説明

潤滑油組成物及びその製造方法

【解決手段】鉱油及び/又は合成油を基油とする潤滑油組成物であって、パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを、消泡有効成分として組成物全量を基準として0.01〜50ppm含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【効果】本発明の潤滑油組成物は、初期及び経時にわたって優れた消泡性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では自動車を始め、産業用の各種機械類は、小型で効率の高い機械となってきているが、それにつれて、機械類に使用される潤滑油の使用環境が厳しくなっている。例えば、機械類が小型化したために潤滑油のタンクも小型になり、油量が少なくなった結果、オイルの受けるストレスは大きくなり、劣化速度が速くなって、潤滑性能ばかりでなく消泡性能が早期に失われるようになってきた。具体的には、オイルタンクからの油面上昇による泡の吹き出し、あるいは高圧ポンプにおける空気巻き込みによるキャビテーションによって、不快な異常音などが発生する。特に、自動車の場合は変速機から発生する泡が原因となって、潤滑油がエンジン室内に噴出することがあり、火災の発生の危険が生じる。
【0003】
また、自動車の高品質化に伴って、静音化は重要な位置付けになってきており、上記の如く変速機から不快な異常音が発生すると自動車そのものの商品価値が下がるばかりでなく、泡が潤滑部分に巻き込まれて焼き付き、摩耗を起こすこともあるため、この点からも長期に消泡性を維持することが潤滑油に求められるようになってきている。
【0004】
潤滑油の消泡剤として、ポリジメチルシロキサンを用いることは以前から提案されており、25℃における粘度が10,000mm2/s以上であるような高粘度のポリジメチルシロキサンが主に用いられている。しかしながら、このポリジメチルシロキサンはその製造方法に由来し、広い分子量分布を有している。それ故に、低分子領域の成分は基油に溶解して発泡成分として働くことがあり、また、高分子領域の成分は潤滑油中の塵芥などを取り除くためのフィルターを通る際に捕捉されてしまったり、基油に対する溶解度が低すぎるために経時で析出、沈降してしまったりするため、いずれも性能低下の原因となるおそれがあった。
【0005】
また、ポリジメチルシロキサンの消泡性能を向上する目的で、パーフルオロアルキル基などで変性されたポリシロキサンを含むフッ素化ポリシロキサンを用いたり、パーフルオロポリエーテルオイルを消泡成分として添加したりする方法も提案されているが、いずれも基油に対する分散安定性に乏しいため、経時で析出、沈降してしまうおそれがある。加えて、前述のポリジメチルシロキサンの場合と同様の理由で、広い分子量分布を有するため、経時で性能が低下する場合があった。
【0006】
そのため、消泡性能の経時変化が少なく、かつ、容易に製造し得る潤滑剤の開発が求められている。
なお、本発明に関連する従来技術として、下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−074933号公報
【特許文献2】特開2004−331933号公報
【特許文献3】特開2010−116493号公報
【特許文献4】特許第4220599号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「消泡剤の最新応用技術」頁179〜190、1991年刊行(シーエムシー)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、初期から優れた消泡力を有すると共に経時にわたってもその優れた消泡能力を維持する潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、これらの開発要求に応えるべく鋭意検討した結果、パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマー(以下、単に、ブロックコポリマーと記す場合がある。)を灯油、軽油又はその他の有機溶剤で希釈・分散し、好ましくは、該ブロックコポリマーの平均粒子径を0.1μm以下にしたのち、鉱油及び/又は合成油の基油に添加することによって容易に製造し得る潤滑剤が、初期から優れた消泡性能を示し、その性能の経時変化が極めて少ないことを見出した。
【0011】
従って、本発明は下記の潤滑油組成物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
鉱油及び/又は合成油を基油とする潤滑油組成物であって、パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを、消泡有効成分として組成物全量を基準として0.01〜50ppm含有することを特徴とする潤滑油組成物。
請求項2:
パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーの平均粒子径が0.1μm以下であること特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
請求項3:
基油が、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ2又はグループ3に分類されるものである請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
請求項4:
パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを灯油、軽油又はその他の有機溶剤で希釈・分散して、該ブロックコポリマーの平均粒子径を0.1μm以下にしたのち、鉱油及び/又は合成油の基油に消泡有効成分として組成物全量を基準として0.01〜50ppm含有するように添加することを特徴とする潤滑油組成物の製造方法。
請求項5:
基油が、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ2又はグループ3に分類されるものである請求項4に記載の潤滑油組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の潤滑油組成物は、初期及び経時にわたって優れた消泡性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の潤滑油組成物における基油には、通常の潤滑油に使用される鉱油、合成油、これらの混合物を使用することができ、特に、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4などに属する基油を、単独又は混合物として使用することができる。
【0014】
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。
【0015】
粘度指数は80〜120、好ましくは95〜110がよい。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm2/s、より好ましくは8〜220mm2/sである。また全硫黄分は700ppm(質量ppm、以下、同じ)未満、好ましくは500ppm未満がよい。全窒素分も50ppm未満、好ましくは25ppm未満がよい。更にアニリン点は80〜150℃、好ましくは90〜120℃のものを使用するのがよい。
【0016】
なお、基油の粘度指数、動粘度は、通常、オストワルド型粘度計等により測定することができる(以下、同じ)。
【0017】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全硫黄分が10ppm未満、アロマ分が5質量%以下であり、本発明において好適に用いることができる。
【0018】
これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は90〜125、好ましくは100〜120がよい。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm2/s、より好ましくは8〜220mm2/sである。また全硫黄分は700ppm未満、好ましくは500ppm未満、更に好ましくは10ppm未満がよい。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満がよい。更にアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するのがよい。
【0019】
グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油があり、これらも本発明において好適に用いることができる。
【0020】
これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は95〜145、好ましくは100〜140がよい。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm2/s、より好ましくは8〜220mm2/sである。また全硫黄分は0〜100ppm、好ましくは10ppm未満がよい。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満がよい。更にアニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するのがよい。
【0021】
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油などが挙げられる。
【0022】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物、又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特にポリα−オレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。
【0023】
これら合成基油の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm2/s、より好ましくは8〜220mm2/sである。
【0024】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいことから、本発明の基油として好適に用いることができ、これはグループ3基油である。
【0025】
GTL基油の粘度性状は特に制限されないが、通例、粘度指数は130〜180、より好ましくは140〜175である。また40℃における動粘度は、2〜680mm2/s、より好ましくは5〜120mm2/sである。また、通例、全硫黄分は10ppm未満、全窒素分は1ppm未満である。そのようなGTL基油商品の一例として、SHELL XHVI(登録商標)がある。
【0026】
上記基油は、その粘度が一般に低い方が泡の排液速度が大きくなるため好ましいと言えるが、本発明においては上記したように消泡剤が配合されるので、この点に関する基油の影響は基本的に小さいと考えることができる。その中で、通常は100℃における動粘度が1〜50mm2/s、特に2〜15mm2/sの範囲にあるものが好適である。
【0027】
この基油の芳香族成分の割合を示す%CAは、酸化安定性の点から20以下であるものが好ましく、更に10以下であるものが好ましい。また、低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、−10℃以下であるのが好ましく、特に−15℃以下であるものが好ましい。そして、粘度指数は高温時の粘度を高く保つ上で100以上が好ましい。
【0028】
本発明の潤滑油組成物を構成する消泡剤のパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーの性状は、25℃で液状、ペースト状あるいはグリース状であり、基油やその他の潤滑油用添加剤の構成によって、好ましい性状のものを選択することができる。
【0029】
このパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーの分子構造は、主鎖中にパーフルオロポリエーテルブロックとポリシロキサンブロックとをそれぞれ1個又は2個以上含有してなる、例えばA−B型、A−B−A型等の直鎖状のブロックコポリマー(ここで、Aブロック、Bブロックは、パーフルオロポリエーテルブロック又はポリシロキサンブロックのいずれであってもよい)などが好適に使用される。また、該ブロックコポリマーは1種単独、あるいは、性状、粘度、分子構造等の異なる2種以上のポリマーを使用することも可能である。
【0030】
また、該パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量は、2,000〜20,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは5,000〜10,000の範囲である。この範囲より小さいと潤滑油に対する溶解性が大きいため、逆に発泡剤として作用してしまうおそれがあり、また、この範囲より大きいと潤滑油に対する溶解性が小さすぎるため、沈降・分離の原因となるおそれがあるため、好ましくない。
【0031】
なお、このパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量は、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によるポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。
【0032】
更に、該パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーのフッ素含有率は、35.0〜70.0質量%であることが好ましく、特に好ましくは45.0〜65.0質量%である。この範囲より少ないと潤滑油に対する溶解性が大きいため、逆に発泡剤として作用してしまうおそれがあり、また、この範囲より多いと潤滑油に対する溶解性が小さすぎるため、沈降・分離の原因となるおそれがある。このようなパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーとしては市販品を使用することができ、例えば信越化学工業(株)製のX−71−1410NS、X−71−1414NSなどが挙げられる。
【0033】
該ブロックコポリマーの使用量については、基油に、組成物全量(質量)を基準として、約0.01〜50ppm(質量ppm、以下、同じ)の割合で配合される。0.01ppm未満では消泡性の効果が得られない場合があり、50ppmを超えると潤滑油組成物が濁ったり、逆に消泡効果が出なかったりする場合がある。より好ましくは約0.1〜20ppmの範囲である。
【0034】
また、該ブロックコポリマーの他に、消泡性、放気性などの性能向上を目的として、他の消泡剤を併用することもできる。例えばジメチルポリシロキサンやパーフルオロアルキル基変性オルガノポリシロキサンのようなオルガノポリシロキサン、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリシレート、o−ヒドロキシベンジルアルコール、アルミニウムステアレート、オレイン酸カリウム、N−ジアルキル−アリルアミンニトロアミノアルカノール、イソアミルオクチルホスフェートの芳香族アミン塩、アルキルアルキレンジホスフェート、チオエーテルの金属誘導体、ジスルフィドの金属誘導体、脂肪族炭化水素のフッ素化合物、トリエチルシラン、ジクロロシラン、アルキルフェニルポリエチレングリコールエーテルスルフィド、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0035】
本発明の潤滑油組成物は、上記したように基油にパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを配合することにより得られるが、更に潤滑油の用途に応じて、その特性向上のために、任意成分として、通常使用される金属系清浄剤、無灰系分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤などの公知の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0036】
これらの添加剤を任意成分として配合する場合には、その配合量は、全配合量(任意成分の合計)を組成物全量基準で、通常、約0.05〜25質量%程度の範囲にすることが好ましい。
【0037】
該ブロックコポリマーを基油に配合する場合、予め溶剤に分散させてから配合するようにすることが好ましい。このブロックコポリマーは、上記溶剤にその必要量を加えて、ホモジナイザー等の撹拌機によって8,000〜24,000回転/分の高速回転で1〜15分撹拌する。好ましくは15,000〜20,000回転/分で5〜10分撹拌するようにする。この範囲より回転数を遅く、及び/又は時間を短くすると、分散が十分に行われず、また、この範囲より回転数を速く、及び/又は時間を長くすると、回転による剪断熱によって分散液の温度が上昇し、分散したポリマー粒子が再凝集するおそれがあるため、好ましない。
【0038】
こうした撹拌によって、溶剤中のブロックコポリマーは細粒化されて粒子サイズが小さくなり、該ブロックコポリマーの平均粒子径を0.1μm以下(通常、0.005〜0.1μm、好適には0.01〜0.05μm程度)にすることができる。この平均粒子径を測定する方法としては、PIDS(Polarization Intensity Differential Scattering Technology:偏光散乱強度法)やDLS(Dynamic Light Scattering:動的光散乱法)を利用した測定器で測定する方法がある。
【0039】
上記分散用の溶剤は、低粘度で、基油に溶解し、かつ加温後は容易に蒸発して基油中に残らないようなものがよい。こうした溶剤としては、例えば、JIS K 2203に規定される灯油、或いはJIS K 2204に規定される軽油のように、引火点が40℃以上で、取り扱いがガソリンと比べて安全なもので、また、粘度が低く、上記ホモジナイザーなどの撹拌機によって容易に撹拌することができるようなものがよい。
【0040】
そして、この溶媒は、鉱油あるいは合成油の基油に容易に溶解することができるものであり、更に後記するように、該ブロックコポリマーを分散させた溶媒を基油に添加して撹拌し、消泡剤を基油中に分散させながら約60℃前後まで加温した場合に、上記溶媒が容易に蒸発して系外に大半が離散し、潤滑油組成物中に残存しないようなものであることが望ましい。この溶媒が残っていると、潤滑油組成物の引火点を下げたり、動粘度を低下させて潤滑性能や酸化安定性を低下させたりするおそれがある。
【0041】
ここで使用される溶剤は、上記の灯油や軽油に限定されるものではなく、その他の石油系溶剤やエステルなどの有機溶剤で、上記の要求を満足するものであれば適宜使用することができる。更に、動粘度低下分を考慮して、配合することが可能であればPAO(ポリα−オレフィン)などの合成油も使用することができる。
【0042】
上記溶媒中に細かく砕いて分散させたブロックコポリマーは、上記した基油中に加えて、消泡剤が基油中全体に均一状態に分散するように混合、撹拌する。上記ブロックコポリマーの添加量は、0.01〜50ppmとなるように基油に添加する。
【0043】
上記消泡剤の基油中への混合、撹拌は、ジェット撹拌、その他の適宜の方法で混ぜ合わせることができ、上記したように、撹拌によって消泡剤を基油中に分散させながら約60℃前後まで加温し、これによって、ブロックコポリマーを分散させていた上記溶媒を蒸発させて系外に離散させ、潤滑油組成物中に残存しないようにして、ブロックコポリマーが均一状態に分散、混合されている潤滑油組成物を得ることができる。
【0044】
上記したものでは、ブロックコポリマーを溶媒中に分散させることによって、該ブロックコポリマーの平均粒子径を0.1μm以下にしているが、基油中に混合、分散させた後に、平均粒子径が0.1μm以下になるようにしてもよい。
【0045】
こうしたパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを含有する潤滑油組成物では、該ブロックコポリマーが潤滑油組成物中に細粒化されて分散されているので、同じ添加量であっても粒子数が増加する結果、潤滑油組成物から発生する泡と接触する確率が増え、これによって消泡効果を効果的に発揮することができる。
【0046】
加えて、この細粒化されたポリマーは潤滑油中で非常に安定なため、例えば潤滑油中の塵芥等を除去するような目的で繰り返しフィルターを通しても、ポリマーはほとんどフィルターに捕捉されずに通過するため、経時で消泡性能が低下するようなことがない。
【0047】
このように、本発明による潤滑油組成物は消泡性能に優れ、かつ、その効果が持続するため、このような消泡性が要求される用途での潤滑油として好適に使用される。例えば、油圧作動油、圧縮機油、タービン油、湿式ブレーキ油、軸受け油、冷凍機油、工作機械油、金属加工油、二輪車用、四輪車用、船舶用、発電用等のガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、ガスエンジン油、自動変速機、無段変速機、手動変速機、終減速機、ギヤ等の駆動系用潤滑油などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0048】
本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0049】
(基油)
基油1:エクソンモービル社製EHC45(API基油カテゴリー;グループ2、40℃の動粘度;22.9mm2/s、100℃の動粘度;4.57mm2/s、粘度指数;117、密度(15℃);0.845、引火点(FP);226℃)
基油2:SKルブリカンツ社製YUBASE6(API基油カテゴリー;グループ3、40℃の動粘度;36.8mm2/s、100℃の動粘度;6.5mm2/s、粘度指数;131、密度(15℃);0.843、引火点(FP);240℃)
【0050】
(パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマー分散液の調製)
下記の材料を用い、灯油を溶媒としてホモジナイザーにより20,000rpmで1分間撹拌して、表1に示すパーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマー分散液を調製した。また、比較として下記消泡剤についても同様の方法で分散液を調製した。
パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマー:
消泡剤A…重量平均分子量;6,200、フッ素含有率;55.0質量%である(ポリシロキサンブロック)−(パーフルオロポリエーテルブロック)−(ポリシロキサンブロック)を含有してなる直鎖状のA−B−A型パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマー
消泡剤B…重量平均分子量;9,000、フッ素含有率;48.2質量%である(ポリシロキサンブロック)−(パーフルオロポリエーテルブロック)−(ポリシロキサンブロック)を含有してなる直鎖状のA−B−A型パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマー
ジメチルポリシロキサン:信越化学工業(株)製 KF96H 10万CS
フロロシリコーン:信越化学工業(株)製 FA−630
パーフルオロポリエーテル:ソルベイソレクシス(株)製 Fomblin Y25
【0051】
【表1】

【0052】
(潤滑油組成物の調製)
表2に示す配合及び製法により、実施例1〜4及び比較例1〜5の潤滑油組成物を調製した。
消泡剤の平均粒子径(μm)については、DLS(Dynamic Light Scattering:動的光散乱法)を利用したゼータサイザーナノS(Malvern社製)測定器によって測定した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
(試験1:泡立ち試験・JIS法)
上記実施例1〜4、比較例1〜5の潤滑油組成物について、JIS K 2518に規定する泡立ち試験によって泡立ち度を測定し、消泡効果の評価を行った。
(1)上記50℃に加温し、300rpmで10分間撹拌して調製した直後の潤滑油組成物について、シーケンスI、シーケンスII、シーケンスIIIの泡立ち度を測定した。
シーケンスI:24±0.5℃の泡立ち度。
シーケンスII:93±1℃の泡立ち度。
シーケンスIII:シーケンスIIの93±1℃の泡立ち度の測定後、24±0.5℃に降温しての泡立ち度。
泡立ち度の表示方法:10ml単位で表示、10ml以下の場合はトレース(Tr)、液面が見える場合はゼロ(0)と表示した。
(2)同上1日経過後の潤滑油組成物について、その上澄みをサンプリングし、シーケンスI、シーケンスII、シーケンスIIIの泡立ち度を測定した。
(3)同上7日経過後の潤滑油組成物について、その上澄みをサンプリングし、シーケンスI、シーケンスII、シーケンスIIIの泡立ち度を測定した。
(4)同上1ヶ月経過後の潤滑油組成物について、その上澄みをサンプリングし、シーケンスI、シーケンスII、シーケンスIIIの泡立ち度を測定した。
【0055】
(試験2:泡立ち試験・ミキサー法)
油中の消泡性については、上記50℃に加温し、300rpmで10分間撹拌して調製した潤滑油組成物の1ヶ月経過後のものについて、その上澄みをサンプリングし、ホモディスパー(プライミクス社製)を利用して実験を行った。まず、ガラスビーカーに予めmm単位で目盛りを付け、200mlの試料をビーカーに入れて3,000rpmで2分間撹拌し、ホモディスパーの回転を停止した。
(1)ホモディスパーの回転停止直後から10秒後の泡層の厚さ(mm)を計測した。
(2)ホモディスパーの回転停止直後から1分後の泡層の厚さ(mm)を計測した。
(3)ホモディスパーの回転停止直後から2分後の泡層の厚さ(mm)を計測した。
【0056】
(試験結果)
これらの結果を表3及び表4に示す。
【表3】

【0057】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び/又は合成油を基油とする潤滑油組成物であって、パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを、消泡有効成分として組成物全量を基準として0.01〜50ppm含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーの平均粒子径が0.1μm以下であること特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
基油が、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ2又はグループ3に分類されるものである請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサンブロックコポリマーを灯油、軽油又はその他の有機溶剤で希釈・分散して、該ブロックコポリマーの平均粒子径を0.1μm以下にしたのち、鉱油及び/又は合成油の基油に消泡有効成分として組成物全量を基準として0.01〜50ppm含有するように添加することを特徴とする潤滑油組成物の製造方法。
【請求項5】
基油が、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ2又はグループ3に分類されるものである請求項4に記載の潤滑油組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−62350(P2012−62350A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205563(P2010−205563)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】