説明

潤滑油組成物

【課題】優れた防錆性を有すると共に、低摩擦性を付与し、高い省エネ性を持つ工業用及び自動車用潤滑油組成物を得ようとする。
【解決手段】高度精製油や合成油の基油に、アスパラギン酸誘導体と、脂肪族アミン化合物及び/または脂肪族アミド化合物を添加することによって、油圧装置における油圧作動油などの工業用潤滑油や自動車用潤滑油として好適な潤滑油組成物を得ることができる。
脂肪族アミン化合物には、一級アミン、二級アミン、三級アミン、ジアミンを使用することができる。脂肪族アミド化合物には、一級アミド、二級アミド、ポリアミンのアミドなどを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、その中でも精製度の高い基油を用いた、工業用潤滑油や自動車用潤滑油に関し、特に機械油、油圧作動油、タービン油、コンプレッサー油、歯車油、擦動面油、軸受油、キャリブレーション油、エンジン油、駆動系潤滑油などとして使用される潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械設備に使用する潤滑油には、その性能を維持するために本質的に防錆性が必要とされている。これは、機械装置におけるタンク内の潤滑油温度は使用条件により上下し、そのためタンク内の潤滑油には凝縮水が混入することがあること、また冷却水配管からの漏水により水分が混入することがあること等によるものである。こうした防錆性を得るために、アスパラギン酸エステルなども使用されている。(特許文献1)
【0003】
また近年、工業用潤滑油組成物には良好な摩擦特性が要求されている。これは、低い摩擦係数(μ)を有すること、すなわち低摩擦性を潤滑油に付与することによって、効率的に機械装置における摩擦損失を低減し、高い省エネルギー性を達成することができるためである。また、建設用機械等において油圧装置が多用されているが、油圧作動油として使用される潤滑油の摩擦係数が高い場合、油圧シリンダーの往復動パッキングのしゅう動部において、微小スティックスリップ現象が発生し、シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こし、油圧装置を精度良く制御できなくなる。そこで、油圧シリンダーが正確かつスムーズに移動するようにするためには、潤滑油の低摩擦化が必要となっている。
【特許文献1】特開平6−200268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた防錆性を有すると共に、潤滑油に低摩擦性を付与し、高い省エネ性を持つ工業用潤滑油若しくは自動車用潤滑油を得るものである。こうした課題を解決した潤滑油組成物では油圧装置における油圧作動油として使用した場合に、油圧シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こすことなく、油圧装置を精度良く制御できるようにもなる。本発明は、錆の発生を抑制し、かつ省エネルギー性に富んだ、作動効率の良い潤滑油組成物を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、高度精製基油や合成油基油に、添加剤としてアスパラギン酸誘導体と、脂肪族アミン化合物及び/または脂肪族アミド化合物を加えることによって、油圧作動油などの工業用潤滑油として好適な潤滑油組成物を得ることができる。
上記脂肪族アミン化合物としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、ジアミンなどを用いることができる。上記脂肪族アミド化合物としては、一級アミド、二級アミド、ポリアミンのアミドなどを用いることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、錆の発生を抑制し、摩擦係数が低い、優れた潤滑油組成物を得ることができる。摩擦係数を低くすることにより、各種工業用の装置や、自動車のエンジン・駆動装置で発生する摩擦損失を効果的に減らすことができ、省エネルギー化を図ることができる。また油圧作動油として使用した場合に、摩擦係数を低減させることにより、油圧シリンダーのビビリ、振動、鳴き、異音発生などの現象を引き起こすことなく、油圧装置を精度良く制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本潤滑油組成物の基油には、高度精製基油と呼ばれる鉱油、合成油を使用することができ、特に、API(American Petroleum Institute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4などに属する基油を、単独または混合物として使用することができる。ここで使用する基油は、硫黄元素分が700ppm未満、好ましくは500ppm未満が良い。また密度は0.8〜0.9が良い。アロマ分は5%以下、好ましくは3%以下が良い。
【0008】
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。粘度指数は80〜120、好ましくは95〜110が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は700ppm未満、好ましくは500ppm未満が良い。全窒素分も50ppm未満、好ましくは25ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは90〜120℃のものを使用するのが良い。
【0009】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、本発明に好適である。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は80〜120、好ましくは100〜120が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は300ppm未満、好ましくは200ppm未満、更に好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するのが良い。
【0010】
グループ3基油及びグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油も好適である。アメリカの広告審議を担当するNAD(National Advertising Division)の評決により「合成油」として表記が可能なものを含む。これらの基油の粘度は特に制限されないが、粘度指数は95〜145、好ましくは100〜140が良い。40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。また全硫黄分は、0〜100ppm、好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するのが良い。
【0011】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明の基油として好適である。GTL基油の粘度性状は特に制限されないが、通例粘度指数は130〜180、より好ましくは140〜175である。また40℃における動粘度は、2〜680mm/s、より好ましくは5〜120mm/sである。また通例全硫黄分は10ppm未満、全窒素分1ppm未満である。そのようなGTL基油商品の一例として、SHELL XHVI(登録商標)がある。
【0012】
また合成油としては、例えば、ポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーン油などが挙げられる。
【0013】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。特にポリαオレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。これら合成基油の粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは2〜680mm/s、より好ましくは8〜220mm/sである。
【0014】
本発明の潤滑油組成物における上記基油の含有量は特に制限されないが、潤滑油組成物の全量基準で60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
【0015】
アスパラギン酸誘導体は、下記の一般式(1)に示すものである。
【化1】

【0016】
上記一般式1中、X及びXは各々水素又は炭素数3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくはそれぞれが2−メチルプロピル基やターシャリーブチル基が良い。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、オクタデシル基、アルコキシプロピル基、3−(C6〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C3〜C6)アルキル基、更に好ましくは、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C16)アルコキシプロピル基が良い。Xは炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和カルボン酸基、または炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基若しくはヒドロキシアルキル基である。例えばプロピオン酸基や、プロピオニル酸基が良い。
【0017】
上記アスパラギン酸誘導体は、JIS K2501で定める酸価が10〜200mgKOH/gのもの、好ましくは30〜150mgKOH/gのものが良い。アスパラギン酸誘導体は、潤滑油組成物中に約0.001〜5質量%程度、好ましくは約0.001〜0.1質量%程度、より好ましくは約0.005〜0.05質量%程度で用いられる。このアスパラギン酸誘導体は、1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0018】
この潤滑油組成物中には、アミン化合物を配合することができる。こうしたアミン化合物としては脂肪族アミン化合物を用いることができ、一般式(2)に示される一級アミン、一般式(3)に示される二級アミン、一般式(4)に示される三級アミン、および一般式(5)に示されるジアミンが挙げられる
【0019】
【化2】

上記一般式2中、Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。例えば、ドデシルアミン、ココナットアミン、n−トリデシルアミン、テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、水素化牛脂アミン、大豆アミン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシルアミン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルオクチルアミン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−ドデカメチルドデシルアミン等が挙げられる。好ましくはXの炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。またXは直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でも良い。
【0020】
【化3】

上記一般式3中、XおよびXは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。例えば、ジドデシルアミン、ジココナットアミン、ジn−トリデシルアミン、ジn−テトラデシルアミン、ジn−ペンタデシルアミン、ジn−パルミチルアミン、ジn−ヘプタデシルアミン、ジn−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジn−ノナデシルアミン、ジn−エイコシルアミン、ジn−ヘンエイコシルアミン、ジn−ドコシルアミン、ジn−トリコシルアミン、ジn−ペンタコシルアミン、ジオレイルアミン、ジ牛脂アミン、ジ水素化牛脂アミン、ジ大豆アミン等が挙げられる。好ましくはXおよびXの炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。XおよびXは同一でも、異なっていても良い。
【0021】
【化4】

上記一般式4中、X,X,X10は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、若しくはポリオキシアルキレン基であり、X,X,X10は同一でも、異なっていても良い。より好ましくは、X,X,X10のうち、少なくとも一つの炭素数が1〜8で、かつ少なくとも一つの炭素数が12〜18のものが良い。
,X,X10のうちの一つがメチル基であるものとして、例えばジオクチルメチルアミン、ジノニルメチルアミン、ジデシルメチルアミン、ジウンデシルメチルアミン、ジドデシルメチルアミン、ジトリデシルメチルアミン、ジテトラデシルメチルアミン、ジペンタデシルメチルアミン、ジパルミチルメチルアミン、ジヘプタデシルメチルアミン、ジオレイルメチルアミン、ジステアリルメチルアミン、ジイソステアリルメチルアミン、ジノナデシルメチルアミン、ジエイコシルメチルアミン、ジココナットメチルアミン、ジ牛脂メチルアミン、ジ水素化牛脂メチルアミン、ジ大豆メチルアミン、等のジアルキルメチルアミン類がある。
,X,X10のうちの二つがメチル基であるものとして、例えばオクチルジメチルアミン、ノニルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ウンデシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリデシルジメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、ペンタデシルジメチルアミン、パルミチルジメチルアミン、ヘプタデシルジメチルアミン、オレイルジメチルアミン、ステアリルジメチルアミン、イソステアリルジメチルアミン、ノナデシルジメチルアミン、エイコシルジメチルアミン、ココナットジメチルアミン、牛脂ジメチルアミン、水素化牛脂ジメチルアミン、大豆ジメチルアミン、等のアルキルジメチルアミン類がある。
,X,X10のうちの二つがヒドロキシアルキル基であるものとして、例えばN−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ドデシルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−テトラデシルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミン、N−ココナットジエタノールアミン、N−牛脂ジエタノールアミン、N−水素化牛脂ジエタノールアミン、N−大豆ジエタノールアミン等のN−アルキルジエタノールアミン類、またN−オクチルジプロパノールアミン、N−ノニルジプロパノールアミン、N−デシルジプロパノールアミン、N−ウンデシルジプロパノールアミン、N−ドデシルジプロパノールアミン、N−トリデシルジプロパノールアミン、N−テトラデシルジプロパノールアミン、N−ペンタデシルジプロパノールアミン、N−パルミチルジプロパノールアミン、N−ヘプタデシルジプロパノールアミン、N−オレイルジプロパノールアミン、N−ステアリルジプロパノールアミン、N−イソステアリルジプロパノールアミン、N−ノナデシルジプロパノールアミン、N−エイコシルジプロパノールアミン、N−ココナットジプロパノールアミン、N−牛脂ジプロパノールアミン、N−水素化牛脂ジプロパノールアミン、N−大豆ジプロパノールアミン等のN−アルキルジプロパノールアミン類がある。
,X,X10のうちの二つがポリオキシアルキレン基であるものとして、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−オクチルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−オクチルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ノニルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ノニルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−デシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−デシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ウンデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ウンデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ドデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ドデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−トリデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−トリデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−テトラデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−テトラデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ペンタデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ペンタデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−パルミチルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−パルミチルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ヘプタデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ヘプタデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−オレイルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−オレイルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ステアリルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ステアリルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−イソステアリルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−イソステアリルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ノナデシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ノナデシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−エイコシルアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−エイコシルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−ココナットアミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−ココナットアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−牛脂アミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−牛脂アミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−水素化牛脂アミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−水素化牛脂アミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−大豆油脂アミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−大豆油脂アミン等がある。
【0022】
【化5】

上記一般式5中、X11は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。好ましくはX11の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。X12は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニキル基、若しくはヒドロキシアルキル基である。X13は炭素数1〜12のアルキレンル基である。好ましくはX13の炭素数は1〜8、更に好ましくは2〜4が良い。
12が水素原子の例として、N−オクチル−1,2−エチレンジアミン、N−ノニル−1,2−エチレンジアミン、N−デシル−1,2−エチレンジアミン、N−ウンデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ドデシル−1,2−エチレンジアミン、N−トリデシル−1,2−エチレンジアミン、N−テトラデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−パルミチル−1,2−エチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−オレイル−1,2−エチレンジアミン、N−ステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−イソステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−ノナデシル−1,2−エチレンジアミン、N−エイコシル−1,2−エチレンジアミン、N−ココナット−1,2−エチレンジアミン、N−牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−大豆−1,2−エチレンジアミン、等のエチレンジアミン類がある。
また、N−オクチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノニル−1,3−プロピレンジアミン、N−デシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ウンデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ドデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−トリデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−テトラデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ペンタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−パルミチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、N−ステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−イソステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノナデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−エイコシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ココナット−1,3−プロピレンジアミン、N−牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−水素化牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−大豆−1,3−プロピレンジアミン、等のプロピレンジアミン類がある。また、N−オクチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノニル−1,4−ブチレンジアミン、N−デシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ウンデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ドデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−トリデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−テトラデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−パルミチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−オレイル−1,4−ブチレンジアミン、N−ステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−イソステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノナデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−エイコシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ココナット−1,4−ブチレンジアミン、N−牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−大豆油脂−1,4−ブチレンジアミン、等のブチレンジアミン類がある。
12がヒドロキシアルキル基の例として、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−オクチル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ノニル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−デシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ウンデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ドデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−トリデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−テトラデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ペンタデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−パルミチル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ヘプタデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−オレイル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ステアリル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−イソステアリル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ノナデシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−エイコシル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ココナット1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−牛脂1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−水素化牛脂1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−大豆油脂1,3−ジアミノプロパン等が挙げられる。
【0023】
上記したアミン化合物は、JIS K2501で定める塩基価が10〜800mgKOH/gのもの、好ましくは100〜500mgKOH/gのものが良い。これらのアミン化合物は、単独で又は適宜に組み合わせて潤滑油組成物中に上記した群から選ばれた少なくとも1種を約0.005〜5質量%程度、好ましくは約0.01〜1質量%程度で用いると良い。
【0024】
本発明におけるアミド化合物としては、脂肪酸と各種アミンにより生成される、一級アミド、二級アミド、またはポリアミンのアミドが挙げられる。
一級アミド化合物の例として、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基を有する脂肪酸の一級アミド化合物が挙げられる。例えば、n−ドデシル一級アミド、ココナット一級アミド、n−トリデシル一級アミド、n−テトラデシル一級アミド、n−ペンタデシル一級アミド、n−パルミチル一級アミド、n−ヘプタデシル一級アミド、n−ステアリル一級アミド、イソステアリル一級アミド、n−ノナデシル一級アミド、n−エイコシル一級アミド、n−ヘンエイコシル一級アミド、n−ドコシル一級アミド、n−トリコシル一級アミド、n−ペンタコシル一級アミド、オレイル一級アミド、牛脂一級アミド、水素化牛脂一級アミド、大豆一級アミド等が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、好ましくは8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。また直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でも良い。
またポリアミンのアミド化合物としては、例えばイソステアリン酸トリエチレンテトラミド,イソステアリン酸テトラエチレンペンタミド,オレイン酸ジエチレントリアミド,オレイン酸ジエタノールアミドなど、炭素数1〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸と脂肪族アミン,ポリアルキレンポリアミンなどとの反応物が挙げられる。
これらのアミド化合物は、単独で又は適宜に組み合わせて潤滑油組成物中に上記した群から選ばれた少なくとも1種を約0.005〜5質量%程度、好ましくは約0.01〜1質量%程度で用いると良い。
【0025】
本発明においては酸化安定性を増強する目的で酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤としては、潤滑油に使用されるものが実用的には好ましく、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを挙げることができる。これらの酸化防止剤は、基油100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0026】
上記芳香族アミン系酸化防止剤としては、p,p’−ジオクチル−ジフェニルアミン(精工化学社製:ノンフレックスOD−3)、p,p’−ジ−α−メチルベンジル−ジフェニルアミン、N−p−ブチルフェニル−N−p’−オクチルフェニルアミンなどのジアルキル−ジフェニルアミン類、モノ−t−ブチルジフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン類、ジ(2,4−ジエチルフェニル)アミン、ジ(2−エチル−4−ノニルフェニル)アミンなどのビス(ジアルキルフェニル)アミン類、オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、N−t−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミンなどのアルキルフェニル−1−ナフチルアミン類、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N−ヘキシルフェニル−2−ナフチルアミン、N−オクチルフェニル−2−ナフチルアミンなどのアリール−ナフチルアミン類、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン類、フェノチアジン(保土谷化学社製:Phenothiazine)、3,7−ジオクチルフェノチアジンなどのフェノチアジン類などが挙げられる。
【0027】
フェノール系酸化防止剤としては、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン(川口化学社製:アンテージDBH)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルキルフェノール類、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシフェノールなどの2,6−ジ−t−ブチル−4−アルコキシフェノール類がある。
また、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプト−オクチルアセテート、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(吉富製薬社製:ヨシノックスSS)、n−ドデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2’−エチルヘキシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL135)などのアルキル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート類、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−400)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−500)などの2,2’−メチレンビス(4−アルキル−6−t−ブチルフェノール)類がある。
さらに、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージW−300)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(シェル・ジャパン社製:Ionox220AH)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−(ジ−p−ヒドロキシフェニル)プロパン(シェル・ジャパン社製:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2,6−t−ブチルフェノール)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL109)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](吉富製薬社製:トミノックス917)、2,2’−チオ−[ジエチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL115)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(住友化学:スミライザーGA80)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学社製:アンテージRC)、2,2’−チオビス(4,6−ジ−t−ブチル−レゾルシン)などのビスフェノール類がある。
そして、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IrganoxL101)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(吉富製薬社製:ヨシノックス930)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(シェル・ジャパン社製:Ionox330)、ビス−[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−(2’,4’−ジ−t−ブチル−3’−ヒドロキシフェニル)メチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノールなどのポリフェノール類、p−t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドの縮合体、p−t−ブチルフェノールとアセトアルデヒドの縮合体などのフェノールアルデヒド縮合体などが挙げられる。
【0028】
硫黄系酸化防止剤としては、ジドデシルサルファイド、ジオクタデシルサルファイドなどのジアルキルサルファイド類、ジドデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ドデシルオクタデシルチオジプロピオネートなどのチオジプロピオン酸エステル類、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0029】
リン系酸化防止剤として、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイトなどのトリアリールフォスファイト類、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイトなどのトリアルキルフォスファイト類、トリドデシルトリチオフォスファイトなどが挙げられる。
【0030】
本発明の潤滑油組成物にはエポキシ化合物やエポキシ化エステル化合物を配合することもできる。エポキシ化エステル化合物は、菜種油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ひまわり油、米ぬか油、サフラワー油、牛脂、豚脂等のエステルをエポキシ化して製造されたもので、例えば、エポキシ化菜種油エステル、エポキシ化大豆油エステル、エポキシ化アマニ油エステル、エポキシ化ヒマシ油エステル、エポキシ化サフラワー油エステル等、およびエポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等の脂肪酸エステルをエポキシ化して製造されたものが挙げられる。またエステルのアルコール残基は、アルキル基、若しくはエーテル結合を有するアルキル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはブチル基、イソブチル基、2エチルヘキシル基である。一例として、エポキシ化菜種脂肪酸イソブチルエステル、エポキシ化菜種脂肪酸2エチルヘキシルエステル、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチルエステルなどが挙げられる。なお一般的な菜種脂肪酸の主成分はオレイン酸63%、リノール酸20%、リノレン酸8%の炭素数18の脂肪酸であり、亜麻仁脂肪酸の主成分は、オレイン酸21%、リノール酸13%、リノレン酸57%の炭素数18の脂肪酸である。
【0031】
本発明には、チオリン酸エステル化合物を配合することができる。チオリン酸エステル化合物として、下記の一般式(6)及び一般式(7)に示すチオリン酸エステルが挙げられる。
【化6】

上記一般式6中、X14及びX15は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。X16は炭素数1〜20のアルキレン基を示し、X17は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。上記ホスホリ化カルボン酸の中でも、X17が水素原子であるこのβ−ジチオホスホリル化カルボン酸としては、具体的に、3−(ジ−イソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸などが挙げられる。
【化7】

上記一般式7中、X18は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。具体的にはトリフェニルホスホロチオネートやノニルフェニルホスホロチオネートなどが挙げられる。
本潤滑油組成物におけるチオリン酸エステル化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、基油100質量%に対して、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.002〜0.5質量%である。チオリン酸エステル化合物の含有量が前記下限値未満では十分な潤滑性が得られない傾向にある。一方、前記上限値を超えて加えても含有量に見合う潤滑性向上効果が得られない傾向にあり、更には熱・酸化安定性や加水分解安定性が低下するおそれがある。このチオリン酸エステル化合物は、1種で又は数種を混ぜて使用することができる。
【0032】
本発明の潤滑油組成物に対して、チオリン酸エステル以外にもリン化合物を添加することができ、これによって更に耐摩耗性や極圧性を付与することができる。本発明に適したリン化合物としては、例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、亜リン酸エステル、ホスフォロチオネート、ジチオリン酸亜鉛、リン含有カルボン酸、リン含有カルボン酸エステル、などが挙げられる。これらのリン化合物は、基油100質量%に対して、0.01〜2質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
【0033】
上記リン酸エステルとしては、例えばトリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(iso−プロピルフェニル)ホスフェート、トリアリールフォスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、などが挙げられる。
【0034】
上記酸性リン酸エステルの具体例としては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート、などが挙げられる。
【0035】
上記酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、などのアミンとの塩などがある。
【0036】
上記亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、などが挙げられる。
【0037】
上記したジチオリン酸亜鉛としては、一般に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、アリールアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛のアルキル基は、炭素数3〜22の第一級又は第二級のアルキル基、炭素数3〜18のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛が使用される。 ジアルキルジチオリン酸亜鉛の具体例としては、ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジイソペンチルジチオリン酸亜鉛、ジエチルヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛、ジノニルジチオリン酸亜鉛、ジデシルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジプロピルメチルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジノニルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、ジドデシルフェニルジチオリン酸亜鉛、などがある。
【0038】
本発明の潤滑油組成物に対して、油性を向上させる目的で多価アルコールの脂肪酸エステルを配合することができる。例えば、グリセロール、ソルビトール、アルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール等の多価アルコールの炭素数1〜24の飽和または不飽和脂肪酸の部分または完全エステルを用いることができる。
例えば、グリセロールエステルとして、グリセロールモノラウリレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノオレート、グリセロールジラウリレート、グリセロールジステアレート、グリセロールジパルミテート、グリセロールジオレート等がある。ソルビトールエステルとしては、ソルビトールモノラウリレート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールモノオレート、ソルビトールジラウリレート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールジオレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールトリラウリレート、ソルビトールトリオレート、ソルビトールテトラオレート等が挙げられる。
アルキレングリコールエステルとしては、エチレングリコールモノラウリレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールモノオレート、エチレングリコールジラウリレート、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジオレート、プロピレングリコールモノラウリレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールジラウリレート、プロピレングリコールジステアレート、プロピレングリコールジオレート等がある。ネオペンチルグリコールエステルとしては、ネオペンチルグリコールモノラウリレート、ネオペンチルグリコールモノステアレート、ネオペンチルグリコールモノオレート、ネオペンチルグリコールジラウリレート、ネオペンチルグリコールジステアレート、ネオペンチルグリコールジオレート等が挙げられる。トリメチロールプロパンエステルとしては、トリメチロールプロパンモノラウリレート、トリメチロールプロパンモノステアレート、トリメチロールプロパンモノオレート、トリメチロールプロパンジラウリレート、トリメチロールプロパンジステアレート、トリメチロールプロパンジオレート、ペンタエリスリトールモノラウリレート等がある。ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノオレート、ペンタエリスリトールジラウリレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジオレート、ジペンタエリスリトールモノオレート等がある。こうした多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、好ましくは多価アルコールと不飽和脂肪酸との部分エステルを用いるとよい。
【0039】
本発明において、金属材料との適合性を増強する目的で、金属腐食防止剤を配合することができる。本発明の組成物と併用できる金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、4−メチル−ベンゾトリアゾール、4−エチル−ベンゾトリアゾールなどの4−アルキル−ベンゾトリアゾール類、5−メチル−ベンゾトリアゾール、5−エチル−ベンゾトリアゾールなどの5−アルキル−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−ベンゾトリアゾールなどの1−アルキル−ベンゾトリアゾール類、1−ジオクチルアミノメチル−2,3−トルトリアゾールなどの1−アルキル−トルトリアゾール類等のベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、2−(オクチルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(デシルジチオ)−ベンゾイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−ベンゾイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾイミダゾール類、2−(オクチルジチオ)−トルイミダゾール、2−(デシルジチオ)−トルイミダゾール、2−(ドデシルジチオ)−トルイミダゾールなどの2−(アルキルジチオ)−トルイミダゾール類等のベンゾイミダゾール誘導体がある。 また、インダゾール、4−アルキル−インダゾール、5−アルキル−インダゾールなどのトルインダゾール類等のインダゾール誘導体、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール誘導体(千代田化学社製:チオライトB−3100)、2−(ヘキシルジチオ)ベンゾチアゾール、2−(オクチルジチオ)ベンゾチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)ベンゾチアゾール類、2−(ヘキシルジチオ)トルチアゾール、2−(オクチルジチオ)トルチアゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルチアゾール類、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)−ベンゾチアゾールなど2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)ベンゾチアゾール類、2−(N,N−ジエチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジブチルジチオカルバミル)トルチアゾール、2−(N,N−ジヘキシルジチオカルバミル)トルチアゾールなどの2−(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−トルゾチアゾール類等のベンゾチアゾール誘導体がある。 さらに、2−(オクチルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(デシルジチオ)ベンゾオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)ベンゾオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)−ベンゾオキサゾール類、2−(オクチルジチオ)トルオキサゾール、2−(デシルジチオ)トルオキサゾール、2−(ドデシルジチオ)トルオキサゾールなどの2−(アルキルジチオ)トルオキサゾール類等のベンゾオキサゾール誘導体、2,5−ビス(ヘプチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(オクタデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール類、2,5−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジブチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジオクチルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾールなどの2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバミル)−1,3,4−チアジアゾール類、2−N,N−ジブチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−N,N−ジオクチルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどの2−N,N−ジアルキルジチオカルバミル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール類等のチアジアゾール誘導体、1−ジ−オクチルアミノメチル−2,4−トリアゾールなどの1−アルキル−2,4−トリアゾール類等のトリアゾール誘導体などが挙げられる。
【0040】
上記した成分のほかに更に性能を向上させるため、必要に応じて種々の添加剤を適宜使用することができる。これらのものとしては、消泡剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤、防錆剤、抗乳化剤等や、その他の公知の潤滑油添加剤を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に対して、低温流動性や粘度特性を向上させるために、流動点降下剤や粘度指数向上剤を添加しても良い。粘度指数向上剤としては、例えばポリメタクリレート類やエチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどのオレフィンポリマー類等の非分散型粘度指数向上剤や、これらに含窒素モノマーを共重合させた分散型粘度指数向上剤等が挙げられる。その添加量は、基油100質量%に対して、0.05〜20質量%の範囲で使用できる。流動点降下剤としては、例えばポリメタクリレート系のポリマーが挙げられる。その添加量は、基油100質量%に対して、0.01〜5質量%の範囲で使用できる。
本発明の潤滑油組成物に対して、消泡性を付与するために、消泡剤を添加しても良い。こうした消泡剤として、例えばジメチルポリシロキサン、ジエチルシリケート、フルオロシリコーン等のオルガノシリケート類、ポリアルキルアクリレート等の非シリコーン系消泡剤が挙げられる。その添加量は、基油100質量%に対して、0.0001〜0.1質量%の範囲で単独又は複数組み合わせて使用できる。
また、抗乳化剤として、通常潤滑油添加剤として使用される公知のものがあり、その添加量は、基油100質量%に対して、0.0005〜0.5質量%の範囲で使用できる。
【実施例】
【0041】
以下本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例の調製にあたり、下記の組成材料を用意した。
1.基油
(1−1) 基油1:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ2(Gp2)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.35mm/s、40℃における動粘度;31.4mm/s、粘度指数;103、15℃密度;0.864、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、アニリン点;110℃、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;62%、同ナフテン分;38%、同アロマ分;1%未満、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;312℃)
(1−2) 基油2:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ3(Gp3)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;6.57mm/s、40℃における動粘度;37.5mm/s、粘度指数;130、15℃密度;0.823、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、アニリン点;130℃、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;78%、同ナフテン分;22%、同アロマ分;1%未満、IP346法による多環芳香族分;0.2%)
(1−3) 基油3:フィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL基油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ3に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.10mm/s、40℃における動粘度;23.5mm/s、粘度指数;153、15℃密度;0.821、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、ASTM D3238法による環分析のアロマ分:1%未満)
(1−4) 基油4:合成油のポリαオレフィン(PAO)、一般名称PAO6で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ4に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;5.89mm/s、40℃における動粘度;31.2mm/s、粘度指数;135、15℃密度;0.827、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);10ppm未満、窒素分含有量(窒素元素換算値);1ppm未満、アニリン点;128℃、ASTM D3238法による環分析のアロマ分;1%未満、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;403℃)
(1−5) 基油5:原油を常圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油で、API(米国石油協会)基油分類によりグループ1(Gp1)に分類されるもの。(特性:100℃における動粘度;4.60mm/s、40℃における動粘度;24.6mm/s、粘度指数;101、15℃密度;0.866、硫黄分含有量(硫黄元素換算値);460ppm、窒素分含有量(窒素元素換算値);20ppm、ASTM D3238法による環分析のパラフィン分;66%、同ナフテン分;31%、同アロマ分;3%、アニリン点;99℃、IP346法による多環芳香族分;0.8%、ASTM D5480法によるガスクロ蒸留による初留点温度;331℃)
【0042】
2.添加剤
(2−1) 添加剤A1:アスパラギン酸誘導体(1):N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3オクチルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3デシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3ドデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3テトラデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステルの混合物(JIS K2501法による酸価:100mgKOH/g)
(2−2) 添加剤A2:アスパラギン酸誘導体(2):コロニアルケミカル社製COLACOR93(JIS K2501法による酸価;75mgKOH/g)
(2−3) 添加剤A3:アスパラギン酸誘導体(3):ユニケマ社製MONACOR39(JIS K2501法による酸価;60mgKOH/g)
(2−4) 添加剤B1:ココナット一級アミン(主成分はドデシルアミン);一級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;390mgKOH/g)
(2−5) 添加剤B2:オレイル一級アミン(主成分はオレイルアミン);一級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;215mgKOH/g)
(2−6) 添加剤B3:牛脂一級アミン(主成分はオレイルアミン、ステアリルアミン、パルミチルアミン);一級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;215mgKOH/g)
(2−7) 添加剤B4:三級アルキルの一級アミン(主成分は1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−ドデカメチルドデシルアミンを含む、C16〜C22の三級アルキルの一級アミン化合物);一級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価:155mgKOH/g)
(2−8) 添加剤B5:ココナット二級アミン(主成分はジドデシルアミン);二級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;160mgKOH/g)
(2−9) 添加剤B6:ジオレイルモノメチル三級アミン(主成分はN−ジオレイル−N−メチルアミン);三級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;105mgKOH/g)
(2−10) 添加剤B7:オレイルジメチル三級アミン(主成分はN−オレイル−N−ジメチルアミン);三級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;190mgKOH/g)
(2−11)添加剤B8:N−アルキルジエタノールアミン(1)(主成分はN−ドデシルジエタノールアミン);三級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;160mgKOH/g)
(2−12)添加剤B9:N−アルキルジエタノールアミン(2)(主成分はN−オレイルジエタノールアミン);三級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;160mgKOH/g)
(2−13)添加剤B10:N,N−ジポリオキシアルキレン−N−牛脂アミン(主成分はN−2−ヒドロキシエチル−N−2−{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチル−N−牛脂アミン、N−2−(2−ヒドロキシエチル)エトキシ−N−2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチル−N−牛脂アミン);三級アミン化合物(JIS K2501法による塩基価;125mgKOH/g)
(2−14) 添加剤B11:ココナットジアミン(主成分はN−ドデシル−1,3−プロピレンジアミン);ジアミン化合物(JIS K2501法による塩基価;440mgKOH/g)
(2−15)添加剤B12:牛脂ジアミン(主成分はN−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、N−ステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−パルミチル−1,3−プロピレンジアミン);ジアミン化合物(JIS K2501法による塩基価;330mgKOH/g)
(2−16)添加剤B13:N−牛脂トリエタノールジアミン: N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−牛脂1,3−ジアミノプロパン(主成分はN,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−オレイル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−ステアリル1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−パルミチル1,3−ジアミノプロパン);ジアミン化合物(JIS K2501法による塩基価;210mgKOH/g)
(2−17)添加剤B14:オレイルアミド(主成分はオレイル一級アミド);アミド化合物
(2−18)添加剤B15:ポリアミンのアミド(主成分はイソステアリン酸トリエチレンテトラミド);アミド化合物(JIS K2501法による塩基価;7.2mgKOH/g)
(2−19)その他添加剤:以下に示す化合物を混合したものである。ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−(4又は5)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、トリアリールフォスフェート、3−(ジ−イソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチル−プロピオン酸、ペンタエリスリトールエステル、ポリメタクリレート系流動点降下剤、ジメチルポリシロキサン系消泡剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール系抗乳化剤。
【0043】
(実施例1〜25、比較例1〜5)
上記した組成材料を用いて、表1〜表6に示す組成により実施例1〜25、比較例1〜5の潤滑油組成物を調製した。
【0044】
(試験)
実施例1〜25及び比較例1〜5の潤滑油組成物について、その性能を見るために以下の錆止め性試験、振り子試験による摩擦係数を測定した。
【0045】
(錆止め性試験)
JIS K2510に準拠し、恒温槽内に設置した容器に、試験油300mlを採取し、毎分1000回転で攪拌し、60℃になったときに鉄製の試験片を試験油中に挿入し、更に人工海水を30ml加え、60℃に保ったまま24時間攪拌を続ける。その後試験片を取り出し、試験片の錆の発生有無を目視で評価し、錆が発生しなかった場合を合格とした。
【0046】
(振り子試験・摩擦係数)
神鋼造機株式会社製の曽田式振子型油性試験機により25℃における摩擦係数を測定した。この試験は、振子支点の摩擦部分に試験油を与え、振子を振動させ、振動の減衰から摩擦係数を求めるものである。
試験の評価は次の基準によって行った。
摩擦係数が0.135未満・・・・・・・・・◎(優)
摩擦係数が0.135〜0.150未満・・・○(良)
摩擦係数が0.150以上・・・・・・・・・×(不可)
【0047】
(試験結果)
各試験の結果を表1〜表6に示す。
【0048】
(考察)
表1の実施例1〜3に示すように、基油1にアスパラギン酸誘導体と脂肪族アミンを併用することによって、錆止め性試験に合格する防錆性を有し、かつ摩擦係数を低下させることができる。また、アスパラギン酸誘導体は実施例1〜3に示すように単体で使用しても、実施例4に示すように混合して使用してもよいことがわかる。更に、実施例5に示すようにアスパラギン酸誘導体及び脂肪族アミンのいずれも混合して使用しても良い結果が得られている。
また、表2の実施例6〜9に示すように、高度に精製された基油2〜基油5のいずれかの基油を使用した潤滑油組成物においても、優れた防錆性と低摩擦性が得られている。そして、実施例10に示すように、上記アスパラギン酸誘導体と脂肪族アミンの組み合わせによる優れた防錆性、低摩擦化効果は、その他添加剤と併用しても有効であることが判る。
表3〜表5の実施例11〜23では、アスパラギン酸誘導体(添加剤A1)と各種の脂肪族アミン化合物(添加剤B2〜B13)を組み合わせることにより、優れた防錆性、優れた低摩擦性が得られることを示している。特に、実施例17〜23に示す添加剤B7〜B13の脂肪族アミン化合物を使用したものや、実施例15の添加剤B1とB4を混合使用したものは、摩擦係数を著しく低減させることができ、これによって優れた省エネ性を潤滑油組成物に付与することができる。
更に、表5に示す実施例24、25のものでは、アスパラギン酸誘導体(添加剤A1)と脂肪族アミド化合物(添加剤B14、B15)を組み合わせることにより、優れた防錆性、優れた低摩擦性が得られることを示している。
これに対して、表6に示す試験結果から明らかなように、比較例1の基油1のみのものでは、防錆性が不合格であり、摩擦係数も不可であることを示している。また、比較例2〜4の基油にアスパラギン酸誘導体(添加剤A1〜A3)を添加したものでは防錆性では合格しているが、摩擦係数が高くて不可である。更に、比較例5の基油に脂肪族アミン(添加剤B1)を添加したものでも、防錆性が不合格で、摩擦係数も高く不可であることを示している。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び/または合成油から選ばれる少なくとも1種の硫黄分含有量700ppm以下の基油と、添加剤としてアスパラギン酸誘導体と、脂肪族アミン化合物及び/または脂肪族アミド化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
上記アスパラギン酸誘導体の酸価が10〜200mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
上記アスパラギン酸誘導体の配合量が0.001〜5質量%であり、上記脂肪族アミン化合物及び/または脂肪族アミド化合物の配合量が0.005〜5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
上記脂肪族アミン化合物には、下記一般式(2)で示される一級アミンが含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
N−X (2)
(一般式2中、Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。)
【請求項5】
上記脂肪族アミン化合物には、下記一般式(3)で示される二級アミンが含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
−NH−X (3)
(一般式3中、XおよびXは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。)
【請求項6】
上記脂肪族アミン化合物には、下記一般式(4)で示される三級アミンが含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【化1】

(一般式4中、X,X,X10は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基若しくはポリオキシアルキレン基である。)
【請求項7】
上記脂肪族アミン化合物には、下記一般式(5)で示されるジアミンが含まれる請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【化2】

(一般式5中、X11は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基であり、X12は水素原子若しくは炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基若しくはヒドロキシアルキル基であり、X13は炭素数1〜12個のアルキレン基である。)
【請求項8】
上記脂肪族アミド化合物は、脂肪族一級アミド、脂肪族二級アミド、若しくはポリアミンと脂肪酸によるアミドである請求項1〜7のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
上記潤滑油組成物に、更に芳香族アミン化合物、フェノール系化合物、リン化合物から選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
上記リン化合物が、リン酸エステル及び/またはチオリン酸エステルであることを特徴とする請求項9記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
上記リン酸エステルが、アリールフォスフェート及び/またはアルキルフォスフェート、であることを特徴とする請求項10記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
上記チオリン酸エステルが、β−ジチオホスホリル化カルボン酸及び/またはβ−ジチオホスホリル化カルボン酸エステルであることを特徴とする請求項10記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
上記基油が、合成油であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
上記合成油が、ポリαオレフィンであることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
上記合成油が、GTLであることを特徴とする請求項13に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2008−214618(P2008−214618A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23700(P2008−23700)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】