力が低減され、これによって薬剤含有層中の薬剤が推進剤相によってうまく且つ完全に押し出されて、24時間以内にほぼ100%の薬剤放出パーセントに達する。このことにより、従来の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の薬剤含有層によって放出操作の間に生成される死角による不完全な薬剤放出の問題が解決される。この技術により、調製される二層浸透ポンプ制御放出錠剤の優れたバイオアベイラビリティが確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の分野、特に二層浸透ポンプ制御放出錠剤調剤及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浸透圧ポンプ制御放出錠剤は、ゼロ次放出の典型的な制御放出調剤である。1974年にTheeuwesが単室浸透圧ポンプを発明したが、これは、片側に孔が空けられた通常の被覆錠剤の単純な形態であった。このように、浸透圧ポンプは、臨床において使用しうる投与形態となり、かくして、一連の単室浸透圧ポンプ制御放出錠剤調剤が開発された。1980年代から、浸透圧ポンプに関する改良及び開発は止むことがなかった。浸透圧ポンプ中に不溶性の薬剤を調製するため、あるいは優れた水溶性を有するがそれ自体で浸透圧ポンプ中に浸透圧を作り出すことのできない薬剤を調製するために、単室二層浸透圧ポンプが開発され、これによって浸透圧ポンプ制御放出錠剤中に不溶性の薬剤を調製するという技術的課題が解決された。しかしながら、不完全な薬剤放出という問題が、二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤技術の適用中にはしばしば起こる。中国薬局方では、持続性放出調剤及び制御放出調剤についての基本要件に関して、持続性放出調剤及び制御放出調剤の放出プラットフォームは90%超の放出量に達するべきと規定しているが、現在は、多くの二層浸透圧ポンプ制御放出調剤はこの要求に見合わない。その一方で、薬剤の不完全な放出は、薬剤の治療効果及びバイオアベイラビリティに深刻な影響を及ぼす。
【0003】
薬剤の不完全な放出の理由は以下の通りである。ポリエチレンオキシド(PEO)は、二層浸透圧ポンプ制御錠剤の調製のための不可欠な材料であり、これはひとたび水と接触すれば膨潤し、更に、水和されて非ニュートン性流体を生成して、推進剤層によって押され、浸透圧ポンプ制御放出錠剤の薬剤放出孔から薬剤と共に排出されて、薬剤が一定速度で放出されることになる。ポリエチレンオキシドを含む薬剤層が、水和された後に非ニュートン性流体を生成するため、非ニュートン性流体の基本的特性から、浸透圧ポンプ制御放出錠剤中の放出制御層と薬剤含有層との側壁によって生成する非ニュートン性流体間に高剪断力が存在することが分かり、また、半透明フィルム側壁に隣接する薬剤層は、推進剤層によって押された時点でおよそ0の移動速度を有し、そのため薬剤放出の死角を生じて、そのため薬剤のこの部分が推進剤層によって完全には押し出すことができなくなり、薬剤が完全には放出されず、薬剤のバイオアベイラビリティは比較的に低くなり、このことは薬剤の治療効果に深刻な影響を及ぼす。前記二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の欠点を取り除くために、潤滑層構造を有する二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤が開発される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の最初の目的は、完全に薬剤を放出することのできる、二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤を調製することであって、これは従来の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤と比較して改善された放出効果を有する。本発明の別の目的は、前記二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決策を採用する。
【0006】
二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤であって、薬剤を含む二層錠剤コア、前記錠剤コア周囲の1つもしくは複数の放出制御層、及び放出制御層上の1つもしくは複数の薬剤放出孔を含み、ここで、1つもしくは複数の潤滑層構造が錠剤コアと放出制御層との間に設けられている、二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【0007】
本発明による薬剤を含む二層錠剤コア、放出制御層、及び薬剤放出孔は、従来使用されているもの、例えば、1つもしくは複数の薬剤含有層及び1つもしくは複数の推進剤層からなる薬剤含有二層錠剤コア、及び放出制御層の薬剤含有層側に設けた1つもしくは複数の薬剤放出孔であって良い。
【0008】
本発明による薬剤含有層及び推進剤層は、従来使用されているものであってよい。薬剤含有層及び推進剤層の調製のために、浸透圧ポンプ制御放出錠剤の分野で使用される通常の材料を使用してよい。一般的に知られるように、推進剤層の材料には、ひとたび水と接触すると膨潤して、浸透圧ポンプ制御放出錠剤の薬剤放出孔から薬剤層を押し出すものが含まれる。一実施態様では、推進剤層の材料には、ポリエチレンオキシド(PEO)が含まれる。別の実施態様では、推進剤層の材料には、ポリエチレンオキシドに加えて、セルロース、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが更に含まれる。一実施態様では、薬剤含有層の材料には、ポリビドンが含まれる。別の実施態様では、薬剤含有層の材料には、ポリビドンに加えて、セルロース、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが更に含まれる。
【0009】
一実施態様では、高度置換ヒドロキシプロピルセルロースは、2.4乃至120mPa・S、好ましくは12乃至80mPa・Sの粘度を有する。
【0010】
一実施態様では、低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロールは、5乃至100mPa・S、好ましくは5乃至50mPa・Sの粘度を有する。
【0011】
一実施態様では、薬剤含有層は、薬剤及びポリビドンを含む。別の実施態様では、薬剤含有層は、薬剤、ポリビドン、及びセルロース、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0012】
一実施態様では、推進剤層は、ポリエチレンオキシドを含む。別の実施態様では、推進剤相は、ポリエチレンオキシド及びセルロース、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0013】
本発明の一つの好ましい技術的解決策では、潤滑層の材料は、高度置換ヒドロキシプロピルセルロースまたは低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されるが、これは二層錠剤コアの質量に基づいて0.5乃至6%の量で存在する。放出制御層の主な材料は、酢酸セルロースであるが、これは二層錠剤コアの質量に基づいて18乃至24%の量で存在する。薬剤放出孔は、0.4乃至1.2mmの直径を有する。
【0014】
本発明では、潤滑層は錠剤コアと放出制御層との間にある。患者が浸透圧ポンプ制御放出錠剤を摂った後、消化管中の水が放出制御層に浸透して潤滑層と接触するに至るが、この潤滑層は迅速に水和して優れた流動性及び潤滑効果を有する液体ゲルとなり、このため錠剤コアと放出制御層との間に潤滑効果を有する1つもしくは複数の潤滑層が形成され、二層錠剤の薬剤含有層と放出制御層との間の剪断力が低減され、これによって薬剤含有層中の薬剤が推進剤相によってうまく且つ完全に押し出されて、24時間以内にほぼ100%の薬剤放出パーセントに達する。
【0015】
本発明の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤を調製する方法には、薬剤及び助剤から薬剤含有二層錠剤コアを調製する工程、まず前記錠剤コアを1つもしくは複数の潤滑層で被覆する工程、その後潤滑層を1つもしくは複数の放出制御層で被覆する工程、更にその後放出制御層の薬剤含有層側に孔を空けて二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤を形成する工程が含まれる。通常のフィルムコートを、実際上の製品ニーズに関して放出制御層の外部表面上に任意に適用してよい。潤滑層、放出制御層、及びフィルムコートは、全て高性能被覆機によって調製することができる。
【0016】
二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤を調製するための上述の方法は、以下の特定の工程を含む。
(1) 薬剤を含有する二層錠剤コアを調製する工程:
薬剤含有層の材料及び推進剤層の材料を二層錠剤機によって圧縮して二層錠剤コアを製造する。
(2) 潤滑層の被覆溶液を調製する工程:
潤滑層の材料の適切な量を、水またはエタノールまたは水-エタノールの溶液にあらゆる割合で添加し、含浸させ、さらに撹拌して溶解させる。潤滑層の材料は、高度置換ヒドロキシプロピルセルロースまたは低粘度ヒドロキシピロピルメチルセルロースから選択される。ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが水及びエタノールのいずれにも可溶であることから、これらは水-エタノールの溶液にあらゆる割合で溶解可能である。潤滑層の被覆溶液の濃度は、2乃至20%に制御される。より高い水含量を有する溶媒は、被覆の間の被覆温度がより高い一方で、より高いエタノール顔料を有する溶液は被覆温度がより低く、安全性の問題を伴ってコストが高い。然るに、高温で不安定な薬剤は、より高い水含量を有する被覆溶液で被覆することができず、より高いエタノール含量を有する被覆溶液で、さらには溶媒としてエタノールを含有する被覆溶液でさえ被覆することができる。温度に感受性でない薬剤については、より高い水含量をもつ溶媒、さらには完全に水である溶媒系さえも使用することができる。
(3) 潤滑層を被覆する工程:
二層錠剤を高性能被覆機中に配置し、潤滑層の被覆溶液で被覆するが、その使用量(すなわち、二層錠剤コアの質量に対する潤滑層の質量のパーセント)は、0.5乃至6%に制御する。被覆機の空気取り込み温度は、40乃至65℃に制御する。
(4) 放出制御層の被覆溶液を調製する工程:
酢酸セルロースを、アセトンに添加し、含浸させ、さらに撹拌して溶解させて、1乃至6%(w/w)の酢酸セルロースを含む溶液を調製し、ここに孔形成剤及び可塑剤を添加して、均一に混合する。
(5) 放出制御層を被覆する工程:
潤滑層で被覆された二層錠剤を、高性能被覆機中に配置し、更に放出制御層被覆溶液で、その使用量(すなわち、二層錠剤コアの質量に対する放出制御層の質量のパーセント)が18乃至24%になるまで被覆する。被覆機の空気取り込み温度は、15乃至35℃に制御する。
(6) 放出制御層をエージングさせる工程:
放出制御層で被覆された二層錠剤を乾燥装置中に配置して乾燥させる。乾燥温度を35乃至60℃に制御し、前記乾燥は残留アセトンが0.05%未満になるまで停止させない。
(7) 1つもしくは複数の孔を空ける工程:
エージングさせた制御放出錠剤の薬剤含有層側にレーザードリルまたは機械ドリルによって孔を空ける。孔の直径は0.4乃至1.2mmに制御され、1つもしくは複数の孔を空けて良い。
(8) フィルムコートを被覆する工程
フィルムコートを、従来の被覆技術によって、孔を空けた二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の外部表面上に任意に適用する。
【0017】
本発明による二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤は、従来の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤と比較すると、1つもしくは複数の潤滑層を更に含む。前記潤滑層は、容易に水和して、水和した後に潤滑効果を有しするゲルフィルムを形成し、然るに優れた潤滑効果を有する。推進剤層が水を吸収して膨潤し、薬剤層を押し上げる際には、潤滑層の潤滑効果のおかげでいかなる死角も作り出すことなく薬剤層全体が移動し、最後には薬剤層が完全に押し出されて薬剤が完全に放出される。潤滑層は、高度置換ヒドロキシプロピルセルロースまたは低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる。従来の被覆方法は、二層錠剤コア全体を被覆することによる潤滑層の調製のために有用である。その工程は単純であり、操作は容易であるが、放出制御層の被覆操作にいかなる影響もなく、薬剤放出効果は著しく改善される。換言すれば、大問題がこのうえなく簡便な方法によって解決される。
【0018】
好ましい一実施態様では、本発明による二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤は、ニフェジピンの二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤であって、ここで二層錠剤コアに含まれる薬剤はニフェジピンである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明による二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の構造表示であり、ここでは潤滑層構造を有し、ここで参照番号1は薬剤層を表わし、参照番号2は推進剤層を表わし、参照番号3は潤滑層を表わし、参照番号4は放出制御層を表わし、さらに参照番号5は薬剤放出孔を表わす。
【図2】図2は、実施例1の放出効果を示すグラフである。
【図3】図3は、放出の際の潤滑層の量の効果を示す。
【図4】図4は、放出の際の放出制御膜の使用量の効果を示す。
【図5】図5は、放出の際の潤滑層中の溶媒の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、以下の実施例によって詳説される。これらの実施例が本発明の詳説のためにのみ使用され、本発明の範囲を制限するものでないことは理解されるべきである。
【実施例】
【0021】
(実施例1:潤滑層構造を有するニフェジピンの浸透圧ポンプ制御放出錠剤)
潤滑層構造を有するニフェジピンの浸透圧ポンプ制御放出錠剤を以下の工程によって調製した。
1. ニフェジピン原料の粉砕:
ニフェジピン原料を粉砕して、10μm未満の粒径を有する粉砕原料薬剤を得た。
2. ニフェジピン固形微細粉末を含む材料の調製:
ニフェジピン:ポリビドンK30:水を6:12:80(w/w)で混合し、高速分散機で安定且つ均一な水性分散懸濁液を生成させた。懸濁液を噴霧乾燥させてニフェジピン固形微細粉末を含む溶液を調製し、これをその後の使用のために40℃乃至50℃の温度で乾燥させた。
【0022】
3. 薬剤含有層の材料の粒状化:
薬剤含有層の処方は以下の通りである。
【表1】

1) ニフェジピン-ポリビドン固形微細粉末の溶液、ポリエチレンオキシド、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを薬剤含有層の処方の材料から取り、乾式粒状化した。
2) 混合:得られた粒子を、その後の使用のために均一に混合されるまで、シリカゲル微細粉末及びステアリン酸マグネシウムと混合した。
4. 推進剤層の材料の混合:
推進剤層の処方は以下の通りである。
【表2】

ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ナトリウム、弁柄、及びステアリン酸マグネシウムを、その後の使用のために均一に混合されるまで、合わせて混合した。
【0023】
5. 二層錠剤の圧縮
均一に混合した、薬剤含有層粒子及び推進剤層材料を、8.5mmの浅型凹状圧縮によって二層錠剤に加工して、その後の使用のための錠剤コアを得た。
6. 潤滑層被覆溶液の調製:
潤滑層の処方は以下の通りである。
【表3】

5gのヒドロキシプロピルセルロースを95gのエタノールに加えて攪拌し、次の使用のために溶解させた。
【0024】
7. 潤滑層の被覆
圧縮した二層錠剤を、高性能被覆機により潤滑層で被覆した。錠剤床の温度は被覆操作の間45℃±2℃に制御し、潤滑層の使用量は1%であった。
8. 放出制御膜被覆溶液の調製:
放出制御層の処方は以下の通りである。
【表4】

酢酸セルロース、ポリエチレングリコール1500、及びジブチルセバケートを順にアセトンに加え、攪拌して分散させた。固形物が完全に膨潤した後、その後の使用のためにこれらが溶解するまで攪拌を続けた。
【0025】
9. 放出制御層の被覆:
保護コートで被覆された錠剤を、高性能被覆機により放出制御膜で被覆した。被覆操作は、材料床の加熱を要さず、コートの使用量は二層錠剤コアに対して21%(w/w)に制御された。
10.放出制御層のエージング:
放出制御層で被覆された錠剤をオーブンに入れ、16時間に亘って40℃乃至45℃にてエージングさせた。
11.レーザー孔空け:
エージングさせた錠剤を取り出し、薬剤含有層の中央でレーザーによって孔を空けて、700μmの直径を有する薬剤放出孔を得た。
得られた潤滑層構造を有するニフェジピンの浸透圧ポンプ制御放出錠剤は、図1に示される構造を有しており、ここで薬剤含有層1及び推進剤層2は二層錠剤コアを形成し、潤滑層3及び放出制御層4は二層錠剤コア上に順に存在し、薬剤放出孔5は制御放出錠剤の薬剤含有層側に存在する。
【0026】
実施例1の放出効果:
放出効果を、溶解試験を測定するための第二の方法における装置で、放出パーセントを測定するために中国薬局方に記載された第一の方法によって測定した。放出媒質は、1%のラウリル硫酸ナトリウムを含む600mlのリン酸-クエン酸緩衝溶液(pH=6.8)である。回転速度は、100回転/分である。放出パーセントを測定するために、以下のクロマトグラフィー条件下でHPLC法を使用した:固定相はC18であり、移動相はアセトニトリル/メタノール/H2O(20:30:50)であった。測定した放出結果は、24時間以内に90%を超える放出パーセントであり、これは中国薬局方における持続性放出調剤及び制御放出調剤についての一般的な規定に適合している。放出グラフは、図2に示される通りである。
【表5】

【0027】
(実施例2:放出に対する潤滑層の量の効果)
ニフェジピンの浸透圧ポンプ制御放出錠剤を、実施例1にしたがい、同様の材料の同量から同様の工程によって調製した。相違点は、潤滑層の使用量がそれぞれ0.5%及び6%であったことである。放出に対する潤滑層の量の効果を評価した。放出結果は、中国薬局方における持続性放出調剤及び制御放出調剤についての一般的な規定に適合しており、24時間以内に90%を超える放出パーセントであった。放出グラフは、図3に示される通りである。
【表6】

結論:潤滑層は、潤滑層の使用料が0.5%乃至6%である場合に、その潤滑剤としての役割を有効に果たすことができた。
【0028】
(実施例3:放出に対する放出制御膜の使用量の効果)
ニフェジピンの浸透圧ポンプ制御放出錠剤を、実施例1にしたがい、同様の材料の同量から同様の工程によって調製した。相違点は、潤滑層の使用量がそれぞれ18%及び24%であったことである。放出に対する潤滑層の量の効果を評価した。放出結果は、中国薬局方における持続性放出調剤及び制御放出調剤についての一般的な規定に適合しており、24時間以内に90%を超える放出パーセントであった。放出グラフは、図4に示される通りである。
【表7】

結論:試料は、放出制御膜コートの使用量が18%乃至24%である場合に、優れた放出パーセントを示し、使用量が24%である場合には24時間までの放出パーセントが90%を超えることができ、これは中国薬局方における持続性放出調剤及び制御放出調剤についての一般的な規定に適合している。
【0029】
(実施例4:放出に対する潤滑層の溶媒の効果)
二層錠剤を、実施例1に記載の方法によって調製し、二つの異なる溶媒を有する潤滑層被覆溶液を、以下の処方に従って製剤化した。
潤滑層1の処方:
【表8】

潤滑層2の処方:
【表9】

製剤化方法:5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを75gのエタノールに加えて攪拌して、その後の使用のために溶解させた。
【0030】
潤滑層の被覆:圧縮二層錠剤を、高性能被覆機に入れ、潤滑層1及び潤滑層2でそれぞれ被覆した。錠剤床での温度を被覆操作の間は45±2℃に制御し、潤滑層の使用量は約2%であった。
【0031】
実施例1に記載の調製方法に従って、その後の工程を実施した。放出制御層の使用量は、それぞれ21.3%及び22.1%であった。放出パーセントは、実施例1に記載の方法にしたがって測定した。二つの異なる潤滑層溶媒から調製されるニフェジピンの浸透圧ポンプ制御放出錠剤の放出結果は、いずれも、中国薬局方における持続性放出調剤及び制御放出調剤についての一般的な規定に適合しており、これは24時間以内に90%を超える放出パーセントであった。測定結果は以下に示される通りである。放出グラフは図5に示される通りである。
【表10】

【0032】
結論:安定した放出を伴う浸透圧ポンプ制御放出錠剤は、潤滑層被覆溶液の溶媒として使用される水及びエタノールのいずれからも調製することができ、二つの錠剤の放出パーセントには著しい相違はなかった。
【符号の説明】
【0033】
1 ・・・薬剤含有層
2 ・・・推進剤層
3 ・・・潤滑層
4 ・・・放出制御層
5 ・・・薬剤放出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を含む二層錠剤コア、前記錠剤コア周囲の1つもしくは複数の放出制御層、及び放出制御層上の1つもしくは複数の薬剤放出孔を含む、二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤であって、1つもしくは複数の潤滑層構造が錠剤コアと放出制御層との間に設けられていることを特徴とする、二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項2】
前記潤滑層の材料が、高度置換ヒドロキシプロピルセルロースまたは低粘土ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項3】
前記高度置換ヒドロキシプロピルセルロースが、2.4乃至120mPa・S、好ましくは12乃至80mPa・Sの粘度を有することを特徴とする、請求項2に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項4】
低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロールが、5乃至100mPa・S、好ましくは5乃至50mPa・Sの粘度を有することを特徴とする、請求項2に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項5】
前記薬剤含有二層錠剤コアが、1つもしくは複数の薬剤含有層及び1つもしくは複数の推進剤層からなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項6】
前記潤滑層が、二層錠剤コアの質量に基づいて0.5乃至6%の量で存在することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項7】
前記放出制御層が、二層錠剤コアの質量に基づいて18乃至24%の量で存在することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項8】
放出制御層が、酢酸セルロース製であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項9】
その薬剤放出孔が、0.4乃至1.2mmの直径を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項10】
ニフェジピンの二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤であり、二層錠剤コアに含まれる薬剤がニフェジピンであることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤。
【請求項11】
薬剤及び助剤から薬剤含有二層錠剤コアを調製する工程、まず前記錠剤コアを1つもしくは複数の潤滑層で被覆する工程、その後潤滑層を1つもしくは複数の放出制御層で被覆する工程、更にその後放出制御層の薬剤含有層側に孔を空けて二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤を形成する工程を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の調製方法。
【請求項12】
以下の工程:
(1)薬剤含有二層錠剤コアを調製する工程であって、ここで、薬剤含有層の材料と推進剤層の材料とが二層錠剤機によって圧縮されて、二層錠剤コアが調製される工程;
(2)潤滑層の被覆溶液を調製する工程であって、ここで、潤滑層の材料の適切な量が、水またはエタノールまたは水-エタノールの溶液にあらゆる割合で添加され、含浸され、さらに撹拌されて溶解し、且つ、潤滑層の材料が、高度置換ヒドロキシプロピルセルロースまたは低粘度ヒドロキシピロピルメチルセルロースから選択される工程;
(3)潤滑層を被覆する工程であって、ここで、二層錠剤が高性能被覆機中に配置され、更に潤滑層被覆溶液で被覆される工程;
(4)放出制御層のための被覆溶液を調製する工程であって、ここで、酢酸セルロースが、アセトンに添加され、含浸され、さらに撹拌されて溶解して、1乃至6%(w/w)の酢酸セルロースを含む溶液が調製され、この溶液に孔形成剤及び可塑剤が添加され、さらに均一に混合される工程;
(5)放出制御層を被覆する工程であって、ここで、潤滑層で被覆された二層錠剤が、高性能被覆機中に配置され、更に放出制御層被覆溶液で被覆される工程;
(6)放出制御層をエージングさせる工程であって、ここで、放出制御層で被覆された二層錠剤が乾燥装置中に配置されて乾燥され、乾燥温度が35乃至60℃に制御され、且つ前記乾燥を残留アセトンが0.05%未満になるまで停止させない工程;
(7)1つもしくは複数の孔を空ける工程であって、ここで、エージングさせた制御放出錠剤の放出制御層の薬剤含有層側に孔を空ける工程;
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の調製方法。
【請求項13】
(8)フィルムコートを被覆する工程を含み、ここで、フィルムコートが、従来の被覆技術によって、孔を空けた二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の外部表面上に適用されることを特徴とする、請求項12に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の調製方法。
【請求項14】
ニフェジピンの二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤であり、二層錠剤コアに含まれる薬剤がニフェジピンであることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の二層浸透圧ポンプ制御放出錠剤の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−512187(P2012−512187A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541060(P2011−541060)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001473
【国際公開番号】WO2010/069141
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511145694)北京科信必成医▲葯▼科技▲発▼展有限公司 (1)
【Fターム(参考)】